やりたいと言えない男たち(福士蒼汰)生暖かい風に乗せてホームラン(門脇麦)幽体離脱特訓中(土屋太鳳)ゲストデス。(森カンナ)
スーパーナチュラルホラーのお約束にもいろいろある。
大前提として・・・「死者は生き返れない」・・・そこからか。
そもそも・・・基本的に・・・「恐怖」とは・・・「死にそうになること」なのである。
「不安」とは「死んだらどうなるかわからない」ということである。
だから・・・「死んでも生き返ること」ができるならホラーではなくなってしまう。
だが・・・お約束は裏切るためにあるのだ。
「ゾンビ」の誕生である。
つまり・・・「死なないこと」が恐怖なのである。
いや・・・「もう死んでいる」から「殺せないこと」が恐怖なのである。
それなのに・・・「頭を撃てば死ぬ」とか・・・誰かが掟破りを始めるのだ。
「日光に弱い」はずだと言う者もいる。
「それは吸血鬼」ではないのか。
「吸血鬼もゾンビの一種だろう」
「そうなのか」
「いや・・・死霊と吸血鬼は違う」
「いやいやゾンビが吸血鬼の一種なんじゃないか」
「アンデッドとリビングデッドはどこが違うんだ」
「ネクロマンサーがだな」
・・・とにかく・・・お約束なんてそんなもんだ。
「幽霊」や「死神」は「物質世界」に関与できない・・・なんていうお約束は・・・戯言なのである。
しかし・・・時と場合によります・・・って言い出すと・・・野球で乱闘が日常茶飯事になるよね。
ま・・・それはそれで面白いけどね。
結局・・・時間厳守派と・・・間に合えば問題ないでしょう派の不毛の戦いは永遠なんだよな。
で、『お迎えデス。・第6回』(日本テレビ20160528PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・小室直子を見た。人間の意識というものは不思議なものである。今、あなたはこの文章を読みながら・・・私の意識を覗きこんでいる。そういうあなたの意識は一体、どこにあるのだろう。あなたの身体のどこにいつから「それ」は存在しているのだろう。そして・・・「それ」はいつか消滅してしまうのだろうか。私に「意識」があるようにあなたにも「それ」があるのだろうか。人間たちは・・・誰もが「それ」と似たようなものを持っているのだろうか。そして・・・「それ」は人間だけに特有のものなのだろうか。このドラマはそういう疑問の果てに展開される妄想である。だが・・・このような「妄想」が全くのフィクションであるとは・・・誰にも断言できないのである。恐ろしいことです。
悪霊と化した矢島美樹の亡霊(野波麻帆)の念力攻撃により・・・重傷を負った阿熊幸(土屋太鳳)は「この世に未練が残る幽霊を説得して成仏させるというアルバイト」から離脱中である。アルバイトの発注者である死神のナベシマ(鈴木亮平)に恋をしている幸は・・・焦燥するのだった。
アルバイトに復帰して・・・ナベシマに存在価値を認めてもらいたいのである。
幸が何故、ナベシマに恋をしたのかは・・・未だ未詳である。
そもそも死神についても不明な点は多い。
それが物語の「謎」として・・・あまり機能していないために・・・お茶の間の人気がもう一つなのである。
同じように・・・主人公が挫折した「事件」の詳細についてなかなか明らかにしない「ラヴソング」もお茶の間受けしないのだった。
もちろん・・・「謎」が解き明かされていくというのは物語の基本なので・・・あまり・・・うるさくは言いたくないのだが・・・本筋じゃないなら・・・隠しても無意味だと思うのである。
「ラヴソング」10.6%↘*9.1%↗*9.4%↘*8.5%↘*8.4%↘*6.8%↘*6.8%
「お迎えデス。」10.3%↘*9.3%↘*6.9%↗*7.9%↘*6.7%
・・・てなことになってしまうからな・・・。
