恋愛なんて恥ずかしい(大野智)社長と新入社員の色恋沙汰は気持ち悪い(波瑠)恥ずかしくて気持ち悪いことを教えてやろう(北村一輝)
湯浅五助は関ヶ原の合戦(1600年)で敗れた西軍の武将・大谷吉継の家臣である。
本年度の大河ドラマでは大谷吉継を片岡愛之助が演じている。
吉継は陣中で自害し、遺言で近習の五助に「敵にわが首を渡すな」と命ずる。
五助は戦場から離脱し、主人の首を土中に葬る。
しかし、そこに東軍の武将・藤堂高虎の甥の藤堂仁右衛門がやってくる。
「それは・・・主の首か」
「それがしは大谷刑部少輔の家臣、湯浅五助と申す者・・・わが首を授ける代わりにこのことは他言無用と願いたい」
「承った」
湯浅五助の首実検の席で東軍の総大将である徳川家康は仁右衛門を問いつめる。
「湯浅五助と言えば大谷刑部の配下として名の知れたもの・・・主の首の行方を確かめたか」
「そのことについては聞き及びましたが申すことできませぬ」
「その首討たれてもか」
「御意のままに」
事情を察した家康は仁右衛門を赦し、報奨を与えたという。
五助の忠義、仁右衛門の侠気、家康の威徳を讃えた美談である。
で、『世界一難しい恋・第3回』(日本テレビ20160427PM10~)脚本・金子茂樹、演出・中島悟を見た。拾った仔犬の名前を一緒に考えてほしいと社長室企画戦略部の新入社員・柴山美咲(波瑠)に頼んだ「鮫島ホテルズ」の社長・鮫島零治(大野智)だったが・・・仔犬の飼い主がみつかって命名権は失われるのだった。
「残念です・・・割と気に入った名前だったのに・・・」
「なんて名前だ」
「五助です」
「ごすけ・・・」
「戦国時代から安土桃山時代の武将で・・・主人に忠義を尽くした人の名前です」
「歴史に詳しいのか」
「社長に忠実な犬に育つようにと願いをこめました・・・」
「・・・そうか」
「彼女」が自分のために考えてくれた名前・・・それを無駄にしたくはない零治だった。
「彼女のためにも犬を飼おうと思う」
「よろしいですね」
お抱え運転手の石神剋則(杉本哲太)は同意する。
しかし、秘書の村沖舞子(小池栄子)は・・・。
「柴山美咲はまだ社長の彼女じゃありませんし、犬も飼いません」
犬の世話をするのが自分だと察知した有能な秘書である。
秘書と運転手は手のかかる子供を持った両親のような存在なのだ。
馬鹿な子ほどかわいいと言うが・・・多くの子供は馬鹿であり、多くの親は親馬鹿なのである。
私生活は馬鹿丸出しの零治だが・・・仕事はそれなりにできるらしい。
白浜部長(丸山智己)の提出した書類を裁断し、没企画をシュレッダーにかける零治。
その手が止まる。
「鮫島ホテルズ京都のエントランス及びロビーの全面的改装案」
提出者が「彼女」だった。
「これは・・・一考の余地があるな」
「それではただちに準備のためのプロジェクトチームを・・・」
「少数精鋭でいい・・・俺と君とあと一人・・・」
「提案者の柴山くんでは・・・いかがでしょうか」
「君がいいというならそれでいい」
「彼女」との接点が増える可能性に天にも昇る気持ちの零治。
完全なる公私混同だが・・・怪物くんのやることだから・・・仕方ない気持ちになる一部お茶の間だった。
なにしろ・・・零治はホテルの経営力に特化した小学生のようなものなのである。
趣味のキノコの写真「タモギタケ」が雑誌「キノコ便り」の読者投稿欄で佳作として掲載され・・・勝った気分になる零治だった。
一方、秘書の舞子は五年連続世界一の「ステイゴールドホテル」の和田社長(北村一輝)から・・・柴山美咲を引きぬく話をもちかけられ困惑する。
「彼女とはパリで食事をしたこともある」
「その話は無理だと思います」
「なぜ・・・鮫島くんは社員にあまり固執しないだろう・・・まさか」
「・・・」
「へえ・・・彼は彼女みたいなのがタイプなのか・・・」
「私は何も申し上げておりません・・・」
「だが・・・彼女は彼には荷が重いんじゃないのかな・・・」
意味深な発言をする和田社長にやや翻弄される秘書の舞子だった。
とにかく・・・野獣同志の対峙である。
一方でキノコの写真で彼女を攻略しようとする小動物のような零治に不安を隠せない舞子。
「そういう段階では・・・」
