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2016年6月12日 (日)

青空の下で僕は愛を見つけた(福士蒼汰)ご愁傷様デス(土屋太鳳)残念デス(門脇麦)

死後の世界は幻想である。

しかし・・・すべてのフィクションは幻想であり・・・そういう意味では死後の世界を描く物語は・・・ベーシックなものなのである。

そういうものにベテラン作家が挑む時に・・・期待は高まる。

そして・・・期待しすぎればガッカリするのだ。

もちろん・・・今回・・・実らなかった初恋を心残りとする幽霊と・・・生きている二人の男女のせつない心模様はそれなりに哀愁があった・・・。

まあ・・・細部に拘らず・・・見て見ぬフリができれば・・・である。

脚本家は・・・君塚良一→尾崎将也→金子茂樹といった一つの流れに位置づけられる人であると思う。

いや・・・キッドが勝手にカテゴライズしているだけです。

なんとなく・・・洋画を研究して・・・そのエッセンスを巧に活かしているタイプじゃないかと思うわけである。

あくまで・・・キッドの妄想なので念のため。

そういうことを勝手に決め付けていいのか・・・という迷いもあるが・・・これだけ妄想だと言っておけばまともには受けとめないでもらえると信じたい。

脚本家は「結婚できない男」という傑作を書いているので・・・問題点は充分に承知していると思う。

たとえば・・・四十九日という発想は・・・かなり仏教的である。

一方で・・・死神の上司は・・・キリスト教的な天使や神のイメージがある。

いわば和洋折衷で・・・宗教色のない慰霊・・・といった怪しい概念を感じさせる。

霊があるということ自体が非常に宗教的であることを失念した馬鹿な発想なのは言うまでもない。

とにかく・・・そういう曖昧な死後の世界で・・・準拠しているイメージは映画「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990年)なのではないかと思う。

幽霊と幽霊の愛していた生者を霊媒師がつなぐ・・・この基本は全編にあふれているわけである。

そして・・・それに準じて死後の世界の細部がそれなりに描かれるわけである。

素直に昇天する霊もあれば・・・この世に未練があるために彷徨う霊もあるわけだ。

そして・・・昇天を強制する組織と・・・話し合いで解決する組織があるわけだ。

さらに・・・昇天しないと・・・死後の死が待っているわけだ。

死神たちに協力する霊能力者たちは・・・いわば・・・そういう対立に巻き込まれるわけだ。

結構・・・混み入った設定である。

そういう設定の説明の仕方が・・・少し・・・不足しているなあと思うわけである。

なぜ・・・そうなるのか・・・それは・・・死後の世界をなめているからなんじゃないのかなあ・・・と思うのである。

「ゴースト/ニューヨークの幻」には説明不要の部分がある。

そこには・・・キリスト教という伝統を背景に・・・なんとなく・・・共有している死後の世界があるからである。

それがない世界では・・・「死後の世界」を描くための工夫がもう少し求められる気がする。

たとえば・・・このドラマの裏のヒロインとも言える「彼女」の「四十九日」はもう少し最初から明らかにするべきだっただろう。

6/11がその日なら・・・命日は4/23に決まっているわけである。

主人公や表のヒロインが・・・その日が迫ってくるのを「意識」するだけで・・・物語は明瞭になっていく。

なぜ・・・そうしなかったのか・・・不思議なんだなあ・・・。

で、『お迎えデス。・第8回』(日本テレビ20160611PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・小室直子を見た。前回、白銀の糸(肉体と霊体をつなぐアンビリカルケーブル)の存在が強調された。今回、特に説明はないが・・・白銀の糸は幽体離脱中の本人以外にも・・・霊能力者には見えるはずだ・・・と考えると・・・おかしな事態が生じるわけである。幽体離脱した阿熊幸(土屋太鳳)は・・・肉体に千里(門脇麦)を憑依させている間・・・・白銀の糸をぶら下げているわけである。霊能力者である堤円(福士蒼汰)がそれを見ないでいるのは・・・おかしくないのか・・・ということだ。そして・・・円の性格から・・・そういうものを見て見ぬフリはできないはずである。

・・・ということは・・・最初から・・・阿熊幸の中に・・・誰かがいることを円は知っていたわけだ。

そういう話にするか・・・死神のゆずこ(濱田ここね)が特別な力を使って・・・白銀の糸を隠すとか・・・そういうワンポイントが必要だった。

そういうところで・・・お茶の間が躓かないようにするのが脚本というものだと考えます。

ついでに演出についても一言言うと・・・幽体離脱中の幸が・・・着衣であることは・・・まあ・・・大人の事情で察するにしても・・・急に透けて見えたりするのは・・・どうなんだろう。今まで・・・幽霊と人間の差別化をしてこなかったくせに・・・と躓いたことを述べておく。

