告白なんて恐ろしい(大野智)夕陽の砂浜大作戦(波瑠)愛とは略奪することです(小池栄子)
好きだと一言言うことは難しい。
相手が自分を好きかどうか知ることも難しい。
そういうタイプの人はいる。
幼い頃には相手の気持ちというものが存在することすらわからなかったりする。
テレパシストにとっては相手の気持ちは手に取るようにわかるわけだが・・・はっきり云ってコチラに興味なしと知るのは辛いものだ。
中学生の頃・・・突然、相手が心変わりして驚いたりすることもある。
もちろん・・・相手が気まぐれなだけの場合もあるが・・・自分ではあまり意識していなかった・・・相手の気持ちを踏みにじる行為・・・別の異性と仲良くしていたことなどを後に思い出し・・・腑に落ちたりする。
つまり・・・相手を嫉妬の心でいっぱいにする・・・すなわち相手を傷つけていたことに気付くこと・・・それが人間的成長というものだ。
そして・・・そういうことを慎むことが大人になるということでもある。
もちろん・・・ある種の人間は・・・誰かを傷つける禁断の恋でないと燃えない場合もあり・・・それはそれで厄介なんだな。
しかし・・・本編の主人公は非常に奥手であり・・・恋愛レベルが中学生なので・・・安心して視聴できるのだった。
で、『世界一難しい恋・第4回』(日本テレビ20160504PM10~)脚本・金子茂樹、演出・菅原伸太郎を見た。人里離れた怪しいキノコの森林で現実逃避に励む鮫島零治(大野智)・・・。その心の迷いを見出した恋愛マスターの和田英雄(北村一輝)は暗闇から忍びよる。「お前はまだ・・・恋愛のダークサイドの力を知らない・・・」「恋愛の力など・・・私には無縁です」「まっとうな恋愛など・・・ダークサイドの力の前には児戯に等しい」「本当ですか」「私の教えに従えば・・・お前は望みのものを手に入れることが可能だ・・・」「マスター」・・・こうしてアナキンは・・・違うぞっ。
私の来歴書・・・村沖舞子(小池栄子)篇
あれは・・・十年前のことです。
私は温泉街の「鮫島旅館」で仲居をしておりました。
老舗の旅館でしたが・・・経営は苦しく・・・廃業寸前に追い込まれていたのです。
そこで当時の旅館を経営していた零治様の父親は留学中の息子を呼び戻しました。
帰国した零治様は・・・徹底したリストラと設備投資の拡充・・・そして広告戦略によって・・・旅館を黒字経営に転じさせ・・・さらには・・・ホテル・ビジネスへと経営展開をなさいました。
ホテル経営者として辣腕を振るい・・・わずか十年で鮫島ホテルズをそれなりに名の知れたホテル・チェーンとして育て上げたのです。
私は八年前に・・・仲居仲間の亭主である板前と道ならぬ恋をして・・・発覚し・・・旅館を追われる身となりました。
しかし、社長は・・・「仲居としての業務を完璧にこなした上で不倫をするという素晴らしいスケジュール管理能力を生かして私の秘書になってみないか」と私に手を差し伸べてくれました。
今の私があるのは・・・すべて社長のおかげです。
そんな社長が・・・新入社員・柴山美咲(波瑠)に恋をした・・・。
恩返しの時は今・・・と思う私なのでした。
もしも社長が結婚すれば・・・私のターゲットになっちゃうわけですが・・・。
・・・そんな秘書の画策により・・・恋愛マスターを師匠と仰いだ零治なのである。
第一の指令「相手に好きな色を聞け」
「色を聞いてどうすんです・・・」
「どうもしない・・・質問することに意義があるのだ」
「?」
「君は・・・相手が自分のことをどう思っているか・・・気になるだろう」
「はい・・・」
「彼女は・・・どうして・・・そんな質問をされたか・・・気になるはずだ」
「・・・」
「つまり・・・君のことを知らず知らず考えてしまう」
「なるほど」
「そして・・・彼女は眠れない夜を過ごす・・・」
「はあ」
「次の日・・・彼女が質問の意味を尋ねてきたら・・・脈ありということだ」
「もし・・・尋ねてこなかったら」
「その時は・・・すっぱりと諦めるんだ」
「・・・」
「しかし・・・君自身のダメージはこれ以上なく小さいだろう」
「確かに・・・」
零治は美咲に声をかけた。
「お前の好きな色はなんだ」
「・・・緑ですが」
「そうか・・・」
零治は和田の指示に従い・・・それ以上の言及を避け帰宅する。
そして・・・自分自身が眠れぬ夜を過ごすのだった。
明日・・・彼女は・・・自分に声をかけてくれるのか・・・気になってしかたない零治だった。
だが・・・美咲は・・・零治に声をかける。
「社長・・・何故・・・昨日・・・質問なさったのでしょうか」
「いや・・・特に意味はない・・・」
「はあ?」
