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2016年5月31日 (火)

今も昔の恋の中(福山雅治)悲しくなるのを抑えてライブ中(藤原さくら)

「恋」に障害はつきものである。

フィクションで「障害」をどう作るかは脚本家の腕の見せ所と言っても良い。

一般的に「年の差」は「障害」の一種であると言ってもいいだろう。

もちろん・・・愛があれば年の差なんて・・・という考え方も一般的なのである。

主人公を演じる福山雅治は実年齢が47歳である。

ヒロインの藤原さくらの実年齢は20才で年齢差は27歳で・・・年齢差としては父娘ほど違う部類である。

ちなみに福山雅治の実在の妻は吹石一恵で実年齢は33歳・・・年齢差は14歳・・・このぐらいの年齢差は「障害」ではないわけである。

ついでに主人公の友人を演じる田中哲司は実年齢50歳で実の妻の仲間由紀恵の実年齢は36歳。

14歳差でお揃いである。

ヒロインの親友を演じる夏帆は実年齢24歳で・・・その婚約者を演じる駿河太郎は実年齢37歳・・。

惜しいが13歳差なのである。

とにかく・・・福山雅治と藤原さくらの年齢差は・・・「障害」としては弱いわけである。

今の処・・・福山雅治は二十年前の「失恋」・・・実年齢が20歳の新山詩織の死亡に・・・「こだわり」があるのが「障害」になっているわけだ。

その「障害」について詳細を明らかにしないまま・・・ついに終盤戦である。

このままでは・・・主人公がヒロインを好みのタイプではなかっただけ・・・というラヴ・ストーリーになっちゃうよな。

構成ミスだと思わざるをえないのだった。

ヒロインに思いを寄せる幼馴染を演じる菅田将暉は実年齢23歳である。

主人公に思いを寄せる昔の恋人の妹を演じる水野美紀は実年齢41歳である。

その昔の恋人を演じる大谷 亮平は35歳だ。

その年齢差はどちらも6歳。

ただし・・・主人公と後輩の年齢差を考えると・・・少しおかしなことになるわけである。

一回り違うとなると・・・主人公は三十代まで業界にいたことになる。

ヒロインの幼馴染に手を出す年上の子持ち女を演じる山口紗弥加は36歳。

その差は13歳である。

ある意味・・・凄い・・・役だよな・・・。

ヒロインの親友と婚約者の年齢差と・・・ヒロインの幼馴染と童貞を捧げた相手が同じ。

これが計算なのか・・・偶然なのかで・・・評価が分かれるところだ。

ともかく・・・主人公とヒロインが結ばれるハッピーエンドに向かう気配がまったく感じられない終盤戦である。

そもそも・・・主人公がヒロインを愛しているのかどうかも不明だ。

これは・・・失敗じゃないのかな。

ま・・・あくまで「実年齢差」による分析ですけどね。

で、『ラヴソング・第8回』(フジテレビ20160530PM9~)脚本・倉光泰子、演出・相沢秀幸を見た。このドラマで凄いのは主題歌の「Soup/藤原さくら」も劇中歌の「好きよ 好きよ 好きよ/藤原さくら」も「恋の中/新山詩織」も作詞・作曲が福山雅治ということである。「恋の中」なんか「売れた設定」なのである。天才にしかできない芸当だな。主人公を演じる俳優にそこまで要求しているのである。もう少しなんとかしないといろいろとまずいけれど・・・もうここまで来てしまったからな・・・もう笑うしかない。それが大人というものじゃないか。ねえ。

どんなに一生懸命やってもダメな時はある。そういう時は俯いて嵐の過ぎ去るを待つしかないのだ。

そして・・・立ち上がれ!

・・・何の話だよ。

まあ・・・若い人限定のアドバイスですけどね。

年老いて失敗するのは痛いものな。

好きで好きでたまらない人に告白して・・・「君とは音楽がやりたい」と言われた佐野さくら(藤原さくら)である。

そんなさくらに耳鼻咽喉科の増村泰造医師(田中哲司)は「腫瘍があるので・・・場合によっては声を失う可能性がある」と告げる。

もう・・・二回殺されたくらいのヒロインであるが・・・健気に前を向くのだった。

「愛する人」も失って以来ずっと死んでいる神代広平(福山雅治)はレコード会社「トップレコード」のプロデューサー・弦巻竜介(大谷亮平)に恋人の生まれ変わりである「佐野さくら」を売り込もうと必死になり・・・「トップレコード」のトップ・アーティストであるCHERYL(Leola)の担当プロデューサーだかマネージャーだかと楽曲提供のミーティングをする。

「どんな曲を・・・」

「バラードがいいと言ってる」

「バラード・・・」

「あんたの昔のヒット曲・・・愛の中だっけ・・・あんなのいいじゃない」

「恋の中です」

「ああ・・・それそれ」

現場を離れたプロデューサー・弦巻竜介・・・ちっとも偉くなかったんだな。

「鶴巻・・・佐野さんのこと・・・頼むよ」

「ええ・・・」

そういうことが口約束でしかないことを・・・広平は知っているはずだよな。

好きな人にふられ・・・希望の歌を失うかもしれないさくらは・・・バイクのキーを抜き忘れ・・・部屋の鍵穴にバイクのキーを差しこむほどに動揺する。

そんなさくらを中村真美(夏帆)と天野空一(菅田将暉)が迎える。

真美は婚約者との同居生活のために引越しの準備をしていた。

「引越し屋さん・・・早朝しか頼めんかった」

「だから・・・送別会は前の日にやろう」

「私・・・マミーのカレーが食べたい」

さくらにとっては・・・真美はマミー(母)のようなものである。

「私の送別会なのに・・・」

「だって食べたいのじゃあ」

「甘えん坊じゃのう」

医師としての守秘義務などは無視して・・・親友の広平に「さくらの病状」を話す増村医師・・・。

「検査結果を告げる時にお前も立ち会え」

「そんなこと・・・彼女が望んでいるかどうかもわからんし・・・」

「お前・・・いつまでそんな風に・・・ウジウジしてるんだ」

「だって・・・人の人生に踏み込むのは・・・こわいもの」

「・・・」

消極的な主人公に気分のいい日の湯浅志津子(由紀さおり)はアドバイスする。

「恋人と喧嘩したみたいね」

「どうしていいのかわかりません」

「ただ・・・そばにいてあげればいいのよ」

広平は遠くを見つめるのだった。

真美の引越し前日。

婚約者の野村健太(駿河太郎)も交えての送別会。

マミーのカレーは美味しいのだ。

男たちはひそひそ話・・・。

「さくらがピンチなら・・・空一のチャンスじゃないか」

「そうすかね」

「そばにいてやればいいのさ・・・俺がお手本だ」

「あんたは・・・店にお金注ぎ込んだ成果じゃないすか」

「・・・」

真美とさくらは最期のガールズ・トーク。

「私がここまでこれたのは・・・あんたのおかげじゃ」

「そそそれは・・・わわわわたしのセセセセリフじゃ」

「いいや・・・可愛いあんたがおるから・・・ぐれることもできんかったんよ」

「そそそそんな・・・」

「これだけは言うとくけん・・・愛してる」

「そそそそそんなら・・・ののの野村さんからううう奪っちゃる」

「それは・・・あかん」

「ちちちちちっ」

さくらの職場「ビッグモービル」では上司の滝川(木下ほうか)が相変わらず冷淡である。

「おい・・・午後から・・・向こうの作業手伝ってくれ」

「そ・・・早退届け・・・だ・・・・出してます」

「あれ・・・そうだっけ」

恐ろしいことに職場では誰もさくらが吃音症であることに気が付いていない設定である。

職場の人々はさくらが「無口な性格」だと思っているのだ。

設定として・・・結構、つらいものがあるよね。

空一の通う料理学校では・・・離婚して子供を夫に取られた事務員の渡辺涼子(山口紗弥加)が忍びよる。

キスしようとする涼子を飛びのいて拒絶する空一。

酷い男だよな。

「さくらちゃんのこと考えてんの」

「どうしたらいいかな」

「それを私に訊くのかいっ」

とにかく・・・こういう描写では・・・さくらと空一が結ばれないことが分かるばかりで・・・酷いとしか・・・。

検査の結果・・・悪性腫瘍で手術が必要な状態であることを告知する増村医師。

「声帯を失うかどうかは・・・切開してみないとわからない」

「結婚式でスピーチしなければならないんです」

「このままでは・・・結婚式に出られないかもしれない」

「死ぬってことですか」

「とにかく・・・切開してみないとわからない」

とにかく・・・死ぬか・・・手術かという設定である。

手術の場合は・・・声を失うかもしれない・・・という設定である。

まあ・・・無茶苦茶安易じゃないですかと言われたら・・・それまでなのである。

勇気を出して待合い室で待つ広平。

「せせせ先生・・・どうして」

「君は・・・」

「わわわ私は・・・喉の調子が悪くて・・・でも大したことないって・・・薬飲んで寝てれば治るって」

「増村から・・・病状については聞いている」

「・・・」

「僕にできることは・・・何でもしたいと思っている」

「じゃ・・・すすす好きになってくれるんですか」

「・・・」

「せせせ先生にできることなんか・・・ないです」

広平を拒絶するさくら・・・。

立ちすくむ根性無し・・・。

そして・・・部屋では・・・空一が待機している。

「ななななんでいいいいるんじゃ・・・」

「・・・」

「まままままた・・・ふふふふふられた・・・」

「海でも見に行くか・・・」

二人はバスに乗って海を見に行くのだった。

「せせせ先生のバカ~」

「ははははは」

すると・・・そこに現れる吃音症の天使(志村美空)・・・。

「あああ・・・あんた・・・・」

「あああ・・・こここことばがへへへへん」

「どどどもってもいいいいいいことあるよ」

「ううううううそ」

「やややややさしさがししししみる」

「みみみみみんないじわる・・・」

「いいいじわるなひひひひひともおるけど・・・」

「・・・」

「わわわたしは・・・ううううたをうたうことで・・・」

ここでさくらは歌うべきだが・・・歌わない。

「つつつつよくなれた」

「つつつつよく」

「つつつつよくなれればししししししあわせになれる」

「しししししあわせに・・・」

「ががががんばれ」

「ががががんばる」

もう・・・唐突すぎて涙が出ます。

天啓を与える天使である少女との出会いで強くなったさくらは・・・残された時間を生き抜く覚悟を決めて・・・あるいはすべてがどうでもよくなって・・・一ヶ月後の手術の前に「ワンマン・ライブ」を行うことを決意する。

広平抜きで・・・「ライブ」することが・・・さくらの「愛」なのである。

広平には・・・CHERYLの楽曲作りに専念してもらいたいのだ。

さくらは・・・悪役になりさがった言語聴覚士・宍戸夏希(水野美紀)の救済を行う。

「ララライブするので・・・あの曲を歌っていいですか」

「この間は・・・ごめんなさい・・・私・・・勝手に嫉妬して・・・あんなことを・・・」

「でででも・・・お姉さんのための曲を・・・わわわ私なんかが」

「いいえ・・・あの曲は・・・彼があなたのために作った曲・・・どうか歌ってください」

「はははははい」

夏希の横恋慕についてはお互いに見なかったことにするらしい。

広平はミーティングで・・・。

「CHERYLはポッブな曲がいいそうなんですよ」

「この前はバラードって・・・」

「とにかく・・・彼女はそういうんです」

「本人と会わせてください・・・話が早い」

「いやいや・・・あんたとは忙しさのレベルが違うんです」

「・・・」

こういうシーンでは嫌なことしか思い出せないな。

まあ・・・あるって言えばあるけど・・・こういう態度のスタッフは長生きできないといいよね。

でも悪気がないわけじゃない場合もあるよね。

我儘なタレントに振りまわされてヘタヘタのあげくの場合もな・・・。

「さくらのデビューの件もよろしくな」

「・・・もちろん・・・」

虚しい男たちの口約束のリフレイン。

さくらは・・・職場でもライブのチラシを撒く。

「え・・・お前が歌うの・・・」

「ははははい」

「おい・・・誰か・・・これ・・・掲示板に・・・」

本当は優しい滝川だった・・・。

そして・・・いろいろと意地悪していた職場の女子たちも・・・手のひらを返すのだった。

みんな・・・さくらが吃音症とは知らなかったのだ。

そそそそそんなばばばかな・・・。

最期にさくらは・・・広平にチラシを渡す・・・。

「ああああの歌歌っていいですか」

何故か・・・凄く間を置く広平。

もったいぶる場面じゃないだろう・・・。

「もちろんだ・・・君のために作った歌だもの・・・」

広平としては・・・愛の告白だが・・・。

誰がそう思う・・・。

夏希は広平に告げる。

「彼女は強いね」

「そうかな・・・」

「自分のやりたいことをやる(好きなら好きって言う)・・・そういう強さが私にはないもの」

「そうなんだ・・・」

とにかく・・・夏希の恋心も徹底してスルーする広平だった。

もう二度と恋なんてしない系なのか・・・。

そして・・・「S」のマスター・笹裕司(宇崎竜童)だけは・・・広平の恋心を見抜くのだった。

「昔みたいだな・・・」

「え・・・」

もちろん・・・気がつかないフリをする広平だった。

ライブ当日。

CHERYL(Leola)に呼び出された広平は来ない。

しかし・・・職場の同僚たちは・・・さくらが吃音症だったと初めて知り・・・さくらの歌声に魅了されるのだった。

みんなに祝福されながら・・・さくらの心は沈んでいる。

空一は猛アタックを開始するのだった。

「おれ・・・さくらと一生一緒にいたい」

「一生一緒じゃろう・・・」

「さくらのいない人生なんて考えられん」

「私・・・しゃべれなくなるかも・・・」

さくらの唇を奪う空一。

それに抗する力は・・・もうさくらにはないらしい・・・。

それなりにせつないが・・・居心地の悪さ半端ない展開だな・・・。

ついに・・・CHERYLと対面する広平。

いかにも傍若無人な仕上がりのCHERYLだった。

「昔のジャケットの写真より・・・老けてるね」

「二十年前だから・・・」

「なんか・・・ガッカリ・・・」

「どんな・・・曲をお望みですか・・・」

「売れる曲に決まってるじゃない」

「・・・」

とにかく・・・終盤戦に突入したみたいだ・・・。

ライブはさわりだけというのは・・・さくらだけのステージでは視聴率を取れないというスタッフの懸命な判断なんだが・・・さくらの歌を楽しみにしていたお茶の間はガッカリなのである。

もはや・・・一種の「電波ドラマ」の領域に・・・。

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2016年5月30日 (月)

上野国は関東の宝庫だ・・・そこに沼田城がそびえたつ・・・あたかも宝剣のように・・・(長澤まさみ)

関東制覇を狙う・・・北条家、上杉家、そして武田家・・・。

上野国沼田城は・・・各勢力の衝突する・・・地理的特性を供えている。

ただそれだけのことで・・・戦国の世が終息しようという・・・この時になっても・・・紛争の火種なのである。

武田家の系譜を継承する真田家が・・・主家の滅んだ後・・・そこに旗を立てている。

領地こそが・・武家の存在意義だからである。

大勢力である北条家の攻勢に・・・徹底抗戦し続けた真田勢・・・。

やがて・・・天下統一の機運が高まり・・・関白豊臣秀吉の惣無事令により・・・武力による勢力図の変更が禁じられる。

その瀬戸際で・・・北条家は・・・秀吉政権に臣従する代償として上野国沼田の割譲を求める。

血と汗の結晶である領土を・・・主人の命令一つで・・・返上する・・・。

真田昌幸の苦渋・・・。

なにしろ・・・領土を失えば・・・家臣は路頭に迷うのである。

どう考えても・・・真田昌幸の陰謀が始る他ないのである。

で、『真田丸・第21回』(NHK総合20160529PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は物語の主人公・真田信繁いよいよ青年期と天下統一に王手をかけた関白太政大臣の豊臣秀吉の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。大学卒業して社会人になりました的な信繫と・・・中央で天下を見下ろす感じの関白秀吉・・・妄想広がる素晴らしい構図でございましたね。北条勢の退場間近ですが・・・あくまでマイペースでお願いいたします。虚実のかけひきが実に見事な今年の大河・・・。今回は・・・真田信幸の最初の妻で・・・真田信綱の娘である「こう」の立ち場の描き方が見事でしたねえ。真田昌幸の母である「とり」は「こう」にとっては祖母ですから・・・孫として世話を焼きつつ・・・肉親としての厳しさも見せている。トレビアンでごさいます。さらに・・・なんといっても・・・信幸の正室となった「稲」は・・・徳川家康の養女という設定。つまり・・・長篠の戦いで討ち死にした父親の仇の娘が・・・夫の新しい妻ということですからね。もう・・・心に眠るすべての力をふりしぼって対抗するしかないのでございますよねえ。幼い「静」から若さの「動」へ・・・。ベテラン女優のなかなかの演技プランに感嘆でございました。

Sanada021天正十七年(1589年)五月、豊臣秀吉の側室の茶々が淀城にて棄(鶴松丸)を出産。徳川家康は北条氏政に「豊臣家への出仕を拒否すれば氏直の室・督姫(家康・次女)を離別させる」と通告。氏政は弟の氏規と評定衆の板部岡江雪斎を上洛させ、「十二月上洛」の代償として真田昌幸の支配下にある「沼田領」の引き渡しを秀吉に求める。六月、秀吉は肥前の大名・龍造寺政家に肥後一揆鎮圧への参戦を命じ、浅野長政を軍監として派遣する。島津義久は刀狩による刀・脇指三万腰を秀吉に進上。大友義統の嫡子・大友義述は豊臣姓を下賜される。豊臣秀吉の養女として後陽成天皇女御となった藤原前子(近衛前久の娘)が第一子を懐妊。敦賀五万石の領主・蜂屋頼隆が死去し、豊臣秀勝(秀次・弟)が遺領を相続。大谷吉継が二万石を分与され代官となる。後に秀勝は甲斐・信濃二十三万石に転封され、大谷吉継が敦賀五万石の大名となった。大仏殿(方広寺)造立作業で蒲生氏郷が巨石を運搬し功名する。真田昌幸は上洛して秀吉と密談。千利休が聚楽第の築庭を指図する。京都と大坂の大名屋敷の建設進む。秀吉は越後宰相・上杉景勝に南部信直の上洛の便宜を図るように通達する。七月、家康は領国の総検地を開始する。

「九月には一万石以上の大名の妻子はみな・・・京に集めるでのん」

秀吉は聚楽第の寧々に告げる。

「お屋敷はあらかたできちょるんだね・・・」

寧々は大名の妻子の頂点に立つ者として・・・秀吉に役割を与えられている。

豊臣家となった・・・亭主・秀吉の留守を守って歳月を送って来た「家」である。秀吉の女房は並の女に務まるものではない。

場合によっては秀吉以上に怜悧な北政所は・・・秀吉直臣の妻子で構成される侍女の官僚団を組織していた。

「関東は・・・もうひと荒れありそうだがや」

「北条たら言うお殿様が・・・大人しく従わんのかね」

「なにしろ・・・生まれついてのお殿様だもんで・・・気位高くてかなわんでのん」

ぼやきながら秀吉は奥の間を出た。

聚楽第の内にある千利休屋敷を経由して・・・大坂城に下るのである。

秀吉が去ると・・・寧々は顔に不機嫌さを見せる。

「弥兵衛を呼んでちょうだい」

小浜八万石の大名であり京都奉行でもある浅野長政は寧々の義弟である。

寧々の妹の祢々の夫だった。

「寧々様・・・お呼びで」

「茶々のことだがね」

「いい加減になさりませ」

「勝俊の放った門徒衆は存外頼りなかったわ」

「・・・ただいま・・・北条の縁者が上洛中でございます・・・」

「で・・・」

「北条には風魔という忍び衆がおりますれば・・・」

豊臣家の奥からの密命を聞き蒼ざめる板部岡江雪斎・・・。

「そのようなことをして・・・殿下が・・・」

「なにもしなければ・・・奥の機嫌を損じますぞ・・・」

仕方なく・・・警護のために同行している風魔龍太郎に相談する江雪斎だった。

「淀城攻め・・・ですか・・・」

「無理か・・・」

「暗殺は・・・風魔一族の得意とするところ・・・おまかせくだされ・・・」

風魔龍太郎は五人の下忍を連れていた。

しかし・・・その内の一人・・・雨宮源内は・・・徳川の草であった。

聚楽第に逗留中の本多正信は鞍馬流の忍者であり・・・修験者忍びの真田家とは特殊な繋がりを持っている。

「信繫殿・・・」

正信に呼び出された信繫は蒼ざめる。

「それは・・・」

「信繫殿は・・・淀城の使い番・・・父上・・・上洛中に不始末があれば・・・ただでは済みますまい・・・」

「・・・」

「徳川としても・・・北条の忍びに・・・しでかされては一大事でござる」

草木も眠る丑三つ時。

淀城の石垣に黒い影がとりついた。

しかし・・・石垣には先に真田の忍びが張り付いていた。

「お」

二人の風魔の乱破が刺殺されて川に落下する。

二人の風魔の乱破は真田の忍びと揉み合い水中に落ちた。

石垣を登り切ったのは龍太郎のみである。

しかし・・・淀城内は殺気に満ちている。

「これは・・・」

「真田佐助と申す・・・」

佐助は・・・昌幸と共に上洛していた。

「噂に聞いたことがある・・・たしか・・・猿飛の」

龍太郎が佐助の異名を口にした時には背後に回った城内警護の影の忍者が心臓を一突きにしていた。

「これは・・・いつぞやの・・・お手数をかけ申した」

「死体はお持ち帰りくだされ・・・」

「おおせのままに・・・」

「今夜のことは・・・他言無用でござる」

「願ってもないことで・・・」

佐助は赤い仮面をつけた影の忍者に頭を下げると龍太郎の死骸を担いで城外に飛び去った。

こうして・・・真田の忍びたちは寧々の悋気をまたしても闇に葬ったのである。

淀城内で・・・茶々と赤子は安らかな寝息を立てている。

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2016年5月29日 (日)

やりたいと言えない男たち(福士蒼汰)生暖かい風に乗せてホームラン(門脇麦)幽体離脱特訓中(土屋太鳳)ゲストデス。(森カンナ)

スーパーナチュラルホラーのお約束にもいろいろある。

大前提として・・・「死者は生き返れない」・・・そこからか。

そもそも・・・基本的に・・・「恐怖」とは・・・「死にそうになること」なのである。

「不安」とは「死んだらどうなるかわからない」ということである。

だから・・・「死んでも生き返ること」ができるならホラーではなくなってしまう。

だが・・・お約束は裏切るためにあるのだ。

「ゾンビ」の誕生である。

つまり・・・「死なないこと」が恐怖なのである。

いや・・・「もう死んでいる」から「殺せないこと」が恐怖なのである。

それなのに・・・「頭を撃てば死ぬ」とか・・・誰かが掟破りを始めるのだ。

「日光に弱い」はずだと言う者もいる。

「それは吸血鬼」ではないのか。

「吸血鬼もゾンビの一種だろう」

「そうなのか」

「いや・・・死霊と吸血鬼は違う」

「いやいやゾンビが吸血鬼の一種なんじゃないか」

「アンデッドとリビングデッドはどこが違うんだ」

「ネクロマンサーがだな」

・・・とにかく・・・お約束なんてそんなもんだ。

「幽霊」や「死神」は「物質世界」に関与できない・・・なんていうお約束は・・・戯言なのである。

しかし・・・時と場合によります・・・って言い出すと・・・野球で乱闘が日常茶飯事になるよね。

ま・・・それはそれで面白いけどね。

結局・・・時間厳守派と・・・間に合えば問題ないでしょう派の不毛の戦いは永遠なんだよな。

で、『お迎えデス。・第6回』(日本テレビ20160528PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・小室直子を見た。人間の意識というものは不思議なものである。今、あなたはこの文章を読みながら・・・私の意識を覗きこんでいる。そういうあなたの意識は一体、どこにあるのだろう。あなたの身体のどこにいつから「それ」は存在しているのだろう。そして・・・「それ」はいつか消滅してしまうのだろうか。私に「意識」があるようにあなたにも「それ」があるのだろうか。人間たちは・・・誰もが「それ」と似たようなものを持っているのだろうか。そして・・・「それ」は人間だけに特有のものなのだろうか。このドラマはそういう疑問の果てに展開される妄想である。だが・・・このような「妄想」が全くのフィクションであるとは・・・誰にも断言できないのである。恐ろしいことです。

悪霊と化した矢島美樹の亡霊(野波麻帆)の念力攻撃により・・・重傷を負った阿熊幸(土屋太鳳)は「この世に未練が残る幽霊を説得して成仏させるというアルバイト」から離脱中である。アルバイトの発注者である死神のナベシマ(鈴木亮平)に恋をしている幸は・・・焦燥するのだった。

アルバイトに復帰して・・・ナベシマに存在価値を認めてもらいたいのである。

幸が何故、ナベシマに恋をしたのかは・・・未だ未詳である。

そもそも死神についても不明な点は多い。

それが物語の「謎」として・・・あまり機能していないために・・・お茶の間の人気がもう一つなのである。

同じように・・・主人公が挫折した「事件」の詳細についてなかなか明らかにしない「ラヴソング」もお茶の間受けしないのだった。

もちろん・・・「謎」が解き明かされていくというのは物語の基本なので・・・あまり・・・うるさくは言いたくないのだが・・・本筋じゃないなら・・・隠しても無意味だと思うのである。

「ラヴソング」10.6%↘*9.1%↗*9.4%↘*8.5%↘*8.4%↘*6.8%↘*6.8%

「お迎えデス。」10.3%↘*9.3%↘*6.9%↗*7.9%↘*6.7%

・・・てなことになってしまうからな・・・。

「音楽」とか「オカルト」とか・・・特殊なジャンルに挑戦する時はなるべく失点を少なくしないといけないのである。

・・・とにかく・・・未だに給与についても触れられない・・・ボランティアならボランティアでもいいのに・・・アルバイトに復帰したい幸は突然・・・幽体離脱してしまうのだった。

アルバイトの後輩である・・・堤円(福士蒼汰)には霊視に加えて憑依体質という特殊能力がある。

幸は・・・それがうらやましかったらしい。

幽体離脱は・・・精神と肉体の分離現象である。

生きている肉体と分離した精神は・・・幽体とか生霊とか称される。

肉体にある程度依存している精神が・・・離脱するのは・・・極めて危険というのが定番である。

しかし・・・無邪気な幸は・・・新たなる能力の発現に喜ぶ。

廊下で三遊亭好楽の霊に遭遇した幸は・・・接触不能な霊に幽体であれば接触できることに歓喜する。

さらに移動範囲を拡大しようとする幸だったが・・・幽体が肉体と・・・有限の命綱としての霊糸で繋がれていることを知り・・・少し落胆するのであった。

世界の果てまでは行けないのだ。

幸は・・・とにかく・・・意志の力で幽体離脱が可能になるように特訓を開始する。

一方・・・幽霊となった千里(門脇麦)は一度昇天体制から逃亡したために・・・強制送還者としてブラックリストに乗っている。

昇天リミットの四十九日までの残り日数は不明だが・・・新入生のサークル勧誘の時期に旅立った以上・・・梅雨入り前にはあの世に逝かなければならない。

そうでなければ完全消滅(地獄行き)なのである。

死神二課のナベシマとゆずこ(濱田ここね)は千里を捜索するのだが・・・先に千里の身柄を押さえることで二課の失点を狙う一課のシノザキ(野間口徹)は死神マツモト(根岸拓哉)や除霊のできる霊能力者・魔百合(比留川游)に千里捜索命令を下すのである。

今回・・・お約束を破って幸に肉体的接触をしたナベシマは・・・幼女に「ご褒美を強請られる」という・・・生前の記憶らしきものを意識する。

ゆずこも「生前はもてもての熟女」だったらしく・・・死神が死者の一種であることが暗示される。

死神は一種の資格のようなものらしい。

こういう・・・オリジナル霊界設定は・・・一部お茶の間には煩いだけなんだけどねえ・・・。

攻略本ができるくらい緻密ならまだしも・・・いかにも穴だらけだからな・・・。

だって・・・どうでもいいものな・・・。

たとえば・・・矢島美樹や緒川千里のような強力な念力幽霊がある程度の確率で存在するなら・・・。このドラマでは六話で二人だ・・・。

一瞬で十万人の幽霊を作りだしたエノラ・ゲイが無事に帰還できるとは思えないからだ。

必ずや怨霊により未帰還機になっているだろう・・・。

年頃の男子でありながら・・・あまり自慰もせずに・・・千里と同棲中の円である。

さやか(大友花恋)の父親である堤郁夫(大杉漣)と円の母親である由美子(石野真子)の再婚で成立している堤家。

「空になったバターの容器」を冷蔵庫に戻して由美子に叱責される郁夫。

「靴下を裏返したまま洗濯機に抛り込むこと」を追及される円。

「男ってダメねえ」という由美子とさやかに・・・。

「ね~え」と同調する千里だった。

「君はいつも家族を観察しているけれど・・・楽しいのか」

二人きりになった円は千里に質問する。

「楽しい家族よね・・・何でも言いあって・・・」

「そうかな・・・」

そこへ・・・ナベシマとゆずこが接近する気配があり・・・千里は壁抜けをする。

千里は相当に優秀な超能力幽霊だよな・・・。

それか・・・ナベシナたちが超無能な死神なのか・・・。

今回のゲスト幽霊は・・・達夫(寺島進)である。

野球狂で天涯孤独な身の上・・・。

気にかかるのは所属する草野球チーム「ラビッツ」の行く末であった・・・。

「さあ・・・行こう」

「僕は・・・授業が」

「とにかく・・・行こう」

円・・・留年するよね。

喫茶店では・・・葬式帰りのラビッツのチームメイトが集合していた。

達夫を入れて九人であり・・・チーム存続の危機である。

「どうする・・・来週の試合・・・」

「八人じゃ・・・無理だよな」

「いよいよ・・・ラビッツも解散か・・・」

《解散とか言うなよ・・・情けない・・・こういうわけなんだ・・・よろしくな》

「え・・・つまり・・・僕にチームに入れと・・・」

《あったりめえだよ》

「ですから・・・僕には授業が」

《とにかく・・・来週の試合まで・・・頼むよ》

幽霊の頼みを断れない円は・・・男たちの会話に割り込む。

「あの・・・僕でよければ・・・」

「え・・・」

「ラビッツに入れてください」

「これも達夫さんの導きかね」

「ま・・・そうですけど・・・」

「え」

そこへ・・・真理(森カンナ)が現れる。

真理は・・・チームの最年少である真之介(伊澤柾樹)の姉だった。

達夫の生前最期の試合・・・敗戦になったのは・・・真之介のエラーがすべてだった。

「達夫さんも亡くなったし・・・もういいでしょう」

「真理ちゃん・・・」

「もともと・・・弟は野球なんてやりたくなかったのに・・・達夫さんに無理矢理ひっぱりこまれたんです・・・」

「・・・」

「さあ・・・帰りましょう」

真之介は姉に促され店を出て行く。

《なに勝手なこといってんだよ・・・真之介は野球が好きなんだよ・・・》

達夫は叫ぶが・・・その声は円以外には届かない。

千里は入院中の幸を見舞っていた。

「円くんと一緒に暮らして・・・どうなの」

「昔に戻ったみたい・・・」

「それじゃ・・・ダメじゃない・・・言い残したことがあるから・・・この世にとどまっているんでしょう」

「・・・」

幸は・・・千里を励ますのだった。

円と達夫は真之介の家にやって来ていた。

そこへ・・・千里が合流する。

「きてくれたんだ・・・」

「行きましょう」

《おい・・・勝手に入っちゃダメだろう》

「幽霊の特権です」

千里は・・・部屋でグロープを見つめる真之介の表情から心を読むのだった。

一方・・・円は表で真理と遭遇する。

「あなた・・・」

「真之介くんのチームメイトです」

「真之介は・・・意志表示のできない子なの・・・」

「・・・」

「無理矢理誘われても・・・いやだと言えないのよ・・・野球も上達しないし・・・あの子のエラーで試合に負けて・・・みんなに責められて・・・苦しんでいるの」

「やりたくない・・・と言えないということは・・・やりたい・・・とも言えないってことですよね」

「私には・・・わかるの・・・あの子の姉ですから・・・」

「・・・」

円は撤退し・・・アルバイトの先輩である・・・幸に相談する。

「どうしたらいいと思う」

「私は動けないし・・・あなたががんばってくれないと・・・」

「そんなこと言われても・・・僕にも授業があるし・・・」

「その子がダメなら・・・他の選手を勧誘するとか・・・」

「え・・・僕が・・・」

「あなたしかいないじゃない」

二人のやりとりを加藤孝志(森永悠希)と女子大生たちが見ていた。

「あの二人・・・仲いいよね」

「付き合ってるんじゃないの」

「あの二人は・・・絶対付き合ってないと思う」

加藤に気付いた幸は閃く。

「あ・・・九人目がいた」

「あ・・・」

「え・・・俺?」

なんだかんだ・・・加藤は円に誘われたら嫌とは言えないのである。

「野球もいいけど・・・ロケット・コンテストはどうする」

「もう・・・そんな季節か・・・」

「一年って早いよな」

「問題は予算だな」

「部員が増えたらと思ったけど・・・今年はパスするか」

「・・・」

チームでの練習後・・・円と加藤はバッティングセンターに向かう。

円は・・・理論的に・・・「弱くても勝てます」的なことを考えるが・・・ダーツの時には成功した手法が・・・バッティングには応用できないらしい・・・。

「来た球を打つ」のは・・・難しいからな。

そこで・・・円は・・・真之介がアルバイトをしていることを知る。

「真之介くん・・・バイトが終わってからこっそり・・・ここでフライを捕る練習しているんだ」

探偵幽霊・千里の報告である。

「・・・」

「私・・・真之介くんと・・・円くんて似てると思う」

「似てるって・・・どこが」

「何を考えているかわからないようなところ・・・」

「君だって・・・」

「え・・・」

「あの日以来・・・僕と星を見に行かなくなって・・・」

円は千里との交際を否定した上で・・・流星観察に誘ったのである。

まさか・・・千里が円と交際していたつもりだとは夢にも思っていないのだ。

「どうしてなのか・・・今もわからない」

「本当に・・・わからないの」

「うん」

怒りに震える千里は・・・空気を振動させ・・・周囲の物質を揺らしまくるのだった。

「なんか・・・怒ってるの?」

「知らない・・・」

千里もいい加減・・・言葉にしないとわからない奴だとわかるべきだな。

円は真之介に声をかけた。

「僕と君が似ているって人がいて・・・もし・・・君がやりたいことをやりたいって言えないなら・・・そうなのかもしれないって思った。僕はロケットを飛ばしたいと思ったけど・・・友達に無理だっていわれて・・・それでもやりたいと言えなかった・・・最近、知り合った人がいるんだけど・・・僕と違ってやりたいことをガンガンやりまくるんだよ・・・僕はその人がちょっとうらやましい・・・君が本当は野球をやりたいと思っているのなら・・・今度の試合・・・やればいいんじゃないか・・・僕は待っているよ」

「・・・」

試合当日である。

相手チームの「イーグルス」もへっぽこらしく・・・八回を終わって同点である。

しかし・・・加藤が足を挫いてしまう。

そこへ・・・真之介が現れる。

弟思いの姉は追いかけてくるのだった。

「無理する必要はないのよ・・・帰りましょう」

しかし・・・その手を振り払う真之介。

「僕は・・・野球が・・・やりたい」

《よく言った・・・》

達夫は歓喜する。

外野の守備についた真之介を励ます達夫。

円は自ら・・・達夫に身体を提供する。

大飛球が真之介の頭上に打ち上がる。

「真之介・・・お前が捕れ・・・声を出せ」

「・・・オ・・・・オーライ」

真之介が捕球してチェンジである。

最終回裏の・・・ラビッツの攻撃・・・。

先頭打者は・・・円/達夫である。

所謂、三振前の大ファールを打ち放つ円/達夫・・・。

しかし・・・大好きな円の笑顔が見たい千里は念力で風を巻き起こすのだった。

強風に吹かれて軌道修正した打球はレフトポールを直撃するのだった。

「ホームランだ・・・ざまあみろ・・・」

こうして・・・ラビッツはチーム結成後・・・初めての勝利を手にした。

「達夫さん・・・天国で喜んでくれるかな・・・」

いや・・・そこにいます。

まもなく・・・達夫は・・・ナベシマの手で・・・昇天する。

円を賞賛するナベシマ・・・。

死神が去った後で・・・千里がつぶやく。

「円くん・・・変わったよね・・・変わったのは・・・幸さんのせいなのかしら・・・」

「・・・」

もちろん・・・千里が何故そんなことを言うのか・・・円にはわからない。

思わせぶりの通じない男なのだった。

一方・・・父親(飯田基祐)から政略結婚を勧められ・・・ムシャクシャする幸は幽体離脱の特訓に我を忘れていた。

幽体となった幸の前に死神一課のシノザキが現れる。

「凄いじゃないか・・・君・・・こっちに来ないか」

ヘッドハンティングである。

どうでもいいが・・・死後の世界の人たち・・・生者に頼りすぎじゃないか・・・。

すでに死んでいる死神たちの何かをやりたいという意志・・・。

それはどこから生まれるのだろうか・・・。

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2016年5月28日 (土)

妹思いですがなにか(岡田将生)一泊ですがなにか(松坂桃李)執行猶予中ですがなにか(柳楽優弥)据え膳ですがなにか(島崎遥香)看護師ですがなにか(石橋けい)出番少なめですがなにか(吉岡里帆)未練ですがなにか(安藤サクラ)

今回は主人公である坂間正和(岡田将生)が徹頭徹尾・・・話の中心となり・・・ふりかかる火の粉をなんとか払いのけようとする悪戦苦闘が描かれる。

物凄く普通のドラマである。

つまり・・・すべてのフリが終わって・・・本題に突入しているわけだな。

そういう意味では「グッドパートナー」も「世界一難しい恋」も・・・オーソドックスな展開なのである。

それなのに・・・物凄い落差を感じるのは・・・演出力の違いとか・・・好みの差異とか・・・複雑な問題を孕んでいるよなあ。

2016年の春ドラマは・・・なんとなく「男たちの物語」である。

(火)の「重版出来」は主役は女性だが・・・結構、男臭い話が続いている。女流漫画家がまだ一人しか出てこないしねえ。

(月)の「ラヴソング」は本来、女の子の物語にするべきところを男性主人公が妨げてしまっているような感じなのが残念なんだな。

で・・・なんとなく・・・重苦しいわけである。

男は基本・・・重苦しいものだからな。

男が三人よれば・・・重苦しい。

タモリ曰く「夢と友達は基本的に必要ない」なのである。

本当は必要ない「ともだち」や「夢」をもてあます男たちの話なのである。

ある程度、重苦しくなるわけである。

で、『ゆとりですがなにか・第6回』(日本テレビ201605222230~)脚本・宮藤官九郎、演出・鈴木勇馬を見た。「みんみんホールディングス」から居酒屋「鳥の民・高円寺店」に店長として出向中の坂間正和(岡田将生)は交際中である上司の宮下茜(安藤サクラ)と友人で童貞の山路一豊(松坂桃李)との仲を怪しみ骨折したあげくに交際終了を申し出るがレンタルおじさん(吉田鋼太郎)の息子で妻子あるガールズバー店長の道上まりぶ(柳楽優弥)が就職活動中の妹のゆとり(島崎遥香)に手を出したと知り殴りこみをかけたのだった。

正和の乱である。

出迎えたまりぶの妻ユカ(瑛蓮)は乳児をあやしながら叫ぶ。

「なんか飲むか・・・飲むなら買って来い」

「その前に・・・紹介してくれ」

「ユカ・・・親父」

「お前か・・・不倫まみれの父親か」

「最初に言っておくが・・・ユカとは入籍していない」

「え」

「男としてキチンと籍は入れないと」

「入籍中に不倫したお前に言われたくない」

「私、ピザ切れてるから無理だけどね」

ユカ・・・日本人じゃなかったのかよっ。

爆買いツアーで来て不法滞在中らしい・・・。

「俺は最初から浮気するって宣言してる」

「有言実行ね」

「まりぶには腹違いの兄がいまして・・・優秀でして」

「何度も不倫してたのか」

「四、五回です」

「父親のことはどうでもいい」

「誘ったのは・・・向こうから」

「なんで・・・連絡先を・・・」

「お兄さんに渡した名刺・・・」

「え」

「セキュリティーが甘いよね」

「そういう問題じゃないだろう」

「友達の妹だと思うから・・・箸を止めようとした」

「それなのに・・・どうして」

「言ってることはわけがわからなかったけど・・・かわいかったから」

「・・・」

「手を出したの」

「だまってろ・・・ものには順番があるだろう」

「で・・・どうなんだ」

「やっちゃいました」

「ああああああああああ」

「病気よ」

「関係ないよ・・・親がどうだろうが・・・浪人生だろうが・・・関係ないよ・・・妻子あるくせして・・・俺の妹とやっちゃうことが問題なんだよ・・・このモラトリアム野郎が・・・」

「ごめんなさい・・・お兄さん」

「お兄さんって言うな・・・」

しかし・・・まりぶとの交際によって心身充実したゆとりは苦戦していた就職活動が軌道にのり、内定寸前の微妙な時期である。

「別れ」を切りだすのは「内定確定後」と約束させる正和。

「え・・・会っていいの」

「メールで励ませ」

「やるのは・・・」

「ダメに決まってるだろう」

爽やかな坂間家の朝・・・。

母親の和代(中田喜子)はゆとりの就職が決まりそうなので上機嫌である。

電動歯ブラシ使用中の正和にゆとりが身を寄せる。

「お兄ちゃんにだけは・・・言っておこうと思って・・・」

「ういいいいいいん」

「大きいお兄ちゃん・・・浮気しているみたい・・・」

「うぃぃぃぃぃぃん・・・えっ」

妊娠活動中にも関わらず・・・素晴らしいインターネットの世界で性風俗店の画像を検索していた長男の宗貴(高橋洋)は嫁のみどり(青木さやか)に激しく責めたてられるのであった。

「こんなもの見てどういうつもり・・・なんて日だ」

「いや・・・これは・・・単にえっちなあわびたちであって」

「浮気するなんて最低!」と吐き捨てるゆとり。

つまり・・・ゆとりは・・・自分が不倫中だとは夢にも思っていないのだった。

兄として正和は身悶えするのだった。

本社に出社した正和は・・・伊豆シャボテン公園名物・カピバラまんじゅうを手にとる。

「あ・・・お茶の方がよかったですか」

「いや・・・」

妙に腰の低い山岸(太賀)である。

直属の上司・早川道郎(手塚とおる)とのミーティングで・・・取引先の仕出し弁当屋「大盛軒」の経営不振を上申する山岸だったが・・・。

正和の目にも・・・早川の目にも・・・取引を打ち切られていることが明瞭だった。

「三月まで・・・順調だったのに・・・」

「他社に乗り換えられてるんじゃないか・・・」

「えええ・・・そうかなあ」

「そうかなって・・・薄々気がついてたんだろう」

「いやあ・・・まさかと思って・・・」

「・・・」

自分を本社から追いやった張本人である・・・山岸をも・・・後輩として面倒を見てしまう正和なのである。

人がいいにも程があるのだった。

「大盛軒」の担当者である野上(でんでん)にそれとなく探りを入れる正和。

「うちの・・・山岸・・・どうですか」

「心を入れ替えてがんばってるよ」

「それにしては・・・取引が・・・」

「季節的に肉より魚なんだよ」

「今日はチキンカツですよね」

「まあ・・・俺も社長の方針には逆らえないからね」

「しかし・・・長年のお付き合いじゃないですか」

「いや・・・そういうことは・・・努力の成果をみせてくれないとね」

のらりくらりと追及をかわす野上だった。

他者の食材によってつくられた仕出し弁当を山岸と試食する正和・・・。

「うちの製品の方が・・・上質だな・・・価格は」

「同額です」

「じゃ・・・なんで・・・」

「接待じゃないですかね」

「しかし・・・お前だってがんばってるだろう」

「野上さん・・・ゲスですから・・・フィリピンパブから北欧系で南米系・・・最後に富士そばのおばちゃんまで口説きます・・・」

「敵は・・・それを上回るのか・・・」

「・・・」

山岸が・・・使えないけれど・・・それなりに成長したことを嬉しく感じる正和・・・。

だから・・・人がいいのにも程があるだろう。

一方・・・「阿佐ヶ谷南小学校」の教頭(原扶貴子)も伊豆シャボテン公園名物・カピバラまんじゅうを・・・。

「みんみんホールディングス」と「阿佐ヶ谷南小学校」の点と線が繋がる展開らしい。

そして・・・まんじゅうにはカピバラの肉は入っていないらしい。

学習障害のある転校生・大悟の加入によって・・・4年2組の授業が遅れるのではないかというクレームが父兄から寄せられたのだった。

母親の奈々江(石橋けい)を交えたミーティング。

「やはり・・・算数だけは別室でということになりますか」

「しかし・・・児童たちにどう説明する・・・大悟くんはクラスの人気者なのに・・・」

「僕が・・・話します」

担任の山路は立ち上がるのだった。

「ゆとり教育」と黒板に記した山路は児童たちに話しかける。

「昔・・・土曜日も授業がありました・・・」

「えええ」

「先生たちの時代から・・・土曜日の学校はお休みになったのです」

「へええ」

「一日、お休みを多くして・・・いろいろなことを覚えるよりも・・・ゆとりをもってゆたかな心を育てようということになりました」

「ふうん」

「その結果・・・少し・・・お勉強ができなくなって・・・先生たち、ゆとり教育を受けた人間は・・・ちょっと馬鹿なんじゃないかという人もいます」

「ひでえ」

「でも・・・ゆとり教育にもいいところがあります」

「・・・」

「大悟くんは・・・算数が苦手です・・・そういう子供は昔なら・・・見捨てられていました。でも、今は人をおとしめることは悪いことだとみんな知っています」

「・・・」

「大悟くんのせいで・・・授業が遅れて困ると思った人がいますか・・・だから・・・大悟くんを見捨てるべきだと思いますか」

「だめ~」

「じゃ・・・どうすればいいと思う?」

「電卓使えばいい」

「いい考えだね・・・だけど・・・それで・・・大悟くんだけが電卓を使って一番になったらどう思う」

「みんなで電卓を使えばいい」

「ふふふ・・・だけど・・・算数で計算の仕方を覚えることはものを考える手順を頭の中に形作るために必要だと考える人たちもいる」

「・・・」

「眼鏡も電卓も道具だけれど・・・今はまだ・・・電卓を使った授業は認められていない・・・だから・・・大悟くんだけは・・・算数の授業を別の教室で特別にすることにします」

「えええ」

「これは・・・大悟くんをみんなから切り離すことじゃない・・・みんなと一緒に学び・・・みんなと一緒に卒業するための特別なやり方です・・・いいかな」

「は~い」

涙ながらに・・・素晴らしい児童たちに感激する大悟の母親の奈々江・・・。

「ありがとうございました」

「いいえ・・・みんな・・・いい子だから・・・」

「最初・・・山路先生が担任と聞いて・・・年下で・・・ゆとりで・・・しかも童貞なんて・・・大丈夫なのかと思いました」

「ど・・・」

「でも・・・今は山路先生が担任で本当によかったと思っています」

「どうも・・・」

心温まる小学生たちの出番が終了すると・・・居酒屋「鳥の民・高円寺店」で正和はバイトリーダーの村井(少路勇介)とバイトの中森(矢本悠馬)が伊豆シャボテン公園名物・カピバラまんじゅうを食しているのを目撃する。

