怪盗山猫(亀梨和也)犯罪に手を染めて変わって行くハッカーをやさしく叱る人(広瀬すず)
前夜の「わたしを離さないで」がやるせない世界の歌だとすれば・・・こちらはやるせない人の歌と言えるだろう。
つまり・・・音痴なのである。
世界が調和しているのか・・・していないのかは意見の分かれるところだが・・・美しい歌は基本的には調和がとれている。
しかし・・・時に人はホンキートンク(調子はずれ)な歌を愛おしく感じる。
醜いものを愛する心が美しいのかどうかは・・・また意見の分かれるところだが・・・そういうジャンルは存在する。
それは・・・場合によっては・・・ブルースとなり・・・それなりに人に愛される。
単なる音痴なのか・・・それとも調子のはずれた新しい音楽の予兆なのか・・・。
すごく・・・微妙だが・・・チャレンジしたければするがいいと考える。
で、『怪盗 山猫・第1回』(日本テレビ20160116PM9~)原作・神永学、脚本・武藤将吾、演出・猪俣隆一を見た。お茶の間の求めるものと作り手の求めるものは恋愛のようなものである。上手くいけば一つになったような気がするがそれは単なる錯覚なのである。物語を成功物語と失敗物語に分類すれば・・・ハッピーエンドは成功物語に属するだろう。世の中に刑事物語が跋扈するのは「成功物語」が成立しやすいからである。刑事の成功・・・それは犯罪者の失敗を意味する。逆に犯罪者物語でハッピーエンドを作ろうとすれば・・・犯罪が成功するばかりである。基本的にはそれで問題はないが・・・犯罪を美化することはなかなかに社会的抵抗が大きいことなのである。だから・・・犯罪者物語というものは難しいのだ。この抜け道の一つが「義賊展開」である。この場合、社会そのものが「悪」なので・・・それに反抗するものに「正義のようなもの」が付随する。しかし・・・その場合・・・・犯罪者は犯罪者でなくなってしまう。理想を言えば・・・あくまで・・・社会に対する「悪」が勝利し・・・善人がひどい目に会う犯罪者物語が望ましい。まあ・・・そんなことを言うのは悪魔だけなのかもしれないが。
「結局・・・良い人だったんだ」っていう話は・・・飽き飽きだぜ。
まあ・・・それはそれとして・・・。ねえ、ルパン一世。
2013年・・・世界のどこかで・・・。
軍人風な男たちに暴力を振るわれる虜囚がいる。
彼は突然・・・哄笑し・・・「武士道/新渡戸稲造」の冒頭のような言葉を吐く。
「武士道は日本の国土に咲いた心の花です。それは日本を代表する桜の花に似ています。桜の花が季節になれば咲く様に武士道もまた今も日本人の心に咲き続けているのです。たとえ・・・世の体制が変わろうとも・・・封建制度の子たる武士道は・・・母亡き後も息衝いており・・・時に心に美しい花を咲かせます。その美しさは万人の知るところとなるでしょう・・・万国で桜が愛される如くに」
彼は・・・一瞬の隙をついて・・・敵を皆殺しにすると・・・夜の戦場を歩きだす。
「上をむいて歩こうよ・・・涙がこぼれないように・・・」
その歌は調子っぱずれだった。
2016年・・・首都東京・・・。
夜の闇の中を怪盗探偵を自称する犯罪者・山猫(亀梨和也)が滑空する。
山猫はクリーンな政治家である都知事の関与する政治団体のビルに侵入した。
悪徳都知事の資金源は「振り込め詐偽」だった。
その悪事の証拠となるデータを盗むのが・・・山猫の目的である。
しかし・・・何者かが・・・政治団体のPCをハッキングし・・・データを消去してしまう。
「どうなってんだよ」
山猫をバックアップするのは路地裏のカフェ「STRAY CATS」に待機する謎の女・宝生里佳子(大塚寧々)と素晴らしいインターネットの世界担当の細田(塚地武雅)である。
「誰かが・・・俺より上手だった・・・こんなハッキング能力があるのは・・・おそらく・・・魔王だ」
「魔王・・・」
「とにかく・・・逃げろ・・・警察にも通報されたらしい」
「・・・」
すでに名の知れた怪盗山猫は警察にマークされている。
現場に到着した指揮官は関本修吾警部(佐々木蔵之介)である。
彼はセクシャルハラスメントの常習犯であり、悪徳刑事である。
新人の霧島さくら刑事(菜々緒)は・・・お尻を触られて殺意を覚える。
さくらがカラだったら大変なことになるが・・・この世界ではならないらしい。
ビルを包囲する警官隊。
しかし・・・隠し金庫を発見した山猫は・・・とりあえず大金を入手する。
お約束で・・・さくらは山猫を屋上に追いつめるが・・・山猫は地上に用意されたクッションにダイビングするのだった。
