人間の心理がこんなに複雑なものだったとは知らなかった(福士蒼汰)なんだって(土屋太鳳)レギュラーです(門脇麦)
修羅場から一週間・・・ようやくマイペースな状態になってきたな。
なんてったって母親が入院中で気が楽だ・・・。
見舞いに行かなくても怨まれないところが・・・認知症の利点だな。
なにしろ・・・見舞いに誰が来ようが五分後には忘れてしまうのだ。
お迎えが近いのか遠いのかも定かではないが・・・そういう近親者がいる時に・・・このドラマを視聴するとなるとかなり複雑な気持ちになる人がいるのかもしれない。
しかし・・・キッドはほとんど平常心だな。
まあ・・・悪魔だからな。
で、『お迎えデス。・第3回』(日本テレビ20160430PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・塚本連平を見た。今回は脚本家は連名で同じジャパンクリエイティブマネージメントに所属する泉澤陽子が加わっている。最近では「オトナ女子」(フジテレビ2015年)と同じパターンで・・・まあ・・・いわゆる師弟共作ということである。結果が良ければあってもいいが・・・作品が散漫な感じになることは言うまでもない。原作ありのファンタジーの場合、原作の読みこみから・・・ドラマ版の世界設定の構築が重要になるわけだが・・・ここまで見る限りはかなり危うい基本設定になっている。
この手のドラマのエッセンス抽出のベテランである尾崎将也なのでそれなりに仕掛けていると思うわけだが・・・。
問題は「あの世」側の設定だな。
これまでの「あの世」設定をまとめておく。
①死者は死後四十九日間、幽霊として「この世」にとどまることができる。
※これは大乗仏教で行われる法要の一つ「中陰法要」に準拠しているのだろう。死後七週間(四十九日)の供養によって死者が極楽に往生できるという信仰である。
②死神はこの世に未練を残し、成仏できない幽霊を「あの世」に導く任務を「上司」から与えられている。
③死神にはナベシマ(鈴木亮平)の属する死神二課とシノザキ(野間口徹)の属する死神一課がある。
④死神二課は幽霊の自主性を重んじるが・・・四十九日を過ぎて悪霊化した幽霊を消滅させる役目の死神一課は・・・二課の後始末的任務に含むところがある。
⑤死神もまた死者の一種であり・・・その特殊性は一種の権利として「上司」から付与されたものであり、剥奪される可能性がある。
本来、死神には「死をもたらす使い」のイメージが濃厚であり・・・キリスト教的な「神の摂理」の管理者としては「天使」の一種なのであるが・・・ここではかなり和洋折衷なスタイルになっている。
幽霊を霊視することができる特殊能力者である阿熊幸(土屋太鳳)はナベシマとの間に特殊な関係があるらしいが・・・それはおそらく作品の「肝」の一つなので秘匿されている。
幸には他にも多忙な母親(高岡早紀)と不倫が原因で離婚した父親というベタな家庭不和のネタを抱えていて・・・かなり面倒くさいわけである。
さらに幽霊を憑依させることができる霊媒体質の堤円(福士蒼汰)は発達障害で理系男子の定番である朴念仁として設定されている。
連れ子同志の再婚である家庭はそれなりに暖かいイメージで描かれているが・・・血の繋がらない妹・さやか(大友花恋)の存在など・・・やや設定過剰である。
そのうち・・・もてあますよな。
そして・・・円もまた・・・亡き父親を持っているわけである。
複雑な人間心理が仕掛けのうちなら・・・この設定はある程度生かされないと・・・なんだかなあ・・・ということになるだろう。
なお、幽霊に憑依された堤円は・・・幽霊の行動支配にある程度、抵抗できる設定だが・・・それも御都合主義になりかねない要素のひとつなんだな。
どうせ・・・「あの世」がらみの話なので・・・なんでもありでも構わないのだが・・・そんなことをしていると何が面白いのかわからなくなるので要注意なのだ。
ちなみに・・・堤円の能力発現は・・・高校時代の同級生・緒川千里(門脇麦)の不慮の事故死と関係しているらしいという設定である。
千里がレギュラーだとすれば・・・決着が着くまでの四十九日の物語ということになる。
