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2016年2月20日 (土)

わたしは天使になりたい(綾瀬はるか)

彼らはルーツと呼ばれる人々の細胞から作られたクローン人体である。

彼らは「提供者」と呼ばれ「国民」ではない。

この「国家」では「臓器提供クローン法」のようなものが制定され、「提供者」の存在は合法化されている。

その点以外は・・・基本的に「日本国」である。

ドラマ「白夜行」が原作を逸脱して遥かな高みに昇華したように、このドラマも原作を遥かに越えて昇華している。

この世界でも「不倫関係」が「公序良俗」に反するために「自由恋愛」は制限される。

この世界では「提供者の自由」が「公序良俗」に反する場合には制限され「提供拒否」は「即時解体」となる。

「臓器移植、みんなで賛成すればこわくない」のである。

この世界はあなたの「ドナーカード」やみんなの「二十歳になったら献血」の延長線上にあります。

・・・おいっ。

で、『わたしを離さないで・第6回』(TBSテレビ20160219PM10~)原作・カズオ・イシグロ、脚本・森下佳子、演出・平川雄一朗を見た。2016年2月18日、北海道大病院は「生体肝移植を受ける患者とドナー(臓器提供者)のリンパ球から培養した特別な免疫細胞を使い、免疫抑制剤を使わず拒絶反応を抑えることに成功した」と発表した。患者と提供者の臓器の適合性のハードルが一段下がったのである。臓器移植を受けた患者は拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤を飲み続けなければならないという多額の医療費負担に加え、免疫抑制剤の副作用として感染症にかかりやすくなるなどのリスクがあった。現在進行形で臓器移植後の拒絶反応に苦しむ患者にとって朗報である。もちろん・・・「提供者」にとっては無関係な話であるとも言えるし、「提供」の負担が増したと考えることもできる。キッドはその是非を問わないが・・・これは「現実の話」というものである。

誰もがクローン人体という「提供者」から比較的容易に臓器を入手できる世界。

人々は「いただきます」と手を合わせ家畜を栄養源とするように・・・無造作に臓器を交換するのである。

そんな馬鹿な・・・と一部のお茶の間が戦慄する世界の「話」なのだ。

そして「提供者」たちは「介護人」として働く以外には・・・遺伝子操作で生殖能力を持たない提供に至るまでの短い「生」を甘受するのである。

戦火に追われた子供たちが逃げ惑うように・・・放射能汚染された土地に人々が帰れないように・・・。

これは・・・よくある「話」なのだった。

そんな馬鹿な・・・と言う人たちは基本的に馬鹿なのである・・・おいおいっ。

時計塔のある駅前の広場に・・・保科恭子(鈴木梨央→綾瀬はるか)が佇んでいる。

煙草に火をつけた恭子はガラスの小瓶に供養の煙草を立てる。

空にとけていく紫煙・・・。

土井友彦(中川翼→三浦春馬)の介護人である珠世(本間日陽和→馬場園梓)が花束を持って現れる。

「命日じゃないのに・・・偶然ね」

「・・・あなたこそ・・・」

「提供が始る前に・・・来ておこうと思ったの・・・」

「私は・・・彼女に残された宿題のことを考えていた」

「そう・・・」

そこは・・・真実(エマ・バーンズ→中井ノエミ)の終焉の地だった・・・。

《現在》➢➢➢《回想世界》

「陽光学苑」の出身者の「特権」についての噂。

友彦に「絵を提出すること」を勧める龍子(伊藤歩)から届いた手紙。

「夢」について語る友彦への愛着。

入手した二枚目の「Songs after Dark/Judy Bridgewater」・・・。

握り合った友彦の手の温もり。

「のぞみがさき」から戻った恭子の心は揺れる。

酒井美和(瑞城さくら→水川あさみ)は友彦の変化に不審を抱いている。

恭子を支配するための大切な道具として・・・美和は友彦を管理しなければならなかった。

「最近・・・友彦が私を避けているような気がする」

「疲れているんじゃないの・・・」

「何に・・・」

「あなたに・・・」

「どうして・・・」

「さあ・・・」

恭子はとぼける。

美和は猜疑心で目を光らせる。

そこに・・・「さぴしい男性提供者」がやってくる。

「今晩、どう・・・」

「私、今日は疲れているの」

「・・・」

立花浩介(井上芳雄)によって疑似生殖行為の快感を知った恭子は・・・浩介が介護人としてコテージを旅立った後は・・・複数の男性提供者と夜を過ごしているらしい。

「パートナーと愛し合っていることが認められた男女は特別な猶予が与えられる」という噂の信奉者である金井あぐり(白羽ゆり)は・・・疑似一夫一婦制度のようなパートナー関係を前提とした恋人関係に反する・・・まるで娼婦のような恭子の振る舞いに批判の眼差しを注いでいる。