包囲していた警官隊はどうしたのだとかは大人げないので言ってはいけません。
警察がまんまと山猫を取り逃がしたところに・・・雑誌記者の勝村英男(成宮寛貴)が現れる。
勝村はさくらの学生時代の先輩である。
「先輩・・・どうして・・・ここに」
「俺は今、山猫の特集記事で稼いでいるんだ」
「泥棒が飯のタネですか」
「それがジャーナリズムというものだからな」
「さすがです・・・」
さくらは勝村を尊敬しているらしい。
驚いたことに・・・ここまで・・・登場した人間で辛うじて善人と言えるのはさくらだけである。
つまり・・・この世界は汚れきっているのである。
隠れ家に戻った山猫は・・・ぽちゃっとした細田を問いつめる。
「魔王ってなんだよ」
「正体不明のハッカーです」
「・・・お前・・・ひょっとして・・・無能なデブなのか」
「ひでぶ」
仕方なく・・・山猫は独自に調査して・・・手掛かりを得る。
雑誌記者の勝村が・・・山猫の前に・・・魔王の記事を書いていたのである。
山猫は勝村を路地裏のカフェ「STRAY CATS」に連れ込むことに成功する。
そして・・・腕輪爆弾で勝村を脅迫するのだった。
「魔王の正体を教えてくれないと・・・二度と記事を書けなくなるぜ」
「・・・」
右腕のない不便さを考慮して白状する腰抜けの勝村だった。
魔王の正体は・・・大館学園の高校生・高杉真央(広瀬すず)だった。
「どうするんです」
「魔王の周辺を調査し、弱みを握って攻略する」
「それが・・・義賊のすることですか」
「俺は・・・義賊ではない・・・汚い金専門の泥棒だ・・・何しろ汚い金を盗んでも・・・警察に届けられる可能性は低いからな」
「単なる悪党なのか」
「言葉に気をつけろ・・・君の右手は僕の気分次第でバイバイするんだから」
「・・・」
魔王は・・・便所メシをしているところをバケツ水で攻撃されるような苛められっ子だった。
苛めリーダーは義姉と同性愛でおなじみの伊藤沙莉である。
小学生の頃から腕利きのハッカーだった魔王は・・・父親・直哉(勝村政信)と浮気相手の画像を素晴らしいインターネットの世界に晒す・・・しかし、母親・阿佐美(伊藤裕子)は精神的に破綻して自殺未遂・・・入院中である。
魔王は母親の入院費を稼ぐために・・・父親と組んでハッキングした顧客情報の売買を行っていた。
だが・・・色事師の宝生里佳子は魔王の父親に接近し・・・母親がすでに死亡していることを突き止める。
個人情報の売買を行う会社を経営する高杉直哉は・・・妻を殺し、娘を利用していたのだった。
山猫は魔王の母親の遺品であるオルゴールを盗みだす。
そして・・・魔王と直接対決するのだった。
「俺の仕事を邪魔するな」
「犯罪者のくせに・・・何言ってるの」
「お前だって犯罪者じゃないか」
「私のこと・・・何も知らないくせに・・・」
「苛められっ子だって言うのは知っている」
「・・・」
「犯罪者なら犯罪者らしく・・・悪の美学を持て」
「何を言ってるの・・・」
「お前は犯罪を冒し・・・愛する母親は死んだ・・・そういう現実に向き合えよ」
「私は・・・ずっと一人だもの・・・」
「そんなことはないだろう・・・」
山猫は魔王の母親のオルゴールを示す。
そこには・・・「真央・・・いつでも私はあなたの味方」と記されていた。
「お前は・・・一人じゃなかった・・・」
「・・・」
テレビ番組のニュースショーでは人気者のニュースキャスター・藤堂健一郎(北村有起哉)がゲストの悪徳都知事を追及していた。
「あなたが・・・詐欺師グループと関係していたという情報があります」
「なんだと」
山猫は・・・高杉直哉の経営する企業に侵入する。
セキュリティは完璧と語る直哉・・・。
しかし・・・魔王を味方につけた山猫は・・・関門をなんなく突破する。
だが・・・またしても・・・何者かが警察に通報していたのだった。
さくらは屋上に山猫を追いつめた。
しかし・・・それは囮として使われた勝村記者だった。
山猫は怪盗らしくヘリコプターで去って行くのだった・・・。
「あははははははは・・・」
路地裏のカフェ「STRAY CATS」に魔王がやってくる。
「お母さんの字・・・あんなに下手じゃなかった」
「・・・」
「でも・・・あんたの言葉が沁みたの・・・うれしかったの」
「結局、お前は誰かに構ってもらいたかったんだよな・・・」
山猫による女子高校生獲得作戦成功である。
いろいろと弱みを握られた勝村記者もチーム山猫に参入する。
そして・・・。
「警察に通報していたのは・・・お前だな」