「これは・・・」

「エリアマネージャーからの差し入れです」

無駄に発達した推理力により茜が旅行に行ったことを察知する正和だった。

「茜ちゃん・・・伊豆に・・・」

「友達と一泊してきたの」

「友達って・・・俺も知ってる人・・・」

「そうよ・・・」

「一人しかいないんだけど・・・」

「山路とだよ」

「それは・・・」

「だって友達だから別にいいでしょう・・・私たち別れたんだし」

「でもさ・・・仮に・・・俺が女友達と一泊したら・・・」

「誰よ・・・そんな人いるの」

顔色が変わる茜・・・一瞬で滲みでる「別れたけれど正和は私の男だ・・・だれにも渡さない」的女の業である。役者だなあ・・・。

友人と不倫している妹・・・別れても好きな上司・・・手のかかる馬鹿な後輩・・・。

正和の・・・人がいいにも程があるが炸裂する夜だった・・・。

閉店間際の店に次々と顔を見せる正和の友人たち。

「大悟くんのお母さん・・・看護師だった」

正和の悶々とした気持ちを軽々と越えて行く童貞・山路・・・。

そこへ・・・女子大生・佐倉悦子(吉岡里帆)からの着信がある。

山路を襲う・・・小暮静磨(北村匠海)の呪い。

思わず・・・語気荒く応じる山路だったが・・・悦子本人だった。

「あの・・・近くまで来たので」

「はい」

看護師のおっぱいも気になるが・・・女子大生のおっぱいも気になる山路だった。

「私のおっぱいも気になるらしいのよ」

茜は・・・本心とは別の・・・見栄を張るのである。

そんなことをしても得はないのは分かっているが・・・心が疼くのだから仕方がない。

そして・・・素直に身悶える正和なのである。

山路は・・・悦子と共に長男の宗貴を伴って戻ってくる。

宗貴は・・・坂間酒造の銘酒「鬼嫁の涙」と「小さな小姑」を抱えていた。

風俗店閲覧の罪により深夜の営業を母と嫁に命じられたらしい。

そこへ・・・世を忍ぶまりぶも到着。

「あの・・・励ましのメール送って良いですか」

「文面チェックする・・・」

「・・・」

「最期の愛してるは削除しろ」

「はい」

たちまち・・・ゆとりからの着信。

「昨日はごちそうさまって何だよ」

「ごはんだけです」

「俺の目を見て言えるのか・・・」

「・・・言えません」

まりぶはゆとりと昨夜も激しい性交渉をもったらしい。

一部お茶の間のアイドル納税者の皆さん・・・これはフィクションですのでご注意ください。

まりぶとゆとりの関係はまりぶと正和だけの秘密なのである。

そして・・・正和と茜の別離も・・・まだ周知の事実ではない。

長男の宗貴はまだ知らず・・・弟の交際中の上司である茜に銘酒を売り込むのだった。

のほほんと・・・銘酒を楽しむ悦子。

悦子も・・・山路が茜と一泊したことを知らないが・・・もう・・・ほとんど知らないからってどうなんだというキャラクターとして仕上がっているわけである。

そこに・・・野上を接待中の山岸からSOSが入電する。

野上を接待攻勢しているライバル会社「アイアイフーズ」の営業マン(中尾明慶)は優秀すぎて勝てる気がしないようだ。

「そうか・・・あんな顔して共演女優を食っちゃうタイプだからな・・・」

そこで・・・正和は・・・まりぶを有効活用することにした。

野上を陥落させる「おっぱい最終兵器」投入である。

まりぶの「おっぱいパブダブルタップ」は山岸の命を救うのだった。

おい・・・原爆投下みたいな描写はやめろ~・・・気のせいです。

耐えがたきを耐え・・・忍びがたきを忍び・・・使えるものは妹の不倫相手でも使う・・・それが人間というものなのだな。

だから・・・無用に重ねるなって・・・。

まあ・・・核兵器が廃絶されたらたちまち通常兵器で大戦争が始るわけだからな。

まりぶはご褒美に「サービス券」を授与され・・・歓喜するのだった。

少しだけ修復される正和とまりぶの友情関係・・・。

茜は・・・銘酒の納品を試験的なものとして裁量する。

弟に感謝する兄・・・。

「売れるまで帰ってくるなと言われても・・・営業なんて初めてだったし・・・全然だめで・・・助かったよ」

「よかった・・・」

「俺だってやることはやってるのにな」

「・・・妊活の話か」

「風俗くらいいいじゃないか」

「それはどうかな・・・」

これ以上、不和の問題を抱えたくない正和だった。

なんとか・・・山岸は野上の接待に成功するのだった。

童貞をこじらせて・・・おっぱい凝視が過ぎる山路はまりぶと語りあう。

「誰か一人とすれば・・・他とはできなくなるじゃないですか」

「・・・」

「それに・・・やったら・・・自分も相手も変わってしまうし・・・」

「・・・」

「誰か一人とやって・・・残りをみんな捨てるよりも・・・やらなければ誰も捨てないってことでしょう」

「一人とやったら・・・またやりたくなるし・・・他でもやりたくなる」

「ですよね」

「俺は世界中の女とやりたい」

「わかります」

「わかるのかよ」

思わず突っ込む正和だった。

「恵ちゃんとは友達だし・・・いいお付き合いをしています」

「芸能人みたいなことを・・・」

「あいつら・・・みんなやってるけどな」

「おいおいおい・・・」

童貞と放蕩者のレベルの違う意気投合である。

「誰も傷つけないやつは・・・誰も幸せにできない」

明かされる・・・山路と茜の一夜。

「来なさい」と誘いをかける茜に応じない山路だった。

「友達だし・・・友達の彼女だし・・・」

「元カノだけどね・・・」

「・・・」

「いいじゃない・・・傷心旅行なんだから」

「・・・」

「そりゃ・・・ひどいことも言ったし・・・彼の愛を試してばかりだったわよ・・・でもまさか・・・彼から別れを切り出されるとは・・・思ってもいなかった・・・」

「・・・」

「ドジでグズで・・・頼りなくて不甲斐なくて・・・頑なで優柔不断で・・・要領悪くて・・・でもそれがマーチンだもの・・・そういうマーチンが好きなんだもの・・・ああ・・・別れたくなかったなあ・・・」

「・・・」

「いい話なのに童貞が話していると思うと泣くに泣けない・・・」とまりぶ。

しかし・・・正和は号泣しているのだった。

「だから・・・復縁しろよ」

「そんな話を聞いたら・・・余計戻ってきてって言えないよ・・・」

「・・・」

「だって・・・俺は変わりたいんだ・・・変わらなくちゃダメなんだ」

しんみりする男三人なのである。

ああ・・・重苦しい。

ついにゆとりの内定が確定した。

「噂の恋人にお祝いしてもらわなくちゃね・・・」

「そうよねえ・・・」

真相を知らないので呑気な嫁と姑だった。

薄氷を踏む思いの正和・・・。

「そう・・・合格したんだ・・・じゃ・・・お祝いを」

「フェイド・アウトでよろしく・・・」

「はい」

まだまだ油断はできないと思いつつ・・・本社の呼び出しに応じる正和。

本社は騒がしい。

「なんかあった・・・」と正和。

「知らないの・・・大盛軒が弁当で食中毒だしたのよ」と茜。

「え・・・」

「二重納品で消費期限切れ・・・野上さんならやらかしそうでしょう」

「山岸は・・・」

「連絡とれずなのよ・・・」

「現場に・・・」

「お願いね・・・それから・・・こんな時になんだけど・・・父です」

「え」

正和は・・・茜の父親・重蔵(辻萬長)と遭遇するのだった。

その様子から・・・重蔵は二人の交際を知っており・・・別離の件は知らない模様である。

正和は・・・ぼんやりとした。

いつものことである。

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2016年5月27日 (金)

私はただベストを尽くしたいだけ(竹野内豊)見当はずれもいいところ(松雪泰子)離婚は両親の最期の共同作業です(松風理咲)輝くレッドスター(山崎育三郎)

「カムイ外伝/白土三平」の「雀落し」の引用である。

「カムイ」にも出典があるのかもしれないが・・・「酒餌」というのは「八岐大蛇」にさえ効果的だからな。

「誰が一番多くの雀を捕獲できるか」という勝負をする忍者たち。

弓矢や手裏剣などの武具を使う下忍に対し・・・酒に漬けた米を用いたカムイが圧勝するという話なのである。

「カムイ」の愛読者なら誰もが知っている話を・・・「雑学」として披露され・・・弁護士たちが誰も知らないというのは・・・一種の「常識」に対する皮肉とも取れるが・・・そもそも・・・「カムイ」を知るものが少数派の時代である。

通じないんじゃないか・・・と思う。

かって「差別」が「常識」だった頃・・・それを「口にするのも憚る」時代が招かれて・・・「差別」そのものが「特別な知識」になってしまったようだ。

そういう「現代」が良かったのかどうか・・・よくわからない。

「カムイ」がどれほど・・・心を震わす物語だったか・・・「生まれついての身分差」がどれほど忌まわしいものであるか・・・「差別」の隠蔽された世界では・・・よくわからないのだろうと思われる。

まあ・・・「雀」を食べなくても「焼き鳥」を食べればいいんだよな。

で、『グッドパートナー 無敵の弁護士・第6回』(テレビ朝日20160526PM9~)脚本・福田靖、演出・常廣丈太を見た。「モップガール」や「雨と夢のあとに」そして「ハガネの女」の演出家である。久しぶりにロマンチックな作品に仕上がったな。主人公やヒロインが大人の事情でもっともらしいことを語るけれど・・・子供たちにしてみれば・・・「知ったことじゃない」という話だ。いつか・・・子供もたちも大人になり・・・事情を知り・・・もっともらしいことを語るだろうが・・・とにかく・・・人間なんてみっともないのが基本なのだな。そういう話は実にロマンチック(理想的)なのである。

神宮寺法律事務所の所長・神宮寺一彦(國村隼)から「離婚した妻とグッド・フレンドになれ」とアドバイスされた咲坂健人(竹野内豊)である。

つまり・・・上司の命令なので受け入れる咲坂・・・実に俗物なんだな。

咲坂は・・・娘に語る・・・「俺はママと最高の友達になろうと思う・・・嬉しいだろう」

しかし、小学生の娘・みずき(松風理咲)は質問には答えない。

「私・・・最近・・・友達ができたの」

「へえ?」

「目黒くんって言うんだ」

「え」

娘に男ができたことに暗澹たる気持ちを抱く咲坂だった。

経営不振にあえぐ「蕎麦 いわし丸」チェーンの経営者である根岸昇(六平直政)とその妻・三佐江(千賀由紀子)がクライアントとなる。

都内に五店舗を展開する「蕎麦 いわし丸」だったが・・・銀行から借入金が三億一千二百万円となり・・・それ以上の融資に難色を示されているという。

熱海優作(賀来賢人)はそれがどういう事態なのかピンと来ない。

咲坂は・・・クライアントの求める「事業再生計画」が困難を伴うことを察知し、財務関係に強い赤星元(山崎育三郎)を夏目佳恵(松雪泰子)から借り受けることを決意する。

元妻の仕事が一段落し、アソシエイト弁護士である赤星に余裕があると判断したためだ。

夏目は快諾し・・・咲坂と熱海に赤星を加えた臨時体制が組まれるのだった。

「従業員や取引先に迷惑をかけるわけにはいかないので店を潰すわけにはいかない」というクライアントの熱意に応えようとする咲坂。

しかし・・・赤星は「再建は無理です・・・清算を考えた方がいい」と冷たい判断を述べる。

「再生」と「清算」で対立する二人・・・その喧嘩腰に熱海はアタフタするのだった。

「新人を挟まないでください」

「とにかく・・・経営実態を見てから・・・判断しよう」と提案する咲坂・・・。

生まれ故郷の特産品である「いわし」に拘り・・・「いわしそば」をメインメニューにするクライアントは・・・「そば屋」にはあまり縁のない「魚河岸」に早朝から仕入れに出かけるのだった。

「素晴らしい経営努力じゃないか」と評価する咲坂。

「無駄な労力です」と酷評する赤星。

「最初から無理だと言ってたら何もできないぞ・・・嫌なら帰れ」

「帰りません・・・そもそも・・・咲坂先生から頼んできた案件です」

「だから・・・もう一度頼むよ・・・手を引いてくれ」

「お断りします」

頑なな態度の赤星を持て余す咲坂だった。

「あいつは何なんだよ」と咲坂は夏目に愚痴る。

「あいつって・・・」

「赤星だよ」

「私とは揉めたことないけど・・・」

「畜生・・・仕事場でも家庭でも・・・問題だらけだ」

「家庭でもって・・・」

「みずきに男ができたんだよ」

「男って・・・友達でしょう」

「ジゴロかもしれないじゃないか」

「何言ってんの」

「それでも母親か」

唖然とする一同だった。

新人弁護士・熱海はかねてから・・・狙っている美人パラリーガルの茂木さとみ(岡本あずさ)に持ちかける。

「実は・・・みずきちゃんのために・・・咲坂先生と夏目先生を復縁させたいと思っている」

「そんなことより・・・早く仕事を覚えてください」

「・・・」

ベテラン秘書の朝丘(宮地雅子)とアソシエイトである城ノ内弁護士(馬場園梓)はニヤニヤするのだった。

パラリーガルの九十九治(大倉孝二)はあたりさわりのないリアクションでお茶を濁すのである。

今回はここまでで一番・・・脇役たちの扱いがスムーズだったな。

こういう「面白いのか面白くないのか微妙な面白さ」を狙ったドラマでは結構「編集の間」一つで印象がガラリと変わるのだ。

もちろん・・・そうなるように演出しているわけである。

咲坂に比べれば気配りのできる夏目は・・・赤星をフォローする。

「どうしたの・・・」

「特に問題はありません」

「でも・・・パパ・・・彼が・・・」

「案件についての意見の相違です・・・今後、調整していきます」

「よろしく・・・お願いね」

しかし・・・器の小さい咲坂は・・・所長に相談するのだった。

「とにかく・・・まず・・・クライアントの希望に沿うことだ・・・君もパートナー弁護士を目指すなら・・・不可能なことを可能にすることを目指さないとな」

咲坂に代わって赤星を叱責する所長である。

「まったく・・・器の小さい男だ」と思う赤星・・・。

熱海は赤星に質問する。

「夏目先生とも・・・やりあうのですか」

「夏目先生に逆らったことは一度もないよ・・・そんな恐ろしいことはできない」

「そうなの・・・」

「君はタイトルを見たことないのか・・・咲坂先生は馬に乗ってるだけだが・・・夏目先生はライオン飼ってるんだぞ」

「・・・」

もちろん・・・気障な男の代名詞だった赤星が・・・豹変しているのは「理由」があり・・・それが「オチ」という趣向である。

今回は完全に別枠扱いになっている第三のパートナー弁護士・猫田弁護士(杉本哲太)は婚活のためにお見合いイベント「お見合いRUN!」に参加する。

進行役は白石あかね(伊藤修子)である。

一部お茶の間で人気のドラマ「お義父さんと呼ばせて」で砂清水誠(山崎育三郎)を仕留める八千草千代(伊藤修子)なのである。

そして・・・「最後のカップル成立は男性9番・猫田純一さん・・・女性2番・大田蘭子さん」 と叫ぶのだった。

太田蘭子(小松彩夏)であるために一部お茶の間は騒然とするのだった。

ドラマ「家族ノカタチ」で佐々木彰一(荒川良々)とお見合いするのが丸山久美(小松彩夏)だからである。

つまり・・・「あまちゃん」の駅長と副駅長がセーラーヴィーナスとカップル成立してしまったのだ。

だから・・・どうしたってんだ・・・このドラマ中毒めがっ。

連続結婚詐欺でないことを祈るばかりである。

疑心暗鬼の父親は・・・学校まで娘を偵察に出向く。

そこで・・・けん玉の上手な目黒くん(藤野大輝)を目撃するのだった。

一方、夏目弁護士は大便ではなくてビッグベンことクライアントの岸田英樹(横田栄司)に交際を申し込まれたり、日本舞踊の師匠である仙石雪之丞(合田雅吏)にちやほやされたりして・・・それなりに離婚後の生活を楽しんでいた。

しかし・・・みずきの気持ちを考えると・・・離婚したことを早計だったかもしれないと考え始めている気配も漂うのであるが・・・。

「事業規模の縮小しかありません」

「従業員の解雇をクライアントは望んでいない」

相変わらず対立する咲坂と赤星・・・。

咲坂は伝家の宝刀「バッジ外し」を仕掛けるのだった。

「弁護士である前に人間としてだな」

「人間である前に銀行員である人たちは・・・ノーと言いますよ」

赤星の予言通りに・・・咲坂の中途半端な再建案は銀行の融資担当者に受理されないのだった。

「このままでは・・・融資は無理です」

「・・・」

手詰まりになった・・・咲坂・・・。

そこへ・・・クライアントの妻から連絡が入る。

「主人が・・・自分が死ねばなんとかなる・・・って言ってるんです」

「えええ」

弁護士とクライアントは事務所で緊急面談を行うのだった。

「まだ・・・希望はあります」とクライアントを励まそうとする咲坂。

しかし・・・赤星は険しい顔でクライアントを睨む。

「あなたが死んで・・・店だけ残して・・・どうするんです」

「おい・・・やめろ」と咲坂は赤星の言葉を遮ろうとするが無視する赤星。

「僕の父親も・・・飲食店やサウナなどの経営者でした」

「え」

「儲かっているから事業を拡大するんじゃないんですよね・・・経営が苦しいから手を広げるんです・・・融資を受けられるから・・・そして自転車操業です・・・僕はまだ学生だったので・・・親の経営状態なんて・・・全く知りませんでした・・・親父は資金繰りに奔走して・・・過労で倒れました・・・僕が病院に着いた時には・・・息をひきとっていました」

「・・・」

「結局、会社は倒産し・・・僕はバイトをしながら・・・なんとか大学を卒業して・・・弁護士になりました。女の子と生ガキが好きだなんて言ってますけど・・・女の子と付き合ったことはないし・・・生ガキも弁護士になって初めて食べました・・・美味かったなあ・・・」

「・・・」

「母親は言ってましたよ・・・意地を張らないであきらめていれば・・・死ぬことはなかったと・・・命より大切なものもあると・・・言う人もいますが・・・死んだらそんな戯言も言えません」

「彼の言う通りです・・・今は・・・店の看板と・・・あなたの命を最優先で考えるべきです・・・ある程度・・・世間に迷惑かける覚悟でがんばりましょう」

咲坂は掌を返すのだった。

器は小さいが・・・勝負時は逃がさない男なのである。

「唯一黒字の可能性のある浅草店を残し・・・後は・・・」

「本店もですか」

「本店もです」

「・・・わかりました・・・おっしゃる通りにいたします」

クライアントは観念したのである。

外国人観光客向けのビジネス展開で・・・浅草店に「いわし好きのポルトガル人」を呼びこむ事業計画に銀行は同意するのだった。

まあ・・・解雇された従業員が浅草店に放火する心配は残るがな・・・おいっ。

こうして・・・咲坂はクライアントの案件を解決することに成功した。

咲坂の下で・・・赤星が自分には見せたことのない顔を見せたことに動揺する夏目弁護士。

そして・・・赤星の意外な顔を見たパラリーガルの茂木さとみの心は大きく傾斜するのだった。

さとみが赤星を見る目が変わったことに動揺する熱海・・・。

ベテラン秘書の朝丘とアソシエイトである城ノ内弁護士はニヤニヤするのだった。

咲坂を見直し始める夏目弁護士は・・・二人でお茶を飲む。

「ベストフレンドになれって・・・所長に言われたよ」

「私たちが・・・」

「なれると思うか」

「私の結婚式であなたが祝辞を述べるってこと?」

「そういう相手がいるのか」

「まだいないわよ・・・そっちはどうなの」

「俺だって・・・」

モヤモヤする二人だった。

「とにかく頑張ってみるわ」

「え・・・」

「ベストフレンドを目指すんでしょ・・・」

「・・・」

夏目の目には一瞬・・・寂寥感が浮かぶが・・・鈍感な咲坂は気がつかない。

親離婚友達であるみずきと夏目は学校の踊り場で・・・。

「パパとママが最高の友達になったらうれしい?」

「いいや」

「そうよね・・・パパとママは・・・パパとママだもんね」

ようやく・・・一つの到達点が見えたな。

ここまで・・・長かったなあ。

先週は妻に・・・今週は妻の部下に・・・いいところ持って行かれた主人公。

来週は巻きかえしたいところだが・・・自分の部下に持って行かれそうだな。

それもまた・・・味だよな。

いわしそばよりもさばそばだよな。

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Gpoo6ごっこガーデン。愛と青春の弁護士通りセット。

まこぼぎゃああああんでちゅどおおおんな咲坂弁護士と夏目弁護士のスピード離婚・・・。結局・・・結構面倒くさい男の気配が漂う咲坂弁護士によって蓄積された鬱憤が・・・弁護士復帰のあわただしさの中で一気に爆発しちゃった夏目弁護士ということでしょうか・・・もう・・・どっちかが折れればすぐにでも復縁しそうでしゅが・・・きっと二人とも折れないのでしゅね~。損して得とれって言ってあげたい今日この頃なのデスエリ弁護士ものとしては案件が地味なのでス~。売り言葉に買い言葉で離婚してもやもやしている中学生のようなグッド・パートナー。これって・・・夫婦喧嘩は犬も食わない話なのかしらん・・・。死に物狂いの経営努力で世界経済は回るけれど誰も幸せにはならない・・・それはケース・バイ・ケースでス~。泣いてすんだら弁護士いらないわよね~

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2016年5月26日 (木)

素適なベッドを準備した(大野智)こんな意気地なし見たことない(波瑠)底抜けに腰抜けな大間抜けキターッ!(清水富美加)言葉にならないFeeling Good(小池栄子)

映画「娚の一生」で榮倉奈々演じるヒロインは主人公の豊川悦司といつそうなってもおかしくない関係となる。

ヒロインは子供のようなアプローチで主人公にじゃれつき・・・二人は自然にもつれあって転倒。

見つめ合う二人。

そこで主人公はヒロインの足首をつかむと・・・いきなりヒロインの足指をしゃぶりはじめるのである。

ヒロインは最初は茫然とするが・・・いつしか恍惚の表情を浮かべるのだった。

このドラマの主人公の童貞社長にそんなことを求めるのは無理だとはわかっているが・・・。

いくらなんでもコレはないだろう・・・。

面白すぎるじゃないか・・・。

で、『世界一難しい恋・第7回』(日本テレビ20160525PM10~)脚本・金子茂樹、演出・中島悟を見た。脚本家の出世作であるドラマ「プロポーズ大作戦」ではヒロインの親友役の榮倉奈々は主人公の親友役の濱田岳と結ばれるわけだが・・・濱田岳といえば映画「みなさん、さようなら」(2013年)で波瑠と濃厚なベッド・シーンを演じている。2013年は20代に入った波瑠が抜群の美貌を開花させ始めた年と言っていいだろう。魔性の女も演じられる波瑠が・・・学級委員モード全開のこのドラマである。据え膳を食わなすぎる主人公が・・・どうしても手を出せないほどの高嶺の花的存在感がヒロインにあるので・・・この破天荒な設定が破綻しないのである。・・・凄いな。

「逢いましょうか」

「逢っていただけるんですか・・・」

破局寸前から不死鳥のように蘇った鮫島零治(大野智)と柴山美咲(波瑠)の社内恋愛。

美咲を部屋に招き・・・買い出しに出かけ・・・周到な準備を整える零治だった。

美咲もそれなりの覚悟をして鮫島の部屋に到着したのである。

玄関の扉を開くと微笑む美咲。

こんな夢のような状況だけで・・・一部お茶の間は陶然とするのだった。

だって・・・玄関あけたら美咲が微笑んでいるんだぜ。

それはもう・・・わかったぞ。

美咲は零治のために軽いおつまみでも作ろうとするのだが・・・食卓には完全なオードブル体制が整っている。

美咲が好物だと言った松前漬もさりげなく置かれているのである。

零治の心遣いに美咲は喜んだことだろう。

そして・・・弾む会話。

やがて・・・時は過ぎ・・・最初の難関がやってくる。

「そろそろ・・・」と帰ろうとする美咲を引きとめる零治。

「泊まっていけばいいじゃないか」

「ご迷惑ではありませんか」

「遠慮することはない・・・私がこわいのであれば・・・庭にテントを張って別々に寝ても良い」

「その必要はありません」

零治の本気の言動も・・・この時点では・・・あくまで「茶目っ気」と受け取る美咲なのである。

零治の寝室に用意された美咲用の寝具。

高まる美咲の覚悟。

寝室には「いさなみすやお・いさなみしほ夫妻のイラスト」が展示されている。

「まあ・・・」

「殺風景だったから・・・」

「いさなみすやお・・・」

「いさなみしほ・・・」

覚悟を決めて目を閉じる美咲。

その寝顔にうっとりしてニヤニヤする零治。

・・・終了である。

「え・・・何もなさらなかったのですか」

「何かおかしいか」

「ドラマなので直接的表現は避けて朝の鳥のさえずりでごまかすとかではなくて」

「そんなシーンさえなかったぞ・・・」

零治の行動に・・・危機感を募らせる秘書の村沖舞子(小池栄子)だった。

「それは・・・あまりにも惨い仕打ちなのでは・・・」

「どこが・・・惨いんだ・・・それより・・・帰らせないで引きとめた俺を讃えてくれてもいいのではないか」

「つまり・・・彼女は覚悟を決めたのに・・・何もなさらなかった社長が余計に酷いことになります。彼女が可哀想です」

「え」

「まさか・・・社長・・・キスもなさらなかったのでは」

「・・・」

「まさか・・・社長・・・キスも未経験なのですか」

「馬鹿なことを言うな・・・俺を誰だと思っている」

「未経験なのですね」

「経験はある・・・」

「それは社長の財産狙いの女性が向こうからキスしてきただけでしょう」

「キスというものは・・・男からするものなのか」

「・・・」

「そうならそうと最初から言ってくれ」

「女性が望む初めてのキスの場所・ベスト3です」

三位・彼氏の部屋

二位・夕暮れの砂浜

一位・夕闇の観覧車

「ほら・・・三位じゃないか・・・俺には相応しくない」

「・・・」

「俺は彼女に最高のキスをするのだ」

「・・・」

社長室から・・・思わず彼方の観覧車を観察する零治だった。

ここまでの経過から・・・散々、苦労したあげく・・・最後はキスするバカップルを期待するお茶の間だったが・・・この脚本家の・・・本性がついに爆発する今回なのである。

その先駆として・・・序盤をリードする21世紀の適当男・三浦家康(小瀧望)だった。

週末の出張でなにやら白浜部長(丸山智己)に急接近した堀まひろ(清水富美加)に見切りをつけ・・・美咲に突然の猛アプローチを開始する家康・・・。

「僕と観覧車に乗りませんか」

「お断りします」

しかし・・・まったく頓着しない家康は零治に「明日までに美咲を落して見せる宣言」を述べる。

「お前には無理だ」

「僕に不可能はありません」

だが・・・万に一つの可能性に怯える零治なのだった。

「今後、社内恋愛は禁止する宣言」である。

ここで・・・叛旗を翻す・・・まひろだった。

「そんなのずるい・・・社長は美咲さんと交際しているじゃありませんか」

静寂に包まれる鮫島ホテルズ社長室企画戦略部・・・。

「なんだ・・・知ってたのか・・・」

零治は・・・社員たちの顔色から・・・それが暗黙の了解だったことを読みとる。

「じゃ・・・仕方ない・・・社内恋愛禁止を撤回する」

安堵する一同・・・茫然と立ちすくむ家康を除外・・・である。

女同士の情報交換タイム。

「実は・・・部長と食事の約束をしたので必死になっちゃいました」

「よかったじゃないの・・・でも・・・彼は少し横暴ですよね」

「そんなことはないでしょう・・・あれって・・・俺の女に手を出すな宣言でしょう・・・うれしいことじゃないですか」

「そうかな・・・」

自由・平等・博愛の学級委員主義に抵触している美咲なのだ。

一方・・・美咲を動植物のように飼育・観察できれば満足の零治・・・警報が鳴り響いています。

絶体絶命の家康だったが・・・起死回生の観覧車のティケットで乗り切るのである。

「社長と彼女のために観覧車はあるのです」

零治は・・・家康の解雇を思いとどまり・・・ニヤニヤするのだった。

全観覧車内で恋人たちがキスする夜・・・。

「・・・観覧車に乗りたかったのですか」

「社長室から・・・観覧車が見える・・・観覧車から社長室が見えるかどうか・・・確認したかっただけだ」

「あ・・・あそこですよ」

「え・・・どこどこ」

向かいあって坐った位置から・・・席移動までは果たせた零治だったが・・・もちろん・・・キスなど思いもよらないのだった。

秘書に叱責される零治だった。

「ダメじゃないですか」

「なぜだ・・・彼女とキスしなければいけない法律でもあるのか」

「小学生ですか」

「キスなんかしなくても人は生きていける」

「恋愛は成立しません」

一方・・・秘書は恋愛マスターである和田英雄(北村一輝)から大人のアプローチを受ける。

「この間はすまなかった」

「謝られるようなことは何も・・・」

「ただ・・・君にこっちを向いてもらいたかっただけだ」

「・・・」

二人は飲み明かすのだった。

鳥が翼を広げて舞い上がる時・・・

夜の終わりを朝陽が告げる時・・・

爽やかな風が吹き抜ける時・・・

あなたにもわかるはず

夜明けが

一日が

人生が

素晴らしいって感じること

だが・・・怯える小動物のように・・・次の段階に踏み出せない零治なのである。

零治と美咲にはお約束で小鳥の囀る朝はやってこないのだった。

美咲が零治の部屋を再び訪れる。

美咲は零治のために手料理をふるまう。

零治も華麗な包丁さばきで手伝う。

和気藹々の二人・・・。

「こんな美味しい料理は食べたことがない・・・君が店を開いたら毎日通うことになるだろう」

美辞麗句を並べたてることのできる零治だったが・・・。

またしても・・・キスはできないのだった。

女子同志の情報交換会・・・。

「え・・・また・・・何もなかったんですか」

「ええ・・・ちょっと・・・おかしいでしょう」

「確かに変ですね・・・」

「・・・」

「まさかと・・・思いますが・・・社長は同性愛者で・・・偽装結婚を・・・」

「え」

「いや・・・でも・・・社長にその気配はかんじられないんだよな・・・」

「・・・」

疑惑のふくらむ二人だった。

零治は秘書に泣きごとを言う。

「好きの二文字にも散々苦しめられたが・・・キスの二文字にもこんなに苦しめられるとはな」

「彼女はキスされるのを待っていると思いますが」

「もし・・・待っていなかったらどうするんだよ」

「社長・・・これは仮定の話ですが・・・私が社長と敵対関係にある方と交際しているとしたら・・・どうなさいますか」

「和田のことか・・・」

「え・・・御存知だったのですか」

「え・・・本当に和田なの・・・」

「・・・」

「好きにすればいいじゃないか・・・君と僕は・・・秘書と社長だ・・・プライベートについては関知しない・・・和田だろうがニシキヘビだろうが・・・自由に交際すればいい」

今はとにかく・・・どうすれば美咲とキスできるか・・・それだけで頭が一杯の零治である。

すればいいじゃないか・・・という言葉はこの脚本家の辞書にはありません。

ついに・・・運転手の石神剋則(杉本哲太)を呼び出す零治であった。

「こんなことは・・・お前にしか頼めない」

「・・・」

「どうすれば・・・キスできるか・・・教えてくれ」

「そう言われましても・・・私も待つタイプですので・・・」

「そうだろう・・・そういうタイプだからしょうがないよなあ・・・」

「そうですねえ・・・突然ベッドが壊れて・・・彼女の方に転がり落ちるとか・・・そういうアクシデントを祈る他・・・」

「神に祈る必要はない・・・そういうベッドを作ればいいじゃないか」

「ええっ」

ついに狂気の世界に足を踏み出す零治だった。

まあ・・・偶然を装って待ち伏せする手法の延長線上じゃないか。

そうかな・・・。

出勤したくなくて会社に放火するタイプじゃないか。

ああ・・・。

運転手と深夜の合宿を行い・・・ベッドを改造する零治。

試行錯誤の末・・・脚部引きこみ式ゴロゴロストンチューベッドが完成するのだった。

そして・・・三回目の・・・美咲のお宅訪問の夜がやってくる。

まひろからのアドバイスに従い・・・美咲は・・・積極的なアプローチをする覚悟である。

なにしろ・・・交際している以上・・・関係を深めるのは・・・心の安定のために必要不可欠なのが・・・普通だからだ。

いつもの配置につく二人。

零治は・・・シミュレーションを重ねた改造ベッドのスイッチに手をかけるが・・・そのスイッチを押す勇気もないのだった。

そこへ・・・積極的攻勢をかける美咲。

気配に気がついた零治は完全な乙女と化すのだった。

つまり・・・男の子がキスをしようとすると・・・。

「ちょ・・・ちょっと・・・やめてよね」と言うアレである。

いくら男女雇用機会均等法の世界でもそれだけは・・・絶対ダメですから。

「えっ」と驚く美咲。

零治は怯えてスイッチ・オンである。

たちまちベッドから転げ落ちる二人・・・。

「痛い・・・」

「あああ」

「何なんですか・・・これは・・・」

「いや・・・あ・・・きっと運転手のサプライズだ・・・時々・・・こういうことをするんだ」

「ベッドに細工する前にやることがあるんじゃないですか」

美咲はずっとじらされてきたのである。

覚悟して待っていたのである。

その上であえて積極的な行動に踏み切ったのだ。

それなのにこの仕打ち・・・女心はズタズタなのである。

しかし・・・美咲より乙女な零治に・・・そんな気持ちを察することができるだろうか・・・いや・・・できない。

「いや・・・この装置は・・・」

「ずっと・・・大人の余裕だと思っていたのに・・・」

「だから・・・これは・・・」

「なんで・・・拒否したんですか」

「そんなにおこらなくても」

「この意気地なし」

ついに・・・零治の正体を正確に見抜く美咲。

しかし・・・見抜かれて我を失う零治。

「お前みたいな気の強い女ははじめてだ」

「社長がこんなに器の小さい人だったなんて」

「二人の時に社長はやめろといっただろう」

「なんて姑息なの」

「お前はクビだ・・・」

「わかりました」

憤然と帰り支度を始める美咲。

我に帰る零治。

「あ・・・待って」

「・・・」

「待てってば・・・」

「・・・」

「待て・・・社長命令だ」

扉は閉ざされた。

立ちすくみ・・・ベッドに崩れ落ちる零治。

頬を伝う一滴の涙・・・。

これはもう・・・いつもの脚本家の世界だな・・・。

ついに辛抱しきれなくなってしまったんだな。

一方・・・和田とともにホテルの一室に入った秘書は・・・。

「やはり・・・和田社長とは交際できません」

「なぜだ・・・」

「鮫島社長を裏切ることはできませんので・・・」

「一体・・・彼のどこにそんな魅力が・・・」

「言葉では言えません・・・彼の魅力は非常に理解しにくいものです・・・もし私がいなくなれば・・・彼の味方は・・・一人もいなくなってしまう・・・ほどに」

「まさか・・・君・・・あいつのことを・・・」

「はい・・・私は零治さんを好きです・・・大好きです」

丹念に隠匿され・・・世間を欺き続けてきた・・・お約束の三角関係スタートである。

ある意味・・・変形された母と息子の不適切な関係でもあり・・・非情に不気味でもある。

こうして・・・安定のラブコメは・・・不吉な終盤戦へとなだれ込んでいくのだった。

ドタバタか・・・ドタバタにするんだな。

いや・・・今回はすでにドタバタ・コントだからな。

まあ・・・ここまで頑張ったんだから・・・もう好きにしろとしか言わないがね。

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2016年5月25日 (水)

才能泥棒(黒木華)道具屋だよ(オダギリジョー)シーソーゲーム(ムロツヨシ)真剣勝負(永山絢斗)普通が一番(蒔田彩珠)

落語愛好家のアシスタントが聞いているのは「道具屋」である。

一種の古道具を売るお店をまかされた若者が・・・「ろくでもない商品」を客に売り付けようと悪戦苦闘する「話」である。

編集者を道具屋、漫画家を道具と考えれば・・・そのビジネスのあらましが分かるわけである。

最期に御隠居さんが客として現れ・・・汚れた笛の穴に埃が詰まっていることに難癖をつける。

しかし・・・穴につっこんだ指がぬけなくなってしまう御隠居。

「困りますね・・・売り物なのに・・・」

「仕方ない・・・買い取るよ」

そこで高額をふっかける道具屋。

「お前さん・・・足元を見るんじゃないよ」

「いいえ・・・手元を見ました」

お後がよろしいようで・・・。

漫画家も役者も「才能」が売り物である。

それを売ろうとする編集者やマネージャーがどちらも人間であることは・・・厄介だが面白いのだった。

で、『重版出来!・第7回』(TBSテレビ20160524PM10~)原作・松田奈緒子、脚本・野木亜紀子、演出・塚原あゆ子を見た。現場から離れて二十年以上経つのに時々・・・昔の夢を見る。そんな出来事はなかったのに渋谷のスタジオで大物芸人に頼まれてスポーツ新聞を買いに行くというのが定番で・・・物凄い冒険が始るのだ。コンビニまでが遠い道程なのである。今日なんか銃撃戦に巻き込まれて危うく死ぬところだった。「ラヴソング」や「重版出来」などの業界もののドラマを見ている影響だろうか。タレントと所属事務所の軋轢の噂などもなんらかの残滓となっているのだろう。まあ・・・昔と比べたらかなり普通になっていると思われる芸能界で・・・相変わらずの茶番劇が展開されているのかと思うと心が騒ぐのかもしれない。人間は基本的に馬鹿だからなあ。そこが面白いのかもしれないけれどね。道具は道具として徹すればいいとも思うし・・・あまりにも道具扱いじゃかわいそうだしなあ。

週刊コミック誌『バイブス』で新人賞を受賞した「ピーヴ遷移/中田伯」は読み切り掲載だったらしい。

つまり・・・中田伯(永山絢斗)は三蔵山(小日向文世)のアシスタントとして修行中の身の上なのである。

しかし・・・素人同然の画力や基礎知識のなさに・・・指導する万年アシスタント・沼田(ムロツヨシ)・・・二十年間デビューできない男・・・は時々・・・絶句するのだった。

「一点透視・・・って何ですか」

「そこからかよ」

だが・・・心から漫画を愛するムロは・・・面倒な後輩を同業の仲間としてなんとか受けとめようとする。

「遠近法というものがあってな・・・」

沼田も中田と同じように二十代で新人賞を受賞した過去がある。

「えんきんほう・・・」

しかし・・・本格的な作品を発表する機会を得ないままに二十年の歳月が過ぎ去ったのだ。

「このまま・・・一生デビューできなかったりしてな」

「冗談でもそういうことは言わない方がいいですよ・・・言葉には力がありますから」

「トリックかよ」

「ボクを育てたじいさんも・・・ある朝・・・もうダメだ・・・死ぬと言って死にました」

「それは・・・寿命だったんじゃないか」

自分には帰る場所もなく・・・漫画家になるしかないと思い詰める中田。

画力不足だけでもなく・・・精神的にも問題がありそうだった。

三蔵山夫人(千葉雅子)の手料理の感想を求められ・・・言葉を失い・・・「構わないでくれ」と席を立つ中田なのである。

「お前・・・先生の奥さんに失礼じゃないか」

「なんだか・・・煩わしくて・・・」

「え・・・お前だってお母さんがいるだろう・・・」

「いませんよ・・・」

「それは・・・すまなかった・・・でも思い出くらいあるだろう」

「僕の母は・・・いつも僕を犬の首輪につないでいましたよ」

「ええ」

「冗談です」

「えええ」

明らかに心に闇を抱える中田だった。

一方・・・印刷された出版物の売れ行き不振に悩む大手出版会社・興都館は過去の名作の電子書籍化を目論んでいた。

和田(松重豊)は「タイムマシンにお願い/牛露田獏」の電子書籍化の許諾を求め・・・黒沢心(黒木華)とともに・・・業界から消えた漫画家である牛露田宅を訪れる。

銀座の夜の店で札束をばら撒いていた過去を持つ牛露田獏(康すおん)だったが・・・その後ヒット作に恵まれず・・・「過去の人」となっていた。

集合住宅前で応答のない牛露田を待っていた二人は・・・牛露田の娘の女子中学生・後田アユ(蒔田彩珠)に出会う。

「アユちゃん・・・大きくなったねえ」

面識のある和田が声をかけるが・・・アユは素っ気ない態度で応じる。

「入れば・・・」

「お父さんはどこかに・・・でかけているのかな・・・」

「・・・」

「お母さんは・・・昔・・・よくカレーを御馳走になったもんだが・・・」

牛露田夫人の祥子(赤江珠緒)は遺影になっていた。

疎遠になっていたとは言え・・・和田・・・不義理過ぎるだろう。

「ダメ親父のせいで・・・母は働き過ぎで身体を壊し・・・死んだ」

「・・・」

そして・・・奥の座敷で・・・牛露田は飲んだくれていた。

「何の用だ」

「先生の作品を・・・電子書籍に・・・」

「一億持ってこい・・・」

「それは・・・少し法外です」

「俺の作品の値段は俺が決める・・・文句あるか」

交渉決裂である。

アユの前途を案じた心は・・・名刺を渡すのだった。

「何かあったら・・・どんなことでも構わないから・・・連絡してください」

まもなく・・・警察から呼び出される心。

公園で補導されたアユは母親として心を指名したのだった。

「何もしてないのに・・・」

「学校は・・・」

「球技大会だから・・・」

生活保護を受けているアユは・・・その件で学校でいじめを受けていることを心は察している。

「・・・」

「助かったよ・・・これでバイトに間に合う」

「バイトって・・・」

「新聞配達・・・」

心はアユをカフェに誘うのだった。

スイーツの注文に迷う心の姿は・・・アユに亡き母を思い出させる。

「一口あげようか」

「え」

「お母さんも・・・いつも迷ってた」

アユは微笑み・・・中学生らしい幼さを見せる。

「一口もらいます」

「あんな・・・ダメ親父さえいなければ・・・」

「でも・・・お父様は・・・素晴らしい漫画を描いて・・・たくさんの人を喜ばせていたんですよ」

「関係ないよ・・・」

「・・・」

「私は・・・普通がよかったよ」

言葉を失う心。

電子書籍化によって・・・牛露田家にもいくらかの収入がある・・・しかし・・・「過去の栄光の世界に住む天才漫画家」の説得は難航しそうな気配である。

「ピーヴ遷移」の連載化を目指す中田はネーム(下書き)ノートを心に持ち込む。

しかし・・・七冊目が欠けていることに気が着く心だった。

七冊目のネームノートを発見し・・・誘惑に負けて・・・それを読む沼田。

そこに「天才の狂気」を感受した沼田は恐怖した。

恐ろしいほどに開花している中田の才能というモンスターが・・・沼田には見えたのだ。

戦慄して・・・怪物に墨汁を投げつける沼田。

我に返った沼田は・・・ネームノートを汚してしまったことに慄く。

「嫉妬・・・嫉妬なのか・・・」

漫画家アシスタント・沼田渡の半生

地方の造り酒屋の息子に生まれた沼田は幼少期から漫画家を目指し、大学の漫画研究会でも抜群の才能を見せる。新人賞を受賞後・・・三蔵山のアシスタントとなり・・・デビューを目指しながら・・・二十年の歳月が過ぎ去った。

ネームを持ちこんでは編集者にダメ出しされ・・・師匠からは愛の鞭を受ける。

「この作品の主題は何なの・・・」

「主人公が自分とは何かを見つめることです」

「さっぱり・・・わからないな」

そして、四十歳になったのである。

一冊足りないネームノートを捜す中田・・・。

素知らぬ顔をする沼田だったが・・・アシスタントを支配する関白殿下にはお見通しだった。

だから・・・「真田丸」をまぜるな。

「返せるのなら・・・返してあげなさい」

「私は・・・」

「君は嘘をつくほど・・・子供だったのかい」

「・・・」

三蔵山は・・・嘘をついて中田にノートを返す。

「すまない・・・読んでいるうちに・・・うっかり墨汁をこぼした」

届けられたノートを見て・・・心を疑心暗鬼が襲う。

「新人アシスタントいじめ発生中・・・」

心はチーフ・アシスタントの沼田に事情を聴取する。

震える沼田の心・・・。

「中田くんは・・・奥様の仕業じゃないかって・・・言うんですけど」

「えええ」

「私も・・・まさかとは思うんですが・・・」

「彼は・・・母親との間に確執があったようなので・・・」

「やはり・・・おいたちに問題があるんでしょうか・・・」

「・・・」

追いつめられる沼田は・・・自分のネームノートを読んでいる中田を見て心をかき乱される。

「君が読んだって・・・つまらな・・・」

中田は泣いていた。

「お前・・・わかるのか」

「主人公は・・・自分が何者なのか・・・知りたいんですよね」

「・・・」

「すごいな・・・沼田さんの漫画は・・・」

沼田は・・・自分の漫画の読者を見出した。

そして・・・自分の怠惰を恥じた。

誕生祝いに実家から贈られた銘酒を師匠と酌み交わす沼田・・・。

「決心したのか・・・」

「私は・・・故郷に帰って・・・家業を手伝います」

「そうか・・・」

「自分の作品が・・・いつか理解してもらえる・・・いつかいい編集者にめぐり会える・・・いつか面白さを認めてもらえる・・・いつかいつかいつか・・・そうやって・・・本気で戦わないまま・・・四十歳になってしまったのです・・・理解してもらうためにはどうすればいいのか・・・面白さを認めてもらうために何をするべきか・・・自分と戦うことを避けて・・・」

「それが・・・一番・・・難しいのさ・・・」

「はい」

アシスタントたちにチーフの退職を告げる三蔵山。

「どうして・・・」と問いかける中田。

「卑怯者だったからさ・・・」

「・・・」

「お前のノートを汚したのは俺だ」

「・・・」

「どうしてだと思う?」

「絵が・・・下手過ぎてむかついたから・・・」

「違うよ・・・お前がうらやましかったんだ・・・帰る家のないお前が・・・ごめんよ・・・俺には帰る家があって・・・」

「アムロ・・・」

「ムロだけにね」

戸惑う中田に・・・沼田は「古典落語全集」をプレゼントした。

「結局・・・俺には無用のものだった・・・お前の役に立つといいけどな」

「・・・」

故郷に戻った沼田は・・・素晴らしいPOPを描く。

「上手ねえ」

「さすがだねえ」

「まるでプロみたい・・・」

「新酒出来!」・・・夢破れた寂寥感を胸に沼田の新たなる戦いが始ったのだ。

心は思う・・・私が二十年早く生まれていたら・・・沼田さんをデビューさせることができたのに・・・と。

「おいおい」とツッコミを入れる編集者一同だった。

「でも・・・漫画家さんと編集者って・・・子供とお母さんみたいだなって・・・」

「この処女がっ」

「小熊のくせに」

「くやしかったら、孕んでみろ」

正義漢とエイリアン(異邦人)の対峙か・・・・・・おいっ。何故「銀魂」をまぜるんだよ。

韻をふむならコレって感じなもんで・・・。

再放送中だからだろう・・・。

思い切って・・・沼田渡と牛露田獏の同世代設定にしてもよかったけどな。

アユの年齢から言っても牛露田獏は三蔵山世代ではないしな・・・。

天才になった男と天才になれなかった男の対比も効いたんじゃないか。

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2016年5月24日 (火)

