彼って私の一番好きな人なんだな(深田恭子)
うわあああああああああああ・・・である。
鈍いにも程があるわけだが・・・そういう「話」である。
なにしろ・・・「三十歳」で「超かわいい女」なのに「処女」なのである。
どこかに「欠陥」がなければ成立しないのだ。
恋愛に満ちた冬ドラマ・・・早春の迫る頃・・・主人公やヒロインたちは・・・次々に大人の階段を登るわけであるが・・・まだまだ処女率は高いのだった・・・。
(月)の音ちゃんは・・・二十七歳、社長の息子と交際中だが・・・肉体関係については不明である。
(火)は「試合」なし・・・。
(水)は「六十五歳」の処女である。
(木)は「遊女」なので・・・言及を控えたい。
(金)は「生殖能力なし」だがやりまくっているらしい。
(土)はそういう点はスルーの女子高校生だ。
(日)はまだ「側室」ではないのだった。
半分以上・・・処女じゃないか・・・。
しかも・・・そうでない人たちは特殊な立場に置かれているのだった。
結局、そこがゴールの設定なのか・・・。
まあ・・・「結ばれたら終了」なのが・・・「シンデレラ・ストーリー」の基本だから。
お茶の間向けのドラマというものは・・・そういうある種の「お約束」で成立しているのだなあ。
で、『ダメな私に恋してください・第7回』(TBSテレビ20160223PM10~)原作・中原アヤ、脚本・吉澤智子、演出・月川翔を見た。登場人物たちの言葉、行動、そして表情が・・・「心」を物語る。本人が気付いていないことをお茶の間が察してハラハラ、ドキドキするのがドラマの醍醐味である。そういう意味では物凄く上手な作品に仕上がっているようだ。何と言っても「志村うしろ~」はエンターティメントの基本だからな。
「僕と結婚して下さい」という便利グッズの会社「ライフニクス」の年下の同僚・最上大地(三浦翔平)の言葉に「よろしくお願いします」と応じる柴田ミチコ(深田恭子)である。
本人が無自覚なミチコの一番好きな人を知っているお茶の間は「ダメ~」とか「あ~あ」とか「ヤバイよ!」とか騒然となるのであった。
居候を決め込んでいる晶(野波麻帆)の部屋で・・・「エンゲージメント・リング」を誇示するミチコ・・・。
「プロポーズされちゃいました」
「え」
「はいって言っちゃいました」
「ええ」
「婚約指輪もらっちゃぃました」
「えええ」
「私、ただいま、婚約中の柴田です」
「女の夢の結晶を・・・パカッと・・・」
「はい、パカッと」
「で・・・試合の方もパカッと」
「それは・・・パカッとなしです」
バカである。
しかし・・・七年の永い春の末に・・・黒沢歩(ディーン・フジオカ)と同棲生活を解消した晶は複雑な心境になるのだった。
三十五歳の独身女性が結婚できる確率は・・・弁護士資格を獲得する確率よりも低いらしい・・・。
すべては歩の兄・一(竹財輝之助)の未亡人である花屋の春子(ミムラ)に・・・歩がずっと片思いしていることが・・・いけないのである。
つまり・・・晶→歩→春子→一(死亡中)という片思いの連鎖なのである。
部外者のミチコが・・・先にゴールを決めたことで・・・再燃する晶の歩への思い・・・。
しかし・・・お茶の間は・・・ここでも「ああああああ」と叫ぶしかないのであった。
婚約中のミチコはウキウキと納豆を混ぜ、婚約中のミチコは颯爽と通勤し、婚約中のミチコは心ここにあらず・・・業務上の過失を連発するのだった。
「日曜日の誰かさんみたいに入力ミスの連打ですよ・・・今日はどうしたんですか」
クールな年下の同僚・門真(佐野ひなこ)に叱責されるミチコだった。
「どうもすみません・・・」
残業なしで大地とデートするミチコに・・・先を急ぐ大地は・・・結婚までのスケジュールを話す。
「まず・・・ミチコさんのご両親にご挨拶を・・・都合のいい日を聞いてください」
「はい」
「それから・・・式場や披露宴会場について・・・ブライダルフェアの下見に」
「はい」
「それから・・・これは・・・柴田さんに負担がかかりますが・・・結婚したら・・・パスポートやカードなどの名義変更をしなければなりません」
「・・・」
「姓が・・・最上になりますので・・・」
「最上ミチコ・・・」
その新鮮な響きに心躍るミチコだった。
しかし・・・ミチコの心の最深部では警戒警報が発令し・・・心の安定を欠いたミチコは・・・晶の部屋ではなく・・・喫茶「ひまわり」に帰宅するのだった。
とりあえず詐偽じゃなかったオムライスを振る舞う歩。
