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2016年3月 7日 (月)

それが善なのか悪なのか決めるのはあなた(長澤まさみ)

歴史に詳しいという立場というものは非常に微妙なものだ。

なにしろ・・・日本でさえ・・・すでに千年以上の歴史がある。

いまだに人生は百年足らずであり・・・どうあがいても・・・千年の歴史を学ぶことはできない。

基本的に・・・歴史に詳しい歴史学者でさえ・・・本当の歴史など知らないのだと断言できる。

彼らはおおよそのところを研究しているのに過ぎないのだ。

まして・・・そういう研究者の書物を千冊呼んだとしても・・・とても歴史に詳しいとは言えない。

たとえば戦国時代にしぼったとしても・・・その前史をある程度知る必要があるし・・・安土桃山江戸と続く後世の流れも押さえる必要がある。

基本的に歴史は勝者によって作られるので・・・勝者の言い分を疑う必要があるわけである。

つまり・・・歴史とは謎に包まれているのであり・・・そこが魅力的なのである。

人間は基本的に歴史に翻弄される。

真田昌幸というそこそこ名の知れた武将でさえも・・・大きな歴史の濁流に飲み込まれていく。

なにしろ・・・天正十年(1582年)に始ったこの物語は・・・すでに全体の六分の一を消化してまだ半年しか過ぎていない。

「真田丸」の主人公が討ち死にする慶長二十年(1615年)まで三十三年あるのにだ・・・。

その間に主人公の父親は・・・武田勝頼、織田信長、滝川一益、上杉景勝、北条氏政、徳川家康と・・・主を変えること六人目・・・。同じ職種だけど一月ごとに転職している計算である。

家族としては・・・もういい加減にして・・・と言いたいところである。

そういう話を面白いと考えるかどうかは・・・あなた次第・・・。

キッドは今世紀の大河ドラマ・ベスト3入りは確実の面白さだと思います。

で、『真田丸・第9回』(NHK総合20160306PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・小林大児を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は甲州透破の頭領ともされる信濃国衆・出浦昌相の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。出浦対馬守あるいは出浦守清は真田忍びの中でも特異な存在でございますねえ。村上義清の一族ですから・・・武田に臣従した時点ですでに裏切り者・・・その中で武田忍びのトップに踊り出たわけですから・・忍びの腕は超一流だったのでございましょう。まさに忍びの中の忍びとして本作中の存在感抜群でございますな。演じる寺島進の最高傑作になるような気がいたします。忍びとは・・・相手を動かすもの・・・でございますので・・・昌幸と昌相はどちらが主従か判別不可能な関係ですな。昌幸が昌相を御しているのか・・・昌相が昌幸を制しているのか・・・忍びと忍び操りつられ・・・でございます。二人とも・・・相当な人形使いであった感じが実に生々しい。その一点をとっても・・・「真田丸」の傑作性が窺われると申せましょう。孫子の言う兵法の基本・・・「戦わずして勝つを最上とする」・・・教養ある武士ならば誰もが知っている極意の深みを・・・登場人物たちが手を変え品を変え・・・主人公に悟らせる今回。きりの投げた饅頭が・・・信繫に補給路分断の策を想起させたことを・・・強調しておきたいと考えます。

Sanada009天正十年(1582年)八月一日、諏訪頼忠が籠る諏訪・高島城を攻略中の徳川家康配下の酒井忠次は撤退を開始。北条勢は北条氏直が佐久・小諸城まで南下し、北方から四万の兵で甲斐攻略を開始する。北条氏邦一万が東から、北条氏忠一万が南から・・・と総勢六万の大軍勢である。八日、甲斐国新府城で酒井忠次と合流した徳川家康は総勢一万。九日、北信濃から北条勢が引き上げたことを確認し上杉景勝は越後国に撤兵。十日、御坂峠を越える南方軍団迎撃のために鳥居元忠の別働隊二千が新府城より出撃。十二日、黒駒で徳川別働隊が北条南方軍を急襲。五倍の兵力差をはねかえし、徳川勢が勝利する。若神子城まで南下し・・・新府攻撃の機会を窺っていた氏直軍は停滞。二十二日、信濃国福島城の木曽義昌が徳川家に臣従。九月、家康配下の依田信蕃は佐久周辺で北条勢の後方撹乱作戦を開始。十九日、木曽義昌は城内の真田家人質を徳川勢に引き渡す。二十八日、信蕃は真田昌幸の調略に成功。昌幸は家康に臣従する。十月初旬、北条と徳川の対峙は膠着状態となる。十九日、昌幸は北条方の佐久・根津城の禰津昌綱を急襲。真田の離反を知った北条勢は真田一門衆の矢沢一族の篭城する上野国・沼田城を包囲。二十五日、沼田の真田軍は北条勢を撃退。二十六日、信蕃は佐久・春日城を奪還。合流した昌幸と信蕃は北条勢の信濃における補給拠点である小諸城の大道寺政繁を撃破。氏直は大軍を抱えながら南北からの挟撃の危機に陥る。二十九日、信濃国での補給路を断たれた北条家と甲斐国を死守する徳川家の和睦が結ばれる。家康の娘・督姫と北条氏直の婚姻によって徳川・北条同盟が締結された。この同盟によって甲斐・信濃を徳川領に、上野国を北条領にすることが決まり・・・徳川傘下となった真田家の沼田城領有が問題として浮上する。

