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2016年2月12日 (金)

あらき風にもあてぬ身を裸になして縄をかけ(早見あかり)お初がかわいそうやねん(青木崇高)

冬のラブ・ストーリー・・・。

(月)は中盤・・・ラブ・シャッフルである。

(火)は主人公がかわいすぎるのでトライアングルそっちのけ。

(水)は六十五歳のバージンの「アゲイン」である。

(木)は・・・もう・・・「愛」とか以前に・・・「人生」が悲しくて大爆笑。

(金)は究極の尽くすタイプ。

(土)は悪い人と女子高校生の純愛。

(日)は側室だって愛がある戦国絵巻である。

この素晴らしい愛に満ちたシーズン。

なんだろう・・・世界が終わるのかな。

で、『ちかえもん・第5回』(NHK総合20160211PM8~)脚本・藤本有紀、演出・川野秀昭を見た。全八話とすると第二章突入の「起」とも考えられるし、「転」の前篇とも考えられる今回。お初(花田鼓→早見あかり)の身の上が明らかとなり、時代劇ファンにはよくある話なので予想通りの展開だが・・・「曽根崎心中」ファンには話が予想外の方向に進んで戸惑うところ・・・。とにかく、どこに転がって行くのかわからない「話」に手に汗握る今日この頃である。それにしても芸達者なメンバーに囲まれて・・・ほとんど持ち前の「存在感」だけで「今回」を演じ切ったアイドルから転身した女優には・・・この「役」を演じられる喜びを噛みしめてもらいたい。ここからどれだけ精進するかが「女優人生」なのである。

もちろん・・・人形のような顔立ちに・・・九才で遊女となった武士の娘という役は・・・ほとんど「素」で嵌り役なのである。

嵌っているが・・・物足りないところはいくらでもあるということだ。

なにしろ・・・こういうすべてをわかっているスタッフはざらにはいないのがこの業界なので。

今回は本当に恵まれていると思うのだった。

ちかえもんの母の喜里(富司純子)が読み聞かせる浄瑠璃「出世景清/近松門左衛門」(1685年)の一節に・・・不孝糖売りの万吉(青木崇高)は折檻を受けていたお初の歌を思い出す。

「父は都の六波羅へ・・・虜囚となりてあさましや・・・憂き目にあわせたまうとの・・・その音信(おとづれ)を聞きしより・・・思いに思い積み重ね」

「お初が歌ってた」

「なんや・・・お初・・・出世景清・・・観てたのか・・・」

お初が何故・・・その歌を・・・とは思わず、店で一番器量がいい遊女が・・・自分の作品を鑑賞していたことに有頂天になる近松門左衛門(松尾スズキ)だった。

アホである。

一方・・・シリアスモードの色茶屋・天満屋の一室。

遊女のお初に油問屋の黒田屋九平次(山崎銀之丞)は問いかける・・・。

「お前は平野屋の若旦那じゃなくて・・・大旦那が目当てだろう」

「何を仰いますのやら・・・」

「ふふふ・・・京都に人をやって・・・お前さんのことはあらかた調べたよ」

「・・・」

「お前は平野屋の懐にもぐりこみ・・・仇討しようという魂胆だろう」

「・・・」

「だが・・・そいつはあまりにも気の長い話だ・・・どうだい、俺と手を組んで・・・平野屋の身代をそっくりそのままいただくってのは・・・」

「お断りや・・・わての邪魔をせんといて・・・わてにはわての・・・」

「ふ・・・さすがは武家の出やな・・・」

「・・・」

色事の場に不似合いな殺気を孕んだ男と女であった・・・。

そんなこととは露知らず・・・浄瑠璃「赤穂義士~言うても詮無いことなれど」は討ち入りの場面にさしかかる。

赤穂浪士の場合は・・・あまりにもおばかさん

赤穂浪士の場合は・・・あまりにも悲しい

元禄十六年の二月四日 

江戸の街に消えた命・・・四十六・・・

「アホか・・・誰がフランシーヌ・ルコントですか」

「死んで花実が咲くものかですよ・・・お母さん」

「フランシーヌはちょっと鬱だったのよ」

早くも「駄作」の香りがする出来に・・・嘆く母であった。

「ちかえもん・・・便所に紙がないよ」とどこでも居候の万吉。

「やめんかい」

「わが子が・・・便所紙作者になろうとは」

「なんちゅうことを・・・それは傑作・・・出世景清」

「そやけど・・・おもろないねん」

「いいもん・・・愛してくれるファンがおるもんね~」

屈辱に耐えかねて家を出るちかえもん。

酷評に弱い作者はいつの時代にもいるのだった。

すでに浄瑠璃「出世景清」については述べたが・・・景清とは「源平合戦」(平安時代末期~鎌倉時代初期)の頃に実在したと言われる平家の家臣・藤原景清であり、「出世景清」は彼をモデルとしたフィクションの一つである。