「何にしにきた・・・」
「えーと・・・私、プロポーズされちゃいました」
「えっ」と驚くのは常連客の鯉田和夫(小野武彦)だった。
「それは・・・ご愁傷様・・・」
「ひどい・・・婚約指輪ももらったのに」
「・・・」と僅かに揺らぐ歩の表情。
お茶の間を代表してそれを見逃さない鯉田だった。
「美味い」と食欲ですべての問題を解決するミチコだった。
「・・・おめでとう」
「主任~」
晶の部屋に戻るとミチコの結婚式を自分のことのように夢見る家主が待っている。
「結婚式・・・それは女の晴れ舞台よ」
「・・・」
まあ・・・一種のサプライズ・パーティーだからな。
だが・・・ミチコは・・・自分の結婚式が他人事のように思えているのだった。
柴田家の両親へのご挨拶のアポイントメントも大地にせかされて・・・漸くである。
「あの・・・今度・・・家に男の人を連れていくので・・・」
「ぎょえええええええええええええええええええええ」
実家の寺は大騒ぎになるのであるが・・・これは来週のアクシデントの予告である。
こういうフリ→オチも結構、丁寧に仕組まれている。
結婚式場のブライダル・フェアで下見デートをするミチコと大地・・・披露宴での食事の試食で舌鼓を打つミチコだった。
「美味い・・・こんな美味い肉が食べられるなんて・・・結婚式って素敵」
「ご新婦様は・・・お食事なされないのですが・・・」と会場スタッフ・・・。
「えええ」
「いえ・・・もちろん・・・ご準備はさせていただきます」
食べ過ぎたミチコはウエディングドレスの試着に苦戦するのだった。
「これなんか・・・いけそう・・・」
「マタニティー仕様でございます」
「これなんか・・・素敵じゃないか」
「マーメイド仕様でございますね」
「こ・・・これは・・・緊縛SM~」
なんだかんだ楽しい一日の後で・・・大地の父親が急変し・・・病院へ向かうことになるのだが・・・。
「すみません・・・明日の下見はキャンセルで・・・」
「私のことは気にしないで・・・病院へ行ってください」
・・・一緒に行くとは言わないミチコであった。
・・・なにしろ・・・他人事なのである。
大地の両親の病状も・・・大地との結婚も・・・。
そこへ・・・春子から「もつ鍋」のお誘いがかかる。
「焼き肉は一人で行けるけど・・・もつ鍋はねえ」
「そうなんですか」
「あら・・・その指輪・・・」
「私・・・婚約中なんです」
「え・・・歩くんと・・・」
「まさか・・・会社の同僚です」
「そうなんだ・・・私はてっきり・・・歩くんと交際しているのかと」
「ありえませんよお・・・それより、春子さんはどうなんですか・・・再婚とか」
「考えないわけじゃないけど・・・今でも・・・彼が一番だから・・・」
「・・・」
帰宅したミチコは晶に告げる。
「私・・・春子さんじゅなくて・・・晶さんを応援することにしました」
「え」
「だって・・・春子さんは・・・主任を一番好きにはならないと思うんです・・・その点、晶さんは主任のことが一番でしょう・・・」
「それって・・・結局・・・あなたが応援するのは・・・私のためじゃなく・・・彼のためじゃない」
「え」
日曜日のスケジュールがなくなり・・・アルバイトに出たミチコ。
しかし、歩は風邪気味で絶不調だった。
「今日は・・・お休みにすれば・・・」
「大丈夫だ・・・熱もないし」
「熱はこれから出るんです」
ミチコは歩の眼鏡を奪うと・・・強制閉店してしまうのだった。
月曜日・・・出勤したミチコはアクシデント・モードに突入する。
販売部長(小松和重)が「倉庫の在庫チェック」を門真に命じ・・・渋る門真。
「先週のミス連発をフォローしてくれたお返し」で立候補するミチコ。
スムーズなフリ→オチである。
場末の場所にあり、暖房設備もなく・・・携帯電話の電波が届かない・・・倉庫。
そこに・・・応援にやってくる大地。
「昨日の埋め合わせです」
「ありがとう」
作業の途中で休憩のために外に出た二人が・・・帰ったと勘違いする管理人(大堀こういち)・・・。
再び、倉庫に戻った二人に気がつかず・・・管理人はシャッターを閉じてしまうのだった。
まあ・・・内側から開かない設備って・・・どうなんだという話であるが・・・フリ→オチとしては丁寧な展開であるから気にならない。
「やはり・・・電波が届かない」
寒さに震えるミチコを気遣う大地であったが・・・。
「大丈夫よ・・・明日になれば・・・」