愛と知っていたのに(福山雅治)血まみれのハイヒール(藤原さくら)やったんじゃろ(夏帆)内緒にしてください(菅田将暉)

2016年春ドラマは空前の童貞ブームである。

(火)の「重版出来!」の新人漫画家・中田伯(永山絢斗)はなにしろマンガばかり描いているので童貞だ。

(水)の「世界一難しい恋」の主人公・鮫島零治(大野智)は恋愛経験ゼロである。

(木)の「グッドパートナー 無敵の弁護士」の熱海(賀来賢人)も赤星(山崎育三郎)も女の気配が皆無。

まさか・・・と思うが・・・猫田(杉本哲太)だって怪しいぞ。

(土)の「お迎えデス。」の主人公・堤円(福士蒼汰)は童貞確実である。

(日)の「ゆとりですがなにか」の教師・山路一豊(松坂桃李)に至っては童貞であることが存在理由である。

なんだろう・・・最近の若い男は・・・童貞でなくてはならないのか・・・。

一方、(月)「ラヴソング」では主人公が冒頭から意味もなくやりまくりである。

そのために・・・なんとなく童貞枠だった天野空一(菅田将暉)も前回、年上の女に童貞を捧げてしまったのである。

そういう意味でこのドラマは時代に逆らっているな・・・おいおい。

で、『ラヴソング・第7回』(フジテレビ20160523PM9~)脚本・倉光泰子、演出・平野眞を見た。このドラマで凄いのは主題歌の「Soup/藤原さくら」も劇中歌の「好きよ 好きよ 好きよ/藤原さくら」も作詞・作曲が福山雅治ということである。劇中歌の「好きよ 好きよ 好きよ」はレコード会社「トップレコード」のプロデューサー・弦巻竜介(大谷亮平)に「これを作った人は天才だ」と言わしめる作品なのである。そういう設定の曲を実作し・・・「たいしたことないよ」的な顔で受け流す神代広平を演じる福山雅治・・・その立場に置かれることの目も眩むようなプレッシャーは想像しづらいな・・・。

そういう・・・素晴らしいスターを起用しての「月9」なのである。

もう・・・絶対失敗できないラインを越えてるぞ。

とにかく・・・新妻が「違うんです」の人に実害を加えられなくて本当によかったと考えます。

さて・・・すでに中盤は越えたと思われる今回。

不幸な生い立ちを持ち障害に悩む佐野さくら(藤原さくら)が・・・恋をする物語としては順調に推移していると思う。

一方で・・・過去に「音楽活動での成功の夢」に挫折し、「愛する人」も失った神代広平(福山雅治)の人生については・・・少し説明不足であるような気がする。

広平の心が・・・荒廃しているわけではなく・・・それなりに第二の人生を歩んでいることに重点が置かれ・・・患者である「さくらの声」に魅了され・・・のめり込み・・・いわば・・・あがき始める「理由」・・・心に眠る「闇」がほとんど語られないのである。

「墜落寸前の旅客機」を示すために・・・「エンジンから炎と煙があがっている描写」は必ずしも必要ではないが・・・ただ「漫然と飛行しているだけ」では・・・あまりに不親切なのである。

「本当に愛したのは彼女だけ」である広平が・・・様々な女性と性的体験だけを繰り返し・・・けして相手の愛に応えないという描写の連続では・・・単なるプレイ中年という誤解を与えかねないのだ。

そういう描写を控えて・・・失われてしまった宍戸春乃(新山詩織)との日々を回想するシーンをもう少し盛り込んだ方がよかったような気がする。

見た目の年齢差を埋めるために・・・若き日の広平は登場させず・・・声と広平の視線で回想するといった手法で・・・春乃との日々を生々しく再現し・・・少なくとも・・・ここまでに「事件」のすべてを明らかにしておくべきだったろう。

広平が・・・さくらの愛に応えるか応えないかは別として・・・そうでなければ・・・さくらの人生があまりにも哀しすぎるではないか・・・。

広平は・・・春乃のために作った楽曲をさくらに歌わせることにする。

広平の傲慢さは・・・作詞作業に関わったことで・・・作詞を神代広平・佐野さくらの連名にしたことにも現れている。

さくらに依頼し・・・さくらが骨格を作ったのである・・・二人の合作なら・・・作詞・佐野さくら、作曲・神代広平で充分だったのだ。

弦巻竜介(大谷亮平)の誤解・・・神代広平が天才的な楽曲提供者であるという伏線であるとすれば・・・広平があまりにも大人げないことになる。

脚本は・・・そういう矛盾をなるべく排除しないとね。

広平にはある種の「うしろめたさ」がある。

それは・・・春乃の妹である言語聴覚士・宍戸夏希(水野美紀)とのぎくしゃくとした会話によって明示される。

しかし・・・曲以前に・・・夏希は・・・さくらと広平の関係を疑い・・・感情的になるシーンを広平に見せる。

お茶の間的には・・・広平が夏希の「心」を知ったシーンになったはずだが・・・その後の展開では・・・広平は「春乃を裏切りつつあることを夏希に責められている」心持ちのようでもある。

それは・・・あまりにも「女心」がわからなすぎる設定じゃないか・・・。

広平・・・まさか・・・精神的な童貞なのか・・・。

「あの曲どうだった」

「昔の曲でしょう」

「知ってたのか」

「お姉ちゃんの遺品に残っていたわ」

「少し・・・古臭かったか・・・」

「そんなことは・・・ないと思う」

安堵の表情を見せる・・・広平・・・ものすごく・・・馬鹿なんじゃないか。

音楽馬鹿なのか・・・心理カウンセラーなのに・・・。

もちろん・・・姉のために作った曲をさくらに歌わせることに対する・・・つまり・・・姉の妹である自分よりも・・・さくらが高い位置を占有していることへの夏希の嫉妬の炎は燻り続けるのである。

ここから・・・夏希はどんどん・・・嫌な女になっていく。

まあ・・・ここまででも充分に嫌な女だったけどな。

この手のドラマでは・・・安易に敵役を作ればどんどん安っぽくなっていくわけだが・・・「愛の歌」に心を動かされる人々のドラマとしては非情にデンジャラスなことになると考える。

まあ・・・夏希が「嫉妬の炎に身を焦がす哀しい女のブルース」を歌うのなら話は別だが。

レコード会社「トップレコード」の弦巻竜介は「好きよ 好きよ 好きよ/佐野さくら」のデモテープが好感触を得たことから・・・ライブハウス「S」でのプロモーション・ビデオの撮影を提案する。

広平の音楽仲間や、通りすがりの岡村隆史、天野空一や中村真美(夏帆)が見守る中・・・夏希だけは・・・広平とさくらが音楽的に結ばれていくことへの焦燥感に苛まれる。

「私は・・・なんだか・・・面白くないのよ」

「どうした・・・」

「本当にわからないの」

「飲み過ぎだぞ」

広平は・・・「何か」から目をそらす。

ここで・・・現場を離れたはずの・・・鶴巻は・・・妙なドス黒さで・・・唐突な展開を開始する。

「うちのトップアーティストであるCHERYLが・・・この曲に興味を持っているんです」

「なんだ・・・アイドルか・・・」

「ちがいますよ・・・シェリル知らないんですか」

「マクロスに出てくる人・・・」

「アニメじゃない!・・・とにかく・・・広平さん・・・CHERYLへの楽曲提供について考えてみませんか」

「今は・・・とにかく・・・佐野さくらを世に送り出したいんだ」

「・・・」

「グリスターミュージック」取締役・音楽制作室長の桑名(りりィ)が予言する「才能を潰そうとする人々」の暗躍が始ったらしい・・・。

ものすごく・・・チープなとってつけた感が漂うのだな。

ちなみにCHERYLを演じるLeolaはほぼ新人で・・・挿入される楽曲はデビューシングル「Rainbow」である。

錯綜する人間関係である。

年齢差のある二人の「恋愛模様」であるために・・・「青春チーム」と「中年チーム」の落差は激しい。そこを追うだけでもかなり・・・面白いが・・・撫でるだけなんだな。

どちらかといえば・・・・青春チームの方がドラマチックである。

それは・・・夏希が嫉妬して呪いをかける「青春の輝き」そのものなのだ。

ライブに間に合わなかった真実の婚約者・野村健太(駿河太郎)・・・。

「きききききききっと・・・クレーム対応だよ」と同じく大型車の整備・販売会社「ビッグモービル」で働くさくらは笑う。

野村の家はすでに二世帯同居に改装され・・・野村の両親は真実の同居を待ち望んでいる。

親の味を知らない真実には・・・「普通の家庭」に対する恐怖心があるのと同時に・・・ずっと面倒を見てきた妹同然のさくらを案ずる心情がある。

そのために・・・同居を引きのばしているのである。

さくらはついこの間まで「結婚なんてしないでくれ」と真実に甘えていたのである。

「歌」と「広平への恋」で前向きになっているさくらが・・・なんらかの「成果」を得ることを待ち望む真実。

しかし・・・心のどこかには・・・さくらの「成功」に対する怯えも潜んでいるのかもしれない。

脚本のトーンがそういう感じなんだよな・・・。

その上・・・海街四姉妹なので・・・どうしても奥行きがあるわけである。

謎に満ちた広平の心とは別に・・・ストレートなさくらの「恋心」・・・。

広平のカウンセラーとしての出勤日に・・・仔犬のように付きまとう。

さくらの上司で広平になんとなく気のある滝川(木下ほうか)や・・・潜在的ないじめ集団である女子社員たちの妨害ほ乗り越え・・・さくらは広平にデートを申し込む。

「レコーディングの打ち上げをしてませんよ」

「そうか・・・じゃ・・・やろう」

天にも昇るような気持ちのさくらである。

デートのおしゃれのために・・・新しい靴を購入するさくら・・・。

妙な接客の店員・かおり(杉浦琴乃)のために・・・「サイズ」を上手く伝えられないさくらだった・・・。

妙なキャスティング多いよなあ・・・。

もっと王道でいいんじゃないか。

レパープラス的なことじゃないのか。

その頃・・・空一は・・・キャバクラ嬢時代の真実の・・・客からのプレゼントのストックを漁っていた。

「これ・・・くれる」

「それ・・・化粧品だよ」

「お世話になった人への御礼の品」

「その人とやったのか」

「え」

「やったんだな」

「いやん・・・」

「さくらはデートみたいだぞ」

「え」

「となればこくるかもしれん」

「・・・」

「まあ・・・ふられる可能性大だよな」

「そうだよね」

「しかし・・・だからといってさくらは空一とはやらんな」

「えええ」

そこへ帰宅するさくら・・・。

「セクシーにして・・・」

「え・・・」

「セクシーにして」

「できるかな」

「できるじゃろ」

青春チームのコントは・・・楽しくていいなあ・・・。

中年チームは重苦しいよ・・・。

精一杯のセクシーモードで待ち合わせの場所で待つ真実。

しかし・・・すでに合わない靴のために・・・足は歩行不能になるほどに血まみれである。

「なんじゃあこりゃあ・・・」

広平はさくらをおんぶしてスニーカー・ショップに向かうのだった。

「パンツみえる~」

かかとに絆創膏をはってもらい・・・ウキウキするさくら・・・。

そういうことを・・・親にしてもらいたかったのに・・・してもらえなかった過去があります。

しかし・・・打ち上げの店には鶴巻が現れるのだった。

たちまち・・・青春は色褪せ・・・澱んだ中年たちの世界が始る。

「どうして・・・あの人を・・・」

「打ち上げだから・・・」

「私・・・足が痛いんで帰ります」

「・・・」

今回は何度か・・・店を出る女のシーンが繰り返される。

夏希が店を出て行っても誰も追いかけてこないが・・・さくらは送ってもらったり・・・追いかけてもらえる。

そういう点で・・・広平のヒロインに対する心を察しなければならない。

しかし・・・保護者としてなのか・・・パートナーとしてなのか判別は困難である。

「どうだった・・・」

「変な奴に邪魔された・・・」

真実に報告するさくら。

一方でさくらは・・・真実に・・・引越しを奨める。

しかし・・・お茶を濁す真実である。

ドス黒い鶴巻は急に切羽詰まった感じになっている。

「CHERYLへの楽曲提供をお願いします」

しかし・・・広平は難色を示す。

そもそも・・・新曲への自信もないわけである。

あれが・・・「傑作」だったとしても・・・それは二十年前の「成果」なのである。

ついに・・・鶴巻は・・・「契約」のために呼び出したさくらに・・・別件を切りだすのだった。

「CHERYLに移籍の話があってね・・・それを阻止するために・・・なるべく希望を叶えたい・・・そしてこれは・・・広平さんにとっても・・・凄いチャンスなんだ・・・わかるだろう・・・君の方からも説得してみてくれないか」

さくらにしてみれば・・・「お前はいらない」と言われているようなものである。

なにしろ・・・親から「お前はいらない」と言われた過去があります。

「S」のマスター・笹裕司(宇崎竜童)の誕生日を祝う会。

笹はさくらに「好きよ 好きよ 好きよ」をリクエストする。

演奏の打合せに入る広平やバンドマンたち。

そこで・・・ついにさくらに向けて炸裂する夏希の怨念・・・。

「あなたには知っておいてもらいたい・・・あの曲は・・・あなたのものじゃない」

「え」

「あれは・・・お姉ちゃんの曲なの・・・」

二人のやりとりを耳にした広平は割り込む。

「おかしなことを言うなよ」

「だって・・・あれはお姉ちゃんの曲じゃないの」

「あれは・・・俺の曲だ・・・俺の作った曲だ」

「・・・」

店を飛び出すさくら。

追いかける広平。

私のことは追いかけてくれなかったのに・・・と落胆する夏希だった。

そんな夏希を慰める中年チーム。

「まってくれ・・・さくらちゃん」

「・・・」

「確かに・・・あれは・・・昔作った曲だ」

「・・・」

「でも・・・君と出会って・・・君に歌ってもらいたくなった・・・」

さくらは広平の胸に飛び込む。

「私は・・・先生が好きなんです・・・好きでたまらないんです」

「・・・」

「先生は・・・私のこと・・・どう思っているんですか」

「私は・・・君と・・・音楽をつくりたい」

広平の真意とは別に・・・告白してふられたさくらだった。

「マミ~アタシ・・・ふられちゃったのじゃ」

「さくら・・・あきらめることはないじゃろう」

「でも・・・前にすすみたい・・・」

「・・・」

青春チームは胸に沁みるぞ・・・。

あきらめたわけではないさくら・・・喉の変調のために・・・増村泰造(田中哲司)の病院を訪れ・・・広平の姿を見かけてときめく。

通りすがりの湯浅志津子(由紀さおり)は恋の気配を察知する。

「あなた・・・恋をしているわね」

「・・・」

「どんな人・・・」

「やさしい・・・おっさんです」

「そう・・・私はいつ死ぬかわからないけど・・・今日は気分がいいの」

「よよよよよよよかったですね」

耳鼻科で内視鏡の検査を終えたさくら・・・。

増村医師は告げる。

「ここに・・・腫れがあるので・・・精密検査をしてみましょう」

そんなに哀しい方向にしなくてもいいと思うけれどねえ・・・。

二人が大成功して恋人として結ばれるハーピーエンドでも・・・誰も怒らないよ・・・。

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2016年5月23日 (月)

殿下の正体とは何でしょう・・・殿下の心にあるものとは・・・なぜ皆は殿下に忠誠を尽すのですか?(長澤まさみ)

この世界では今のところ・・・真田昌幸と石田三成は義兄弟ではなく・・・今後もそうならないと思われる。

通説の一つである・・・宇多頼忠の娘・寒松院が真田信繫の母ではないからだ。

石田三成の妻は「うた」とされているので宇多頼忠の娘・皎月院らしい。

真田昌幸も真田信繁も・・・そして石田三成も・・・歴史的敗者であるために・・・その事跡は曖昧なことが多い。

真田家では真田信幸の系統が勝者として残り・・・いろいろと憚ることも多いのである。

宇多頼忠の兄が尾藤知宣である。

知宣は秀吉の古参武将だが・・・九州征伐で失態を演じ讃岐宇多津五万石の所領を没収されている。

天正十七年(1589年)の聚楽第の落書事件では・・・犯人とされる尾藤道休と同姓である上に・・・犯人を隠匿したとされる天満本願寺に逗留中だったと言われる。

この事件には尾張守護家(織田家の主筋)の斯波義銀や室町幕府管領家の細川昭元(正室が信長の妹)が連座している。

何より・・・天満本願寺には本願寺第十一世の顕如が健在なのである。

こうした旧世代の権力者の保護は・・・織田政権の簒奪の課程で秀吉が画策したものである。

九州征伐を終え・・・天下人となった秀吉あるいはその官僚機構が利用価値のなくなった人々を粛清する先駆けであったとも考えられる。

尾藤知宣がなぜ・・・巻き込まれてしまったのかは別として・・・正室の父の兄が・・・主君の怒りを買ったことは・・・石田三成にとって・・・相当に恐ろしい出来事であったはずである。

しかし・・・宇多頼忠の存在しない世界では・・・三成も信繫も他人事でいられたのだった。

本願寺顕如、斯波義銀、細川昭元は処罰を免れるが尾藤知宣は北条征伐後に切り捨てられたと言う。

で、『真田丸・第20回』(NHK総合20160522PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・渡辺哲也を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は真田信繫のたくさんいる義理の父親の一人にして石田三成の親友・・・大谷吉継の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。尾藤道休を演じるビッグベンこと横田栄司が「重版出来!」の加藤了役、「グッドパートナー 無敵の弁護士」の岸田英樹役に続いて一週間に三度目の登場で・・・レビューのタイトルをずっとシェイクスピアもじりでやっているだけにちょっと笑いました。舞台中心の地味めの役者さんが・・・人気ですな・・・ビックベン効果ですかねえ。信繫事件簿的には容疑者役なので・・・渋い抜擢のはずが・・・またかよっ的な展開になってましたぞ。ついに・・・関ヶ原退場組の重要な一枚が加わって・・・マップ的には実にすっきりいたしました・・・。それにしても・・・三成も吉継も・・・まあ、秀吉も・・・さらには昌幸も真田丸にはいないのだなあ・・・と思うとすでに寂しい感じがしますな。北条滅亡も迫り・・・そこから関ヶ原まではどんな感じになるのか・・・ワクワクしますね。この感じだとあっという間に折り返してしまいそうですな。

Sanada020天正十六年(1588年)四月、豊臣秀吉は聚楽第に後陽成天皇を迎え華々しく饗応。同席した徳川家康や織田信雄ら有力大名は秀吉への忠誠を誓う。上洛した大名のうち、池田輝政、織田信秀、丹羽長重、前田利家、上杉景勝、細川忠興、毛利輝元、島津義弘など多数が秀吉より豊臣姓を賜る。七月、秀吉は刀狩令、海賊停止令を発布し、帯刀権を持たない身分というものを発生させた。つまり・・・武士の特権階級化であり、武士の身分を定める秀吉の支配の具象化である。八月、秀吉は島津氏を通じて琉球に服属を命じる。十二月、真田信幸と小松姫の婚姻が成立する。天正十七年(1589年)一月、信雄、羽柴秀長、宇喜多秀家らが大坂城で秀吉に対し新年を祝賀する。秀吉は上洛して参内し、歳首を賀す。二月、聚楽第南門に落書発見。秀吉は番衆(警備担当者)を十数人処刑。三月、落書の犯人及び追放中の斯波義銀・細川昭元・尾藤知宣が潜伏中の天満本願寺に石田三成が派遣され、寺内成敗として寺内町を破却、天満の町人数十人が京都六条河原で磔となる。恐怖した顕如は犯人と目された尾藤道休と犯人隠匿に関与した願得寺顕悟(本願寺八世蓮如十男・実悟の長子)を自害させた。五月、豊臣鶴松誕生。

石山本願寺に構築された大坂城の郊外に天満の森がある。

そこに本願寺の新拠点が置かれている。

京都に聚楽第を建築した秀吉は軍事的首都である大坂と・・・政治的首都である京都を忙しく往復している。

秀吉は秀長に命じて洛南の淀の城の改修を行った。

「あんな小城をどうすんだね」

「茶々の城にするがや」

「ああ・・・」

「寧々の側にはおいとけねえでかん」

「だがんねえ」

秀吉は北政所の腹の子殺しを惧れていた。

妬(うまずめ)である寧はこれまでにも秀吉の子を殺してきた過去がある。

寧は・・・茶々が出産のために淀の城に移ることを聞いて歯ぎしりする。

「あの女に子なんか産ませるもんかね・・・」

後陽成天皇の聚楽第行幸を賞されて寧は従一位に叙せられている。

寧は兄の子で忍びである播磨国龍野城主の木下勝俊に相談する。

「殿下に痛い目にあってる門徒衆を唆したらどうだらず」

「そうしてちょう」

秀吉の不興を買い・・・本願寺に身を潜めている浪人衆は多かった。

聚楽第から淀城に移る茶々の行列を襲撃して寧の歓心を買う企てに・・・秀吉政権から追放された尾藤知宣はうかうかと乗ってしまった。

秀吉に怨みを持つ門徒衆は多い。

知宣に煽動されて・・・計画は整った。

しかし・・・真田信繁の警護役として派遣されていた雑賀一族崩れの鈴木孫七がこれを探知する。

信繫は・・・秀吉馬廻衆として・・・茶々警護の役についていた。

「なんと・・・愚かな・・・」

「いかが・・・なさいますか」

「才蔵・・・」

「おまかせあれ・・・」

秀吉は茶々のために・・・豪華な屋形舟を用意していた。

花吹雪の舞う宇治川を南下する茶々の屋形舟を待ちうける門徒衆の鉄砲忍びたち。

門徒衆の一人は本願寺降伏によって実戦投入されなかった大型の爆雷砲を構えているものもいる。

一撃で櫓を吹き飛ばす威力を秘めた大鉄砲である。

しかし・・・花吹雪の中から現れたのは・・・羽衣をまとった天女たちだった。

「これは・・・なんと・・・」

「あやかしか・・・」

「美しい」

鉄砲忍びたちは・・・心に警鐘を鳴らす。

だが・・・天女たちの美しさは・・・抗いがたい魅惑で男たちを誘うのだった。

「だめだ・・・」

「たまらねえ」

「こりゃ・・・いけねえ」

男たちは鉄砲を構えたまま・・・川面に身を投げる。

すると・・・潜んでいた真田河童衆が男たちの心臓を一突きするのだった。

やがて・・・河原に男たちの死骸が並べられる。

死体の人数を確かめた霧隠才蔵は任務終了の狼煙をあげた。

その岸辺を臨月間近の茶々を乗せた屋形舟が何事もなかったように下っていく。

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2016年5月22日 (日)

女が男を裏切ったら女全員が反省するべきですか(福士蒼汰)変な男を好きになってしまったら変な女ですか(門脇麦)私は罪な女(飯豊まりえ)

罪を憎んで人を憎まずという「理想」がある。

しかし・・・たやすく人は人を憎む。

一方で人はたやすく人を愛する。

愛する人を誰かに傷つけられたら・・・その誰かを人は憎むこともあるだろう。

しかし・・・だからといって・・・人間全体を憎むのは普通ではない。

日本人が外国人に殺されたら日本人は外国人全体を憎まなければならないのだろうか。

そんなおかしなことを・・・賢そうなニュースキャスターたちがさもまともなことのように話している。

過去の戦争の結果・・・敗戦国に与えられたペナルティーと・・・個人が犯す犯罪とは全く別なものである。

世界のどこかで日本人が犯罪を犯したら・・・日本人は全員切腹するべきだと誰も思っていないくせに・・・妙なことを言う人がいるよなあ・・・。

本気で・・・戦争によって確定したルールを替えようと思うなら・・・戦争する覚悟が必要なのである。

その覚悟を相手が本気にした時・・・初めて交渉が始るのだ。

何が善で・・・何が悪なのか・・・何が罪で・・・何が罰なのか・・・このドラマのとりとめのなさが・・・そういうものを象徴しているように見える。

ヘレンケラーが三重苦の少女ではなく、視覚と聴覚が不自由な少女として表現される現代社会に私は馴染めない。そして・・・少し馬鹿になっていると思う。

で、『お迎えデス。・第5回』(日本テレビ20160521PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・南雲聖一を見た。人間が自意識の中に善意と悪意を見出すのは何故なのだろう。霊魂の問題を考える時に・・・その根本に・・・なんらかの因子があるのではないかという仮説が成立する。つまり・・・善の超素粒子や、悪の超素粒子の存在の仮定である。人体や宇宙を構成する物質そのものに善と悪があるのではないか・・・という妄想である。そんな馬鹿なというのは簡単だが・・・時に人は・・・「絶対的な悪」や・・・どう考えても「善いこと」というものを感じるものである。それが・・・「経験」や「教育」によってもたらされたものなのかどうかを・・・誰も断定できないわけである。洋の東西を問わず・・・人は死後・・・何故か・・・裁かれる。それが神であろうと地獄の王であろうと・・・何らかの罪を問われるわけである。つい・・・そう考えてしまうのだ。それは・・・身体の中に善と悪が存在し・・・それが自意識に働きかけるからではないのか。信じるかどうかはあなた次第だ。ちなみに私は信じない・・・おいっ。

高校時代の同級生である千里(門脇麦)の告別式に出席してから・・・死後、幽霊として現世に滞在中の「存在」を視認できるようになった明櫻大学の学生・堤円(福士蒼汰)・・・。

同様の能力を持つ阿熊幸(土屋太鳳)の導きによって・・・死後四十九日の間に昇天するように・・・この世に未練の残る幽霊を説得する死神二課のアルバイトを開始する。

給与形態は未だに不明の妖しいビジネスである。

幽霊である美樹(野波麻帆)の説得に失敗し、怨霊と化した美樹によって幸は負傷。

円も・・・怨霊と化した美樹が自己破壊によって消滅するという後味の悪い結末を体験する。

結果を入院中の幸に報告している円の前に・・・死神組織の監視から逃れ、幸の家に潜伏中だった逃亡霊の千里が姿を見せるのだった。

「どうも・・・」

「どうも・・・」

「彼女は事情があって・・・成仏停止中なの・・・このことは死神たちには秘密にしてね」

幸は円に頼む。

死神界では・・・幽霊の自主性を重んじる二課のナベシマ(鈴木亮平)と怨霊化阻止の観点から強制昇天を主張する一課のシノザキ(野間口徹)が対立し、消息不明の千里の霊をめぐる対立が生じていた。

ナベシマに恋する幸は・・・円に片思い中の千里に同情し・・・猶予期間を与えているのである。

恋する乙女同志の絆なのである。

しかし・・・「恋愛」について未発達な円は・・・千里の死後に何故、能力が発現したのかという点をあまり・・・考慮せずに・・・研究対象として幸との交際を求めているという童貞なのであった。

「この度は・・・ご愁傷様でした」

「本人にお悔み言う人は・・・人類史上・・・まれかもしれないわ」

「まれ・・・ですか」

「まれ・・・よ」

呪文に呼び出されて・・・ガッキーの領域を狙う「あさが来た」系の女子大生(吉岡里帆)といい勝負の「まれ系」の女子大生・利恵(飯豊まりえ)が召喚されるのだった。

大学で加藤(森永悠希)が祖母・嘉子(佐藤玲→藤田弓子)の葬儀のために休んでいたことを知る円・・・。

嘉子の幽霊は加藤とともに・・・大学に現れる。

「あら・・・あなた・・・私が見えるの?」

「僕があなたを見えることを加藤は知りません」

「そうなのね・・・聞きたいことがあるんだけど・・・」

「なんでしょうか」

「この大学に・・・経済学の前田先生がいるって聞いたんだけど・・・」

「前田教授なら・・・あの人です」

前田教授(中山龍也→西岡德馬)は加藤にレポートの再提出を命じているところだった。

「君のレポートは百パーセントがコピペだ・・・もう少しなんとかしないと単位はやれない」

「そんな・・・コピペだって・・・知識の立派な編集作業じゃないですか」

「学業というものは単なる模倣ではない・・・次の段階へ進もうとする意欲だ」

「おっしゃっていることがわかりません」

「勉強したまえ」

「あの通り・・・厳しい教授です」

「うちの孫は少し馬鹿だったのね・・・」

「教授とはお知り合いなんですか」

「あの人は私の初恋の人・・・私たちは駆け落ちをしようとしたの」

「若かったあの頃・・・何もこわくなかったのですね」

「私たちの時代は蔦のからまるチャペルで祈りを捧げるのよ」

「ひとまとめに昭和ですみません」

「まだ誰もが大学に行く時代じゃなかった・・・私は進学したかったけれど・・・家庭の事情で就職したの・・・でも・・・どうしても大学に通いたくって・・・仕事がお休みの平日にニセ学生として大学にもぐりこんだの・・・」

「情報に対する価値観の相違ですが・・・それは明らかに犯罪ですよ・・・講義泥棒です」

「ま・・・いいじゃないの・・・彼は・・・私がニセ学生と知っても優しくしてくれた学生さんだったの」

「教授が・・・」

「私たちはすぐに恋に落ちた・・・でも私には親が決めた縁談があって・・・」

「かけおちしたんですか」

「待ち合わせの場所に・・・私は行かなかった・・・結局、彼を裏切って・・・親の決めた人と結婚したのよ」

「それでいろいろあって・・・加藤が生まれたんですね」

「そういうこと・・・でも・・・どうしても・・・彼のことが気になって・・・一目お別れしようと思って・・・」

「そういうものなのですか」

「そういうものなのよ・・・」

「気をつけてください・・・四十九日を過ぎると・・・恐ろしいことになりますから」

「そういうの迷信だと思っていたけど・・・こうなってみるとよくわかる・・・大丈夫よ・・・そんなに長居はしないから・・・」

「・・・」

女の約束ほど信用できないものはないと知りはじめた円であった。

女に翻弄される運命に生まれたらしい前田教授に危機が迫っていた。

加藤と同様にレポートの再提出を求められた学生の利恵が教授の研究室を訪れていた。

「教授・・・どこを修正すればいいのか・・・教えてください」

「自分の頭で考えたまえ」

「仕方ありませんね・・・」

突然、自分で服をはだけた利恵は・・・叫びながら廊下に飛び出す。

「誰か・・・助けて・・・」

通りすがりの加藤が利恵の餌食となるのだった。

教授は性犯罪の容疑者となったのであった。

「あの女学生は嘘をついている」と円に訴える嘉子・・・。

「しかし・・・幽霊が目撃者では・・・教授の無実を証明することは困難です」

「そんな・・・」

仕方なく・・・入院中の幸に相談することにした円だった。

疎遠だった父親(飯田基祐)の病院に入院中の幸は・・・離婚後も険悪な母親(高岡早紀)と父親の関係に心を痛める。

怨霊による業務中の負傷のために・・・上司として幸に謝罪するナベシマとゆずこ(濱田ここね)である。

「でも・・・円くんは幸さんを見習って・・・仕事に励むことにしたようよ」

「本当ですか?」

ゆずこは・・・幸の女心をくすぐるのであった。

そこに円が嘉子を連れて現れる。

「彷徨う幽霊を自分で助けようとするなんて・・・円くんはアルバイトの鑑だね」

円を賞賛するナベシマ・・・。

死神組織・・・結構、ブラック体質なんじゃないか。

ナベシマたちが死神会議のために去ると逃亡霊の千里も参加し・・・前田教授を救う会が開催される。

「結局・・・嘘をついている学生を改心させないと・・・」

「でも・・・相手は女子だし・・・」

幽霊の顔色を窺った幸は千里のために提案する。

「そうだ・・・千里ちゃんに手伝ってもらったら・・・」

「え」と円。

「どうかしら・・・」

「私・・・やります」

「ありがとう」と嘉子。

証人として利恵に利用されている加藤が・・・彼氏きどりなのを利用し・・・接近する円と千里である。

「幽霊の存在を認めさせるのよ」と千里。

「君は嘘をついているね」と単刀直入に切り出す円。

「なんですって」と警戒する利恵。

「実は・・・あの部屋には幽霊がいて・・・すべてを見ていたんだ」

「ふざけているの」

「幽霊しか知らない情報を伝えるのよ・・・彼女・・・さっきトイレで手を洗わなかったわ」と千里。

「君は・・・トイレで手を洗わなかったそうだ・・・」

「・・・変態なの・・・」

「え」

「それとも・・・私に気があるのかしら・・・いいわよ・・・付き合っても・・・あなた・・・結構、素敵だし・・・」

色仕掛けを開始する利恵。

すでに・・・怨霊化の気配を見せる千里の嫉妬の炎が燃えあがる。

ポルターガイスト現象である。

周囲のものは振動し・・・利恵のバッグが宙に浮く。

「なにこれ・・・手品なの・・・そんなことで私が騙されると思ったの・・・」

物質主義者の利恵は・・・超常現象を否定するのだった。

「ごめん・・・逆効果だったみたい」と千里。

「いや・・・失敗を反省する点では・・・幸さんより・・・のびしろがあるよ」

「のびしろ・・・ね」

大学を追放されることになった前田教授は研究室で私物の整理をしていた。

そこに・・・提出したレポートを返却してもらうために現れた加藤。

机の上に置かれた古い写真を発見する。

「この人・・・僕の祖母の若い頃にそっくりだ」

「その人は・・・なんというお名前ですか・・・」

「嘉子ですけど・・・」

「そうか・・・嘉子さんに孫が・・・あの人は元気ですか・・・」

「先日・・・亡くなりました」

「・・・そうですか・・・」

「まさか・・・となりに写っている学生は・・・」

「私だ・・・私は嘉子さんと・・・いや・・・昔の話だ・・・嘉子さんは幸せそうでしたか」

「ええ・・・子供も三人いたし・・・孫もたくさんいるし・・・幸せそうに見えました」

「そうですか」

前田の人生は明らかにならないが・・・おそらく研究一筋の人生だったのだろう。

前田の胸に去来する青春の日々と寂寥感・・・。

加藤が退室すると・・・利恵を伴い・・・円がやってくる。

「あなたもしつこい人ね・・・」

「なんだね・・・君たちは・・・」

「教授は大学を追放されるそうだ・・・君は胸が痛まないのか・・・」

「当然の報いじゃない」

「何度も言うけれど・・・すべてを幽霊が見ていたんだ」

「馬鹿じゃないの・・・こんな老害・・・さっさと引退するべきだったのよ」

「なんてことを・・・」と利恵につかみかかる嘉子だが・・・幽霊は人間に触れられない。

しかし・・・怨霊化しつつある千里は・・・円の役に立ちたい一心で・・・スーパー・ナチュラル・パワーを発揮するのだった。

空中に浮揚する利恵。

「なんなのよ・・・こんな手品なんて・・・」

「種も仕掛けもない・・・みんな・・・怒ってる・・・」

「わかったわ・・・とにかく・・・おろして」

「教授がいけないのよ・・・理由もなく・・・レポートの再提出を命じるから・・・私、内定がとれたのに・・・単位がとれなかったら・・・とりけしになっちゃう」

「そんなにギリギリなの・・・」

「バカな子ね・・・教授はただ教育的指導をしていただけなのに・・・」

「嘉子さん・・・言いたいことがあるなら・・・僕の身体をお貸しします」

円は幽霊に憑依させられる特異体質だった。

「あのね・・・この人は・・・あなたのために・・・レポートを添削していたのよ」

「嘘・・・一度も修正してくれなかったわ・・・」

嘉子は・・・教授の添削した控えを取り出す。

そこには細かく意見が添えられていた。

「え・・・」

「いや・・・悪いのは私だ・・・もう少し・・・優しく指導するべきだった・・・しかし・・・彼女のレポートには見どころがあった・・・再提出を命じる度に・・・それが新しい世界を開拓していくことに・・・私は魅了されてしまったのだ・・・研究者としては当然だが・・・指導者としては失格だったかもしれない」

「教授・・・ごめんなさい・・・私・・・とりかえしのつかないことを・・・」

「いいんだ・・・研究は大学でなくても続けられる」

「いえ・・・教授の名誉を回復しなければ・・・」

「いや・・・偽証が明らかになれば・・・君の前途は台無しだ・・・君の謝罪だけで充分だよ」

「あなた・・・いくつになっても・・・女性に甘いのね」

「君は・・・本当に嘉子さん・・・」

「ええ・・・」

「君には御礼を言いたいと思っていたよ・・・」

「え」

「君に裏切られて・・・私は研究一筋の人生を過ごすことができた・・・素晴らしい人生だったよ・・・ありがとう」

「まあ・・・意地悪な人ね」

「君が幸せそうで・・・よかった・・・なにしろ・・・君は私が愛したただ一人の人だから・・・」

今回も男性との抱擁を免れた円だった。

何が正しくて・・・何が悪なのか・・・そんなことは円には分からない。

ただ・・・嘉子が・・・昇天する気になってくれて安堵したのだった。

「これでよかったのですか」

「ええ・・・ありがとう・・・ねえ・・・千里ちゃんのことだけど・・・」

「?」

「いえ・・・これは余計なことね・・・でも・・・彼女もいずれは旅立つ日が来るの・・・それを忘れないで」

「・・・」

円の報告を受ける幸。

「いいコンビじゃない・・・」

「そうかな」

「そうだ・・・千里ちゃん・・・円くんと同居すれば・・・」

「え」

「ほら・・・ここだとナベシマさんも来るし・・・」

「でも・・・円くんが・・・」

「僕は構わないよ・・・家においでよ」

「・・・」

朴念仁なので成立する展開だった。

一人になった幸は・・・自分抜きで案件が解決したことに・・・淋しさを感じる。

そして・・・気がつけば幽体離脱をしていたのだった。

怨霊を除霊できる病院の配膳係・魔百合(比留川游)・・・。

憑依体質の円・・・。

念力の強い幽霊・千里・・・。

そして・・・幽体離脱のできる霊能力者・幸の誕生である。

もう一人欲しいところだな。

いや・・・それより・・・千里はやはり怨霊化しかかってるんじゃないか。

ラスボスなんだろうねえ・・・。

そして・・・ヒロインの愛が勝つんだろうねえ・・・。

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2016年5月21日 (土)

説教童貞ですがなにか(松坂桃李)墜落ですがなにか(岡田将生)不倫ですがなにか(柳楽優弥)狩人ですがなにか(吉岡里帆)失恋ですがなにか(安藤サクラ)(´・_・`)ですがなにか(島崎遥香)

次から次へと繰り出される異様なキャラクターたち。

AKB48で・・・それなりに名の知れたアイドルである「ぱるる」こと島崎遥香もすでに「しょげた顔の女子大生ゆとり」に改造されてしまったのである。

劇場版 ATARU THE FIRST LOVE & THE LAST KILL」の美魔女鑑識ではなくなったのだ。

浮世絵顔の安藤サクラも有能だがもったいつけすぎて恋を失う恋愛下手なアラサー女と化す。

そして・・・連続テレビ小説「あさが来た」で真面目な女学生・田村宜を演じた吉岡里帆は・・・自由奔放すぎる可愛い女子大生に変身してしまった・・・。

本当にキャラクターを作らせたら右に出るものがいないな・・・。

「NIGHT HEAD」(1992年)以来、ほとんど潜伏していたと言っても良い石橋けいでさえ・・・セクシーすぎる教育ママとして再構築されてしまった・・・。

「鈴木先生」で酢豚の好きな中学生樺山あきらだった三浦透子も「ゆとりモンスター」山岸に説教される新入社員になったりしているのだ・・・そこはあまりキャラ造形されてないだろう。

まあ・・・地味は地味なりに配置されているんだな。

で、『ゆとりですがなにか・第5回』(日本テレビ201605152230~)脚本・宮藤官九郎、演出・水田伸生を見た。胸元に光子力ビームを内蔵した教育実習生・佐倉悦子(吉岡里帆)とほろ苦い別れを経験した指導担当の山路一豊(松坂桃李)・・・。すっかり仲良くなった坂間正和(岡田将生)の交際相手である宮下茜(安藤サクラ)と意気投合して慰められる日々である。そんな二人にもやもやする正和だったが・・・大切な妹のゆとり(島崎遥香)に・・・憧れのガールズバー店長・道上まりぶ(柳楽優弥)の魔の手が迫っていることを・・・ぼんやり見過ごすところがゆとりなのである。

風雲渦巻く坂間家・・・母親の和代(中田喜子)と兄嫁のみどり(青木さやか)は円満な嫁姑関係を構築しているようで・・・実は一触即発の状態であることすら・・・正和には分からないのだった。

「私はお嫁さんに気をつかってる姑」ほど「嫁に気をつかわせているもの」だからな。

あれはもう・・・雌のテリトリー争いみたいなもので・・・理屈でどうこうできるもんじゃないんだよな。

同居するくらいだったら・・・アイガー北壁に挑んだ方が楽なんだよな。

誰の話だよ。

ゆとりが・・・「ガールズバー」で働いていることを家族に話すことができずに悶々とする正和。

しかし・・・正和の心配を余所に・・・接客業で・・・一皮剥けたゆとりは・・・就職活動にも好転の兆しが現れていた。

一方・・・自分と過ごす時間よりも・・・ボルダリングジムで山路と過ごす時間の方が長い茜も気にかかる正和。

そもそも・・・恋人の趣味である「ボルダリング」の名称すらまともに覚えることのできない正和は・・・交際相手を尊重する基本すら出来ていないのだ・・・ゆとりだからな。

そういう・・・正和に耐えるしかない茜の苛立ちを想像することもできない正和なのである。

茜が耐えているのは「愛」という形のない存在のためである。

そんなもの・・・ないと思えばないからね。

だが・・・正和を責めても仕方ない・・・彼はただそれだけの男なのだ。

最高に男前だけどな。

男前ということではけして負けない山路だったが・・・とにかく童貞である。

なぜ・・・童貞なのか・・・それはやるべき時にやらないからだ。

「連絡とってみれば・・・」

「馬鹿に・・・アドレス消されちゃったんです」

「ああ・・・」

悦子の大学の後輩・・・束縛癖のある小暮静磨(北村匠海)に手を引かされた山路だった。

しかし・・・突然・・・悦子から着信があった。

「やったね・・・童貞の怨念が実ったね」と冷やかす茜。

「もしもし・・・」

「童貞バ~カ・・・悦子からかと思ったか・・・あいつは今、シャワーあびてんだよ」

ラブホテルから・・・悦子のスマホを無断使用中の・・・静磨の嫌がらせだった。

「どうしたの・・・」

「バカでした・・・」

基本的に・・・周囲にも自分にも大らかな悦子は・・・いつか酷い目に遭う気がする。

ここまでの山路と悦子。

山路が悦子を指導。

悦子が山路に告白。

山路が承諾。

二人の仲が噂になる。

悦子が山路に言い寄られたと教頭(原扶貴子)に申告。

まりぶが介入して二人の仲を修復。

山路が童貞を告白。

悦子が処女だと嘘をつく。

静磨乱入。

山路の冤罪が晴れる。

悦子が静磨とは連絡をとっていないと告げる。

教育実習終了。

山路に静磨が性行為の途中で電話。

童貞よ・・・童貞の前に道はないな。

一方・・・坂間家では・・・長男の宗貴(高橋洋)が家族会議を招集する。

「親父が亡くなって三ヶ月だ・・・俺が長男だからって・・・当然のように家業を継いでいると思っているかもしれないが・・・まあ・・・継ぐけどな・・・いろいろあるわけだよ・・・就活の乱とか・・・妊活の乱とか・・・正和の・・・正和の・・・正和の乱とかさ・・・みんな・・・もう少ししっかりしてくれ」

お前が一番しっかりしてもらいたい・・・ここは「ふぞろいの林檎たち」のしっかり過ぎる長男のパロディーである。

仕方なく・・・レンタルおじさん(吉田鋼太郎)に相談する正和だった。

「私が・・・様子を偵察してきます」

「え・・・」

「時には・・・そういう探偵みたいなこともするんです」

「はあ・・・」

「妹さんの特徴は・・・」

「しょげてるみたいな顔をしています」

ガールズバーのゆとりは・・・前向きな性格になっていた。

「いろいろな人との出会いが・・・新しい可能性を広げるチャンスだと知りました」

「・・・ですか」

山路にも新しい出会いがあった。

学習障害のある転校生・大悟が・・・胸元にメガ粒子砲を搭載した母親の奈々江(石橋けい)を連れてきたのである。

母親の希望により・・・一般児童と一緒の教室で授業を受けることになった大悟。

担任となった山路は一生懸命に授業を工夫するのだった。

阿佐ヶ谷南小学校4年2組の児童たちは基本的に天使なのである。

教室は一体となって大悟を応援し・・・授業参観にきた・・・夜勤の看護師である奈々江は感動し・・・山路にうっとりとするのだった。

捨てるおっぱいあれば拾うおっぱいありなのか。

一方・・・久しぶりに「みんみんホールディングス」本社を訪れた正和は・・・後輩社員を説教するヤマギシ(太賀)に遭遇し眩暈を感じる。

「最近・・・先輩の気持ちがわかってきました」

歯ぎしりする正和だった。

直属の上司・早川道郎(手塚とおる)から・・・茜の人事について相談される正和。

「え・・・」

「あれ・・・聞いてなかったのか・・・新しくできる仙台支店の・・・・支店長に彼女が候補として・・・」

恋人の大出世と・・・それを聞かされていなかった自分に・・・戸惑う正和だった。

なにしろ・・・足手まといだからな。

錯乱した正和はボルダリングジムに乱入・・・。

なんとか・・・茜と親睦を深めようとするが・・・墜落してアキレス腱を切り全治一ヶ月の身体となる。

居酒屋「鳥の民・高円寺店」の店長代理として・・・「できる女」を披露する茜・・・。

バイトリーダーの村井(少路勇介)とバイトの中森(矢本悠馬)は感嘆するのだった。

「一体・・・何がしたいのよ」

「君と話がしたかった・・・」

「話せばいいじゃない・・・」

「もう・・・いいよ」

「小学生か」

「・・・」

「そういうところが・・・面倒くさいのよ・・・私・・・あなたのママじゃないのよ」

「仙台支店長の話・・・」

「まだ迷っているから・・・話さなかったのよ・・・やりたいけど・・・やれば婚期を逃しそうで」

「山路くんには・・・」

「話したわよ・・・友達だから」

「じゃ・・・俺に言えることはひとつしかない」

「待って・・・今・・・それを言うの」

身構える茜・・・結婚か・・・栄転か・・・ではない。

結婚してから転勤するか・・・転勤して遠距離交際か・・・という話である。

しかし・・・一種の発達障害者である正和には・・・そういう選択肢はないのだった。

「わかれようか・・・」

「え・・・そっち・・・」

落胆し・・・決断する茜。

「わかりました・・・さようなら」

茜は・・・山路との思い出の日々の画像を・・・スマホから削除する。

「これだけで・・・終わっちゃった」

つまり・・・正和は・・・茜と交際中・・・何一つ、プレゼントしなかったのだな。

何一つもだ・・・女を見下すにも程かあるよね。

正和は・・・山路とまりぶに相談するのだった。

「プロポーズすればよかったのかな・・・」

まりぶの妻ユカ(瑛蓮)は乳児をあやしながら叫ぶ。

「えらぶのは女よ・・・男じゃない」

「・・・じゃあ・・・僕はどうすれば・・・」

「女を幸せにしなさい」

「・・・」

「言わずもがなよ」

「おっぱいなんじゃねえの」

「さっきあげたよ」

興奮して・・・突然・・・中国語にスイッチするユカ・・・。

「・・・看中你的妹妹(カンチャンニイダマイマイ)!・・・你要担心ロ我(ニィヨウタンシンオ)!」

もちろん・・・正和は・・・ユカの言葉が警告であるとは思わないのだった。

なにしろ・・・ゆとりなのである。

「タクシーで帰れ」と良心が咎めるので気を遣うまりぶ。

「いや・・・始発までネカフェで待つよ」と正和。

「気をつけてね」

「茜ちゃんとは仲良くしてやってくれ」

「でも・・・オレは茜ちゃんを幸せにはできないよ・・・メンクイだから」

「・・・」

しかし・・・身体の不自由な正和はネカフェに落ちつくことはできないのだった。

教室で・・・奈々江に攻略されかかる山路。

しかし・・・ヒロイン枠を確保するために帰ってくる悦子だった。

「何かが来ます・・・」

「え・・・」

可愛い悦子先生の登場に歓喜する児童たちだった。

「鳥の民・高円寺店」で教育実習の思い出動画を鑑賞する山路と悦子。

指導教諭として・・・山路は・・・達成感を感じるのだが・・・。

「私・・・教師になるのはやめました」

「え・・・」

「すごく大変なんで・・・無理だと思いました」

「ええっ」

「資格だけとって・・・教員採用試験はパスするつもりです」

「えええ」

店を出た悦子は本題に入る。

「彼とは別れました・・・あんなに大騒ぎしたのに・・・あいつ・・・浮気して・・・それにやはり年下っていうのは・・・いろいろと・・・」

つまり・・・静磨と別れたので・・・抱けますよ宣言である。

しかし・・・童貞なので・・・いろいろと躊躇う山路だった。

「僕だって・・・やめたいですよ・・・無理ですよ・・・パスしたいです・・・でも・・・こんな僕でもやってるんです・・・悦子先生にもやってもらいたい・・・子供たちあんなに喜んでたじゃないですか・・・僕だって悦子先生に抱きつきたかった」

