殿下の正体とは何でしょう・・・殿下の心にあるものとは・・・なぜ皆は殿下に忠誠を尽すのですか?(長澤まさみ)
この世界では今のところ・・・真田昌幸と石田三成は義兄弟ではなく・・・今後もそうならないと思われる。
通説の一つである・・・宇多頼忠の娘・寒松院が真田信繫の母ではないからだ。
石田三成の妻は「うた」とされているので宇多頼忠の娘・皎月院らしい。
真田昌幸も真田信繁も・・・そして石田三成も・・・歴史的敗者であるために・・・その事跡は曖昧なことが多い。
真田家では真田信幸の系統が勝者として残り・・・いろいろと憚ることも多いのである。
宇多頼忠の兄が尾藤知宣である。
知宣は秀吉の古参武将だが・・・九州征伐で失態を演じ讃岐宇多津五万石の所領を没収されている。
天正十七年(1589年)の聚楽第の落書事件では・・・犯人とされる尾藤道休と同姓である上に・・・犯人を隠匿したとされる天満本願寺に逗留中だったと言われる。
この事件には尾張守護家(織田家の主筋)の斯波義銀や室町幕府管領家の細川昭元(正室が信長の妹)が連座している。
何より・・・天満本願寺には本願寺第十一世の顕如が健在なのである。
こうした旧世代の権力者の保護は・・・織田政権の簒奪の課程で秀吉が画策したものである。
九州征伐を終え・・・天下人となった秀吉あるいはその官僚機構が利用価値のなくなった人々を粛清する先駆けであったとも考えられる。
尾藤知宣がなぜ・・・巻き込まれてしまったのかは別として・・・正室の父の兄が・・・主君の怒りを買ったことは・・・石田三成にとって・・・相当に恐ろしい出来事であったはずである。
しかし・・・宇多頼忠の存在しない世界では・・・三成も信繫も他人事でいられたのだった。
本願寺顕如、斯波義銀、細川昭元は処罰を免れるが尾藤知宣は北条征伐後に切り捨てられたと言う。
で、『真田丸・第20回』(NHK総合20160522PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・渡辺哲也を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は真田信繫のたくさんいる義理の父親の一人にして石田三成の親友・・・大谷吉継の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。尾藤道休を演じるビッグベンこと横田栄司が「重版出来!」の加藤了役、「グッドパートナー 無敵の弁護士」の岸田英樹役に続いて一週間に三度目の登場で・・・レビューのタイトルをずっとシェイクスピアもじりでやっているだけにちょっと笑いました。舞台中心の地味めの役者さんが・・・人気ですな・・・ビックベン効果ですかねえ。信繫事件簿的には容疑者役なので・・・渋い抜擢のはずが・・・またかよっ的な展開になってましたぞ。ついに・・・関ヶ原退場組の重要な一枚が加わって・・・マップ的には実にすっきりいたしました・・・。それにしても・・・三成も吉継も・・・まあ、秀吉も・・・さらには昌幸も真田丸にはいないのだなあ・・・と思うとすでに寂しい感じがしますな。北条滅亡も迫り・・・そこから関ヶ原まではどんな感じになるのか・・・ワクワクしますね。この感じだとあっという間に折り返してしまいそうですな。
天正十六年(1588年)四月、豊臣秀吉は聚楽第に後陽成天皇を迎え華々しく饗応。同席した徳川家康や織田信雄ら有力大名は秀吉への忠誠を誓う。上洛した大名のうち、池田輝政、織田信秀、丹羽長重、前田利家、上杉景勝、細川忠興、毛利輝元、島津義弘など多数が秀吉より豊臣姓を賜る。七月、秀吉は刀狩令、海賊停止令を発布し、帯刀権を持たない身分というものを発生させた。つまり・・・武士の特権階級化であり、武士の身分を定める秀吉の支配の具象化である。八月、秀吉は島津氏を通じて琉球に服属を命じる。十二月、真田信幸と小松姫の婚姻が成立する。天正十七年(1589年)一月、信雄、羽柴秀長、宇喜多秀家らが大坂城で秀吉に対し新年を祝賀する。秀吉は上洛して参内し、歳首を賀す。二月、聚楽第南門に落書発見。秀吉は番衆(警備担当者)を十数人処刑。三月、落書の犯人及び追放中の斯波義銀・細川昭元・尾藤知宣が潜伏中の天満本願寺に石田三成が派遣され、寺内成敗として寺内町を破却、天満の町人数十人が京都六条河原で磔となる。恐怖した顕如は犯人と目された尾藤道休と犯人隠匿に関与した願得寺顕悟(本願寺八世蓮如十男・実悟の長子)を自害させた。五月、豊臣鶴松誕生。
石山本願寺に構築された大坂城の郊外に天満の森がある。
そこに本願寺の新拠点が置かれている。
京都に聚楽第を建築した秀吉は軍事的首都である大坂と・・・政治的首都である京都を忙しく往復している。
秀吉は秀長に命じて洛南の淀の城の改修を行った。
「あんな小城をどうすんだね」
「茶々の城にするがや」
「ああ・・・」
「寧々の側にはおいとけねえでかん」
「だがんねえ」
秀吉は北政所の腹の子殺しを惧れていた。
妬(うまずめ)である寧はこれまでにも秀吉の子を殺してきた過去がある。
寧は・・・茶々が出産のために淀の城に移ることを聞いて歯ぎしりする。
「あの女に子なんか産ませるもんかね・・・」
後陽成天皇の聚楽第行幸を賞されて寧は従一位に叙せられている。
寧は兄の子で忍びである播磨国龍野城主の木下勝俊に相談する。
「殿下に痛い目にあってる門徒衆を唆したらどうだらず」
「そうしてちょう」
秀吉の不興を買い・・・本願寺に身を潜めている浪人衆は多かった。
聚楽第から淀城に移る茶々の行列を襲撃して寧の歓心を買う企てに・・・秀吉政権から追放された尾藤知宣はうかうかと乗ってしまった。
秀吉に怨みを持つ門徒衆は多い。
知宣に煽動されて・・・計画は整った。
しかし・・・真田信繁の警護役として派遣されていた雑賀一族崩れの鈴木孫七がこれを探知する。
信繫は・・・秀吉馬廻衆として・・・茶々警護の役についていた。
「なんと・・・愚かな・・・」
「いかが・・・なさいますか」
「才蔵・・・」
「おまかせあれ・・・」
秀吉は茶々のために・・・豪華な屋形舟を用意していた。
花吹雪の舞う宇治川を南下する茶々の屋形舟を待ちうける門徒衆の鉄砲忍びたち。
門徒衆の一人は本願寺降伏によって実戦投入されなかった大型の爆雷砲を構えているものもいる。
一撃で櫓を吹き飛ばす威力を秘めた大鉄砲である。
しかし・・・花吹雪の中から現れたのは・・・羽衣をまとった天女たちだった。
「これは・・・なんと・・・」
「あやかしか・・・」
「美しい」
鉄砲忍びたちは・・・心に警鐘を鳴らす。
だが・・・天女たちの美しさは・・・抗いがたい魅惑で男たちを誘うのだった。
「だめだ・・・」
「たまらねえ」
「こりゃ・・・いけねえ」
男たちは鉄砲を構えたまま・・・川面に身を投げる。
すると・・・潜んでいた真田河童衆が男たちの心臓を一突きするのだった。
やがて・・・河原に男たちの死骸が並べられる。
死体の人数を確かめた霧隠才蔵は任務終了の狼煙をあげた。
その岸辺を臨月間近の茶々を乗せた屋形舟が何事もなかったように下っていく。
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