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2016年5月 9日 (月)

真田一族には疑いの眼差ししかないのですか?・・・真田一族には寝首を掻く腕しかないのですか?(長澤まさみ)

戦後七十年を越え、平和憲法で育ったほとんどの日本人にとって・・・合戦は基本的に好ましいものではない。

しかし・・・かっての日本人は戦争が大好きだったのである。

その名残りが・・・戦国時代に憧れる心情として幽かに残っている。

もちろん・・・いつの時代にも殺生を好まない人はいる。

しかし・・・そんな人も殺してやりたい気持ちを「いつか殺してやる」とか「死ねばいいのに」とかふと言葉として発するのだ。

人間の心の闇に何が潜んでいるか知れたものではないのだな。

血ぬられた歴史の中で・・・家康と秀吉は・・・織田信長と朝倉義景の争う「金ヶ崎の戦い」や「姉川の戦い」で友軍として戦った。

信長と武田勝頼の「長篠の戦い」でも家康と秀吉は友軍である。

一方、真田昌幸はこの戦いで真田信綱と昌輝という二人の兄を失っている。

「本能寺の変」を経て、後継者レースに勝ち残った秀吉は「小牧・長久手の戦い」で家康と対立する。

長い織田家との同盟関係から・・・家康は・・・秀吉の実力を知悉している。

家康の臣従はタイミングの問題だったと言えるだろう。

一方・・・昌幸も・・・家康に一矢を報いたのとは別に・・・秀吉が掌握する「天下」の実力は充分に把握していたと言える。

何故なら・・・昌幸は武田家きっての智将であり・・・「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という兵法の基本を知らぬわけはないからである。

昌幸が秀吉に臣従することは・・・ごく自然なことだったと考える。

それが戦国の世の習いなのだ。

で、『真田丸・第18回』(NHK総合20160508PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・田中正を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は気高く雄々しくも風雅な趣を醸しだす真田昌幸の描き下ろしイラスト第四弾大公開でお得でございます。憚りながら申し上げますれば最高傑作と言ってもいい出来栄えでございますねえ。実に美しい表裏比興の者ですな。この世界では真田昌幸と石田三成が義兄弟ではないようなので・・・あくまで最大勢力の官僚と弱小勢力の代表でしかない冷たい関係が一層強調されておりますな。この辺りの史実選択も計算されているように感じます。勢力差や地理的状況を考えると真田家が徳川家の与力になるのは実に理にかなっているわけですが・・・秀吉としては真田家を大名として残すことで徳川家を牽制させる含みを持たせているのでしょうね。現在、大坂城に黒田官兵衛がいないのはすでに九州で戦端が開かれ戦奉行として合戦中だからですが・・・つまり秀吉は総大将として出陣しなくても・・・前哨戦に兵力を動員できる実力者ということになります。西で実戦しつつ・・・東では外交戦を行っているわけで・・・まさに外交も戦争のうちであることが明確なのですな。来るべき関東制圧の駒として・・・真田をどのように利用するか・・・戦争の天才の一人である秀吉は・・・恐ろしいまでに・・・熟慮しているように感じられるところが脚本の素晴らしさを物語るのでございますねえ。

Sanada018天正十四年(1586年)十一月、吉川元春は豊前攻略中に陣没。十二月、豊臣秀吉は島津討伐のための動員令を発する。徳川家康は居城を浜松城から駿府城に変更。島津軍の豊前松山城・高橋元種が降伏。豊後では島津家久が戦闘は戦闘を継続。戸次川の戦いで豊臣軍の軍監・仙石秀久は家久の急襲により大敗。長宗我部元親の嫡子・信親が戦死。勢いに乗った家久は大友宗麟の守る丹生島城を包囲する。島津義弘も肥後から豊後に侵攻。島津家当主・義久も日向国に進出した。天正十五年(1587年)一月、秀吉は年賀の席で九州侵攻の陣割を発表。宇喜多秀家が九州に出陣。二月、豊臣秀長が出陣。三月秀吉が出陣し、秀長が日向方面に南下し、秀吉は肥後へと侵攻した。真田昌幸は小笠原貞慶に伴われ、駿府城で家康と会見し、豊臣家の臣下として家康の与力となったことを確認。その後、昌幸はその報告のために上洛したが大坂城に秀吉は不在だった。上杉、徳川、真田が揃って豊臣家に臣従することによって信濃国では完全な停戦が成立する。秀吉は九州で連戦連勝の進撃を開始していた。

