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2016年1月19日 (火)

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう(有村架純)葡萄の花は葡萄の味がするよ(満島ひかり)

ついに・・・この日が来たよ・・・。

月9で有村架純が主演だよ・・・。

ハガネの女」で「人生に勝ち組も負け組もない・・・あるのは今が幸せかどうか・・・それだけです」と叫んだ女子高校生が・・・。

SPEC」シリーズでゴリさんの愛人だの、「クローバー」でなんちゃって高校生だの、「ぼくの夏休み」で処女を売春相手の米兵に捧げるヒロインだの、「お助け屋☆陣八」のかすみちゃんだの・・・「あまちゃん」では残留思念なので最終回の紅白歌合戦で出られないだの・・・「スターマン」ではキスの相手がおっさん(國村隼)だの・・・もうかなりスターになったのに「MOZU」では拷問で殺されるだけの役だの・・・主人公の教え子役だの、妹役だの・・・艱難辛苦を乗り越えてココである。

長い・・・長い旅をしてきたんだねえ。

さあ・・・今・・・銀河の向こうへ・・・飛んで行ってもいいんだよ・・・。

で、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう・第1回』(フジテレビ20160118PM9~)脚本・坂元裕二、演出・並木道子を見た。とにかく・・・「スマスマ」の前でよかったよ・・・「スマスマ」に関連する異常な熱気が・・・お茶の間的に名作ドラマを揺らがせたことは間違いないものな・・・。ついでに言うとタイトル前に本放送開始の60秒前から・・・キリンさん(巨大ガントリークレーン)が遠くに見える港で・・・主人公の杉原音(有村架純)が相手役の曽田練(高良健吾)や仲間たちを待ちながら空を見上げるイメージショットのサービスがある。いわばオンエア視聴のお誘いというわけだが・・・基本的に阿漕な真似だ。そういうことは一部お茶の間に不興を買うとなぜ・・・わからんのだ。

