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2016年1月15日 (金)

ちかえもん(松尾スズキ)色に焦れて死なうなら(青木崇高)恋の手本となりにけり(早見あかり)

近松門左衛門と言えば・・・「つか版忠臣蔵」(テレビ東京1982年)の故・萩原流行(1953-2015)を思い出す。

萩原版近松は芸術のためなら女房も殺す的なキャラクターである。

主人公の宝井其角(風間杜夫)が「どうして・・・(あなたの作品は)面白いんでしょう?」と近松に粗忽な質問をする。

近松は「当たり前だろう・・・(この俺が)面白いように書いてるんだ」と答えるのである。

その瞳に浮かぶ狂気に圧倒される宝井其角なのである。

今回の近松はそういう意味では・・・かなり大人しいのだが・・・。

言葉の端々に狂気が滲んでいないわけではない・・・。

後から追うものにとって近松門左衛門とは・・・やはり・・・どうしても・・・そういう存在なのである。

で、『ちかえもん・第1回』(NHK総合20160114PM8~)脚本・藤本有紀、演出・梶原登城を見た。元禄十六年(1703年)五月・・・浄瑠璃作家・近松門左衛門(松尾スズキ)の「曽根崎心中」が竹本座で初演される。男女の情死を描いた「筋」は好評を博したのだった。しかし・・・話は数カ月遡る。はたして・・・史実にあるように・・・遊女のお初(早見あかり)と道楽息子の徳兵衛(小池徹平)は心中してしまうのか・・・ここが一番気がかりである。とても「死」が控えているようには見えないムードだからである。そう思わせといてやる「手」もあるけどな。

元禄十五年十二月は赤穂浪士の討ち入りがあり・・・明けて元禄十六年正月。

竹本座の正月公演の幕が開き、金主(スポンサー)である平野屋の大旦那・忠右衛門(岸部一徳)は労いの酒席を催す。

その席上、浄瑠璃好きの番頭・喜助(徳井優)は芝居の出来について論評を始める。

「あきまへんな・・・筋が悪いから・・・客の入りが悪い」

顔色を変える近松門左衛門だった。

「最近・・・近松門左衛門の筆が乗らぬのです」

竹本座の座主である竹本義太夫(北村有起哉)が追い討ちをかける。

「しかし・・・近松といえば・・・(井原)西鶴や(松尾)芭蕉と比べても遜色ない才能の持ち主でしょう」

忠右衛門は笑顔でとりなす・・・しかし。

「なぜ・・・西鶴や芭蕉は名前で呼んで・・・私は名字なんですか・・・冷たいじゃないですか」

「え・・・そこ」

思わずツッコミを入れる義太夫だった。

さあ・・・これは・・・ふざけた作品になるぞ宣言だ。

近松門左衛門は越前国福井藩の藩士の家に生まれた。本名は杉森信盛である。母親の喜里(富司純子)は藩主・松平忠昌の侍医の娘である。いろいろあって浄瑠璃作者となった近松門左衛門は大阪で母一人子一人の生活を営んでいる。女房には逃げられたらしい。

「嘆きつかれた宴の帰り・・・これで浄瑠璃も終わりかなとつぶやいて・・・」などと鼻歌を歌いながら帰宅した近松門左衛門に・・・喜里は無理難題を言う。

「私はサバが食べたいのです」

一部愛好家にはお約束の「サバ」である。

野口順子(宮嶋麻衣)が来るのか・・・。

そして・・・語りだすのは・・・落語「二十四孝」でおなじみの三国志時代の文官・王祥(185-269)の親孝行話。

「王祥は母親が魚を食べたがった時、凍った川を人肌で温め、鯉を得ました・・・」

「王祥は継母に暗殺されそうだったので・・・必死だったんですよ」

「・・・情けない」

老いた母に理屈は通じないのだった。

「近松優柔不断極(ちかまつゆうじゅうふだんのきわみ)」・・・近松門左衛門は・・・人形浄瑠璃作家として一応の成功を収めたものの・・・歌舞伎役者の坂田藤十郎に甘い言葉で誘われて歌舞伎作家にもなり・・・またもや浄瑠璃の世界に戻るという腰のすわらないところがあった。とにかく・・・褒められて伸びるタイプだと自分を規定しているらしい。

