ルパン三世(小栗旬)最初に言ったはずだぜ(玉山鉄二)拙者(綾野剛)ごめんね(黒木メイサ)
一月の谷間である。
年末年始・・・様々な映画が放映されたわけだが・・・よりによってこれかよっ。
なんていうか・・・色々なことを思い出すんだな。
特に・・・ダメ出しの記憶が蘇る。
放送作家の頃・・・演出家に台本のダメ出しをされて辛かったこととかか。
まあ・・・ダメな演出家にダメ出しされた時は速攻で帰宅したけどな。
優秀な演出家に高水準の仕上がりを求められた時にはなんとか期待に応えようと歯をくいしばったこともあるよな。
だからといって出来がよくなるとは限らないわけだが。
渡米して某巨大テーマパークのコンテンツに関わった時は・・・その求められる要求の高さに眩暈を感じたりもしたな。
「スターウォーズ」のメイキングの中で上司にダメ出しされる特撮クリエーターのような気分だよな。
そういう意味で・・・この映画の脚本家は・・・プロデューサーである。
絶対、ダメだよな・・・人間、自分に一番ダメ出ししないからな。
で、『ルパン三世(2014年劇場公開作品)』(TBSテレビ20160111PM9~)原作・モンキー・パンチ、脚本・水島力也、演出・北村龍平を見た。「ルパン三世 念力珍作戦」(1974年)以来の実写版である。とにかく・・・ルパン三世(小栗旬)、次元大介(玉山鉄二)、石川五ェ門(綾野剛)、峰不二子(黒木メイサ)の三次元化のクォリテイーの高さは申し分ない。銭形警部(浅野忠信)に関してはヤング版であるとしても・・・身長がもの足りない気がする。存在感としては五ェ門が抜群だ。人それぞれにリアルについての定見があるわけだが・・・実はこの五ェ門の和装が・・・実写化に対して問題があると考えたら・・・コスチューム・プレイなんてやらない方がいいのである。
「こういうもんなんだ」という強引な演出でいいと思うよ。
で・・・舞台は・・・タイ・香港・フィリピン・シンガポールと・・・アジアを股にかけるわけである。
「ご苦労様でした」と言う他はないんだなあ・・・。
「ルパン三世」がこの世に出たのは・・・原作の魅力が第一だが・・・アニメ化されたテレビの第一シリーズの「面白さ」によるところも大きいだろう。まさに・・・画期的だったように考える。
そして・・・名作「ルパン三世 カリオストロの城」も忘れられない。
そういう・・・研ぎ澄まされた面白さは・・・原作者にとって不本意という側面もある。
なにしろ・・・オリジナルより面白いのは・・・面白くないわけだ。
だから・・・原作者が「可」とする面白さは・・・まず面白くないんだなあ。
アクション映画が本領の演出家であるために・・・アクション・シーンはそれなりに面白い。
しかし・・・それも「ルパン」のアクションとしては「これじゃない感」は否めない。
たとえば・・・「五ェ門」の斬鉄剣の「間」は・・・綾野剛が抜群の「五ェ門」を演じているのに・・・しびれるところまで・・・あと何歩か足りないのだ。
シナリオが抜群にダメなのは・・・ルパン側に余計な登場人物を介入させていることである。
誰だかわからないハッカーに「おまかせ」のルパンなんて・・・ダメだろう。
ルパンが「PC」に詳しくないという先入観が邪魔なのだ。
「あの頃・・・俺は若かった」というルパンは「カリオストロの城」ですでに確立された手法でもある。
そういう意味で・・・ルパンと不二子・・・そしてマイケル・リー(ジェリー・イェン)にもう少し絞れば・・・「ルパン」のエピソードとしてもう少し精度があがったと思われる。
「犯罪シンジケート」の一員だったルパン。
ルパン二世の親友だった老いた泥棒紳士の手下となっていたルパン。
泥棒仲間でライバルでもあるマイケルは・・・実は泥棒紳士を仇として狙っている。
「クリムゾンハート・オブ・クレオパトラ」という「お宝」をめぐって絡み合う泥棒紳士とマイケルの父と・・・第三の男・・・。
「峰不二子」という「お宝」をめぐって対峙するルパンとマイケル・・・。
これが基本線である。
ここから・・・ツイストして・・・マイケルは・・・第三の男に踊らされていること。
不二子とマイケルの関係に嫉妬するルパン。
しかし・・・マイケルと不二子は兄妹だったという・・・ルークとレイアとハンソロみたいなこと。
だが・・・それは・・・マイケルを利用するための不二子の嘘だったこと。
第三の男との対決でマイケルはルパンに命を捧げる。
ルパンはすべてを見抜くが・・・「クリムゾンハート・オブ・クレオパトラ」を手にするのは不二子というお約束。
この主題にそって・・・もう少しシナリオを練り直せば・・・もっと素晴らしい作品になったと考える。
少なくとも・・・マイケルの妹になりきる不二子や・・・ルパンにそれとなく萌えるマイケルの描写は不可欠だろう・・・。
まあ・・・とにかく・・・誰もが「やめておけばいいのに」と思うことを「やった」ことだけは評価したいのでございます。
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