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2016年5月24日 (火)

愛と知っていたのに(福山雅治)血まみれのハイヒール(藤原さくら)やったんじゃろ(夏帆)内緒にしてください(菅田将暉)

2016年春ドラマは空前の童貞ブームである。

(火)の「重版出来!」の新人漫画家・中田伯(永山絢斗)はなにしろマンガばかり描いているので童貞だ。

(水)の「世界一難しい恋」の主人公・鮫島零治(大野智)は恋愛経験ゼロである。

(木)の「グッドパートナー 無敵の弁護士」の熱海(賀来賢人)も赤星(山崎育三郎)も女の気配が皆無。

まさか・・・と思うが・・・猫田(杉本哲太)だって怪しいぞ。

(土)の「お迎えデス。」の主人公・堤円(福士蒼汰)は童貞確実である。

(日)の「ゆとりですがなにか」の教師・山路一豊(松坂桃李)に至っては童貞であることが存在理由である。

なんだろう・・・最近の若い男は・・・童貞でなくてはならないのか・・・。

一方、(月)「ラヴソング」では主人公が冒頭から意味もなくやりまくりである。

そのために・・・なんとなく童貞枠だった天野空一(菅田将暉)も前回、年上の女に童貞を捧げてしまったのである。

そういう意味でこのドラマは時代に逆らっているな・・・おいおい。

で、『ラヴソング・第7回』(フジテレビ20160523PM9~)脚本・倉光泰子、演出・平野眞を見た。このドラマで凄いのは主題歌の「Soup/藤原さくら」も劇中歌の「好きよ 好きよ 好きよ/藤原さくら」も作詞・作曲が福山雅治ということである。劇中歌の「好きよ 好きよ 好きよ」はレコード会社「トップレコード」のプロデューサー・弦巻竜介(大谷亮平)に「これを作った人は天才だ」と言わしめる作品なのである。そういう設定の曲を実作し・・・「たいしたことないよ」的な顔で受け流す神代広平を演じる福山雅治・・・その立場に置かれることの目も眩むようなプレッシャーは想像しづらいな・・・。

そういう・・・素晴らしいスターを起用しての「月9」なのである。

もう・・・絶対失敗できないラインを越えてるぞ。

とにかく・・・新妻が「違うんです」の人に実害を加えられなくて本当によかったと考えます。

さて・・・すでに中盤は越えたと思われる今回。

不幸な生い立ちを持ち障害に悩む佐野さくら(藤原さくら)が・・・恋をする物語としては順調に推移していると思う。

一方で・・・過去に「音楽活動での成功の夢」に挫折し、「愛する人」も失った神代広平(福山雅治)の人生については・・・少し説明不足であるような気がする。

広平の心が・・・荒廃しているわけではなく・・・それなりに第二の人生を歩んでいることに重点が置かれ・・・患者である「さくらの声」に魅了され・・・のめり込み・・・いわば・・・あがき始める「理由」・・・心に眠る「闇」がほとんど語られないのである。

「墜落寸前の旅客機」を示すために・・・「エンジンから炎と煙があがっている描写」は必ずしも必要ではないが・・・ただ「漫然と飛行しているだけ」では・・・あまりに不親切なのである。

「本当に愛したのは彼女だけ」である広平が・・・様々な女性と性的体験だけを繰り返し・・・けして相手の愛に応えないという描写の連続では・・・単なるプレイ中年という誤解を与えかねないのだ。

そういう描写を控えて・・・失われてしまった宍戸春乃(新山詩織)との日々を回想するシーンをもう少し盛り込んだ方がよかったような気がする。

見た目の年齢差を埋めるために・・・若き日の広平は登場させず・・・声と広平の視線で回想するといった手法で・・・春乃との日々を生々しく再現し・・・少なくとも・・・ここまでに「事件」のすべてを明らかにしておくべきだったろう。