すでに平家は滅亡し、流浪の身である景清は・・・源頼朝を仇と狙うお尋ね者。

京に潜伏中の景清は遊女・阿古屋とねんごろになり二人の男子を儲ける。

景清の行方を追う六波羅方は景清の妻・小野姫の父である熱田の大宮司を捕縛し、取調を行う。

小野姫は父を案じて六波羅を訪ねるが梶原源太に捕まり責め問いの憂き目にあうのである。

六条河原で裸にされた小野姫は水責めの拷問の後で木に吊り下げられて古木責めを受け無惨な姿となるのであった。

昔も今も残虐なシーンは観客をうっとりとさせる見せ場なのである。

まさに・・・傑作・・・どうかお見逃しなきよう・・・。

しかし、初演から十八年・・・今では誰もが忘れかけた名作「出世景清」への賛辞を期待してちかえもんは天満屋のお初を訪ねるのだった。

「お初・・・まさか、お前が観てくれとったとは・・・いつや・・・いつ頃観たん?」

「人形浄瑠璃みたいなもん・・・誰が見るか」

脆いハートを狙い撃ちされたちかえもんだった。

傷心のちかえもんは・・・例によってお袖(優香)の部屋へと逃げ込むのだった。

「お初にいじめられた・・・」

「アホやな・・・それでも人情に通じた作者かい」

「・・・」

お袖は金魚鉢の金魚を眺める。

「ここにいるもんは・・・みんな・・・口にできない過去を抱えておるのや」

「・・・」

「それでも・・・わてはお初がうらやましい・・・人形浄瑠璃なんて見たことあらへんもの・・・わてが知っててるのは・・・紙の前で歯ぎしりするあんただけやもの・・・」

苦界に身を沈めた女たちの境遇にふと胸を突かれるちかえもん。

金魚鉢の金魚が金魚鉢の金魚を眺めているのだ・・・。

女たちの憐れさに身悶えするちかえもんだった。

ふりむけば・・・ここは・・・そういう金魚たちが・・・春を売る場所だったのである。

お初のところには若旦那から手代の身分に引き下げられた徳兵衛(小池徹平)がやってくる。その手には梅の小枝が握られている・・・。

「咲終わったと思ったんやけど・・・天神の森につぼみのままの梅があったんや」

「・・・」

「いつか・・・お前を身請けして・・・二人で梅観をしようやないか」

「・・・」

お初の美しい瞳は何も語らず・・・沈黙する二人。

その目に映るのは・・・仇の息子か・・・それとも・・・。

とにかく、お初は梅の枝を部屋に飾るのだった。

平野屋に戻った徳兵衛は番頭の喜助(徳井優)に促され、忠右衛門(岸部一徳)の前へ。

「お前に縁談がある」

「・・・」

「江戸の大商人の娘を妻とせよ」

「私には決めた人がいます」

「なんやと・・・」

「天満屋のお初を身請けすると約束したんや」

「そんな・・・天満屋の跡取り息子が遊女を嫁になどできまへんで」と喜助。

「世迷言や・・・」

忠右衛門は構わずに縁談を押し進める。

もちろんお初と徳兵衛をモデルにした浄瑠璃「曽根崎心中/近松門左衛門」(1703年)はこの世では結ばれぬ二人が・・・天神の森からあの世に旅立つ話なのである。

ドラマの初回冒頭にあったように二人が道行をするのは宿命なのだった。

まあ・・・本当に心中するのかどうかは別として。

こんな感じで死なれたら・・・お茶の間はたまらんよなあ・・・。

憐れな遊女の人生に傾く心で・・・男に身を売るお鈴(川崎亜沙美)やお里(辻本瑞貴)の座敷の光景に翻弄されていたちかえもんだったが・・・。

天満屋に姿を見せる竹本義太夫(北村有起哉)・・・。

「ギギギ義太夫」

原稿の催促にあわてふためく作家のように逃げ場を求める浄瑠璃作者だった。

一方・・・俄かに体調を崩したお初を介抱するお袖・・・。

「お初・・・わてでよければ・・・胸につかえたものを・・・聞くよって・・・」

「お袖姉さんになんか・・・わての気持ちはわかりまへん」

「そうか・・・なら・・・お休み・・・」

「・・・」

義太夫は布団に隠れたちかえもんを見つけたつもりが・・・万吉だった。

たくましい万吉の太腿にうっとりとする一部お茶の間・・・。

万吉は・・・義太夫に・・・「出世景清」について尋ねるのだった。

「父親が捕えられたと知って小野姫は・・・せめては憂きに、かはらんと、乳人ばかりを力にて・・・つまり・・・自分が身代わりにでもなろうと・・・乳母と二人・・・尾張の国から京の都まで旅に出るんや・・・そんでな・・・六波羅にこそ着きにけれ」