「音楽」とか「オカルト」とか・・・特殊なジャンルに挑戦する時はなるべく失点を少なくしないといけないのである。
・・・とにかく・・・未だに給与についても触れられない・・・ボランティアならボランティアでもいいのに・・・アルバイトに復帰したい幸は突然・・・幽体離脱してしまうのだった。
アルバイトの後輩である・・・堤円(福士蒼汰)には霊視に加えて憑依体質という特殊能力がある。
幸は・・・それがうらやましかったらしい。
幽体離脱は・・・精神と肉体の分離現象である。
生きている肉体と分離した精神は・・・幽体とか生霊とか称される。
肉体にある程度依存している精神が・・・離脱するのは・・・極めて危険というのが定番である。
しかし・・・無邪気な幸は・・・新たなる能力の発現に喜ぶ。
廊下で三遊亭好楽の霊に遭遇した幸は・・・接触不能な霊に幽体であれば接触できることに歓喜する。
さらに移動範囲を拡大しようとする幸だったが・・・幽体が肉体と・・・有限の命綱としての霊糸で繋がれていることを知り・・・少し落胆するのであった。
世界の果てまでは行けないのだ。
幸は・・・とにかく・・・意志の力で幽体離脱が可能になるように特訓を開始する。
一方・・・幽霊となった千里(門脇麦)は一度昇天体制から逃亡したために・・・強制送還者としてブラックリストに乗っている。
昇天リミットの四十九日までの残り日数は不明だが・・・新入生のサークル勧誘の時期に旅立った以上・・・梅雨入り前にはあの世に逝かなければならない。
そうでなければ完全消滅(地獄行き)なのである。
死神二課のナベシマとゆずこ(濱田ここね)は千里を捜索するのだが・・・先に千里の身柄を押さえることで二課の失点を狙う一課のシノザキ(野間口徹)は死神マツモト(根岸拓哉)や除霊のできる霊能力者・魔百合(比留川游)に千里捜索命令を下すのである。
今回・・・お約束を破って幸に肉体的接触をしたナベシマは・・・幼女に「ご褒美を強請られる」という・・・生前の記憶らしきものを意識する。
ゆずこも「生前はもてもての熟女」だったらしく・・・死神が死者の一種であることが暗示される。
死神は一種の資格のようなものらしい。
こういう・・・オリジナル霊界設定は・・・一部お茶の間には煩いだけなんだけどねえ・・・。
攻略本ができるくらい緻密ならまだしも・・・いかにも穴だらけだからな・・・。
だって・・・どうでもいいものな・・・。
たとえば・・・矢島美樹や緒川千里のような強力な念力幽霊がある程度の確率で存在するなら・・・。このドラマでは六話で二人だ・・・。
一瞬で十万人の幽霊を作りだしたエノラ・ゲイが無事に帰還できるとは思えないからだ。
必ずや怨霊により未帰還機になっているだろう・・・。
年頃の男子でありながら・・・あまり自慰もせずに・・・千里と同棲中の円である。
さやか(大友花恋)の父親である堤郁夫(大杉漣)と円の母親である由美子(石野真子)の再婚で成立している堤家。
「空になったバターの容器」を冷蔵庫に戻して由美子に叱責される郁夫。
「靴下を裏返したまま洗濯機に抛り込むこと」を追及される円。
「男ってダメねえ」という由美子とさやかに・・・。
「ね~え」と同調する千里だった。
「君はいつも家族を観察しているけれど・・・楽しいのか」
二人きりになった円は千里に質問する。
「楽しい家族よね・・・何でも言いあって・・・」
「そうかな・・・」
そこへ・・・ナベシマとゆずこが接近する気配があり・・・千里は壁抜けをする。
千里は相当に優秀な超能力幽霊だよな・・・。
それか・・・ナベシナたちが超無能な死神なのか・・・。
今回のゲスト幽霊は・・・達夫(寺島進)である。
野球狂で天涯孤独な身の上・・・。
気にかかるのは所属する草野球チーム「ラビッツ」の行く末であった・・・。
「さあ・・・行こう」
「僕は・・・授業が」
「とにかく・・・行こう」
円・・・留年するよね。