広平が・・・さくらの愛に応えるか応えないかは別として・・・そうでなければ・・・さくらの人生があまりにも哀しすぎるではないか・・・。

広平は・・・春乃のために作った楽曲をさくらに歌わせることにする。

広平の傲慢さは・・・作詞作業に関わったことで・・・作詞を神代広平・佐野さくらの連名にしたことにも現れている。

さくらに依頼し・・・さくらが骨格を作ったのである・・・二人の合作なら・・・作詞・佐野さくら、作曲・神代広平で充分だったのだ。

弦巻竜介(大谷亮平)の誤解・・・神代広平が天才的な楽曲提供者であるという伏線であるとすれば・・・広平があまりにも大人げないことになる。

脚本は・・・そういう矛盾をなるべく排除しないとね。

広平にはある種の「うしろめたさ」がある。

それは・・・春乃の妹である言語聴覚士・宍戸夏希(水野美紀)とのぎくしゃくとした会話によって明示される。

しかし・・・曲以前に・・・夏希は・・・さくらと広平の関係を疑い・・・感情的になるシーンを広平に見せる。

お茶の間的には・・・広平が夏希の「心」を知ったシーンになったはずだが・・・その後の展開では・・・広平は「春乃を裏切りつつあることを夏希に責められている」心持ちのようでもある。

それは・・・あまりにも「女心」がわからなすぎる設定じゃないか・・・。

広平・・・まさか・・・精神的な童貞なのか・・・。

「あの曲どうだった」

「昔の曲でしょう」

「知ってたのか」

「お姉ちゃんの遺品に残っていたわ」

「少し・・・古臭かったか・・・」

「そんなことは・・・ないと思う」

安堵の表情を見せる・・・広平・・・ものすごく・・・馬鹿なんじゃないか。

音楽馬鹿なのか・・・心理カウンセラーなのに・・・。

もちろん・・・姉のために作った曲をさくらに歌わせることに対する・・・つまり・・・姉の妹である自分よりも・・・さくらが高い位置を占有していることへの夏希の嫉妬の炎は燻り続けるのである。

ここから・・・夏希はどんどん・・・嫌な女になっていく。

まあ・・・ここまででも充分に嫌な女だったけどな。

この手のドラマでは・・・安易に敵役を作ればどんどん安っぽくなっていくわけだが・・・「愛の歌」に心を動かされる人々のドラマとしては非情にデンジャラスなことになると考える。

まあ・・・夏希が「嫉妬の炎に身を焦がす哀しい女のブルース」を歌うのなら話は別だが。

レコード会社「トップレコード」の弦巻竜介は「好きよ 好きよ 好きよ/佐野さくら」のデモテープが好感触を得たことから・・・ライブハウス「S」でのプロモーション・ビデオの撮影を提案する。

