世界一難しい恋(大野智)お風呂上りに牛乳二本飲むことです(波瑠)
四月第二週にスタートした春ドラマは(月)「ラヴソング」(火)「重版出来!」そして(水)のコレとよどみない展開である。
フジテレビ→TBSテレビ→日本テレビと遡っているわけだが・・・どれも充分に準備が出来ていて整っている感じがする。
(月)は新人脚本家、(火)は新進脚本家と来て・・・これはもはや中堅といっていい脚本家だが・・・一番、危ぶんでいたところである。
なにしろ・・・油断するとウジウジするからな・・・しかし・・・平均視聴率16.0%とまずまずの成功を収めた「きょうは会社休みます。」のスタッフは・・・またもや脚本家の特性をねじ伏せたようだ。
もちろん・・・主人公はウジウジしているし・・・ヒロインも意味深で初回から泣いているが・・・「社長」のステータスと・・・ヒロインを演じるのが朝ドラマで今世紀最高の平均視聴率23.5%を記録した主人公なので・・・暗雲が立ち込めないのである。このヒロインは長い長い下積みを経ての開花である。凄みがあるのだ。
何より・・・主人公が・・・「怪物くん」とか「死神くん」という・・・人間離れした存在感を持っているので・・・些少・・・ウジウジしても・・・人間界の人々は・・・「大変だもんなあ」と受け入れ可能なのだ。
素晴らしいスタートなのだが・・・谷間予定の水曜日にコレが来ちゃうといろいろとアレなんだな。
で、『世界一難しい恋・第1回』(日本テレビ20160413PM10~)脚本・金子茂樹、演出・中島悟を見た。王様は王様の息子である。王様の父親の父親も王様だ。代々続く王様というものは成り上がりの王様とは違う。少しさびしいのが基本である。なにしろ王様の息子の王様は友達に不自由するものだ。そういう王様は触れるものすべてが黄金になったり、耳がロバになったり、裸になったりするのが宿命なのである。これはロバの耳を持つはだかの王様のさびしさを描いた物語の模様です。
世界一のホテルを目指す「鮫島ホテルズ」の社長・鮫島零治(大野智)は年季の入った姑のようなチェック機能を持ち、抜き打ち検査で「お客様へのおもてなし」をするべき従業員に手抜かりがないかを査定するのである。
おそらく・・・粛清の嵐こそが・・・代々の伝統というものなのだろう。
王様は伝統に従っているのだ。
箱根の「鮫島ホテル」では・・・客室係のベテランである松田(美保純)が・・・部下の不始末の責任をとり早朝解雇されるのだった。
浴場を視察する零治は中途採用となり研修中の新入社員・柴山美咲(波瑠)と出会う。
「何か・・・気がついたことがあるかい」と社長として新入社員に言葉をかける。
「このホテルの自動販売機には牛乳がありません」
「牛乳・・・そんなもの・・・必要ないだろう」
「しかし・・・風呂上りに飲む牛乳は最高・・・ではありませんか」
「そんなものが最高のわけないだろう」
零治は牛乳が嫌いだった。
ま・・・朝食にミルクがつかないホテルはありえないわけだが・・・。
少し、機嫌を損ねた零治は驚くほど有能で・・・忠実無比な秘書の村沖舞子(小池栄子)に問う。
「あんな社員いたか」
「社長が面接して採用さないました」
「え」
「語学が堪能な方です」
「あ・・・」
面接ではロングだった髪がショートに変わっていたために気がつかなかった社長だった。
この時、すでに零治は美咲に恋をしていた。
鮫島ホテルズのライバルはステイゴールドホテルである。
実績は・・・ステイゴールドホテルの方が優勢だった。
ステイゴールドホテルの和田英雄(北村一輝)はなにかと・・・零治を揶揄するのだった。
英雄に恋人(中村アン)を見せつけられた零治は二ヶ月の間に婚約をすることを決意する。
恒例の業界パーティーで婚約者を同伴し・・・英雄を見返す目標を設定したのである。
有能な秘書は・・・まるで母親のように・・・お見合いをセッティングする。
少なくとも・・・地位や外見では・・・それなりにお見合い相手にことかかない零治。
しかし・・・飾らない性格の上に・・・気配りのまったくできない零治の実体に触れた女たちは即刻退散するのだった。
零治評価72点の社長令嬢の志乃(多岐川華子あらため華子・・・今さらか)は「今まで出会った男の中で最低」と云いきるのだった。
「実は・・・今までのお見合いでは・・・先鋒からすべて断られています」
「え」
「社長は・・・正直すぎるのです」
「結婚するのに・・・嘘をつく必要があるのか」
「少なくとも・・・相手の気持ちを忖度する必要があります」
「まさか・・・お客様のように相手をもてなせというのか」
「目標達成のためには必要なことです」
「そんなことは・・・無理だ」
「無理に嘘をつかなくても・・・相手の言葉を尊重すればよろしいのです」
しかし・・・零治採点81点の次なるお見合い相手(長谷川眞優)に「うん、そうだね」という相槌を連発した結果、「無口で不気味」の落胤をおされるのだった・・・。
父親のような・・・お抱え運転手の石神剋則(杉本哲太)も思わず天を仰ぐ・・・。
社長室企画戦略部に配属された美咲・・・。