「ギャップ萌えだよ」
「はあ・・・」
「この写真を見たら・・・彼女は聞いてくるぞ・・・キノコがお好きなんですかって」
「・・・」
「そしたら・・・俺はこう答える・・・好きさ・・・君と同じくらいになって」
「キノコが好きなのかどうか・・・聞かれなかったら」
「自分から言うさ・・・俺はキノコが大好きなんだ・・・君のこともだって」
「・・・言えるんですか」
「そんなことも言えなくて・・・社長が務まるか」
だが・・・言えない零治だった。
それどころか・・・雑談で・・・美咲が和田社長とパリで食事をしたことを知り・・・激しく動揺する。
自宅のベッドで不貞寝する零治。
「俺は彼女に裏切られた」
「彼女じゃありません」と秘書は言い聞かせる。
「あいつのことなんか嫌いだ・・・明日、クビにしてやる」
「食事をしただけじゃありませんか」
「パリで食事をしたらキスくらいする」
「男は狼になりますね」と運転手。
「キスしたかどうか・・・確かめたらいかがです」
「それはちょっと・・・」
「もうキライならできるはずです・・・根掘り葉掘り聞き出して・・・それから解雇なさればよろしいかと」
「・・・」
社長室に美咲を呼び出す零治。
「和田社長と食事をしたとか・・・」
「ヘッドハンティングされました」
「どうして・・・世界一のホテルに行かなかったんだ」
「世界一のホテルに就職するより、就職したホテルを世界一にした方が自分に向いていると思ったからです」
「・・・」
「それに・・・鮫島ホテルズには何度も宿泊して・・・自分にとって理想のホテルだと感じました」
「初耳だな」
「面接試験の時にも申し上げましたが・・・」
「君の気持ちはよくわかった・・・これからも精進してくれたまえ」
地獄から天国へ生まれ変わった気分の零治である。
「もう・・・告白する必要はない・・・」
「何故です・・・」と秘書。
「彼女は鮫島ホテルズを愛している・・・つまり・・・俺を愛してるのも同じだ」
「それは飛躍のし過ぎというものです」
「何故だ・・・ナウシカやラピュタが好きなら宮崎監督が好きだろう」
「そうですね」と運転手。
「俺が・・・仕事をこれまで以上にこなせば・・・彼女は我慢できなくなって・・・向こうの方から告白してくるだろう」
「なぜ・・・社長から告白してはいけないのですか」
「そんなの・・・恥ずかしいじゃないか」
新しいホテルの買収計画を社長一人で行うと宣言する零治。
買収候補の選考に一人で挑むが・・・当然のこととして美咲はノーリアクションである。
零治は藁にも縋る思いで・・・社長室で唯一既婚者の音無部長代理(三宅弘城)を召喚するのだった。
「今度のホテルではブライダル事業にも力を入れたいと考えている・・・君の率直な意見を聞きたい」
「しかし・・・私は奥手で・・・妻にも告白できなかった男ですし・・・参考になるかどうか」
「告白しないのになぜ、結婚できた」
「妻には連れ子がいまして・・・とてもかわいい子で・・・その子のことは素直に褒めることができたんです・・・妻は・・・それに感激して・・・私と家庭を作りたいと・・・」
「なるほど・・・」
買収先として決定したホテルの視察に美咲を同行させる零治。
後部座席に美咲と並び遠足気分でウキウキする零治である。
「しりとりでもするか」
一瞬の沈黙を破り、美咲が応じる。
社長の茶目っ気に付き合ったのだろう。
「なりたくうこう」
「う・・・うさぎ」と秘書。
「ぎ・・・ギンガムチェック」と運転手。
「く・・・クラシック音楽」
「く・・・・クビアカトラカミキリ」
零治がクビの代わりに告げた虫の名前を覚えていた彼女の愛に心躍る零治だった。
聖なる小悪魔的魅力を発露する美咲・・・さすがだな。
すました顔で正座しているだけで・・・男を誘惑する技量だ。
現地にて・・・。
「ここにはフランス料理のレストランを置く」
「展望も素晴らしいですし・・・よろしいですね」
「名前も決めてある・・・ゴスケだ」
「え」
「君の可愛い子供のような名前だからな」
「・・・ありがとうございます」
社長の真意を量りかねる美咲だった。
新ホテル発足に向けて社長室で内輪のパーティーが催される。
