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2016年3月 8日 (火)

私もずっとあなたのことを考えていたの(有村架純)

恋するとは乞うことである。

私に愛をくださいと・・・乞うて乞うて乞いまくり・・・もらいは少ないのが普通だ。

映画「プリティ・ウーマン」(1990年)は「10億ドルで買収した会社を分割して売却する」企業転がしの実業家とハリウッドの売春婦の恋の物語である。

1990年度全米興行収入第1位を獲得した大ヒット作である。 

ヒロインが売春婦という・・・ある意味、キワモノの映画だが・・・そこがロマンチックだという考え方もある。 

なにしろ・・・ヒロインは「街角に立って客を待ちながらいつか王子様が現れることを夢に見ている」のである。 

そこには・・・非常にデリケートな問題が潜んでいる。 

つまり・・・純愛とは何か・・・ということだ。 

「身体は売っても心は売らない」なんて・・・幻想そのものだからな・・・。 

その問題をスルーすれば・・・「プリティー・ウーマン」のヒロインに主人公を例えることは賛辞である。 

もちろん・・・ここでは・・・主人公は・・・単に「お前は売春婦のようなもの」と蔑まれているにすぎない。 

シンデレラが売春婦だったとしたら・・・少女たちの夢はかなり凄惨なものとなるに決まっているのだ。 

主人公は・・・金の亡者となった父子の前から消える・・・そこには「愛」がないからである。 

心の貧しい人間相手に「愛」を乞うことはできないのだ。 

なぜなら・・・ここは「愛」がすべての月曜九時だからである。 

そういうニュアンスが分からない人はすでに精神が腐敗しています。

一度は女を飼おうとした男だったが・・・拒絶されて最後はプロポーズを果たすという顛末。

そこには古き良き時代の男尊女卑が描かれる。

しかし・・・素晴らしいインターネットの世界では二人の子供は必ず「お前の母ちゃん売女」と囁かれるのだ。

で、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう・第8回』(フジテレビ20160307PM9~)脚本・坂元裕二、演出・並木道子を見た。売買春が法律で禁じられた国家では・・・売春婦と顧客は犯罪者である。しかし・・・それを単なる「悪」と言いきれない曖昧なゾーンがある。なにしろ・・・人類史上最古と言われるビジネスの話なのである。そこには「支配による搾取」の問題も絡んでくるし・・・実際にそれで生活している「人間の感情」の問題もある。「かわいい女」と「かわいくない女」の摩擦の問題さえ絡んでくる。「従軍慰安婦問題」のやるせなさである。ナイーブな女性差別撤廃主義者たちは必要以上に傷口を抉る。傷害事件の証拠として流血を続ける必要があると主張する。暗黒大陸では現代も少女たちが集団誘拐されて性的奴隷となっている。犯罪者としての売春婦と・・・暴力の被害者女性との間に横たわる亀裂の深さ・・・。あるいはホストやホステスと顧客の間に醸しだされる暗闇の黒さ・・・。とても一言では言えない複雑な感傷がそこにはある。まあ・・・そうやって人類はここまで来たわけだが・・・。

そういう複雑な問題をそれとなく察してもらうことができるのもドラマの醍醐味なんだな。

昔は・・・女優なんて売春婦と同じだったのである。・・・おいっ。

「プリティー・ウーマン」が大ヒットしている頃・・・日本では下着は売っても身体は売らない女子高生がゴロゴロしていたわけなのだ。

この物語はそういう世情とは一線を画しています。

曽田練(高良健吾)を通じて・・・女友達となった杉原音(平澤宏々路→有村架純)と日向木穂子(高畑充希)・・・。

どこか・・・空虚な心を抱えている木穂子は・・・恋に恋する少女のように・・・「幻想の恋愛論」を音に振りかざす。

「恋愛は衣食住なのよ」

「?」

「最初は・・・ファッションとして・・・自分を男で飾りたいものでしょう・・・次に心の栄養というか・・・男を食べずにはいられない・・・そして最後は・・・一緒に暮らす・・・つまり、結婚に至るわけ・・・」

