さよならバースデイ(桐谷美玲)
「年の差」は恋愛において重要なファクターと言えるだろう。
「愛があれば年の差なんて」というところが充分に問題になっているわけである。
これには「結婚適齢期」というものが関係してくる。
「愛の結晶」を得るためのの「出産」の問題もある。
ただし・・・そこを追求しすぎると「愛」の定義が揺らぐわけである。
例によって・・・ドラマの作り手たちの「心」が「深層」あるいは「浅瀬」で連結されているために・・・かぶりまくる今季のドラマ・・・。
「スミカスミレ」においては・・・45歳差カップルが化け猫の妖力で成立する趣向だが・・・実在する45歳差カップルにとっては・・・何が面白いのかという気分もあるわけである。・・・まあ、面白いわけだが。
「お義父さんと呼ばせて」では蓮佛美沙子(25)と遠藤憲一(54)が29歳差カップルで主軸を演ずる。
男性優位社会では「女房と畳は・・・」以下略である。
さらに言うと「家族ノカタチ」は香取慎吾(39)と上野樹里(29)が主軸だが・・・西田敏行(68)と水野美紀(41)という27歳差カップルも絡んでいる。
基本、「女房と畳は・・・」なのであるが・・・そういう意味で「スミカスミレ」は異端の存在と言えるだろう。
だから・・・「化け猫」というスーパーナチュラルな存在が介入してくるわけである。
今回・・・「正体」がバレて・・・「愛」が終わった感じになるのは・・・おかしいと感じる人もいるだろうが・・・。
二十歳の男性が六十五歳の女性を性的対象として見れないというのは・・・おそらくノーマルの範囲なのではないだろうか。
二十歳の女性が六十五歳の男性を「くそじじい」と思うのと同じくらいノーマルだと考える。
まあ・・・何がノーマルで何がアブノーマルなのかは・・・以下省略である。
そういう「微妙な空気」の物語を・・・桐谷美玲と松坂慶子は見事に紡いでいる・・・。
で、『スミカスミレ45歳若返った女・第6回』(テレビ朝日201603112315~)原作・高梨みつば、脚本・嶋田うれ葉(他)、演出・小松隆志を見た。「悪」を描くことが難しい時代である。あれから五年が経過したこの日・・・ようやく・・・あの時の「爆発」が「白い煙があがっている」ようなものではなく「ものすごい大爆発」だったことをドラマで描写されることが解禁されたらしい。それがどれだけ「巨悪」を包み隠して世の中が動いているかを示すひとつの例だと感じた人は多いだろう。しかし・・・それが現実というものなのである。それに比べれば「化け猫の妖力で本当は六十五歳だけど二十歳に若返っている」という嘘は「かわいい嘘」と言えるだろう。しかし・・・「恋愛」において・・・「嘘はいけないこと」になっているわけである。しかし、そもそも「愛」なんてフィクションという考え方に立てば・・・「だますなら騙しとおす」のも一つのやり方である。まあ・・・大抵の場合、バレるんだけどね。とにかく・・・六十五歳の澄(松坂慶子)から二十歳のすみれ(桐谷美玲)に変身していることは・・・恋愛相手をだましている「悪いこと」に分類されてしまうのだ。そういう縛りが・・・ロマンスをこじらせるわけである。
心臓病で余命いいくばくもない真白勇征(町田啓太)が入院中のつつじ野大学病院から戻ったすみれは・・・黎(及川光博)と雪白(小西真奈美)と・・・勇征の救命について話し合う。
「私の精気を・・・捧げれば真白様は助かります」と黎。
「そんなことをしたら黎さんが・・・私の精気を真白くんにあげます」とすみれ。
「そんなことをしたら・・・六十五歳に戻ってまうで・・・」と雪白。
勇征の命か・・・黎の命か・・・それともすみれの変身解除か。
もちろん・・・すみれの結論は決まっている。
すみれは・・・もう・・・充分に・・・「若さ」を楽しんだ。
二十歳に若返り、行きたかった椿丘大学に行けた。
勇征との夢のような恋もした。
夢から覚めて元の六十五歳に戻っても悔いはないのだ。
夢のような日々に別れを告げるために・・・すみれは大学に行く。
教室では勇征の休学が話題になっていた。
女王様きどりの幸坂亜梨紗(水沢エレナ)とのとりまきである菜々美(小池里奈)と玲那(谷川りさこ)は例によって辻井健人(竹内涼真)を囲むのだった。
「真白くんが入院って本当かよ」
「そういう話だよ」
「どこの病院なんだよ」
「そこまでは知らない」
「知らないだと・・・」
「あ・・・如月さん・・・お見舞いに行ったんだよね」
「はい」
「なに~・・・」
