私はただベストを尽くしたいだけ(竹野内豊)見当はずれもいいところ(松雪泰子)離婚は両親の最期の共同作業です(松風理咲)輝くレッドスター(山崎育三郎)
「カムイ外伝/白土三平」の「雀落し」の引用である。
「カムイ」にも出典があるのかもしれないが・・・「酒餌」というのは「八岐大蛇」にさえ効果的だからな。
「誰が一番多くの雀を捕獲できるか」という勝負をする忍者たち。
弓矢や手裏剣などの武具を使う下忍に対し・・・酒に漬けた米を用いたカムイが圧勝するという話なのである。
「カムイ」の愛読者なら誰もが知っている話を・・・「雑学」として披露され・・・弁護士たちが誰も知らないというのは・・・一種の「常識」に対する皮肉とも取れるが・・・そもそも・・・「カムイ」を知るものが少数派の時代である。
通じないんじゃないか・・・と思う。
かって「差別」が「常識」だった頃・・・それを「口にするのも憚る」時代が招かれて・・・「差別」そのものが「特別な知識」になってしまったようだ。
そういう「現代」が良かったのかどうか・・・よくわからない。
「カムイ」がどれほど・・・心を震わす物語だったか・・・「生まれついての身分差」がどれほど忌まわしいものであるか・・・「差別」の隠蔽された世界では・・・よくわからないのだろうと思われる。
まあ・・・「雀」を食べなくても「焼き鳥」を食べればいいんだよな。
で、『グッドパートナー 無敵の弁護士・第6回』(テレビ朝日20160526PM9~)脚本・福田靖、演出・常廣丈太を見た。「モップガール」や「雨と夢のあとに」そして「ハガネの女」の演出家である。久しぶりにロマンチックな作品に仕上がったな。主人公やヒロインが大人の事情でもっともらしいことを語るけれど・・・子供たちにしてみれば・・・「知ったことじゃない」という話だ。いつか・・・子供もたちも大人になり・・・事情を知り・・・もっともらしいことを語るだろうが・・・とにかく・・・人間なんてみっともないのが基本なのだな。そういう話は実にロマンチック(理想的)なのである。
神宮寺法律事務所の所長・神宮寺一彦(國村隼)から「離婚した妻とグッド・フレンドになれ」とアドバイスされた咲坂健人(竹野内豊)である。
つまり・・・上司の命令なので受け入れる咲坂・・・実に俗物なんだな。
咲坂は・・・娘に語る・・・「俺はママと最高の友達になろうと思う・・・嬉しいだろう」
しかし、小学生の娘・みずき(松風理咲)は質問には答えない。
「私・・・最近・・・友達ができたの」
「へえ?」
「目黒くんって言うんだ」
「え」
娘に男ができたことに暗澹たる気持ちを抱く咲坂だった。
経営不振にあえぐ「蕎麦 いわし丸」チェーンの経営者である根岸昇(六平直政)とその妻・三佐江(千賀由紀子)がクライアントとなる。
都内に五店舗を展開する「蕎麦 いわし丸」だったが・・・銀行から借入金が三億一千二百万円となり・・・それ以上の融資に難色を示されているという。
熱海優作(賀来賢人)はそれがどういう事態なのかピンと来ない。
咲坂は・・・クライアントの求める「事業再生計画」が困難を伴うことを察知し、財務関係に強い赤星元(山崎育三郎)を夏目佳恵(松雪泰子)から借り受けることを決意する。
元妻の仕事が一段落し、アソシエイト弁護士である赤星に余裕があると判断したためだ。
夏目は快諾し・・・咲坂と熱海に赤星を加えた臨時体制が組まれるのだった。
「従業員や取引先に迷惑をかけるわけにはいかないので店を潰すわけにはいかない」というクライアントの熱意に応えようとする咲坂。
しかし・・・赤星は「再建は無理です・・・清算を考えた方がいい」と冷たい判断を述べる。
「再生」と「清算」で対立する二人・・・その喧嘩腰に熱海はアタフタするのだった。
「新人を挟まないでください」
「とにかく・・・経営実態を見てから・・・判断しよう」と提案する咲坂・・・。
生まれ故郷の特産品である「いわし」に拘り・・・「いわしそば」をメインメニューにするクライアントは・・・「そば屋」にはあまり縁のない「魚河岸」に早朝から仕入れに出かけるのだった。
「素晴らしい経営努力じゃないか」と評価する咲坂。
「無駄な労力です」と酷評する赤星。
「最初から無理だと言ってたら何もできないぞ・・・嫌なら帰れ」
「帰りません・・・そもそも・・・咲坂先生から頼んできた案件です」
「だから・・・もう一度頼むよ・・・手を引いてくれ」
「お断りします」
頑なな態度の赤星を持て余す咲坂だった。
「あいつは何なんだよ」と咲坂は夏目に愚痴る。
