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2016年2月 5日 (金)

言うてもせんないことなれど(小池徹平)一足ずつに消えていく夢の夢こそあわれなり(早見あかり)

映画「最後の忠臣蔵」(2010年)には・・・大石内蔵助(片岡仁左衛門)の隠し子である可音(北村沙羅→桜庭ななみ)を密かに養育する瀬尾孫左衛門(役所広司)を疑う役回りの寺坂吉右衛門(佐藤浩市)が登場する。

ここでの寺坂は大石の命令で「赤穂義士の遺族を援助する役割」を担っている。

四十七士の中で寺坂だけが討ち入り後の泉岳寺に姿を見せなかった。

その理由については・・・討ち入り直後から・・・様々な憶測を呼んでいたと言う。

基本的には寺坂が四十七士の一人、吉田兼亮に仕える足軽で・・・他のものとは身分が違うために処分の対象にならなかったとされるのである。

ただし、それが・・・誰の意図するところだったかは謎なのである。

寺坂には妻がいて・・・寺坂夫婦は・・・姫路藩士・伊藤治興に嫁入りした吉田兼亮の娘の奉公人となっている。

ドラマの中で討ち入り後の寺坂が・・・姫路の伊藤氏のところにいるというのはほぼ史実なのである。

幕府評定所の大目付・仙石久尚は「四十六士」の自首を受け、吟味を行い、寺坂に追手を出さないことを決定したという。

それもまた・・・「寺坂は軽輩者であり、構う必要はない」という大石の意志を赤穂藩贔屓であった仙石が斟酌したと推定されるわけである。

寺坂は縁あって旗本の麻生山内家の士分となり、延享4年(1747年)まで生きる。討ち入りから半世紀近くの時が過ぎていた。寺坂吉右衛門信行・・・享年83。

で、『ちかえもん・第4回』(NHK総合20160204PM8~)脚本・藤本有紀、演出・川野秀昭を見た。「曽根崎心中」が大阪竹本座で初演されるのが元禄十六年(1703年)五月七日のことである。モデルとなった醤油屋平野屋忠右衛門の甥で手代の徳兵衛(25)と天満屋の遊女であるお初(21)は深くいいかわした仲であったがそれぞれの事情によって引き裂かれる前途を嘆き、四月七日に曽根崎天神の森で心中死を遂げるのである。この面白おかしい流れで・・・最後はものすごい悲しいことになるのかどうか・・・お茶の間は固唾を飲んで見守るのだった・・・。

