くろかみのみだれたるよぞはてしなきおもいにきゆるつゆのたまのお(堺雅人)小山田信茂、お前もか(平岳大)
「大将が馬鹿だから・・・戦ができない」
皆が口を揃えて言うのは・・・後ろめたいからである。
少なくとも・・・異母弟の仁科盛信は武田勝頼のために信州高遠城で織田信忠の降伏勧告を拒絶した。
土屋昌恒は勝頼の自害の時を稼ぐために片手で千人斬った後に討ち死にする。
織田方の戦死者はおよそ千人なのでほぼ土屋昌恒が一人で殺戮したのである。
そして・・・北条氏康の六女である勝頼の継室・北条夫人は数え十九歳の若さで勝頼に殉じて散るのだった。
織田軍団の容赦ない殲滅戦の果て・・・武田家の興亡の幕を引いた勝頼は儚くも美しい生涯を天目山の麓で終えた。
それにしても・・・二回目も長澤まさみ抜きかよっ。
この年になって・・・予告篇で謀られるとは・・・。
で、『真田丸・第2回』(NHK総合20160117PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は早くも二枚目の戦闘モードの真田昌幸、そして主人公の堅実な兄・真田信幸の二大イラスト描き下ろし大公開でお得でございます。画伯・・・快調なスタートですな。しかし、あくまでマイペースでお願いいたします。相変わらず流血自粛の戦闘シーンですが・・・確実に命を断っている感じの殺陣がそそりますなあ・・・。すぐそこに「死」があるからこその・・・戦国の人々の魂の躍動が感じられる・・・。戦国絵巻はこうでなくちや・・・わざわざ・・・四世紀も前に時間旅行する意味がありませんものねえ。そして・・・そこに生きる人々の切羽詰まった駆け引きの醍醐味・・・。そんな時代でも・・・呆ける人は呆ける。悩んで悩み抜いて・・・すべてを天運にまかせようとして・・・結局、また悩む。そして・・・やる時はやる。なにしろ・・・一族郎党の命運がかかっているわけですから・・・。存在価値がなければうかつに裏切ることもできない。けれど・・・たとえば両親・妻子を犠牲にしても裏切る時は裏切る。ただ生き残ることが目標の世界・・・。ああ・・・素敵だ。オープニングだけでも繰り返し楽しめるなんて・・・。凄い、凄いぞ、真田丸・・・。不埒な小山田信茂に献杯!
天正十年(1582年)二月、妹・真理姫の夫である木曽義昌の裏切りに激怒した武田勝頼は信濃に出兵、しかし、雪深い木曽山中の進軍は遅延し、織田方の増援を受けた義昌は逆襲に転じる。十一日~十四日にかけて、浅間山が噴火すると迷信深い雑兵が逃げ出し、戦況不利を悟った勝頼は撤退を開始する。織田・徳川連合軍は信濃、駿河の武田領に侵攻を開始する。すでに勝頼の従妹(武田逍遙軒信廉の娘)を妻とする小笠原信嶺、勝頼の姉婿である穴山梅雪にも調略の手は伸びており、武田軍は戦う前に崩壊していた。東から織田軍、南から徳川軍が迫る中、諏訪に撤退した勝頼は退路の選択を迫られる。武田の本領である甲斐に退くか、真田一族の守る上州に退くか・・・。勝頼は甲斐・新府城に退いた。三月、織田・徳川に味方した武田勢に加え、北条勢が甲斐に侵攻を開始。三日、篭城することを断念した勝頼は新府城を放棄して、岩殿城を目指す。しかし、岩殿城主・小山田信茂は勝頼の入城を拒絶。一族と僅かな郎党とともに甲斐の山中を彷徨った勝頼はついに天目山で自害する。主家を失った真田一族は困惑した。
真田昌幸の父・・・真田幸隆が武田信玄に臣従して以来・・・真田一族は・・・信州小県の松尾城を拠点に妙義山の北東・・・榛名山から西の浅間山にかけての北側ルートを使い東の上州吾妻に勢力を伸ばす。海野一族の支配する鎌原城、羽尾城を併合し、吾妻に岩櫃城を構築する。さらに東へ進んだ真田一族は上州沼田を勢力下に置くことに成功した。