微笑んだ悦子は両手を広げた・・・。

「どうぞ・・・」

路地裏で見つめ合う男と女・・・。

「それで・・・抱きしめたの」

「そりゃ・・・もちろん・・・」

店長代理の茜に問われて胸を張る山路。

「見てたよ・・・換気扇止めて・・・」

「え」

「握手して・・・頭ポンポンとか・・・」とバイトリーダー。

「ええっ」

「換気扇ごしに見ても童貞だってわかりました」とバイト。

「えええ」

「セックスしてからでも説教はできたよな」とまとめる茜だった。

しかし・・・身動きできない店長は重要なことに気がついていた。

「まりぶが・・・来ない」

坂間家の朝・・・。

ついに・・・ゆとりを問いつめる正和。

テレビではタレントのできちゃった結婚のニュースが流れ・・・不妊治療中の嫁に気を使っているアピールをする姑はチャンネルを替えようとする。

しかし・・・そういう気の遣われ方がすでに・・・姑の嫌味だと感じ取った嫁は・・・殺気を放つのだった。

「妹のスマホを覗くなんて不潔」

「おい・・・ちょっと待て」

お茶の間を走り抜ける兄と妹である。

そして・・・正和はレンタルおじさんから・・・衝撃の報告を受ける。

「ゆとりちゃん・・・お店やめたそうです・・・」

「え」

「あなたに気を使ったのかと思ったんですが・・・」

「・・・」

「自分の女をあんな店で働かせたくないと」

「ええええええええええええ」

「すみません」

「妹は・・・彼が妻子持ちだと・・・」

「さあ・・・」

「ふ、不倫じゃないですか」

「私も・・・彼が受験生だった時に不倫が原因で離婚しまして・・・」

「それと・・・妹関係ないですよね」

「確かに・・・」

「あんな奴を信じた俺が・・・バカだった・・・え・・・じゃあ・・・悪いのは俺ってことなの」

「・・・」

怒りの収まらない正和は・・・道上家を訪問する。

「坂間か・・・まりぶ留守だよ」

「・・・」

「まりぶ・・・なんか・・・したか」

「その・・・」

「女か・・・また女のことか」

「え」

「だから・・・忠告したのに・・・まりぶ・・・あんたの妹狙ってるから・・・気をつけろって」

「ええっ」

「血筋だよ・・・まりぶの父親も女にだらしない男だった・・・遺伝だよ・・・不倫親子だよ」

「すみません」と恐縮するレンタルおじさん。

そして・・・帰宅するまりぶ・・・。

面白すぎる・・・。

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2016年5月20日 (金)

私はただ女に男を立ててもらいたいだけ(竹野内豊)誰が立たせるか(松雪泰子)前世紀の川の話ですね(賀来賢人)

看護師のことをナースと呼ぶのはセクハラじゃないのか。

ギリギリセーフなんじゃないか。

ナースって性的な凌辱用語じゃないのかよ。

おいっ。それはお前だけだ。

ナースと聞いただけで萌えるのは犯罪じゃないですよね。

ただ・・・少し変態なだけだ。

ああ・・・よかった。

よくはないけどね。

で、『グッドパートナー 無敵の弁護士・第5回』(テレビ朝日20160519PM9~)脚本・福田靖、演出・本橋圭太を見た。ドクターとナースの全面対決・・・「ナースのお仕事」以来だったな・・・。なんだろう・・・このドラマ全体に漂う前世紀感は・・・。時計が止まっているのか・・・。そもそも・・・咲坂健人(竹野内豊)と結婚していた夏目佳恵(松雪泰子)は専業主婦だったのか?・・・それとも夫婦で弁護士だったのか。よくわからない。第一、二人ともパートナー弁護士なのだから・・・高収入が前提である。家事は最初からハウスキーパーにおまかせで・・・トラブルの原因にはならないだろう。一体・・・去年の娘・みずき(松風理咲)の11歳の誕生日(2015年8月)から・・・この夫婦に何があったと言うのだ・・・。そんなことでひっぱられても困るんだが・・・。

本当は15歳の娘のおでこに父親がキスしたことによる性的なアレ・・・なわけないだろうが。

神宮寺法律事務所が顧問を務める桂総合病院からの依頼で・・・「セクシャルハラスメント」についての講習会を行う咲坂弁護士と新人弁護士・熱海(賀来賢人)・・・。

小学生を相手にピーポくんが交通安全指導を行うみたいなことであるらしい・・・。

病院の事務員(坂井裕美)を相手に白衣を来た咲坂は「セクハラ発言」を例示するのだった。

「かわいい笑顔で患者さんを励まそう」・・・容姿と仕事内容を関連付けたらセクハラ。

「君のいれてくれたお茶は上手い」・・・給仕の仕事を女性に特定するのはセクハラ。

「今晩・・・食事でもどうかな」・・・立場を利用して食事に誘えばセクハラの上にパワハラ。

しかし・・・男前の咲坂に誘われた事務員はうっとりしてしまうのだった。

「説得力ないじゃん」とつぶやく熱海だった。

「結局、男前無罪なんでしょう」と外科部長の厚木義忠医師(神尾佑)は講習そのものを鼻で笑うのだった。

咲坂は・・・講習を依頼してきた病院の事務長・葛原正(小林隆)の浮かない顔に・・・違和感を覚え・・・真意を質すのだった。

葛原は・・・厚木医師による・・・新人看護師・桜井奈緒(逢沢りな)へのセクハラ疑惑があることを打ち明けた。

「看護師から相談があったわけですか」

「はい・・・手を握ったり、身体を触ったり、キスされそうになったとも」

「それは・・・セクハラですね」

「しかし・・・厚木先生は・・・外科のエースでして・・・」

「つまり・・・稼ぎ頭ということですか・・・院長には報告したのですか」

桂院長(佐渡稔)は厚木医師の肩をもち、看護師を退職させる意向だった。

「これが・・・初めてではないのですね」

「過去に同様のケースがあって・・・看護師には退職してもらっています」

「ひどいな・・・」と熱海。

「困りましたね・・・」と言葉を濁す咲坂。

「なんとか・・・穏便に問題を解決できないでしょうか」

「・・・」

「どうにもならないでしょう・・・」

「なぜだ・・・」

「男性医師がセクハラを認めなければ女性看護師に泣き寝入りさせろってことでしょう」

「お前は・・・フェミニストなのか」

「ぼくらの世代は最初から男女同権なんですよ」

「・・・」

ベタに・・・神宮寺法律事務所でもセクハラ問題が発生中である。

婚活に忙しい猫田弁護士(杉本哲太)がアソシエイトである城ノ内弁護士(馬場園梓)が「キュート」と言われたことを「お世辞」と評したことが問題らしい。

本当のことを言ったらセクハラ。

夏目弁護士やベテラン秘書の朝丘(宮地雅子)は激しく同意するがパラリーガルの茂木さとみ(岡本あずさ)は無言で距離を置くのだった。

巻き添えを食ってパラリーガルの九十九治(大倉孝二)は母親の手作り弁当までセクハラに認定されるのだった。

アソシエイトの赤星元(山崎育三郎)は発言そのものを封じられる。

ついに・・・猫田弁護士の見合い相手が二十代限定であることに憤慨するトリオ。しかし・・・さとみはあくまで微妙な距離感を保つのだった。

本当に若くて美人の場合はお世辞にも差別にもならないからである。

神宮寺一彦(國村隼)に病院でのセクハラ問題を報告する咲坂・・・。

「そんな問題が・・・」

居合わせた夏目は進言する。

「その問題は・・・咲坂先生の手にあまると思いますよ」

「なんでだよ」

「だって・・・セクハラ問題は女性の気持ちが関わってくるんですよ・・・失礼ですが・・・咲坂先生は女性心理が全く分かっていませんから・・・」

「まあまあ・・・」

その頃・・・病院では・・・厚木医師の手術した患者の容体が急変、担当看護師の桜井が報告するが・・・「セクハラを告発された厚木が感情的になり報告を無視する」というありえない事態に発展していた。

「患者の家族が・・・医療ミスを疑っていると・・・」

桂院長から相談を受けた神宮寺は・・・問題の深刻さを察知する。

「ここは・・・夏目先生にお力を貸していただきたい」

「咲坂先生が頭を下げてくだされば・・・」

「下げなさい・・・」

神宮寺に先に頭を下げられて渋々頭を下げる咲坂・・・。

「おっほっほっほ」

完全なるパワハラである。

企業の不祥事が日常茶飯事となり・・・いつしか・・・マスメディアが叫ばなくなったコンプライアンス(法令順守)問題・・・みんな叩けば埃の出る企業体質だからな。

セクハラ、パワハラ、モラハラ、ドクハラ・・・あらゆるハラスメントもまた・・・どこにでもありすぎて・・・やや古びた題材になりつつあるわけである。

体質改善を目指す咲坂だったが・・・外科的手術が必要とする夏目は証拠を提示する。

過去に厚木医師のセクハラによって病院を移った看護師(橘美緒)からの証言である。

「先生は何度も私の胸を触りました・・・時には男性器を下半身に押し当てられたこともありました。さらにはズボンを下ろして男性器を誇示し・・・感想を求めてくるのです・・・ついには私の下着をかぶらせてほしいとまで・・・」

「これは・・・セクハラのレベルじゃないな・・・性犯罪じゃないか」

「変態仮面ドクターよ」

「宣伝か・・・無関係じゃないか」

咲坂は・・・幼い娘と公園で遊ぶ・・・葛原事務長を急襲する。

「今日は・・・お詫びにきました・・・」

「え」

「ことは・・・穏便にはすませられません・・・」

「・・・」

「私にも娘がいます・・・もし・・・娘たちが・・・同じ立場になったら・・・それでも・・・あなたは娘に泣き寝入りを奨めますか・・・」

「・・・私はただ・・・豊臣家の安泰を・・・」

「誰が真田丸の話をしろと・・・」

突然・・・開催される・・・医師・看護師・事務員が全員出席の総会。

「訴訟問題は回避されました・・・しかし・・・もう一つ問題があります」

事務長は決死の覚悟で告発を開始する。

「医師による・・・看護師へのセクハラ問題です」

「その件は当事者同士で話し合う方向で・・・」と院長。

「それは・・・無理です。二十一世紀の企業では・・・そういう手法は成立しません」と咲坂。

「つぶれるよ・・・この病院」と熱海。

「なんだ・・・雇われ弁護士が・・・会議は以上だ・・・解散・・・患者さんが待っているぞ」

もちろん・・・無人のナースステーションにはナースコールが鳴り響いているわけである。

「看護師さん・・・もれちゃいます」なのである。

しかし・・・看護師たちは席を立たないのだった。

「これは・・・この病院が生き残れるかどうかの・・・瀬戸際です・・・皆さん・・・席に戻ってください」

「一体・・・君は何の権利があって・・・」

すかさず・・・弁護士バッヂをはずして人間に戻ろうとする咲坂。

しかし・・・機先を制して立ち上がる夏目弁護士。

「看護師の皆さんに・・・話を聞こうではないですか・・・医師のセクハラ行為についてどう思っているか・・・確かに・・・医師に対して看護師の立ち場は・・・同等とは言えません。しかし・・・弁護士も看護師も・・・国家資格です。責任ある立場です。組織が健全であることを求めなければなりません。私はその点について・・・皆さんに問い質し・・・この病院の体質改善のためには・・・全員退職も辞さない覚悟だと知りました」

「え」

「女性看護師全員の退職届けをお預かりしています」

「そんな・・・」

「とんだ・・・茶番だ・・・患者に申し訳ないと思わないのか」とついに厚木医師が正体を見せる。

「問題の張本人が名乗りをあげました・・・さあ・・・院長・・・決断してください・・・看護師全員と・・・変態ドクター・・・どちらを選択するか」

「持ちかえらせては・・・もらえないか」

「いいですか・・・この病院を退職した女性看護師二十人が・・・厚木医師とこの病院に対しセクハラ訴訟を起こすという噂があります・・・そうなったら・・・顧問として・・・弁護を担当しますが・・・物凄くハイリスクになります・・・あの時、トカゲの尻尾を切っておけば・・・と後悔するのでは・・・」

若手のドクターたちが立ちあがる。

「厚木先生は手術はお上手ですが・・・変態です」

「しかも・・・童貞です」

「お・・・お前ら」

泣きながら・・・去っていく厚木だった・・・。

こうして・・・桂総合病院から・・・わいせつ医師は放逐されたのだった。

優秀な外科医を確保して・・・パートナーたちの暴走の尻ぬぐいをする神宮寺だった。

どうでもいいことだが・・・家庭教師の島谷涼子(宮﨑香蓮)は熱海の後輩だった。

帰宅した咲坂は・・・娘が「家族団欒の動画」を見て泣き寝入りした姿を目にする。

「動画」の中の元妻は優しかった。

「なんで・・・俺を捨てたんだ・・・」

思わずにはいられない咲坂。

「俺は・・・そんなに女心のわからない男だったのか・・・」

まあ・・・男の女の間には・・・前世紀には・・・暗くて深い川があり・・・誰も渡れなかったのだ。

その頃・・・妻はビッグベンから情事のお誘いを受けているのだった。

急げ・・・咲坂・・・土下座するなら今だぞ。

今世紀の川は結構明るくて浅いから・・・。

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Gpoo5ごっこガーデン。愛と青春の法律事務所セット。

まこすぐに人情に訴える昔堅気の弁護士と・・・ハードボイルドな暴走弁護士・・・とてもグッドなパートナーなんでしゅね~。なんでまた離婚したんでしゅかね~。わがままは女の罪~・・・それを許さないのは男の罪~・・・そういう時代が到来しているのでしゅね~・・・・男に残された道はごめんね・・・俺が悪かった・・・許してくんしゃい・・・戻ってきてくんしゃい・・・泣いてあやまる・・・これしかないのデス!」

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2016年5月19日 (木)

いさなみすやお謝罪会見(大野智)星見なさい(波瑠)甘いな・・・(北村一輝)おからだによいおからだ(信太真妃)

おからハンバーグか・・・。

旅館の跡取り息子だった社長と・・・ホテルのドアマンの孫だった社員・・・。

住む世界の違う二人が・・・出会い・・・恋に落ちる。

由緒正しい身分差ラブコメである。

一環して奥手の人々の恋を描き続けてきた脚本家が・・・ついにうってつけの素材を手に入れたらしい。

地位も名声も資産もそれなりにあり・・・仕事もできるが・・・恋愛だけは・・・勝てる気がしない。

そんな男と・・・質素な暮らしが似合わないほどの美女だが・・・真面目な学級委員タイプが恋をするのである。

バランスが絶妙だな。

そんなヒロインの幼少時代を演じるのは「ちびまる子ちゃん」(2013年)のまる子を演じた信太真妃である。

「それでも、生きてゆく」(2011年)の少年Aに金槌で撲殺された少女・深見亜季を演じたり、子役定番の幼少期役としては「真夜中のパン屋さん」で土屋太鳳、「安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?」で大島優子、「きょうは会社休みます。」で綾瀬はるか、「スミカスミレ 45歳若返った女」で松坂慶子&桐谷美玲と・・・堂々とした戦歴である。

ヒロイン女優に負けないオーラが求められるわけなので。

ちなみに今回、ホテル協会会長を演じる鷲尾真知子は「ちびまる子ちゃん」(2013年)ではさくらこたけ(まる子の祖母)を演じていた。

ある意味、豪華共演である。

で、『世界一難しい恋・第6回』(日本テレビ20160518PM10~)脚本・金子茂樹、演出・丸谷俊平を見た。初々しくオーソドックスな演出だが・・・キャストがノリノリなので実に素敵な感じに仕上がっているのである。脚本的には単なる回想シーンを別の視点から振り返ることで人物像に深みを与えるというおしゃれな展開も加味しているし・・・ニヤニヤさせておいてハラハラさせ・・・最後はうっとりというお約束に次ぐお約束で・・・極めて素晴らしい。もう・・・お願いだから最終回はハッピーエンドにしてくれよとお茶の間が縋る勢いだな。

幼少時に両親と死別した美咲(波瑠)は・・・ホテルのドアマンを勤める祖父(渡辺哲)に男手一つで育てられた「おじいちゃん子」である。

一番のごちそうが「おからハンバーグ」なのである。

美咲の夢は「大好きなおじいちゃんとホテルで一緒に働くこと」だったのだが・・・昔堅気の祖父は孫を大学まで卒業させて・・・花嫁衣装を見たかったらしい。

三つ編み・眼鏡・セーラー服のなんちゃって女子高校生から大学を卒業・・・夢を追いかけてパリのホテルで修行中の美咲だったが・・・祖父は急死・・・。

残されたのは・・・美咲と一緒に建てるホテルの建設予定地だった。

美咲の夢はけして・・・絵空事ではなかったのである。

質素な暮らしぶりは・・・建設費を貯蓄しているのだ・・・まあ・・・そう簡単には目標額には達しないだろうけどな。

そして・・・美咲の男を見る目は「おじいちゃん基準」・・・。

「今夜のおかずはおからだにいいおからだ」的なものだったのだ。

鮫島零治(大野智)の厳しい社長の顔とは別の茶目っ気・・・。

「牛乳はエレベーターで拾った」とか「海の水が温い」とか・・・そういう「すべり方」がたまらなくツボだったのである。

零治との交際開始を逡巡した美咲だったが・・・「おじいちゃんのホテル」と「社長のホテル」が一致したことで・・・一挙にアクセルを踏みこんだのである。

すでに・・・零治は美咲にとって・・・かけがえのない人になっていたのだった。

もちろん・・・おそらく・・・恋人と交際したことのない童貞の零治にとって・・・そんな美咲の心理を読むことなど・・・夢のまた夢である。

今はただ・・・好きになった人とお付き合いできることに有頂天なのだった。

最初のデートは水族館だった。

「デートスポットとしては社長の唯一のテリトリーです」と秘書の村沖舞子(小池栄子)・・・。

「よかったですね」と運転手の石神剋則(杉本哲太)・・・。

息子の晴舞台にママはニヤニヤ、パパはドキドキである。

「あれはレタスを食べるサカナだ・・・あれは性転換をするサカナだ」

「社長は生き物が昔から好きだったんですか」

「小学校の時はずっと飼育係だった・・・君は何の係だ」

「私は学級委員でした」

「そうだと思った」

「え」

「君からは学級委員以外想像できない・・・」

「そんなに」

「この中では君はどのサカナが好きかな」

「あの子・・・」

「イワシとは・・・渋いな」

「社長は・・・」

「・・・二人きりの時は・・・社長というのはやめないか」

「では・・・なんとお呼びすれば・・・」

「好きなように呼んでくれ」

「では・・・レイさん・・・」

「う・・・じゃ・・・俺は君をミサさんと呼ぼう」

「レイさん」

「ミサさん」

もう・・・これ以上なくバカップルでいいじゃないか。

イワシたちは渦を巻いて二人を祝福するように回遊するのだった。

「社長は私たちのことを会社の誰かに話しましたか」

「秘書と運転手は知っている」

「私も・・・堀さんには相談にのってもらったので」

「明日にも発表するか」

「私は・・・あえて公にはしなくてもいいかと思います」

「何故だ」

「仕事中に特別な目で見られたくないので・・・」

「そうか・・・」

少し・・・残念な零治だった。

つまり・・・先は長いのである。

なにしろ・・・まだ手も握ってないからな。

「君はスマホは・・・それ一台か」

「ですね・・・あ・・・そういえば・・・連絡先を交換していませんでしたね」

「そうだな」

「では・・・登録します」

零治は・・・「みささん」のアドレスを手に入れた!

ニヤニヤしながらベッドに横たわる零治。

美咲から着信がある。

(今日はありがとうございました・・・もっと魚にくわしくなってまた水族館で御一緒したいです・・・おやすみなさい)

「魚にくわしくなってだと・・・良い子じゃのう・・・」

身悶える零治は・・・おじいちゃん属性だったのだ。

ある意味、完璧な脚本である・・・再現率がどんどん高まるので・・・ここからは割愛してお届けします。

鮫島ホテルズ社長室企画戦略部に出勤する零治。

「おはようございます」

「おはよう♥」

「え」

戦慄する一同。

「なんだ・・・今のは」

「ニヤニヤしてたよな」

「ニヤニヤしてたよ」

恋愛感応者の堀まひろ(清水富美加)はたちまち異変を察知して・・・美咲を見るのだった。

なんとかポーカーフェイスを維持する美咲。

まひろの目には・・・悪魔の社長をたやすく手懐ける美咲が魔性の女に見えているのではないか・・・。

「赤だ・・・僕のネクタイの赤が社長のニヤニヤを・・・」

最近流行中のちょいうざい枠の三浦家康(小瀧望)は叫ぶ。

一同スルーである。

美咲のデート報告を聞いてまひろは弱音を吐く。

「私は・・・部長のことあきらめようと思うの」

「どうして・・・」

「だって・・・部長・・・私のことなんて眼中にないんですもの」

白浜部長(丸山智己)にお熱なまひろである。

「パンティーをかぶってくれてもかまわないのに」

「宣伝ですか」

「R指定なしなので家族で楽しめます」

「主人公がパンティーをかぶる映画をですか」

「絶賛上映中!」

零治は秘書にのろけるのだった。

「最高だ」

「交際三日目ですね」

「お前も早くこっち側にこれるといいな」

「・・・ホテル協会のパーティーのパーティーにはお誘いしたのですか」

「次のデートで」

「今度は・・・どちらに」

「レイさんはミサさんにおまかせだ・・・」

「・・・」

零治は恋愛マスターである和田英雄(北村一輝)に報告する。

「そうか・・・彼女をモノにしたのか」

「まあ」

「それは意外だったな」

「しかし・・・師匠の教えはあまり役に立ちませんでした」

「・・・」

「手柄を立てたのは私です」

「一撃で撃破か!」

しかし・・・ニヤニヤ笑いを崩さない和田社長。

「あの・・・私があなたの指導を受けたことは秘密にしてください」

「もちろんさ・・・」

さらにニヤニヤする和田社長だった。

もちろん・・・零治がモノにしたのは・・・まだ・・・美咲の「ハート」だけである。

和田社長とはレベルが違う零治なのだ。

「今度のパーティーはダンスパーティーだが・・・大丈夫かな」

「望むところです」

運転手は秘書につぶやく。

「社長はダンスには自信があるらしい」

「あら」

「ヒグマとでも踊れるらしい」

「あらあら」

会社では美咲の希望通りに・・・社長と部下として振る舞う零治。

しかし・・・パーティー当日に・・・白浜部長が京都出張に部下を一人同行させるスケジュールが発生。

美咲が立候補して・・・蒼白になる零治。

「ま・・・」

「はい」

救いの神として家康も立候補。

そして・・・まひろも・・・。

「じゃあ・・・じゃんけんで」

「待て・・・ここはじっくりと・・・ランチをはさんで勝負だ」

意味不明な言動をする零治だった。

「どうしよう・・・」と秘書と運転手に相談する零治。

「祈るしかありません」

一方・・・まひろは美咲に・・・。

「最後にもう一度アタックしてみる」

「じゃあ・・・私は辞退しましょうか」

「いいえ・・・運だめしだから・・・これで負けたらあきらめがつくし」

「そうですか」

零治は運転手に頼んで必勝祈願のお守りを購入・・・家康に贈るのだった。

藁にもすがる思いである。

しかし・・・家康は一発で敗退脱落。

「よ・・・弱すぎる」

しかし・・・恋に賭けるまひろは美咲に勝利した。

思わずガッツポーズをする社長だった。

公私の区別などどこ吹く風である。

(約束の時間は十三時でよろしいですか)

(はーい\(^O^)/ )→訂正→(うむ)→訂正→(了解しました)

十二時に到着する零治だった。

二度目のデートは「落語鑑賞」である。

「意外に面白かった・・・ミサさんはよく来るの」

「祖父が好きだったので」

「もっと聞きたいくらいだ」

「では・・・落語のソフトをお貸ししましょうか」

「いいのか」

「はい・・・レイさんがお望みなら」

美咲の行きつけの定食屋で夕食をとる二人。

生姜焼き定食にビール・・・グラスは二つと・・・ここまでは順調だったが・・・。

「今度のホテル協会のパーティーに同行してほしい」

「その日は・・・あいにく予定が」

「でも・・・出張は・・・」

「なので・・・歯医者と美容院を予約してしまいました」

「こちらを優先してくれないか」

「しかし・・・キャンセルしてはお店の人に迷惑が・・・」

「そこをなんとか」

「仕事とプライベートは・・・」

「それなら・・・社長命令だ・・・三浦も連れて行く・・・お前は黙って従え・・・」

「・・・はい」

初めての喧嘩である。

気まずい空気に耐えられない零治。

零治は秘書に愚痴るのだった。

「それで・・・それきり・・・しゃべってないと」

「メールもない」

「社長からなされば・・・」

「そんなことできるか・・・最後にメールしたのはレイさんだ・・・今度はミサさんの番だ」

「・・・」

しかし・・・交際相手の零治の希望を叶えなかった美咲は少し譲歩するのだった。

一人寂しくトレーニングをする零治に「落語のソフト」を届けるのである。

「ご希望の品です」

「ありがとう」

零治は一人で落語を鑑賞した。

「痴れ者が・・・小便と申すのか・・・御同輩・・・小便じゃて・・・控えておれ・・・こ、これは小便・・・この正直者!」

零治は笑った。

(一人で声を出して笑ってしまいました)

(私はいつもです・・・おやすみなさい)

(おやすみなさい)

美咲が優しかった。

零治はうれしくて眠れなくなった。

そして・・・ついに電話をしてしまった。

「おやすみなさいを・・・反対から読んだことがありますか」

「いいえ・・・」

「いさなみすやお・・・小説家のペンネームみたいでしょう」

「ユーモア作家ですね」

「そうです・・・味噌汁をみそスープと言ったりします。彼には料理研究家の妻がいるのです」

「いさなみしほさんですね」

「・・・そうです・・・彼女の影響で・・・レモンをリモーネと言ったりします」

「レイさん・・・もう三時ですよ」

「ああ・・・もう寝ないと」

「そうしましょう」

「おやすみなさい・・・」

「おやすみなさい」

零治は美咲の言う通りに幻想の星空を見ながら眠りにつく・・・。

「いさなみしほ・・・ほしみなさい・・・星見なさい」

そして・・・パーティー当日。

前哨戦として・・・別れた恋人(中村アン)を連れた和田社長が・・・秘書に仕掛けるのだった。

「おいおい・・・俺を仇のように見ないでくれよ・・・断ったのは君だぜ」

上級者同志の駆け引きを繰り広げる和田と秘書だった。

一方・・・公私の公であるために・・・地味な装いで現れる美咲。

とても踊れるスタイルではない。

おしゃれなのかもしれんが・・・白いソックスはいてるしな・・・。

そもそも・・・美咲はパーティードレスなど持っていないのではないか・・・。

レンタルかっ。

なんてったって・・・銭湯女子なのである。

美咲はあくまで有能なスタッフなのであって・・・パーティーの主役とは無縁の人生を歩んでいるのだ。

「プリティーウーマン」の主人公なら・・・まずドレスをプレゼントするのだが・・・零治はそこまで気が回らない。

有能な秘書も和田の件で少しうっかりしているのではないか。

美咲は魔法使いのいないシンデレラなのである。

不吉なムードの中、家康は和田社長に空気を読まない日焼け談義のうざいアピールを展開するが・・・軽くスルーされるのだった。

そして・・・和田は猫がネズミをいたぶるように・・・初心な恋人たちをからかうのだった。

「それにしても・・・よかったね・・・パーティーに連れてくる彼女をつかまえられて」

「・・・」

「心配だから・・・俺の彼女の友達を呼んでおいたのに・・・」

「・・・」

「二ヶ月・・・よく頑張ったね」

「だから・・・あんなに・・・必死だったんですか」と美咲。

「ち・・・ちがう」と零治。

美咲はパーティー会場を飛び出した。

「おやおや・・・」

「・・・」

「約束通り・・・私が協力したことは黙っていたのに・・・」

ダンスタイムである。

仕方なく・・・高田ホテル協会会長(鷲尾真知子)と踊る零治。

「お上手ね」

「いえ・・・」

「私じゃあ御不満?」

「そんなことはありません・・・」

帰宅した美咲は少し後悔するのだった。

冷静に考えればあの・・・零治に・・・そんな「邪まなこと」ができるはずはなかったのだ。

孤立無援のシンデレラは畳に横たわる。

美咲は電話を見る。

しかし・・・美咲が電話をするより先に・・・着信があった。

「もしもし・・・レイさん・・・」

「・・・いさなみすやお先生が謝罪会見を開いたそうです」

「・・・そうですか」

「自分本位ですまなかったと・・・ただ・・・誰でもよかったわけではない・・・本当に心から好きな人とパーティーに出たかっただけで・・・あわよくばその人とダンスを踊りたかった」

「・・・いさなみしほさんも会見を開いたそうですよ・・・感情的になって・・・話も聞かずに帰ってしまって・・・ごめんなさい・・・」

「この時代に電話があって・・・よかったです・・・離れ離れになっても・・・こうして話がてきる」

「・・・そうですね」

「でも・・・逢えない距離にいるわけじゃないのに・・・電話で話しているのは少し変ですよね」

「じゃ・・・逢いましょうか」

「はい」

一部お茶の間はニヤニヤしながら叫ぶのだった。

「爆発しちゃえ!」

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2016年5月18日 (水)

飲んでイチャついてます(黒木華)描いています(高月彩良)凍えています(永山絢斗)家族サービスしています(安田顕)

必死というものを揶揄する風潮があるわけだが・・・そこには「努力のカラ回り」とか「目の色が変わっている」とか「怠惰の裏返し」とか「邪念丸出し」とか・・・まあ・・・様々な成り行きがあるのだろう。

しかし、「必死」とはつまり・・・必ず死ぬのである。

本人としては切羽詰まっているのだ。

だから死に物狂いなのだ。

一度でも「必死」になって・・・なんとか生き残ったものなら・・・「必死」を笑うことなどできない。

「必死になっている人」は愛おしいし・・・可愛いし・・・素敵だ。

まあ・・・時には背中を押して・・・反対側の崖へと突き落としたくなったりもしますがね・・・。

悪魔なので・・・。

で、『重版出来!・第6回』(TBSテレビ20160517PM10~)原作・松田奈緒子、脚本・野木亜紀子、演出・塚原あゆ子を見た。どのくらい徹夜をしたら締め切りに間に合うのか。どのくらい悩んだら話が面白くなるのか。どのくらい割りきったらわかりやすくなるのか。どのくらいストレスをためたらみんなが喜んでくれるのか。友達よ。その答えは風に吹かれてる。

黒沢心(黒木華)が週刊コミック誌「バイブス」の編集者となって・・・最初の年の瀬である。

編集者として最初に発掘した画力が抜群の東江絹(高月彩良)と絵は下手だが独特のセンスを持つ中田伯(永山絢斗)という二人の漫画家の卵のうち・・・東江は先輩編集者の安井(安田顕)に横取りされてしまった。

ベストセラーの小説「ガールの法則/根本明吾」のコミカライズ(漫画化)のために東江を強奪した安井は手掛けた作品を必ずヒットさせる凄腕編集者だが・・・かかわった漫画家を必ずしも成功に導かないために「つぶしの安井」の異名をもっていた。

映画化される「ガールの法則」の主演女優とのタイアップにより、さらなるヒットを目指す安井は女優の主演女優の所属事務所からの要求である「漫画のキャラクターの髪型変更」に応じる。

そのために「第7話」まで完成していた東江の原稿はすべてボツとされ・・・主人公の髪型をショートカットからツインテールに描き直すことを求められる。

「だけど・・・締め切りまであと・・・十日で五十ページも・・・」

「プロってそういうこと・・・仕事をなめるんじゃないよ」

ビジネスライクの鬼と化す安井であった。

東江は歯をくいしばるのだった。

そして栄養剤中毒となっていくのである。

場合によって吐血します。

日体々大学女子柔道部の沙羅(武田梨奈)たち選手一同と初詣に出かけた心は・・・「東江と中田の無事デビュー」を祈願する。

その時・・・東江から連絡が入る。

「あけましておめでとうございます」

「あ・・・もうお正月なんですね」

「どうしました」

「セリフで・・・直したいところがあるんですけど・・・安井さんと連絡がとれなくて」

「入稿時でも大丈夫ですよ」

「・・・ありがとうございました」

心は東江の追いつめられた状況を察し、陣中見舞を敢行する。

「近所まで来たので・・・」

「ほぼ東京縦断ですね・・・」

泣きだす東江から事情を聴く心・・・。

「大変ですね」

「髪型を変えたら・・・衣装も変えないとならないし、衣装を変えたらしぐさも変えないと・・・結局・・・最初から描き直すことに・・・もうどうしていいか・・・こんな絵で・・・原作に申し訳なくて・・・」

「東江さんの絵は抜群ですから・・・ここが踏ん張りどころです・・・ベストをつくすしかありません」

「・・・はい」

心の激励でなんとか戦場に踏みとどまる東江だった。

入稿の日・・・家族サービスの海外旅行から帰った安井を睨みつける心。

「担当の作家さんを放置して・・・家族サービスですか」

「それがなにか・・・原稿はしっかり届いてますし・・・」

「それは東江さんが頑張ったから」

「それが彼女の仕事なんだから当然でしょう・・・」

「漫画家さんは・・・道具じゃありません」

「・・・」

安井は心を無視するのだった。

素晴らしいインターネットの世界で「編集者残酷物語」のコメントが更新される。

(出版はビジネスだ・・・夢を託すものでない)

唇をかみしめた心は五百旗頭(オダギリジョー)に問う。

「安井さんて・・・」

「彼は・・・昔は・・・心ちゃんみたいな編集者だったんだ」

「えええええええええええええ」

興都館・編集者・安井昇の半生

六年前・・・興都館の雑誌「コミックFLOW」の編集者だった安井は・・・娘の誕生日に家に帰らないほどに仕事に打ち込んでいた。

人気漫画家の加藤了(横田栄司)に惚れこんだ安井は・・・二年間に渡って加藤を口説き、ついに作品の連載を獲得する。

しかし、雑誌の売れ行きは低迷し・・・廃刊が決定する。

なんとか・・・廃刊を阻止しようと隠密で努力を続けた結果・・・外部からの情報で加藤は廃刊の事実を知る。

漫画家と編集者の心はすれ違った。

「申し訳ありませんでした」

「会社の金で食ってる君と違って・・・俺にとっては死活問題なんだよ・・・アシスタントや家族を養っていかなければならないんだ・・・君は俺を裏切ったんだ・・・」

安井の心から血が流れる。

残務処理に追われる編集部に・・・廃刊を決定した重役が現れる。

「ご苦労さん・・・この雑誌の創刊を決めたのは私だし・・・廃刊を決めたのも私だ・・・私はこれで引退するが・・・まあ・・・この雑誌が私の墓標だな」

「ふざけるな・・・雑誌をなんだと思ってんだ・・・雑誌はあんたの墓石なんかじゃねえよ・・・みんなで育てた家なんだ・・・漫画家と編集者が住んでる家なんだよ・・・それを勝手につぶしやがって・・・ぶん殴ってやる」

しかし・・・編集者一同は止めるのだった。

「無礼者」

「殿中でござる」

「武士の情け・・・せめて一太刀・・・」

「殿中でござる」

帰宅した安井を待っていたのは離婚届だった。

「好きなだけ・・・仕事をすればいいわ」

「廃刊になっちゃった」

「え・・・」

そして・・・売れる本しか作らない男が誕生したのである。

すべてを傍観してきた小料理屋「重版」の女将ミサト(野々すみ花)の吐息・・・。

「彼にとって・・・本が売れないってことは・・・一家離散の前触れなんだ」

「・・・」

「何が理想の編集者って奴なのか・・・そんなこと・・・誰にもわからないのさ」

「安井さんが・・・単なるゲスの極み編集者ではないと・・・」

「本当は・・・一番の乙女編集者かもしれない・・・」

新年早々・・・「ピーヴ遷移/中田伯」と「ガールの法則/東江絹」の連載が開始される。

映画「ガールの法則」の主演女優が巻頭グラビアを飾り、売上も好調な「バイブス」・・・。

無理に無理を重ねる東江絹は拒食症になりながらも原稿を描く。

一方、中田は編集部を訪れていた。

「あの・・・気がついたことがあって・・・」

「なんでしょう・・・」

「ボク・・・他の人より・・・絵が下手なんです」

「え・・・」

「・・・すごく下手です」

「あの・・・今まで・・・何度も・・・描き直しをお願いしましたよね」

「はい」

「それは・・・何故だったと思うのですか」

「ボクの絵が・・・個性的だから?」

中田は自作が印刷されることによって・・・作品を初めて客観視できたらしい。

心は中田に他人の作品の模写を奨める。

「上達の近道です」

「あの・・・三蔵山先生のところでのアシスタント・・・正式に雇ってもらえないでしょうか」

「・・・お願いしてみます」

「アルバイトは止めて・・・マンガに専念したいんです・・・描いて描いて・・・もっと絵が上手くなりたい」

「頑張りましょう」

「頑張るのはボクですけどね」

三蔵山(小日向文世)は快諾する。

「彼には・・・見どころがあるからね・・・まあ・・・先のことはわからないけど・・・」

「・・・」

「今はただ心にあるものを表現したい・・・それだけでいい・・・しかし・・・やがて何のために漫画を描くのか・・・そういう壁につきあたる日がいつかやってくるかもしれない・・・」

「何のために・・・」

「そう・・・心ちゃんは・・・何のために編集者という仕事をしてるのかな」

「戦国の女ですから」

「梅ちゃんか・・・」

「太閤殿下・・・」

だれが「真田丸」の話をしろと・・・。

月日は夢のように去っていく。

コミック「ガールの法則/東江絹」の単行本の表紙を見た心は蒼白となる。

表紙を飾るのは映画の主演女優の写真だった。

「安井さん・・・いくらなんでも・・・これは」

「何か問題でも?」

「これは・・・東江さんの漫画ですよ」

「東江の絵より・・・映画の主演女優の表紙の方が売れるんだよ。一人で何冊も買うバカもいるかもしれないし・・・」

「・・・」

定時になって安井は業務を終了した。

安井は・・・東江を呼びだした。

「単行本の売上は好調だ・・・重版出来確実だ」

「・・・」

「で・・・次回作だが・・・今度は芸人の書いた純文学のコミカライズを頼みたい」

「お断りします」

「・・・」

「私・・・このままだと・・・漫画を嫌いになってしまいそうなんで・・・」

「そうか・・・それでは・・・これで失礼します」

立ち去る安井は何故か・・・目頭が熱くなる。

東江は心を訪ねた。

「私・・・一からやりなおします・・・作品を仕上げたら・・・また見てくれますか」

「はい」

「私・・・心さんの手を離してしまったことをずっと後悔してました」

心は東江の手をとった。

「離した手はまたつなげばいいんですよ」

心は帰って来た恋人に微笑んだ。

デビューした中田を冷やかすアシスタント仲間たち・・・。

「女の編集者も・・・悪くないかもねえ」

「女というか・・・心さんは・・・ボクの神様です」

「・・・」

万年アシスタント・沼田(ムロツヨシ)・・・二十年間デビューできない男・・・は複雑な気持ちを隠すために無表情になっていた。

安井は和田編集長(松重豊)に報告する。

「新作の件・・・東江さんに断られたので・・・別の人に頼みます・・・代わりはいくらでもいますからね」

「いつも・・・すまないな・・・お前が必ず当ててくれるから・・・助かっているよ」

和田編集長も「コミックFLOW」の敗残兵だった。

安井はニヤリと笑った。

二人の心に流れる暗黙の了解・・・。

どのくらい円形脱毛症になったら光が見えるのか・・・どのくらい胃に穴があいたら出口が見えるのか・・・どのくらい体が震えたら闇が終わるのか・・・どのくらい蕁麻疹になったら明日がくるのか・・・その答えは・・・友達よ・・・風に吹かれてる。

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2016年5月17日 (火)

粘るのは納豆だけ(福山雅治)愛してるって歌います(藤原さくら)私は涙もろい女(水野美紀)

ブルームーンは十三番目の月である。

一年は基本的に十二ヶ月で・・・四季で割ると・・・一シーズンそれぞれの月は三つである。

しかし、月齢と一年は一致しない。

月の運動と太陽の運動が一致しないためである。

そのために一つのシーズンに四つの満月が現れることがある。

米国メイン州ではそれぞれの満月に名前をつけており・・・フラワームーン(花月)、ウルフムーン(狼月)など・・・この変則的に現れるひとつのシーズンに四つの満月の時には・・・第三の月をブルームーン(青月)と呼ぶのである。

ブルームーンは2~3年間隔で出現するので・・・他の月より珍しいということになる。

2016年5月21日の満月がブルームーンである。

次のブルームーンは2019年2月19日となる。

この「ブルームーン」は単なる一地方の「呼び名」に過ぎず・・・個々の運命とは無関係だが・・・信じるものが常軌を逸するのはよくあることである。

で、『ラヴソング・第6回』(フジテレビ20160516PM9~)脚本・倉光泰子、演出・相沢秀幸を見た。脚本家が戻って来た。つまり・・・二人で一人体制なのか・・・。何度も言っているが連続ドラマの複数脚本家体制はまず成功しないものである。監督が黒澤明じゃあるまいし・・・。だって・・・「言葉」にそれぞれこだわりがあるはずなんじゃないかな。途中で別の「言葉」が挿入されたら・・・「世界」が変わってしまうんじゃないのか。変わっても平気な「世界」なんてダメだろう・・・。

佐野さくら(藤原さくら)はタマネギを切った。

だから泣けてくるのである。

幼馴染であり、仲間である天野空一(菅田将暉)もタマネギを切った。

やはり泣けてくるのだった。

中村真美(夏帆)は婚約者の野村健太(駿河太郎)を招き、食事会を催す。

さくらと空一が喧嘩中であると思った真実は仲直りのきっかけを作ったつもりだったが・・・すでに二人の関係は修復されていた。

「空一くんはさくらちゃんが好きなんだな」と野村がつぶやく。

「そうなの・・・でもさくらは・・・神代先生が好きなのよね」

「そうなのか」

「神代先生は誰が好きなのかなあ・・・」

神代広平(福山雅治)の心をめぐる丁寧な導入部であった。

広平は・・・レコード会社「トップレコード」の弦巻竜介(大谷亮平)からの依頼に応じて、新曲による「藤原さくら」のデモテープを制作するための楽曲作りに熱中していた。

さくらの吃音症を治療中の言語聴覚士・宍戸夏希(水野美紀)は・・・密かに広平に懸想しており、さくらと広平が男と女の関係になることを惧れている。

「あまり・・・夢中になると・・・さくらちゃんの負担になるんじゃない」

遠回しに釘をさす夏希。

「いや・・・本人がやる気になっているから大丈夫だろう」

夏希の「女心」をスルーする広平だった。

曖昧にしか描かれないが・・・その人を失うことで広平が音楽活動に挫折するほど深い関係にあった宍戸春乃(新山詩織)の妹である夏希は・・・恋人の妹ポジションに長い間、甘んじてきたのである。

広平が・・・新しい「本当の恋人」を作ったら・・・自分の立場が失われてしまうという危機感を夏希は抱いているのである。

もちろん・・・本当は誰よりも広平に愛してもらいたい夏希だった。

曲作りの打合せのために喫茶店に呼び出されたさくらはデート気分で浮かれる。

しかし、現れた広平はおしゃれな「知り合い」の女性と親しげに言葉を交わす。

「だだだ誰ですか・・・」

「知り合い・・・」

「どどどどんな・・・」

「ただの知り合い・・・」

「あああああいう人がタイプなんですか」

「君はどんなのがタイプ?」

「ダダダダメ男です」

「へえ・・・」

「ななな夏希さんもろくでなしが好きだって言ってました」

「そうなんだ・・・どうして・・・そういう男が好きになるのかね」

「たたたたまに優しいから」

「なるほど」

自分がダメ男だとはまるで思わない広平である。

「せせせ先生は・・・今まで何人くらいとつきあったんですか」

「君よりは多いだろう」

「・・・」

広平の曲作りは難航していた。

広平は封印の扉を開く。

最も愛した女のための・・・未完成のラヴソング・・・。

広平は一度は扉を閉めた。

かってのバンド仲間である増村泰造(田中哲司)はレコーディング機材の提供をもちかける。

「助かるよ・・・」

広平は自宅に機材を運び込む。

手伝いに来たさくらはようやく広平の部屋への侵入に成功する。

二人きりになり・・・高まるさくらの期待・・・。

「君に宿題を出そう・・・」

「かかか帰れってことですか」

「いや・・・作詞をしてみないか・・・」

「さささ作詞・・・」

「君ならできると思うんだ・・・」

「ややややります」

ダメ男好きというものは・・・愛する男に言われたら何でもする女なのである。

作業中にも・・・食事中にも・・・睡眠前に起床後に・・・作詞作業に熱中するさくらだった。

牝犬の認知症患者である湯浅志津子(由紀さおり)は担当のカウンセラーである広平に呟く。

「今度の満月は・・・ブルームーンなのよ」

「ブルームーンですか・・・」

「ええ・・・特別な月なのよ・・・その月を見た恋人たちは・・・結ばれる運命なの」

「なるほど・・・それはメモしておかないといけませんね」

すべてを忘却しながら・・・恋をすることだけは忘れない年老いた牝犬なのである。

ある種の男にとってこれほどおぞましい存在はないな。

まあ・・・それは年老いた雄犬にも言えることだがな。

ある種の女にとってはな。

さくらは・・・ラブレターのように・・・つくりかけの詞を広平に送信する。

(こわいもの知らずの私なのに・・・あなたがいなくなるのがこわくてたまらない)

(つくりかけじゃなくて・・・完成品を見せてくれ)