広平の音楽仲間や、通りすがりの岡村隆史、天野空一や中村真美(夏帆)が見守る中・・・夏希だけは・・・広平とさくらが音楽的に結ばれていくことへの焦燥感に苛まれる。

「私は・・・なんだか・・・面白くないのよ」

「どうした・・・」

「本当にわからないの」

「飲み過ぎだぞ」

広平は・・・「何か」から目をそらす。

ここで・・・現場を離れたはずの・・・鶴巻は・・・妙なドス黒さで・・・唐突な展開を開始する。

「うちのトップアーティストであるCHERYLが・・・この曲に興味を持っているんです」

「なんだ・・・アイドルか・・・」

「ちがいますよ・・・シェリル知らないんですか」

「マクロスに出てくる人・・・」

「アニメじゃない!・・・とにかく・・・広平さん・・・CHERYLへの楽曲提供について考えてみませんか」

「今は・・・とにかく・・・佐野さくらを世に送り出したいんだ」

「・・・」

「グリスターミュージック」取締役・音楽制作室長の桑名(りりィ)が予言する「才能を潰そうとする人々」の暗躍が始ったらしい・・・。

ものすごく・・・チープなとってつけた感が漂うのだな。

ちなみにCHERYLを演じるLeolaはほぼ新人で・・・挿入される楽曲はデビューシングル「Rainbow」である。

錯綜する人間関係である。

年齢差のある二人の「恋愛模様」であるために・・・「青春チーム」と「中年チーム」の落差は激しい。そこを追うだけでもかなり・・・面白いが・・・撫でるだけなんだな。

どちらかといえば・・・・青春チームの方がドラマチックである。

それは・・・夏希が嫉妬して呪いをかける「青春の輝き」そのものなのだ。

ライブに間に合わなかった真実の婚約者・野村健太(駿河太郎)・・・。

「きききききききっと・・・クレーム対応だよ」と同じく大型車の整備・販売会社「ビッグモービル」で働くさくらは笑う。

野村の家はすでに二世帯同居に改装され・・・野村の両親は真実の同居を待ち望んでいる。

親の味を知らない真実には・・・「普通の家庭」に対する恐怖心があるのと同時に・・・ずっと面倒を見てきた妹同然のさくらを案ずる心情がある。

そのために・・・同居を引きのばしているのである。

さくらはついこの間まで「結婚なんてしないでくれ」と真実に甘えていたのである。

「歌」と「広平への恋」で前向きになっているさくらが・・・なんらかの「成果」を得ることを待ち望む真実。

しかし・・・心のどこかには・・・さくらの「成功」に対する怯えも潜んでいるのかもしれない。

脚本のトーンがそういう感じなんだよな・・・。

その上・・・海街四姉妹なので・・・どうしても奥行きがあるわけである。

謎に満ちた広平の心とは別に・・・ストレートなさくらの「恋心」・・・。

広平のカウンセラーとしての出勤日に・・・仔犬のように付きまとう。

さくらの上司で広平になんとなく気のある滝川(木下ほうか)や・・・潜在的ないじめ集団である女子社員たちの妨害ほ乗り越え・・・さくらは広平にデートを申し込む。

「レコーディングの打ち上げをしてませんよ」

「そうか・・・じゃ・・・やろう」

天にも昇るような気持ちのさくらである。

デートのおしゃれのために・・・新しい靴を購入するさくら・・・。

妙な接客の店員・かおり(杉浦琴乃)のために・・・「サイズ」を上手く伝えられないさくらだった・・・。

妙なキャスティング多いよなあ・・・。

もっと王道でいいんじゃないか。

レパープラス的なことじゃないのか。

その頃・・・空一は・・・キャバクラ嬢時代の真実の・・・客からのプレゼントのストックを漁っていた。

「これ・・・くれる」

「それ・・・化粧品だよ」

「お世話になった人への御礼の品」

「その人とやったのか」

「え」

「やったんだな」

「いやん・・・」

「さくらはデートみたいだぞ」

「え」

「となればこくるかもしれん」

「・・・」

「まあ・・・ふられる可能性大だよな」

「そうだよね」

「しかし・・・だからといってさくらは空一とはやらんな」

「えええ」

そこへ帰宅するさくら・・・。

「セクシーにして・・・」

「え・・・」

「セクシーにして」

「できるかな」

「できるじゃろ」

青春チームのコントは・・・楽しくていいなあ・・・。

中年チームは重苦しいよ・・・。

精一杯のセクシーモードで待ち合わせの場所で待つ真実。

しかし・・・すでに合わない靴のために・・・足は歩行不能になるほどに血まみれである。

「なんじゃあこりゃあ・・・」