「おっちゃん・・・凄い~・・・人情形瑠璃最高や~」

義太夫の名人芸に・・・引きこまれる万吉・・・。

「でも・・・歌舞伎におされてなあ・・・もう仕舞にしようと思うんや」

「あかん・・・もうすぐ・・・ちかえもんが傑作書きますよって・・・辛抱や」

「え」

一方、ちかえもんは臥せったお初の部屋へ・・・。

「お袖姉さん・・・」

(え・・・)

「そのままでええから・・・聞いておくれやす・・・私の父は大坂の蔵役人・結城格之進と申します・・・」

(えええ・・・)

お初は他言無用と断って身の上話をするのだった。

蔵役人は蔵屋敷の担当官である武士である。

大坂は商業の中心地であり、各藩から幕府まで蔵屋敷を置いて米を金に換えていた。

お初の父親である結城格之進(国広富之)はそんな蔵役人の一人であったらしい。

頑固一徹の父親だったが趣味は人形浄瑠璃で幼いお初を連れて出かけることもあった。

そして・・・平野屋忠右衛門は蔵屋敷に出入りする商人で・・・浄瑠璃の同好の友であったのだ。

しかし・・・忠右衛門の不正取引の噂を聞いた格之進が・・・手を引くように忠告すると・・・忠右衛門は・・・格之進にあらぬ嫌疑をかけ・・・格之進は切腹の憂き目に遭う。

お家は断絶、母はまもなく病死し・・・強欲で評判の叔父に引きとられた九才のお初は・・・京の遊郭に身売りされたのだった・・・。

(ええええええええええええ)

とんでもない話を聞かされたちかえもんは・・・戻って来たお袖と入れ替わり・・・部屋を出る。

そうとは・・・知らぬお袖とお初。

「徳様に初めて会った時・・・ちょろいぼんぼんやと・・・」

「え」

噛みあわない会話を始めるのだった。

天満屋の女将・お玉(高岡早紀)の部屋にたどり着いたちかえもんは・・・物凄い話をまとめようと筆をとる。

我を忘れたちかえもん・・・行燈に灯りを点じたお玉は仕事にとりかかった男を優しく見守るのだった。・・・つけが溜まっているからである。

「これは・・・面白い・・・面白いが・・・これをどうしたものか」

人物相関図を書きあげ・・・うなるちかえもん。

創作者としての血が騒ぐのだ。

「それにしても・・・平野屋が・・・そんなに悪党だったとは・・・」

「ほんまやなあ・・・」

いつの間にか現れた万吉は・・・すべてを知るのだった。

いつしか夜明けである。

「酷い話や・・・」

「お前・・・字が読めるんかい」

「行こう・・・」

「どこへ」

平野屋にやってきた万吉は・・・忠右衛門にお初からの招きの席を伝える。

「ほう・・・」

「申の刻(午後四時)やで・・・」

「承知した・・・」

何故か、承諾する忠右衛門だった。

天満屋に戻った万吉はお初に小刀を渡す。

「ええええええ」

ちかえもんは驚く。

「どういうこと・・・」

「すまなんだ・・・話を聞いたのはお袖やない・・・私や・・・浄瑠璃よりおもろい思うて思わずしたためとったら・・・万吉に盗み見られてしまったんや・・・」

「ひどい・・・」

お茶の間も含めて満場一致である。

一方、爽やかに「仇討ち」をお初に勧める万吉だった。

「そら・・・いくらなんでもあかん・・・」

「せやかて・・・お初がかわいそうやねんもん・・・親にひどいことされて・・・売られて・・・十年・・・ずぅ~っと火攻め水攻め古木責めやで・・・」

「万吉・・・」

「忠右衛門様にお会いします・・・」

お初は小刀を鞘に戻して・・・。

「お初・・・」

「いくらなんでも・・・いきなり刃傷沙汰にはいたしません・・・会ってお話して・・・それからのことでございます」

武家の娘としての・・・遠い記憶がお初の所作を変える。

思わず気押されるちかえもん・・・。

「あのな・・・」とお袖は囁く。

「親の仇を討つのは・・・親孝行なんやろか・・・」

「そりゃ・・・親不孝に決まっとるやないか・・・人を殺したら地獄行きや・・・二度と親には会えないんやで」

「まあ・・・親が地獄で待ってるかもしれへんけどなあ・・・」

そのころ九平次は・・・平野屋に女中として潜り込ませたくのいちからの連絡を聞く。

「何・・・お初が忠右衛門を・・・私に知られてあせったか・・・まあ・・・お初が殺ってくれるなら・・・それはそれで話が早い・・・」

一人残された九平次の闇・・・。

とにかく・・・どんなに・・・シリアスに見えても・・・痛快娯楽時代劇らしいので一安心である。

月並な感想だがプライドがないので平気なのである。

ああ・・・残り三話なのか・・・。

快楽の時は一瞬だなあ・・・。

関連するキッドのブログ→第四話のレビュー

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受信: 2016年2月12日 (金) 17時16分

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受信: 2016年2月12日 (金) 17時29分

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