零治は天にも昇る気持ちだった。
「脈がある・・・脈があるぞ~」
零治はマスターの指示を仰ぐ。
「それで・・・君はなんと答えた・・・」
「いえ・・・特に意味はないと・・・まずかったでしょうか」
「いや・・・それでいい・・・鮫島くん・・・才能あるかもね・・・これで彼女はますます・・・君のことが気になったはずだ」
「そうなんですか・・・」
「次は・・・いよいよ・・・告白だ・・・彼女と二人きりになる機会を作りたまえ」
「告白・・・できますか」
「色を尋ねたように・・・好きと言えばいいんだよ」
「・・・」
夜のミーティングである。
参加者は秘書とお抱え運転手の石神剋則(杉本哲太)である。
「レストランのシェフ候補の視察というのはいかがでしょう」
「彼女を指名するのが不自然じゃないか」
「クジ引きにしたらどうでしょう」
「もし・・・他の社員が当たったら・・・」
「絶対に彼女に当たりを引かせるマジックがあります」
「マジック・・・」
私の来歴書・・・石神剋則篇
あれは十年前のことです。
私は売れないマジシャンとして地方巡業の暮らしをしておりました。
しかし・・・困窮し・・・旅館代も払えない私を拾ってくれたのが鮫島社長でした。
私は送迎バスの運転手として雇用され・・・糊口をしのぐことができたのです。
あの時の恩を私は忘れません。
その恩を返す時がついにめぐってきたのです。
・・・・運転手は内部が回転する中敷きで仕切られた箱を用意する。
ハンドル操作で・・・「当たりの部屋」と「ハズレの部屋」を交換できるシステムである。
美咲が引く時に・・・「当たりだらけの箱」にすることができる仕掛けなのである。
こうして・・・美咲は・・・「当たり」を引くのだった。
後は・・・告白するだけなのである。
まあ・・・それが簡単ではない零治なんですけどね。
第二の指令 「夕陽の砂浜で童心に帰れ」
「目的地まで二人でドライブするんだ・・・なるべく小さな車で」
「何故です・・・マスター」
「テントと同じだよ・・・狭い空間は親密さを増す効果がある」
「さすがです・・・マスター」
小さな車でお目当てのシェフ(宇梶剛士)がいるホテルまで海辺のドライブである。
「あんなところに海がある」
マスターの指示通りに海辺で童心アピールを始める零治。
「海が青い」
「はい」
「空が青い」
「はい」
「水が温い」
「はい」
「ちょっと足が冷えて来た」
「はい」
当たり前のことを口にすれば・・・目下の人間はそれを肯定するしかないのである。
肯定することによって人は相手を好ましい対象と感じる。
もっとも・・・美咲はそもそも「社長の茶目っ気」を好ましいものと認識しているので・・・ここは「自分だけが見抜いている社長の人間らしさ」の再確認という複合技になっている。
「お前の好きな食べ物は何だ」
「松前漬です・・・社長は何がお好きですか」
「卵料理だ」
「キノコ料理ではなくて?」
「え」
「社長の写真が掲載されたキノコ専門誌を拝見したので」
基本的に接客業のスキルとして関係者の好みを知るベーシックを実践する美咲。
「軽蔑したか」
自分の趣味の奇矯さを認識している零治は怯える。
「いえ・・・素敵な趣味だと思います・・・」
君という天国にずっと住んでいたいと思う零治である。
そして、マスターに指示を仰ぐのだった。
最終指令 「何が何でも告白せよ」
「目的地に着きました」
「よし・・・食事の席で告白だ」
「無理です」
「酒だ・・・バッカスから勇気をもらえ」
「狂うのですね」
「そうだ・・・さすればお前はすべてを手にすることができる」
「はい・・・マスター」
零治の来店を知り・・・転職希望のシェフは腕によりをかける。
社長、秘書、運転手、シェフが一同に会したら・・・完全に第二次怪物くんファミリーだよな。
「素晴らしい腕前ですね」
仕事として味を確認する美咲。
しかし・・・とにかくワインを飲む零治。
「確かに素敵な料理だ・・・素敵なワインだし・・・目の前の・・・」
「・・・」
「目の前の花瓶も素敵だ」
「私も・・・そう思ってました・・・社長と好みが一緒なんて光栄です」
部下としての追従ではなく・・・あくまでストレートな意見を述べる美咲。
「だめです・・・マスター・・・私にはできません」
「大丈夫だ・・・ホテルのフロントに薔薇の花束を用意させろ・・・別れ際のラスト・チャンスだ」
「サービス・エースですか」
「レシーブ・エースだ」
「スマッシュ・エースですね」
「お前ならできる」
「はい・・・コーチ」
「これで告白できなければ・・・貴様は無能だ」
お仕事モードの美咲はシェフにアプローチをするが・・・社長本人のアタックを期待したシェフは失望する。