しかし・・・提供者には生殖機能がないし、婚姻制度もない。

恭子と複数の男性提供者を罰するいかなる法も存在しない。

なにしろ・・・提供者は法的には人間ですらないのである。

あぐりにとって重要なのは「陽光学苑」出身者の情報であり、娼婦のような恭子よりも・・・友彦とパートナー関係を構築している美和の方に親近感を抱いているという程度で・・・恭子を迫害しようという意志はない。

「あの話・・・どうだった」

「すみません・・・今、問い合わせの応えを待っています」

「そう・・・」

恭子と二人きりになった美和は苦笑する。

「あぐりさん・・・しつこくて・・・困るわ」

(あなたの言い出したことじゃないの・・・)という言葉を飲み込む恭子だった。

恭子の中で・・・友彦と美和のパートナー関係が重圧となっていた。

友彦を独占したいという気持ちが・・・恭子の心に存在する。

恭子は当然、美和にも友彦を独占したいという気持ちがあると想像する。

美和の疑似所有物としての友彦を奪うという行為は・・・提供者として育てられた恭子に激しい葛藤を生じさせるのだった。

朝食の後で・・・サッカーに熱中する友彦。

友彦の「精神」が「普通より遅滞していること」を揶揄しながら提供者たちは笑う。

「変わってるよなあ」

「どんなに練習しても試合さえできないのに・・・」

「どこかに・・・サッカー好きの集まるコテージがあればね」

「最低でも二十二人必要だぞ」

「フットサルの人数を集めるのも大変だよな」

「怪我でもしたら・・・介護人になれないし・・・」

「予後不良なら即時解体かもしれないぜ」

恭子は・・・無遠慮な言葉に・・・微笑む。

美和は・・・友彦の監視を開始する。

友彦が「ノート」を持って・・・何か秘密の遊びをしていることを疑っているのだ。

友彦は美和の尾行には気がつかず・・・秘密の作業小屋に向かうのだった。

一方、街頭で「提供者解放活動」のビラ撒きをしていた「マンションの活動家」が私服警官に任意同行を求められ、恐慌に陥って・・・傷害事件を起こすという出来事が発生する。