喫茶店では・・・葬式帰りのラビッツのチームメイトが集合していた。
達夫を入れて九人であり・・・チーム存続の危機である。
「どうする・・・来週の試合・・・」
「八人じゃ・・・無理だよな」
「いよいよ・・・ラビッツも解散か・・・」
《解散とか言うなよ・・・情けない・・・こういうわけなんだ・・・よろしくな》
「え・・・つまり・・・僕にチームに入れと・・・」
《あったりめえだよ》
「ですから・・・僕には授業が」
《とにかく・・・来週の試合まで・・・頼むよ》
幽霊の頼みを断れない円は・・・男たちの会話に割り込む。
「あの・・・僕でよければ・・・」
「え・・・」
「ラビッツに入れてください」
「これも達夫さんの導きかね」
「ま・・・そうですけど・・・」
「え」
そこへ・・・真理(森カンナ)が現れる。
真理は・・・チームの最年少である真之介(伊澤柾樹)の姉だった。
達夫の生前最期の試合・・・敗戦になったのは・・・真之介のエラーがすべてだった。
「達夫さんも亡くなったし・・・もういいでしょう」
「真理ちゃん・・・」
「もともと・・・弟は野球なんてやりたくなかったのに・・・達夫さんに無理矢理ひっぱりこまれたんです・・・」
「・・・」
「さあ・・・帰りましょう」
真之介は姉に促され店を出て行く。
《なに勝手なこといってんだよ・・・真之介は野球が好きなんだよ・・・》
達夫は叫ぶが・・・その声は円以外には届かない。
千里は入院中の幸を見舞っていた。
「円くんと一緒に暮らして・・・どうなの」
「昔に戻ったみたい・・・」
「それじゃ・・・ダメじゃない・・・言い残したことがあるから・・・この世にとどまっているんでしょう」
「・・・」
幸は・・・千里を励ますのだった。
円と達夫は真之介の家にやって来ていた。
そこへ・・・千里が合流する。
「きてくれたんだ・・・」
「行きましょう」
《おい・・・勝手に入っちゃダメだろう》
「幽霊の特権です」
千里は・・・部屋でグロープを見つめる真之介の表情から心を読むのだった。
一方・・・円は表で真理と遭遇する。
「あなた・・・」
「真之介くんのチームメイトです」
「真之介は・・・意志表示のできない子なの・・・」
「・・・」
「無理矢理誘われても・・・いやだと言えないのよ・・・野球も上達しないし・・・あの子のエラーで試合に負けて・・・みんなに責められて・・・苦しんでいるの」
「やりたくない・・・と言えないということは・・・やりたい・・・とも言えないってことですよね」
「私には・・・わかるの・・・あの子の姉ですから・・・」
「・・・」
円は撤退し・・・アルバイトの先輩である・・・幸に相談する。
「どうしたらいいと思う」
「私は動けないし・・・あなたががんばってくれないと・・・」
「そんなこと言われても・・・僕にも授業があるし・・・」
「その子がダメなら・・・他の選手を勧誘するとか・・・」
「え・・・僕が・・・」
「あなたしかいないじゃない」
二人のやりとりを加藤孝志(森永悠希)と女子大生たちが見ていた。
「あの二人・・・仲いいよね」
「付き合ってるんじゃないの」
「あの二人は・・・絶対付き合ってないと思う」
加藤に気付いた幸は閃く。
「あ・・・九人目がいた」
「あ・・・」
「え・・・俺?」
なんだかんだ・・・加藤は円に誘われたら嫌とは言えないのである。
「野球もいいけど・・・ロケット・コンテストはどうする」
「もう・・・そんな季節か・・・」
「一年って早いよな」
「問題は予算だな」
「部員が増えたらと思ったけど・・・今年はパスするか」
「・・・」
チームでの練習後・・・円と加藤はバッティングセンターに向かう。
円は・・・理論的に・・・「弱くても勝てます」的なことを考えるが・・・ダーツの時には成功した手法が・・・バッティングには応用できないらしい・・・。
「来た球を打つ」のは・・・難しいからな。