しかし・・・さくらの「言葉」は広平の「心」を揺さぶった・・・。

広平は禁断の扉に手をかける。

かって・・・あるロックンローラーは言った。

「言葉とメロディーは世界の果てで結ばれている」と・・・。

眠っている「メロディー」が・・・さくらの「言葉」で召喚されるのだった。

広平の部屋でさくらのヘアバンドを発見してざわめく夏希の心・・・。

ブルームーンの夜は・・・締め切り前夜である。

さくらは・・・広平の自宅録音スタジオに招かれる。

「ここここの曲すごくいい・・・前のとちがいますね」

「君の詞を見て・・・変更した」

「そそそそうですか・・・」

「後は譜面にそって・・・言葉を合わせて欲しい」

「わわわわかりました・・・」

曲作りに熱中する二人・・・。

ブルームーンの輝きに踊らされ・・・さくらの不在に苛立つ空一は・・・離婚して夫に子供を奪われた渡辺涼子(山口紗弥加)に童貞を捧げる。

昔の恋人を自宅に連れ込んだ夏希は・・・寸前で・・・自分が本当に欲しい男を思い出し・・・脱力する。

作詞作業は一度煮詰まってしまう。

「もう・・・これでいいんじゃないか」

「ダダダダメです・・・私は・・・納豆より粘りたい」

「・・・」

「散歩しましょう」

「いいよ・・・」

二人は夜の街へ出る。

街角にゴージャスなキャンピングカーが置かれ・・・ダンスのパフォーマンス撮影が行われている。

「かっこいい・・・キャンピングカーだな」

「かかか・・・・いつも・・・言いたい言葉が言えない」

「・・・」

「かかか火曜日と言いたいのに日曜日の次の次の日って言ったり・・・」

「・・・」

「ほほほ本当は・・・オオオオートバイって言いたいのにバイクって言ってしまう」

「・・・」

「こここ恋人に・・・オオオオートバイに乗らないって言いたいのに・・・」

「なるほど・・・」

「ででででも・・・歌っているときはちがう・・・魔法にかかったみたいにスラスラと言葉が出てくる・・・夢みたいに言いたいことが言える・・・だから・・・私にとって特別です」

「そうか・・・」

振り返ると・・・二人を見下ろすブルームーン。

「つつつ月がきれいですよ」

「きれいだね」

「ししし知ってますか・・・アイ・ラブ・ユーを夏目漱石は・・・そう訳したんですよ」

「諸説あるけどね」

「つつつ月がきれいだ」

「うん・・・きれいだ」

さくらは胸がいっぱいになった。

徹夜で作業を続ける二人。

好きよ好きよ好きよ

こんな歌ができたの

言葉じゃ物足りないから

まだ誰も知らない

わたしのラヴソング

二人の愛の結晶が生まれた。

パッケージ作業を担当したさくら・・・。

疲れ果てた広平はベッドに倒れ込む・・・。

実物大・広平を前にして・・・添い寝せずにはいられないさくら・・・。

幼い娘が大好きな父親の寝床にもぐりこむように・・・じゃれつくのである。

そこへ・・・邪念満載で夏希がやってくる。

ベッドで眠るさくらを見て・・・急襲したつもりが急襲されてしまう夏希・・・。

哀しくて涙が止まらないのだった。

その様子に・・・不審を抱く広平だった。

そこへ・・・弦巻竜介がやってくる。

狸寝入りをしていたさくらは挨拶をする。

完成したデモテープを渡す広平。

夏希は耐えきれず・・・部屋を脱出する。

「早速・・・聞いてみましょうか」

車の中で視聴を開始する・・・弦巻竜介・・・。

流れ出したメロディーに戦慄する夏希・・・。

そのメロディーは・・・かって・・・春乃がスキャットで歌っていたものだった。

「お姉ちゃんの・・・歌じゃないの・・・」

自分で自分の恋を封印し続けた夏希はすでに生きながら怨霊と化しているのである。

やり場のない怒りを家具にぶつける夏希・・・。

ものにあたるのはろくなことがないのでやめましょう・・・。

その頃・・・さくらは叫んでいた。

「つつつ月がとってもきれいだ」

街中を走り去るさくらのバイク。

「つつつつきがきれいだああああああああああ」

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

前回のドラマの中の「動画」は素晴らしいインターネットの世界に「【公式】500マイル/佐野さくら 」としてアップされている。オンエア終了から一週間ほどの時点で視聴回数は1,058,446 回に達している。

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2016年5月16日 (月)

隙を見せれば井戸の底よ・・・恋に浮かれてお熱をあげて冷えたら静かにあの世行き(長澤まさみ)

真田信幸と本多忠勝の娘・稲姫との婚姻については諸説あるが・・・婚姻の時期についても定説はない。

稲姫が家康の養女となったことも諸説あるほどである。

推測によれば・・・徳川家康の家臣である本多氏と・・・真田家嫡男の縁組は・・・家康にとっては都合のいい話で豊臣政権下の与力大名である真田家を家臣と同格にする意図となる。そこで真田昌幸は色よい返事をしなかったために・・・家康が稲姫を養女とすることで・・・徳川家と真田家の婚姻という形式に修正し、決着したというのが妥当ということになるのだろう。

そうなると・・・それは天正十五年(1587年)以後ということになる。

通説によれば・・・信幸と稲姫の長女・まんは天正十九年(1591年)に生まれており・・・遅くとも天正十八年には婚姻が成立したと思われる。

この後、文禄二年(1593年)に次女のまさが生まれている。

そして文禄四年(1595年)には真田信綱の娘である清音院殿が嫡男の信吉を生んでいる。

つまり・・・嫡男という意味では清音院殿は正室なのである。

ただし・・・信吉の母も稲姫だとする説もある。

稲姫は次男・信政を慶長二年(1597年)に・・・三男・信重を慶長四年(1599年)に生んでいる。

真田家の血統は基本的に信幸(信之)が継いでいくが・・・信吉系統と信政系統にはお家騒動も勃発する。

そこには・・・真田の血と本多の血の争いが背景としてあることが充分に想像できるわけである。

信繫の正室とされる大谷吉継の娘・竹林院との婚姻にも諸説ある。

信幸よりも先に縁談が整った可能性もあるが、天正十八年(1589年)の小田原征伐以後、豊臣姓を賜り、従五位下左衛門佐に叙任された文禄三年(1594年)の間とされる。

ドラマでは・・・史実の曖昧さを利して・・・なんでもありな状態なのである。

ただし、高梨内記の娘とされるきりが慶長四年(1599年)に三女の阿梅を出産しているという説があり、竹林院が嫡男の幸昌を出産したのは慶長五年(1600年)という説もある。きりも竹林院もそれ以前に次女いちや四女あぐりを出産しており・・・まあ・・・信繫は両者を同時に可愛がっていたわけである。

ドラマでは・・・このあたりをどう処理してくるのか・・・楽しみなんだな。

さらに言えば・・・信繫はあの豊臣秀次の娘も側室にしているわけであるしね。

戦国大名のハーレムこそ・・・男のロマンなのである。ああ・・・楽しみだ。

で、『真田丸・第19回』(NHK総合20160515PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・小林大児を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は豊臣秀吉の正室にして・・・糟糠の妻・・・(ねね)の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。秀吉と茶々・・・そして北政所・・・役者が揃いましたねえ。少女を演じることのできる女優と老女を演じることのできる女優を揃えて・・・大坂城物語も盛り上がること間違いなしでございます。それにしてもきりは神出鬼没ですね。ドサクサにまぎれて北政所の侍女になっているわけですが、すでに参議となっている豊臣秀次とも親しくなっているらしい。この時、秀次はそこそこ二十歳・・・三十路前に切腹するまでに三十人以上の側室を持つ男なので色仕掛けで誑し込んだか・・・やはり・・・くのいちなのですな。まあ・・・大坂城を長澤まさみがうろうろしていたら・・・秀吉のお手付きになってもおかしくないのですよねえ・・・。やはり・・・きりはこのドラマ最大のミステリーなのかもしれません・・・。「彼ったら・・・茶々様とこそこそしていたのよ」って侍女仲間に絶対に言ってますよね。

Sanada019いよいよ・・・ここに来て・・・大河名物、時空の乱れである。真田昌幸の駿府城訪問が・・・長逗留なのである。形式的には天正十五年(1586年)三月に・・・与力大名として徳川家康と会見した昌幸は上洛し、上田城に戻ったわけである。可能性としては・・・嫡男・信幸は人質として・・・そのまま家康に出仕したかもしれない。その後、稲姫との縁組について家康が昌幸に申し出て・・・縁談がまとまるわけだが・・・それが・・・三月中の出来事としてまとめられたらしい。この頃・・・豊臣秀吉は弟・秀長とともに九州に出陣中である。ドラマでは秀長が病床にあることになっているが・・・兄弟揃って元気に戦闘中なのだった。聚楽第は天正十四年(1586年)二月に着工され・・・天正十五年(1587年)九月に完成したとされる。ちなみに豊臣秀次は前田利家に補佐されて京都留守居役を命じられ大坂城には不在だ。六月に九州平定を終えた秀吉は凱旋するわけだが・・・当然、桜の季節ではないわけである。すると秀吉と茶々が見た桜吹雪は天正十六年(1588年)の春ということになる。しかし・・・秀長の病が悪化するのは天正十七年の暮れなので・・・まあ・・・いいか。とにかく・・・なんだかんだで天正十七年(1589年)五月には茶々は豊臣鶴松を出産するのである。つまり・・・今回・・・のドラマは・・・天正十五年の春に始り、天正十六年の春に終わる。夢のように一年の歳月が流れ過ぎたのである。

駿府城下の本多屋敷内に真田信幸の離れが作られた。

本多忠勝の娘・稲姫は真田家に嫁いだわけだが・・・実質は・・・信幸が婿入りしたようなものである。

信幸は母屋に実父がいる家で・・・正室となった稲姫と初夜を迎えた。

月明かりだけの寝室に二人は対座する。

「末長くよろしくお願い申し上げます」

床入り前に頭を下げる稲姫であった。

「こちらこそ・・・」と信幸も頭を下げた。

「信幸様は・・・真田一の武勇の主と父が申しておりました」

「それは・・・言い過ぎだ・・・真田のものはみな・・・一騎当千にて・・・」

「しかし・・・上田の合戦では徳川の兵どもを手痛い目にあわせたのでしょう」

「すべて・・・父、昌幸の采配によるもの・・・」

「奥ゆかしいのですね・・・真田のものは怪しい修験の術を使うと聞きましたが・・・」

「そういうものもおる・・・私は・・・槍と馬だけじゃ・・・」

「遠当ての術などは・・・」

「弟の中に得意なものがおる」

「妾もいささか・・・嗜みまする」

「ほう・・・」

稲姫は微笑んだ・・・。

「本多流・・・電光石火の術・・・」

稲姫は気合とともに両手を交差した。

その接合部から電撃がほとばしり・・・蝋燭に着火する。

闇の中に稲姫の顔が浮かび上がる。

「妾・・・またの名を・・・稲妻と申します」

「そうか・・・稲は・・・稲妻姫か」

二人は・・・床に入った。

「参る・・・」

「はい」

信幸は稲に挿入した。

途端に・・・信幸の先端は痺れを感じる。

「あ・・・」

「ふふふ・・・妾の女陰は・・・しびれくらげでございます」

信幸は感電した。

関連するキッドのブログ→第18話のレビュー

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2016年5月15日 (日)

死後の世界があるという仮説を検証中(福士蒼汰)悪霊なんて大嫌い(土屋太鳳)恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか(野波麻帆)忍ぶれどうらめしや(門脇麦)

さあ・・・ちょっと踏み込んできたぞ。

これは「死」というシステムに対する「この世界」の解釈と言えるだろう。

①人間は死ぬと幽体離脱してしばらくは現世にとどまる。

②ノーマルタイプは一定期間を経過後、来世への中間点に移動する。

③アブノーマルタイプは現世への執着心から移動を拒絶し、「死神」によって「完全消滅」させられる。

つまり・・・②は輪廻転生ルート。③は解脱ルートである。

「仏教的世界観」では執着心を捨てることで解脱するのが理想の形なのだが・・・ここでは執着すればするほど解脱に近付くことになっている。

つまり・・・「精神力の賛美」だな。

人を呪い殺すくらいのパワーがないと解脱なんかできない・・・ということだ。

ある意味・・・涅槃の完全否定である。

ここは・・・一同爆笑ポイントだが・・・お茶の間的にはなかなかねえ。

「死んでもまた生まれ変わりたい」というのが「救い」になるほどに・・・一般人は「生」に執着しているからな。

で、『お迎えデス。・第4回』(日本テレビ20160514PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・塚本連平を見た。「量子脳理論」では「意識」は「生死」を越えて持続するという仮説がある。まあ・・・「魂」が特別なものであるかどうかは・・・未来永劫平行線だろうけどな。たとえ・・・科学的に魂の存在が実証されても・・・信じない人は必ずいるからだ。悪魔にも神秘体験がないわけでもないが・・・それは妄想だった可能性は常にあるのだ。だから・・・こういう「死んだらこんなことになってるよ」的な話は「あんたも好きねえ」と言う他はないのだった。

今回・・・霊視能力のある阿熊幸(土屋太鳳)が幽霊の保(今野浩喜)と物理的接触ができないというルールを・・・幽霊の一種である死神のナベシマ(鈴木亮平)が生きている黒巫女の魔百合(比留川游)を押し戻すことで破るシーンがある。

もちろん・・・幽霊である美樹(野波麻帆)がポルターガイスト現象を起こしたり、魔百合の除霊グッズを拾い上げたり、最後には物質化したりするように・・・なんでもありの部分は「例外」で処理してもいいのだが・・・あまり、なんでもありだと・・・虚構力が脆弱化するので要注意である。

今回は「成仏失敗」のオチなのだが・・・ここで本当の意味で「死」が表現されることになる。

少し、ほろ苦い大人のテイストなのである。

小学生向けのドラマこそ・・・こういう部分が大事なんだよねえ。

生きていれば・・・トライできるが・・・死んだら何もできないという話だ。

童貞幽霊・保に憑依されて幸の唇を奪いにかかる霊媒体質の堤円(福士蒼汰)だったが・・・精神力で抵抗し・・・二つのリモコンで操縦不能になったロボットのように円の肉体は暴走する。

そして・・・階段落ちである。

ドラマの階段は主人公が落ちてもかすり傷しか負わない設定なのでよい子のみんなは真似しないでね。

肉体的なショックで賦活した円は保の分離に成功する。

円の肉体から転げ落ちた保は・・・失望と落胆と後悔の意識を深め・・・逃亡する。

肉体を失った幽霊の魂は基本的に機能低下するのである。

たとえば男性器を失った男性が勃起するのが困難なようにだ。

もちろん・・・失ったものがあるような錯覚をすることはできるが・・・それはかなりの精神力を必要とする。

死んだ人間は・・・欲望から切り離され・・・仏になっていくのが一般的なのだ。

理性的な円に憑依した保は・・・その理性に影響される。

つまり・・・円の肉体を借りることで・・・反省作用が生じるわけである。

生理的嫌悪で見るのも嫌な保の幽霊が去り・・・落ちつきを取り戻した幸は叫ぶ。

「しっかりして・・・」

「助かって・・・よかった」

「・・・」

そこへ・・・死神のナベシマとゆずこ(濱田ここね)が到着する。

牝犬である幸は・・・円の傷の状態を案ずるより・・・恋する乙女モードに移行する。

「ナベシマさん・・・」

「大丈夫か・・・円」

「はい」

幸は・・・自分より円のことを気遣うナベシマにアピールするのだった。

「すごく怖かったんです~」

「とにかく・・・保は俺が見つける」

円は・・・もう一つの案件について報告する。

「彼は立ち直ったので・・・彼女も成仏できると思います」

教え子の一人・亮二(竜星涼)の素行が心配で成仏できなかった美樹だったが・・・原因が自分の死であったことがわかり・・・亮二が立ち直りの兆しを見せたことで・・・安堵した・・・と円は考えていた。

しかし・・・牝犬の心を理解することはできない童貞の円なのである。

美樹はすでに・・・怨霊化の気配を見せていた。

死神たちが保の捜索に出発した後で・・・幸は円を自宅に連れ帰る。

多忙な母親(高岡早紀)と不倫が原因で離婚した父親は不在である。

しかし、阿熊家には円に片思いのまま、不慮の事故で死亡した高校時代の同級生・緒川千里(門脇麦)の幽霊が居候しているのだった。

「彼が来てるけど・・・会う」

「やめとく・・・」

幸は円の傷の手当をする。

「女性が男性を部屋に招くのは求愛の一種だと手引きに書いてあったけど・・・」

「どんな手引きを読んでんの」

「少なくとも好意の表出だと」

「大体・・・あなたは・・・誰かを好きになったことあるの・・・」

円の答えが気になって背後霊と化す千里・・・。

しかし・・・円は答えない!

深夜の心霊大戦により・・・朝帰りの円である。

「どこにいたの」と母・由美子(石野真子)・・・。

「彼女の家・・・」

「まさか・・・彼女の御両親は・・・」と義父・郁夫(大杉漣)・・・。

「いなかった・・・」

「えええ」と驚く義理の妹・さやか(大友花恋)である。

円の身に起きている重大事を知らずに・・・あれこれ妄想する家族たちだった。

ベタだな・・・。

この家族には長生きしてほしいものだ。

死神の領域では・・・子供の上司にナベシマが叱責されていた。

「まだ・・・見つからないのか・・・」

「すみません」

「このウサギ野郎が・・・」

「もうしわけありません」

「パンティーをかぶらせてやろうか」

「そればかりは・・・まれの三人娘が揃ってしまうので」

「生脱ぎのシーンはあるのか」

「それは劇場でお確かめください」

「変態のくせに商売上手じゃのう・・・」

二人で揃って講義の時間に居眠りする円と幸。

「なんだよ・・・俺は・・・おいてけぼりかよ」

円の親友・加藤(森永悠希)は寂しい気持ちを味わうのだった。

そして・・・明櫻大学に亮二が現れる。

「この大学の新入生だったのか」

「先輩だったんすね」

イケメンの新入生登場に・・・レギュラー女子大生たちもウキウキするのだった。

その時、突然・・・建物の構造物が・・・落下してくる。

九死に一生の一同。

「なんで・・・こんなものが・・・」

「まさか・・・保の仕業では・・・」

保は外見で容疑者リストに乗るタイプだった。

帰宅した幸は円に報告する。

「あの痴漢幽霊・・・怨霊になったかもしれない・・・」

「まだ・・・捕まらないの・・・」

「うん・・・」

「円に来てもらったら・・・」

「あなたが・・・逢いたいんしゃないの」

「私・・・もう・・・自分でもわからなくなってきた・・・」

「え」

「私・・・散歩してくる」

「でも・・・死神さんに見つかったら・・・」

「・・・」

千里が外出すると・・・保が現れる。

「キャー」

「ちょ・・・ちょっと待てよ」

幸は逃げ出し・・・携帯電話で円に救助を求めるのだった。

「助けて・・・」

「わかった・・・とにかく・・・逃げて」

なんとか・・・合流を果たす二人・・・。

「彼女に近づくな」

「憑依されないように気をつけて」

「わかった・・・でも・・・どうすれば・・・憑依されないのか」

「もう・・・憑依しないよ」

「え」

「オレは・・・生きていた頃・・・無視されてきた・・・でも・・・あんたは・・・一応・・・嫌いだって言ってくれた」

「・・・」

「俺にとっては・・・もうそれだけで・・・恋した気分だ・・・実らなくてもいい・・・だって死んでるし・・・」

「なんだか・・・せつないな」と円。

「でも・・・今日だって悪さを・・・」と幸。

「あれは・・・女の先生だよ」

「え・・・」

「黒くなってたから・・・怨霊になりかけてるんじゃないか」

「そんな・・・どうして」

「嫉妬だよ・・・あの先生・・・彼が好きなんだよ・・・好きな男が女子大生とイチャイチャしていたら・・・たまらない気持ちになったんだろう・・・」

ナベシマが到着する。

「だとすると・・・彼が危ないな・・・」

「え・・・」

「保を昇天させたら・・・すぐに追いかけるから・・・とりあえず二人で対処してくれ・・・」

亮二のアルバイト先に到着する円と幸。

しかし・・・すでに怨霊と化した美樹は・・・霊力の物質化現象により・・・この世に混沌をもたらし始めていた。

「やめてください」

突然現れた二人が見えない相手と会話を始めて戸惑う亮二。

「なぜ・・・こんなことを・・・」

(私は死んだのに・・・彼は生きて・・・私のことを忘れてしまう)

「いや・・・彼は若いし・・・記憶力はそれなりに・・・」と円。

(なんだって・・・)

「彼なりに慰めているんです」と幸。

(いやよ・・・いやいや・・・忘れられるのは~)

「そのギャグ・・・もう古くなっていたのでは・・・」

「古典の先生だから・・・流行に疎いなじゃ・・・」

(きーーーーーーーーっ)

暴走する怨念が旋風を生み・・・天井を吹き飛ばす・・・。

円は亮二を庇って落下物を避けるが・・・幸は下敷きになってしまうのだった。

「一体・・・これは・・・」と亮二。

「救急車を呼んでください・・・」

頑強な円と違い・・・幸はか弱かったらしい・・・。

緊急入院・・・緊急手術である。

担当医は・・・何の因果か・・・幸の生き別れの父親(飯田基祐)だった。

手術は成功したが・・・円の意識は戻らない。

死神の領域で・・・怨霊浄化担当のシノザキ(野間口徹)に攻められ、意気消沈しているナベシマ。

「俺のせいで・・・彼女の命を危険に・・・」

「彼女は自分の意志でやっていたんです・・・ナベシマさんが・・・気にすることはありませんよ」

「そう?」

「僕も・・・あの人を成仏させたい・・・」

円は亮二にすべてを打ち明けた。

「信じられないだろうけど・・・先生が幽霊になってるんだ」

「いや・・・なんとなく・・・わかっていたよ・・・先生の気配がしたから」

「そうなの・・・」

「うん」

「なんとか・・・もう一度・・・説得したい」

「どうすれば・・・」

「生前の思い出の場所に行けば・・・彼女がやってくるかも・・・」

「わかった」

亮二は高校の教室に円を案内した。

「ここで・・・先生の個人授業を受けている時が最高に幸せだった」

「でも・・・教わったのは古典だけなんでしょう」

「うん・・・でも・・・先生に認められたくて・・・他の教科も頑張ったんだ」

「ふうん」

「ぼくは・・・先生みたいな先生を目指すよ」

そこへ・・・現れる美樹の幽霊。

「あなたは・・・何かしたいことがありますか」

「最後にもう一度・・・授業がしてみたい」

「では・・・僕の身体を・・・」

「待った」と現れる死神一課の皆さん。

病院の配膳係だった魔百合もマツモト(根岸拓哉)に緊急招集である。

「怨霊となったものに憑依されることが・・・どれほど危険かわかってるのか」とシノザキ。

「でも・・・僕の身体は変態を浄化しました・・・」

「こいつにやらせてやってくれ」とナベシマ。

「責任とれるのかよ」

「パンティーをかぶってもいい」

「宣伝かっ」

美樹は円に憑依した。

「平安時代中期の歌人で三十六歌仙の一人に数えられる壬生忠見は・・・天徳四年(960年)の内裏歌合に出詠し・・・「初恋」の歌を詠みました・・・。恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか・・・どんな意味かしら」

「私が恋をしているという噂が立ってしまいました・・・誰にも知られないようにひっそりと思いはじめたばかりなのに・・・です」

「正解・・・でも・・・この歌は平兼盛の忍ぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまでに負けちゃったのよね」

「平兼盛の方がストレートですよね・・・しかも・・・哀愁がある・・・壬生忠見は芸能人かっという上から目線を感じます」

「成り上がりだからねえ・・・つい・・・そうなっちゃうの」

二人は見つめ合い・・・キスを・・・。

「そこまでだ」

時間切れである。

「これで・・・成仏できますか」

「ダメみたい・・・どうしても・・・彼のことを思いきれない」

激しく黒ずむ美樹。

「すでに・・・色餓鬼化している・・・邪念がブラックホールを作り出し・・・この空間は呪われるぞ・・・呪いの教室になってしまう・・・」と死神たち。

「どうしたの・・・」と亮二。

「彼女は・・・地獄に・・・」とわかりやすいたとえで話す円。

「先生・・・俺を連れて行ってくれ・・・先生のいないこの世に未練はない・・・二人で地獄に」

亮二の純情が・・・美樹の幽かな正気に火を灯す。

「だめよ・・・あなたは・・・生きて・・・前を向いて・・・幸せになって・・・それが私の願い」

美樹は・・・魔百合の浄化グッズを奪った。

「え」

美樹は・・・自ら望んで消滅の道を進む。

美樹は人間として死に・・・魂も滅んだのだ。

「菩薩だ・・・」

「光が・・・」

「ありがたや・・・」

死神一同は・・・解脱する魂に感動するのだった。

「先生は・・・」と亮二・・・。

「旅立ったよ・・・良い先生になりなさいって・・・言ってた」

亮二は失われた恋に涙した。

円は意識不明の幸を見舞い・・・報告した。

「愛って・・・俺には・・・まだよくわからないけど・・・」

そこへ千里がやってくる。

「幸ちゃん・・・大丈夫・・・」

「え」

「あ」

霊能力者と幽霊の青春の開幕である。

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2016年5月14日 (土)

西の魔女ですがなにか(松坂桃李)嫉妬ですがなにか(岡田将生)女衒ですがなにか(柳楽優弥)妖精ですがなにか(吉岡里帆)接客ですがなにか(島崎遥香)恥部ですがなにか(安藤サクラ)

「最近の若いやつは・・・」というのはスタンダードナンバーのようなものである。

「軟弱」だったり「仁義」を知らなかったり、「なんとなくクリスタル」だったり、「ゆとり」だったりするわけである。

結局、若者というものはいつの時代でも同じようなものなのだが・・・それでも人は新しい「若者」を求める。

だって古い「若者」というのは・・・奇妙な感じがするからだ。

「ふぞろいの林檎たち」の「若者たち」もかなり古びてしまったが・・・それでも「若さの本質」はそれほど変わっていない。

男女雇用機会均等法の後も・・・男社会は相変わらずだ。

恥ずかしがり屋の若者もいれば恥知らずの若者もいる。

ブスは美人を憎むものだし、親はわが子がかわいい。

そして・・・いつの時代でも馬鹿は馬鹿なのである。

温故知新こそがエンターティメントの基本なんだな。

で、『ゆとりですがなにか・第4回』(日本テレビ201605082230~)脚本・宮藤官九郎、演出・水田伸生を見た。胸元に必殺パンチを内蔵した教育実習生・佐倉悦子(吉岡里帆)と秘密交際中の指導担当の山路一豊(松坂桃李)は悦子の大学の後輩・・・小暮静磨(北村匠海)に強襲されるのだった。

「俺の女に手を出した」とそれはもう大騒ぎなのである。

嫉妬深い静磨は悦子の携帯電話のロックを0000から入力する執念で解除し、山路との交際を探知し、予測変換によって「山路」が「童貞」であることまで割り出していたのだった。

しかし・・・バカなので「山路」を「やまみち」と読んでしまうのだった。

「おい、童貞やまみち・・・童貞のくせに・・・他人の女に手を出すなんてどういうつもりだよ」

静磨の声は・・・阿佐ヶ谷南小学校に響き渡り、4年2組の児童たちは「担任が童貞であること」を認識するのだった。

「温泉に一緒に行ったんだろう」

「友人の実家の酒蔵見学です・・・私は・・・君という存在を知りませんでしたし」

「やったのかよ」

「やったとか・・・やらないとか・・・それしかないの」と悦子。

静まりかえる職員室である。

「やったとしたら・・・」

「おととしまえをつけてもらうよ」

「とが多い」

「やましいことがないなら・・・携帯を見せろ」

(実は私は童貞なんです)

(そんなこと気にしません)

(よかった・・・きもい・・・と思われるかと)

(むしろ・・・ほこりです)

(そうですか)

(私も未経験ですから)

「はあ・・・なに・・・それ・・・俺と知りあう前から処女じゃなかったくせに」

「・・・」

「・・・ということはですね」と割り込む教頭。

「?」

「山路先生は・・・潔白ということですよね」

「・・・」

「つまり・・・あなたは・・・根も葉もない妄想で・・・神聖な教室に土足で上がりこみ・・・暴言の限りを尽くした・・・警察を呼びますか・・・それとも謝罪しますか」

「お騒がせして申し訳ありませんでした・・・」と悦子。「ほら・・・あんたも頭を下げなさい」とお姉さん的謝罪をする悦子だった・・・。

「・・・ということがありました」

すっかり仲良くなった坂間正和(岡田将生)、宮下茜(安藤サクラ)、そして道上まりぶ(柳楽優弥)に事の顛末を報告する山路である。

一同大爆笑なのであった。

小学校では「童貞」がトレンド入りし、「童貞ブーム」が沸き起こっていた。

「うちのママは童貞じゃないって」

「まだ一人前じゃないってことらしいぜ」

「童貞は映画が千円で見れるんだって」

女性保護者たちの山路を見る目が少し優しくなったようだ。

とんでもないことが暴露された悦子先生は・・・それでも教育実習を続行するのだった。

「一生に一度の教育実習なのでいい思い出にしたいんです」

「・・・」

「もう・・・最悪な感じですけど・・・」

「頑張ってください・・・応援します」

山路は悦子先生の思い出作りのために・・・保護者による授業参観の日に・・・児童による演劇発表を企画するのだ。

「秋の発表会の予行演習的なものです」

「がんばります」

演目は「オズの魔法使い」(1900年)と決まった。

配役決定の後で・・・たちまち押し寄せる保護者たちの陳情につぐ陳情。

「クレームじゃないんですよ」

「うちの子はドロシーがやりたいのに西の魔女って」

「ブリキのキコリって父親が鉄工所勤務だからですか」

「ライオンでも構わないのでライオンキングに」

「いっそ三年寝太郎に」

仲良く並んでモンスターペアレントの相手をする山路と悦子である。

童貞と非処女でも・・・お似合いのカップルなのである。

しかし・・・疲れ果てた山路はレンタルおじさん(吉田鋼太郎)を四時間予約するのだった。

「実際、子供たちにはデブもいればブスもいるんですよ」

「ああ・・・それは・・・教師としては・・・言ってはいけませんね」

「だから・・・ここで言ってるんです・・・ブスに向かってブスって言えるのはあなたの息子さんだけですよ」

「彼女のことはいいんですか」

「・・・」

「私の妻にも・・・男がいたんですよ・・・しかし・・・結婚するのは時期尚早なんてもったいぶってるから・・・寝取ってやりました」

「・・・」

「私たち火照り世代ですから」

「私を焚きつけているんですか」

「なんだってやればいいんです・・・雨の中の土下座なんて最高に火照りますよ」

一方・・・史上最悪の後輩社員・山岸ひろむ(太賀)は閉店間際の居酒屋「鳥の民・高円寺店」を急襲する。

バイトリーダーの村井(少路勇介)とバイトの中森(矢本悠馬)は「ヤマギシ」の態度の悪さに激昂するが・・・摩擦を避けたい出向店長の正和はなだめるのだった。

疲れて帰宅した正和は・・・母親の和代(中田喜子)と妹のゆとり(島崎遥香)が「就職活動のこと」で喧嘩したと兄嫁のみどり(青木さやか)から聞かされる。

妹を慰めようとした正和だったが・・・妹のゆとりは・・・まりぶのことを考えていた。

「大学のことを聞いたのに就職活動の話しかしないんだな」

「みんなそうでしょう」

「それは就職活動をしないと就職できない大学の話だろう」

ワイルドなまりぶの言葉にハートを射抜かれたゆとりなのである。

「あの人・・・なんなの」

「浪人生・・・」

「えええ」

しかし・・・ゆとりは正和の持っていたまりぶの名刺を密かに入手するのだった。

だが・・・正和は・・・「まりぶが子持ちである」というある意味、肝心な情報を妹に伝えない・・・察しが悪いからである。

ゆとりはまりぶを急襲する。

「就職したいって・・・兄貴は知ってるの」

「いいえ・・・でも就職活動のための大学では学べないことを・・・ガールズーバーでおっぱい出せば学べる気がして・・・」

「いや・・・おっぱい出したら逮捕されちゃうんで・・・」

「出さないんですか」

「友達の妹だから・・・本当は断りたいけど・・・友達じゃないし・・・かわいいから・・・いいか」

一方、「オズの魔法使い」の準備のために・・・残業する山路と悦子・・・。

衣装作りのミシンの音が響く・・・。

「私・・・あれから・・・彼と連絡とってません」

「僕も・・・君のこと・・・好きだ」

「教育実習が終わるまでは・・・彼と会わないつもりです」

「・・・」

悦子の真意を量りかね・・・指に絵具を塗る山路だった・・・。

正和からの連絡を受け・・・エリアマネージャーの茜と直属の上司・早川道郎(手塚とおる)は「ヤマギシ」を指導する。

「あんたねえ・・・会社の金使って会社の店で飲み食いするほど偉くないんだよ・・・これ・・・パワハラですかね」

「いや・・・正論だ・・・今夜にでも・・・謝罪しておけよ」

凹む「ヤマギシ」だった。

しかし・・・正和は正和で「交際をあくまで秘密にしよう」とする茜の真意がわからない。

「私は・・・職場に恋愛を持ちこみたくないの」

「まるで・・・俺と付き合っていることが・・・弱みみたいじゃないか」

「ある意味・・・恥部なのよ」

「えええ」

茜は釣りあいというものを考えているようだ。

茜としては・・・せっかくエリアマネージャーになったのに・・・出向店長と結婚して寿退社するわけにはいかないのである。

由緒正しい仕事と恋愛で揺れる女心・・・なんだな。

「ヤマギシ」は取引先の野上(でんでん)を伴って現れる。

「一人じゃ・・・気不味いって言うからさ・・・」

「昨日は申し訳ありませんでした・・・」

「いらっしゃいませ・・・」

野上は正和を労う。

「左遷されたっていうけど・・・いいじゃないか・・・俺はね・・・あんたとつきあってるんで・・・会社とじゃないからな・・・あいつのこともな・・・少しわかってきたよ・・・結局、あれだよ・・・自分を認めてもらいたいんだよ・・・ひよっこはみんなそうだろう・・・で・・・世間を舐めた真似をするんだ・・・だからね・・・舐めてやればいいんだよ・・・それからいたぶって・・・ぺしゃんこにして・・・それからまた舐めてやればいい・・・」

野上は正和に酒を勧める。

正和は飲めない酒を受ける。

野上を送りだすと豹変する「ヤマギシ」・・・。

しかし・・・席にはまりぶが着いていた。

「まったく・・・くそじじいの説教は長いわ・・・」

「おい・・・誰に断って・・・席についてんだよ」

「え」

「ここはお前の店か」

「・・・」

「客なら案内されてから席に着け」

まりぶは「ヤマギシ」に天誅をくわえた。

その頃・・・正和は酔いがまわり・・・遠赤外線で頭髪を燃焼させていた。

授業参観の日。

児童達の何人かが胃腸炎で欠席し・・・山地と悦子は代役を務める。

竜巻に巻き込まれ・・・オズの世界に飛ばされてしまうドロシー。

北の良い魔女に祝福されて・・・帰り道を捜す旅に出たドロシーは・・・脳みそのないカカシ、心のないブリキのキコリ、臆病なライオンと出会い、仲間になる。

オズの魔法使いに助けを求めたドロシーは西の悪い魔女を退治すれば願いが叶うと告げられる。

ドロシーは西の魔女の弱点である・・・水を用いて・・・勝利する。

しかし・・・ドロシーの苦難の旅はまだまだ続くのだが・・・西の魔女に扮した山路がバカ受けしたところでお開きである。

銀の靴の踵を三回合わせたら・・・家路なのである。

「悦子先生、ありがとうこざいました」

児童たちから挨拶され・・・感激する悦子先生。

「本当の先生になるために・・・大学にもどりますが・・・秋の発表会は必ず見に来ます」

「それまで山路の童貞はみんなで守るよ」

「・・・」

「この学校で・・・教育実習が出来て・・・本当に良かったと思います・・・山路先生・・・これからも御指導よろしくお願いします」

「・・・」

ボルダリングジムで密会を重ねる一豊と・・・茜・・・。

「どういう意味だと思う?」

「さあねえ・・・あんた次第なんじゃないの」

「・・・」

どうしていいのかわからず思わず泣きだす一豊だった。

そこへ・・・通りかかる正和。

「え・・・」

「やあ・・・」

「よお・・・」

「どうして・・・二人が・・・」

「あれ・・・言ってなかったっけ」

「聞いてない」

「あら・・・嫉妬してるの~」

「・・・」

「ないない・・・」

「たまたま・・・気が合うだけだよね」

「じゃなぜに・・・スポーツドリンク回し飲みを・・・」

「一本だと多いから・・・」

イケメン二人を弄ぶ・・・一部お茶の間の夢の結晶である。

もやもやする正和を母親が追撃する。

「ゆとりがおかしいんだよ」

「え」

「毎晩・・・あんたより遅く帰ってくるし・・・」

「・・・」

「家事を手伝ってるし・・・」

「・・・」

「なんか隠し事をしているんだよ」

思わず妹の携帯をチェックする正和・・・。

予測変換の結果は・・・。

(まりぶ)(大好き)・・・だった。

まりぶを尾行した正和は・・・ガールズバーで働くピンクのセーラー服姿の妹を目撃するのだった・・・。

かわいいよ、ゆとりかわいいよ・・・そして、悦子、面白いよ、悦子・・・。

怒涛の中盤戦突入である。

一豊の童貞を奪うのは・・・果たして・・・茜か・・・それとも・・・悦子か・・・はたまた・・・。

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2016年5月13日 (金)

一番大切な人を傷つけている男(竹野内豊)一番大切な人を傷つけている女(松雪泰子)よくある話です(岡本あずさ)

これは・・・ある意味・・・「アイムホーム」の再構築のような気がしてきた。

多くの人がとりあえず・・・結婚式で永遠の愛を誓う。

ところが・・・その「永遠の約束」を果たさない人もいる。

夫婦の共同作業によって・・・「愛の結晶」までこの世に生み出しながら・・・個人的な事情で契約は破棄される。

とんでもないパートナーだったと知ったから・・・心に刺さった棘が抜けないから・・・性格の不一致で・・・他にもっと素晴らしい愛があったから・・・。

夫や妻である前に人間でありたい。

人はそれを正しい選択だったと主張する。

しかし・・・もっとも大切にしなければならないものを・・・ないがしろにしていることには・・・目をつぶるのがやりきれないことなんだな。

二人が・・・どんなに素晴らしい弁護士であろうとも・・・人間としてはあまり上等とは言えない物語なのである。

はたして・・・二人は・・・その点について反省するのか・・・しないのか・・・そんなドラマをネチネチやっていて大丈夫なのか・・・とふと思う。

で、『グッドパートナー 無敵の弁護士・第4回』(テレビ朝日20160512PM9~)脚本・福田靖、演出・田村直己を見た。このドラマの馬鹿馬鹿しさは・・・弁護士が・・・弁護士バッジを外して一人の人間として「説教」を始めるところにあることは間違いないだろう。水戸黄門の印籠と違うところは・・・「実は偉い人」ではなくて・・・「ただの人に戻る」という点だ。しかも・・・主人公は・・・よくわからない理由で妻と離婚したばかりで・・・小学生の娘の心を傷つけているダメ人間なのである。お前に人を説教できる資格があるのかよ・・・というわけだが・・・なにしろ・・・口が達者なので相手は丸めこまれてしまうわけである。この嫌な感じがこれからも続いて行くかと思うと・・・不道徳な人々への一種の嫌がらせみたいな気がする。その点・・・以外はエンターティメントとしてよくまとまっていて・・・不思議な作品に仕上がっているのだな。だから・・・物凄く中途半端な気がします。

ここまで描かれている咲坂健人弁護士(竹野内豊)と夏目佳恵弁護士(松雪泰子)の離婚の理由は・・・夫が妻に良妻賢母を求めているのに対し、妻は夫に仕事に対する理解と家事の分担を求めた・・・ということになる。

まあ・・・辛いものが苦手な夫に・・・妻が嫌がらせで激辛カレーを作ったというのも一因らしい。

そんなこと・・・最初からわかっているのになぜ結婚したのか・・・という話だが・・・まあ・・・大抵の夫婦はそうして結婚するんだものな・・・。

結局・・・辛抱とか・・・妥協の話なのである。

そういう二人が交渉事のエキスパートという・・・実に不安定な展開なのだ。

元妻は・・・ビッグベン(トイレに潜む黴菌)・横田栄司が演じる顧問先の社員・岸田英樹に懸想してたりして浮気症な一面を見せ・・・元・夫はそれに嫉妬するダメ男ぶりも見せている。

「HERO」で「変人だが真っ当」という「素晴らしいヒーロー像」を描いた脚本家だが・・・ちょっと凝りすぎた気がしないでもない。

なにしろ・・・ちっとも爽やかな気分にならないのである。

だって・・・中盤で・・・小学生の女の子がトイレで泣いているんだぜ・・・そういう境遇にわが子を追い込んでいる人間が何言ったってちっとも心に響かないよ・・・。

まあ・・・それが狙いだと言われれば・・・そうですかという他ないけどね。

今回は・・・会社経営をめぐる骨肉の争い・・・。「リスクの神様」でも同様の展開があり・・・多くの人間があの家具屋の父と娘の対峙を連想する。しかし・・・家業の継承という意味ではどこにでもある問題である。

「怪物くん」や「妖怪人間ベム」でおなじみの芸人あがりの脚本家による朝ドラマでも「卵焼きを甘口にするかどうか」で母と息子が揉めているくらいだ。

「甘口」も作ればいいじゃないか・・・とは言ってはいけないらしい・・・。

神宮寺一彦(國村隼)が先代の鳥飼健三(竜雷太)と昵懇の中であるビジネスシューズメーカーの「鳥飼シューズ」・・・。

神宮寺法律事務所は法律顧問を務めているのだが・・・息子で現社長の鳥飼孝太郎(矢柴俊博)と父親の健三会長の間で・・・経営方針をめぐる摩擦が発生。

咲坂健人(竹野内 豊)は孝太郎社長から・・・健三会長の解任について相談を受ける。

飲食業や結婚式事業など経営の多角化を目指す社長と・・・本業一筋の会長は妥協の余地がない状況だった。

神宮寺から穏便に事態を収拾させろと命じられた咲坂は折衷案を出すが・・・「結局、会長の味方か・・・」と詰られ・・・ついに顧問契約を解除させられてしまうのだった。

若い経営者に共感する新人弁護士・熱海(賀来賢人)は全く役に立たないのだった。

「解任問題で・・・俺が解任されるとは・・・」

苦しい立場に立たされる咲坂である。

一方で・・・夏目佳恵はアソシエイトの赤星元(山崎育三郎)が尿管結石からヘルニアを併発して入院・・・。仕方なくパラリーガルの九十九治(大倉孝二)に業務をサポートさせる。

だが・・・弁護士資格のない九十九に任せることのできる業務は限定されており、交際中の岸田とのデートもおあずけで休日出勤である。

おそらく・・・すべての事情を察した上で・・・特別な日である・・・つまり「母の日」だよな・・・咲坂と夏目の娘であるみずき(松風理咲)は父親に職場を見せてほしいとねだる。

元夫婦は・・・娘のために・・・ボーリング場で家族三人の憩いの一時を過ごすのである。

・・・休日出勤じゃなかったのかよっ。

元夫婦は・・・よき父親、よき母親を演じるが・・・そのわざとらしさに娘はトイレで号泣するのだった。

設定上・・・父と娘の付属物である家庭教師の島谷涼子(宮﨑香蓮)は・・・父娘不在の家で・・・存在意義を問われる。

「どうしても・・・年上男性好きの設定じゃないとダメですか」なのである。

入院中の赤星を見舞う・・・パラリーガル・茂木さとみにつきまとう熱海。

赤星と熱海は・・・さとみを狙う三角関係に発展しているらしい。

割り当て時間がないので・・・あまり発展しないのだった。

婚活に忙しい猫田弁護士(杉本哲太)のアソシエイトである城ノ内弁護士(馬場園梓)はさとみに含むところがあるらしいが・・・そもそも土俵が違いすぎるわけである。

赤星が城ノ内と熱海がさとみと事務所内恋愛する手もあるが・・・どうでもいい気がしないわけでもない。

HEROで言う松たか子のポジションにさとみを抜擢すれば・・・赤星も熱海も玉砕できるわけだが・・・。

ねえ・・・いろいろと不完全燃焼しているでしょう・・・。

結局・・・父と息子が感情的にいがみ合っているだけと判断した・・・咲坂は・・・記者会見のリハーサルという名のお説教大会を開始する。

「なんだ・・・俺を怒らせたいのか」

「結局、会長は・・・社長と腹を割って話さなかった・・・それが問題なんですよ」

「弁護士に何がわかる・・・」

「では一人の人間として話しましょう・・・こんな不毛な争いをしている会社の靴を・・・誰が愛用しようと思うでしょうか」

「ま・・・その通りだな」

「喧嘩なんかしている場合じゃないんですよ」

「しかし・・・息子が何と言うか」

「お父さん・・・僕も同感です・・・」

咲坂は友人の弁護士を社長に接近させ・・・お膳立てを整えていたのだった。

和解成立である。

父と子の仲直りを見て・・・感じるところのある夏目弁護士・・・。

「私も・・・娘に哀しい思いをさせているのかしら・・・」

「何を今さら・・・」と咲坂弁護士。

「原因はあなたでしょう・・・」

「カレーを辛くしたのは・・・そっちじゃないか・・・」

絶対に自分の非を認めない弁護士同士だった。

不毛なのである。

そして・・・赤星は退院し・・・事務所に復帰した。

「やはり・・・パラリーガルには限界があったよ・・・」

九十九だけは・・・赤星の存在意義を認めたのだった。

いなくなってはじめてわかる・・・ウザいなりの存在感なのか。

もう少し・・・各自のキャラクターが生きてくると・・・面白くなりそうなのだが・・・しかし・・・咲坂が・・・とんでもないヒーローでないだけに・・・凡人たちとの落差がないからな・・・。

今の処・・・連夜の登場である杉本哲太の存在感だけが光っているのだった。

最後は咲坂が土下座して・・・夏目に復縁を迫るという結末しか見えてこないんだよね。

唐突に「スキャンダル」を狙うハゲタカ記者らしい男(村上幸平)が登場していたが・・・「仮面ライダー555」の仮面ライダーカイザ・草加雅人であり・・・「キューティーハニー THE LIVE」の中条有次である。

久しぶりだなあ・・・。

そういう特殊なゲストも・・・完全には活かされていないドラマなのである。

元夫婦のいがみあいに辟易して病んだ赤星という設定すら・・・処理されていないので・・・脚本の過大な要求に演出が追い付いていないようにも見える今日この頃である。

セットからして・・・アレだったのかもしれない。

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Gpoo4ごっこガーデン。すべての人間にいる母の日セット。

まこお互いを意識しすぎて・・・どうでもいいことが我慢できなくなってしまう・・・大人の世界は複雑でしゅね~。今年の五月は・・・火星が地球に急接近・・・南東の空のさそり座あたりににいます。赤い火星と赤いアンタレスが並んでいるので目立ちましゅね~。すぐそばに土星もいて・・・三角形を作っています。赤星じゃなくて・・・赤い星はお母さんと娘・・・だから・・・お父さんは土星のようにど~んと構えてもらいたいものデス!・・・仲良きことは美しいと昔の人も言いました・・・

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2016年5月12日 (木)

はあ、はあ・・・ゴールじゃないのか(大野智)はあ、はあ・・・折り返し地点みたいです(波瑠)勝利の栄光を君に!(北村一輝)