「?」

「恋愛」を「神秘」と考える音には木穂子の言葉はあまりにも卑小だった。

衣食住は生きるために必要なもので恋愛は裸でするものだからである。

何もなくても愛することが重要なのだ。

要するにちんぷんかんぷんなのである。

「私・・・彼氏に一度プロポーズされたんだけど・・・仕事が忙しくてしばらく返事しなかったら・・・放置されまくりなのよ・・・」

「・・・」

「だから・・・プロポーズされたら・・・何も考えずにイエスって言わなきゃだめよ」

「・・・」

「お醤油とって・・・」

「はい」

「そういう感じでね」

木穂子は・・・音を案じている。

それが・・・音の幸福を心から願っているのかどうかは別として・・・。

音には幸せになってほしい・・・しかし・・・音の相手が練であるとなれば・・・心が穏やかではないのである。

木穂子は・・・音の心を見抜いている。

できれば・・・音が好きでもない男と結ばれればいいと思う。

なぜなら・・・自分が欲しかった「愛」は・・・手に入らなかったからだ。

しかし・・・両親の愛に恵まれて育った木穂子には・・・音の心が抱える孤独がわからない。

その心から発する恐ろしいほどの「恋する気持ち」も・・・。

音は夢を見る。

六歳のあの日・・・。

火葬場で母親(満島ひかり)が遺骨となった日・・・。

駐車場で母親が焼却されるのを待ちながら・・・チョークで絵を描いた音。

ふと空を見上げた音は・・・素晴らしいものを見たのだ。

今回・・・明らかになったのは・・・音の養父母である林田夫妻が・・・親族ではなく・・・里親だったことである。

誤解を恐れずに言えば・・・音は赤の他人に育て上げられ・・・最後には養父(柄本明)に母親の遺骨をトイレに流されたのだ。

そういう記憶が・・・音の現在の心を作り上げているのである。

音の求める愛の過酷さがそこにある。

愛とは記憶の集合体にすぎないのだから・・・。

「春寿の杜」の介護施設には・・・「素晴らしい愛の記憶」が日々失われていく人々の日常がある。

その残酷さこそ・・・音が親近感を覚える世界の実情なのである。

新しい利用者の老婦人(草村礼子)にも認知症の兆しが現れる。

「あなた・・・どなたでしたっけ・・・」

「杉原です・・・」

「ごめんなさいね・・・私は主人と四十年間・・・パンを焼いて暮らしてきたの・・・」

「・・・」

「あなた・・・どなたでしたっけ?」

「杉原です」

愛が記憶である以上・・・認知症患者からは・・・愛は日々・・・失われていく。

しかし・・・音の最終兵器である・・・練から贈られた「白桃の缶詰」は消費期限を遥かに越えて音の部屋に鎮座しているのだ。

音はご飯を炊く。

貧しくても白米のおにぎりを毎日食べられる生活。

それは音にとって至福の暮らしだった。

そして・・・練もまたご飯を炊く。

暗黒の世界から音によって救出され仙道静恵(八千草薫)の家に帰還した練は・・・幼馴染の市村小夏(森川葵)の夢を支えながら・・・「柿谷運送」に復帰したのだった。

ブラック企業に見えた「柿谷運送」も時給三百円の世界から見れば天国だった。

搾取の鬼に見えた女社長・柿谷嘉美(松田美由紀)は給料から天引した金を本当に積み立てていたのである。

空白の五年の間にプールされていた金は・・・一時金として練に支給されるのだった。

復帰した練を・・・苦楽を共にした仲間として佐引穣次(高橋一生)たち従業員一同は暖かく迎える。

奪われているのか・・・与えられているのか・・・それは・・・本人の気持ち一つで切り替わる。

しかし・・・父親への「愛」を求めるあまりに・・・心を失いつつある井吹朝陽(西島隆弘)はその思想を暴挙を正当化する説得の材料として使う。

