いいや・・・真田一族にとって子は増やすべきものですから(長澤まさみ)
まだまだ乱世である。
天正十一年(1583年)は今から四世紀以上も昔だ。
その頃・・・人々がどんな暮らしをしていたか・・・想像を絶する。
平成の人々が昭和の暮らしを本当にはわからないのと同じである。
素晴らしいインターネットの世界のない世界なんだぜ。
たとえば・・・男尊女卑である。
真田信繁の名前は伝わっても・・・信繫の母の名前は不明だ。
信繫の最初の子を産んだ女の名前も不明である。
その名は・・・ただ堀田作兵衛興重の娘あるいは妹と伝わるばかりなのである。
女がいつ生まれ、いつ死んだのかも不明である。
つまり・・・そのくらいどうでもいい存在だったとも言える。
ただ・・・信繫の子を産んだということだけが・・・歴史的には・・・残るばかりなのだ。
もちろん・・・それは四世紀後の史的な話である。
彼女が生きた時代には・・・信繫と重ねた夜がある。
彼女が産んだ信繫の長女は小県長窪(後の長久保宿)の地侍・石合氏に嫁いでいる。
信繫が勝者であれば・・・その人生はもう少し明確になったかもしれない。
しかし・・・信繫は敗者であり・・・歴史は彼女の人生を闇の中に葬り去るのだった。
乱世には乱どりという習慣があった。
戦で勝利した男たちは・・・敗者の女たちを蹂躪するのである。
おそらく・・・信繫もそれをしただろう。
そして・・・信繫の娘たちもそうされたのだろう。
それが戦国時代なのである。
そのすべてをお茶の間に向けて表現することは困難だが・・・なんとなくそういうことが匂う大河ドラマには傑作の予感が漂うのである。
女たちが人質になるのは嫌だなあとぼやく・・・そういうことはあったと思う。
で、『真田丸・第10回』(NHK総合20160313PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・小林大児を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は真田信繁の祖父・真田幸隆の弟で猛将の矢沢頼綱の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。猛将・頼綱・・・ガンガンいこうぜカテゴリーですな。そもそも・・・昌幸・信繫父子が智将で陰謀好きなのであれですが・・・幸隆の長男・次男である信綱・昌輝が長篠の合戦で戦死していることからして・・・基本的にガンガンいこうぜ系の猛将が・・・真田の基本色なのではと考えまする。もちろん・・・真田信幸と本多忠勝の娘の縁組は・・・政略結婚ですが・・・どちらかといえば・・・信幸もガンガンいこうぜ系だったのだと考えられますな。このドラマでは信繫との対比で・・・実直さが前面に出ていますが・・・頼綱、忠勝、信幸は・・・本当は猛将で猛将で猛将だったのではないかと思われます。まあ・・・人それぞれの真田信幸がいるので・・・真田丸の信幸もなかなかですけれどねえ。信幸の嫡男である信吉は清音院殿(真田信綱の娘)が十年以上後に生んでいるわけですが・・・この時期のこうはおそらくもっとピチピチだったと思われますし・・・まあ・・・病弱なので老いて見えるという話ですけどね。そういう意味では・・・きりはまだ十歳くらいなんですよね・・・きっと。きりが産んだとされる三女は関ヶ原直前の出産ですし・・・。まあ・・・子役でもよかったと思いますが・・・ここは長澤まさみを早めに見せてくれた脚本家に感謝したいと考えます。結構、子沢山な信繫ですが・・・ほとんどが関ヶ原の後の出生。まあ・・・謹慎中は・・・他にやることなかった・・・でございますな。昌幸もまだまだ励んでおりますし・・・。