窮地に立たされる裏切り者の細田・・・。
細田は港に連れ出される。
「山猫は・・・殺しはしないんだろう・・・」
「ビジネスではな・・・しかし・・・プライベートでは別だ」
響き渡る銃声・・・。
細田は帰らぬ人となるのだった。
あるいはイカ大王として海に帰って行ったのだ。
そして・・・悪徳都知事の政治家生命を絶ったニュースキャスター藤堂は都知事選に出馬を表明する。
藤堂に情報を流していたのはラクダではなくて・・・悪徳刑事関本だった。
悪に彩られ・・・大都会の闇は深い。
山猫は今日も犯罪を重ねる。
その心に・・・義は・・・あるのか・・・ないのか・・・まだ不明なのだ。
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エリ「お宝も盗むけど・・・女子高校生のハートも盗んでいく・・・怪盗山猫・・・さすがでス~・・・エリのハートも盗んで盗んで盗みまくってもらうのでス~。じいや~、次はハードに山猫に攫われてヘリコプターで連れ去られるごっこをお願いしまス~!」
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コメント
私はアリス派(?)だったんですが、お姉さんですら夢に出てきたしたことはなかったのに今作を観たら…。2016年の初夢として認定(笑)。
しかしいやー、こんな風に演技できるんですねー。このドラマを締まって見せてました。魔王っていうから無表情でぶっきらぼうな感じの鍵屋さんとか出てくるのかと思っていたらまぁ(゚∀゚)。
投稿: 幻灯機 | 2016年1月17日 (日) 08時49分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
アリス(21)、すず(17)ですので
すずはどんどんアリス化しておりますな。
末恐ろしい色香が漂いはじめているようです・・・。
お姉さんはゾンビとか妄想彼女になっていますが
妹は清純派路線・・・。
清らかであればあるほど脱いでもすごいことになるのでございます。
初夢万歳!
「学校のカイダン」に続いて
年上のお兄さんに説教される役柄。
今度は少しは言いかえして・・・大人の階段を
登って行くのですな。
浅田真央、井上真央に勝るとも劣らない高杉真央・・・。
ハッカーなので早くキーボードを
ぶったたく姿が見たいものです・・・。
投稿: キッド | 2016年1月17日 (日) 16時09分
じいやちゃま、こんばんは!
こちらのコメディもなかなか楽しめました!
オンチなのはそういう原作の縛りでもあるんでしょうか。
まあでもみんな笑ってましたから~。
山猫は義賊と呼ばれてましたが
本人は犯罪と自覚していて
いずれ手は後ろに回ると言ってましたよね。
それでいて絶対に逃げ切るとその顔は語ってましたけど(^^;
ラストはどんな風な着地なんでしょうか。
ベム風なんかでもいいような気がしています。
じいやちゃま、今日のおやつのカップラーメンは
トンコツ味にしますね~。
コーンをトッピングしてどうぞ~♪
投稿: エリ | 2016年1月17日 (日) 19時12分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
「セカンドラブ」で恋愛ドラマの金字塔をうちたてた二人が今季はコメディーにチャレンジでございますな。
こちらはロマンチック・コメディーという感じでございますね。
ラブ(恋愛)もロマン(理想)も面白おかしいものでございますからな。
原作の山猫は・・・「独特の鼻歌」を歌うので・・・こういう展開になったのだと思われます。
この脚本家は少し・・・狂騒的なところがあるので
まさに・・・ちょっとはずしているのですねえ。
役者にとってはなかなかチャレンジを
要求される作風と申せましょう。
セリフが「うるさい」と感じる人も多いタイプですぞ。
じいめは最近、慣れました。
犯罪者と反体制派の隙間に・・・
なんだかわからないがギリギリ許されるラインが
存在する・・・そういう一種の信仰の話でございます。
「正義」なんて嘘だけど
たまには嘘で癒されたい・・・そういう心情が基本です。
平成財閥カップヌードルは
すべて最高の素材を調理したものですが
エリお嬢様専用ヌードルは
原価百万円になっておりまする・・・。
カレー味がお奨めですぞ~。
まこ様専用は残飯スープでダシを
とっているのであまりお奨めできませぬ~!
投稿: キッドじいや | 2016年1月17日 (日) 21時12分