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2016年4月30日 (土)

ちぐはぐですがなにか(岡田将生)童貞ですがなにか(松坂桃李)浪人ですがなにか(柳楽優弥)クズですがなにか(太賀)

21世紀の「ふぞろいの林檎たち」であるこの作品は苦い危うさに満ちている。

「あまちゃん」で都会の女子高校生が田舎娘に擬装することで再生する物語を描いたクドカンはいつものタッチで「ごめんね青春!」を描いた後で・・・漂流しはじめたようである。

圧倒的な黒い影と・・・主人公の不在。

勧善懲悪の世界観しか受容できなくなってしまったお茶の間への不信感が・・・じわじわと滲みでる。

「あまちゃん」はいつの間にか消えて世界から忘れ去られようとしている。

アイドルの再生はクドカンの必殺技の一つであるが・・・自分で作り上げてしまった偶像が落ちて行くのを食い止めるのは至難の業だ。

世界は芸術のためではなく・・・ビジネスで成立しているからである。

クドカンの中に澱んだ憤りが出口を求めて彷徨っているようだ。

あくまで・・・妄想です。

で、『ゆとりですがなにか・第2回』(日本テレビ201604242230~)脚本・宮藤官九郎、演出・水田伸生を見た。「ゆとり」という世代はもちろん虚像である。いつの世にも既得権益を持つものたちは後から来るものを疎外しようとする。そこに摩擦は常に生じる。平和な時代が続き、停滞する社会ではその圧力は強まる一方である。素晴らしいインターネットが提供する圧力低下機能がいつまで続くか不明である。抜かれたガスは悪臭を漂わせながら社会の閉塞感をますます強めていくだろう。

「死」はすぐそこにある。

大地が揺らぎ、一瞬で数十人を殺したとしても・・・この国では毎年、何十万もの人々が終焉を迎えているのである。

それが自然でどうということはないのである。

それでも人々は・・・平穏な日々が明日も続くとは限らないということから必死に目をそむけるものだ。

自分が叱責した部下が・・・社会性の欠如した怪物とは知らず・・・自責の念にかられる坂間正和(岡田将生)は要領の悪いグズな男である。

会社に素晴らしいインターネットの世界で辞意を表明した山岸ひろむ(太賀)が自殺することを懸念して奔走する正和は・・・。

死体を確認することに尻ごみするという根性のなさで・・・赤の他人の死体をひろむだと思いこむ。

そこで自殺した男の母親である明子(真野響子)と知りあうのだった。

息子を失った明子は激しく動揺し・・・泣き明かすが・・・その態度はどこか病的だった。

「感情的になってはだめよ」

赤の他人である正和に息子の遺品である「忍耐」の文字の刻まれたアクセサリーを渡すのだった。

明子のそういう態度が・・・息子を死に追いやった可能性は高い。

一方、教育実習生の佐倉悦子(吉岡里帆)から好意を告白された小学校教師・山路一豊(松坂桃李)は・・・その気になるが・・・悦子は校長に不適切な関係を詰問されると・・・一豊に言い寄られた風に伝えるのだった。

恋愛経験が皆無の一豊は対応に苦慮するのである。

相談された「レンタルおじさん」(吉田鋼太郎)と正和は・・・一豊が童貞であることに驚愕し・・・なんとなく蔑むのであった。

「そこかよ」と不満に思う一豊。

「そ」と聞いただけで「草食系」を連想するほど・・・自分に女性経験がないことに敏感な一豊だった。

なにしろ・・・あの正和にさえ・・・エリアマネージャーとして居酒屋チェーンの杉並・世田谷地区を担当している同期の出世頭である宮下茜(安藤サクラ)という交際相手がいるのだった。

一豊はゆとり差別の前に性体験格差社会の軋轢にさらされる。

そして・・・実はゆとりある暮らしをしているレンタルおじさんの息子、道上まりぶ(柳楽優弥)は案の定、妻帯者で子持ちだった。

まりぶは東大受験に失敗して十一浪中だったのだ。

「なぜ・・・そこまで・・・」と問う正和。

「ほどほどの大学を出て・・・ほどほどの会社に就職して何かいいことありましたか・・・」と応じるまりぶ。

とにかく・・・なんとなく・・・お先真っ暗な感じの群像劇なのだ。

正和の妹・ゆとり(島崎遥香)は就職活動に行き詰まりを感じ、現実逃避を図る。

ついにやり場のない怒りを爆発させる正和。

「社会に出てもいいことなんてひとつもないよ・・・でも・・・そのままじゃ口惜しいから・・・元をとるまでやり続けるしかないんだよ・・・お前もがんばるしかないんだ」

温厚な正和の逆上に覚醒するゆとり・・・。

家族たちも爽快な気分になるのだった。

兄の宗貴(高橋洋)は雑巾味のビールの在庫を抱えた鬱屈を一瞬忘れることができたらしい。

だめだな・・・この一家はダメだ・・・遠からず滅亡する。

そういう一部お茶の間の危機感が高まる中・・・正和はひろむにパワーハラスメントの容疑で訴えられるのだった。

「まず・・・土下座しろよ」と凄むひろむに・・・腫れものに障るように接する上司の早川道郎(手塚とおる)や宮下茜・・・。

孤立した正和は立ちすくむ・・・。

ドス黒いな・・・。

主題歌は「あんたの正義は一体なんだ?」と歌うのだが・・・そもそもお前たちは何様なのだと思わずにはいられない今日この頃である。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

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#2「あんたの正義は一体なんだ?」2016.4.24 駅で若いサラリーマンの人身事故に遭遇した正和(岡田将生)は、部下の山岸(太賀)が自殺したのだと思い込み、大混乱。まもなく無事が確認されるが、正和からのパワハラによる苦痛を理由に辞職するという連絡が、宮下(安藤サ…... [続きを読む]

受信: 2016年4月30日 (土) 17時37分

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