幼くして孤児となった杉原音(平澤宏々路)を迎えに義理の伯父である林田雅彦(柄本明)がやってくる。

「よろしくお願い申し上げます。・・・杉原音と申します」

しかし・・・雅彦は首をふる。

「あんたは・・・今日から林田音だ」

音は車に乗せられ旅に出る。

長い旅だ・・・。

車の中で音は母親の遺骨の入った骨壷にカラフルな花模様を描く。

「ふどうの花はふどうの味がするって本当やろか・・・お母ちゃんが言うてたんやけど」

「関西弁は直しなさい」

すでに・・・音の過酷な生活を暗示する・・・男の味気なさ・・・。

たどり着いたのは一面の銀世界・・・。

音は無邪気に我を忘れる。

「白いな・・・まっしろや・・・なんなのこれ・・・なんなのこれ・・・」

そして・・・時は流れた。

この流れる時の惨さに・・・すでに涙がこぼれるわけである。

2009年の秋・・・東京・・・。

「柿谷運送」のトラック運転手である曽田練(高良健吾)が住む安アパートの一室。

部屋には不似合いなリッチな下着姿の女・日向木穂子(高畑充希)が朝の名残を惜しむ。

「れん・・・もう一回ね」

「きほこ・・・うん」

木穂子は練に甘えながら、スーツに着替え、出勤していくのだ。

あきらかに・・・経済的に不釣り合いな二人・・・。

そこへ・・・あまり・・・まともな人間とは思えない・・・中條晴太(坂口健太郎)が転がりこんでくる。

「お前・・・どこへ行ってた」

「北海道」

晴太は気ままな男で・・・お土産は「まりも羊羹」だった。

「お前・・・俺の金を盗っていっただろう」

「友達じゃないか」

「・・・」

晴太は見慣れぬバックを発見する・・・。

「これ・・・」

「ああ・・・帰るお金なくなっちゃったから・・・もらった・・・でも二千円しか入ってなかった」

「完全に泥棒じゃないか」

「まあ・・・いいじゃないか・・・」

練は言葉に詰まる。

バッグを改めると「古い手紙」があった。

その手紙を読んだ練の顔色は変わる・・・。

バッグの中からはクリーニング店のポイントカードが出て来た。

「林田・・・音・・・」

柿谷運送には金髪の上司・佐引(高橋一生)がいて・・・油断ならないのだが・・・女社長の神谷嘉美(松田美由紀)はさらに怪しい。

練の給与は・・・「積立」という名目で「天引」されているのである。

社長命令で桃の缶詰をトラックに満載した練・・・。

しかし・・・どうしても・・・「手紙」の事が気になり・・・練は旅立つのである。

おそらく仙台発苫小牧行フェリーにのって・・・たどり着く北海道八羽根町(フィクション)・・・。

クリーニング店には・・・音が忙しく働いている。

「こちらで・・・林田音さんのこと・・・わかりませんか」

一瞬で・・・盗まれたカバンとの関連を悟る音・・・。

「音さんは・・・死にました・・・大切なカバンを盗まれて・・・」

曇る・・・練の表情・・・。

練は・・・「正直者」で「騙されやすい」らしい。

「お墓はどこですか」

店を出た練を音は追う。

「あなた・・・なんですか」

「僕は・・・これを・・・音さんに返したくて・・・」

「二千六十円・・・」

「え」

「返してください・・・私が音です」

「・・・お墓は・・・」

「警察に行きますか」

「僕が盗んだのではありません」

しかし・・・盗んだのが「友達」なので支払いをする・・・練。

「それから・・・これを・・・」

練は「手紙」を差し出す。

「読んだんですか・・・」

「だから・・・絶対に返さないといけないと思ったんです」

「いりません・・・捨ててください」

「え」

「大切だけど・・・今の私には重いのです」

仕方なく・・・引き下がる練。

しかし・・・すでに・・・何か・・・超越的な力が働き始めている。

「お年玉返すからお母ちゃん返して」という少女の願いを路傍の花の神は聞き届けていたのだ。

トラックのエンジンは突然不調になった。

練はスーパーナチュラルなパワーで足止めを食らったのである。

練は・・・トラックの修理に一日かかることを知り・・・食堂で焼きそばを食べる。

そこで・・・プライバシーの存在しない田舎の街の恐ろしさを知る。

「あんた・・・音ちゃんといちゃついとったべ」

「いちゃついてなんて・・・」

「やめといた方がいいよ・・・音ちゃんには・・・白井さんという・・・相手がいるのさ」

白井篤史(安田顕)は街の名士で音を見染め・・・養父の雅彦が独断で縁談をまとめたらしい。

音の養母は寝たきりになった知恵(大谷直子)で・・・音がクリーニング店で働きながら介護している。

養子の音は・・・高校を卒業した後・・・親の決めた年の離れた男と結婚することを・・・承知したのだと言う。

音は生母の骨壷を大切に弔い・・・養母が「無縁塚に埋葬」を勧めても強情に拒んでいるが・・・育ててもらった義理には勝てないらしい。

そういうすべてを・・・知った練だった。

そういう現実を受け入れられない練は・・・音の亡き母の霊に導かれ再会を果たす。

「親の決めた結婚でいいのかい」

「焼きそば食べたのね」

「・・・」

「飴ちゃん・・・食べ・・・」

音は封印している「関西のおばはん」の魂を解き放つ。

「・・・」

いちごみるくの飴を食べる練。

「どっからきたん」

「東京」

「東京では恋愛結婚やらするかもしれんけど・・・北海道では親の決めた縁談が普通なんよ・・・」

「そんな・・・」

「東京じゃ・・・一駅歩くってほんま」

「本当さ・・・三駅くらい歩いたことがある」

「嘘・・・そんなの選手じゃない」

「せんしゅ・・・」

「競技じゃない・・・」

「きょうぎ・・・」

「ついといで・・・」

音は・・・練を秘密の場所へ誘う。

音は心に秘めた思いを持っていた。

「ここな・・・ダムができる予定やったんよ・・・でも・・・いろいろあって・・・建設中止になったんよ・・・残念やったわ・・・サイレンがなって・・・街が湖に沈んでしまえばいいのにって・・・何遍も思うたんよ」

