とくさま~(早見あかり)おはつ~(小池徹平)たまらんわ~(青木崇高)しょうがないな~(松尾スズキ)
万吉ではなくてのび太なのか・・・。
ちかえもんではなくてやはりドラえもんじゃねえか・・・。
まあ・・・「ドラえもん」があってこその「ちかえもん」だからな・・・。
通説では近松門左衛門が・・・「歌舞伎」から「人形浄瑠璃」に主軸を移すのは「歌舞伎界」のタレント制度に限界を感じたから・・・ということになっている。
そもそも・・・作者・近松・・・というこだわりが・・・一部愛好家からは「うざい」「近松出すぎ」という批判の対象になっていたわけである。
「あまちゃん」でクドカンが面白いと言うと、「あまちゃん」が可哀想という話だよな。
「歌舞伎俳優」が面白いんじゃなくて・・・「近松の作った話」が面白いんだ・・・と近松は言いたいのだった。
だから・・・人形浄瑠璃なんだよな。
人形だって面白いのは近松の話だからって話なんだよな。
でも・・・結局、竹本義太夫が面白いって話になるんだよな。
じゃ・・・もう、いっそアニメに・・・。
声優が素敵って話になるだけだろう。
結局、作者なんて・・・大衆にとってはどうでもいい存在なんだよなあ・・・。
で、『ちかえもん・第3回』(NHK総合20160128PM8~)脚本・藤本有紀、演出・梶原登城を見た。「出世景清」は貞享ニ年(1685年)の作品でこのドラマにおける現在・・・元禄十六年(1703年)より八年前に発表されている。何やら・・・世を拗ねた遊女のお初(早見あかり)がその一節を口にするのは・・・意味深である。「父は都の六波羅へとりことなりてあさましや・・・」と嘆くのは悪七兵衛景清の妻の一人、小野姫である。幕府に追われる景清をかくまった嫌疑で・・・小野姫の父・熱田大宮司は六波羅に囚われの身となってしまう。父の身を案じ、小野姫は京へと道行し、結局、自身も囚われて・・・拷問の憂き目に遭うのだった。
お初の父と・・・大坂で一二を争う豪商・平野屋の大旦那の忠右衛門(岸部一徳)の間には何やらよからぬ因縁があると妄想するのが王道だろう・・・それはさておき・・・。
不孝糖売りの万吉(青木崇高)は茶屋の「天満屋」でのつけの支払いのために居残りを続けている。
「朝粥」を注文したお客のために部屋へとお届けする万吉。
しかし・・・その部屋では・・・。
「粥を食べたら帰らな・・・」
「帰らんといて・・・」
「無理を言うたらあかん」
「帰ったらわてみたいなもんのこと・・・忘れてしまいますのやろ」
「そんなことあるかいな・・・わてはお茶屋遊びは飽きるほどしてますが・・・裏を返したのは・・・お前が最初や・・・」
「ほんまかしら・・・」
「まして・・・馴染みになったのは・・・お初だけやで」
「とくさま・・・うれしい」
「お初・・・」
同じ遊女と二度寝るのが裏を返すで・・・三度目からはお馴染みさんだす。
ストーブさんじゃなくて・・・徳兵衛(小池徹平)はゴルゴ13のようなことを言いつつ、お初と見つめ合う。
「とくさま」
「おはつ」
「とくさま」
「おはつ」
泣きながらちかえもんこと近松門左衛門(松尾スズキ)の家へ走り出す万吉だった。
万吉はお初にぞっこんなのである。
その頃、ちかえもんは「学生街の喫茶店/GARO」(1972年)の替え歌を歌いながら竹本座二月公演の客の入りを確かめていた。演目は「出世景清」(再演・なんどめだ)・・・。
君とよくこの小屋に来たものさ
わけもなくお茶を飲み話したよ
お客はんで賑やかなこの小屋の
片隅で聴いていた義太夫節
あの時の節は聴こえない
人の姿も変わったよ
時は流れた・・・
閑古鳥が鳴いているのであった。
座主の竹本義太夫(北村有起哉)からちくりちくりと責められるちかえもん・・・。
「トミーも・・・いや、金主の平野屋さんも泣いてるで・・・」
「そやけど・・・書けんもんは書けんもん・・・第一、ネタ切れや・・・」
「ネタかいな・・」
その日は・・・元禄十六年二月四日・・・。赤穂事件の高家旗本の吉良上野介殺害犯が切腹した日である。
電光石火の早さで即日、大阪の街にも号外が・・・。
時空を越えたことに驚かない世界観で進行してます。
天啓に導かれる二人・・・。
「ネタや・・・」
「なんで気付かなかったんや・・・」
「大ネタや・・・」
「こらあかん・・・急がんと・・・」