「マンション」に逃げ帰った男の報告を聞き・・・リーダーは顔色を変える。

「なんてことをしてくれたんだ」

「でも・・・こわくて」

「おわりだな」

活動家の真実は・・・解体の前に・・・恭子に会いたいと思った。

深夜に「マンション」を出た真実は「コテージ」を目指す。

「おじさん、トラックに乗せて」

深夜のヒッチハイクの果てに真実は昼前の「コテージ」に到着した。

「どうしたの・・・」

「あなたに会いたくて・・・」

真実は「デュポンのライター」で「ジタンのタバコ」に点火する。

「やめてよ・・・」

「タバコ、嫌いだったわね」

「煙に弱いの・・・」

真実は・・・ライターとタバコを置いた。

「あなたは・・・幸せになった?」

「あなたの活動はどうなの?」

「順調よ・・・」

「友彦とは寝たの・・・」

「他人のものを奪ってはいけない・・・から」

「先に奪ったのは美和じゃない・・・あなたは奪われたものを取り戻すだけよ」

「・・・」

「第一、美和が友彦と寝るのはあんたから奪って勝利に酔うためよ」

「そんな・・・」

「美和はただ・・・あなたに勝ちたい・・・それだけなの」

「・・・」

「あなただって気がついているんでしょう」

「・・・」

「私はあなたに・・・幸せになってもらいたい・・・」

「幸せ・・・」

「そうよ・・・それが私の望むもの・・・あなたへの宿題よ・・・」

「・・・」

真実は・・・紙片に書いた「日本国憲法第13条」を読みあげる。

「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

「・・・」

「美和は公共の福祉じゃないでしょう」

「真実・・・」

「私・・・そろそろ、帰らなくちゃ・・・」

「もう・・・帰るの」

「私にはやることがあるから・・・」

「・・・」

「あなたにも・・・それを見つけてもらいたい」

こうして真実は・・・恭子の前から去って行った。

美和は友彦のノートを盗み出して・・・恭子に見せる。

「見てよ・・・友彦ったら・・・隠れて絵を描いていたの」

「・・・」

「へたくそすぎて・・・笑っちゃうでしょう」

恭子は友彦が美和に隠れて「絵」を描いたことに希望を感じる。

友彦は恭子と「猶予」を受けようとしているのかもしれないと考えたのである。

そのことについて・・・友彦と話したいと思う恭子。

美和は・・・真実の残した煙草を発見する。

「タバコ・・・」

「真実が来たの・・・」

「私に一本吸わせて・・・」

「待って・・・窓をあけるから・・・」

美和は一瞬の隙をついて・・・。

「二枚目」の存在を発見する。

「やはり・・・いいわ・・・」

恭子は・・・美和の挙動から・・・「二枚目」の存在に気付かれたことを悟る。

破局は迫っている。

美和は友彦への疑いを強め・・・友彦の私物を探る。

そして、「手紙」を発見するのだった。

「特権を得るために絵を提出すること」という情報をあぐりに渡す美和。

あぐりは・・・「恭子についての噂」を口にする。

美和にとって・・・それは・・・「恭子より優位に立つ切り札」であるように思える。

真実は・・・「マンション」に帰る。

活動家たちは脱出の準備を整えていた。

しかし・・・「法の番人」たちは速やかに手配を完了していた。

一斉検挙の網を逃れ・・・一人、町へと逃亡する真実。

時計塔のある駅前の広場に・・・立候補者が街頭演説をしていた。

「大企業のおこぼれにあずかる中小企業である以上、大企業が倒れれば共倒れです。大企業が栄え、中小企業は息もたえだえなのはおかしいという人もいる。しかし、大企業が栄えてこその中小企業であるという論理も成立します。中小企業を手厚く保護して、大企業がつぶれたら・・・結局、中小企業もつぶれる。たちまち、就職氷河期です・・・わが光民党は若者たちの幸福のための政策を・・・」

護身のためのナイフで手首を自傷した真実が現れた。

「私に・・・マイクを貸してください・・・私はもうすぐ・・・死ぬので・・・いいでしょう」

「君・・・落ちつきたまえ・・・話せばわかる」

「だから・・・少しだけ・・・話させてください・・・」

「わ、わかった」

「皆さん・・・私は立候補者ではありません・・・提供者です。どうか・・・私の話を聞いてください」

無防備に立ち止まる通りすがりの人間たち・・・。

「私は・・・施設で育ちました・・・幼い頃の私は・・・皆さんと同じように友達と遊び、笑ったり、泣いたりしました。けれど・・・ある日、自分が人間ではなく・・・天使だと教えられたのです。皆さんに身体を提供するために作られた聖なる存在だと・・・私は一番仲のよかった友達のために・・・自分の命を捧げることを想像してみました・・・私にはできなかった・・・自分の命を捨てて・・・彼女を救うことが・・・そう考えることができなかったのです。私は皆さんと同じように自由に散歩がしたかった。好きな仕事をして働いてみたかった。好きな相手と一緒に暮らし、子供を産んで育ててみたかった。でも・・・それは許されない。何故なら・・・私は天使ではなくて・・・家畜だからです・・・皆さんにお願いがあります・・・私たちを家畜として扱うのなら・・・どうか・・・私の心を消してください・・・家畜に心なんていらないのだから」

おそらく、この世界の科学力は心のない人間を作れない。

脳なしの牛が作れないように・・・そして「家畜」は「自然の力」である程度まで生育しなければならない。自分自身で「提供に相応しい人体」のためにメンテンスしなければならない。さらには「提供開始後の介護」も・・・。そういうシステムにすぎないのである。

臓器移植を必要とする人間がいて・・・社会がそれに応じただけなのである。

「やめなさい」

駆けつけた警察官が真実の言論を封じようとする。

真実はナイフで自分の頸動脈を切断する。

飛散する提供者の鮮血・・・。

ある意味で彼らはみな「銀の匙」を持って生まれて来た。

そして最後は刃物で切り刻まれるのだった。

恭子を作業小屋に呼び出した友彦・・・。

しかし・・・先着したのは美和だった。

「ここで何をしているの・・・」

「・・・」

「ねえ・・・知ってた・・・恭子ったら・・・みんなとやってるんだって」

「え」

そこに恭子がやってくる。

「美和・・・」

「美和が恭子が・・・みんなとしているって」

「私は・・・淋しさを忘れるために・・・することは悪くないことだと思っているけれど・・・」

しかし・・・友彦は・・・「男の浮気はともかく女の浮気を絶対に許さないスポーツマン気質」だった。

「そう・・・」

「・・・」

「・・・」

「コテージ」に戻った恭子を刑事たちが待っている。

「・・・マンションに出入りしていたそうだな」

「一度だけです・・・友達を訪ねて」

「うん・・・記録通りだ」

「真実に何か・・・あったんですか」

「駅前で派手なパフォーマンスをした後で・・・即時解体され・・・提供に回されたよ」

「・・・」

「それと何を話したのか・・・聞かせてもらおうか・・・」

「・・・ただの・・・昔話です・・・子供の頃の思い出・・・」

「うん・・・記録通りだ・・・邪魔したな・・・長生きしたかったら・・・余計なことは考えないことだ」

「・・・」

恭子は決心した。一般男性の峰岸(梶原善)はリクエストに応じて引越し屋さんとなる。

「なんとかしてよ・・・恭子がコテージを出て行くって言うのよ」と美和は泣き叫ぶ。

友彦はどうしていいのかわからなかった。

《回想世界》➢➢➢《現在》

「あの日・・・私は天使になろうと思ったの・・・喜怒哀楽を捨てて・・・何も感じない天使になろうと・・・」

「そう・・・」

「でも・・・真実から残された宿題のことが気になって」

「友彦の介護をするの・・・?」

「好きな人と一緒に過ごすのは・・・私の・・・やりたいことだったかもしれないけど・・・」

「・・・あなたが幸せになれるように・・・祈るわ」

「ありがとう」

「さようなら」

先に旅立った仲間を偲んだ二人の提供者は人間たちの雑踏の中に消えて行った。

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

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