富士ファミリー(薬師丸ひろ子)一富士二鷹三茄子(小泉今日子)新春初夢縁起が良いです(中村ゆりか)
年末年始に躍進した中村ゆりか。
美少女にくわえて声が良いのである。
順調にキャスティングされてほしい女優なんだな。
さて・・・初夢で見ると縁起がよいとされる「一ふじ二たか三なすび」であるが・・・そもそも・・・いつ見たら初夢か・・・という話である。
一種の風習であるので・・・地域や家々で・・・「ルール」が違う。
我が家は「一月二日の夜に見る夢」派だった。
人によっては「元旦の明け方」とか「元旦の夜」とか・・・「年が明けて最初の夢」まで諸説あるわけである。
我が家は「一月二日限定」派なので・・・初夢を見る年と見ない年があるわけである。
そういう「迷い」を断ち切る・・・このドラマ。
ドラマは夢の世界だから・・・一月二日の夜に「一富士二鷹三茄子」を見せてくれたので・・・有り難いと思う他ありません。
で、『富士ファミリー』(NHK総合20160102PM9~)脚本・木皿泉、演出・吉田照幸を見た。松浦静山の「甲子夜話」によれば徳川家康が目出たいものとして一に富士山、二に愛鷹山、そして初茄子を数えたという。愛鷹山については鷹狩りを好んだ家康への連想から鳥類の鷹へと転じたのだろう。鷹狩りは遊興でもあり軍事訓練でもある。そして鷹は「強さ」の象徴でもある。富士山は「景色」でもあり、鷹は「遊戯」、さらに「茄子」は美味でもある。それらはすべて・・・心を弾ませるものだった。夢でもし逢えたら素敵なものなのだ。
事情あって・・・住み込みの職を求めるカスミこと村上果澄(中村ゆりか)は素晴らしいインターネットの世界でコンビニエンスストア「富士ファミリー」のスタッフ募集に応じる。
情熱の薔薇を胸に秘めた近所の神社の宮司見習い・行田万助(マキタスポーツ)の案内でカスミは荘厳な富士山が見下ろす古びた雑貨店に到着するのだった。
募集主は「富士ファミリー」を経営する小国家の長女で独身の鷹子(薬師丸ひろ子)である。
「富士ファミリー」の家族は・・・鷹子の叔母である笑子(片桐はいり)、今は亡き次女のナスミ(小泉今日子)の鰥夫である木下日出男(吉岡秀隆)の三人、三女の月美(ミムラ)は結婚して夫の栗林和己(深水元基)と息子の大地(鴇田蒼太郎)と近所で暮らしている。
最近、奇矯な行動が目立つ笑子には認知症の疑いがかかり、そういう意味も含めてスタッフが募集されたのだった。
「給料安いけど・・・」
「大丈夫です」
「笑子お婆ちゃんにもしものことがあったら・・・厄介かけるかもしれないけど」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃない時は・・・大丈夫じゃないって言ってね」
「・・・」
笑子の狂態の原因は・・・死んだナスミの幽霊が幻視できることにあった。
ナスミは次女として「転がり続ける生き方」を実践した果てに不治の病を得て帰郷し、家族に看取られて他界したのである。
今は座敷童的精霊となり・・・「富士ファミリー」を見守っている。
二つとない山である霊峰「不二」もまたそこにあった。
近所の神社の宮司である百合稙道(小倉一郎)は神霊が神域に不在であることを察知していた。
神社の持つ神霊力は・・・ナスミの霊の現象化のために注がれているのだ。
ナスミは愛する家族のために言霊を発しようとしていた。
ナスミの遺品のポケットに・・・幸せになるためのキーワードが書かれたメモが残されており、導きを受けた笑子はそれを発見する。
母亡き後は母として、父亡き後は父として家族を支えて来た鷹子はナスミの思い出を共有するためにメモを分割して分配する。
笑子は「ストロー」を得る。
鷹子は「懐中電灯」を得る。
日出男は「光太郎」を得る。
月美は「四葉のクローバー」を得る。
カスミは「ケーキ」を得る。
万助は「コーヒー」を得る。
百合は「枕」を得る。
ナスミに導かれてささやかな幸せに向かう人々・・・。
家族を守るために・・・幼馴染の春田雅男(高橋克実)のプロポーズを二十年以上もスルーし続けた鷹子。
老いて・・・孤独になることを恐れる笑子。
夫との倦怠期によろめきかかる月美。
兄の借金返済のために自分の貯金を使われそうになり両親を捨てたカスミ。