「・・・」

「でも・・・街はこの通り・・・うちはここで生きて行くしかないんだべ」

杉原音タイムは終わり、林田音を偽装する・・・北海道の虜囚。

練は音の哀しい決意に言葉を失う。

しかし・・・音の心は揺らいでいた。

クリーニング店の客に母子家庭の親子がいた。

洗濯ものを届けに来た音は窮状を見かねる。

そして呼び出された白井に親子のための借金を申し込む。

音にウェディングドレスをお披露目することが目的の白井は冷淡な態度をとる。

「貧乏人が無計画に子供作るから・・・いけないんだよ」

音の気持ちは沈む・・・。

暗い・・・林田家・・・。

「となりの家・・・生意気にもハワイに行ったんだと・・・。なあ、音、白井さんに頼んで・・・ハワイに連れてってもらえんか」

「おじさん・・・私はおじさんとおばさんに育ててもらったこと・・・感謝しています。御恩は一生かけて返すつもりです。だけど・・・好きじゃない人と結婚するのだけは許してもらえませんか」

「けっ・・・恩を仇で返すのかよ」

「・・・」

その時・・・亡き母の霊は・・・おそらく姉である知恵の病身に鞭打つ。

発作を起こす知恵・・・。

雅彦と音は動顛する。

助けを呼ぶために表に走り出た音。

そこへ・・・修理を終えた練のトラックが通りかかる。

これは偶然とか・・・運命ではなく・・・亡き母の亡霊の導きだ。

これはあくまでスーパーナチュラル・ラブ・ロマンスの隠避な手法なのである。

音のトラックで病院に運ばれた知恵は命をとりとめる。

知恵もまた因習に縛られた女である。

その女の愛は・・・生母の足跡を消す哀しい養母の苦難を伴ってはいたけれど・・・音を育て・・・音を呪縛していたのである。

お世話になった御礼を練に言いに来た音。

「何を積んでるの・・・」

「桃の缶詰」

「桃の花は・・・桃の味がするのよ」

「え」

「こんなに・・・桃缶持ってる人初めて見た」

「家まで送るよ」

「行きたいところがあるの・・・」

「どこ」

「ファミレス」

トラックに同乗する二人を・・・白井が見ていた。

音は生まれてから一度も・・・ファミレスに行ったことがなかった。

二品を注文して音はウエイトレスに言う。

「二人で分けて食べるんです・・・」

二人はお互いの恋愛について話す。

「彼女はいるの」

「会社員」

「ハイヒールはいてるの」

「うん」

「私だっておしゃれするよ」

音は白いマフラーを自慢する。

「それはおしゃれじゃなくて・・・寒さしのぎだろう」

「そんなこと言ったら服なんてみんな寒さしのぎでしょ」

「じゃ・・・羊が一番おしゃれってことになるね」

「私だって・・・好きな人いたんやで・・・」

「へえ・・・」

「中三から高三まで保利くんと付き合っとった」

「保利くんは・・・」

「札幌の大学に行っとる・・・」

渦巻く音の記憶。

保利くんは・・・一緒に進学しようと音を誘った。

しかし・・・音には経済的にそんな選択肢はなかった。

結局、練は音を家まで送った。

家からは・・・白井が血相を変えて出てくる。

「あんたの親父・・・娘にはトイレを素手で掃除させてるなんて・・・言ってたが・・・股の方のしつけがなってなかったな・・・」

静まりかえった林田の家。

「おじさん・・・」

トイレから転がり出る空の骨壷。

残酷な水洗トイレの洗浄音。

白井に破談を言い渡され、激怒した養父は・・・音の母親の遺骨を下水に捨て去ったのである。

「いや・・・いやだ」

「新しい縁談をすぐに見つけてやるぞ」

「いいです・・・もういいです」

突然、養母が躍り出る。

「お逃げ・・・」

「・・・」

「こんな家・・・地獄だよ・・・ここから・・・お逃げ」

「こら・・・何を言ってる」

養母に背を押されて飛び出す音。

「お逃げ」

「わしらを見捨てるのか」

知恵は夫に縋りついた。

雨が降っていた。

亡き母の亡霊は土砂崩れを起こす。

迂回するために引き返す練のトラック・・・。

雨の中・・・音は練に拾われる。

「乗れ・・・」

「・・・」

「俺には分かる・・・俺も親がいないから・・・」

亡き母の亡霊は・・・ダッシュボードから手紙を吐き出す。

音は何度も何度も読んだ亡き母の手紙を開く。

お母さんは・・・もうすぐいなくなります。

看護婦さんに頼んで書くものを用意してもらいました。