「あいつって・・・」
「赤星だよ」
「私とは揉めたことないけど・・・」
「畜生・・・仕事場でも家庭でも・・・問題だらけだ」
「家庭でもって・・・」
「みずきに男ができたんだよ」
「男って・・・友達でしょう」
「ジゴロかもしれないじゃないか」
「何言ってんの」
「それでも母親か」
唖然とする一同だった。
新人弁護士・熱海はかねてから・・・狙っている美人パラリーガルの茂木さとみ(岡本あずさ)に持ちかける。
「実は・・・みずきちゃんのために・・・咲坂先生と夏目先生を復縁させたいと思っている」
「そんなことより・・・早く仕事を覚えてください」
「・・・」
ベテラン秘書の朝丘(宮地雅子)とアソシエイトである城ノ内弁護士(馬場園梓)はニヤニヤするのだった。
パラリーガルの九十九治(大倉孝二)はあたりさわりのないリアクションでお茶を濁すのである。
今回はここまでで一番・・・脇役たちの扱いがスムーズだったな。
こういう「面白いのか面白くないのか微妙な面白さ」を狙ったドラマでは結構「編集の間」一つで印象がガラリと変わるのだ。
もちろん・・・そうなるように演出しているわけである。
咲坂に比べれば気配りのできる夏目は・・・赤星をフォローする。
「どうしたの・・・」
「特に問題はありません」
「でも・・・パパ・・・彼が・・・」
「案件についての意見の相違です・・・今後、調整していきます」
「よろしく・・・お願いね」
しかし・・・器の小さい咲坂は・・・所長に相談するのだった。
「とにかく・・・まず・・・クライアントの希望に沿うことだ・・・君もパートナー弁護士を目指すなら・・・不可能なことを可能にすることを目指さないとな」
咲坂に代わって赤星を叱責する所長である。
「まったく・・・器の小さい男だ」と思う赤星・・・。
熱海は赤星に質問する。
「夏目先生とも・・・やりあうのですか」
「夏目先生に逆らったことは一度もないよ・・・そんな恐ろしいことはできない」
「そうなの・・・」
「君はタイトルを見たことないのか・・・咲坂先生は馬に乗ってるだけだが・・・夏目先生はライオン飼ってるんだぞ」
「・・・」
もちろん・・・気障な男の代名詞だった赤星が・・・豹変しているのは「理由」があり・・・それが「オチ」という趣向である。
今回は完全に別枠扱いになっている第三のパートナー弁護士・猫田弁護士(杉本哲太)は婚活のためにお見合いイベント「お見合いRUN!」に参加する。
進行役は白石あかね(伊藤修子)である。
一部お茶の間で人気のドラマ「お義父さんと呼ばせて」で砂清水誠(山崎育三郎)を仕留める八千草千代(伊藤修子)なのである。
そして・・・「最後のカップル成立は男性9番・猫田純一さん・・・女性2番・大田蘭子さん」 と叫ぶのだった。
太田蘭子(小松彩夏)であるために一部お茶の間は騒然とするのだった。
ドラマ「家族ノカタチ」で佐々木彰一(荒川良々)とお見合いするのが丸山久美(小松彩夏)だからである。
つまり・・・「あまちゃん」の駅長と副駅長がセーラーヴィーナスとカップル成立してしまったのだ。
だから・・・どうしたってんだ・・・このドラマ中毒めがっ。
連続結婚詐欺でないことを祈るばかりである。
疑心暗鬼の父親は・・・学校まで娘を偵察に出向く。
そこで・・・けん玉の上手な目黒くん(藤野大輝)を目撃するのだった。
一方、夏目弁護士は大便ではなくてビッグベンことクライアントの岸田英樹(横田栄司)に交際を申し込まれたり、日本舞踊の師匠である仙石雪之丞(合田雅吏)にちやほやされたりして・・・それなりに離婚後の生活を楽しんでいた。
しかし・・・みずきの気持ちを考えると・・・離婚したことを早計だったかもしれないと考え始めている気配も漂うのであるが・・・。
「事業規模の縮小しかありません」
「従業員の解雇をクライアントは望んでいない」
相変わらず対立する咲坂と赤星・・・。
咲坂は伝家の宝刀「バッジ外し」を仕掛けるのだった。
「弁護士である前に人間としてだな」
「人間である前に銀行員である人たちは・・・ノーと言いますよ」
赤星の予言通りに・・・咲坂の中途半端な再建案は銀行の融資担当者に受理されないのだった。
「このままでは・・・融資は無理です」
「・・・」
手詰まりになった・・・咲坂・・・。
そこへ・・・クライアントの妻から連絡が入る。
「主人が・・・自分が死ねばなんとかなる・・・って言ってるんです」
「えええ」
弁護士とクライアントは事務所で緊急面談を行うのだった。
「まだ・・・希望はあります」とクライアントを励まそうとする咲坂。