国衆とは土着の小領主である。小県周辺は海野一族の縄張りであったが・・・村上勢と武田勢の対立を経て・・・武田信玄の先方衆(外様)となった真田家が台頭し・・・緩やかな共同体を形成して、一つの勢力となっている。北信濃でかっては敵対した村上一族に連なる高梨衆が臣従したり、同じ海野一族である根津家や望月家が敵となったりもする。

そもそも・・・真田一族は忍者の集団であり・・・腕を諸国に売る傭兵集団の側面も持っている。

昌幸の父・幸隆は兄弟・郎党に恵まれ・・・ついに信州・小県の真田の里から上州・沼田城に至る真田の領土を作り上げた。

猛将であった兄・真田信綱亡き後・・・跡目を継いだ昌幸はどちらかと言えば智将である。

しかし・・・父親の残した忍びの軍団を率いることには兄よりも長けていたと言えるだろう。

昌幸の血統には優れた術者が生まれる。

庶子である幸村は猿(ましら)使いだった。

同じく庶子でくのいちとなった初音は暗殺の達人となっている。

真田くのいちを率いる三女の銀杏は白鳥(しらとり)使いである。

猿も白鳥も・・・ともにオシラサマと呼ばれる憑依神の術である。

昌幸自身も忍び修行による気の使い手であった。

しかし・・・修行の半ばで・・・信玄公に近侍したために・・・その能力は忍びというよりも軍略家という傾向が強い。

そして・・・弱肉強食の戦国の世にあって・・・昌幸は合戦の鬼となっていく。

真田の里の忍び小屋に入った昌幸は・・・気を用いて神仙の領域に入り・・・変化する状況を読んで行く。

北に上杉・・・西南に徳川・・・東南に北条・・・大勢力に囲まれて・・・真田一族を守護することは・・・薄氷の上をあるくことに似ていた。

上杉に臣従する真田の行く末・・・徳川に臣従する真田の行く末・・・北条に臣従する真田の行く末・・・交錯する運命の糸をたどり・・・正しい縫い目を作らねばならない。

ひとつ道を間違えれば滅びが待っている。

「結局・・・ここは徳川か・・・」

霧に包まれた部分もあるが・・・大方の道は見出せた・・・そう感じた昌幸は・・・呼吸を整え・・・夢と現の境界を乗り越える。

目の前に・・・幸村の顔があった。

「・・・戻られましたか・・・」

「うむ・・・国境の様子はどうだ・・・」

「北条勢と徳川勢は・・・相変わらずにらみ合いを続けております」

「ふ・・・あれだけ多勢をもって新府城を囲みながら・・・北条の意気地のないことよ・・・」

「北条の戦は・・・そういうものなのでございましょう・・・おかげで沼田もなんとか持ちこたえております」

「幸村・・・猿使いは今・・・誰が残っておる」

「三蔵がおります」

「呼べ・・・」

「すでに控えさせております」

「小諸城に忍ばせるのだ」

「では・・・徳川様に・・・」

「うん・・・馳走してやるのだわ」

山猿を従えた三蔵が忍び小屋の猿の間に入った。

幸村は・・・神通力により・・・三蔵に猿の目を与える。

三蔵自身の能力を幸村が呪文で増幅するのである。

座禅を組んだ三蔵は無我の境地に誘導されていく。

「ましらのかみにたまあげてましらのまなこおりたまえ」

三蔵は座禅を組んだまま動きを止める。

突然・・・山猿が幸村を見上げた。

幸村は頷いてつぶやく・・・・

「小諸へ・・・」

山猿は忍び小屋を出ると驚くべき迅速さで・・・林の中に消える。

今・・・三蔵の意識は・・・山猿の中にあった。

林の中に真田忍びの鎌原佐兵衛が待っていた。

山猿は佐兵衛の背に乗る。

佐兵衛は山猿を担いで小諸城へと向う。

城につけば・・・山猿を放つだけである。

どのような城壁も・・・山猿にとって・・・意味を為さない。

三蔵は山猿の目を使い・・・城内を覗くことができるのである。

猿(ましら)斥候(うかみ)の秘術である。

遠く離れた山猿の目と三蔵の口は霊的な繋がりで結ばれている。

真田一族にとって敵城に忍びこむことは・・・児戯に等しかった。

小諸城の様子は・・・軍備から兵糧にいたるまで・・・昌幸の知るところとなった。

攻城の支度が整うと幸村は盲人となっている三蔵を背負い・・・現地へ進出する。

真田忍びが配置に着くと・・・山猿の三蔵は弾薬庫に忍びこみ・・・放火した。

まもなく小諸城は落城した。

関連するキッドのブログ→第八話のレビュー

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