川獺(岡本玲)ぼっちゃん(伊勢佳世)坊ちゃんの坊ちゃん(左時枝)ニホンカワウソは絶滅種です(高岡早紀)
高岡早紀・・・活躍しているな。
しかし・・・今回は・・・岡本玲と伊勢佳世も貴重だよな。
特に伊勢佳代はニホンカワウソのように・・・うっかりすると見逃すべっぴんさんだからな。
谷間である。
第1回で矢島正雄を生んだ日本放送作家協会とNHKが共催するテレビドラマのオリジナル台本を対象としたコンクール・・・創作テレビドラマ大賞の第39回大賞受賞作だ。
1964年に日本国の天然記念物に指定され、2012年に絶滅種に指定されたニホンカワウソ(日本川獺)をめぐる物語である。
そういう意味ではあまりタイムリーではないけどな。
「おまえ・・・かわうそじゃねえか」
「・・・」
「捕えて見れば昔のともだちか・・・」
「鬼太郎・・・」
ルーツはこのあたりか・・・。
で、『川獺(かわうそ)』(NHK総合20160329PM10~)脚本・山下真和、演出・伊勢田雅也を見た。責任転嫁は人間の潔くない態度の一つである。その延長線上にあるのが断罪だ。つまり・・・何か悪いことが起きた時に・・・自分の責任を痛感せずに・・・他者を裁くのが潔くないわけである。どこか・・・行ったことのない町で「事件」が起きた時・・・「ああ、俺が悪かった」と思える人間は実に潔いと言える。まあ・・・ある意味、バカなわけだが・・・。しかし・・・会ったこともない人間を批判する人間は基本的に無責任である。どこまでが責任でどこまでが無責任なのか・・・判断するのは難しい。まあ・・・自分がダメなことを親の責任にすることは親に対しては有効だが・・・世間では通用しないことも多いので注意が必要である。また無責任な親を責めても虚しい場合があります。
小学校教師の松浦保(若山耀人→堀井新太)は同僚の香山由美(岡本玲)と同棲中である。由美は妊娠中で・・・父親は保である可能性が高いのだが・・・保は煮え切らない態度をとっている。
保は自分が父親としての自覚を持てない原因を・・・疎遠になった父親の態度に還元しようとしている。
保が少年だった頃・・・両親は離婚し・・・保は母親と暮らしていたのだった。
保の父親の須藤明憲(須藤明憲)は保の母親の葬儀にも姿を見せなかった。
保は自分を愛さなかった父親を深く憎んでいるのだった。
両親の離婚の経緯は次のようなものである。
十四年前・・・保が中学生の頃・・・。
すでに・・・1980年代には目撃例の絶えていたニホンカワウソの生存を報告した明憲は時の人となるが・・・生存の捏造が明らかとなり非難の対象となる。
水産加工場を経営していた明憲が工業団地の誘致に反対して天然記念物であるニホンカワウソを利用したというのが世評だった。
マスメディアの押し寄せる中・・・両親は離婚し・・・保と母親は故郷から去ったのである。
その父が・・・心臓病のために危篤となった報せが届く。
父親に愛されなかったことを理由に由美との結婚も・・・父親になることも決断できない保は・・・鬱屈した思いを抱えて故郷へと単身向かうのだった。
待っていたのは入院した父親の代わりに工場を守っている叔母の須藤圭子(高岡早紀)だった。
「彼女・・・連れてこんかったの・・・」
「・・・」
「まだ・・・お父さんのこと・・・拘ってんの」
「・・・」
「甘えん坊じゃねえ・・・」
「なんで・・・親父はカワウソがおるなんて・・・言ったんじゃろ」
「さあねえ・・・当時の漁業長が・・・お兄さんの友達じゃったから・・・訪ねてみればどうじゃろう」
明憲は六十前である。
漁業長は健在だった。
保が名乗るといきなり土下座する漁業長・・・。
「まっことすまんかったぜよ」
「漁業長さんは・・・巻き込まれただけだったのでは・・・」
「いや・・・工業団地の件で・・・川獺を朝鮮半島から輸入したのは・・・ワシじゃき・・・」
「どうして・・・父は・・・協力したんですか」
