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2016年4月27日 (水)

反復こそ修練(黒木華)溺れるものと浮き輪(荒川良々)退屈な日々に温泉(最上もが)

そこにいけばどんな願いも叶うという。

憧れの彼方の涅槃の国。

エンターティメントの目指すひとつの理想郷。

この世の憂さの捨て所。

そういうものを想起させるこのドラマ。

マンガ雑誌編集部という名のディズニーランドである。

甘いねえ。

甘いよう。

一歩足を踏み入れたら・・・現実が虚しくなってしまうのだった。

で、『重版出来!・第3回』(TBSテレビ20160426PM10~)原作・松田奈緒子、脚本・野木亜紀子、演出・福田亮介を見た。苦しみと喜びは裏表である。基本的にトレーニングは苦しいものだ。しかし、トレーニングをなんらかの事情で禁じられたら・・・トレーニングができない苦しみに襲われる。トレーニングに喜びがあったことが・・・トレーニングをしないことで分かるのである。苦行にも似た仕事から解放された時、離職者が味わう喪失感の源泉である。人は苦痛から逃れたいと思いつつ、苦痛に慣れ、やがて苦痛に恋焦れるようになるのだった。働かないものはその喜びを知らないのである。

週刊連載を抱える漫画家の苦行。

一週間に一度完成原稿の締め切りがあり、その直後から次週への準備が始る。そのサイクルは人気がある限り、死ぬまで続くのだ・・・そうでもないだろう。

週刊コミック誌「バイブス」編集部の新人編集者・黒沢心(黒木華)は読者アンケートの人気投票1位である看板作品「ツノひめさま/高畑一寸」の担当となる。

大丈夫か・・・とお茶の間は危惧するのだが・・・前担当者の五百旗頭(オダギリジョー)と編集長の和田(松重豊)が生温かく見守るので安心なのである。

最高のものを賞味しなければ・・・次のステップには進めないという社員育成プログラムなんだな。

もちろん・・・作者の高畑一寸(滝藤賢一)はもはやあまり手がかからない実力者なのであった。

ただ・・・一点を除いては・・・。

それは・・・プライベートで・・・交際中の元読者モデルの梨音(最上もが)に何かあると・・・作品に乱れが生じるという・・・芸術家にありがちなポイントだった。

そして・・・多忙な高畑が・・・梨音を退屈させ・・・その結果、梨音が消息不明となり・・・高畑の原稿に問題が発生するのである。

安易な展開としては編集者が作者のプライベートに介入して愛人の居所を捜索するわけだが・・・このドラマでは編集者は編集者としての地道な仕事を継続し、コツコツと正攻法で迫るのである。

まあ・・・実際は金の卵を生むガチョウの生活は軟禁状態に近いわけだが・・・おいっ。

担当編集者として作品に添えられる「煽りの惹句」を百本書いて、指導担当の五百旗頭に全部ボツにされるという修行中の小熊こと心。

その頃・・・つまんない病を発した梨音は家出して、高畑半狂乱が発生していたのである。

締め切りの遅れはなんとか取り戻せたが・・・次回のネーム(下書き)の出来を不安に感じる上司たち。

なんとか・・・「煽り」を「ぬっくぬっく」で乗り切った心だったが・・・高畑は「ぬけなくなっていたのだった」・・・おいおい、下ネタじゃないか。

一方、人気投票で・・・連続最下位記録を更新し、連載打ち切りが決まった「黄昏ボンベイ」の作者・成田メロンヌ(要潤)の担当編集者である壬生(荒川良々)は小学生の頃の実体験である「プールで溺れる悪夢」にうなされていた。