父親の征二郎(小日向文世)の命ずるままに企業買収ビジネスによるリストラ業務を遂行する朝陽・・・。

「なんとか・・・全員解雇だけは回避してもらえませんか」

「発想を変えてみたらどうかな・・・これは一からやり直すチャンスでもあるわけだし」

「・・・」

何か・・・恐ろしいものに変貌しつつある朝陽だった。

朝陽は・・・父親という名の悪魔に魂を売ってしまったようだ・・・。

通勤バスで・・・何度か・・・ニアミスする音と練・・・。

練は積極的に・・・音にアプローチする。

音は・・・朝陽の存在を考え・・・練と距離を置こうとする。

どこまでもじれったい・・・二人の関係。

しかし・・・微笑みかける練に音は断固とした態度で抗うことはできない。

「知ってますか・・・キリンはキックでライオンを蹴り殺すことができるんですよ」

「すごいな・・・キリン・・・じゃあ・・・磯野波平の声って変わったって知ってますか」

「知ってます」

「・・・」

「知っていてごめんなさい・・・」

どうでもいいことで・・・幸せな気分を共有する二人だった。

静恵の屋敷には・・・二人が拾った犬の「サスケ」も健在である。

「サスケにも会えたし・・・これで帰りますね」

「今・・・お茶を入れますから・・・久しぶりに逢えたし・・・」

「・・・そうですね」

「この間・・・観覧車の近くに仕事で行って・・・あの店を探したけど・・・見つかりませんでした」

「ピアノの店・・・」

「そうです・・・今度、一緒に捜しに行ってみませんか・・・今もあるかどうかわからないけど」

「五年もあればいろいろ変わります」

「何か・・・変わりましたか」

「私・・・プロポーズされました・・・二年前から交際している人に・・・」

「そうですか・・・おめでとう」

「受けるかどうか決めてません」

「そうですか・・・じゃあ・・・プロポーズおめでとう・・・」

「・・・」

音は練の心を探る・・・。

練は音の幸せを第一に考える。

二人は・・・心の壁の前で立ちすくむ。

「園田さんという認知症を発症した利用者さんがいたんです」

「・・・」

「認知症の症状は様々で・・・ある程度、回復する方もいます」

「そういうものですか」

「ある日・・・園田さんはきんつばって呟いたんです」

「へえ・・・」

「その時・・・朝陽さん・・・練さんも一度会ったことのある・・・私にプロポーズした人がきんつばを買ってきて・・・園田さんはそれ以来・・・症状が改善されました。それから三人で動物園に行ったりして・・・園田さんは・・・ゴリラが好きで・・・」

「朝陽さんは・・・いい人なんですね」

「・・・はい」

朝陽に背を向けて・・・練を見つめる音・・・。

しかし・・・練に向かって歩き出すことはできない音だった。

練と過ごした時間を上回る・・・朝陽との記憶が・・・音を縛るのだった。

老婦人の介護のために・・・夜勤をする音。

朝陽は・・・父親との食事会のためのドレスを持って職場にやってくる。

「明日・・・お父さんが・・・君と食事をする時間をとってくれた」

「でも・・・明日はシフトが入っています」

「シフトは僕の方から変更するように言う・・・父が二時間も時間を作ってくれたんだ・・・それは凄いことなんだ・・・いいよね」

「あの・・・結婚のことは・・・ゆっくりと考えたいのです」

「発想を変えてみたらどうかな・・・結婚はゴールじゃないんだ・・・そこがスタートなんだよ・・・二人で幸せになることをずっと考えていけばいい・・・僕は君を必ず幸せにするよ・・・仕事だって・・・落ちついたらまた復帰すればいい」