その席で・・・美咲と同期の新入社員だが・・・新卒の堀まひろ(清水富美加)は大胆にも社長の恋愛事情に斬り込む。
「社長は結婚なさらないんですか」
「・・・そろそろとは思っている」
「私の友人で・・・入社一ヶ月で社長にプロポーズされた子がいるんですよ」
「そうなのか」
「美咲さんは・・・どう思いますか・・・そういうの?」
「私は・・・そういうのは・・・ちょっと気持ち悪いですね・・・」
ショックで・・・社長室に退避する零治だった。
「社長・・・」
「もう・・・だめだ・・・」
翌日から出張する社長だった。
まひろは美咲の真意を問う。
「私は・・・うらやましいなと思ったのに・・・」
「でも・・・せっかく就職して・・・これから働こうと思っていたのに寿退社なんて・・・なんだか残念でしょう」
「私は・・・それでも構わないと思ったけど・・・美咲さんは違うんですね」
「私はいつか・・・自分のホテルを作りたいの・・・それが子供の頃からの変わらない夢なので」
「びっくりぽんです」
山奥で・・・一人・・・キャンプをして・・・キノコ観察に逃避する零治。
思い倦ねた秘書は・・・和田社長に救援を求めるのだった。
零治のテントを夜襲する和田・・・。
「大事な話がある」
「・・・」
「新入社員に惚れるなんて器の小さな男に出来ることではない」
「でも・・・気持ち悪いって・・・」
「そういう女ほど・・・落しやすいんだよ」
「ええっ」
「そういう女は・・・そういう可能性を自分の中に見出して、予防線を張っているんだ」
「そうなんですか・・・」
「私を誰だと思っている・・・私は入社一週間の社員を口説き落したことがあるんだよ」
「えええっ」
「恋愛とはいつも二手、三手先を考えて行うものだ・・・」
「師匠と呼んでもいいですか・・・」
「勝利の栄光を君に・・・」
零治は恋愛軍師を手にいれた!
まあ・・・和田は美咲を落せなかった男なんですけどね。
関連するキッドのブログ→第2話のレビュー
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コメント
キッド様、3話もレビューして下さり嬉しいです。
お蔭さまで、湯浅五助について学ぶこともでき、感謝でございます
大野さんファンとしては、ちょっと初めはドキドキしてました…
主人公の今までの人生とか、考えてる事とか、そういうものが一切なかったので、入り込みにくくて。
でも、だんだんと、この脚本家さんの魅力が分かってきました。なんか外堀から埋めてるというか、全員でコメディを作っていく感じというか…。
初め、運転手さんが寡黙だったので、「杉本哲太の無駄遣いか!?」とハラハラしましたが、いまでは「杉本哲太の骨休め」と捉えております(笑)ドラマ全体が驚くほどノンビリ平和なので。ライバルでさえ猫侍ですからね、もう危険は何もない!
次はお父さんが登場するので、鮫島家に関していろいろ語られたらいいな~と期待してます。
キッド様のレビューを読めるのが最高に楽しみです
投稿: なつ | 2016年4月30日 (土) 00時22分
カイブツクンノトモダチハ?~なつ様、いらっしゃいませ~ヒロシクンデス
学校では教えてくれない歴史的人物ですからねえ。
この脚本家は腕は達者なのですが
キャラがどうしても
優柔不断で草食系になるので
好みが分かれますねえ。
その点、怪物くんや死神くんもこなす
大野さんは普通の人ではないようなものを
見事に演じていますな。
この社長がかわいいと思えれば大丈夫でしょう。
秘書と運転手は母親と父親のように
尽くすタイプ・・・。
そういう人に尽くされるのは
気持ちのいいことですからねえ。
実の両親だと
こうまで甘くできないし・・・。
しかし、社長は無能というわけではない。
有能だけど・・・どこか欠陥がある。
そこが面白いわけですよね。
はたして・・・ヒロインは・・・
今、社長をかわいいと思っているのかどうか
素晴らしいポーカーフェイスで
全く読ませないヒロインの演技力はさすがです。
しかもなかなかに魅力的ですからね。
哲太は連夜の登場で
それぞれ素晴らしい脇役を務めており
トレビアンなことだと思います。
投稿: キッド | 2016年4月30日 (土) 19時16分