街ゆけば落語「孝行糖」のように・・・「食べさせれば子供が親孝行になる怪しいお菓子」を飴売りが商い中である。

そこに・・・「親不孝したけりゃ舐めなさい」と変な飴売りが現れる。

不孝糖売りの万吉(青木崇高)だった。

「なんじゃそりゃ・・・」

「だから・・・親不孝になれる飴や」

「・・・そんなもの売りたけりゃ・・・堂島新地に行くがいい」

「なんでやねん」

「親不孝の道楽息子が涌いてる」

「なるほど・・・」

堂島新地は盛り場である。

近松門左衛門も気晴らしに「天満屋」で遊女のお袖(優香)たちを相手に酒を飲むのだった。

しかし・・・お袖たちは・・・過去の栄光にすがる近松門左衛門の愚痴に飽き飽きしていたのだった。

さらに・・・人気のなくなった近松門左衛門の身入りは悪く・・・「天満屋」の女将・お玉(高岡早紀)からはそろそろつけを払えと催促される始末。

困り果てた近松門左衛門の前に油問屋の黒田屋九平次(山崎銀之丞)が救いの手を差し伸べる。

羽振りのいい九平次は「近く歌舞伎小屋を建てるので座付作家になって欲しい・・・報酬は竹本座の五倍出す」と持ちかけるのだった。

「五倍・・・」

「なにしろ・・・あなた様は天下の近松門左衛門ですから・・・」

甘い言葉に弱い・・・近松門左衛門だった。

「良い返事を待ってます」と言い残して九平次が去ると万吉が現れる。

「あの男・・・ただものじゃないね・・・用心した方がいいですよ」

「なんで・・・お前がここに・・・」

「旦那の言う通りに親不孝ものに出会って奢ってもらうつもりが・・・道楽息子に逃げられて・・・仕方なく居残りです」

「アホだな・・・」

「どうです・・・一緒に不孝糖を売りませんか」

「お断り・・・どうしてもって言うならサバ買ってこい」

季節外れなので・・・サバなど買えないと踏んでの厄介払いである。

ふらふらと竹本座にやってきた近松門左衛門・・・。

不入りの演目は打ち切りとなっていた。

「えええ」

「というわけで・・・半金は払えねえ」

「ええええええええええええええ・・・え~ん、え~ん」

「メソメソすんなっ」

切羽詰まった近松門左衛門は・・・ついに九平次を呼び出す。

「お受けいただけるんですね」

「は・・・」

その時・・・近松門左衛門の心に・・・幼い日に人形と遊んだ日々が去来する。

人形浄瑠璃を心から愛したあの日・・・。

「やはり・・・歌舞伎は・・・」

「なんだとこら・・・」

態度を豹変させる九平次である。

ドスを抜いて脅す姿は・・・その筋の人そのものだった・・・。

「俺には野望があるんだよ・・・あんたなんかに・・・ケチつけられちゃ困るんだよ」

「ひええ」

惧れ慄く近松門左衛門・・・。

そこに万吉が帰ってくる。

「サバ買ってきたぜ・・・」

「え・・・」

「たまたま・・・池で飼ってる人がいた・・・」

「なんだ・・・てめえは・・・」

「俺はちかえもん・・・と不孝糖を売るのさ・・・」

「略すなよ・・・」と言いかけて頬を染めるちかえもん・・・。

(ちかえもん・・・可愛らしいこと・・・)

こうして・・・万吉とちかえもんの・・・「曽根崎心中」をめぐる道行が始ったのである。

この世の名残

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一足づつに消えて行く 

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コメント

> 野口順子(宮嶋麻衣)

あー、ソコソコ(´Д` )。『ちりとてちん』でAよりBより気になって即ググりました当時。でもその父親が一本調子・キャラ立て失敗?&何歳なのか全然わからないまま歳をとったので家族役に恵まれなかった……? 髪のピン留めが似合う人物10選に選びたい。

というわけで、なんだか松尾スズキみたいなひとが出てきたなぁと思ったら松尾スズキ……ですね。この人も地下工事の悪どい班長からアイドル好きのマスターから盆栽一筋から芸術は爆発だーから、全部同じようで(褒め言葉)違う表情を見せてくれて最近俄かファンであります。

主人公は別にいるのかどちらが主人公なのか……宇宙猿人ゴリですかっ(≧∇≦)。

投稿: 幻灯機 | 2016年1月15日 (金) 05時00分

✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪

髪のピン留めが似合う人物10選・・・萌えますな。

百恵系は絶対だな・・・。

似合わない人があえてしている姿にも萌える・・・。

松尾スズキがヒゲをそると別人に見える法則です。

今回はいつ「ブスッ!」と言うのか楽しみです。

そうですねえ・・・。

「ちかえもん」「ちかえもんVS万吉」「万吉」
この流れはありますな。

そこから「万吉VSストーブさん」
「ストーブさんと小泉さん」
そして「お初天神」になっていくと妄想しております。

投稿: キッド | 2016年1月15日 (金) 21時48分

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