そこで・・・円は・・・真之介がアルバイトをしていることを知る。
「真之介くん・・・バイトが終わってからこっそり・・・ここでフライを捕る練習しているんだ」
探偵幽霊・千里の報告である。
「・・・」
「私・・・真之介くんと・・・円くんて似てると思う」
「似てるって・・・どこが」
「何を考えているかわからないようなところ・・・」
「君だって・・・」
「え・・・」
「あの日以来・・・僕と星を見に行かなくなって・・・」
円は千里との交際を否定した上で・・・流星観察に誘ったのである。
まさか・・・千里が円と交際していたつもりだとは夢にも思っていないのだ。
「どうしてなのか・・・今もわからない」
「本当に・・・わからないの」
「うん」
怒りに震える千里は・・・空気を振動させ・・・周囲の物質を揺らしまくるのだった。
「なんか・・・怒ってるの?」
「知らない・・・」
千里もいい加減・・・言葉にしないとわからない奴だとわかるべきだな。
円は真之介に声をかけた。
「僕と君が似ているって人がいて・・・もし・・・君がやりたいことをやりたいって言えないなら・・・そうなのかもしれないって思った。僕はロケットを飛ばしたいと思ったけど・・・友達に無理だっていわれて・・・それでもやりたいと言えなかった・・・最近、知り合った人がいるんだけど・・・僕と違ってやりたいことをガンガンやりまくるんだよ・・・僕はその人がちょっとうらやましい・・・君が本当は野球をやりたいと思っているのなら・・・今度の試合・・・やればいいんじゃないか・・・僕は待っているよ」
「・・・」
試合当日である。
相手チームの「イーグルス」もへっぽこらしく・・・八回を終わって同点である。
しかし・・・加藤が足を挫いてしまう。
そこへ・・・真之介が現れる。
弟思いの姉は追いかけてくるのだった。
「無理する必要はないのよ・・・帰りましょう」
しかし・・・その手を振り払う真之介。
「僕は・・・野球が・・・やりたい」
《よく言った・・・》
達夫は歓喜する。
外野の守備についた真之介を励ます達夫。
円は自ら・・・達夫に身体を提供する。
大飛球が真之介の頭上に打ち上がる。
「真之介・・・お前が捕れ・・・声を出せ」
「・・・オ・・・・オーライ」
真之介が捕球してチェンジである。
最終回裏の・・・ラビッツの攻撃・・・。
先頭打者は・・・円/達夫である。
所謂、三振前の大ファールを打ち放つ円/達夫・・・。
しかし・・・大好きな円の笑顔が見たい千里は念力で風を巻き起こすのだった。
強風に吹かれて軌道修正した打球はレフトポールを直撃するのだった。
「ホームランだ・・・ざまあみろ・・・」
こうして・・・ラビッツはチーム結成後・・・初めての勝利を手にした。
「達夫さん・・・天国で喜んでくれるかな・・・」
いや・・・そこにいます。
まもなく・・・達夫は・・・ナベシマの手で・・・昇天する。
円を賞賛するナベシマ・・・。
死神が去った後で・・・千里がつぶやく。
「円くん・・・変わったよね・・・変わったのは・・・幸さんのせいなのかしら・・・」
「・・・」
もちろん・・・千里が何故そんなことを言うのか・・・円にはわからない。
思わせぶりの通じない男なのだった。
一方・・・父親(飯田基祐)から政略結婚を勧められ・・・ムシャクシャする幸は幽体離脱の特訓に我を忘れていた。
幽体となった幸の前に死神一課のシノザキが現れる。
「凄いじゃないか・・・君・・・こっちに来ないか」
ヘッドハンティングである。
どうでもいいが・・・死後の世界の人たち・・・生者に頼りすぎじゃないか・・・。
すでに死んでいる死神たちの何かをやりたいという意志・・・。
それはどこから生まれるのだろうか・・・。
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