シリアスモードの大坂で一、二を争う豪商・平野屋の大旦那の忠右衛門(岸部一徳)と油問屋の黒田屋九平次(山崎銀之丞)の密会・・・。

「私は・・・平野屋さんの・・・禁製品ビジネスに一枚かましてもらいたいのです」

「この私に難癖つけるおつもりですかな」

「とんでもない・・・私は平野屋さんこそ・・・商人の神様だと思っております」

「残念だが・・・お眼鏡違いだ・・・喜助、去ぬで・・・」

忠右衛門は九平次を軽くいなして番頭の喜助(徳井優)と席を立つ。

しかし・・・九平次の瞳には執念の火を消した様子がない。

「曽根崎心中」での九平次の役回りは徳兵衛の金をだまし取る悪友である。

ちかえもんの世界でも・・・九平次は・・・徳兵衛を通じて平野屋のっとりを画策しているらしい・・・。

そんなこととは露知らず・・・。

浄瑠璃「赤穂義士~言うても詮無いことなれど」を執筆するちかえもんこと近松門左衛門(松尾スズキ)だった。

「どうせ切腹するのなら・・・焼き肉にすればよかったなあ」

「山形でアゴだしラーメンを食べたかった」

「オマールエビのテルミドールを・・・」

「なんで・・・わかめ蕎麦ですませちゃったのかなあ・・・」

・・・という切腹の場面から書きだしたらしい・・・。

「どうや・・・切腹を前にうまいもんに執着する四十七士・・・ぐっとくるだろう・・・」

ちかえもんは居候の不孝糖売りの万吉(青木崇高)に新作をアピールする。

「ちっとも」

「なんでや・・・」

「小手先の技っちゅーか・・・これ見よがしの外連味が鼻につくっちゅーか・・・」

「素人の言いたい放題か」

「第一・・・情報収集能力の弱さが露呈しとるで」

「何」

「切腹したのは四十六士や・・・」

「え・・・どういうこっちゃ・・・」

「討ち入り後・・・一人、消えたんよ」

「え・・・誰が・・・」

「花咲か爺やったかの・・・吉四六さんやったかの・・・衣紋掛けやったかの」

「寺坂吉右衛門か」

「せいかーい」・・・おい、その人ではないぞ。

「しかし・・・何故・・・」

「その何故というところに・・・ミステリの醍醐味があるのとちゃうの」

「井戸端の噂だと・・・」とちかえもんの母の喜里(富司純子)・・・。「寺坂吉右衛門という人は大阪に潜伏中だとか・・・」

「えええ・・・」

竹本座にご機嫌伺いにやってきたちかえもん・・・。

「書いてます」

「何も言うてへんがな・・・」

座主の竹本義太夫(北村有起哉)は心ハリネズミのちかえもんに呆れるのだった。

「閑古鳥がないとっても・・・小屋の灯りを消すわけにもいかへん・・・儲かるのは油屋ばかり」

「九平次はんか・・・」

「それにしても・・・九平次という男・・・去年の暮れにふらりと大阪に現れてあっちゅう間に・・・商売繁盛や・・・何者なんやろ・・・」

「去年の暮れ・・・」

たちまち・・・妄想が迷走を開始するちかえもん・・・。

もしかしてだけど

もしかしてだけど

九平次はんって寺坂吉右衛門じゃないの・・・

心が騒ぎつつ・・・天満屋にやってきたちかえもん・・・。

行燈の油を配達中の九平次と遭遇である。

その時・・・天満屋の厨房では・・・。

「なんやそれ」

「あさのたくあんの残りや」

「梅干しの色が移ってあこうなっとんのかいな」

・・・九平次が料理人たちの会話に反応したように感じるちかえもん・・・。

「あさのたくあんののこり・・・浅野内匠頭か・・・あこうなってる・・・赤穂浪士か」

頭に蛆が湧いたような連想がとまらないちかえもん。

「それにしても・・・九平次はん・・・さぞかし名のある店で修業されてたんでしょうねえ」という天満屋主人の吉兵衛(佐川満男)のさりげない煽てにも・・・。

「ナイス」と時空を越えてイングリッシュである。

「いやいや・・・私の身の上など・・・話して面白いことなど何一つありません・・・」

「はぐらかした・・・」と勘繰り続けるちかえもんだった。

うっかり・・・聞き耳を立てていた戸が開いて座敷に転がり込むちかえもん。

「うわあああああ」

「この間は・・・つい・・・無礼な振る舞いをしてすみませんでした」

ちかえもんに非礼を詫びる九平次・・・。

九平次の殊勝な姿に「サムライ魂」を感じるちかえもんだった。

「わしの目に狂いはない・・・九平次はんは・・・寺坂吉右衛門や」

「いつも狂ってばかりなのに・・・」とお袖(優香)は容赦ないツッコミである。

「わてには・・・胡散臭い奴としか思えまへんな」と万吉・・・。

その頃・・・若旦那から手代の身分に引き下げられた徳兵衛(小池徹平)は荷降ろしの手伝いなどもして・・・平野屋スタッフとも和気藹々である。

「ええ感じですな」

どうやら・・・徳兵衛贔屓の喜助は目を細める。

「黒田屋のこともある・・・うかうかしる間はないで」

しかし・・・やはり・・・裏稼業を匂わせる忠右衛門なのである。

手代の半纏を着て天満へやってきた徳兵衛は・・・中庭の祠に祈りを捧げるお初(早見あかり)を発見する。

「徳さま・・・」

「お初・・・」

「あれ・・・御髪に・・・」

それはひとひらの梅の花・・・。

「梅や・・・もうあらかた散ってしまったけどな」

「梅・・・今年もついに見ず仕舞い・・・」

「何を祈ってたんや」

「秘密です」

「教えてえな」

「意地悪・・・お分かりのくせして・・・」

「お初~」

「徳様・・・」

一方・・・お袖の部屋では・・・。

「しかし・・・なんで・・・赤穂義士が大坂で商人に・・・」

「その謎をこれから解こうってことやないか」

「けれど・・・謎が解ける前に正体がばれてお縄になったりして・・・」

「なんでや・・・」

「御公儀に逆らった罪人なんでしょう」

「・・・」

もしかしてもしかして

私の他にも誰か

気付いた人がいるのなら

捕縛しないで見逃して

その時、天満屋で捕物騒ぎが勃発。

「御用だ・・・御用だ」

思わず錯乱して「吉右衛門様~、お逃げくだされ~」と役人を羽交い締めするちかえもんだった。