「私を・・・説得しないでください」

音にとって愛は説明するものではないのである。

「・・・」

「今・・・認知症の利用者さんがいて・・・ほら・・・園田さんの時のように・・・」

「園田さん・・・って誰だっけ・・・」

「え・・・忘れたの・・・きんつばで・・・ゴリラの・・・」

「きんつば・・・ゴリラ・・・なんだい・・・それ・・・」

「・・・」

音の大切な記憶を踏みつけたことを朝陽はまったく気がつかない。

朝陽は「愛」を踏みにじりながら囁く。

「とにかく・・・明日は・・・頼んだよ・・・ドレスはきっと凄くお似合いだよ」

音は見知らぬ誰かがそこにいることに気がついた。

父親への愛で盲目になった朝陽には・・・音の心がまったく見えないのである。

朝陽が今、関心のある事柄は・・・父親に愛されるために必要な伴侶としての見映えのする女を確保することだった。

朝陽の心は壊れかけていた。

静恵の屋敷で・・・小夏は罵詈雑言をさらけだしていた。

専門学校時代の友人が・・・ファッションの店をオープンしたのだった。

「なによ・・・これ・・・ダサイ・・・日本死ねって感じ・・・」

「でも・・・その人たちは・・・夢を実現させてるよね」

小夏のためにクレープを焼いていた晴太(坂口健太郎)はついに牙をむく。

「なによ・・・」

「もう・・・いい加減・・・練に頼るのはやめにした方がいいよ・・・デザイナーになる気なんてないんだろう」

そこに練が帰宅する。

「どうした・・・」

「私・・・デザイナーになるの・・・無理みたい」

「そんなことはないよ・・・」

「私・・・手に入らないものばかり・・・欲しがって・・・人生失敗しちゃったの」

「小夏・・・」

「晴太・・・私をボーリングに連れてって」

「いいけど・・・俺・・・重いものを持つの苦手だぜ」

唖然とする・・・練だった。

夜の道を彷徨う二人・・・。

「練に好きだって言えばいいじゃないか」

「妹ポジションまで失いたくないの・・・あんたこそ・・・何よ・・・ゲイなんでしょう」

「君のことを好きな男だよ・・・そのことだけは・・・覚えておいてほしい」

「え・・・」

晴太の言葉が本心なのかどうかは謎である・・・所詮は財布を盗んで金を抜く男なのだ。

その日は・・・練の誕生日だった。

穣次は・・・練に・・・コンビニのショートケーキをプレゼントした。

穣次は・・・ゲイではない。

ただの・・・さびしい男である。

さびしいから・・・誰かに何かをしてあげたくなる年頃になったのである。

穣次にとって練は・・・離婚して会えなくなった家族の代わりのような存在になったのだ。

音は迷いながら・・・朝陽との約束を守った。

「君は坐っていてくれればいい・・・父親の質問には僕が答えるから」

弱肉強食の世界の悪魔となった朝陽の父親がやってきた。

「美人だな」

「杉原音と申します」

「東京の人?」

「北海道から・・・上京して大学に入ったけれど・・・介護の仕事に目覚めてうちの会社に・・・」

突然・・・虚偽のプロフィールを語りはじめる朝陽だった。

「父親の職業は」

「市役所におつとめです」

「そうか・・・総務省のお嬢さんの方がいいけどな」

「・・・」

唖然とする音。

「おっと・・・鞄を車に忘れて来た・・・朝陽・・・取ってきてくれないか」

「はい・・・お父さん」

父親は音に微笑みかける。

「さて・・・どこまでが本当なんだ」

「北海道から上京したことは本当です・・・後は嘘です」

「そうか・・・まあ・・・欠陥商品をありのままにプレゼンテーションできないからな・・・で・・・本当のところはどうなんだい」

「神戸で生まれました。父親は不在で・・・母親が六歳の時になくなると・・・北海道の里親のもとで育ちました・・・家は裕福ではなかったので高校を卒業するとクリーニング店で働きました」