「でも・・・真白くんはお元気そうでしたから・・・大丈夫だと思います」
「どこの病院なのか・・・幸坂たちに教えてやってくれ・・・」
「いや・・・いい」
「え」
「自力で捜す・・・おい・・・健人・・・お前、病院に片っ端から電話しろ」
「他力じゃねえか・・・」
和気藹々の学友たちに心の中で別れを告げるすみれだった・・・。
如月家の墓を管理している「天楽寺」を訪ねるすみれ・・・。
すみれの美貌に慶和(高杉真宙)はうっとりして・・・叶野りょう(梶谷桃子)は激しく嫉妬するのだった。
すみれは「罪な女」なのである。
すべての事情を知っている住職の早雲(小日向文世)はすみれの決意を察するのだった。
「結局・・・私がこのような姿でいることは・・・よからぬことなのでしょうね」
「いいえ・・・あなたは別に悪を為しているわけではありません」
「そうおっしゃっていただけると・・・幾分か救われます」
「それにしても・・・化け猫のくせに・・・我が身を犠牲にして・・・あなたに尽くそうとするなんて・・・前代未聞のレレレのレ~ですな」
「黎さんは・・・とてもいい人・・・いえ・・・化け猫さんです」
「・・・」
もちろん・・・そんないい化け猫が・・・何故・・・屏風に封印されてしまったのかという謎は残っているわけである。
はたして・・・黎はどこまで・・・本当のことを語っているのか・・・。
そういう仕掛けが必要なのかどうかは別として。
この物語は・・・あくまで・・・「愛とは何か」を問いかけるものだからな。
帰宅途中で・・・ショーウインドウに飾られたペンダントが目に入るすみれ・・・。
それは勇征が・・・贈ってくれたペンダントと同じだった。
すみれにとって至福のひとときである。
すみれは・・・勇征とデートする時のために買ったワンピースを着用し・・・最後のお見舞いに行くのだった。
「また・・・お見舞いに来てしまいました」
「ありがとう・・・すみれ・・・そのワンピース・・・とてもかわいいね」
「ありがとうございます」
僅かな間に痩せて衰えた勇征の姿に心をしめつけられるすみれ・・・。
勇征はすみれの手をとった・・・。
「すみれの手・・・冷たくて気持ちがいい」
「若い頃から冷え症なんです」
「ふふふ・・・すみれはいつも面白いな・・・」
発熱している勇征は潤んだ瞳で・・・すみれを見つめる。
その時・・・心臓に発作が起きる。
「大変・・・すぐに・・・誰か」
「いいんだ・・・しばらく・・・このままで・・・君と二人でいたいんだ・・・」
「でも・・・」
「お願いだ・・・」
すみれは・・・愛おしい勇征の願いを聞きいれる。
勇征は・・・昏睡状態になった。
すみれは急いで帰宅する。
「本当にやるんか・・・ええのんか」
雪白はすみれに問う。
「はい・・・」
「まったく・・・あんた・・・人間にしては立派やな」
「・・・黎さん・・・方法を教えてください」
黎は頷いた。
「それでは・・・術を伝授します」
「・・・」
「猫魂の精気を感じてください」
「私の中に・・・みなぎっている力ですね」
「精気を身体の中心である胸に集めるのです」
「・・・」
「そして・・・それを口うつしで・・・真白様に吹き込むのです」
「口うつし・・・」
「そうです・・・接吻です」
「・・・」
「正式なやり方をご存じですか」
「映画で・・・見たことがあります」
「そうです・・・唇と唇を重ねるのです」
「・・・」
雪白が結界を張り・・・深夜の病院に・・・すみれは侵入する。
心疾患である勇征は上体を起こして眠りについている。
その寝顔を見つめるすみれ・・・。
「真白さん・・・あなたに・・・逢ってから・・・私はいつも幸せでした・・・あなたを好きになったから・・・今まで・・・ありがとう」
涙の止まらないすみれである。
すみれは雪白の唇に唇を重ねる。
最初で・・・最後のキス・・・。
病室は猫魂の放出する妖しい光で包まれる。
廊下で黎は待っていた。
やがて・・・光は消え・・・病室から・・・如月澄が現れた。
「すみれ様・・・」
「黎さん・・・」
黎はすみれを慰めるように病院から連れ出した。
やがて・・・苦悶の表情を浮かべる勇征。
巡回中の看護師が急変を発見するのだった。
一夜明けて・・・回復する勇征。
「そんな馬鹿な・・・」
「どうしたのですか」と勇征の母親が問う。
「・・・治ってます」
「え」
「心臓が・・・正常に機能しています」
「それは・・・ご、誤診だったということですか」
「い・・・いえ・・・奇跡です」
勇征は・・・退院した。
入院している理由がなくなったからである。