「他からも・・・引き抜きの話が来ているようです」
「そうか・・・」
ラストチャンスのことで頭がいっぱいの零治だった。
部下としての美咲は「出過ぎた真似をした」のではないかと危惧する。
なぜなら・・・緊張のあまり・・・零治の形相は物凄いことに・・・。
「お疲れ様でした」
「忘れものがないか・・・もう一度確認しろ」
零治はトランク一杯の薔薇の花束を睨みつける。
「忘れ物はありません・・・社長?」
「あああああああああああああああ」
思わず叫ぶ零治だった。
深夜の反省会
運転手と秘書が正座してしまうのは・・・旅館時代の名残だったんだなあ・・・。
こうやって長年、和室でミーティングをしていたんだよな。
畳のない生活になると忘れがちだよなあ・・・。
「無理だ・・・」
「社長・・・」
「俺が告白できないのは・・・恥ずかしかったからじゃない」
「・・・」
「告白して・・・お断りされるのが・・・怖かったんだ」
「・・・」
「そんなことになるくらいなら・・・諦める」
「・・・」
「俺は・・・明日から・・・キノコとメダカだけを愛していく」
脚本家のウジウジ根性が爆発しているわけだが・・・かってないほどに・・・はまっていて面白いぞ。
三度の飯よりウジウジした男が嫌いな俺がそう思うのだから間違いない。・・・お前誰だよ。・・・たとえとしてもおかしいだろう。・・・三度の飯はみんな好きだよな。
シェフから「ステイゴールドホテルに決めようと思う」とお断りの電話を受ける美咲。
引き抜き工作失敗の責任を感じるのである。
ここは・・・ちぐはぐさを強調する手もあるが零治だけで充分に面白いのでスルーする演出なんだな。
しかし・・・「仕事にだけ生きることにした」零治はシェフの料理を食べていた。
「今日も御来店くださるとは・・・どうしてお言葉をかけてくださらなかったのです・・・和田社長は絶賛してくださったのに・・・」
「和田は・・・ワインをどのくらい飲みましたか」
「お供の方と一本ですが・・・」
「私は・・・昨夜は二人で三本」
「はい・・・」
「今日は一人で一本・・・」
「はい・・・」
「美味しい料理で酒が進む・・・これが・・・私のメッセージです・・・私は口下手なので」
「・・・社長」
零治の言葉に感激して・・・鮫島ホテルズの新レストラン「五助」に就職することを決意するシェフだった。
「さすが・・・社長だ」と社員の評価が高まる中・・・複雑な表情をみせる美咲だった。
今夜のクライマックス
脚本が説明不足なので演技でカバーする美咲。
つまり・・・自分の失点を社長にカバーされた「安堵」と・・・自分の落ち度を社長に咎められている「不安」が交錯しているのである。
なぜ・・・こうなるかと言うと・・・その説明にあたる時間を堀まひろ(清水富美加)と白浜吾郎(丸山智己)や和田と秘書の恋模様の描写で消費するからである。
どうしても群像劇になってしまう脚本家の特性によるものだが・・・まあ・・・主軸がはっきりしているので気にならない。
もちろん・・・美咲を演じるものにとってはつらいところだが・・・そういう逆境をのりこえてきたものな。
「あさが来た」だって・・・はつのおかげという評価は苦しかっただろう。
だが・・・それが世間というもので・・・「わかる人にわかればいい」でのりきるしかない。
君の軌跡は輝いている。
その真価が発揮される「めだかの孵化のシーン」・・・。
残業する美咲。
零治は社長室のメダカの孵化を見守るために徹夜態勢である。
心にわだかまりを抱えた美咲は夜の社長室をノックする。
「君か・・・」
「ご一緒してもよろしいですか」
「・・・」
零治は扉を開く。
「徹夜ですか」
「孵化したらすぐに隔離しないと・・・親に食べられてしまう・・・」
「社長・・・私に怒っておられますか」
「何故だ・・・」
「私は避けられているような気がします」
「そんなことはないよ・・・」
その時・・・孵化が始る。
ぽん。
ぽん。
びっくりぽん。
大自然の神秘に心を奪われる美咲。
その無垢な横顔に・・・神秘を感じる零治。
「・・・お前が好きだ・・・」
「・・・?」
「え」
「え」
「えええええええええええええええ」
零治と美咲の素晴らしいときめきがお茶の間を圧倒する・・・。
美人すぎて演技力が過小評価されがちな女優の抜群の存在感が・・・。
「うっかり告白してしまう」という主人公の迫真の演技を引きだしているのだ。
主人公とヒロインに「トレビアン」と叫びたい一幕だった。
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