天正十年(1582年)は壬午の年である。そのために・・・本能寺の変以後、信濃・上野国の領有権を巡って徳川・北条・上杉が争う一連の出来事を天正壬午の乱と呼ぶのである。九月下旬に徳川と北条が和睦することによって一応の決着を見るのである。しかし・・・上野国沼田城周辺の領有権を巡って真田と北条、北条と徳川、徳川と真田は交渉を紛糾させる。北条は徳川との条約に基づき領有を主張し、真田は固有の領土として譲らない。ついに北条は城攻めという強行手段をとり・・・千に満たない守兵の沼田城を万の大軍で攻め立てる。しかし、猛将・矢沢父子は一歩も譲らず、北条勢を撃退するのだった。一方、徳川は甲斐国の領土化を進めるとともに・・・信濃国の国衆の臣従下を画策する。木曽氏、諏訪氏など傘下に収め、さらには小笠原貞慶が上杉方の小笠原洞雪斎を駆逐し、北信濃を支配する上杉景勝に圧力を加えるのだった。明けて天正十一年(1583年)・・・真田と徳川のつなぎ役だった旧武田家臣の依田信蕃が佐久・岩尾城攻めで戦死。真田昌幸は対上杉の前衛として上田城築城を家康に進言する。正月に伊勢国の滝川一益が羽柴秀吉に叛旗を翻し、二月、柴田勝家が挙兵する。織田家相続争いが進む中・・・家康は信濃国支配を目指す。真田家を抑圧する徳川、北条の同盟に対抗するために・・・真田昌幸は上杉景勝との同盟を画策するのだった。
北条勢は厩橋城から沼田城へ、高崎城から岩櫃城へと軍勢を進める。
主力となる北条氏直の二万の軍勢が矢沢頼綱・頼康が籠る沼田城を目指す。
一方、北条氏邦は先鋒として富永主膳の五千を高崎城と岩櫃城の中間点である大戸城に配した。
岩櫃に籠る真田信幸の軍勢に対する抑えである。
沼田城救援に信幸が打って出れば背後から北条勢が追撃する算段だった。
千に満たない沼田城の軍勢であるが・・・数回に渡る北条勢の城攻めを撃退している。
結局、氏直は包囲戦に切り替えざるを得なかったのである。
一方、岩櫃城の信幸の元へは山道を越え・・・信濃から騎馬武者たちが参集していた。
正室の母方の家来衆である高梨一族をはじめとした北信濃の騎馬武者たちが到着し、真田家嫡男として・・・昌幸の付けた騎馬忍び衆を従えた信幸は岩櫃城を出陣する。
筆頭家老の河原綱家が左翼に展開し、高梨衆が右翼に展開する。
山道を馬蹄の響きが駆け抜けていく。
その数は五百だが・・・全員が騎乗している真田騎馬軍団である。
騎馬により山中を移動する真田衆は岩櫃城に備えた大戸城の北面を通過し、脆さを見せる南面に集結する。
「そりゃ・・・目にものみせてやれ」
信幸の左右に控える鈴木一族の若武者が馬上で大筒を構える。
射出された大玉が大戸城の城門を一撃で打ち砕く。
それを合図に弓騎馬隊が無数の火矢を城内に射込んだ。
「かかれえ」
先頭を切る信幸に続いて鉄砲騎馬が城内になだれ込んだ。
奇襲された守備兵たちは驚愕する。
各所で火の手があがり・・・騎馬武者による銃撃が足軽たちをなぎ倒す。
その背後から槍を抱えた信幸が猛然とあわてふためく武将たちに襲いかかるのである。
城内には女子供もあり、悲鳴をあげて逃げ回る。
信幸は誰彼構わず突きかかる。
その修練の槍技は一瞬で人間の顔面を突きとおす。
襲撃の間に信幸は百人ほどの人間を突き殺した。
すでに大戸城の本丸は真田勢の放火により炎に包まれていた。
「長居は無用じゃ・・・女子供に構うでない」
信幸は槍先に残った首をふりはらい叫ぶ。
「引き上げじゃ」
「引き上げじゃ」
「引き上げじゃ」
騎馬忍びたちは声をあわせ・・・馬首を巡らせる。
地響きを立て・・・真田騎馬隊は城を出る。
残るのは・・・地に伏したものたちのうめき声のみ・・・。
大戸城の五千の守備兵は全滅していた。
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