和田編集長に「メロンヌをつぶすなよ」と励まされても・・・素直になれないのである。

「じゃ・・・どうして連載打ち切るんだ」と思わずにはいられない。

キャバクラ接待も不調に終わる。

「まさかのムンバイ、ふりむけばガンジス」という説明しなければ誰にもわからないギャグもまったく浸透していなかった。

インドのボンベイが・・・正式名称ムンバイになったり・・・ボンベイからはガンジス川なんて見えないという大前提(フリ)が分からなければ・・・オチないのである。

それはアトランティスは大西洋、ムーは太平洋的な話だからな。

たとえがわからんわ。

オードリー・ヘップバーンが本当はオードリー・ヘボンだとしても・・・ヘップバーンでいいじゃないかという話である。

ますます、わからない。

ビルマの竪琴がミャンマーの竪琴に・・・。

もう、いいぞ。

壬生は「黄昏ボンベイ」を打ち切りに導いた読者アンケートの人気投票を憎悪するが・・・新作の話に応じず引退を匂わすメロンヌの態度にも焦燥する。

作者と読者の板挟みになってしまった編集者である。

一方、失意の高畑の「次回のネーム」を見た心は違和感を感じる。

「話が面白くない・・・」

率直に感想を高畑にぶつけた心だったが・・・。

「素人に何がわかる・・・ここはダレ場なんだよ・・・動に行く前の静だ・・・長期連載にはこういう流れも必要なんだよ」

しかし・・・五百旗頭は心に教育的指導を与えるのだった。

「最初にどう思ったかだ・・・私たちは誰に給料もらっていると思う?」

「会社です」

「読者様にだよ」

「・・・」

「読者を喜ばせるために・・・作者を甘やかすな」

「はい」

「いいか・・・たとえば・・・煽りは・・・読者へのサービスであると同時に作者へのメッセージだ」

読者アンケート担当だった心は・・・読者の「心」を作者につたえる編集者の役割を会得する。

心は読者を代表して「ぬっくぬく」ではない言葉を捜すのだった。

一方で・・・実家の母親に呼び出され・・・私物の整理を命じられた壬生は・・・。

子供のころに愛読した「少年サンデー」に残る・・・「出さなかった読者アンケート」を発掘する。

「切手代もバカにならないからな・・・」

その中に幼い自分からのメッセージを感じる壬生。

(子供だからといって子供だましが通じると思うなよ)

ああ・・・と思う壬生。

「読者って・・・結局・・・みんな・・・俺自身だったんだなあ・・・」

二人三脚と一体化は違う。

円滑な人間関係構築のためにはあくまで適度な距離感が大切なのだ。

壬生は編集部で読者アンケートを見直すのだった。

一方・・・高畑に特攻をかけた心。

「やはり・・・ネームを手直ししてください」

「しない」

「でも・・・あのままでは面白くありません」

「素人に何がわかると何度言えば」

「わかります・・・私はついこの間まで・・・先生の作品の愛読者でしたから」

「・・・」

怒って心を追いかえした高畑の目に心の届けた次号の印刷見本が飛びこむ。

そこに書かれた「煽り」は・・・。

弱い・・・弱すぎる・・・どこかに強い男はおらぬのか

「なんだとっ」

奮起した高畑が机に向かった瞬間・・・。

温泉から梨音が帰還するのだった。

すかさず、一発ぬくぬくなところで抜いた高畑は・・・おいっ。

神気充実して・・・傑作を描くのである。

清々しい話だ。

一方・・・壬生はメロンヌにアタック。

「やめないでください」

「でも・・・」

壬生は一枚の読者アンケートを見せる。

(先生の漫画、最高です)

「この読者を泣かせるわけにはいきません」

「読者なんか・・・みんな敵だと思っていた」

「僕は・・・バカだと思ってました・・・でもバカは僕だった」

「・・・」

「この読者は味方です・・・味方をもっと増やしましょう・・・そのためには前に進むしかありません」

メロンヌは歓喜の涙を流し微笑んだ。

こうして・・・二人の漫画家は窮地を脱し、編集者は一つの成長を遂げたのである。

「給料は読者がくれるですよね」

「勝手に使うな・・・著作権は俺にある」

「利用許諾申請を出せばいいですか」

「どこに出すんだよ」

心には梨音のような「女の武器」はないが・・・鍛えられた心身があるのだった。

漫画家の体力では心の開いた扉を閉ざすことはできないのである。

スポコンなんだな・・・。

「いいぞ・・・心・・・目指せ・・・打倒エンペラーだ」

「いつか・・・ジャンプも」

「それは・・・無理だな」

「え」

「そんなサンデーとかマガジンでいいんですか」

「うちは・・・バイブスだから・・・」

「キング的な・・・位置ですか」

「おいっ・・・いつの時代だよ・・・せめてチャンピオンと」

次回は・・・ついに新人殺しの噂の高い安井(安田顕)と「毒と言う名の夢」を抱えた新人漫画家たちの登場らしい・・・。

まあ・・・毒は薬の一種だからな。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

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コメント

キッドさん☆こんばんは!

前回はちょっとシンプルすぎる気がしてしまいましたが
第3話 専門的な用語もあってやや集中力も必要でしたが
とっても面白かったです‼︎
で 来週はもっと面白くなる予感がします♪

TBS火10 恐るべし
前クールは深キョンが可愛くてただ ただ癒されてましたが
今回はドラマ本来の魅力に溢れていて
枠的に気楽なのか 中身で勝負してる感じですね

少年コミックスの知識がなくて
会話を聞いてもピンとこないのが残念ですが
漫画好きな人はもっとずっと楽しめてるんでしょうね
うらやましいです^ ^

子供の頃書いていた 読者アンケートを見つけて読むところが
なんだか懐かしくてあったかな気持ちになりました

投稿: chiru | 2016年4月27日 (水) 21時53分

シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン

職場に基本的に悪い人がいない・・・
もちろん・・・これから出てくる可能性もありますが
つまり・・・心の目には
悪人が映らないんですよね。

それは何故か・・・
心にとって仲間も
「敵」に過ぎないし・・・
敵こそが・・・最良の友なんですよね。
それが・・・競技というものでございます。

心にとってすべてが「試合」・・・。
勝っても負けても・・・
それは「努力」の結果に過ぎない・・・。

実に清々しい生き方です。

つまり・・・これは・・・
スポーツ根性もの・・・。
「巨人の星」や「あしたのジョー」
「アタックNo.1」や「エースをねらえ」
と同じなのですね。
百本書いてダメなら
もう百本・・・。

もう・・・すごいよ、心、すごいよ。
そう感嘆するしかないドラマだと考えます。

投稿: キッド | 2016年4月27日 (水) 22時45分

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