千里は逃亡中の幽霊で・・・悪霊化すれば・・・死神二課の落ち度になるらしく・・・一課は情報隠しで暗躍している。
とにかく・・・それらしく設定すればするほど・・・破綻しやすいわけである・・・そして・・・お茶の間はこの世界を理解するのが困難になっていくのだ。
つまり・・・何が面白いのか・・・わからなくなってしまうのである。
そのあげくに・・・脚本合作っていうのは・・・ねえ。
千里の死は・・・四月の新学期開始以後である。
その後、娘を想う父親の幽霊・馬場陽造と、看護師に恋したまま病死した少年・和弥を死神二課のアルバイトとして成仏させた円と幸であるが・・・かなりの時間経過があったはずである。
それなのに・・・今回のドラマの背景には桜が満開なのだ。
一体・・・今の季節は・・・どうなっているのだろう。
そして・・・千里は死後・・・どのくらいの日数を経過しているのか。
四月一日に死んだとしたら五月十九日には四十九日になってしまうわけだけどね。
大丈夫なのかな・・・脚本は・・・。
冒頭・・・ナベシマは・・・お茶の間に・・・幸がナベシマに恋をしていることを・・・ナベシマが察知していることを説明する。
一種のルール違反だが・・・つまり・・・苦しい説明をしなければならないほど・・・脚本に破綻が生じているんじゃないだろうな・・・。
「幽霊と人間の恋愛は成立するのか・・・」
幸の告白により・・・人間の心理が謎に満ちていることに気がついた円は大学の講義の際中に「心理学」を紐解くのだった。
「最近・・・お前おかしいぞ・・・」
高校時代からの親友・加藤孝志(森永悠希)は円を案じる。
そこへ・・・今回のゲスト幽霊である美樹(野波麻帆)が登場する。
高校教師だった美樹は・・・教え子の一人が気にかかり・・・成仏できないという。
お茶の間としては・・・当然、教師と教え子の不適切な関係を疑うわけだが・・・円にとっては慮外の話なのである。
美樹を案内して来た死神のゆずこ(濱田ここね)は成仏対象者として美樹を円と幸に託し去って行く。
円と幸は・・・美樹の気になる元教え子の元へと出向く。
元教え子は・・・亮二(竜星涼)で不良生徒だったが・・・古典の教師だった美樹の個人指導で大学に合格するまでになった。
ところが・・・美樹の死後・・・大学にも行かず・・・遊び歩いているという。
つまり・・・美樹の死は亮二の大学入試成功から・・・亮二の入学した大学の授業開始の間にあったらしい。
四十九日のタイムリミットは目前ではないのか・・・。
しかし・・・そういう切迫感は・・・死神二課にはないのである。
一方、死神一課の雇用する人間なのかどうかも不明な黒巫女の魔百合(比留川游)は命じられるまま悪霊駆除に邁進していた。
几帳面なシノザキは悪霊によって飛散したゴミの分別まで魔百合に命じるのだった。
そして・・・逃亡中の幽霊・千里を・・・二課には内緒で探索中なのである。
千里は・・・幸が自宅に匿っている。
やや唐突に登場した世界を飛び回っている実業家であるらしい幸の母親は・・・かなり唐突に・・・離婚した夫が「幸に会いたいと連絡をよこした」と告げる。
幸は千里に「小学生の時に不倫して家出したまま・・・消息不明のくせに・・・今さら何よって感じ」と愚痴るのだった。
そういう「家庭の不幸」をセリフで説明させられることが一種の不幸だよな。
一方・・・明らかに中年の独身女性教師が懸想しそうな未成年だった亮二・・・。
「男同志の方が話がしやすいはず」と幸は円に接触を命ずる。
ダーツに熱中している亮二に・・・「完璧な軌道計算による射出」で満点を叩きだしてみせる円である。
心になんらかの鬱屈を抱えている亮二は・・・街のチンピラたちとトラブルを起こしながら・・・円と馴染んでいく。
そして・・・唐突に・・・ホストクラブの体験勤務を開始するのだった。
亮二と円にホストごっこをさせるためだけのあざとい展開である。
まあ・・・それで・・・一部お茶の間のホストをこよなく愛する皆様が楽しければいいのかもしれない・・・。
天性のホスト属性でたちまち・・・売上ナンバーワンの座を獲得する亮二。
四十九歳のお姉さまの年齢を五十歳と推定する円である。
ある意味・・・天才なんだな・・・。
一方、「ブサイクに生まれたのでこの世になんの未練もない幽霊」の保(今野浩喜)を輸送中のナベシマを目撃して発情する幸だった。