交際中の樋口愛子(仲里依紗)から婿養子の件を切りだされる日出男・・・。
月美は四葉のクローバーをつけたヴァンパイアの小柴洋平(細田善彦)から誘惑される。
「君に永遠の命をあげよう・・・」
「私は・・・永遠を生きるよりもみんなと限られた時間を生きていきます」
月美はスーパーマーケットのスタンプが四葉のクローバーだったことに安堵する。
変化は恐ろしいものだ。
そして変わらないことも恐ろしいものだ。
笑子と日出男は搬送中に落下した介護されるロボット(マツコロイド)と遭遇する。
「介護ロボットなの」
「介護されるロボットよ」
「そんな・・・」
「人間の仕事を奪うロボットと・・・人間の仕事を増やすロボット・・・どちらが人間のためになるのかしらね」
「ああ・・・」
ストローは空洞だが吹き矢を吹くこともできるし究極のエロスを顕在化可能なのである。
もつれあう男と女・・・。
愛子から妊娠を告げられた日出男は「光太郎」と命名するのだった。
「パパになってくれるの」
「もちろんだよ」
プロポースしなかった雅夫の新居でイヤリングを失くしたフリをする鷹子。
心のずっと奥の方からやって来る涙は更年期障害の症状ではなかった。
しかし・・・思いなおした鷹子は懐中電灯を持って雅夫の部屋のベッドの下を照らす。
もちろん・・・雅夫が別の誰かと結婚するというのは嘘だった。
ナスミの姿が鷹子にも見えた。
「お姉ちゃんは・・・私に言ってくれたよね・・・」
「・・・」
「私がここにいるから・・・あなたは転がりなさいって」
「・・・」
「今度は私がお姉ちゃんの代わりに・・・ずっとここにいるよ」
カスミは誕生日を祝ってもらった。
バースデーケーキの蝋燭を吹き消すカスミ。
「富士ファミリー」の名物は「お婆ちゃんのおはぎ」だった。
正月は予約殺到なのだ。
愛子やカスミも加わって修羅場と化す「おはぎ」製造工房。
「おはぎは永遠ですか」
「おはぎは本当ですか」
「おはぎは不変ですか」
「おはぎはでたらめですか」
「おはぎはおもしろいですか」
披露困憊のまどろみの中で誰かが問いかける。
万助は百合の枕にコーヒーをこぼす。
浮かびあがる文字は「タダイマ」・・・。
「神様がお帰りになった・・・」
「そうなんだ・・・」
目が覚めたカスミに笑子はナスミのカップを差し出す。
「でも・・・これ・・・ナスミさんのじゃ・・・」
笑子は「ナスミ」に「ノ」を書き加えて「カスミ」に変化させる。
「カスミになったよ」
「私・・・ここに居てもいいんですか」
「だって・・・もう居るじゃないか」
小さな幸せと小さな不幸せはいつも隣り合わせている。
情熱の真っ赤な薔薇の咲く夢を見たら花瓶に水をあげましょう。
たとえ・・・そこに花はなくても・・・加湿されるので。
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コメント
連日食べすぎで大変な正月ですわ。
ちょっと胃に優しいものが必要だわ。そんな三日目。
変化は恐ろしいけれども、変わらないことも恐ろしい。
木皿泉作品は常に私の人生と同じくらいの年齢を歩んでいる気がいたしますわ。
新年に一本、いいドラマを見せていただきました。
今年もボチボチ活動いたします。
今年もよろしくお願い致します~!
投稿: くう | 2016年1月 3日 (日) 19時06分
❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀
本日はあっさりしたなめこそばをご用意しましたぞ。
冷たい茶そばをなめこと大根おろしでお召し上がりくださいませ。
お好みでお屋敷の裏山の清流で栽培したわさびをどうぞ。
今夜は「吉原裏同心」で
遠景に富士山が見えました。
二夜連続の富士見で爽やかでございました。
人生とは恐怖の連続・・・。
臆病な人間ほど怖がることが上手になるのでございますよね。
じいめは幼少の頃・・・
こわくて花火がもてないタイプでしたので。
ビクビクしている片桐はいり万歳でございました。
道端にマツコロイドもかなり怖いと存じまする。
長い谷間で・・・あっさりレビューが
日常化しそうでございます。
今年もよろしくおつきあいくだされませ~。
投稿: キッド | 2016年1月 4日 (月) 00時08分