しかし・・・容疑は「孝行奨励の御時勢に不孝糖を販売したこと」で・・・容疑者は徳兵衛である。

「神妙にいたせ・・・」

「えええ」

「徳様・・・」

たちまち捕縛される徳兵衛。

「待った」かける万吉。

蒼ざめるちかえもん・・・。

「そいつは子分だ・・・不孝糖売りの元締めはわてや」

「そのような痴れ者は捨ておけ」

奉行所の役人たちは徳兵衛を連行するのだった。

「徳様~」

徳兵衛を追おうとするお初を制止する天満屋の男衆。

「安心おし・・・お前のような器量よしなら・・・もっと上客がつく」

女将のお玉(高岡早紀)が慰める。

「あかんのや・・・徳兵衛様でなくては・・・あかんのや」

「おかしいな・・・」と首をかしげる天満屋吉兵衛である。

「いくら、万吉がアホやから言うて・・・本人がやったと言うものを・・・放免するとは」

「これは・・・最初から徳兵衛さんを狙ってのことかもしれませんね」と口を出す九平次。

「徳兵衛さんを・・・」

「はい・・・平野屋さんの商いを妬んだものの密告かも・・・」

そりゃ・・・あんただろうとお茶の間は全員がツッコミを入れるのだった。

「そんな・・・」と項垂れるお初を・・・興味深く見つめる九平次だった・・・。

しかし・・・徳兵衛は・・・間もなく釈放される。

九平次が奉行所に手をまわして話をつけたというのである。

「ピンと来たね・・・やはりあのお方は・・・」

「だから・・・ピンと来る度、いつも間違っているでしょう」

ちかえもんとお袖の息の合った漫才はさておき・・・腑に落ちない万吉は・・・九平次を尾行・・・。

そして・・・役人と言葉を交わす九平次を目撃するのだった。

店に戻った徳兵衛・・・。

「よろしゅうおましたな」と喜ぶ喜助。

しかし、忠右衛門は「九平次に心を許すな」と釘を刺す。

「なんでやねん」

思わず尋ねる息子に父親は口を閉ざす。

たちまち・・・広がる親子の溝である。

そして・・・平野屋には・・・怪しい荷が届くのだった。

裏のビジネスを息子には語れぬ父親だった。

「お父さんは・・・裏で危ない橋渡ってます」とはアホぼんには言い難いのだ。

一方・・・「九平次吉右衛門説」が爆発しそうなちかえもん。

都会では切腹するサムライが増えている

今朝見た瓦版の片隅に書いていた

けれども問題は今日の雨

傘がない・・・

お豆腐を買いに出た美音子(辻希美)は「傘がない」を歌う女(ミカ)と出会いネコ姉さんへの道を歩き出す・・・だれがドラマ愛の詩シリーズ「ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」(2004年・NHK教育テレビ)の話をしろとっ。

好きなんだな・・・。

たどり着いたのは黒田屋である。

「九平次はん・・・あなた様は・・・寺坂吉右衛門なんでしょう」

「・・・」

なにやら調合作業中の黒田屋・・・背後には怪しい白い粉末が・・・。

「これは赤穂の塩なんでしょう・・・軍師金調達ために・・・大阪で販売ルートを・・・」

なんだ・・・タイムリーなのか・・・。

シンクロしちゃったのか・・・。

そこへ・・・万吉登場。

「あんたの狙いは徳兵衛の弱みを掴んで・・・思い通りにすることやろう・・・」

「・・・」

「そして・・・最終的には不孝糖で・・・大儲けする気やろう・・・」

お茶の間は雪崩れるのだった。

「確かに・・・わては・・・寺坂吉右衛門や」

「・・・」

「しかし・・・わての心は皆さんの思うようなものではあらへんのや・・・確かに吉良は憎いと思うてます。しかし・・・藩主の内匠頭様も・・・家老の・・・大石様も・・・赤穂の士分の皆さんも憎いと思うてます」

「え」

「武士は赤穂義士になれても・・・足軽はなれへん」

「ええ」

「そやさかい・・・わては・・・みんな切腹してまえと・・・話を運んだのや・・・」

「えええ」

「・・・てな筋書きの話が好きなのでございます」

「・・・」

ちかえもんと万吉は脱力し・・・お茶の間は・・・九平次のドス黒い闇を垣間見たのでございます。

井戸端通信は寺坂吉右衛門の本当の消息を伝える。

大坂にはいなかったらしい・・・。

眠くなった万吉は喜里に「読み聞かせ」を所望する。

「眠くなるようにちかえもんの著書を読んであげましょう・・・」

「ひでぶ」

「父は都の六波羅へ・・・虜囚となりてあさましや・・・憂き目にあわせたまうとの・・・その音信(おとづれ)を聞きしより・・・思いに思い積み重ね」

「あ・・・その歌・・・お初が歌ってた」

「え・・・お初が・・・出世景清を・・・照れるやないの・・・」

「・・・」

「・・・」

その頃・・・九平次はお初を呼び出していた。

「忠右衛門はな・・・禁製品の朝鮮人参に手を出してんのや」

「・・・」

「わてはな・・・その闇商売・・・のっとるつもりや」

お初のお酌をする手が震えだす。

初々しいのう・・・。

桃色詰草青色美尻背後艶姿色香炸裂だったしな・・・。

なにしろ・・・遊女だから・・・呼び出されたらお酌するのみというわけではないのだ。

「平野屋の跡取り・・・徳兵衛様は・・・大事なお人・・・なんでそんな話を・・・なさるのだす」

「お前の狙いは徳兵衛でなくて・・・忠右衛門なんやろ・・・」

「・・・」

「・・・」

沈黙は肯定の証なのである。

徳兵衛は庭に・・・咲残った梅の花を見つける。

いつかお初を身請けして・・・二人で梅を眺めたい・・・。

徳兵衛の見た夢がせめてドラマでは現実のものとなりますように・・・と思わず祈らずにはいられない。

プライドがないのでそんな陳腐な言い回しで・・・つづくのだった。

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

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