同期の新入社員に堀まひろ(清水富美加)・・・。
一年先輩で敬語を使う必要のない三浦(小瀧望)・・・。
主任の蛭間(西堀亮)、番頭さんのような部長代理の音無(三宅弘城)・・・。
和田の大学の後輩であり・・・プライベートで交友関係がある・・・いかにも密偵臭い白浜部長(丸山智己)という布陣である。
ちなみに水卜麻美の伝えるニュースでは・・・和田のステイゴールドホテルは業界トップ。
鮫島ホテルズは業界13位~19位らしい・・・。
つまり・・・やたらと社員を解雇する零治は・・・何か重大なミスを冒している可能性があります。
何やら・・・海外の・・・何者かとトラブルを抱えているらしい美咲。
早朝出勤して・・・社長室の清掃をしてみるのだった。
そして・・・社長のペットである魚に餌を与えてしまう。
日課である餌やり業務を奪われた零治は激怒する。
「君は・・・クビ・・・」と言いかけた零治。
しかし・・・何故か・・・美咲を解雇することができない。
「君は・・・クビアカトラカミキリに似ている」と苦しい言い逃れをする零治。
「?」
首を傾げて美咲が退出した後で・・・。
「何故・・・彼女を解雇しなかったのですか」と秘書は問う。
「彼女は・・・ちょうどいい」
「え」
「二ヶ月後・・・和田に自慢するのに・・・申し分ない女だ」
「つまり・・・彼女を好きになったのですね」
「違う・・・ちょうどいいのだ」
「・・・」
つまり・・・零治は美咲に恋をしているのである・・・二度目。
新入社員歓迎会に参加する決意を固めた零治。
「今日は無礼講だ・・・」
「・・・」
しかし・・・緊張する社員一同。
新入社員たちに接近する社長に距離を置く。
「なんだ・・・君たちは嫌われているのか」
「嫌われているのは・・・社長です」
「何?」
「今日は無礼講ですよね」
「そうだ・・・」
「松田さんの解雇をお考え直していただけないでしょうか」
「あれは・・・経営方針に基づいた決定だ」
「・・・」
美咲の目に浮かんだ冷たい色に・・・寒気を感じる零治。
「俺は・・・帰る」
撤退する零治。
「俺は・・・嫌われているのか」と秘書に問う。
「もちろんです」
「・・・それなら・・・なぜ・・・辞めない」
「お給料が抜群だからです」
「・・・」
「失礼しました」
「いや・・・今日は無礼講だ」
「それに・・・敵がいることで団結心が生まれます。我が社の社員同志の結束は固いのです」
「敵とは・・・俺のことか」
「はい」
零治は夜風に吹かれた。
残された社員たち。
「まさか・・・歓迎会が・・・送別会になるとは」
「私・・・クビですかね」
「間違いなくそうなるだろう」
「そうか・・・」
「割と元気そうでよかった」
「無茶苦茶・・・へこんでます」
「・・・」
とりあえず・・・カラオケで盛り上がる一同だった。
社長室に呼び出される美咲。
「これと同じ餌を買ってきてくれ」
「・・・御用はそれだけですか」
「何か・・・問題でも・・・」
「いえ・・・かしこまりました」
美咲が退出すると秘書は問う。
「彼女を解雇しないのは・・・好きになったからですね」
「ちょうどいい・・・と言っただろう」
つまり・・・零治は美咲に恋をしちゃったのだった・・・三度目。
和田に体型について云われたことが発端となって・・・社内には社員専用のジムがあった。
心に鬱屈を抱え・・・一人・・・トレーニングをする美咲を発見した零治。
何故か・・・涙する彼女に・・・声をかける零治。
「大丈夫か」
「お気遣い・・・ありがとうこざいます・・・」
それ以上の言葉をかけることができない零治は・・・運転手に牛乳を買ってこさせるのだった。
牛乳を飲むことで・・・好意を示そうとする童貞・・・じゃなかった純情な零治だった。
「意外に美味いな・・・」
しかし・・・フィットネスでいろいろなポーズをサービスする美咲は気がつかない。
仕方なく・・・二本目を飲む零治。
「社長・・・牛乳はお嫌いなのでは」
「いや・・・思ったより美味い」
「そうでしょう・・・私なんて時には二本飲むんです」
「そうか」
「でも・・・このジムには牛乳は置かれていないのでは・・・」
「これは・・・エレベーターで拾った」
ついに・・・嘘をついた零治。
美咲は・・・つまらないジョークだと思い・・・思わず微笑むのだった。
その笑顔に・・・零治は・・・もういいか。
運転手は微笑んだ。
秘書も微笑んだ。
「今日は月が綺麗なので遠回りしたい気分だ」
しかし・・・秘書は眉をひそめる。
「問題があります」
「なんだ・・・」
「彼女には恋人がいるようです・・・ベルギー人で・・・名前はガブリエル」
「え・・・」
もちろん・・・最終回までは・・・まだまだ難しいことが・・・色々と待っているわけである。
「さびしい王様」を演じる主人公の存在感が抜群だな。
そして・・・ちょうどいい女という圧倒的な美女を演じるヒロインもさすがという他はない。
これはおそらく・・・今季一番ニヤニヤできるドラマになるだろう。
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