いざとなれば芝居を打つ手があるじゃない(長澤まさみ)
人は役者、人生は一幕の舞台・・・である。
学ぶということは真似るということで・・・子供は親の真似をして人というものになっていく。
ものまねは芝居の原点である。
真似ることは演じることでもある。
男の子は男の子の役柄を演じ、女の子は女の子の役柄を演じる。
主人は主人を・・・奴隷は奴隷を演じている。
恋人であればいかにも恋人風に振る舞う。
やがて・・・本心と演技は一体化し・・・いかにもその人になっていく。
口汚くののしり続ければ・・・身も心も汚れて行くのである。
私はただ悪ぶっているだけ・・・という人はすでに悪なのである。
悪に報いがあるように・・・悪の演技にも報いはある。
冷たい官吏を装う人はまさに冷たい官吏なのである。
真実が一つの嘘であるように・・・嘘こそがひとつの真実なのである。
で、『真田丸・第17回』(NHK総合20160501PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・土井祥平を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は豊臣家滅亡の立役者・戦下手の代名詞・空気が読めない男・石田三成の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。待望の三成キターッですねえ。「再会」という縛りで重ねてたたみかける展開。茶々と信繫の再会、家康の正室となった旭姫と秀吉の母の再会、秀吉と家康の再会、そして行方不明の姉と弟が再会・・・一方で・・・芝居を演ずることを裏で重ねて行く。真田を徳川に攻めさせる芝居、歌舞伎という芝居、茶々から逃れるための恋仲の芝居、昌幸の打つ手がある装いの芝居、秀吉と家康の見え透いた芝居、そして・・・茶々の魔性の芝居、再会する母と子の芝居・・・虚々実々の駆け引きに・・・翻弄される見事な群像劇でございましたねえ。
天正十四年(1586年)七月、徳川家康は甲斐国甲府城を出陣し信濃国小諸城の兵力を増強。島津義久は肥後国八代に出陣。秀吉は島津討伐を決意。八月、羽柴秀吉は家康に真田攻めの停止を勧告。家康は上田城攻略を中止。秀吉は越中国の佐々成政を攻める。成政はただちに降伏。秀吉は成政の臣従を赦す。島津勢は筑前国に侵攻。秀吉の命により、安芸国の毛利輝元、伊予国の小早川隆景、出雲国の吉川元春が九州に出陣。九月、秀吉は秀吉は正親町天皇から豊臣の姓を賜る。土佐国の長宗我部元親が豊後国の大友勢に助勢する。十月、豊臣秀吉の生母が三河国岡崎城に入城、家康は遠江国浜松城で上洛を決意、大坂城にて秀吉に臣従する。島津支配の豊前小倉城を豊臣軍団が陥落させる。秀吉の軍師・黒田官兵衛が九州諸将に対し寝返り工作を開始。島津義弘は阿蘇山を越え豊後に侵攻。十一月、家康は正三位権中納言に叙任される。大友勢の豊後国佐伯惟定は島津勢の撃退に成功。
出雲のお国は尼子一族の支配した八杉の忍びに属するくのいちである。
尼子氏を援助した秀吉は八杉の一族を出雲の尼子水軍衆とともに配下におさめている。
秀吉は信長の武将として成長する過程で各地の忍び衆をある時は滅亡させ、ある時は靡かせてきた。
竹中半兵衛との関係が深い飛騨の影衆、弟・秀長に属する大和衆、根来衆、そして、石田三成が支配する近江犬神衆など・・・様々な忍軍の上忍なのである。
自身が信長の忍びであった秀吉は・・・術者としても超一流だった。
真田幸村を擁する真田昌幸も、服部半蔵を従える徳川家康も秀吉自身にはうかつに手がだせないほどである。
今や、天下を手中に収めつつある秀吉の諜報網は九州の一部や東北地方を除外すればほぼ完成されていた。
琵琶湖周辺に草(土着した工作員)を持つ真田一族だったが・・・うかつに動けば、秀吉の忍びにたちまち狩られてしまう。
そのために・・・真田一のくのいちと称される真田昌幸の娘・お雪は渡り巫女として出雲のお国一座に拾われる格好で・・・漸くその一端に紛れ込んでいる。
八杉衆は出雲から能登までの日本海沿岸を拠点とする海賊衆であり・・・秀吉の山陰地方における水軍衆でもあった。
八杉の海賊衆の船に乗りお国の一座は出雲大社のスサノオ信仰伝播を旗印に沿岸地方を巡察するのだ。
お国が京の都に上るのは秀吉の上洛にあわせて斥候の結果を報告するためである。
秀吉の馬廻り衆となった信繫は霧隠才蔵(くのいちお峰)によって漸くお雪とツナギ(接点)を持つことができた。
「お雪様・・・お久しぶりでございます」
「お峰か・・・」
「近江に忍ぶ河原衆に・・・昌幸様の上洛を急かせ・・・と信繫様からの伝言をお願い申しあげます」
「父上も・・・駆け引きが過ぎますな・・・」
「信繫様は・・・九州征伐は来年中に決着すると見通しております」
「どうもそのようじゃ・・・」
「お屋形(昌幸)様がそれより前に上洛しなければ・・・真田一族は危ういとお考えです」
「あの子は敏いからのう・・・」
京の河原で言葉を交わした二人は・・・それぞれの道を立ち去る。
その頃・・・大坂城では寧が悋気に身悶えている。
「いくら・・・信長様の姪御とはいえ・・・あのものは・・・好かぬ・・・」
寧は良妻賢母であったが・・・時々、腹の虫が騒ぐのだった。
これまでも秀吉の愛妾を何人か闇に葬っている。
城内での茶々の言動が腹にすえかねた寧は・・・茶々の膳に毒をもる。
「う・・・」
突然、吐血した茶々はその場に倒れ伏した。
秀吉は上洛中で留守である・・・侍女たちは騒然とする。
しかし、一瞬の後・・・茶々はむくりと起きあがる。
蒼ざめた侍女たちを一瞥した茶々はけろりとした顔で告げる。
「今日は・・・食が進む・・・膳のお代りを持て・・・」
事の次第を聞いた寧は歯ぎしりをした。
不死身体質の茶々に毒は効かないのだ。
関連するキッドのブログ→第16話のレビュー
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