「真田安房守昌幸でござる」

「よう・・・参られた・・・」

駿府城で家康は昌幸を歓待した。

信州上田城では煮え湯をのまされた家康である。

しかし・・・昌幸も長篠合戦で兄二人を織田・徳川連合軍に討たれている。

武田と織田の長い戦いの果て・・・気がつけば徳川も真田も・・・豊臣の臣下となっていたのである。

この時、家康は四十四歳・・・昌幸は四十歳となっている。

家康は今川家の・・・昌幸は武田家の人質として幼少時代を過ごしている。

その後、今川家が早くに滅亡したために・・・家康は独立し・・・武田家の圧力の防波堤として織田家の先陣となった。

昌幸は・・・信玄、勝頼の武田二代に長く仕えることになる。

三方ヶ原の戦いで家康は滅亡寸前まで追い詰められていた。

昌幸は当時、武藤喜兵衛として戦場にあった。

家康の敗戦をその目で見ているのである。

その後、長篠では・・・武田勝頼が敗北した。

昌幸は旗本衆として勝頼とともに撤退したのである。

「三方ヶ原で負け・・・長篠では勝った・・・お互い・・・よく生き残ってきましたな」

「生き残るも・・・討ち死にするのも・・・同じことと存ずる」

「さすがは・・・表裏比興の者と称される昌幸殿じゃ・・・」

「そのような褒め言葉は過分でござる」

「すべて・・・水に流してくれますかな・・・」

「それは・・・こちらがお願いしたいこと・・・」

家康は微笑んだ。

昌幸は平伏した。

儀式は恙無く終了した。

家康の脇に控える服部半蔵は昌幸の背後に控える真田佐助に気を放つ。

佐助はその圧力に耐えつつ・・・昌幸の身辺を警護する。

いざとなったら・・・お互いに相手の主を殺すばかりである。

昌幸が座を立ち・・・家康の用意した宿所にたどり着くまで・・・二人の忍びの暗闘は続く。

宿所に戻り・・・真田幸村や・・・警護の河原衆と合流し・・・ようやく・・・佐助は一息をつく。

「さすがは・・・伊賀に半蔵ありと噂されるものよ・・・もう少しで気が萎えるところだったわ」

佐助は警護衆の一人、海野三郎太にこぼす。

「佐助ほどのものでも・・・気押されたか」

「そらそうだ・・・半蔵は・・・年齢さえわからねえ・・・」と河原綱茂が笑う。

「百歳を越えているという話もあるくれえだ」と鈴木弥助。

「化け物だな」と望月軍兵衛。

真田忍軍の中でも選りすぐりの忍びが昌幸の警護の任についている。

「佐助・・・御苦労だが・・・駿府を出るまでは気が抜けぬぞ」

真田忍軍を統べる真田源太郎幸村は囁いた。

「お任せくだされ・・・」

佐助は胸を張る。

昌幸は無言で忍びたちの会話を楽しんでいる。

服部半蔵は・・・天知通によって・・・真田主従の会話を盗み聞く。

密殺を得意とする影の軍団は命令が下るのを待っている。

家康は居室に戻り・・・大きく息を吐く。

家康は・・・風に・・・春の気配を感じた。

「桜が・・・咲くか・・・」

つかのまの平和を感じ・・・家康は・・・大きく息を吸った。

関連するキッドのブログ→第17話のレビュー

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コメント

今回の昌幸は今まで描いた昌幸で一番のお気に入り
そう言って頂けてなによりです
ま、構図もよかったんでしょうね

それからいつのまにか
うざい存在だったきりに
あれこれと相談してる間柄

というか、嘘でも恋仲だと言った事が
きりのとげとげしさを取ったのかもしれませんが

秀吉と三成
似てないようで非情なとこだけは
しっかり似てますね

この辺の見せ方が個人的に一押しです

投稿: ikasama4 | 2016年5月12日 (木) 01時34分

✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥

エキゾチックな顔立ちの二枚目としては
代名詞のような役者と真田昌幸という役が
渾然一体となって・・・戦国武将が香り立つようです。

確かに・・・構図も素晴らしいと考えます。

すべての場面が計算されていて
いわば・・・逆算につぐ逆算で成立する
コロンボ形式のプロですからな。
さすがと言う他はありません。
なにしろ・・・アレを毎週書き下ろしていたわけですからねえ。

きりというキャラクターの設定そのものが
一種の戦国愛を感じさせると考えます。

戦国時代にだって・・・
ああいう可愛い女子は絶対いたはずですものな。

それはじょしではなくおなごだったかもしれませんが。

時代劇風のセリフと日常会話的セリフの
混合が冴えわたっておりますねえ。

秀吉と三成の相似性・・・。

三成は確かに秀吉の模倣者だったと言えるでしょう。
しかし・・・哀しいかな・・・秀吉ほどの
総合力を持っていなかった・・・。

三成が・・・もう少し戦上手だったなら
歴史は変わっていたでしょうが・・・
残念ながら・・・そうではなかった。
ここが歴史の醍醐味でございますよねえ・・・。

投稿: キッド | 2016年5月12日 (木) 03時59分

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