サルでもわかる赤穂事件・・・サルはわからんと思うぞ。
元禄十四年(1701年)三月十四日、江戸城松之大廊下で浅野内匠頭が吉良上野介に刃傷沙汰に及ぶ。
即日、浅野内匠頭が切腹。
辞世「風さそふ 花よりもなほ 我はまた 春の名残を イカ煮とやせん」
三月二十三日、吉良上野介、お役御免となる。
四月十八日、赤穂城の明け渡し。
元禄十五年(1702年)十二月十四日、大石以下四十七士、吉良上野介を殺害。
元禄十六年(1703年)二月四日、大石内蔵助他四十六士、切腹。
辞世「あら楽し 思ひは晴るる 身は捨つる 浮世の月に かかる雲なし」
なお・・・寺坂吉右衛門のみは消息不明である。
「母上・・・邪魔をしないでいただきたい」
「心配よ・・・お前が頑張ろうとすると・・・ろくなことがないから・・・」
「母上・・・」
何故か・・・ちかえもんに冷たい母の喜里(富司純子)だった。
おそらくフォーク派ではなく演歌派(主に五木ひろし)なのであろう。
そこへ・・・恋に破れた万吉が乱入する。
徳兵衛のダークサイドのB.G.M.は「ウルトラQ」っぽいが、しおれた万吉のポーズはガラモンだかピグモンだかのスタイルっぽい・・・。
「ちかえもん・・・なんとかしてよ・・・」
「のび太かっ」
ちかえもんは相手が悪いと諭す。
「徳兵衛は・・・大阪一の商人の跡取り息子や・・・つまり、日本一の金持ちの遺産相続人だ・・・お前とでは勝負にならない」
「そんなのわかんない」
「とにかく・・・平野屋を見といで」
「一人じゃやだよ」
「しょうがないなあ」
「ついでにお醤油買ってきて」
ママにおつかいを頼まれるちかえもんである。
平野屋は醤油の商いから始め、一代で巨万の富を得たらしい・・・つまり、相当、悪いことをしているということです。
平野屋見学中の万吉とちかえもん・・・そこへ徳兵衛が帰ってくる。
考案されたての「剣鍔文様付き円型きんつば」を買って来た徳兵衛は店先で一人で味わう。
唾を飲み込む小僧たち・・・。
「うらやましいか・・・しかし・・・やらん・・・怨むなら親を恨め・・・俺のように平野屋の跡取り息子に生まれつかなかった身を呪え」
「にくたらしい・・・」とちかえもん・・・。
「あんな・・・筋金入りの親不孝者がおったとは・・・不孝糖売りとして・・・不明を恥じる」と感服する万吉。
「そこに感じ入るのかいっ」
その頃・・・「天満屋」には油問屋の黒田屋九平次(山崎銀之丞)が酒席の相談に現れる。
「器量よしの遊女」という指定を受け・・・女将のお玉(高岡早紀)はお初を訪ねる。
「お初・・・」
「女将さん・・・なんぞ御用ですやろか」
「お前も大分・・・愛想が身についてきたね・・・徳兵衛さんのおかげかい」
「・・・」
「今度は大事なお座敷だ・・・しくじるんじゃないよ」
「・・・」
「黒田屋様が・・・平野屋様を接待なさるんだ」
「平野屋様・・・」
「徳兵衛さんのお父上だよ・・・」
「・・・へえ」
お玉が去ると・・・遠くを見る目でお初は口ずさむ・・・。
「父は・・・都の六波羅へ・・・擒となりて・・・あさましや・・・うきめにあわせ給うとの・・・そのおとづれをききしより・・・・」
お初の心に去来するものは・・・果たして・・・。
「赤穂浪士・・・討ち入り・・・切腹・・・忠義・・・天晴・・・」
ネタを得たちかえもんだが・・・筆は進まない。
ショーケンがマザコン綱吉を演じた「元禄繚乱」風・・・討ち入りの場。
「おのおの方・・・いざ・・・討ち入りじゃ」
「お待ちを・・・草鞋のひもが切れました」
「・・・いざ・・・討ち入りじゃ」
「お待ちを・・・行燈の灯を消したかどうか・・・気になって」
「いざ・・・討ち入りじゃ」
「お待ちを・・・ここ、本当に吉良の屋敷ですか」
「・・・」
「討ち入れない!」
何故か・・・討ち入りに踏み切れないちかえもんだった。
「討ち入れよ・・・」と竹本義太夫・・・。
「気分がのらんものはのらん・・・」
例によって・・・お袖に愚痴るちかえもん。
「しょうもない・・・」
「お袖・・・↘」
「将軍様でも描けぬ世界を描くのが・・・近松様のお力・・・」
「お袖・・・↗」
お袖に転がされるちかえもんだった。
その頃・・・万吉と対峙した・・・徳兵衛は・・・不孝糖の商いで・・・父親譲りの商魂を見せる。
色の道に通じた徳兵衛にかかれば・・・女子供は釣り放題なのであった。