休み時間の終わりにクラスで一番人気の女の子に告白して・・・答えを待つ一時間・・・。

授業なんてうわの空だ・・・。

一体・・・彼女はなんて答えるのだろう。

その答えは・・・天国と地獄の中間に漂っている。

これは・・・たまらんな・・・。

しかも・・・まだ・・・一学期は長いんだぜ。

ああ・・・本当に恋してしまったら・・・息の音が止まるまで・・・ずっと心の休まることはないんだよな。

そういう恋を・・・私は知らないがな。

で、『世界一難しい恋・第5回』(日本テレビ20160511PM10~)脚本・金子茂樹、演出・中島悟を見た。一生を水槽の中で過ごすメダカたちが次々と孵化する夜。残酷で美しい光景に心を奪われた柴山美咲(波瑠)に「お前が好きだ」と初心な心をさらけ出す鮫島零治(大野智)に・・・驚いた美咲だったが・・・零治はもっと驚いていた。突然の告白に戸惑う美咲の答えは・・・。

「少し・・・考えさせてください」

美咲が気持ちを決めるまでの・・・零治の長い待ち時間が始るのだった。

深夜の社長室に緊急招集される秘書の村沖舞子(小池栄子)と運転手の石神剋則(杉本哲太)である。

「石神・・・今まで黙っていたが・・・お前の運転が俺は好きだ」

「ありがとうございます」

「そうだろう・・・それが・・・普通の反応だろう・・・俺が好きだと言ったら・・・ありがとうだろう」

事態を洞察する秘書。

「まさか・・・社長・・・彼女に好きだと言えたのですか」

「言えたさ」

「彼女はなんと・・・」

「考えさせてくれって・・・」

「社長からいきなり告白された社員としては極めて普通の反応です」

「そうなのか・・・でも・・・断るんだろう」

「そうと決まったわけではありません」

「そうなのか・・・」

「もてる男になるためには・・・女を待つことも大切なことです」

「・・・」

零治は・・・待つことに慣れていなかった。

石神は図書館で美咲を見かけた。

社長のために「恋愛についての書籍」を読むようになった石神。

恋愛小説のコーナーに佇む石神に気付いた美咲は・・・一冊の本を推薦する。

「神様のボート/江國香織」である。

「それはどんな話だ」

「不倫相手の子供を出産した女が・・・子供と一緒に子供の父親を待ち続けるという話です」

「その女・・・気は確かなのか」

「まあ・・・少し・・・おかしい人です」

「完全におかしいだろうっ」

「社長・・・」

「いや・・・不倫してもおかしくない人はいる」

秘書は不倫経験者だった。

いつもと変わらず仕事を処理する美咲に苛立つ零治。

「なんなんだ・・・あいつは・・・少しは・・・俺のこと考えているのか」

「ビジネスとプライベートは切り離して考えるべきです」

「しかし・・・俺を待たせておいて・・・俺に盾突いたりするんだぞ」

「そういう・・・物おじしない彼女に魅かれたのでしょう」

「俺は・・・あんな真面目な学級委員は好きじゃない」

「学級委員・・・」

「俺は・・・物静かな図書委員が好きなんだ」

「しかし・・・彼女にはそういう一面もあります」

「図書館にいる女はすべて図書委員かよ」

「なぜ・・・学級委員とか・・・図書委員とか」

「お二人に・・・お話があります」

「なんだ・・・」

「私・・・結婚することになりました・・・」

「え」

「お二人より・・・先に結婚することが心苦しく・・・」

「お前が一番年上だ・・・遠慮することはない・・・新しい運転手を募集しなければならんな」

「そうですね」

「社長・・・」

エレベーターに乗り合わせる美咲と零治。

「社長・・・例の件ですが・・・もう少し・・・お時間いただけますか・・・」

「構わないさ・・・ゆっくり考えてくれ」

美咲は堀まひろ(清水富美加)を酒席に誘う。

「あなたに謝らなければいけないと思って・・・」

「社長に告白されたんですね」

「え」

「私・・・割とそういうのに敏感なんです・・・恋する空気を感じるタイプです」

「あなたの友達の話を聞いて・・・気持ち悪いなんて言ってしまって」

「まあ・・・実際に自分のこととなると・・・びっくりぽんですよね」

「はい」

「で・・・どうするんです」

「迷っています」

お茶の間の人々は・・・零治に叫ぶ。

「彼女、迷ってるってよ」

銭湯で牛乳の味が分からなくなるほど考え込む美咲。

ついに入浴サービスである。

「結構、待たせたよね」

一方、恋愛マスターである和田英雄(北村一輝)は秘書にアプローチを開始する。

「例のパーティー、君と同伴したいんだが・・・」

「他に相応しい方がいると思います」

「彼は・・・また一人か」

「いいえ・・・まだ分かりません」

「ほう・・・」

恋愛マスターに召喚される零治だった。

「待たされているそうだね・・・」

「・・・」

「君は・・・苛立っている・・・」

「なぜ・・・わかるのですか」

「それは・・・為すべきことがないと思っているからだ」

「その通りです」

「しかし・・・それは大いなる誤りだ」

「え」

「いいか・・・彼女は今・・・迷っている・・・そこで君が彼女をガッカリさせるようなことをしたら・・・どうなる?」

「嫌われます」

「では・・・逆に・・・ブラジルの五輪で金メダルをとったら・・・」

「それは好きになってもらえるんじゃ・・・でも・・・今から五輪は・・・」

「金メダルをとる必要はない・・・君には素敵なところがたくさんあるだろう・・・それをちょっとアピールすればいい」

「マスター!」

零治は・・・石神の結婚を祝うパーティーを主催した。

石神にサプライズでプレゼントをして・・・従業員思いの名社長をアピールする計画である。

しかし・・・思いを寄せる白浜吾郎(丸山智己)から・・・軽薄男の代名詞である三浦家康(小瀧望) とお似合いだと言われて・・・泥酔するまひろを介抱する美咲は・・・せっかくのサプライズにあまり驚かないのだった・・・。

「くそ・・・せっかく・・・俺が・・・いいところ見せているのに・・・具合の悪くなったクラスメートを保健室に連れて行くなんて・・・やっばりあいつは学級委員だ」

「そのたとえが・・・もう一つわかりません」

酔いを醒ます美咲とまひろ・・・。

「すみません・・・」

「そういう夜もあるわ・・・」

「私は・・・パンティーをくれと言われたらかぶられてもかまわない心境なのに」

「すごい枠でオンエアされてたわね」

「美咲さんはどうするんですか」

「まだ・・・悩んでいる」

「いいじゃないですか・・・美咲さんの夢はホテルを作ることでしょう・・・二人で作っちゃえばいいじゃないですか・・・すごいチャンスキター!でいいじゃないですか」

「私は・・・夢を誰かに手伝ってもらおうとは思わない・・・一緒に歩いていきたいけど・・・手を引かれるのは・・・嫌なの」

「考えすぎですよ・・・相手が社長だと思うからですよ」

「・・・」

そして・・・美咲は決断する。

「社長・・・今夜はジムに行かれますか」

「七時までトレーニングするつもりだ」

「例の件・・・お返事したいと思いますが・・・よろしいでしょうか」

「構わないさ」

美咲の表情から漂う・・・「お断りします」の空気・・・。

しかし・・・音無部長代理(三宅弘城)は軽い障害で運命のチャンネルチェンジを誘うのだった。

「フランス人との打合せなんで・・・お願いできるかな」

六時までには帰社できる予定だったが・・・予想外に打合せに手間取った美咲は出先で午後七時を迎えてしまう。

七時を過ぎても現れない美咲に・・・失望した零治は駐車場に・・・。

美咲は社長室に電話をするが・・・無人である。

「彼女は来なかった・・・つまり・・・断るってことだ」

「なんらかの事情があるかもしれません」

「社長の電話番号も知らないわけですし」

「もういい・・・」

「もう少し・・・待つべきです」

「もう・・・待ちくたびれたよ・・・」

「・・・」

しかし・・・零治はジムに戻った。

見果てぬゴールに向かって走り出す零治。

そして・・・美咲もまた・・・街を走っていた。

一時間が夢のように過ぎた。

「社長・・・もう・・・充分です」

秘書と運転手は走り続ける零治を気遣った。

「俺は・・・少し・・・気持ちよくなってきたぞ」

「ランナーズ・ハイですか」

しかし・・・そこに美咲が到着する。

例によって身を隠す二人・・・。

「はあはあ・・・お待たせしてすみませんでした」

「はあはあ・・・俺も今・・・来たところだ・・・」

美咲はマシンの走行距離からそれが「嘘」だと理解する。

「はあはあ・・・私・・・本当はお断りするつもりでした・・・」

「はあはあ・・・」

「はあはあ・・・でも・・・何故か・・・走り出して・・・」

「はあはあ・・・」

「はあはあ・・・なんで・・・私は走ってるのかと・・・」

「はあはあ・・・」

「はあはあ・・・私・・・走りながら・・・思ったんです」

「はあはあ・・・」

「社長と・・・最初に会ってから・・・今までの・・・ことを・・・」

「はあはあ・・・」

「そして・・・気がつきました・・・私も・・・社長と同じ気持ちです」

「はあはあ・・・それは・・・私と交際していただけるという事でしょうか?」

「はい・・・お待たせしてすみませんでした」

「いや・・・何もかも・・・あっという間だったよ」

見つめ合う恋する二人・・・。

零治を好きな美咲と・・・美咲を好きな零治の恋の物語は・・・今、始ったらしい。

ロマンチックだなあ・・・。最高の脚本じゃないか・・・。

美しい夜景の中を走る社長と秘書と運転手を乗せた車。

「俺は・・・本当は・・・学級委員が好きだったんだ」

もちろん・・・二人は知っていた。

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2016年5月11日 (水)

努力できる才能(黒木華)運命という誘惑(オダギリジョー)自分の意志で何かを選択しているという幻想(永山絢斗)

「善」というフィクションは「悪」というフィクションと同じように厄介なものだ。

自分たちが善を行ってると信じて地下鉄にサリンを散布する馬鹿もいるわけである。

ギャンブルに費やす時間にアルバイトをすれば収入は・・・多くの場合、増収となるだろう。

しかし・・・七億円当たれば・・・ほとんどの人はもう働く気は起きなくなる。

それは・・・あくまで確率の問題である。

宝くじを買えば必ず当たり、健康で、百歳まで生きる人はいるだろうし・・・何もいいことがなかったまま早世する人もいる。

早死にすれば・・・楽しみも少ない代わりに苦しみも少ないというのは一種の慰めに過ぎない。

善行を積めば幸運が舞い込むというのは基本的に嘘である。

津波や地震に被災した人が全員悪人ではないのと同じようにだ。

しかし・・・そう信じることはできる。

信じるということは・・・つまり・・・少し、頭がおかしいことなのである。

で、『重版出来!・第5回』(TBSテレビ20160510PM10~)原作・松田奈緒子、脚本・野木亜紀子、演出・土井裕泰を見た。黒沢心(黒木華)は週刊コミック誌「バイブス」の編集者として・・・二人の漫画家の卵を温め始める。一人は画力が抜群の東江絹(高月彩良)、一人は絵は下手だが独特のセンスを持つ中田伯(永山絢斗)・・・。編集者として「新人賞」に応募する原稿について二人にダメ出しをする心だったが・・・東江の画力に目をつけた先輩編集者の安井(安田顕)は・ベストセラーの小説「ガールの法則/根本明吾」のコミカライズ(漫画化)のために東江を強奪する。育成途中のタマゴを奪われ・・・失恋に似た思いを感じる心だった。しかし・・・すべての編集者に見放された中田伯は・・・心一筋を貫くのだった。なにしろ・・・心しか相手にしてくれないので・・・。

柔道的精神で・・・上昇志向の強い心は上級者と認めた編集者・五百旗頭(オダギリジョー)のテクニックを盗むために徹底的な観察を開始する。

常に心の視線を感じる五百旗頭はノイローゼ寸前まで追い詰められた・・・おいっ。

一方・・・熱烈な阪神タイガースのファンである「バイブス」の編集長・和田(松重豊)は贔屓の阪神の敗北が精神的失調を引き起こすという自己管理能力に問題のある上司だった。・・・おいおいっ。

小料理屋「重版」で女将相手に五百旗頭の日常を語る心。

「すごく・・・小心者なんですよ」

「たとえば・・・」

「だれもいない交差点で赤信号で止まるんです」

「人間としては正しいでしょう」

「でもフランス人なら渡ると思います」

「おいおいおい」

五百旗頭は国際問題化を惧れる。

「僕は・・・小心者ではない・・・ただある人にあやかっている」

「つまり・・・ルーティーンってことですか」

「まあ・・・そうだな」

「誰に追従しているのですか・・・」

「社長だ」

「しゃ・・・社長?」

興都館社長・久慈勝(高田純次)の半生

戦後のどさくさの中で生まれた久慈は炭鉱夫だった父を幼くして病気で失った。学業の成績は優秀で教師からは進学を勧められたが、女手一つで久慈を育てた母親は学費の点で拒否した上に・・・久慈の中学の卒業式の日に・・・男と逐電した。

中卒の炭鉱夫となった久慈の気持ちは荒んだ。

そんなある日・・・川辺で釣りをする天使(火野正平)と出会う久慈。

「命が惜しかったら金を出しな」

「時代劇かよ」

「・・・」

「いいか・・・浮気をすれば浮名が流れる」

「なんだって?」

「それでひどい男だと思われるタイプと・・・かわいい奴と思われるタイプがいる」

「ですか?」

「あんたは・・・人を殺して刑務所に行くタイプと・・・殺し屋として成功するタイプ・・・どっちだと思う・・・?」

「・・・」

天使の問いに答えを見つけられなかった久慈は・・・自分の夢を求めて上京するのだった。

高度成長時代の東京・・・職に困ることのない日々。

飯場で学生アルバイトが読み終わった詩集をくれた。

「宮澤賢治は・・・岩手県を代表する詩人だが・・・生前に得た原稿料は五円だけだったと言うね」

「?」

「死んでからもてはやされてもつまらんね」

久慈は死者の言葉に酔った。

「雨ニモ・・・」

久慈はそういう人になりたいと思った。

安保の騒乱のドサクサにまぎれて出版社にもぐりこんだ久慈。

社会全体が荒廃する中で・・・久慈も酒と女とギャンブルに溺れる。

一攫千金を狙った久慈は・・・自宅が火事になり・・・生まれたばかりの子供と妻の安否が不明となった。

「真面目になるので・・・妻子だけはお救いください」

久慈は・・・天使に祈った。

「久慈さんの妻子は無事だった・・・それ以来・・・久慈さんはずっと真面目に生きている・・・するとたまたま担当した本がベストセラーになり・・・気がつけば社長になっていた・・・しかし・・・久慈さんが真面目をやめたら・・・奥さんと子供は・・・」

「ホラーですね」

「まあ・・・一種の強迫観念だよな・・・でも・・・そういう生き方で・・・幸せになれるなら・・・真似してみたくなるじゃないか」

「日本人がフランス人になる必要はないんですよね」

「おいおいおい」

宮澤賢治の「詩」によって「人間性」を獲得した久慈は・・・「出版」に「天意」を感じていた。

本もまた「生き物」なのである。

「売れる本」は長生きするし・・・「売れない本」は短命である。

「重版出来」は云わば・・・「本」の成人式なのである。

「売れない本はどうなるのですか・・・」

「売れることを信じて・・・しばらくは倉庫に眠る・・・しかし、本は次々に出産されるからね・・・倉庫代も馬鹿にならないし・・・やがて・・・天に召され・・・新しい本の材料として生まれ変わったり・・・トイレットペーパーになったりする」

「・・・」

在庫調整の日・・・久慈社長とともに・・・古紙再生の儀式に立ち会う心・・・。

そこでは・・・売れずに・・・読者とめぐりあわなかった本たちが断末魔の悲鳴をあげるのだった。

「これ・・・感受性の豊かな人は・・・トラウマになるんじゃ・・・」

「心の傷を背負って生きて行く方が・・・ロマンチックなんですよ」

社長の言葉に・・・心は「心の不在」を感じるのだった。

五百旗頭が担当する大塚シュート(中川大志)の初めての単行本の出版業務に参加する心。

五百旗頭は・・・人気デザイナー野呂(ヒャダイン)に作品を見せ、スケジュールを獲得する。

「つまり・・・割り込みですね」

「自分の担当作家のために・・・特別な配慮をする・・・天罰が当たらないように・・・プライベートでは絶対に割りこまない」

「結局・・・みんな・・・縁起担ぎなんですね」

「だって・・・何が売れるかなんて・・・本当は誰にもわからないから・・・」

しかし・・・野呂は絶好調の波にのり・・・心にもわかる傑作デザインを完成する。

「売れるデザインの秘訣はなんですか・・・」

「自分のベストを尽くすことです・・・」

「それが一番難しいんですよね」

「ええ・・・でも一生懸命やって・・・それでだめなら・・・あきらめがつくでしょう」

「はい」

柔道家であった心には分かる。

努力が実るかどうかは別で・・・努力しなければ何も始まらないのである。

相手が嫌な顔をしてもダメ出しを続け・・・ダメを出されてもあきらめない。

心と中田は根性の二人三脚でついに・・・「原稿」を完成させる。

編集会議で・・・「新人賞」の受賞作が選考される。

中田の作品は・・・賛否が分かれる。

「この絵で受賞したら・・・バイブスの値打ちが下がる」

「こんな絵の受賞作見たことない」

「しかし・・・面白いです・・・」と心は粘る。

「前代未聞の受賞作か・・・いいじゃないか・・・雑誌なんて・・・見たことないものを読者に見せるのが存在意義だ」と編集長の鶴の一声である。

「えええ」

こうして・・・中田は新人賞を受賞したのだった。

「ええええええ」と驚く・・・大作家・三蔵山(小日向文世)の万年アシスタント・沼田(ムロツヨシ)・・・二十年間デビューできない男である。

一方・・・安井の指示に従って・・・コミカライズの作業を進める東江・・・。

「いま・・・どのくらい進んでいる?」

「今・・・七話のペン入れ中です」

「そうか・・・悪いが・・・全部ボツだ・・・」

「え」

はたして・・・安井の真意は・・・。

連載マンガの引きのようにつづくなのである。

天真爛漫に見えて・・・ある意味ドス黒い心が・・・垣間見える今日この頃です。

挫折した漫画家はきっと・・・心が痛くてテレビの前に居られないのではないかと妄想する作品なんだな。

東洋では禍福は糾える縄の如しとも言うが・・・西洋では幸運に恵まれたものは生涯幸福、悪運に呪われたものは生涯不運という考え方もある。

運がいいとか悪いとか・・・凡庸な人々は・・・どちらかを選びますね。

誰かが鼻くそをほじりながら書いている朝の占いに一喜一憂しますね。

おいおいおいおいおいおい。

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2016年5月10日 (火)

俺にまかせろ(福山雅治)終わらない半減期(藤原さくら)子供を捨てる女の血が流れている私(夏帆)再生回数どこまでも(菅田将暉)

「終わらない歌/ザ・ブルーハーツ」は1987年のアルバム「THE BLUE HEARTS」の収録曲である。

もう・・・29年も前の歌なんだぜ。

それでも2011年からCMソングになっているので・・・数年前の高校生が学園祭で演奏していてもおかしくはない。

幻想としては・・・高校生は永遠にブルーハーツにはまるものだという考え方もあるのだ。

ちなみにヒロインの最初の愛唱曲である「500マイル」(日本語詞 ・ 忌野清志郎)は1991年のアルバム「日本の人」の収録曲である。

どちらも名曲だが・・・二十年以上の歳月は・・・知る人ぞ知る世界を構築するものだ。

どちらも「スタンダード」と言っていいんじゃないか。

それは専門度によるからなあ・・・。

そういうものが・・・インパクトを持つものかどうか・・・それは神のみぞ知るのだった。

ドラマの中の「動画」は素晴らしいインターネットの世界に「【公式】500マイル/佐野さくら 」としてアップされている。

オンエア終了から三時間ほどの時点で視聴回数は52,452であった。

で、『ラヴソング・第5回』(フジテレビ20160509PM9~)脚本・神森万里江、演出・平野眞を見た。脚本家の変更が予定通りのリレーなのか・・・なんらかのアクシデントによるものなのかは妄想するしかないが・・・新人からほぼ新人へのリレーであり・・・初々しさはそれほど変わっていないようだ。まあ・・・あらゆる芸術作品はチャレンジによって成立する・・・という考え方では・・・これはこれでいいのかもしれない。まあ・・・芸術家というものはできれば最初から最後までやりたいと思うものだと思いたいけどね。とくに処女作ならなおさらね。

天野空一(菅田将暉)は同じ施設で育った佐野さくら(藤原さくら)を特別な存在として考えている。幼馴染であり、仲間であり・・・そして生涯の伴侶としたいと・・・。

しかし、さくらの心には神代広平(福山雅治)の存在が大きくなっていた。

親から充分な愛を与えられずに育ったものたちの鬱屈。

空一は分かりあえるのは自分たちだけだと感じている。

さくらも・・・そう思わないわけでもない・・・だが・・・さくらが恋をしたのは・・・広平なのである。

広平は優しく微笑んでくれる。

それは・・・さくらの心に澱む・・・失われた何かを刺激する。

空一はさくらの唇を無理矢理奪うが・・・さくらは空一の欲求を拒絶した。

「ごめん・・・」

「・・・」

「忘れてくれ・・・そんで・・・友達のままでいてくれ」

「・・・」

「俺・・・応援する・・・さくらの歌を・・・応援するから」

「・・・」

「だって・・・歌いたいんじゃろう・・・」

広平の心は揺れていた。

広平の心に燻り続ける「音楽」の炎。

「歌姫」であるさくらと出会い・・・・ただ見守ろうと思った。

しかし・・・さくらのチャンスはたやすく摘み取られた。

広平に「謎の宍戸春乃(新山詩織)事件」の関係者であるうさんくさい音楽制作会社の桑野喜和子(りりィ)は呪いの言葉を投げつける。

「あの子には運がなかった・・・それだけの話さ」

桑野の無慈悲な言葉が・・・結局・・・広平のハートに火をつけたらしい。

広平は昔の音楽仲間であるレコード会社「トップレコード」の弦巻竜介(大谷亮平)を尋ね・・・「さくらのライブ音源」を託すのだった。

「僕は・・・現場にはノータッチなんですよ」

「ただ・・・お前の感想が聞きたいだけだ」

「本当に・・・聞くだけですよ」

広平には分かっていた。

「さくらの声」を聞いたものが・・・それだけですむはずがないことを・・・。

世の中は不公平なものだ。

恵まれた家庭に育ち・・・何不自由なく暮らすものもいる。

そして・・・望んでも手に入らない生まれつきの特別な才能を持ったものもいるのだ。

「特別な才能」を売るビジネスをするものは・・・それを見逃すことはできないのである。

もちろん・・・桑野のように見切りをつけるものもいる。

だが・・・そうでないものもいるのである。

広平はすでに・・・さくらの才能から目を離すことができない。

「知り合いの・・・レコード会社の人間に・・・君の歌を渡してきた」

「・・・」

広平は・・・無造作にさくらの指先に触れる。

「ギターだこが・・・あるね・・・練習している証拠だ」

「ひひひ・・・一人でも・・・歌えるように・・・」

「また・・・ライブをやってみないか」

「・・・ままままだ無理・・・」

「大丈夫・・・俺がギターを教える・・・そして・・・一緒にステージに出る」

「・・・」

「もう一度・・・一緒にやろう・・・」

美しいカウンセラーと「もぐら」との会話に・・・その他大勢の女子社員たちは興味津々である。

「先生と・・・何を話していたの・・・」

「カカカカカウンセリング・・・」

「ああ・・・どどどもりのちちちち治療のはははは話ね」

女たちは意地悪な顔を隠して揶揄する。

さくらは・・・嘘をついた。

そして・・・少しだけ・・・同僚たちを見下した。

空一は広平をさくらの部屋に呼び出した。

「さくらを売りだすために・・・動画を作って・・・アップする」

「なるほど・・・」

「先生は・・・ギターを弾いてくれ・・・」

「わかった・・・」

さくらは・・・女の子の部屋でエア・ギターをつま弾き「500マイル」を歌う。

渡辺涼子(山口紗弥加)の協力で・・・「さくらのチラシ」を備品盗用でコピーする空一。

またもや・・・さくらの足を引っ張る犯罪行為だが・・・空一にとって・・・この世のすべては・・・奪えるものなら奪っていいものなのである。

それを見逃すかどうかは・・・神の匙加減に過ぎない。

空一はつぐないをしなければならない。

涼子は・・・空一の女であるさくらを冷たい視線で見つめる。

ライブハウス「S」でギターのレッスンに励むさくらと広平。

「君はどんな歌が歌いたい・・・」

広平の問いに・・・さくらは答えることができない。

一生懸命にチラシを配布する空一。

さくらは・・・空一とともに・・・動画を見た初めてのファンに遭遇する。

「とても素敵でした」

見ず知らずの人間からの賞賛に・・・さくらは眩暈を感じる。

吃音症の治療中に・・・さくらは宍戸夏希(水野美紀)に心中を吐露する。

「みみみ・・・みんなが・・・わわわわたしなんかに・・・ききき期待して」

「・・・まあ」

「ににに逃げ出したくなる」

「あらあら・・・」

「でででも・・・ぜぜぜ絶対に・・・ににに逃げちゃいけないって・・・わわわ解ってる」

「何が・・・一番問題なのかしら」

「ううう歌いたい歌・・・」

「・・・」

「せせせ先生に聞かれたけど・・・こここ答えられなかった」

夏希は・・・広平の女であるさくらを冷たい視線で見つめる。

広平がカウンセラーとして勤務する病院の入院患者に湯浅志津子(由紀さおり)は病室に現れた別の医師に問う。

「いつもの・・・先生は・・・」

「今日は欠勤です」

「女・・・ね」

牝犬に特化した認知症患者ほど不気味なものはない。

野村健太(駿河太郎)との結婚の準備に追われる中村真美(夏帆)は漠然とした不安を感じていた。

「お義母さん・・・私のことを嫌ってるんじゃないかしら」

「そんなことはないよ・・・ただ・・・お節介なだけだよ・・・」

「・・・ごめんなさい」

真実には真似るべき・・・親はいない。

真実には親の記憶がない。

妊娠している真実だが・・・母親というものがどういうものなのか・・・全くわからないのである。

結婚のために・・・真実がキャバクラ嬢を引退する日がやってきた。

真実は・・・さくらと・・・店の人々に贈る別離の手作りのクッキーをパッケージする。

「みみみみんな・・・よよよ喜んでくれるかのう・・・」

「さあ・・・どうかしら」

「・・・」

「私・・・こわいの・・・店をやめて・・・自分の居場所がなくなっちゃうことが」

「でででも・・・ののの野村さんがいるじゃない」

「わからん・・・いつか・・・私の親のように・・・あの人や・・・お腹の子を裏切るかもしれん」

「ううう生みたいって言ってたろう・・・」

「生みたいよ・・・でも・・・こわい・・・逃げ出したくなるわ」

「・・・」

夏希は広平を呼び出した。

「さくらちゃんに会ったよ・・・いろいろ・・・おしつけてるみたいね」

「ギターを教えているだけさ」

「まさかと思うけど・・・さくらちゃんに特別な感情を抱いてるんじゃないでしょうね」

「あの子が・・・前へ進むために・・・手を貸したいと思っている」

「まさか・・・空一くんとはりあってる・・・とか」

「・・・昔の自分と・・・はりあっているのかもな・・・」

「・・・」

夏希は揺れる。

妹として・・・神聖な姉を冒涜される惧れに・・・。

自分ではなく・・・さくらを選ぶ広平の情熱の行方に・・・。

広平は部屋に戻り・・・さくらの動画を見る。

その瞳に浮かぶ情念の正体は・・・秘密である。

そこへ・・・さくら本人が急襲する。

「う歌いたい歌・・・わわかった・・・」

「そうか・・・じゃあ・・・明日」

「い今じゃなきゃ・・・だだめなんじゃ・・・」

「しかし・・・明日・・・早いんだよ」

さくらは部屋に入ろうとするが・・・阻止する広平。

つまり・・・部屋にあげたら・・・さくらに手を出す可能性があることを・・・広平は自覚しているのだった。

二人は・・・夜の公園で・・・レッスンを開始した。

真実の最後の勤務は終わった。

キャバクラ嬢ラムの引退・・・。

ラムの寿退社を・・・同僚たちはあまり祝福する気はないらしい。

だって・・・うらやましくてまぶしくて・・・どうしていいのかわからないのだ。

真実はそれを察し・・・置手紙を残して業界を去る。

夜の街を抜け家路につく真実の心細い足取り・・・。

「あら・・・帰ってたの」

「マミーにううう歌う歌をれれれれ練習してた」

「私に歌ってくれるの」

「でも・・・間に合わんかった・・・」

「いいじゃない・・・歌ってよ・・・」

「だめじゃ・・・サプライズにならん」

「いいから・・・歌って・・・今・・・歌って」

「マミー・・・」

自分にとって・・・実質上の母親である真実の動揺に気付くさくら・・・。

さくらは・・・未完成の「終わらない歌」を披露する。

「世の中に冷たくされて一人ボッチで泣いた夜・・・もうダメだと思う事は今まで何度でもあった・・・」

真実の中で蘇る高校時代の情景。

真実の初恋の少年は・・・学園祭で・・・その歌を演奏していたのだ。

あれは・・・高校三年生・・・施設にいた最後の季節・・・。

「へたくそ・・・」

「だから・・・まだ練習中なんじゃ・・・」

真実はさくらを抱きしめた。

「ありがとうな」

「ママミ~はいつもお菓子作ってくれた・・・ママミ~は哀しい時にいつもそばにいてくれた・・・ママミーはいいお母さんになれるに決まってる・・・」

「・・・」

「さささわってもいいか」

「お腹・・・?」

「ほほら・・・ここの子は・・・マミーがいいって言うとるもんね」

「・・・」

「わしにはわわかるんじゃ・・・」

「さくら・・・」

「けけけ結婚式のスピーチ・・・わわしにまかせろ」

「おう・・・頼むわ」

二人は親の血をひく姉妹よりも固い契りの義姉妹なのである。

広平は関係者を「S」に集めた・・・。

「俺は・・・さくらちゃんのための曲を作るつもりだ・・・」

「・・・」

「そして・・・レコード会社の人間に・・・ここでお披露目する」

「・・・」

「空一・・・さくらちゃんを俺にまかせてくれ」

「え」

ついに・・・広平はさくらの夢を一緒に叶える気になったらしい・・・。

明日には笑えるように・・・。

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2016年5月 9日 (月)

真田一族には疑いの眼差ししかないのですか?・・・真田一族には寝首を掻く腕しかないのですか?(長澤まさみ)

戦後七十年を越え、平和憲法で育ったほとんどの日本人にとって・・・合戦は基本的に好ましいものではない。

しかし・・・かっての日本人は戦争が大好きだったのである。

その名残りが・・・戦国時代に憧れる心情として幽かに残っている。

もちろん・・・いつの時代にも殺生を好まない人はいる。

しかし・・・そんな人も殺してやりたい気持ちを「いつか殺してやる」とか「死ねばいいのに」とかふと言葉として発するのだ。

人間の心の闇に何が潜んでいるか知れたものではないのだな。

血ぬられた歴史の中で・・・家康と秀吉は・・・織田信長と朝倉義景の争う「金ヶ崎の戦い」や「姉川の戦い」で友軍として戦った。

信長と武田勝頼の「長篠の戦い」でも家康と秀吉は友軍である。

一方、真田昌幸はこの戦いで真田信綱と昌輝という二人の兄を失っている。

「本能寺の変」を経て、後継者レースに勝ち残った秀吉は「小牧・長久手の戦い」で家康と対立する。

長い織田家との同盟関係から・・・家康は・・・秀吉の実力を知悉している。

家康の臣従はタイミングの問題だったと言えるだろう。

一方・・・昌幸も・・・家康に一矢を報いたのとは別に・・・秀吉が掌握する「天下」の実力は充分に把握していたと言える。

何故なら・・・昌幸は武田家きっての智将であり・・・「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という兵法の基本を知らぬわけはないからである。

昌幸が秀吉に臣従することは・・・ごく自然なことだったと考える。

それが戦国の世の習いなのだ。

で、『真田丸・第18回』(NHK総合20160508PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・田中正を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は気高く雄々しくも風雅な趣を醸しだす真田昌幸の描き下ろしイラスト第四弾大公開でお得でございます。憚りながら申し上げますれば最高傑作と言ってもいい出来栄えでございますねえ。実に美しい表裏比興の者ですな。この世界では真田昌幸と石田三成が義兄弟ではないようなので・・・あくまで最大勢力の官僚と弱小勢力の代表でしかない冷たい関係が一層強調されておりますな。この辺りの史実選択も計算されているように感じます。勢力差や地理的状況を考えると真田家が徳川家の与力になるのは実に理にかなっているわけですが・・・秀吉としては真田家を大名として残すことで徳川家を牽制させる含みを持たせているのでしょうね。現在、大坂城に黒田官兵衛がいないのはすでに九州で戦端が開かれ戦奉行として合戦中だからですが・・・つまり秀吉は総大将として出陣しなくても・・・前哨戦に兵力を動員できる実力者ということになります。西で実戦しつつ・・・東では外交戦を行っているわけで・・・まさに外交も戦争のうちであることが明確なのですな。来るべき関東制圧の駒として・・・真田をどのように利用するか・・・戦争の天才の一人である秀吉は・・・恐ろしいまでに・・・熟慮しているように感じられるところが脚本の素晴らしさを物語るのでございますねえ。

Sanada018天正十四年(1586年)十一月、吉川元春は豊前攻略中に陣没。十二月、豊臣秀吉は島津討伐のための動員令を発する。徳川家康は居城を浜松城から駿府城に変更。島津軍の豊前松山城・高橋元種が降伏。豊後では島津家久が戦闘は戦闘を継続。戸次川の戦いで豊臣軍の軍監・仙石秀久は家久の急襲により大敗。長宗我部元親の嫡子・信親が戦死。勢いに乗った家久は大友宗麟の守る丹生島城を包囲する。島津義弘も肥後から豊後に侵攻。島津家当主・義久も日向国に進出した。天正十五年(1587年)一月、秀吉は年賀の席で九州侵攻の陣割を発表。宇喜多秀家が九州に出陣。二月、豊臣秀長が出陣。三月秀吉が出陣し、秀長が日向方面に南下し、秀吉は肥後へと侵攻した。真田昌幸は小笠原貞慶に伴われ、駿府城で家康と会見し、豊臣家の臣下として家康の与力となったことを確認。その後、昌幸はその報告のために上洛したが大坂城に秀吉は不在だった。上杉、徳川、真田が揃って豊臣家に臣従することによって信濃国では完全な停戦が成立する。秀吉は九州で連戦連勝の進撃を開始していた。

「真田安房守昌幸でござる」

「よう・・・参られた・・・」

駿府城で家康は昌幸を歓待した。

信州上田城では煮え湯をのまされた家康である。

しかし・・・昌幸も長篠合戦で兄二人を織田・徳川連合軍に討たれている。

武田と織田の長い戦いの果て・・・気がつけば徳川も真田も・・・豊臣の臣下となっていたのである。

この時、家康は四十四歳・・・昌幸は四十歳となっている。

家康は今川家の・・・昌幸は武田家の人質として幼少時代を過ごしている。

その後、今川家が早くに滅亡したために・・・家康は独立し・・・武田家の圧力の防波堤として織田家の先陣となった。

昌幸は・・・信玄、勝頼の武田二代に長く仕えることになる。

三方ヶ原の戦いで家康は滅亡寸前まで追い詰められていた。

昌幸は当時、武藤喜兵衛として戦場にあった。

家康の敗戦をその目で見ているのである。

その後、長篠では・・・武田勝頼が敗北した。

昌幸は旗本衆として勝頼とともに撤退したのである。

「三方ヶ原で負け・・・長篠では勝った・・・お互い・・・よく生き残ってきましたな」

「生き残るも・・・討ち死にするのも・・・同じことと存ずる」

「さすがは・・・表裏比興の者と称される昌幸殿じゃ・・・」

「そのような褒め言葉は過分でござる」

「すべて・・・水に流してくれますかな・・・」

「それは・・・こちらがお願いしたいこと・・・」

家康は微笑んだ。

昌幸は平伏した。

儀式は恙無く終了した。

家康の脇に控える服部半蔵は昌幸の背後に控える真田佐助に気を放つ。

佐助はその圧力に耐えつつ・・・昌幸の身辺を警護する。

いざとなったら・・・お互いに相手の主を殺すばかりである。

昌幸が座を立ち・・・家康の用意した宿所にたどり着くまで・・・二人の忍びの暗闘は続く。

宿所に戻り・・・真田幸村や・・・警護の河原衆と合流し・・・ようやく・・・佐助は一息をつく。

「さすがは・・・伊賀に半蔵ありと噂されるものよ・・・もう少しで気が萎えるところだったわ」

佐助は警護衆の一人、海野三郎太にこぼす。

「佐助ほどのものでも・・・気押されたか」

「そらそうだ・・・半蔵は・・・年齢さえわからねえ・・・」と河原綱茂が笑う。

「百歳を越えているという話もあるくれえだ」と鈴木弥助。

「化け物だな」と望月軍兵衛。

真田忍軍の中でも選りすぐりの忍びが昌幸の警護の任についている。

「佐助・・・御苦労だが・・・駿府を出るまでは気が抜けぬぞ」

真田忍軍を統べる真田源太郎幸村は囁いた。

「お任せくだされ・・・」

佐助は胸を張る。

昌幸は無言で忍びたちの会話を楽しんでいる。

服部半蔵は・・・天知通によって・・・真田主従の会話を盗み聞く。

密殺を得意とする影の軍団は命令が下るのを待っている。

家康は居室に戻り・・・大きく息を吐く。

家康は・・・風に・・・春の気配を感じた。

「桜が・・・咲くか・・・」

つかのまの平和を感じ・・・家康は・・・大きく息を吸った。

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2016年5月 8日 (日)

人間の心理がこんなに複雑なものだったとは知らなかった(福士蒼汰)なんだって(土屋太鳳)レギュラーです(門脇麦)

修羅場から一週間・・・ようやくマイペースな状態になってきたな。

なんてったって母親が入院中で気が楽だ・・・。

見舞いに行かなくても怨まれないところが・・・認知症の利点だな。

なにしろ・・・見舞いに誰が来ようが五分後には忘れてしまうのだ。

お迎えが近いのか遠いのかも定かではないが・・・そういう近親者がいる時に・・・このドラマを視聴するとなるとかなり複雑な気持ちになる人がいるのかもしれない。

しかし・・・キッドはほとんど平常心だな。

まあ・・・悪魔だからな。

で、『お迎えデス。・第3回』(日本テレビ20160430PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・塚本連平を見た。今回は脚本家は連名で同じジャパンクリエイティブマネージメントに所属する泉澤陽子が加わっている。最近では「オトナ女子」(フジテレビ2015年)と同じパターンで・・・まあ・・・いわゆる師弟共作ということである。結果が良ければあってもいいが・・・作品が散漫な感じになることは言うまでもない。原作ありのファンタジーの場合、原作の読みこみから・・・ドラマ版の世界設定の構築が重要になるわけだが・・・ここまで見る限りはかなり危うい基本設定になっている。

この手のドラマのエッセンス抽出のベテランである尾崎将也なのでそれなりに仕掛けていると思うわけだが・・・。

問題は「あの世」側の設定だな。

これまでの「あの世」設定をまとめておく。

①死者は死後四十九日間、幽霊として「この世」にとどまることができる。

※これは大乗仏教で行われる法要の一つ「中陰法要」に準拠しているのだろう。死後七週間(四十九日)の供養によって死者が極楽に往生できるという信仰である。

②死神はこの世に未練を残し、成仏できない幽霊を「あの世」に導く任務を「上司」から与えられている。

③死神にはナベシマ(鈴木亮平)の属する死神二課とシノザキ(野間口徹)の属する死神一課がある。

④死神二課は幽霊の自主性を重んじるが・・・四十九日を過ぎて悪霊化した幽霊を消滅させる役目の死神一課は・・・二課の後始末的任務に含むところがある。

⑤死神もまた死者の一種であり・・・その特殊性は一種の権利として「上司」から付与されたものであり、剥奪される可能性がある。

本来、死神には「死をもたらす使い」のイメージが濃厚であり・・・キリスト教的な「神の摂理」の管理者としては「天使」の一種なのであるが・・・ここではかなり和洋折衷なスタイルになっている。

幽霊を霊視することができる特殊能力者である阿熊幸(土屋太鳳)はナベシマとの間に特殊な関係があるらしいが・・・それはおそらく作品の「肝」の一つなので秘匿されている。

幸には他にも多忙な母親(高岡早紀)と不倫が原因で離婚した父親というベタな家庭不和のネタを抱えていて・・・かなり面倒くさいわけである。

さらに幽霊を憑依させることができる霊媒体質の堤円(福士蒼汰)は発達障害で理系男子の定番である朴念仁として設定されている。

連れ子同志の再婚である家庭はそれなりに暖かいイメージで描かれているが・・・血の繋がらない妹・さやか(大友花恋)の存在など・・・やや設定過剰である。

そのうち・・・もてあますよな。

そして・・・円もまた・・・亡き父親を持っているわけである。

複雑な人間心理が仕掛けのうちなら・・・この設定はある程度生かされないと・・・なんだかなあ・・・ということになるだろう。

なお、幽霊に憑依された堤円は・・・幽霊の行動支配にある程度、抵抗できる設定だが・・・それも御都合主義になりかねない要素のひとつなんだな。

どうせ・・・「あの世」がらみの話なので・・・なんでもありでも構わないのだが・・・そんなことをしていると何が面白いのかわからなくなるので要注意なのだ。

ちなみに・・・堤円の能力発現は・・・高校時代の同級生・緒川千里(門脇麦)の不慮の事故死と関係しているらしいという設定である。

千里がレギュラーだとすれば・・・決着が着くまでの四十九日の物語ということになる。

千里は逃亡中の幽霊で・・・悪霊化すれば・・・死神二課の落ち度になるらしく・・・一課は情報隠しで暗躍している。

とにかく・・・それらしく設定すればするほど・・・破綻しやすいわけである・・・そして・・・お茶の間はこの世界を理解するのが困難になっていくのだ。

つまり・・・何が面白いのか・・・わからなくなってしまうのである。

そのあげくに・・・脚本合作っていうのは・・・ねえ。

千里の死は・・・四月の新学期開始以後である。

その後、娘を想う父親の幽霊・馬場陽造と、看護師に恋したまま病死した少年・和弥を死神二課のアルバイトとして成仏させた円と幸であるが・・・かなりの時間経過があったはずである。

それなのに・・・今回のドラマの背景には桜が満開なのだ。

一体・・・今の季節は・・・どうなっているのだろう。

そして・・・千里は死後・・・どのくらいの日数を経過しているのか。

四月一日に死んだとしたら五月十九日には四十九日になってしまうわけだけどね。

大丈夫なのかな・・・脚本は・・・。

冒頭・・・ナベシマは・・・お茶の間に・・・幸がナベシマに恋をしていることを・・・ナベシマが察知していることを説明する。

一種のルール違反だが・・・つまり・・・苦しい説明をしなければならないほど・・・脚本に破綻が生じているんじゃないだろうな・・・。

「幽霊と人間の恋愛は成立するのか・・・」

幸の告白により・・・人間の心理が謎に満ちていることに気がついた円は大学の講義の際中に「心理学」を紐解くのだった。

「最近・・・お前おかしいぞ・・・」

高校時代からの親友・加藤孝志(森永悠希)は円を案じる。

そこへ・・・今回のゲスト幽霊である美樹(野波麻帆)が登場する。

高校教師だった美樹は・・・教え子の一人が気にかかり・・・成仏できないという。

お茶の間としては・・・当然、教師と教え子の不適切な関係を疑うわけだが・・・円にとっては慮外の話なのである。

美樹を案内して来た死神のゆずこ(濱田ここね)は成仏対象者として美樹を円と幸に託し去って行く。

円と幸は・・・美樹の気になる元教え子の元へと出向く。

元教え子は・・・亮二(竜星涼)で不良生徒だったが・・・古典の教師だった美樹の個人指導で大学に合格するまでになった。

ところが・・・美樹の死後・・・大学にも行かず・・・遊び歩いているという。

つまり・・・美樹の死は亮二の大学入試成功から・・・亮二の入学した大学の授業開始の間にあったらしい。

四十九日のタイムリミットは目前ではないのか・・・。

しかし・・・そういう切迫感は・・・死神二課にはないのである。

一方、死神一課の雇用する人間なのかどうかも不明な黒巫女の魔百合(比留川游)は命じられるまま悪霊駆除に邁進していた。

几帳面なシノザキは悪霊によって飛散したゴミの分別まで魔百合に命じるのだった。

そして・・・逃亡中の幽霊・千里を・・・二課には内緒で探索中なのである。

千里は・・・幸が自宅に匿っている。

やや唐突に登場した世界を飛び回っている実業家であるらしい幸の母親は・・・かなり唐突に・・・離婚した夫が「幸に会いたいと連絡をよこした」と告げる。

幸は千里に「小学生の時に不倫して家出したまま・・・消息不明のくせに・・・今さら何よって感じ」と愚痴るのだった。

そういう「家庭の不幸」をセリフで説明させられることが一種の不幸だよな。

一方・・・明らかに中年の独身女性教師が懸想しそうな未成年だった亮二・・・。

「男同志の方が話がしやすいはず」と幸は円に接触を命ずる。

ダーツに熱中している亮二に・・・「完璧な軌道計算による射出」で満点を叩きだしてみせる円である。

心になんらかの鬱屈を抱えている亮二は・・・街のチンピラたちとトラブルを起こしながら・・・円と馴染んでいく。

そして・・・唐突に・・・ホストクラブの体験勤務を開始するのだった。

亮二と円にホストごっこをさせるためだけのあざとい展開である。

まあ・・・それで・・・一部お茶の間のホストをこよなく愛する皆様が楽しければいいのかもしれない・・・。

天性のホスト属性でたちまち・・・売上ナンバーワンの座を獲得する亮二。

四十九歳のお姉さまの年齢を五十歳と推定する円である。

ある意味・・・天才なんだな・・・。

一方、「ブサイクに生まれたのでこの世になんの未練もない幽霊」の保(今野浩喜)を輸送中のナベシマを目撃して発情する幸だった。

しかし・・・幸の美貌に発情した保は・・・突然、この世に未練を生じるのだった。

そもそも・・・もはや勃起する陰茎もないのに発情するものなのかどうかは謎である。

突然・・・逃走した保に戸惑うナベシマだった。

幸のストーカーと化した保は更衣室やトイレで幸を待ち伏せる。

乙女である幸は激昂するのだった。

「一体・・・なんなのよ」

「君の恋人になれたら・・・成仏するよ」

「お断りだわ」

「ひどいな・・・幽霊になってまで・・・外見で差別されるなんて・・・」

「そういうことじゃないでしょう」

しかし・・・このままでは排泄行為も入浴もできない幸である。

帰宅した幸につきまとう保。

そして・・・幸の戦闘力も実体のない幽霊相手では無効なのだ。

そこで立ち上がる千里。

幽霊同志は・・・疑似肉体的接触が可能らしい・・・新ルール追加である。

千里は保を平手打ちで撃退するのだった。

幸は窮状をナベシマに訴えるが・・・聞く耳を持たない死神だった。

「いいじゃないか・・・幽霊に見られたって・・・減るもんじゃなし」

恋する相手にそこまで言われて凹む幸。

逆にそれでも心変わりしない幸のナベシマに対する執着も異常だけどな。

「円も・・・ひどかったよ・・・」

幸に同情して・・・千里は身の上を語りはじめる。

「一緒に星を見るようになって・・・円のロケット打ち上げにも付き合うようになった・・・私は円の恋人になったつもりだった・・・ところが・・・円は私を恋人とは思っていなかったの・・・傷ついた私は・・・それきり・・・円と会わなかった・・・」