「人魚姫」なら・・・泡になってしまうところだが・・・すみれは澄に戻っただけだ。
しかし・・・勇征の愛したすみれはもう・・・いないのである。
勇征は音信不通になってしまったすみれに不安を覚えながら大学にやってくる。
退院を喜ぶ学友たち・・・。
しかし・・・その中にすみれの姿はない。
勇征はすみれの親友となった由ノ郷千明(秋元才加)に尋ねる。
「すみれくんは・・・」
「ずっと・・・休んでいるのよ」
「え」
勇征は如月家を訪ねる。
応対するのは黎だった。
「すみれさんは・・・」
「すみれ様は・・・今は・・・あなたとお会いになれません」
「そんな・・・」
「今日はおひきとりください・・・」
仕方なく帰宅する勇征は・・・大福食べながら読書をしている家政婦の山中こと雪白の前でつぶやく。
「一体・・・彼女に何が・・・」
「あんたなあ・・・あの子に感謝せんとな・・・」
「え・・・山中さん・・・何か知っているの・・・」
「いや・・・なんも知らんけどな」
「・・・」
「せやかて・・・あの子はええ子やで」
勇征の悲痛な声を聞き・・・すみれの心は揺れる。
「私が・・・ちゃんと・・・話さないから・・・」
「話しても・・・信じていただけるとは限りませんよ・・・」
黎はつぶやくが・・・すみれは勇征に電話をする。
「真白くん・・・」
「すみれ・・・よかった」
「・・・」
「すみれ・・・夜の病院にいたよね・・・」
「夜の病院には入れませんよ」
「それじゃ・・・あれは夢だったのかな」
「私・・・あなたに嘘をついていました・・・」
「嘘って・・・」
「私は・・・本当は六十五歳なんです」
「・・・何を言ってるんだ」
「ごめんなさい・・・だから・・・もう・・・あなたとお会いできないのです」
「すみれ・・・」
すみれの告白が勇征の心を揺さぶる。
たしかに・・・すみれには・・・まるで・・・おばあちゃんのようなところがあった。
しかし・・・二十歳の女子大生そのものである。
そもそも・・・そのギャップに萌えた勇征なのである。
だからといってすみれが六十五歳であるわけがない。
夜の街を走る勇征。
なにしろ・・・猫魂がみなぎっているのである。
しかし・・・すみれの猫魂は子の刻に抜けだすのでは・・・まあ、いいか・・・策士策に溺れるのはよくある話だからな。複数脚本家になったのは・・・そういう・・・以下省略。
ファンタジーだからかっ。
狂ったように呼鈴を鳴らす勇征だった。
「いかがなさいますか・・・」
「会います・・・着替えるので待っていてもらってください」
「黎さん・・・」
「しばらくお待ちください・・・すみれ様がお会いになるそうです」
「よかった・・・」
しかし・・・現れた澄を見て・・・後ずさりする勇征。
「どうして・・・こんな・・・」
澄はすみれとして・・・勇征に初めて会った時のワンピースを着ていた。
「真白くん・・・本当にごめんなさい」
「そんな・・・まさか・・・」
「とにかく・・・おあがりください」
勇征に向かいあう澄と黎。
「私は・・・屏風に封印された化け猫でした・・・」
「え・・・」
黎はすべてを語る。
澄と黎の精気が合体して・・・すみれになったこと。
勇征の病を治癒させるために・・・すみれが消えたこと。
「そんなこと・・・してほしくなかった・・・」
「・・・」
「君との思い出を胸に・・・死んでしまえば・・・」
「真白くん・・・」
「・・・すみません・・・」
「真白くん・・・ちょっと歩きませんか」
信じられない話だが・・・奇跡によって死に至る病が消えてしまった勇征は信じるしかなかったのである。
「こうやって・・・二人で歩きましたね」
「・・・」
「あなたは・・・いつも優しかった・・・」
「・・・」
「私はあなたと・・・出会えて・・・幸せでした」
思わず・・・澄の手をとる勇征・・・。
その手に残る・・・すみれの記憶。
勇征は確信する・・・澄がすみれであることを・・・。
澄は思い出を振り切るように立ち去る。
「さようなら」
「・・・」
立ちすくむ勇征・・・。
「よいしょっと・・・」
帰宅した澄は自然に振る舞う。
「これで・・・本当によろしかったのですか」
「・・・はい」
黎は澄を見つめる。
大学では・・・すみれの休学が話題になっていた。
「なんか・・・あの子・・・おかしかったもんね」
「なんか・・・やばいことになってたりして」
「あやしいよね」
勇征は立ち上がった。
「変なこと言うな・・・すみれ・・・如月さんは・・・素晴らしい人だ・・・」
しかし・・・すみれはもういないのだった。