ごめんね・・・あなたを父親のいない子にしてしまって・・・。

でも・・・あなたは・・・私の生きがいでした。

あなたはいつもいろいろなことをききましたね・・・。

答えるのは大変でした。

どうしてさびしくなるのか・・・あなたはききましたね。

これから・・・あなたはたくさんの人と出会うでしょう。

誰かと出会うことは素晴らしいことです。

そのために・・・さびしい気持ちはあるのだと思います。

あなたが・・・いつか・・・恋をして・・・。

幸せになるために・・・さびしい気持ちは大切なのです。

葡萄の花は葡萄の味がします。

バナナの花はバナナの味がしますよ。

あなたの幸せをお母さんは・・・いつも・・・祈っています。

「まあ・・・バナナの花はバナナの花の味がすると思うけどね」

「・・・」

トラックは二人を乗せて走る。

音は北海道の雪景色を見た時のようなときめきを感じる。

初めての東京タワー。

初めての東京のざわめき・・・。

東京で働いている友人を尋ねる音。

「しばらく・・・居候させてもらえないか・・・聞いてみる・・・ちょっと待っててね」

練は手土産として桃缶を渡す。

微笑む二人。

音が去ると・・・第三の女・・・市村小夏(森川葵)が現れる。

小夏は練に抱きつくのだった。

音が戻ってくると・・・練はトラックと共に消えていた。

「え・・・」

しかし・・・音はなんとか・・・東京で暮らし始めた。

一年の月日が過ぎた。

2011年1月・・・。

ガソリンスタンドで働く音は・・・練との再会を祈る。

もちろん・・・音は練に恋をしているのである。

ファミレスで二人で分けて食べたいのである。

そこへ・・・高級車に乗った井吹朝陽(西島隆弘)がやってくる。

そして・・・東日本大震災は・・・二ヶ月後に迫っている・・・。

これはもう・・・一種の集大成のような作品で・・・絶対に名作になるな。

亡き母の祈りは娘を必ず幸福へと導くだろう。

東京には・・・音が育てた花を勝手に捨ててしまう男たちはいない。

少なくとも・・・今のところは・・・。

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コメント

こんにちは。
あかん、あかんでー、これワ。
今期暫定ベストワンの「深田恭子のアレ」と、全然傾向が違うから比べようが無い(笑)。でも暫定同率一位だ。
第一話だけでほぼ完結しているところが『Mother』の延長線上にあるようで、後味のわるさが『わたしたちの教科書』級…。
何故白桃の缶詰だったのか……これってすごいと思うのですが一部お茶の間以外は「なぜ会社のトラックで北海道行けたのか」とかそういうところに引っかかって前に進めないかも。天晴れ白桃缶詰!

あまりんクレジットでどこに出てたっけと思ったらこれ。
焼き氷も早く戻ってきて(´д`)。

「分けるんだ、いいアイデアだね」
お姉さんに「分けるんです(うきうき)」
ここだけで泣けました。

投稿: 幻灯機 | 2016年1月20日 (水) 00時29分

✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪

「分けるんです(うきうき)」
・・・このセリフの情感をこれほど鮮烈に演じられる女優は・・・有村架純以外に考えられませんよね。

キャリア的に・・・。

虐げられて・・・なお・・・清純・・・。

もう・・・あかん・・・あかんで~。

物凄く描かれているが
説明的には不足しているところを
大谷直子が演じてみせるのにもうなる。

おそらく妹の残した子を
知恵は大切に育てたんですよね。
厳しい土地柄で
好きで一緒になったわけじゃないだろう夫にも
それなりに夫唱婦随もしてきた・・・。
だからこそ・・・音の献身も成立している。
音の心を苛むように殺す義父と
慈しんで縛る義母・・・。

その絆を自ら断つ知恵の痛みに心が震えました・・・。

焼き氷が歌いあまりんが暴走する・・・。
そして・・・残酷な時が刻まれていく。

それでも・・・音は大地に立つに違いない。

ああ・・・運命の三月へ・・・。
そして・・・その後へ・・・。

投稿: キッド | 2016年1月20日 (水) 04時12分

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