「・・・」

「でも・・・死んでしまって・・・心残りがあることに気付いたの」

「それって・・・円のこと・・・まだ好きだってこと?」

「だって・・・もう他には誰も愛せないもの・・・」

「・・・」

一方・・・円は亮二の代わりに飲んだ酒のために・・・前後不覚になり・・・よろめいて女教師・美樹に憑依されてしまう。

「こんなことしていちゃ・・・だめよ・・・」

「え」

「教師として認められないわ」

突然・・・オカマになってしまった円に戸惑う亮二・・・しかし・・・円の言葉は・・・亮二の心に突き刺さるのだった。

「高校の時・・・好きな女の先生がいて・・・大学生になったら告白するつもりだった・・・ところが・・・その先生が突然死んで・・・俺は・・・ヤケになっていたんだ・・・でも・・・先生が今の俺を見たら・・・きっとガッカリすると思う・・・だから・・・俺・・・明日から大学に行ってみるよ」

立ち直った亮二に喜ぶ円。

「これで先生も安心して・・・成仏できますね」

しかし・・・明らかに心変わりしたような美樹だった。

そもそも・・・生徒一人に執着していることが異常だったのである。

つまり・・・美樹は生前から・・・亮二に懸想していたのだ。

亮二の本心を知って・・・美樹の情欲の炎は燃えあがる。

そもそも・・・濡れる女陰も火葬され灰になっているのに何を感じるのか疑問だが・・・。

まあ・・・いいじゃないか。

その執念が悪霊化の原因なのか・・・それともいい加減なタイムリミット到来なのか・・・身体が黒ずみ出す美樹なのである。

一方・・・円の憑依体質を知った保は邪念を膨らませる。

幸は円からの救援要請を受け・・・夜の街へ。

しかし・・・待っていたのは保に憑依された円である。

人気のない場所で・・・幸に襲いかかる円/保・・・。

「あんた・・・誰なの・・・」

「いいじゃないか・・・キスぐらい」

「きもいわ」

「うらみはらさでおくものか」

必死に抵抗する幸だが・・・相手が円なので戦闘力を封じられたらしい。

円は必死に抵抗し・・・ついに幸を解放することに成功するが・・・よろめいて階段落ちである。

「円・・・」

「・・・」

「しっかりして・・・円」

しかし・・・幸と千里が前世でトリオを組んでいた「宇宙キター!」と叫んでくれる一番の理解者は・・・本作には未登場なのである。

そんなこんなで・・・唐突につづく今回なのだ。

脚本・・・大丈夫ですか。

まあ・・・連続ドラマだからな。

これはファンタジー冒険活劇なんだよな・・・きっと。

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2016年5月 7日 (土)

自宅謹慎ですがなにか(岡田将生)人間ですがなにか(松坂桃李)父親ですがなにか(柳楽優弥)ありますがなにか(吉岡里帆)ないですがなにか(島崎遥香)

鬱屈につぐ鬱屈。

ぬかるみにつぐぬかるみ。

ドロドロな展開の果てに「ゆとり」という名のクズ(太賀)炸裂で・・・なんじゃあこりゃあなお茶の間も・・・。

いよいよいつものクドカンマジックにはまってきた頃合いである。

本作は大人計画的キャスティングは控えめで・・・いつものテイストではないように見えるが・・・。

まず・・・イケメンがブスと付き合っているところからクドカンなのである。

しかも、イケメンの兄嫁がブスなのであり、兄弟そろってブス専なのだった。

そして・・・バンビとモー子のように・・・童貞がダイナマイトと交際開始しているわけである。

さらに・・・ついに登場人物の口から「ブス」が炸裂した今回。

アイドル畑からは島崎遥香(AKB48)も参戦しているし・・・美人のお母さん枠には中田喜子が抜擢されている。

気がつけば・・・クドカン・ワールド全開で・・・。

東京の造り酒屋で近くに温泉がある主人公の実家はあたかも桃源郷のようだった。

「ふぞろいの林檎たち」では姑が嫁にきつくあたるのだが・・・ここでは・・・きつくあたらないようにしているのがきつい姑の嘆きがある。

「早く孫の顔が見たい件」では「やることやっちゃいなよう」なのである。

すべての女性の登場人物たちに漂うそこはかとない石原真理子感・・・。

特に「茜ちゃん」こと安藤サクラが岡田将生と松坂桃李を弄ぶというブスのくせに調子にのってる感じが炸裂しています。

もはや・・・一同爆笑につぐ一同爆笑だよね。

で、『ゆとりですがなにか・第3回』(日本テレビ201605012230~)脚本・宮藤官九郎、演出・相沢淳を見た。「いとしのエリー」ほどの名曲は欠いているが・・・そもそもそういうインパクトのある男性ボーカルのいる凄いバンドが不在の時代なのである。まず・・・色もの先行で・・・突然、名曲バラードというパターンでないとアレだしな。最近だと・・・セカオワとゲス乙女とか・・・なぜかスキャンダルでつぶされてるしな。意味不明の「拝啓、いつかの君へ」もまあ・・・いいんじゃないかと思い始めた今日この頃である。

「土下座しろってんだよおおおお」

ゆとりモンスターと称される後輩社員・山岸ひろむ(太賀)の傍若無人なクレームを持て余す坂間正和(岡田将生)、宮下茜(安藤サクラ)、そして、早川道郎(手塚とおる)のトリオ。

もはや「ヤマギシ」の言動は・・・ゆとりというよりはやくざであるが・・・ゆとりとやくざはある意味、同義語かもしれないのだった。

弁護士と労働組合に守られたヤマギシは底辺の強みをゴリ押しするのだ。

学級が崩壊したように・・・社会もこうして崩壊していくのかもしれない。

なにしろ・・・何が「正しい」のか・・・わかったもんじゃない・・・社会なのである。

全員が「アンチ」で構成された世界は目前なのかっ。

このような透明性を高めようとすればするほど不透明になっていく社会において・・・外見は明らかに「ヤクザ」である第三の男・・・道上まりぶ(柳楽優弥)はゆっくりとウォーミングアップを開始するのである。

とにかく・・・自殺した男の母親である明子(真野響子)に託された「忍耐」の文字の刻まれたアクセサリーを握りしめ・・・理不尽に耐えた正和だった・・・。

「お前なんか電車に飛び込んでしまえばよかったんや」と誰もが思うところだが・・・ゆとりなので甘い正和は精神的苦痛を耐えしのぶのだ。

「飲み会の強要があったとか」

「新入社員なのに・・・四十人の飲み会の幹事やらされました・・・何度もしつこく・・・念を押されて」

(普通のことだな)と弁護士は思う。

「毎日、電話で確認されて」

(面倒見のいい先輩じゃないか)と労働組合の幹部は思う。

「うつになりましたよ」

「ということで・・・解決金ということでどうでしょう」

「お金を払えと・・・」

「裁判にしますか・・・」

「示談ということですか」

「問題を解決したいということです」

「一万円くらいですか」

「百万円だよ」

全員が狂人を見る目で「ヤマギシ」を見つめる。

控えめの大人計画ゾーンは「みんみんホールディングス」の傘下にある居酒屋「鳥の民・高円寺店」のアルバイトたちである。

バイトリーダーの村井(少路勇介)は「うぬぼれ刑事」のバーテンダー・ゴローでおなじみ、バイトの中森(矢本悠馬)は「ごめんね青春!」のサルだ。

ギター漫談の堺すすむの「なんでか?フラメンコ」のパクリで焼き加減を指導するのだった。

「油少なめでもダメなんだ・・・な〜んでか!?」

しかし・・・この世の理不尽をヤキトリに叩きつける正和は聞く耳を持たない。

ヤマギシに退職の意志はなく・・・「加害者」と「被害者」を同じ職場に置き、問題を再発させないという配慮の「マニュアル対応」で・・・「営業部」に戻れず・・・「店舗担当」の続行の可能性が大きいのである。

「結果」を出しても「本社」に戻れない。

そういう・・・正和の「正攻法」に・・・茜は複雑な表情を見せる。

茜は「勝ち組」なのであり・・・「負け組の夫」を受け入れ難い「自分」に凹むのである。

しかし・・・「イケメンの彼氏」を手放す意志はないのである。

正和は・・・茜の葛藤を知らないのか・・・知らないフリをしているのか・・・まだ明らかではないが・・・ゆとりだからな。

そもそも・・・「アンチ」というのは自分を省みない存在である。

反雀じゃなかった反省するより他人の所為の典型だからな。

円周率3.14が3だったら三時十四分は三時なので十五分までは遅刻でないことになる。

つまり・・・アンチの正義というものを主題歌は否定しようとしているわけである。

一方、胸元に必殺パンチを内蔵した教育実習生・佐倉悦子(吉岡里帆)と秘密交際中の指導担当の山路一豊(松坂桃李)は必要以上に敏感な佐倉の危機探知センサーによって阿佐ヶ谷南小学校4年2組の児童に問題が発生していることを知らされる。

女児児童のカラーペン一式紛失事件の発生である。

「音楽発表会の指揮者で女児Aと女児Bが立候補、クラスにA派とB派が出来、どちらにも属さなかった唯一の女児Cは孤立、女児Cの持ち物がゴミ箱から発見される。いじめが発生しています」

「いじめがどうか・・・結論を急ぎ過ぎないで」

「すぐに・・・親と連絡をとりましょう」

「え」

「本人と親と教師が一体となって情報を共有し、対処するのがいじめ対策の基本です」

「だれがそんなことを・・・」

「素晴らしいインターネットの世界の情報です」

「えええ」

学級の全児童を前に糾弾を開始する教育実習生サクラ・・・。

「いいですか・・・これはクラスみんなの心の問題です・・・誰かが誰かを仲間はずれにしたり・・・いじめたりすることは神に対する反逆です」

「ちょ・・・ちょっと待った・・・みんな・・・目をつぶって・・・先生は怒ったりしないから・・・心当たりのある人は手をあげて・・・」

手をあげたのは女児Cだった。

「エレンちゃん・・・なぜ」

「ごめんなさい・・・彩香ちゃんとちょっとわだかまりが残ったのでペンを忘れたことにして借りることができればきっかけになるかと思って・・・」

「い、いじめじゃないのね」

「ごめんなさい」

教育実習生サクラの危険な胸に飛び込む女児Cだった。

しかし・・・常に世界の主導権を握っていたい教育実習生サクラは・・・自分の推測が間違っていたことを認めないのだった。

そもそも・・・問題の存在をまったく認識していない一豊が「悪い」のである。

何が何でも論点をすり替えることを教育実習生サクラは決意する。

何故かマエケンを思い出し涙腺が緩む教師・円山(加藤諒)はなんとなく一豊に反感を抱いており・・・教育実習生サクラと一豊の間の亀裂に身をこじいれる涙ぐましい努力を開始するのだった・・・。

学校における大人計画要素の学年主任・太田(小松和重)もそこはかとないいつもの役立たず感を醸しだす・・・。

反省文を書き終えた正和は印鑑を捜す。

「母さん・・・印鑑どこ・・・」

そこへ・・・就職活動中の悩み深い妹・ゆとり(島崎遥香)が登場。

「お母さん・・・ヤキソバ食べたい~」

「母さん・・・印鑑・・・」

「お母さん・・・ヤキソバ・・・どこ~」

長男の嫁・みどり(青木さやか)も参戦。

「お義母さん・・・お醤油がきれたんですけど」

ゆとりに満ちた空間の演出者・和代(中田喜子)は亡き夫の仏壇の前でため息をつくのだった。

その頃、ボルダリングジムで偶然を装い、密会する一豊と・・・茜である。

「今日は・・・彼は・・・」

「いろいろあって・・・結婚しようとか言い出しそうだから・・・」

「?」

「私は・・・純粋に結婚がしたいのよ」

「?」

「いろいろあって・・・何かのためにする結婚じゃなくて・・・」

「?」

「童貞が純粋にセックスしたいのと同じよ」

「意味がわかりません」

茜はイケメンの童貞に興味津々なのだった。

茜の野心にも気付いていない正和の長男夫婦には子供がないお約束の設定である。

嫁の妊娠活動にあまり協力しない息子に母ははっぱをかけるのだった。

「跡取りが生まれないことでプレッシャーをかけないようにするプレッシャーがきついのよ」

「俺だって・・・まず家業を軌道にのせたいんだよ・・・子作りはそれからでも」

「ウダウダ言ってないで・・・おやんなさいよ」

苦労の絶えないゆとりの母だった。

結局・・・「ヤマギシ」に対し、正和が解決金五万円を払うことで決着する「パワハラ事件」・・・。

「いっそ・・・裁判するか・・・」と温情を見せる上司。

「いや・・・あいつが・・・生きてただけで・・・良かったです」

「一度は死んだかと思ったものな・・・」

そういう温めの決着に妥協する男たちにドス黒い眼差しを注ぐ茜だった。

上昇志向の強い茜にとって・・・敗北は「悪」そのものなのだ。

ゆとりのあふれる街に・・・ぬるま湯が満ちる夜。

金髪の舎弟(長村航希)を連れて・・・まりぶが「鳥の民」にやってくる。

「あれ・・・彼は・・・」

「謹慎中です」

「えええ」

「彼に焼き方を教えたのは私ですから」

「俺はね・・・ヤキトリ食べに来ているわけじゃないよ」

奥のお座敷では例の件について・・・豊作ではなかった一豊が糾弾されていた。

可愛い教育実習生サクラを挟み・・・なんとなく味方をする学年主任と極上のブサイクたち。

「だから・・・悪いことは悪いって認めようよ」

「とにかく・・・問題があることに気がつかなかったわけだから」

「サクラちゃんに謝るべきだよ」

「・・・」

「AちゃんとBちゃんの派閥争いで・・・クラスが割れて・・・Cちゃんがあることないこと言われる可能性だってあったわけだし・・・」

「そんな・・・僕の学級は大手芸能事務所じゃありません」

「先生は・・・児童をもっと・・・深く知るべきではないのですか」

「だからって・・・児童を傷つけたりしたら逆効果だし・・・」

「私が悪いって言うんですか」

「いや・・・」

そこへ・・・乱入する・・・まりぶだった。

「おっぱいタイムですか」

「なんです・・・君は・・・」

「いや・・・そっちのブサイク・・・無理と知りつつ・・・おっぱい先生を狙ってるんですよね・・・メガネのおっさんも・・・ダメでもともとでおっぱい先生をなんとかしたいんでしょう・・・だったらおっぱいパブでもりあがりましょうよ・・・いいおっぱいありますよ」

「・・・」

「部分白髪のおばさんや膨張したおばさんも・・・頭の中はカラアゲのことしかないみたいだし・・・誰かが誰かを攻撃したって・・・何もいいことありませんぜ」

「先生のお知り合いですか・・・」

言いたいことがあると・・・涙ぐんでしまう一豊である。

「ぼ、ぼくは・・・ただ・・・子供たちを疑う前に・・・信じてあげてほしいと・・・いい先生になれなくても・・・いい人間になってもらいたいと思います・・・」

「・・・」

そして・・・教育実習生サクラは・・・一豊の胸に飛び込むのだった。

「初めてちゃんと叱ってもらった気がしました」

誰にも叱られたことのない人間が教師になる時代である。

サクラをタクシーに乗せた後で思わずスキップする一豊だった。

しかし・・・一部お茶の間は・・・見たことある展開に・・・沸き立つのだった。

「あれはなに・・・」

「童貞だからな・・・」

結局・・・正和と・・・一豊と・・・まりぶはものすごく馴染んでいくのだ。

まりぶの妻・ユカ(瑛蓮)は叫ぶ。

「あんたたち・・・まさか・・・泊まる気じゃないよね」

しかし・・・泊まり込む正和と一豊。

まりぶは微笑んで・・・ゆとりの十一浪人生として受験勉強に励むのだった。

本社営業部に戻れなくなった正和は取引先の野上(でんでん)に挨拶に出向く。

「仕方ないな・・・俺が代わりにヤマギシにビシビシ言ってやるよ」

しかし・・・野上の土産ではない清酒を持ち歩く正和・・・やはりゆとりなのである。

清酒は・・・鉄道で飛び込み自殺をした青年の母親(真野響子)への土産だった。

「あの子のために・・・会社は二千五百万円払ってくれるんですって・・・」

「・・・」

「それって・・・高いのか・・・安いのか・・・よくわからないわ」

「不謹慎ですけど・・・彼が生きていて・・・ホッとしています・・・」

「・・・」

赤の他人の家庭に・・・深く関わりすぎている気がしないでもない正和。

しかし・・・それかもゆとりだからなのかもしれない。

なにしろ・・・人間というものは・・・正気と狂気の境界線で生きている存在なのである。

しかし・・・真野響子の中身が室田日出男だったらどうするつもりだ。

・・・意味不明だぞ。

謹慎期間に入った正和。

朝から低空飛行のゆとりが漂う。

「お兄ちゃん・・・何社受けたんだっけ」

「七、八社かな・・・」

「私・・・もう倍くらい受けてるのに・・・」

「俺も全然ダメだったよ・・・でも・・・面接で凄く私凄いんですオーラだしている女子大生がいて・・・そいつがもの凄かったんでついられてテンションあがっちゃって・・・その凄い奴が茜だけどさ・・・二人とも受かっちゃって・・・」

しかし・・・話を聞いていない縁側のゆとりだった。

「昨日・・・カフェでウエイトレスが・・・凄く生き生きとしていて・・・凄くいい笑顔で・・・ああ・・・この人には居場所があるんだなあ・・・ってうらやましくて・・・私を必要としてくれる人は・・・世界に一人もいないんだって思って・・・」

泣きだすゆとりだった。

「おい・・・ちょっと・・・ゆとり・・・そんなことはないよ」

家の電話が鳴る。

仕方なく電話に出る正和。

「まあ・・・ゆとりちゃん・・・どうしたの」

騒ぎ出す兄嫁。

「お義母さん・・・お義母さん」

「はい・・・酒蔵見学・・・ホームページを見て・・・あの・・・それ更新が遅れていて・・・先代から代替わりして・・・今は休止中で・・・」

「でも・・・来ちゃった」

「え・・・」

現れたのは・・・まりぶ・・・茜・・・一豊・・・教育実習生サクラである。

「ダブルデートかよっ」

突然・・・活況を呈する坂間酒造だった。

茜は・・・正和の交際相手として坂間家として紹介されまんざらではないのである。

ぎくしゃくした一豊とサクラの仲もスムーズな感じになる。

そして・・・「雑巾しぼりビール」は熟成不足だっただけで・・・すでに飲みごろになっていたことが判明する。

友、遠方よりきたりて・・・坂間家は春爛漫となったのであった。

なぜか・・・ゆとりはまりぶに心を奪われたらしい・・・。

そして・・・近所の温泉で・・・サービスに励む三人。

酒樽に酒がいっぱいで興奮するまりぶ・・・。

「ここ・・・本当に東京なの・・・」

「・・・隅っこですが」

素晴らしい環境に満足する客人たち・・・。

「基本・・・どこにも不幸の要素がないよな」

「基本的に・・・ゆとりだよな・・・」

つまり・・・就職がなかなか決まらないにしろ・・・変な後輩に嫌な思いをさせられるにしろ、童貞にしろ・・・それほど不幸ではないわけである。

本当に不幸な人は・・・他にいくらでもいるのだ。

その前提が今・・・明らかになりました。

「最近・・・君たち、まりぶの部屋で泊まったり・・・まりぶが君の実家に遊びに行ったりしてるんだって・・・友達になってくれてありがとう」

感謝するレンタルおじさん(吉田鋼太郎)・・・。

しかし・・・正和と一豊はまりぶとの友人関係を否定するのだった。

そして楽あれば苦ありの人生である。

正和との交際が会社で明るみとなり・・・激怒する茜。

暴露したのはヤマギシらしい・・・。

そして・・・阿佐ヶ谷南小学校には自称・サクラの男(北村匠海)があらわれた!

まあ・・・ダイナマイツ!・・・だからな・・・。

男を泣かせ・・・男に冷たくしても・・・寄り添う気持ちがあればいいんだよな。

女性シンガーが「いとしのイケメンたち」を歌えばよかったんじゃないのか・・・。

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2016年5月 6日 (金)

弁護士である前に一人の人間でありたい(竹野内豊)なんちゃって小学生ですがなにか(松風理咲)男を見下す女(松雪泰子)

夫婦であることをやめた男と女がパパとママであり続ける。

それはもはや異常なことではなくなったらしい。

少なくとも・・・子供の視点で考えれば・・・それは一種の責任放棄なのである。

しかし・・・やがて子供も成人し・・・大人になればもう責任を問うことは難しくなる。

子供たちの心に残った傷がどれほど深くても知ったこっちゃないわけである。

もちろん・・・中には・・・常軌を逸した配偶者と出会い・・・どうすることもできない場合もあるだろう。

すべてはケース・バイ・ケースである。

完全な人間がいない以上・・・完全な夫婦もいない。

つまり・・・幼くして両親の離婚という傷を負った子供は・・・泣き寝入りするしかない。

人間、あきらめが肝心だからだ。

そういう辛い役を小学生に演じさせないための高校生の起用なのかと妄想してみました。

で、『グッドパートナー 無敵の弁護士・第3回』(テレビ朝日20160505PM9~)脚本・福田靖、演出・田村直己を見た。神宮寺法律事務所の同僚である咲坂健人弁護士(竹野内豊)と夏目佳恵弁護士(松雪泰子)は元夫婦である。一人娘のでみずき(松風理咲)は小学六年生で親権は咲坂にある。みずきが父親との同居を選択したのである。しかし、協議の結果、みずきが中学に進学した時に親権の見直しが行われることになっている。その期日が迫り、気が気ではない咲坂だった。慎ましい妻を求める咲坂と筋肉質の夫を求める夏目の性格の不一致は男と女の間の深い川底に沈んでいるらしい。

二人のパートナー弁護士が激しく衝突する間に第三のパートナー弁護士である猫田純一(杉本哲太)は婚活のかたわら業務をこなしていたが・・・最悪な(事態をいつも想定している)猫田弁護士も蒼白となる事態が発生する。

ベンチャー企業「ヒューガクラウド」と業務委託契約を結んでいた会社の経営母体に暴力団が関与している可能性が浮上したのだった。

猫田は「ヒューガクラウド」の上場案件を担当していたが・・・審査の途中で・・・「ヒューガクラウド」の事業である「ネットショップ」のスタジオに機材を提供している「サンデーメディアサービス」が指定暴力団の企業舎弟(フロント企業)であることが判明したのである。

基本的に上場廃止基準には反社会的勢力の関与が項目化されており、上場そのものが危ぶまれるわけである。

つまり・・・ヤクザと関わっている会社は建前として上場できないわけである。

なにしろ・・・この国では指定暴力団とはいかなる経済関係も持たないことが建前なのである。

ヤクザに融資すれば銀行の頭取の首がとぶのだった。

しかし・・・一度関係を持ったヤクザを排除するのは・・・ある意味、命がけなのであった。

猫田は・・・身の危険を感じ・・・「親権問題のカウンセラー」を紹介することを条件に咲坂に協力を求めるのだった。

「ヒューガクラウド」の案件は神宮寺法律事務所の所長・神宮寺一彦(國村隼)の肝入りであり、失敗が許されないのである。

しかし・・・咲坂のアソシエイト(助手)を務める新人弁護士・熱海(賀来賢人)は難色を示す。

「それ・・・無理なんじゃないですか」

「お前は・・・黙ってろ」

口だけが達者な熱海をもてあまし気味の咲坂だった。

咲坂、熱海、そして猫田の弁護士トリオは・・・事情聴取のために「ヒューガクラウド」を訪問する。

「ヒューガクラウド」を急成長させたCEOの日向俊矢(高橋光臣)は重い口を開く。

「銀座のクラブの女と寝たら・・・そいつが亭主持ちで・・・その亭主がサンディーメディアサービスとの提携を・・・」

「美人局じゃないですか」と熱海。

「お前は・・・黙ってろ」

「どうして・・・断らなかったんです」と猫田。

「浮気したからでしょう・・・」と乱入してくる日向夫人(青山倫子)・・・。

「汚らわしいことをするからよ」と夫を詰る狂乱状態の妻である。

思わず・・・意見する咲坂だった。

「ここは・・・こらえてください・・・夫婦にとって乗り越えなければならない壁です」

「私・・・お金が好きなの・・・お金儲けに失敗しそうな男なんて嫌い」

「え」

「咲坂さん・・・あなた・・・弁護士夫人という言葉の響きをどうお考えかしら・・・」

「ええ」

「弁護士夫人・・・悪くないわ」

「えええ」

修羅場である。

離婚沙汰を避けて通りたい咲坂だった・・・心が疼くからである。

元夫婦の癖に痴話喧嘩を続ける二人に嫌気がさした夏目の助手の赤星元弁護士(山崎育三郎)は夏目を再婚させるためにいろいろと小細工を弄していた。

夏目好みの筋肉マンとの食事をセッティングしたりするのである。

噂を聞きつけた咲坂は・・・あわてて腹筋を鍛える・・・。

未練たらたらなのだ・・・。

そんな私生活の乱れを飲みこんで・・・「サンデーメディアサービス」との交渉の席につく咲坂だった。

「我が社との提携を打ち切ると・・・何故でしょうか」と睨みつけるヤクザな社長・滑志田吾郎(星田英利)だった。

「こちらの雑誌に・・・滑志田さんが・・・指定暴力団の舎弟だったと書かれています」

「つまり・・・我が社が・・・指定暴力団のフロント企業ということですか」

「そうなんでしょう」

「おいこら・・・どこにそんな証拠があるっちゅうねん・・・そんなゴミ週刊誌の憶測記事なんか・・・何の役にも立たんで・・・」

ヤクザに凄まれて蒼ざめるトリオ。

「契約解除の違約金は支払います」

「上場するそうやないか・・・そんなおいしい話・・・ほっとけるかい」

「・・・」

交渉決裂である。

事務所に戻った咲坂は・・・茂木さとみ(岡本あずさ)らパラリーガルから署名なしの白い封筒が届けられたことを伝えられる。

封筒の中身は・・・「その日に帰宅したみずきの写真」だった。

「おい・・・これは・・・」

「脅しですよ・・・みずきちゃんがどうなっても知らないぞという」

「シャブ打たれて組員に回されて海外に売り飛ばすという」

「誰がそんなことを言った」

しかし・・・事情を知った夏目は所長室に怒鳴りこむ。

「この件からは手を引いてください」

「そんなものは脅しだよ・・・頭のいいヤクザは物騒な実力行使はしない」

「バカなヤクザだったらどうするんですか」

「その時はその時だ。ノーリスクでハイリターンなんて無理でしょう」

「金ですかっ」

危険を察知した夏目は昔の我が家に急行するのだった。

「とにかく・・・やつらが企業舎弟である証拠を掴むことだ」

「・・・」

突然の母親の訪問におどろく娘。

二人は和気藹々で咲坂の苦手な辛口カレーを堪能するのだった。

シャブ打たれて組員に回されて海外に売り飛ばされる可能性のある娘を不憫に思う夏目だった。

「やはり・・・やつらは巧妙すぎて・・・尻尾を出しません」

根をあげる一同。

しかし・・・経営者として絶対に譲らない神宮寺所長はつぶやく。

「ヒントをやろう・・・こちらも無傷ではすませないという覚悟だ」

「僕たちは鉄砲玉なんかしませんよ」と一同。

だが・・・咲坂は解決の糸口を掴んでいた。

「なんですって・・・」

咲坂の提案に騒然となる「ヒューガクラウド」の経営陣・・・。

「ネットショップ事業から撤退するなんて・・・どれだけの損失が生じると思っているのですか」

「しかし・・・そうすれば・・・業務提携そのものが消滅します」

「会社かつぶれますよ」と一同。

「もう・・・結構です・・・結局、弁護士なんて・・・何の頼りにもならない」と下半身緩めの社長。

「それでは・・・弁護士としてではなく・・・一人の人間として話します」

お約束で弁護士バッヂをはずす咲坂だった。

「多くの人間がゆとりを満喫する中で・・・あなたはギラギラして・・・ここまで登りつめた・・・天晴だと思います・・・しかし・・・あなたは悪い病気に感染している・・・助かるには外科的手術が必要です・・・腕の一本や二本すっとばして・・・生き残るか・・・座して死を待つか・・・どっちにしますか」

「・・・」

「決断すれば・・・チャンスはある・・・しかし・・・結論を先延ばしにしても・・・ヤクザに食い殺されるだけですよ」

「そうですね・・・やることやった以上、捨てるものは捨てて・・・結局、綺麗な体になるしかないんですよね」

「あなたならできるはずだ」

日向は決断した。

「新しい分野を開拓しつつ・・・上場にチャレンジします」

「全力で支援しますよ」

ヤクザとふたたび対峙する咲坂。

「なんやて・・・ネットショップから撤退するってか」

「はい」

「しょうもないのう・・・」

「規定の違約金はお支払いします」

「少し・・・色つけてや」

「兄貴・・・」

「あほ・・・儲からんものにつきあっても時間の無駄や」

「賢い選択です」

「あんたの娘もシャブ打たれて組員に回されて海外に売り飛ばされずにすんでよかったのう」

「・・・」

経営危機をのりきり・・・「ヒューガクラウド」は上場企業となった。

日向夫人は咲坂に囁く。

「上場企業の社長夫人って・・・素敵な響きだと思わないこと?」

「はい」

戦いすんで・・・咲坂は・・・ソフトクリームをなめた。

「なんか・・・咲坂さんを見直しちゃいました」と熱海・・・。

「何言ってんの」と男たちを蔑む夏目だった・・・。

不幸な人間たちあっての弁護士たちの業務は続いて行く。

男と対等であろうとすれば女は男を見下すしかないし、女と対等であろうとすれば男は女を崇め奉るしかないのだ。

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Gpoo3ごっこガーデン。ソフトクリームが美味しい街角セット。

まこやくざもんにつけこまれる商売をするようではにっちもさっちもフルドックでしゅ~。いざとなったら地元のダチに一声かけて殲滅作戦を展開すればぼぎゃあああああんでしゅよ~。鉄砲玉ロイドも即時量産体制にシフトチェンジしましゅ。いよいよ・・・ソフトクリームのおいしい季節・・・まこかま工場でもカマボコソフトクリームの開発に着手するのデス!

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2016年5月 5日 (木)

告白なんて恐ろしい(大野智)夕陽の砂浜大作戦(波瑠)愛とは略奪することです(小池栄子)

好きだと一言言うことは難しい。

相手が自分を好きかどうか知ることも難しい。

そういうタイプの人はいる。

幼い頃には相手の気持ちというものが存在することすらわからなかったりする。

テレパシストにとっては相手の気持ちは手に取るようにわかるわけだが・・・はっきり云ってコチラに興味なしと知るのは辛いものだ。

中学生の頃・・・突然、相手が心変わりして驚いたりすることもある。

もちろん・・・相手が気まぐれなだけの場合もあるが・・・自分ではあまり意識していなかった・・・相手の気持ちを踏みにじる行為・・・別の異性と仲良くしていたことなどを後に思い出し・・・腑に落ちたりする。

つまり・・・相手を嫉妬の心でいっぱいにする・・・すなわち相手を傷つけていたことに気付くこと・・・それが人間的成長というものだ。

そして・・・そういうことを慎むことが大人になるということでもある。

もちろん・・・ある種の人間は・・・誰かを傷つける禁断の恋でないと燃えない場合もあり・・・それはそれで厄介なんだな。

しかし・・・本編の主人公は非常に奥手であり・・・恋愛レベルが中学生なので・・・安心して視聴できるのだった。

で、『世界一難しい恋・第4回』(日本テレビ20160504PM10~)脚本・金子茂樹、演出・菅原伸太郎を見た。人里離れた怪しいキノコの森林で現実逃避に励む鮫島零治(大野智)・・・。その心の迷いを見出した恋愛マスターの和田英雄(北村一輝)は暗闇から忍びよる。「お前はまだ・・・恋愛のダークサイドの力を知らない・・・」「恋愛の力など・・・私には無縁です」「まっとうな恋愛など・・・ダークサイドの力の前には児戯に等しい」「本当ですか」「私の教えに従えば・・・お前は望みのものを手に入れることが可能だ・・・」「マスター」・・・こうしてアナキンは・・・違うぞっ。

私の来歴書・・・村沖舞子(小池栄子)篇

あれは・・・十年前のことです。

私は温泉街の「鮫島旅館」で仲居をしておりました。

老舗の旅館でしたが・・・経営は苦しく・・・廃業寸前に追い込まれていたのです。

そこで当時の旅館を経営していた零治様の父親は留学中の息子を呼び戻しました。

帰国した零治様は・・・徹底したリストラと設備投資の拡充・・・そして広告戦略によって・・・旅館を黒字経営に転じさせ・・・さらには・・・ホテル・ビジネスへと経営展開をなさいました。

ホテル経営者として辣腕を振るい・・・わずか十年で鮫島ホテルズをそれなりに名の知れたホテル・チェーンとして育て上げたのです。

私は八年前に・・・仲居仲間の亭主である板前と道ならぬ恋をして・・・発覚し・・・旅館を追われる身となりました。

しかし、社長は・・・「仲居としての業務を完璧にこなした上で不倫をするという素晴らしいスケジュール管理能力を生かして私の秘書になってみないか」と私に手を差し伸べてくれました。

今の私があるのは・・・すべて社長のおかげです。

そんな社長が・・・新入社員・柴山美咲(波瑠)に恋をした・・・。

恩返しの時は今・・・と思う私なのでした。

もしも社長が結婚すれば・・・私のターゲットになっちゃうわけですが・・・。

・・・そんな秘書の画策により・・・恋愛マスターを師匠と仰いだ零治なのである。

第一の指令「相手に好きな色を聞け」

「色を聞いてどうすんです・・・」

「どうもしない・・・質問することに意義があるのだ」

「?」

「君は・・・相手が自分のことをどう思っているか・・・気になるだろう」

「はい・・・」

「彼女は・・・どうして・・・そんな質問をされたか・・・気になるはずだ」

「・・・」

「つまり・・・君のことを知らず知らず考えてしまう」

「なるほど」

「そして・・・彼女は眠れない夜を過ごす・・・」

「はあ」

「次の日・・・彼女が質問の意味を尋ねてきたら・・・脈ありということだ」

「もし・・・尋ねてこなかったら」

「その時は・・・すっぱりと諦めるんだ」

「・・・」

「しかし・・・君自身のダメージはこれ以上なく小さいだろう」

「確かに・・・」

零治は美咲に声をかけた。

「お前の好きな色はなんだ」

「・・・緑ですが」

「そうか・・・」

零治は和田の指示に従い・・・それ以上の言及を避け帰宅する。

そして・・・自分自身が眠れぬ夜を過ごすのだった。

明日・・・彼女は・・・自分に声をかけてくれるのか・・・気になってしかたない零治だった。

だが・・・美咲は・・・零治に声をかける。

「社長・・・何故・・・昨日・・・質問なさったのでしょうか」

「いや・・・特に意味はない・・・」

「はあ?」

零治は天にも昇る気持ちだった。

「脈がある・・・脈があるぞ~」

零治はマスターの指示を仰ぐ。

「それで・・・君はなんと答えた・・・」

「いえ・・・特に意味はないと・・・まずかったでしょうか」

「いや・・・それでいい・・・鮫島くん・・・才能あるかもね・・・これで彼女はますます・・・君のことが気になったはずだ」

「そうなんですか・・・」

「次は・・・いよいよ・・・告白だ・・・彼女と二人きりになる機会を作りたまえ」

「告白・・・できますか」

「色を尋ねたように・・・好きと言えばいいんだよ」

「・・・」

夜のミーティングである。

参加者は秘書とお抱え運転手の石神剋則(杉本哲太)である。

「レストランのシェフ候補の視察というのはいかがでしょう」

「彼女を指名するのが不自然じゃないか」

「クジ引きにしたらどうでしょう」

「もし・・・他の社員が当たったら・・・」

「絶対に彼女に当たりを引かせるマジックがあります」

「マジック・・・」

私の来歴書・・・石神剋則篇

あれは十年前のことです。

私は売れないマジシャンとして地方巡業の暮らしをしておりました。

しかし・・・困窮し・・・旅館代も払えない私を拾ってくれたのが鮫島社長でした。

私は送迎バスの運転手として雇用され・・・糊口をしのぐことができたのです。

あの時の恩を私は忘れません。

その恩を返す時がついにめぐってきたのです。

・・・・運転手は内部が回転する中敷きで仕切られた箱を用意する。

ハンドル操作で・・・「当たりの部屋」と「ハズレの部屋」を交換できるシステムである。

美咲が引く時に・・・「当たりだらけの箱」にすることができる仕掛けなのである。

こうして・・・美咲は・・・「当たり」を引くのだった。

後は・・・告白するだけなのである。

まあ・・・それが簡単ではない零治なんですけどね。

第二の指令 「夕陽の砂浜で童心に帰れ」

「目的地まで二人でドライブするんだ・・・なるべく小さな車で」

「何故です・・・マスター」

「テントと同じだよ・・・狭い空間は親密さを増す効果がある」

「さすがです・・・マスター」

小さな車でお目当てのシェフ(宇梶剛士)がいるホテルまで海辺のドライブである。

「あんなところに海がある」

マスターの指示通りに海辺で童心アピールを始める零治。

「海が青い」

「はい」

「空が青い」

「はい」

「水が温い」

「はい」

「ちょっと足が冷えて来た」

「はい」

当たり前のことを口にすれば・・・目下の人間はそれを肯定するしかないのである。

肯定することによって人は相手を好ましい対象と感じる。

もっとも・・・美咲はそもそも「社長の茶目っ気」を好ましいものと認識しているので・・・ここは「自分だけが見抜いている社長の人間らしさ」の再確認という複合技になっている。

「お前の好きな食べ物は何だ」

「松前漬です・・・社長は何がお好きですか」

「卵料理だ」

「キノコ料理ではなくて?」

「え」

「社長の写真が掲載されたキノコ専門誌を拝見したので」

基本的に接客業のスキルとして関係者の好みを知るベーシックを実践する美咲。

「軽蔑したか」

自分の趣味の奇矯さを認識している零治は怯える。

「いえ・・・素敵な趣味だと思います・・・」

君という天国にずっと住んでいたいと思う零治である。

そして、マスターに指示を仰ぐのだった。

最終指令 「何が何でも告白せよ」

「目的地に着きました」

「よし・・・食事の席で告白だ」

「無理です」

「酒だ・・・バッカスから勇気をもらえ」

「狂うのですね」

「そうだ・・・さすればお前はすべてを手にすることができる」

「はい・・・マスター」

零治の来店を知り・・・転職希望のシェフは腕によりをかける。

社長、秘書、運転手、シェフが一同に会したら・・・完全に第二次怪物くんファミリーだよな。

「素晴らしい腕前ですね」

仕事として味を確認する美咲。

しかし・・・とにかくワインを飲む零治。

「確かに素敵な料理だ・・・素敵なワインだし・・・目の前の・・・」

「・・・」

「目の前の花瓶も素敵だ」

「私も・・・そう思ってました・・・社長と好みが一緒なんて光栄です」

部下としての追従ではなく・・・あくまでストレートな意見を述べる美咲。

「だめです・・・マスター・・・私にはできません」

「大丈夫だ・・・ホテルのフロントに薔薇の花束を用意させろ・・・別れ際のラスト・チャンスだ」

「サービス・エースですか」

「レシーブ・エースだ」

「スマッシュ・エースですね」

「お前ならできる」

「はい・・・コーチ」

「これで告白できなければ・・・貴様は無能だ」

お仕事モードの美咲はシェフにアプローチをするが・・・社長本人のアタックを期待したシェフは失望する。

「他からも・・・引き抜きの話が来ているようです」

「そうか・・・」

ラストチャンスのことで頭がいっぱいの零治だった。

部下としての美咲は「出過ぎた真似をした」のではないかと危惧する。

なぜなら・・・緊張のあまり・・・零治の形相は物凄いことに・・・。

「お疲れ様でした」

「忘れものがないか・・・もう一度確認しろ」

零治はトランク一杯の薔薇の花束を睨みつける。

「忘れ物はありません・・・社長?」

「あああああああああああああああ」

思わず叫ぶ零治だった。

深夜の反省会

運転手と秘書が正座してしまうのは・・・旅館時代の名残だったんだなあ・・・。

こうやって長年、和室でミーティングをしていたんだよな。

畳のない生活になると忘れがちだよなあ・・・。

「無理だ・・・」

「社長・・・」

「俺が告白できないのは・・・恥ずかしかったからじゃない」

「・・・」

「告白して・・・お断りされるのが・・・怖かったんだ」

「・・・」

「そんなことになるくらいなら・・・諦める」

「・・・」

「俺は・・・明日から・・・キノコとメダカだけを愛していく」

脚本家のウジウジ根性が爆発しているわけだが・・・かってないほどに・・・はまっていて面白いぞ。

三度の飯よりウジウジした男が嫌いな俺がそう思うのだから間違いない。・・・お前誰だよ。・・・たとえとしてもおかしいだろう。・・・三度の飯はみんな好きだよな。

シェフから「ステイゴールドホテルに決めようと思う」とお断りの電話を受ける美咲。

引き抜き工作失敗の責任を感じるのである。

ここは・・・ちぐはぐさを強調する手もあるが零治だけで充分に面白いのでスルーする演出なんだな。

しかし・・・「仕事にだけ生きることにした」零治はシェフの料理を食べていた。

「今日も御来店くださるとは・・・どうしてお言葉をかけてくださらなかったのです・・・和田社長は絶賛してくださったのに・・・」

「和田は・・・ワインをどのくらい飲みましたか」

「お供の方と一本ですが・・・」

「私は・・・昨夜は二人で三本」

「はい・・・」

「今日は一人で一本・・・」

「はい・・・」

「美味しい料理で酒が進む・・・これが・・・私のメッセージです・・・私は口下手なので」

「・・・社長」

零治の言葉に感激して・・・鮫島ホテルズの新レストラン「五助」に就職することを決意するシェフだった。

「さすが・・・社長だ」と社員の評価が高まる中・・・複雑な表情をみせる美咲だった。

今夜のクライマックス

脚本が説明不足なので演技でカバーする美咲。

つまり・・・自分の失点を社長にカバーされた「安堵」と・・・自分の落ち度を社長に咎められている「不安」が交錯しているのである。

なぜ・・・こうなるかと言うと・・・その説明にあたる時間を堀まひろ(清水富美加)と白浜吾郎(丸山智己)や和田と秘書の恋模様の描写で消費するからである。

どうしても群像劇になってしまう脚本家の特性によるものだが・・・まあ・・・主軸がはっきりしているので気にならない。

もちろん・・・美咲を演じるものにとってはつらいところだが・・・そういう逆境をのりこえてきたものな。

「あさが来た」だって・・・はつのおかげという評価は苦しかっただろう。

だが・・・それが世間というもので・・・「わかる人にわかればいい」でのりきるしかない。

君の軌跡は輝いている。

その真価が発揮される「めだかの孵化のシーン」・・・。

残業する美咲。

零治は社長室のメダカの孵化を見守るために徹夜態勢である。

心にわだかまりを抱えた美咲は夜の社長室をノックする。

「君か・・・」

「ご一緒してもよろしいですか」

「・・・」

零治は扉を開く。

「徹夜ですか」

「孵化したらすぐに隔離しないと・・・親に食べられてしまう・・・」

「社長・・・私に怒っておられますか」

「何故だ・・・」

「私は避けられているような気がします」

「そんなことはないよ・・・」

その時・・・孵化が始る。

ぽん。

ぽん。

びっくりぽん。

大自然の神秘に心を奪われる美咲。

その無垢な横顔に・・・神秘を感じる零治。

「・・・お前が好きだ・・・」

「・・・?」

「え」

「え」

「えええええええええええええええ」

零治と美咲の素晴らしいときめきがお茶の間を圧倒する・・・。

美人すぎて演技力が過小評価されがちな女優の抜群の存在感が・・・。

「うっかり告白してしまう」という主人公の迫真の演技を引きだしているのだ。

主人公とヒロインに「トレビアン」と叫びたい一幕だった。

関連するキッドのブログ→第三話のレビュー

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2016年5月 4日 (水)

〇です(黒木華)○ですか(高月彩良)恋話じゃないってば(オダギリジョー)

趣味と実益を兼ねる・・・なんて甘い響きだろう。

まあ・・・お金儲けの好きな人がお金儲けをする・・・みたいな。

キッドはお金儲けには興味がないので趣味に走るとどんどんお金がなくなって行くわけなのだが・・・。

好きなことを仕事にする・・・なんて甘い響きだろう。

たとえば・・・マンガを読むのが好きな人がマンガ家になるというのはよくある話だが・・・。

そういう人は途中から・・・マンガを描くのが好きになっている場合がある。

もちろん・・・最初からマンガを描くのが好きというのもあるわけである。

読むのも描くのも好きな人は・・・ある程度ジレンマに襲われる。

好きなのは・・・読むことなのか・・・描くことなのか。

そして・・・読む能力と・・・描く能力のバランスの問題もある。

素晴らしい作品を描き、読者に愛され、出版社を儲けさせる・・・そういう人に誰もがなれるわけではないという・・・厳しい現実もな。

そろそろ・・・幻想の甘い生活が終わり・・・恐ろしい現実が・・・接近しているような気配だ。

で、『重版出来!・第4回』(TBSテレビ20160503PM10~)原作・松田奈緒子、脚本・野木亜紀子、演出・福田亮介を見た。柔道選手としてオリンピック出場・金メダル獲得を目指していた黒沢心(黒木華)は負傷によって選手生命を断たれ、幼い頃から好きだったマンガ雑誌の編集者に転身する。つまり・・・マンガばかり読んでいたから負傷して柔道のチャンピオンになれなかったわけである。・・・おいっ。しかし、前向きな性格の心は新天地で「自分」を貫き、週刊コミック誌「バイブス」編集部に新風を巻き起こすのだった。

新人発掘を心がける編集者たちの一攫千金魂・・・。

それは・・・新素材による新商品の開発のようなものである。

そのために・・・コンクール形式の新人賞があり・・・新人作家の勉強会があり・・・持ちこみ原稿の添削がある。

編集者たちはある意味では一般人だが・・・漫画家たちは・・・特殊な人々である。

一般的に考えて・・・特殊な人々は一般人より・・・ハイリスク・ハイリターンだと言える。

「漫画家になりたい」などと言う人にセーフティーネットはあまり用意されていないのだ。

ベテラン編集者とは違い・・・編集者としての経験値は低い心。

しかし、編集長の和田(松重豊)や心の指導担当の五百旗頭(オダギリジョー)は「心のフレッシュな感覚」に期待する。

それは・・・新人だけに許される特殊能力だからである。

みんな・・・そのうち・・・汚れてしまうのだからな。

五百旗頭は・・・新人の大塚シュート(中川大志)を発掘した。

ある程度編集者修業を終えた心も・・・新人育成を許される。

漫画同人誌の即売会が行われるコミックバザールの会場・・・出張漫画編集部のブースが置かれ・・・編集者たちは持ちこまれる原稿を読む。

心機一転して復活した成田メロンヌ(要潤)人気で盛り上がる「バイブスのブース」・・・ブスと言っているわけではありません。・・・気を遣いすぎて変なことになってるぞ。

心は二人の漫画家の卵をゲットする。

画力が素人同然で・・・どの編集者にも相手にされなかった・・・中田伯(永山絢斗)・・・。

自信がなくて声をかけてきた心にだけ原稿を見せた・・・東江絹(高月彩良)・・・。

発掘した二人をプロとしてデビューさせるために・・・心の新人育成ゲームが始ったのだ。

中田伯は・・・絵は下手だったが・・・心の心に迫る「何か」があった。

東江絹は・・・抜群の絵の上手さに比べて・・・ストーリー構成に難があった。

心は・・・二人を現場に慣れさせるために・・・看板漫画家の三蔵山龍(小日向文世)のアシスタントとして採用してもらう。

二人の原稿を見た三蔵山は即時雇用を決める。

手塚治虫はフリーハンドで完全な○を描いたという伝説がある。

東江はほぼ完璧な○を描けるが・・・中田は・・・凸凹を描いてしまうのだった。

それでも・・・三蔵山は・・・「中田くんは・・・素人なのに・・・マンガというものがわかっている」と謎の言葉を残す。

一方で・・・ボーイズラブ的な東江作品にニヤニヤする三蔵山だった・・・おいおいっ。

大きく別けると・・・中田は野生動物、東江はサラブレッドなのである。

しかし・・・東江は傷つきやすい生き物でもある。

「ネーム」(下書き)の段階で心からダメ出しされ・・・自信を失いかけるのだった。

大学生で就職活動を開始する年齢の東江は・・・「プロの漫画家になる夢」を家族には秘密にしていた。

一方・・・ベストセラーの小説「ガールの法則/根本明吾」のコミカライズ(漫画化)を目論む安井(安田顕)は素晴らしいインターネットの世界で公開された東江の「絵」に注目し、即時デビューを本人に告げる。