しかし・・・赤星は険しい顔でクライアントを睨む。
「あなたが死んで・・・店だけ残して・・・どうするんです」
「おい・・・やめろ」と咲坂は赤星の言葉を遮ろうとするが無視する赤星。
「僕の父親も・・・飲食店やサウナなどの経営者でした」
「え」
「儲かっているから事業を拡大するんじゃないんですよね・・・経営が苦しいから手を広げるんです・・・融資を受けられるから・・・そして自転車操業です・・・僕はまだ学生だったので・・・親の経営状態なんて・・・全く知りませんでした・・・親父は資金繰りに奔走して・・・過労で倒れました・・・僕が病院に着いた時には・・・息をひきとっていました」
「・・・」
「結局、会社は倒産し・・・僕はバイトをしながら・・・なんとか大学を卒業して・・・弁護士になりました。女の子と生ガキが好きだなんて言ってますけど・・・女の子と付き合ったことはないし・・・生ガキも弁護士になって初めて食べました・・・美味かったなあ・・・」
「・・・」
「母親は言ってましたよ・・・意地を張らないであきらめていれば・・・死ぬことはなかったと・・・命より大切なものもあると・・・言う人もいますが・・・死んだらそんな戯言も言えません」
「彼の言う通りです・・・今は・・・店の看板と・・・あなたの命を最優先で考えるべきです・・・ある程度・・・世間に迷惑かける覚悟でがんばりましょう」
咲坂は掌を返すのだった。
器は小さいが・・・勝負時は逃がさない男なのである。
「唯一黒字の可能性のある浅草店を残し・・・後は・・・」
「本店もですか」
「本店もです」
「・・・わかりました・・・おっしゃる通りにいたします」
クライアントは観念したのである。
外国人観光客向けのビジネス展開で・・・浅草店に「いわし好きのポルトガル人」を呼びこむ事業計画に銀行は同意するのだった。
まあ・・・解雇された従業員が浅草店に放火する心配は残るがな・・・おいっ。
こうして・・・咲坂はクライアントの案件を解決することに成功した。
咲坂の下で・・・赤星が自分には見せたことのない顔を見せたことに動揺する夏目弁護士。
そして・・・赤星の意外な顔を見たパラリーガルの茂木さとみの心は大きく傾斜するのだった。
さとみが赤星を見る目が変わったことに動揺する熱海・・・。
ベテラン秘書の朝丘とアソシエイトである城ノ内弁護士はニヤニヤするのだった。
咲坂を見直し始める夏目弁護士は・・・二人でお茶を飲む。
「ベストフレンドになれって・・・所長に言われたよ」
「私たちが・・・」
「なれると思うか」
「私の結婚式であなたが祝辞を述べるってこと?」
「そういう相手がいるのか」
「まだいないわよ・・・そっちはどうなの」
「俺だって・・・」
モヤモヤする二人だった。
「とにかく頑張ってみるわ」
「え・・・」
「ベストフレンドを目指すんでしょ・・・」
「・・・」
夏目の目には一瞬・・・寂寥感が浮かぶが・・・鈍感な咲坂は気がつかない。
親離婚友達であるみずきと夏目は学校の踊り場で・・・。
「パパとママが最高の友達になったらうれしい?」
「いいや」
「そうよね・・・パパとママは・・・パパとママだもんね」
ようやく・・・一つの到達点が見えたな。
ここまで・・・長かったなあ。
先週は妻に・・・今週は妻の部下に・・・いいところ持って行かれた主人公。
来週は巻きかえしたいところだが・・・自分の部下に持って行かれそうだな。
それもまた・・・味だよな。
いわしそばよりもさばそばだよな。
関連するキッドのブログ→第5話のレビュー
まこ「ぼぎゃああああんでちゅどおおおんな咲坂弁護士と夏目弁護士のスピード離婚・・・。結局・・・結構面倒くさい男の気配が漂う咲坂弁護士によって蓄積された鬱憤が・・・弁護士復帰のあわただしさの中で一気に爆発しちゃった夏目弁護士ということでしょうか・・・もう・・・どっちかが折れればすぐにでも復縁しそうでしゅが・・・きっと二人とも折れないのでしゅね~。損して得とれって言ってあげたい今日この頃なのデス」エリ「弁護士ものとしては案件が地味なのでス~。売り言葉に買い言葉で離婚してもやもやしている中学生のようなグッド・パートナー。これって・・・夫婦喧嘩は犬も食わない話なのかしらん・・・。死に物狂いの経営努力で世界経済は回るけれど誰も幸せにはならない・・・それはケース・バイ・ケースでス~。泣いてすんだら弁護士いらないわよね~」
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