「わては・・・親不孝と言われても・・・手に入れたいものがあるのや・・・」
「不孝糖・・・お売りくださいませ」
飛ぶように売れる不孝糖なのである。
おやおやおやおや、不孝糖、親を泣かせてやろうとて拵え創めの不孝糖
浪速の街に徳兵衛と万吉のデュエットが鳴り響く・・・。
新コンビ結成なのか・・・。
一方・・・忠右衛門をもてなす黒田屋・・・。
「ぜひ・・・新しい商いに平野屋さんのお力添えをお願いしたい・・・」
「黒田屋さん、何を商うおつもりか・・・」
「輸入雑貨の店をやりたいと思うてます」
「それは・・・幕府ご禁制の品・・・」
「しかし・・・平野屋さんなら・・・」
「それで・・・わてがあんたに力を貸すとどんな利がありますのや・・・」
「・・・」
二人のやりとりを「ブレードランナー」のレプリカント・レイチェルのような瞳で見つめるお初・・・。
もてなしを終えた黒田屋はお初に漏らす・・・。
「さすがやなあ・・・こちらが弱みを握っている風に脅せば・・・譲らずに脅してくる・・・」
「平野屋さんに・・・弱みが・・・」と探るお初・・・。
「ふふふ・・・」
「ご禁制の品とはなんだすか」
「女はそないなこと知らんでええ」
「・・・」
結局、煮詰まるちかえもん。
「赤穂浪士・・・討ち入り・・・切腹・・・忠義・・・天晴・・・」
ちかえもんのコンセプト・メモを覗いた袖は言う。
「切腹して・・・なんで忠義なんやろか・・・死んだ殿様に義理だてしても・・・どないにもならんやろ・・・わてに言わしたら・・・四十七士なんて親不孝もんの集まりや」
「ええええええ」
根底を覆されたちかえもんは思わず尿意を催す。
厠へ向かうちかえもんは番頭の喜助(徳井優)を連れた忠右衛門にバッタリ。
「ええええええ」
そこへ・・・浮かれた徳兵衛と万吉がバッタリ。
「ええええええ」
一同は何故か・・・お袖の部屋へ。
「徳兵衛、平野屋家訓・・・ひとつ節約奨励、ふたつ放蕩厳禁、みっつ・・・なんや」
「忠孝万歳」
「その平野屋の息子が・・・人様に不孝糖を売るとは・・・この恥さらしが」
「・・・」
「喜助・・・江戸の寿屋に文を出せ・・・徳兵衛は修行に出す」
「大旦那・・・」と喜助。
「他人の家で辛抱ちゅうもんを勉強せい・・・」
「そんなことではどもならん・・・」と万吉。
「おい・・・」と息を飲むちかえもん・・・。
「このあほぼんは筋金入りや・・・けどな・・・不孝糖なんてもんを・・・売りきるお人をはじめてみたわい・・・さすが商人りせがれや・・・おそれいった」
「そんなもの売ったところで・・・ほめるわけにはいきません」
その時・・・ちかえもんは・・・魔性のものに憑依されるのだった。
「ほめといてあげなはれ・・・叱られてばかりではせつない・・・そうや・・・忠義・・・忠義て・・・息苦しいんや・・・武士なら切腹するのが当たり前・・・子供は親に孝行するのが当たり前・・・平野屋の息子は平野屋の息子として立派でなければならん・・・そんなの誰かてわかってる・・・そやかて・・・誰が好んで家族ほったらかして討ち入りせにゃあかんのや・・・平野屋の息子は苦しい・・・赤穂浪士も苦しい・・・人間だもの」
「やめい・・・なんでわてが・・・ものかき風情に・・・かばわれんとあかんのかいな」
徳兵衛は懐からきんつばを取り出す。
「今日はわてが自分で稼いだ金で・・・丁稚たちに土産買うたった・・・ご馳走してやろうてな」
「若旦那・・・」と喜助。
「もうええ・・・徳兵衛・・・明日から喜助について精進せい・・・平野屋の跡取りとして・・・一から修行や・・・手代からやりなおしなさい・・・」
「大旦那・・・」と喜助。
お袖は「なんとなくいい話」にうっとりするのだった。
しかし・・・その話を・・・黒田屋とお初は・・・立ち聞きしていたのだった・・・。
それほどやりたくなかった赤穂浪士たちの討ち入り。
豪商の跡取りとして生まれついた徳兵衛のせつなさ。
そして・・・プライドが高すぎて筆がすすまないちかえもん・・・。
つかの間・・・見えた光明に・・・たちまち・・・闇が迫りだすのだった・・・。
「おはつ・・・」
「とくさま~ん」
「いや~ん」
「・・・ふりだしか」
うっとりだね・・・もう、うっとりするしかないね。
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