武田崩壊の天正十年、すでに信州松尾城から上州沼田まで・・・岩櫃城を中心とする真田一族の領土は左右に翼を広げた形を整えていた。
真田道と呼ばれる渓谷沿いに広がる真田の領土は山賊の要害として鉄壁だった。
「勝頼様を迎えれば・・・ある程度の駆け引きができる」
真田昌幸には勝算があった。
しかし・・・忍びのものの報告を受け・・・武田家復興作戦は瓦解した。
「そうか・・・勝頼様は・・・来ぬか」
岩殿城本丸には忍びの部屋がある。
今、そこにいるのは昌幸と長男で真田忍びの頭領である真田源太郎幸村だけになった。
「新府城の人質はどうなった・・・」
「信幸と信繫が手筈通りに脱出しました・・・山手の母上以外は人質全員が忍びのものなれば・・・まもなく松尾城に到着する頃合いでしょう」
「松尾城周辺の結界はそのままにしておけ・・・織田の忍びは泳がせろ・・・」
「矢沢の叔父上には・・・織田の滝川一益より・・・盛んに誘いが届いております」
「滝川は・・・伊賀の忍びのあがりだ・・・真田の忍びの恐ろしさは知っているだろう」
「それゆえ・・・うかつには手を出しますまい」
「沼田城の周囲はどうだ」
「北条方の主力は伊豆方面に回り、目立った動きはありませぬ・・・」
「氏政殿は・・・うかつだのう・・・甲斐の山中に攻め入ったところで・・・得るものなどないだろうに・・・」
「甲斐が滅びれば上州は自然にわが手に納まると思っておいでなのでしょう・・・」
「・・・たわけか・・・」
「で・・・いかがなさいますか・・・」
「上杉はどうした・・・」
「織田勢と一進一退の攻防中の模様ですが・・・間もなく越中魚津城に織田が攻め入るでしょう・・・武田勢と同様・・・滅びるか・・・よきところで和睦するか・・・というところでしょうか」
「では・・・北条には同盟の申し入れをしつつ・・・織田の杯をもらうとするか・・・」
「信長公はのるでしょうか・・・」
「のるだろう・・・真田しのびの暗殺上手は・・・骨身にしみておられるはずだ・・・」
「なるほど・・・初音様がおられましたな・・・」
「さてさて・・・上杉、織田、徳川、北条に四方を囲まれて・・・しびれるほどの戦三昧も悪くないのだがのう・・・」
「父上・・・」
甲斐と信濃の国境を越えて信幸と信繫の兄弟は・・・背中に負うた二人の女を地に下ろした。
信幸は生母で・・・京に住む宇多頼忠の娘・山手殿を・・・。
信繫は祖母で・・・真田幸隆の未亡人である恭雲院を背負っていた。
恭雲院はくのいちだったが・・・老体である。
「母上・・・ここから軽井沢の追分まではお歩きいただきます」
「うん・・・ずっとお前の背中の上では肩が凝るからの・・・」
「ほほほ・・・山手殿は相変わらずの姫御前じゃのう」
恭雲院はくのいちとしての膂力の名残を見せて信繫から飛び降りる。
「おばば様・・・無理は禁物ですぞ」
「ほほほ・・・孫に叱られたわ・・・」
恭雲院は笑いながら、手裏剣を放った・・・。
四人が道に出た反対側の林から・・・苦悶の声があがる。
樹上から・・・百姓姿の忍びが落下する。
毒手裏剣を喉元に受けた忍びはすでに絶命していた。
「・・・織田の斥候か・・・」
「おはば様・・・無益な殺生は後生にさわりますぞ・・・」
「ほほほ・・・また・・・孫に叱られたわ・・・じゃが・・・これは勝頼様の仇打ちじゃ」
「・・・」
四人は夕暮れの山道を歩きだす。
「追分の宿で・・・団子汁でも食べようぞ・・・」
山手殿がつぶやいた・・・。
真田一族に風雲が迫っていた。
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