「それだと・・・困るんです・・・今日、父の検査の結果を・・・主治医の先生から母と訊く予定になってるんで・・・」
「え・・・」
一方・・・晶は・・・メガネを持ってひまわりにやってくる。
「今日はお休みにしたの・・・」
「昨日、熱が出た・・・客に感染させるのはまずいし・・・」
「大丈夫・・・」
「なんか・・・食べるか・・・」
「私・・・柴田に・・・七年間もあなたと一緒で幸せだったって・・・言われちゃった」
「・・・」
晶は・・・何度か・・・やり直そうと言い出す機会を伺うが・・・。
「幸せにしてやれなくて・・・ごめん」
歩に引導を渡されてしまうのだった。
晶は涙のLOVEライスを食べるのだった・・・。
「こんなのメニューにあった・・・」
「祖母ちゃんの頃からの定番だ・・・」
「もっと・・・早く・・・食べたかったなあ・・・雪山遭難もしたかったなあ」
「雪山遭難・・・?」
その頃・・・倉庫では・・・。
雪山遭難中の二人の男女が身体を寄せあううちに・・・発情という展開はないのだった。
雪山遭難ご無沙汰だなあ・・・。
「何か・・・楽しいことを考えましょう」
「楽しいこと・・・」
「この間の試食会のお料理・・・美味かったですね」
「テンダーロイン・ステーキ・・・」
ステーキ、主任のステーキ、主任と焼き肉、主任の猫の餌の肉、主任のとってくれたサーロインステーキ抱き枕・・・私とお肉とそして主任。
「あ」
極限状態に追い込まれたミチコは・・・ついに気がついてしまったのである。
自分が一番愛しているのは・・・歩であるということに。
大変なことになった・・・と心で絶叫するミチコだった。
歩を愛しているのに・・・他の男と婚約しているのである。
その時・・・シャッターが開く。
「あれ・・・帰ったんじゃなかったの・・・今、会社から・・・連絡があってさ・・・」
「助かった」
「すぐに・・・病院に・・・」
「はい」
一緒についていかないミチコである。
なぜ・・・ついていかないか・・・ミチコはもう知っているのだった。
ふらふらと・・・「ひまわり」にたどり着くミチコ。
そこでは・・・お見舞いにきた春子が歩と仲睦まじく向かい合っている。
ミチコは・・・ついに「恋する胸の痛み」を入手したのだった。
翌日・・・倉庫で二人きりだった噂は社内を駆け回っていた。
「あれれ・・・」
「・・・今日・・・お話があります」
「はい?」
試合会場予定だった大地の部屋でミチコは・・・。
「お父さんの具合は・・・」
「大丈夫でした」
「よかった・・・私・・・最上さんにあやまらなければなりません」
「・・・」
「私・・・結婚できません・・・ごめんなさい」
「主任さんですか・・・」
「・・・片思いですけど」
「僕はずっと・・・主任さんに嫉妬してたんです・・・それで・・・焦って・・・ミチコさんの気持ちを無視して・・・結婚を急ぎました・・・ごめんなさい」
「そんな・・・最上くんは・・・何も悪くありません・・・私が生きていてよかったと思えたのは・・・最上くんのおかげだし・・・」
「片思いなら・・・僕にも・・・まだチャンスはあるんですよね・・・友達から・・・やり直してもいいですか・・・」
「最上くん・・・」
二人は別れの握手をかわすのだった。
ミチコは「ひまわり」へと向うのだった。
「結婚なくなりました・・・」
「そうか・・・つらいな」
「つらいのは・・・最上くんなんです・・・」
「そうか・・・」
歩はLOVEライスを与える。
「なんで・・・今日に限ってまともなんですか・・・もっと笑いをとってくださいよ」
「そうか・・・悪かった」
「そうですよ・・・悪いのはみんな・・・主任なんです・・・そういうことにしておいてください」
「うん」
いつものようにヒートアップしない二人である。
ミチコの心は静まり・・・歩の心は揺れ始める。
沈んだ気持ちで晶の部屋に戻ったミチコ。
「結婚やめました」
「えええええ」
驚きの後で・・・すべてを察した晶の告げる言葉は・・・。
「じゃあ・・・出て行って」
「えええええええええええええ」
ま・・・当然だよな。
恋のライバルを応援する女はいないのだ。
しかし・・・ミチコが「ひまわり」に戻るしかないことを考えると・・・晶の優しさがハートに火をつけるのである。
敵に塩を送る女の心意気・・・。
嫌煙家にはわからないかもしれないが・・・煙が目にしみるのだ。
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