しかし・・・幸の美貌に発情した保は・・・突然、この世に未練を生じるのだった。
そもそも・・・もはや勃起する陰茎もないのに発情するものなのかどうかは謎である。
突然・・・逃走した保に戸惑うナベシマだった。
幸のストーカーと化した保は更衣室やトイレで幸を待ち伏せる。
乙女である幸は激昂するのだった。
「一体・・・なんなのよ」
「君の恋人になれたら・・・成仏するよ」
「お断りだわ」
「ひどいな・・・幽霊になってまで・・・外見で差別されるなんて・・・」
「そういうことじゃないでしょう」
しかし・・・このままでは排泄行為も入浴もできない幸である。
帰宅した幸につきまとう保。
そして・・・幸の戦闘力も実体のない幽霊相手では無効なのだ。
そこで立ち上がる千里。
幽霊同志は・・・疑似肉体的接触が可能らしい・・・新ルール追加である。
千里は保を平手打ちで撃退するのだった。
幸は窮状をナベシマに訴えるが・・・聞く耳を持たない死神だった。
「いいじゃないか・・・幽霊に見られたって・・・減るもんじゃなし」
恋する相手にそこまで言われて凹む幸。
逆にそれでも心変わりしない幸のナベシマに対する執着も異常だけどな。
「円も・・・ひどかったよ・・・」
幸に同情して・・・千里は身の上を語りはじめる。
「一緒に星を見るようになって・・・円のロケット打ち上げにも付き合うようになった・・・私は円の恋人になったつもりだった・・・ところが・・・円は私を恋人とは思っていなかったの・・・傷ついた私は・・・それきり・・・円と会わなかった・・・」
「・・・」
「でも・・・死んでしまって・・・心残りがあることに気付いたの」
「それって・・・円のこと・・・まだ好きだってこと?」
「だって・・・もう他には誰も愛せないもの・・・」
「・・・」
一方・・・円は亮二の代わりに飲んだ酒のために・・・前後不覚になり・・・よろめいて女教師・美樹に憑依されてしまう。
「こんなことしていちゃ・・・だめよ・・・」
「え」
「教師として認められないわ」
突然・・・オカマになってしまった円に戸惑う亮二・・・しかし・・・円の言葉は・・・亮二の心に突き刺さるのだった。
「高校の時・・・好きな女の先生がいて・・・大学生になったら告白するつもりだった・・・ところが・・・その先生が突然死んで・・・俺は・・・ヤケになっていたんだ・・・でも・・・先生が今の俺を見たら・・・きっとガッカリすると思う・・・だから・・・俺・・・明日から大学に行ってみるよ」
立ち直った亮二に喜ぶ円。
「これで先生も安心して・・・成仏できますね」
しかし・・・明らかに心変わりしたような美樹だった。
そもそも・・・生徒一人に執着していることが異常だったのである。
つまり・・・美樹は生前から・・・亮二に懸想していたのだ。
亮二の本心を知って・・・美樹の情欲の炎は燃えあがる。
そもそも・・・濡れる女陰も火葬され灰になっているのに何を感じるのか疑問だが・・・。
まあ・・・いいじゃないか。
その執念が悪霊化の原因なのか・・・それともいい加減なタイムリミット到来なのか・・・身体が黒ずみ出す美樹なのである。
一方・・・円の憑依体質を知った保は邪念を膨らませる。
幸は円からの救援要請を受け・・・夜の街へ。
しかし・・・待っていたのは保に憑依された円である。
人気のない場所で・・・幸に襲いかかる円/保・・・。
「あんた・・・誰なの・・・」
「いいじゃないか・・・キスぐらい」
「きもいわ」
「うらみはらさでおくものか」
必死に抵抗する幸だが・・・相手が円なので戦闘力を封じられたらしい。
円は必死に抵抗し・・・ついに幸を解放することに成功するが・・・よろめいて階段落ちである。
「円・・・」
「・・・」
「しっかりして・・・円」
しかし・・・幸と千里が前世でトリオを組んでいた「宇宙キター!」と叫んでくれる一番の理解者は・・・本作には未登場なのである。
そんなこんなで・・・唐突につづく今回なのだ。
脚本・・・大丈夫ですか。
まあ・・・連続ドラマだからな。
これはファンタジー冒険活劇なんだよな・・・きっと。
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