広平はさくらをおんぶしてスニーカー・ショップに向かうのだった。

「パンツみえる~」

かかとに絆創膏をはってもらい・・・ウキウキするさくら・・・。

そういうことを・・・親にしてもらいたかったのに・・・してもらえなかった過去があります。

しかし・・・打ち上げの店には鶴巻が現れるのだった。

たちまち・・・青春は色褪せ・・・澱んだ中年たちの世界が始る。

「どうして・・・あの人を・・・」

「打ち上げだから・・・」

「私・・・足が痛いんで帰ります」

「・・・」

今回は何度か・・・店を出る女のシーンが繰り返される。

夏希が店を出て行っても誰も追いかけてこないが・・・さくらは送ってもらったり・・・追いかけてもらえる。

そういう点で・・・広平のヒロインに対する心を察しなければならない。

しかし・・・保護者としてなのか・・・パートナーとしてなのか判別は困難である。

「どうだった・・・」

「変な奴に邪魔された・・・」

真実に報告するさくら。

一方でさくらは・・・真実に・・・引越しを奨める。

しかし・・・お茶を濁す真実である。

ドス黒い鶴巻は急に切羽詰まった感じになっている。

「CHERYLへの楽曲提供をお願いします」

しかし・・・広平は難色を示す。

そもそも・・・新曲への自信もないわけである。

あれが・・・「傑作」だったとしても・・・それは二十年前の「成果」なのである。

ついに・・・鶴巻は・・・「契約」のために呼び出したさくらに・・・別件を切りだすのだった。

「CHERYLに移籍の話があってね・・・それを阻止するために・・・なるべく希望を叶えたい・・・そしてこれは・・・広平さんにとっても・・・凄いチャンスなんだ・・・わかるだろう・・・君の方からも説得してみてくれないか」

さくらにしてみれば・・・「お前はいらない」と言われているようなものである。

なにしろ・・・親から「お前はいらない」と言われた過去があります。

「S」のマスター・笹裕司(宇崎竜童)の誕生日を祝う会。

笹はさくらに「好きよ 好きよ 好きよ」をリクエストする。

演奏の打合せに入る広平やバンドマンたち。

そこで・・・ついにさくらに向けて炸裂する夏希の怨念・・・。

「あなたには知っておいてもらいたい・・・あの曲は・・・あなたのものじゃない」

「え」

「あれは・・・お姉ちゃんの曲なの・・・」

二人のやりとりを耳にした広平は割り込む。

「おかしなことを言うなよ」

「だって・・・あれはお姉ちゃんの曲じゃないの」

「あれは・・・俺の曲だ・・・俺の作った曲だ」

「・・・」

店を飛び出すさくら。

追いかける広平。

私のことは追いかけてくれなかったのに・・・と落胆する夏希だった。

そんな夏希を慰める中年チーム。

「まってくれ・・・さくらちゃん」

「・・・」

「確かに・・・あれは・・・昔作った曲だ」

「・・・」

「でも・・・君と出会って・・・君に歌ってもらいたくなった・・・」

さくらは広平の胸に飛び込む。

「私は・・・先生が好きなんです・・・好きでたまらないんです」

「・・・」

「先生は・・・私のこと・・・どう思っているんですか」

「私は・・・君と・・・音楽をつくりたい」

広平の真意とは別に・・・告白してふられたさくらだった。

「マミ~アタシ・・・ふられちゃったのじゃ」

「さくら・・・あきらめることはないじゃろう」

「でも・・・前にすすみたい・・・」

「・・・」

青春チームは胸に沁みるぞ・・・。

あきらめたわけではないさくら・・・喉の変調のために・・・増村泰造(田中哲司)の病院を訪れ・・・広平の姿を見かけてときめく。

通りすがりの湯浅志津子(由紀さおり)は恋の気配を察知する。

「あなた・・・恋をしているわね」

「・・・」

「どんな人・・・」

「やさしい・・・おっさんです」

「そう・・・私はいつ死ぬかわからないけど・・・今日は気分がいいの」

「よよよよよよよかったですね」

耳鼻科で内視鏡の検査を終えたさくら・・・。

増村医師は告げる。

「ここに・・・腫れがあるので・・・精密検査をしてみましょう」

そんなに哀しい方向にしなくてもいいと思うけれどねえ・・・。

二人が大成功して恋人として結ばれるハーピーエンドでも・・・誰も怒らないよ・・・。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

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