「徹のことがあったからかも・・・しれんなあ・・・」
「徹・・・誰ですか?」
「昔のことねや・・・」
それ以上は語らない漁業長だった。
水産工場に戻った保は・・・叔母の圭子に尋ねる。
「徹という人を知ってる?」
「ああ・・・お兄さんの同級生だった人や・・・町岡寿子さんという須藤水産の従業員だった人の息子さんで・・・海で溺れて亡くなったんよ」
町岡寿子(伊勢佳世→左時枝)はその後、退職して別の街に移っていた。
保は・・・寿子を訪ねた。
「若い頃は伊勢佳世で年をとったら左時枝って言うことがあるんですか」
「昔の話ですよ・・・」
寿子はすべてを語る。
伊勢佳世は1981年生まれ、神奈川出身で劇団俳優座養成所から劇団「イキウメ」に参加。ドラマ「チーム・バチスタ~アリアドネの弾丸・第4話」やドラマ「癒し屋キリコの約束・Episode8」などで観測できる女優である。
「私が三十五才で・・・結構、美人だった頃・・・息子の徹と坊ちゃん・・・つまり坊ちゃんの坊ちゃんのお父さんである明憲坊ちゃんは・・・仲良しさんだったのです。実は・・・私の夫は・・・その頃・・・すでに他界していたのですが・・・ニホンカワウソマニアだったのです」
「え・・・」
「父親の影響で・・・徹もニホンカワウソに特別な拘りを持つようになりました」
「・・・はあ」
「ある日・・・徹と明憲坊ちゃんが磯釣りをしていた時・・・かわうそが現れたのです」
「え」
「徹は・・・大喜びで学校に報告しました・・・そのために・・・役人が調査にやってきました・・・それが・・・二人の仲に亀裂を生じさせたのです」
「どうして・・・」
「カワウソは時々・・・漁師の網にかかったりして・・・存在していることはみんな知っていたのですよ・・・それが公式にいるとなると・・・保護だなんだと・・・漁業に影響が出ると土地の人間は惧れていたのです・・・だから・・・旦那様・・・明憲坊ちゃんのお父さん・・・あなたのお爺さんは・・・明憲坊ちゃんに口止めしたのです」
「見なかったと・・・言えと」
「はい・・・私も徹に口止めしました・・・ところが・・・徹は父親譲りのカワウソマニアだったので・・・頑固に譲らなかったんです・・・明憲坊ちゃんは見なかったと言ったのに・・・徹は見たと言ったのです」
「・・・」
「それから・・・二人は一緒に遊ばなくなりました・・・そして・・・徹は一人で磯に行き・・・溺れて・・・」
「亡くなったのですか・・・」
「はい・・・私は・・・明憲坊ちゃんに・・・あなたのせいではないといいました・・・しかし・・・明憲坊ちゃんは・・・自分の嘘が・・・徹を殺したように・・・感じてしまったのかもしれません」
「・・・なんて・・・愚かな・・・」
「そうですね・・・明憲坊ちゃんは・・・そのために・・・鬱屈して・・・あの時・・・あんな嘘をついてしまったのでしょう」
「本当にかわうそを見たから・・・嘘ではないと・・・そんなことで・・・僕は父を憎むことに」
「つまらないことにこだわったら・・・人生を台無しにするってことですよ」
「そうですね・・・ニホンカワウソが絶滅していようがいまいが・・・人間は生きていける」
「だから・・・坊ちゃんの坊ちゃんも・・・つまらない過去に拘らず・・・今を生きてください」
「はい」
香山由美がやってきた。
「なかなか帰ってこないから・・・」
「親父・・・なかなか・・・死なないんだよ」
「どうするの」
「帰る・・・親父が生きていようがいまいが・・・僕は生きていけるから」
「まあ・・・」
「帰って・・・結婚のことを相談しよう・・・君も未婚の母になるのは嫌だろう」
「ええ・・・でも父親がいようがいまいが・・・子供は生むけどね」
「ひでぶ」
海辺ではかわうそが嘯いた。
「人間に見えようが見えないが・・・かわうそはいるんだけどね」
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