心の知らないアプローチであるために返事を保留する東江。

「私の・・・東江さんを盗む気ですか」と憤慨する心。

「何言ってるダ・・・モタモタしてるからダ・・・俺たちとちがって漫画家は・・・給料もらってるわけじゃねえ・・・デビューのチャンスがあるなら・・・こっちの方がいいに決まってるダ。嫌なら替わりはいくらでもいるダ」

正論である。

東江は「就職問題」で母親の芳子(中島ひろ子)と激突。

そこへ・・・心が家庭訪問をする。

「私・・・東江さんには・・・素晴らしい才能があると・・・それだけがいいたくて・・・」

「ありがとう・・・私・・・声をかけてもらってうれしかった・・・私は安井さんのお世話になります」

「がんばってください・・・応援しています」

結果として・・・金の卵を安井に奪われた心。

行きつけの店・・・小料理屋「重版」で女将のミサト(野々すみ花)に愚痴る心だった。

「私は・・・五百旗頭さんが・・・欲しい」

酒を吹きだす五百旗頭だった。

「私に・・・五百旗頭さんのような編集者としての能力があれば・・・東江さんを虜にできたのに・・・」

「人と人の出会いには意味がある。上手く行こうと行くまいと・・・相手のことを真剣に考えて・・・関係を築いていくしかないんだよ」

「恋の話ですか・・・」

酒を吹きだす五百旗頭だった。

心に残されたタマは・・・中田のみ・・・しかし・・・アシスタント修行の成果によって・・・中田は○を描けるようになっていたのだった。

一方・・・指導している後輩からタマを盗んだ安井に釘をさす五百旗頭。

「せっかく手にしたタマを大切にしてくださいよ」

「文句あんだか」

「いいえ・・・安井さんは・・・時々・・・新人つぶしちゃうから・・・」

「つぶれる奴が悪いダ」

はたして・・・東江は・・・プロデビューに成功するのか。

そして・・・心は・・・中田と新人賞応募原稿を完成させることができるのか・・・。

戦場は不穏な空気に包まれるのだった。

心の優しい世界に嵐の予感である。

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

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2016年5月 3日 (火)

今日は一日“アニソン”三昧 〜あンな歌にそンな歌にこンな歌 何ンでもありーな感じ!?〜(キッド)

さて・・・異例の一日二本目の記事である。

なにしろ・・・春ドラマは谷間なしのスケジュールになっているので・・・これは「すきま」記事だ。

そもそも・・・このブログは「末期のアナログテレビを観測するものなので・・・再開後はほぼ蛇足である。

人の記憶は薄れゆくもの・・・街宣車が騒がしいこの日のうちにすませておくことにする。

で、『今日は一日“ 〜あンな歌にそンな歌にこンな歌 何ンでもありーな感じ!?〜』(NHK-FM20160430AM9~)を聴いた。2006年5月3日の第1弾から数えて・・・「今日は一日“アニソン”三昧SS(セカンド・ステージ)」(2007年)、「今日は一日“アニソン”三昧 ファイナル」(2008年)、「今日は一日“帰ってきたアニソン”三昧」(2010年)、「今日は一日“アニソン”三昧 Z(ゼット)」(2012年)と続き・・・第六弾目である。思えば十年の歳月が流れている。当時の十代はみな二十代になり、当時の五十代はみな六十代になっているのだった。

この十年はアニソンという文化が・・・ひとつの伝統として認知されるための十年だったと言えるだろう。

十年前の最新曲が今では一昔前の懐かしいナンバーに変わったのである。

アニソンは・・・もちろん・・・アニメの歌である。そこには前提としてのアニメ作品がある。そこにはアニメ制作者という作り手があり・・・作品を享受する受け手がある。どちらが欠けても成り立たない文化である。そこには当然、ビジネスとしての側面もあるが・・・何よりも関係者が捧げる情熱が「特別なもの」を生みだしているわけだ。そのエッセンスが集約されたものが「アニソン」なのである。

日本人のすべてが・・・キッドが「アニソン三昧」を愛するように「アニソン」を愛しているわけではない。それでも・・・「アニソンの世界」の深淵さに触れて・・・「アニソン」に心を動かされる人々が世界中に広がった時代である。

同志諸君には・・・この伝統を受け継いでもらいたい。そしてさらなる革新を遂げてもらいたい。

そうすれば・・・アニソンはさらなる飛躍を成し遂げ・・・永遠になるだろう。

若者たちには・・・古の歌を知ってもらいたい・・・年老いたものには新曲に驚いてもらいたい。

なぜなら・・・それらはいいものだからだ。

キッドはこの番組の意図をそのように妄想する。

初代の司会者は嘉門達夫、デーモン小暮、有働由美子だった。

ベテラン芸能人に混じり・・・有働由美子はこの番組から巣立ったともいえる初々しさである。

同時にNHKのアナウンサーがアニソンについて語るということが・・・アニソンの価値を高めたわけである。

続いて、水木一郎と緒方恵美の二人のアニキが番組の顔となる。歌手と声優というアニソンの担い手が語るアニソン。

そして、第三回からは自らがアニソン・おタクの一人である藤崎弘士が加わって一つのスタイルが形成された。

一人アニキや二人アニキでも藤崎弘士がいればアニソン三昧なのである。

そして・・・今回、アニソン三昧は新たな顔として痛いおタクでもある中川翔子を迎えるのである。

いわば・・・ダブルおタク体制である。

これに・・・初回から番組を構成してきたベテラン放送作家のあべあきらをパーソナリティーとして加え・・・一種の集大成を目指したものと思われる。

アニソンを生みだすアニメのルーツの一つは漫画である。

漫画家でもあり、アニメーターでもある手塚治虫はそのシンボルだと言える。

手塚治虫没後17年目に開始されたアニソン三昧だが・・・「鉄腕アトム」をはじめとする手塚原作アニメは今もなお・・・輝きを放っている。

そして・・・アニメの原作者たちも・・・次々と旅立っていく。石ノ森章太郎も赤塚不二夫も水木しげるも藤子・F・不二雄も去って行った。

それでも・・・その世界から生み出されたアニソンは・・・魂の響きを残しているのである。

同じように歌い手たちも・・・すでにこの世にはいない人も多い。

名も知れぬアニメの作り手たちも同様だ。

それでも・・・アニソンは歌い継がれていくのだ。

カルチャーを築きあげたベテランたちが歌い・・・トラディショナルを目指す若者たちが歌う。

そして・・・生死を越えて歌い手たちは蘇る。

さよならこそが新しい時代の始りなのである。

そんな・・・184曲がここにありました。

01.宇宙戦艦ヤマト(LIVE) / ささきいさお(「宇宙戦艦ヤマト」より)

「アニメソング界の大王」と呼ばれるささきいさおは1942年5月16日生まれの73歳である。健在で生歌を披露し、リクエストはがきを読むのだった。

02.紅蓮の弓矢 / Linked Horizon(「進撃の巨人」より)
03.デリンジャー / 刀根麻理子(「CAT’S・EYE」より)
04.コンディショングリーン~緊急発進~ / 笠原弘子(「機動警察パトレイバー」より)
05.戦え!宇宙の王者 / ささきいさお、こおろぎ’73(「宇宙円盤大戦争」より)
06.ジムボタンの歌 / 堀江美都子、こおろぎ’73(「ジムボタン」より)
07.KA・BU・TO / 串田晃(「カラス天狗カブト」より)
08.誰よりも遠くへ / 日下まろん(「トム・ソーヤーの冒険」より)
09.すきだッ ダンガードA / ささきいさお、ヤング・フレッシュ(「惑星ロボ ダンガードA」より)10.バケツのおひさんつかまえた / 大野進、中山千夏(「じゃりン子チエ」より)

大野進も2010年9月21日、故人となった。

11.青春は舟 / ダ・カーポ(「青春アニメ全集」より)
12.おれはグレートマジンガー / 水木一郎、コロムビアゆりかご会(「グレートマジンガー」より)
13.GATE Ⅱ ~世界を超えて~ / 岸田教団&THE明星ロケッツ
(「GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」より)
14.ジョジョ~その血の運命~ / 富永TOMMY弘明(「ジョジョの奇妙な冒険」より)
15.恋のミクル伝説 / 朝比奈みくる(後藤邑子)(「涼宮ハルヒの憂鬱」より)
16.陽だまり / 村下孝蔵(「めぞん一刻」より)

村下孝蔵も1999年6月24日、故人となった。

17.涙の半分 / 田村英里子(「アイドル伝説 えり子」より)
18.悪魔くん / こおろぎ’73&WILD CATS(「悪魔くん」より)
19.サイレント・ヴォイス / ひろえ純(「機動戦士ガンダムZZ」より)
20.不思議色ハピネス / 小幡洋子(「魔法のスター・マジカルエミ」より)
21.piece of youth / ChouCho(「ガールズ&パンツァー 劇場版」より)
22.マッハ・ゴー・ゴー・ゴー / ヴォーカル・ショップ(「マッハGoGoGo」より)
23.隼人のテーマ / 泉谷広、ハニー・ナイツ(映画「空飛ぶゆうれい船」より)
24.狼少年ケン / 西六郷少年合唱団(「狼少年ケン」より)
25.ジャングル大帝のテーマ / 平野忠彦(「ジャングル大帝」より)
26.ワンダースリー / ヴォーカル・ショップ、白石冬美、近石真介、小島康男(「W3」より)
27.タイプ:ワイルド / 松本梨香(「ポケットモンスター」より)
28.イェイ!イェイ!イェイ! / 吉田仁美(「スマイルプリキュア!」より)
29.元祖天才バカボンの春 / こおろぎ’73、コロムビアゆりかご会(「元祖天才バカボン」より)
30.夏のミラージュ / 和田加奈子(「きまぐれオレンジ☆ロード」より)
31.シュガーソングとビターステップ / UNISON SQUARE GARDEN(「血界戦線」より)
32.ラピスラズリ / 藍井エイル(「アルスラーン戦記」より)
33.mama I Love You / B∀G(「ジャングルの王者ターちゃん」より)
34.パラダイスドラキュラ / 内海賢二、こおろぎ’73(「ドン・ドラキュラ」より)
35.ナージャ!! / 本田美奈子.(「明日のナージャ」より)

本田美奈子も2005年11月6日、故人となった。

36.オレンジのダンシング / 高橋みゆき(「ななこSOS」より)
37.鳥の詩 / Lia(「AIR」より)
38.メイプルタウン物語 / 山野さと子(「メイプルタウン物語」より)
39.輝け!!ダグオン(LIVE) / Nieve(「勇者指令ダグオン」より)
40.風の中のプリズム(LIVE) / Nieve(「勇者指令ダグオン」より)
41.HEART TO HEART / 彩子(「勇者警察ジェイデッカー」より)
42.僕らの冒険 / A-mi(「黄金勇者ゴルドラン」より)
43.エルガイム-Time for L-GAIM- / MIO(「重戦機エルガイム」より)
44.トライダーG7のテーマ / たいらいさお(「無敵ロボ トライダーG7」より)
45.銀河疾風サスライガー / MOTCHIN(「銀河疾風サスライガー」より)
46.ハッピー2・ダンス / YASU(「クッキングパパ」より)
47.食いMONOソング / 三ツ矢雄二(「さすがの猿飛」より)
48.笑顔になる / リョウときりん(佐藤利奈と大亀あすか)(「幸腹グラフィティ」より)
49.SUNDAY / THE BABYSTARS(「焼きたて!!ジャぱん」より)
50.さっちゃんのセクシーカレー / 大森靖子(「食戟のソーマ」より)

51.IN MY WORLD / ROOKiEZ is PUNK’D(「青の祓魔師」より)
52.ANGELUS -アンジェラス- / 島谷ひとみ(「犬夜叉」より)
53.キャプテンハーロック / 水木一郎(「宇宙海賊キャプテンハーロック」より)
54.残酷な天使のテーゼ / 高橋洋子(「新世紀エヴァンゲリオン 」より)
55.君=花 / pigstar(「純情ロマンチカ」より)
56.DAN DAN 心魅かれてく / FIELD OF VIEW(「ドラゴンボールGT」より)
57.SUPER HERO / Tommy Snyder(「ルパン三世」より)
58.HELLO, VIFAM / TAO(「銀河漂流バイファム」より)
59.X.U. / SawanoHiroyuki[nZk]:Gemie(「終わりのセラフ」より)
60.rise / ORIGA(「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」より)
61.BLUE / MAI YAMANE(「COWBOY BEBOP」より)
62.The One / Backstreet Boys(「花田少年史」より)
63.Let Me Hear / Fear, and Loathing in Las Vegas(「寄生獣 セイの格率」より)
64.PUNCH LINE! / しょこたん?でんぱ組(「パンチライン」より)
65.Love your enemies / 分島花音(「劇場版『selector destructed WIXOSS』より」)
66.絶世スターゲイト / 蒼井翔太(「ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション」より)
67.いただきマンボ / 田中真弓(「イタダキマン」より)
68.よろしくチューニング / STR!X(「よろしくメカドック」より)
69.さめない夢 / 大和田りつこ(「赤毛のアン」より)
70.不完全燃焼 / 石川智晶(「神様ドォルズ」より)
71.凛麗 / 喜多村英梨(「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞曲」より)
72.祝(ハピ☆ラキ)ビックリマン / 高取ヒデアキ(「祝(ハピ☆ラキ)ビックリマン」より)
73.キングゲイナー・オーバー! / 福山芳樹(「OVERMANキングゲイナー」より)
74.十六夜涙 / 吉岡亜衣加(「薄桜鬼」より)
75.運命のルーレット廻して(LIVE) / La PomPon(「名探偵コナン」より)
76.謎(LIVE) / La PomPon(「名探偵コナン」より)
77.恋はずーく☆ダンス(LIVE) / La PomPon(「秘密結社鷹の爪 DO」より)
78.Cry for the Truth(LIVE) / MICHI(「六花の勇者」より)
79.リアリ・スティック(LIVE) / MICHI(「クロムクロ」より)
80.Checkmate!?(LIVE) / MICHI(「だがしかし」より)
81.No buts!(LIVE) / 川田まみ(「とある魔術の禁書目録Ⅱ」より)
82.緋色の空(LIVE) / 川田まみ(「灼眼のシャナ」より)
83.JOINT(LIVE) / 川田まみ(「灼眼のシャナII 」より)
84.Contrail~軌跡~(LIVE) / 川田まみ(「蒼の彼方のフォーリズム」より)
85.はじめてのチュウ / あべあきら(「キテレツ大百科」より)
86.トゥッティ! / 北宇治カルテット(「響け!ユーフォニアム」より)
87.Allegro Cantabile / SUEMITSU & THE SUEMITH(「のだめカンタービレ」より)
88.坂道のメロディ / YUKI(「坂道のアポロン」より)
89.光るなら / Goose house(「四月は君の嘘」より)
90.NO,Thank You! / 放課後ティータイム(「けいおん!!」より)
91.Brand New Breeze / カノン(「金色のコルダ~primo passo~」より)
92.夜明けのロゴス / May’n(「アクエリオンロゴス」より)
93.サムライ・ハート / 森口博子(「鎧伝サムライトルーパー」より)
94.Exterminate / 水樹奈々(「戦姫絶唱シンフォギアGX」より)
95.abnormalize / 凛として時雨(「PSYCHO-PASS サイコパス」より)
96.希望峰 / Strawberry JAM(「スパイラル-推理の絆-」より)
97.ロックマンのテーマ~風を突き抜けて~ / 橋本仁(「ロックマンエグゼ」より)
98.たった1つの想い / KOKIA(「GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-」より)
99.爆アツ!ガイストクラッシャー / きただにひろし(「ガイストクラッシャー」より)
100.比翼の羽根 / eufonius(「ヨスガノソラ」より)

101.風のララバイ / 宮里久美(「メガゾーン23」より)
102.火の鳥 / 渡辺典子(「火の鳥・鳳凰編」より)
103.青春サツバツ論 / 3年E組うた担(渚&茅野&業&磯貝&前原)(「暗殺教室」より)
104.fantastic dreamer / Machico(「この素晴らしい世界に祝福を!」より)
105.それは小さな光のような / さユり(「僕だけがいない街」より)
106.はなまるぴっぴはよいこだけ / A応P(「おそ松さん」より)
107.Groovy! / 広瀬香美(「カードキャプターさくら」より)
108.マイペース大王 / manzo(「げんしけん」より)
109.ハナノイロ / nano.RIPE(「花咲くいろは」より)
110.全力バタンキュー / A応P(「おそ松さん」より)
111.アイデンティティ / 酒井ミキオ(「落第騎士の英雄譚」より)
112.nowhere / FictionJunction YUUKA(「MADLAX」より)
113.FLY HIGH!! / BURNOUT SYNDROMES(「ハイキュー!!セカンドシーズン」より)
114.FUTURE FISH / STYLE FIVE(「Free!-Eternal Summer-」より)
115.勇者王誕生!(LIVE) / 遠藤正明(「勇者王ガオガイガー」より)
116.CHA-LA HEAD CHA-LA(LIVE) / 影山ヒロノブ(「ドラゴンボールZ」より)
117.戦士よ、起ち上がれ!(LIVE) / 遠藤正明(「魔装機神サイバスター」より)
118.もののけ姫(LIVE) / 遠藤正明(映画「もののけ姫」より)
119.GET THE WORLD(LIVE) / 影山ヒロノブ(「爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP」より)
120.夢光年(LIVE) / 影山ヒロノブ(「宇宙船サジタリウス」より)
121.爆闘宣言!ダイガンダー(LIVE) / 遠藤正明(「爆闘宣言ダイガンダー」より)
122.BELIEVE IN NEXUS(LIVE) / 遠藤正明(「遊☆戯☆王5D’s」より)
123.HEATS(LIVE) / 影山ヒロノブ(OVA「真ゲッターロボ 世界最後の日」より)
124.僕たちは天使だった(LIVE) / 影山ヒロノブ(「ドラゴンボールZ」より)
125.BRAVE HEART(LIVE) / 鋼鉄兄弟(影山ヒロノブ&遠藤正明)(「爆走兄弟 レッツ&ゴー!!MAX」より)
126.聖闘士神話~ソルジャー・ドリーム~(LIVE) / 影山ヒロノブ&遠藤正明&中川翔子(「聖闘士星矢」より)
127.THE HERO! ~怒れる拳に火をつけろ~ / JAM Project(「ワンパンマン」より)
128.恋色に咲け / CHiCO with HoneyWorks(「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」より)
129.ハート・ウォーカー Heart Walker / 神谷明(「未来警察ウラシマン」より)未来警察ウラシマン
130.徒然モノクローム / フジファブリック(「つり球」より)
131.リトルグッバイ / ROCKY CHACK(「ゼーガペイン」より)
132.アンジェのおまかせ / 広美和子(「女王陛下のプティアンジェ」より)
133.割れたリンゴ / 渡辺早季(種田梨沙)(「新世界より」より)
134.荒涼たる新世界 / 聖飢魔II(「テラフォーマーズ リベンジ」より)
135.地獄の沙汰も君次第 / 地獄の沙汰オールスターズ(「鬼灯の冷徹」より)
136.The Other self / GRANRODEO(「黒子のバスケ」より)
137.自由への扉 / ラプンツェル(中川翔子)(「塔の上のラプンツェル」より)
138.Proof / angela(「蒼穹のファフナー」より)
139.青春にかけろ! / VIP(「新・エースをねらえ!」より)
140.君は何かができる / 99Harmony(「キャプテン」)
141.絶対無敵☆Fallin’ LOVE☆ / 地球防衛部(「美男高校地球防衛部LOVE!」より)
142.ときめきポポロン♪ / チマメ隊(「ご注文はうさぎですか??」より)
143.愛・おぼえていますか / 飯島真理(劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」より)
144.Melody / Pile(「境界のRINNE」より)
145.わたしにできること / 中島愛(「こばと。」より)
146.Step by Step! / ミス・モノクローム(「ミス・モノクローム-The Animation- 2」より)
147.天使の絵の具 / 飯島真理(劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」より)
148.Stella-rium / 鹿乃(「放課後のプレアデス」より)
149.ラブレターのかわりにこの詩を。 / 星羅(「テガミバチ」より)
150.レースのカーディガン / 坂上香織(「キテレツ大百科」より)
151.微笑みの爆弾 / 馬渡松子(「幽☆遊☆白書」より)
152.future / HIRO-X(「テニスの王子様」より)
153.ヒョコポン関係 / スージー松原(「GU-GUガンモ」より)

スージー松原(松原みき)も2004年10月7日、故人となった。

154.君の中の英雄 / 栗林みな実(「機動戦士ガンダムAGE」より)
155.ASTRO LE PETIT ROBOT / FRANK OLIVIER(アルバム「GENERATION Dorothee」より)
156.HEIDI / DANIELE LICARI(アルバム「GENERATION Dorothee」より)
157.DRAGON BALL / ARIANE(アルバム「GENERATION Dorothee」より)
158.海色 / AKINO from bless4(「艦隊これくしょん -艦これ-」より)
159.君がいる限り / ステファニー(「キスダム -ENGAGE planet-」より)
160.Be mine! / 坂本真綾(「世界征服~謀略のズヴィズダー~」より)
161.ピュアストーン / 結城梨沙(「赤い光弾ジリオン」より)
162.ワシャWaniサンバ / 間嶋里美、オルケスタ・デル・ワニ(「ストップ!!ひばりくん!」より)
163.アレアレアラレちゃん / 水森亜土、こおろぎ’73(「Dr.スランプ アラレちゃん」より)
164.ムサシ!BUGEI伝!! / 子門真人(「からくり剣豪伝ムサシロード」より)
165.マジLOVEレボリューションズ / ST☆RISH(「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ」より)
166.Star!! / CINDERELLA PROJECT(「アイドルマスター シンデレラガールズ」より)
167.星瞬COUNTDOWN / team鳳(「スタミュ」より)
168.Beyond the Bottom / Wake Up,Girls!(劇場版「Wake Up,Girls! Beyond the Bottom」より)
169.ハロー世界 / 少年ハリウッド(「少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 49-」より)
170.僕たちはひとつの光 / μ’s(劇場版「ラブライブ! The School Idol Movie」より)
171.デリケートに好きして / 太田貴子(「魔法の天使クリィミーマミ」より
172.ミレナリオ / ELISA(「魔法科高校の劣等生」より)
173.コネクト / ClariS(「魔法少女まどか☆マギカ」より)
174.ハローララベル / 堀江美都子、コロムビアゆりかご会(「魔法少女ララベル」より)
175.魔法使いチャッピー / シンガーズ・スリー(「魔法使いチャッピー」より)
176.ダッシュ!マシンハヤブサ / 水木一郎、コロムビアゆりかご会(「マシンハヤブサ」より)
177.City Hunter~愛よ消えないで~ / 小比類巻かほる(「シティーハンター」より)
178.薄ら氷心中 / 林原めぐみ(「昭和元禄落語心中」より)
179.信じるかい / 水木一郎(「ムーの白鯨」より)
180.スターライト・セレナーデ / 山瀬まみ(「機甲戦記ドラグナー」より)
181.春擬き / やなぎなぎ(「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続」より)
182.いきなりWant You! / ピンク・クロウズ(「昭和アホ草紙 あかぬけ一番!」より)
183.Butter-Fly / 和田光司(「デジモンアドベンチャー」より)

和田光司も2016年4月3日、故人となった。

184.マジンガーZ(LIVE) / 水木一郎(「マジンガーZ」より)

「アニメソング界の帝王」と呼ばれるアニキこと水木一郎は1948年1月7日生まれの68歳である。健在で生歌を披露し、リクエストはがきを読むのだった。

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他人の気持ちなんてわからない(福山雅治)約束なんて破るためにあるのよ(夏帆)守るためじゃ(藤原さくら)

歌というものを嫌いな人がいる。

歌というものを好きな人がいる。

自分で歌うのは好きだが他人の歌を聴くのは嫌いだという人がいる。

そういう人がいると・・・ドラマでの歌のシーンはマイナス要素になってしまう。

人が自分の好きなことを追及するのはいい社会だと誰かが言う。

しかし・・・嫌いなものをいつか好きになっていくのも人生ではないのか。

なるべく優しい社会が時々、嫌いになることがある。

だって・・・社会は本来、厳しいものじゃないのか・・・と思うから。

で、『ラヴソング・第4回』(フジテレビ20160502PM9~)脚本・倉光泰子、演出・平野眞を見た。物語にはダレ場というものがある。状況を説明するために必要らしい。もちろん・・・そこに映る人間が魅力的であれば・・・どれだけ退屈な場面でも・・・それなりに耐えられる。そのためにスターが起用されるという考え方もある。ただし・・・ダレ場であってもそれなりに注意すべき点はある。たとえば・・・主人公の「善」を際立たせるために・・・脇役に「悪」を配置しすぎると・・・話が曇る場合がある。

もちろん・・・それもまた「説明」の一種なのである。

今回で言うと・・・うさんくさい音楽制作会社のスカウトマンである水原亜矢(りょう)の設定が甘い。

ライブハウス「S」のステージで佐野さくら(藤原さくら)の「歌」を見出す役割であるが・・・ステージ上のさくらの小児期発症流暢障害(吃音症)を聞き逃したのか・・・それともステージ上だけの緊張による所謂あがった状態と考えたのかが・・・微妙なのである。

上司の桑野喜和子(りりィ)は何故か職場でギャンブルに興じている。

大物を見出したことを「ハネマン」と表現するスカウトマン。

スカウトマンがどれほど・・・さくらの歌に熱中したのかがわからない。

いかにも・・・さくらと神代広平(福山雅治)のパートナーシップの障害として設定されたので・・・スカウトマンや上司の人格は二の次の描写と感じられるのだ。

さくらは結局、「大切な約束」を破ってしまうのだが・・・桑野と水原があまりにも悪い印象で描かれているために・・・さくらがチャンスを逃がしてしまったようには見えないのだった。

つまり・・・ドラマとしてはそれでいいのか・・・という話なのである。

今回は演出家がどちらかといえば・・・淡々としているタイプなので・・・ダレ場が完全にダレているような気がします。

レコード会社が悪で・・・アーティストが善なんて・・・陳腐にも程があるものな。

もちろん・・・本質的にはそうではない。

いい年して・・・若い女(石川恋)と朝からイチャイチャしている人生を投げた男・・・広平。

音楽の神に見捨てられた以上・・・女性との行為に没頭はするが・・・愛を語ったりはしないのである。

広平にとって「愛」は神聖な行為ではないのだ。

つまり・・・ベッドを共にした相手を人間とは思っていない・・・偽善者である。

それを悪と感じなければ・・・音楽プロデューサーらしい桑野が・・・「たぐいまれな才能をつぶした極悪人」として広平を糾弾する心情が見えてこない。

単なる意地悪なおばさんになってしまうんだな。

それが誤解なのか・・・それとも広平の本質なのかで・・・このドラマはまるで違う方向に向かうわけである。

その点をはっきりさせるとドラマが終わってしまうようでは・・・アレなんだよね。

もちろん・・・広平の心を黒くした「宍戸春乃事件」の全貌を「謎」としてひっぱりたい気持ちもわからなくはないが・・・お茶の間は気が短いのである。

本物だった春乃と・・・偽物だった広平ということで本当にいいのか・・・それで話が面白くなるのか・・・非常に危うい気がします。

何故か・・・広平の引越しを手伝うまでに仲良くなった天野空一(菅田将暉)は「S」で謝礼代わりの食事をふるまわれる。

そこへ・・・スカウトの水原がやってくる。

広平は・・・さくらと水原の顔合わせをセッティングする。

「シンガーとしてのプロデビュー」の話を聞き・・・空一は舞い上がるのだった。

さくらは部屋でギターの練習に熱中している。

姉代わりの中村真美(夏帆)はさくらをからかう。

「随分・・・熱心じゃねえ・・・」

「うううう上手くなりたいもの・・・」

「失恋したくせに・・・」

「てででも・・・ひひ一人でも歌えるようになりたい」

「そうか」

そこへ・・・空一が乱入する。

「スカウトがきた・・・」

「なんで・・・あんたがそんなこと・・・」

「あの人の引越し手伝った」

「二人は別れたの?」

「なんだか・・・大人の世界では・・・恋人じゃなくても・・・一緒に暮らすんだってさ」

「・・・」

広平と宍戸春乃(新山詩織)の妹の宍戸夏希(水野美紀)の関係性もお茶の間的には微妙に隠蔽されている。

夏希が広平に特殊な感情を抱いているのは明らかだが・・・広平はそれを知って無視しているのか・・・よほど鈍感なのか・・・同志として捉えているのか・・・そういうものは冒頭の眼鏡っ子と同様に人でなしと善人の狭間で揺れている。

眼鏡をとったら美少女的に歌ったら吃音という悪い声が美声となる・・・少女マンガ的展開とアンバランスなのである。

まあ・・・初めての連続ドラマだからな・・・ではすまない部分だ。

「よかったじゃない・・・まだ・・・脈ありじゃいね」

「ででも・・・もう・・・カカカカカウンセリングしかしないって約束した」

「約束なんて破るためにあるんじゃわい」

「まままま守るためじゃあ」

真実は微笑んだ。

真実は・・・さくらを慈しむ。

さくらは・・・真実にとって・・・肉親以上の妹分なのである。

しかし・・・親に捨てられた子供の気持ちを誰もが理解できるわけではない。

真実がさくらに抱く気持ちも本当は不透明なのである。

ここまでスルーしてきたが・・・広平がカウンセラーとして勤務する病院の入院患者に湯浅志津子(由紀さおり)という老女がいる。はっきりと説明はされないが・・・末期癌で死期が近いのだろう。

「私には夫の他に好きな人がいた」

・・・などという艶話を広平に話す志津子はどこか精神に変調をきたしているらしい。

「看護師が私に毒を点滴するの」などと言って騒いだりもする。

広平は若い看護師(武田玲奈)を慰める。

「君はいつも優しいからあの人は君に甘えているのかもしれない。死を間近に控えた人の気持ちがどんなものか・・・実際にはわからない。けれど君にはあの人にいつものように優しく接してもらいたい・・・」

認知症患者の言うことには肯定的に応じるのが望ましいという見識がある。

しかし・・・その言葉の空虚さを思うと人生に嫌気がさす人もいる。

呆けた老女はクソババアそのものだからである。

しかし・・・真実の気持ちをぶつけたところで・・・空虚なことには変わりはない。

そういうやるせなさが全編に漂うこのドラマは素晴らしいとも言えるし・・・エンターティメントとしてはどうなんだ。

水原はさくらと会い、広平も同席する。

さくらは炭酸水を炭酸水と知らずにのみむせる。

水原はさくらが吃音症であると知り・・・商品化を危ぶむのだった。

「施設育ちで・・・吃音症か」

桑野はウイークポイントが時にはセールスポイントであることを心得ているようだ。

しかし・・・資料の中に伴奏者の広平の名を発見し眉をひそめる。

桑野は「宍戸春乃事件」の関係者だったらしい。

桑野は広平を急襲する。

「あの子とどんな関係なの」

「ただの傍観者ですよ」

「あなたの関係者なら・・・私は手を引くわ」

「私はただの臨床心理士です」

「才能のあるものには・・・かならずそれをつぶそうとするものがつきまとうものよ・・・かってのあなたのようにね」

「・・・」

さくらに再び水原からの連絡が入る。

さくらは・・・救われたような気分になる。

さくらは広平と屑かごに空き缶を投げる勝負を挑む。

さくらは一度で入れ・・・広平は外す。

「もっかい・・・」

さくらは広平が成功するまで続けさせる。

さくらは・・・甘える。

失われた父親を広平に見出す。

遊びをせがむことが・・・さくらにとってせつない愛情表現なのである。

広平は御褒美を与える。

しかし・・・さくらを性的対象とはしない。

広平の心を疼かせる特別な輝きをさくらは持っている。

その聖域に踏み込むことはできないのだ。

さくらの付き人を買って出る空一。

しかし・・・唐突に渡辺涼子(山口紗弥加)が関与する詐欺まがいのビジネスでアルバイトを始めた空一は・・・トラブルに巻き込まれ・・・さくらは水原との約束を反故にする。

身柄を引き取りに来た真実は空一を詰る。

「せっかく・・・さくらが前を向こうとしているのに・・・あんたが足をひっぱってどうすんのじゃ」

「勘弁してつかあさい・・・」

「それじゃ・・・すまないんだよ」

事情を知った広平は桑野を訪ねる。

「あんたは関係ないんだろう」

「しかし・・・一度、あの子の歌を聞いてやってほしい」

「ギターが少しばかり引けても・・・楽曲をそこそこ仕上げても・・・それじゃ食っていけない・・・あの子の歌は特別なのかもしれない。彼女がそうだったようにね・・・でも、結局・・・才能のないものにひきづられて・・・落ちていくことになるのさ・・・知り合いが傷害事件を起こすような子には・・・運がない・・・運がなけりゃそれまでなんだよ・・・この世界じゃ」

沸き上がる・・・なんらかの感情を・・・必死に抑え込む広平だった。

さくらに泣いてわびる空一。

「なななな泣くことないよ」

「でも・・・俺はとりかえしのつかないことを・・・」

「きききき気にすることなんて・・・ない」

さくらに慰められ・・・気持ちが爆発した空一は・・・さくらの唇を奪うのだった・・・。

その頃・・・広平も・・・抑えきれない衝動を抱えていた。

聖なるものを・・・守らなければならない。

さくらの歌を・・・。

それが愛と呼べるものなのかどうか・・・お茶の間はもちろん・・・広平にも定かではないのである。

ダレ場とはいえ・・・定かでないことが多過ぎる上に・・・さくらに歌うチャンスを与えないとは・・・がっかりだな。

来週は・・・母の日明けか・・・。

カレンダー的には微妙なところだな・・・。

まあ・・・本題的には父の日・・・月9としてはアレだけどな。

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2016年5月 2日 (月)

いざとなれば芝居を打つ手があるじゃない(長澤まさみ)

人は役者、人生は一幕の舞台・・・である。

学ぶということは真似るということで・・・子供は親の真似をして人というものになっていく。

ものまねは芝居の原点である。

真似ることは演じることでもある。

男の子は男の子の役柄を演じ、女の子は女の子の役柄を演じる。

主人は主人を・・・奴隷は奴隷を演じている。

恋人であればいかにも恋人風に振る舞う。

やがて・・・本心と演技は一体化し・・・いかにもその人になっていく。

口汚くののしり続ければ・・・身も心も汚れて行くのである。

私はただ悪ぶっているだけ・・・という人はすでに悪なのである。

悪に報いがあるように・・・悪の演技にも報いはある。

冷たい官吏を装う人はまさに冷たい官吏なのである。

真実が一つの嘘であるように・・・嘘こそがひとつの真実なのである。

で、『真田丸・第17回』(NHK総合20160501PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・土井祥平を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は豊臣家滅亡の立役者・戦下手の代名詞・空気が読めない男・石田三成の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。待望の三成キターッですねえ。「再会」という縛りで重ねてたたみかける展開。茶々と信繫の再会、家康の正室となった旭姫と秀吉の母の再会、秀吉と家康の再会、そして行方不明の姉と弟が再会・・・一方で・・・芝居を演ずることを裏で重ねて行く。真田を徳川に攻めさせる芝居、歌舞伎という芝居、茶々から逃れるための恋仲の芝居、昌幸の打つ手がある装いの芝居、秀吉と家康の見え透いた芝居、そして・・・茶々の魔性の芝居、再会する母と子の芝居・・・虚々実々の駆け引きに・・・翻弄される見事な群像劇でございましたねえ。

Sanada017天正十四年(1586年)七月、徳川家康は甲斐国甲府城を出陣し信濃国小諸城の兵力を増強。島津義久は肥後国八代に出陣。秀吉は島津討伐を決意。八月、羽柴秀吉は家康に真田攻めの停止を勧告。家康は上田城攻略を中止。秀吉は越中国の佐々成政を攻める。成政はただちに降伏。秀吉は成政の臣従を赦す。島津勢は筑前国に侵攻。秀吉の命により、安芸国の毛利輝元、伊予国の小早川隆景、出雲国の吉川元春が九州に出陣。九月、秀吉は秀吉は正親町天皇から豊臣の姓を賜る。土佐国の長宗我部元親が豊後国の大友勢に助勢する。十月、豊臣秀吉の生母が三河国岡崎城に入城、家康は遠江国浜松城で上洛を決意、大坂城にて秀吉に臣従する。島津支配の豊前小倉城を豊臣軍団が陥落させる。秀吉の軍師・黒田官兵衛が九州諸将に対し寝返り工作を開始。島津義弘は阿蘇山を越え豊後に侵攻。十一月、家康は正三位権中納言に叙任される。大友勢の豊後国佐伯惟定は島津勢の撃退に成功。

出雲のお国は尼子一族の支配した八杉の忍びに属するくのいちである。

尼子氏を援助した秀吉は八杉の一族を出雲の尼子水軍衆とともに配下におさめている。

秀吉は信長の武将として成長する過程で各地の忍び衆をある時は滅亡させ、ある時は靡かせてきた。

竹中半兵衛との関係が深い飛騨の影衆、弟・秀長に属する大和衆、根来衆、そして、石田三成が支配する近江犬神衆など・・・様々な忍軍の上忍なのである。

自身が信長の忍びであった秀吉は・・・術者としても超一流だった。

真田幸村を擁する真田昌幸も、服部半蔵を従える徳川家康も秀吉自身にはうかつに手がだせないほどである。

今や、天下を手中に収めつつある秀吉の諜報網は九州の一部や東北地方を除外すればほぼ完成されていた。

琵琶湖周辺に草(土着した工作員)を持つ真田一族だったが・・・うかつに動けば、秀吉の忍びにたちまち狩られてしまう。

そのために・・・真田一のくのいちと称される真田昌幸の娘・お雪は渡り巫女として出雲のお国一座に拾われる格好で・・・漸くその一端に紛れ込んでいる。

八杉衆は出雲から能登までの日本海沿岸を拠点とする海賊衆であり・・・秀吉の山陰地方における水軍衆でもあった。

八杉の海賊衆の船に乗りお国の一座は出雲大社のスサノオ信仰伝播を旗印に沿岸地方を巡察するのだ。

お国が京の都に上るのは秀吉の上洛にあわせて斥候の結果を報告するためである。

秀吉の馬廻り衆となった信繫は霧隠才蔵(くのいちお峰)によって漸くお雪とツナギ(接点)を持つことができた。

「お雪様・・・お久しぶりでございます」

「お峰か・・・」

「近江に忍ぶ河原衆に・・・昌幸様の上洛を急かせ・・・と信繫様からの伝言をお願い申しあげます」

「父上も・・・駆け引きが過ぎますな・・・」

「信繫様は・・・九州征伐は来年中に決着すると見通しております」

「どうもそのようじゃ・・・」

「お屋形(昌幸)様がそれより前に上洛しなければ・・・真田一族は危ういとお考えです」

「あの子は敏いからのう・・・」

京の河原で言葉を交わした二人は・・・それぞれの道を立ち去る。

その頃・・・大坂城では寧が悋気に身悶えている。

「いくら・・・信長様の姪御とはいえ・・・あのものは・・・好かぬ・・・」

寧は良妻賢母であったが・・・時々、腹の虫が騒ぐのだった。

これまでも秀吉の愛妾を何人か闇に葬っている。

城内での茶々の言動が腹にすえかねた寧は・・・茶々の膳に毒をもる。

「う・・・」

突然、吐血した茶々はその場に倒れ伏した。

秀吉は上洛中で留守である・・・侍女たちは騒然とする。

しかし、一瞬の後・・・茶々はむくりと起きあがる。

蒼ざめた侍女たちを一瞥した茶々はけろりとした顔で告げる。

「今日は・・・食が進む・・・膳のお代りを持て・・・」

事の次第を聞いた寧は歯ぎしりをした。

不死身体質の茶々に毒は効かないのだ。

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2016年5月 1日 (日)

オリオン座流星群は秒速66㎞です(福士蒼汰)私の胸に秘めた激情(土屋太鳳)ゲストです。(比嘉愛未)

修羅場後で腕が重い・・・。

モニターもまぶしいぞ。

人生の終盤戦だからな・・・。

終盤を迎えてから長いんだよ。

作品にこめられたメッセージをどう読み解くか・・・そういう楽しみ方があるが・・・そういうことが楽しくない人もいる。

作者はメッセージがあるから・・・表現するのだが・・・何もかも忘れて楽しんでもらいたいとも思っている。

押し付けがましい主張は鬱陶しいものだが・・・時にはそれがためになることがないわけではない。

いつか親心が伝わるといい。

その時、親がいないのが理想である。

親孝行したい時には親はなし・・・それこそが理想なのである。

だって・・・寂寥感にうっとりできるからな。

死者たちは・・・生者になんの見返りももとめない。

生者はただ感謝の気持ちを捧げるしかないのだ。

で、『お迎えデス。・第2回』(日本テレビ20160430PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・南雲聖一を見た。たとえば、「宇宙戦艦ヤマト」はさよならから始る物語である。地球に別離の挨拶をして旅立つ勇者たち。残されたものはただ手をふるしかない。しかし、勇者たちの冒険はそこからスタートするのである。春は別れと出会いの季節だが・・・故郷を離れて新天地に向かった人々のドラマも今、始ったばかりなのである。そこには想像を絶する苦難が待っているだろう。だが・・・人生から旅立った人たちに残されているのは・・・沈黙だけなのだ。彼らの言葉は届かない・・・一部の特別な人たち以外には・・・。

不慮の事故で死亡した緒川千里(門脇麦)の葬儀に列席した後で・・・突然、死者の亡霊や死神を霊視する特殊能力が発現した明櫻大学ロケット研究会のエンちゃんこと堤円(福士蒼汰)・・・。

さらに・・・死者の霊を憑依させることができる超レアな特殊能力さえ保持する円だった。

美しくナイスボディの女子大生・阿熊幸(土屋太鳳)に誘われて、「彷徨う死者の霊を成仏させるバイト」を開始する円・・・。

あの世とこの世の狭間では天使たちが・・・死神として二人を雇用しているらしい。

しかし・・・このドラマでは・・・死神たちも死者の霊である気配がある。

あの世とこの世の狭間のことを誰も知らないのでどんな設定も可能だからな・・・。

まあ・・・それはそれとして・・・今回のこの世に未練が残る死者は・・・長い闘病生活の果てに病死したばかりの中学生・和弥(加部亜門)だった。

和弥の心残りは超美人の看護師・瑞江(比嘉愛未)だった。

まあ・・・95%くらい性欲でできているお年頃だからな。

「一緒に観覧車に乗る約束を果たしてないから・・・」

「そんなこといってあわよくばチュウでもするつもりか」とは言わない円だった。

円自身が・・・男女交際について疎いからである。

先日も・・・幸に交際を申し込んだ円だったが・・・。

「つきあってください」

「なんでよ・・・」

「いろいろと経験値をあげた方がいいかなと思って・・・」

「そもそも・・・私のことが好きなの・・・」

「さあ・・・どうかな」

ボディー・ブローで悶絶した円なのだ。

自宅に逃亡中の幽霊・千里を匿っている幸は・・・円と幸に特別な関係があったことを察する。

「あなたも・・・ロケットが好きなの?」

「私は・・・星を見るのが好きなだけ・・・」

「ああ・・・」

「彼が・・・オリオン座流星群を見るための絶好の観測ポイントを教えてくれたの」

「なるほど・・・」

「しし座流星群は最高速度秒速71㎞で最速だけど・・・オリオン座流星群はそれに次ぐスピードを誇るのよ・・・私は梅昆布茶を彼に奨めたわ」

「青春ね・・・二人は恋をしたのね」

「さあ・・・それはどうかしら」

幸は・・・そこに始り損ねた物語があるのを感じ取る。

死んだ少年の願いを叶えるために・・・美人看護師を観覧車デートに誘う円。

「ごめんね・・・彼氏がいるから・・・」

お断りされる円だった。

しかし・・・看護師と恋人は・・・「結婚して海外への赴任に同行」と「看護師の継続」という二者択一で揉めていたのだった。

一方・・・対策を話し合う円と幸。

「君に憑依能力があればよかったのにな・・・女同志で観覧車に乗るのに何も問題はないから・・・」

しかし・・・何気ない円の呟きに激昂して泣きだす幸だった。

「頑張ったって出来ないことがあるのを・・・私だってわかってる」

幸の涙の理由が不明の円である。

「まあ・・・女は男にとってミステリーだからな」

死神ナベシマはわかったようなことを言うのだった・・・。

結局・・・喧嘩別れする看護師と恋人。

看護師は円に・・・観覧車デートの承諾を申し出る。

「私にも・・・果たせなかった約束があるから」

事情をすべて知った少年は円に憑依すると看護師の恋人を呼び出すのだった。

そして・・・看護師と恋人を観覧車に送り込む・・・。

分離した円は尋ねる・・・。

「これで・・・いいのかい・・・」

「退院して・・・観覧車に乗れないことは分かっていた・・・それで・・・慰めてくれた彼女に・・・僕は・・・偽善者とか最低の看護師とか・・・暴言を吐いたんだ」

「まあ・・・絶望中学生なら・・・仕方ないさ」

「でも・・・死んだら・・・そういう気持ちも・・・薄れていくんだ・・・だってもう僕には肉体がないんだから」

「そうか・・・立ったりしないんだね」

「うん」

幸は・・・少年のメッセージの巨大垂れ幕を掲げる。

(あなたは最高の看護師です)

メッセージを見た看護師は泣き崩れる。

「私は・・・結局・・・患者さんを救うことができなかった・・・だから・・・まだ・・・やめられないの」

「わかった・・・君の気の済むまで・・・看護師を続けたまえ・・・でも・・・僕の帰りを待っていてくれないか・・・」

「・・・」

遠距離交際に突入する二人だった。

ま・・・それが長続きするかどうかは別として・・・。

少年は昇天した。

なんとなく・・・もやもやした円はもう一度、幸に交際を申し込む。

「つきあってください」

「無理なの・・・」

「どうして・・・」

「私・・・好きな人がいるの」

「誰?」

「ナベシマさん」

「あっそう・・・・・・・・・えええええええええええええ」

それは・・・プラトニックラブなのか。

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