勇征は・・・澄となったすみれを受け入れられなかった自分に・・・傷ついていた。
二十歳だった恋人が急に六十五歳になったら・・・もう・・・わけがわからないのは・・・仕方のないことである。
由ノ郷千明と西原美緒(小槙まこ)は如月家にやってくる。
「あ・・・もしかして・・・すみれちゃんのおばあちゃんですか」
「え」
「これ・・・すみれちゃんが・・・就職試験を受ける予定の映画会社の資料なんですけど」
「あ・・・まだ・・・取り消していなかったのね」
「あの・・・すみれちゃんは・・・」
「しばらく・・・帰れないの・・・わざわざ・・・訪ねてくださって・・・」
「前に休学中の私をすみれちゃんが訪ねてくれて・・・今、大学に行けてるの・・・すみれちゃんのおかげなんですよ」
「まあ・・・それを聞いたら・・・きっとすみれは喜ぶわ・・・」
しかし・・・すみれはもういないのである。
勇征は・・・もやもやした気持ちを切り替えるために・・・英国留学を決意していた。
スケジュールを確認していた・・・勇征は・・・すみれの誕生日に気がつく。
四月五日・・・。
その日を楽しみにしていた時の気持ちを噛みしめる勇征・・・。
仏壇の前で手を合わせる澄・・・。
「あら・・・私・・・今日で六十六歳になってしまったのね・・・」
郵便受けには・・・勇征から封書が届いていた。
中に入っていたのは・・・バースデーカードだった。
すみれ・・・ありがとう
勇征からの別れの言葉を噛みしめる澄・・・。
二十代の若者と六十代の高齢者との・・・越えられない壁・・・。
「ご生誕・・・六十六周年・・・おめでとうございます」
「黎さん・・・ありがとう」
「私からの贈り物がございます」
黎は髪飾りを渡す。
「まあ・・・素敵ね・・・でも・・・今の私にはちょっと派手かしらね」
「贈り物はもう一つあります・・・その前に昔の話をお聞きください」
「はい?」
「私は・・・幼い頃のあなたをずっと見ていた・・・」
「え・・・」
「あなたは・・・家族の言われるままに・・・自分を押し殺して生きていた」
「・・・」
「私は思わず・・・愚か者・・・子供らしくやりたいことをしろ・・・と叫んでしまいました」
「まあ・・・」
「そして・・・私は物置に放置され・・・次に会った時・・・あなたは・・・虚しく時を重ねた後だった」
「・・・」
「だから・・・私は・・・あなたに・・・もっともっと幸せになってもらいたいのです」
「黎さん・・・何を・・・」
「生まれ変わりなさい・・・すみれに・・・」
澄の唇を奪う黎・・・。
すみれは妖しい光に包まれて・・・気を失う。
目覚めれば朝・・・。
思わず黎の姿を捜すすみれ・・・寝間着のまま飛び出す。
そこに・・・お隣の小倉富子(高橋ひとみ)が・・・。
「だめよ・・・若い娘が・・・そんな恰好でうろうろしたら・・・」
「え」
すみれは・・・若返った自分に驚く。
夜になっても・・・黎は戻ってこない。
かわりに雪白が現れる。
「雪白さん・・・」
「大丈夫・・・黎はそんなに簡単に死んだりせんよ」
「でも・・・」
その時・・・子の刻がやってくる。
すみれは澄に変身するのだった。
「ほら・・・呪いが解けてないやろ・・・つまり・・・黎がおるってこっちゃ」
「・・・」
「それより・・・あんた・・・黎がいなくなって・・・大丈夫なんか・・・」
「私・・・もう一度頑張ってみます・・・」
「よっしゃ・・・その意気や」
すみれは・・・大学に戻る。
驚く・・・勇征・・・。
勇征は・・・しかし・・・手放しでは喜べない。
六十五歳のすみれを受け入れられなかった後ろめたさがあるのだった。
「どうして・・・」
「黎さんが・・・命を与えてくれたのです・・・」
「・・・」
「だから・・・私・・・もう一度頑張ってみようと・・・映画会社の試験も受けるつもりです」
「そうか・・・僕は・・・留学するつもりだ・・・」
「留学・・・」
微笑むすみれ。
微笑み返す勇征。
「就職活動がんばって・・・僕も応援するよ」
「ありがとうございます・・・」
そして・・・五年の歳月が過ぎ去った。
お前もかっ。
どうやら・・・二十五歳になったすみれ(実年齢七十歳)は・・・映画会社に就職できたようだ。
はたして・・・勇征との恋の行方はどうなったのか・・・。
黒猫はすみれを見守っているらしい・・・。
そして・・・お茶の間もまた・・・。
すみれには幸せになってもらいたいと願うしかないのだった。
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