「他にはどんな仕事を・・・」

「新聞配達とか・・・上京後はガソリンスタンドで・・・お金をためて資格をとって春寿の杜に・・・」

「なるほど・・・貧しさは心を鍛えるからな・・・プリティー・ウーマンという映画をしっているかい」

「・・・」

「貧しい女が金持ちの男をたらしこんでのし上がるいい話だよ・・・君も幸せになりなさい」

迸る傲慢な男の狂気・・・。

あらゆるものを値踏みし・・・一銭の価値もないものを蔑む精神。

たとえば「愛」を・・・。

音は目の前に悪魔がいることを悟った。

朝陽は父親と音の間にかわされた会話を知らず・・・会食が無事に済んだことを喜ぶ。

父親を送りだして安堵してふりかえると・・・音は消えていた。

朝陽は音が練の元へ逃げたことを確信する。

静恵の屋敷を訪ねる朝陽。

出迎えたのは練だった。

「ここに・・・音さんが来ませんでしたか」

「彼女に何かあったのですか」

「あんたが戻ってくるまではすべて上手くいってたんだよ」

「え・・・」

「いや・・・今のは八つ当たりでした」

練は変事を悟った。

音は介護施設の老婦人の枕元にいた。

老婦人は音を孫娘だと思った。

「恋人できた?」

「え・・・」

「いるんでしょう・・・恋人・・・どんな人・・・かっこいい人・・・面白い人・・・優しい人」

「わからない・・・」

「最初に心に浮かんだ人がそうよ・・・」

「・・・」

その人は音の部屋の前で佇んでいた。

「すみません・・・どうしても確かめたいことがあって・・・」

「・・・」

「幸せなんですか・・・」

「・・・」

「プロポーズされて・・・」

「ストーカー」

「ちがいます・・・引越し屋です」

音は微笑んだ。

「入り・・・」

音の心に母親の亡霊が忍びこむ。

神戸で育った音の本性・・・。

「夜勤が続いていたので・・・何にもないの」

「・・・」

「寒いね・・・着替えるから・・・火を見てて」

目をつぶる練。

「ここでは着替えんよ」

「・・・」

練は穣次がくれたケーキを思い出す。

「食べますか・・・」

「うん」

「・・・」

洗面所に向かった音は振り向く。

「誰か誕生日やったの?」

「俺です」

「・・・」

音が着替えている間に部屋を見回した練は・・・白桃の缶詰の存在に気がつく。

缶詰は・・・練に激しく愛を乞うのだった。

着替えた音はお茶を入れ・・・二人はケーキを食べる。

テーブルにペンで星型を作り・・・消す音。

星は・・・朝陽のシンボルである。

「・・・」

「ケーキは何が好き」

「イチゴです」

「私も・・・他には・・・」

「もちとか・・・」

「醤油で・・・」

「きなこも・・・」

「甘党やん」

「外で食べるスイカとか」

「種をペッペッすんの」

「そうです・・・」

「食べ物以外では何が好き」

「雪を踏む音とか」

「雨の降る前の匂いとか」

「じゃんけんであいこが続いた時とか・・・」

「好きなことの話をするのは楽しいね」

「じゃんけんホイ」

「あいこでホイ」

「そこは・・・グーやろう・・・」

フォークが落ちて手を伸ばした二人は・・・突然黙る。

「プレゼントするようなもの何もないけど・・・前に患者さんに似顔絵描いたらよろこんでくれた」

「描いてください」

「あんまり上手くないよ・・・」

「・・・」

「引越し屋さん・・・描きやすそうな顔してる」

「ありがとう」

「ほめてないよ」

「・・・」

「駅前の商店街で福引したら一等があたったの」

「すごいですね」

「でもテレビゲームだった・・・うち・・・テレビないから」

「・・・」

「それで・・・二等と替えてもらおうとしたら・・・テレビ台だった・・・それで三等があれ」

真新しい洗濯もの干しハンガーを指さす音。

「いいじゃないですか」

「本当・・・みんなはバカだと言ったよ・・・ゲームを売ればよかったって」

「でも・・・あれはいいです」

「よかった・・・私一人がいいと思ったんじゃなくて・・・」

「いいと思います」

「でも・・・多数決で言ったら・・・いいと思う人少ないでしょう」

「杉原さんがいいと思ったらいいじゃないですか」

「でも・・・どんどん多数決で少ない方ばかりだと・・・一人になってしまうし」

「俺はいつも・・・一緒ですよ・・・最後まで杉原さんのそばにいます」

白桃の缶詰が練を勇気づける。

音は・・・目の前に「愛」があることを疑わない。

「あのな・・・お母さんが死んで・・・火葬場で・・・係の人が二時間待ってって言うから・・・駐車場でお絵かきしとったんよ・・・そしたら・・・いつのまにか・・・夕方になっていてな・・・空を見たら・・・すごく綺麗だったんよ・・・雲が虹みたいに光って・・・アイスクリームみたいになめらかでな・・・オレンジやストロベリーや・・・見たこともないような色に輝いていたんよ」

「すごいですね」

「わかるの・・・」

「わかります」

「この話・・・ずっと誰かに話したかったんよ・・・でも・・・伝わらへんて思いよってん・・・どうせ話しても誰にも伝わらへんってな」

二十年の歳月を越えて蘇る音の本当の心・・・。

激しく一体化する二人の孤独・・・。

「俺は・・・何をしていても・・・杉原さんのことばかり・・・考えてしまうのです」

「・・・」

「俺は・・・音さんが好きです」

仕上がった練の絵に・・・見惚れる音・・・。

「・・・私も・・・いつでも・・・どこでも・・・練さんのことばかり・・・」

封印されていた二人の気持ちは今・・・通じあった。

ただそばにいるだけで・・・生まれてきた意味を感じることができる二人・・・。

鮮やかな今週のハッピーエンド・・・。

切っても切れない・・・怪しい二人の絆・・・。

その時・・・扉が開いて・・・朝陽が現れた。

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