ナベシマ(鈴木亮平)とゆずこは・・・幸と幽霊の千里の前に姿を見せる。

「まさか・・・君が匿っていたとはね・・・」

「ごめんなさい・・・」

「私・・・昇天します」

「そうか・・・じゃあ・・・逝こうか」

「待って・・・」と幸は呼びとめずにはいられない。

「何故・・・引きとめるのかな」とナベシマ。

「千里ちゃんは・・・まだ・・・告白していないんです」

「告白?」

「千里ちゃんは・・・円くんが・・・好きなの」

「え・・・円を・・・まさか・・・あんなの・・・どこがいいの・・・」

「・・・」

「なるほど・・・好きな人と・・・思い出作りがしたいのね・・・わかるわ」とゆずこ。

「えええええ」と驚愕するナベシマだった。

しかし・・・男一人に女三人である。

「タイムリミットは・・・」

「六月十二日です」

「まだ一週間あるわね・・・がんばりましょう・・・」

「えええええ」・・・押し切られるナベシマだった。

女たちは生死を問わず・・・そういうものだ的展開なのだ。

「一体・・・いつから・・・千里さんを匿っていたの」とゆずこは幸に問う。

「あれは・・・四月の寒い夜・・・」

四十九日を過ぎれば・・・幽霊は人間的本質を見失い、怨霊化するのが標準とされる世界である。

もちろん・・・そこには個人差があり・・・偏執や妄執によって早くから疑似怨霊化する個体もあるらしい。

幸が説得していた幽霊が兇悪な怨霊と化し・・・死神一課のボランティア・魔百合(比留川游)によって霊的処刑対象とされ・・・霊的に解体された夜・・・。

自分自身の無力感に打ちのめされていた幸は・・・街を彷徨う・・・死後まもない千里と出会う。

「あなた・・・幽霊なの?」

「あなたには・・・私が見えるのですか・・・」

「私・・・昇天のお手伝いをするボランティアをしていて・・・」

「私・・・昇天されるように説得されたんだけど・・・」

死神二課の死神の手から逃げ出してきた千里だった。

千里が消息不明になったのは・・・どこかで誰かが不手際を隠蔽しようとしたからなのだろう。

お役所仕事にはありがちなことである。

千里にも家族があるはずだが・・・そのことに・・・彼女は触れない。

幸も・・・家庭的には満たされない日々を過ごしてきた。

幸は・・・千里をさびしい家に連れ帰った。

高校時代の同級生だった千里の通夜に出席した円は突然、「幽霊が見える上に憑依させることもできる」という霊能力に目覚める。

霊能力と精神障害の境界線は曖昧なものだ。

「幽霊が見える」と言えば心の病を疑われる世界である。

身近なものの死は・・・精神的なダメージを生じさせることがあり・・・千里の「死」は円が霊能力者(発狂者)となるイグニッション・システム(点火装置)の一部となったのだろう。

円の特異な性格を発達障害と位置付けるのは簡単だが・・・本当の父親との離別と母親の再婚という「家庭の事情」が「他者への感情移入の乏しさ」や「恋愛感情に対する嫌悪」を生みだしていることは明らかである。

義父への潜在的な否認意識は・・・父親の趣味への無関心として表現されている。

基本的に人間が霊を見ないのは・・・防衛的な反応である。

つまり・・・霊的世界を不可視にすることで生きやすい状況を作り出している。

普通の人間は・・・常時・・・霊的サングラス着用なのである。

千里の死によって・・・壊れやすかった円の精神が破損し・・・円はサングラスを失い・・・さらには憑依体質という霊的に無防備な状態になったわけだ。

やがて・・・円は幸と出会い・・・死神二課のアルバイトと言う名の奉仕活動に巻き込まれる。

父親について無関心であろうとする精神によって封鎖されていた円の知的好奇心は「死後の世界」によって解放され・・・円の遅延していた精神的成熟が始る。

一方・・・千里は幽霊として円に接するうちに・・・円の「家庭の事情」を知り・・・千里の「初恋」が成就しなかったのが・・・円による恋愛感情の拒絶ではなく・・・単に円が「発達障害者」であったことを認知させる。

そして・・・円にとって自分が・・・掛け替えのない存在であったことを知るのである。

なにしろ・・・千里の喪失によって・・・円は精神的に破綻してしまったのだ。

娘への溺愛によって怨霊化しかけた父親、幼すぎて恋の実体を知らぬ少年、禁断の愛によって怨霊と化した女教師、恋愛弱者として変態となった男、血縁ではない子供に愛情を示そうとする大人、初恋を胸に秘めながら普通の生涯を全うした老女・・・様々な「死後の愛の形」を学んだ二人は・・・「生」と「死」に分かたれなれれば・・・「良いパートナー」となれたムードさえ醸しだしている。

しかし・・・千里はすでに「死者」なのである。

死神のゆずこと霊能者の円は・・・幽霊の千里に最期の思い出をプレゼントしようと考える。

もちろん・・・ロマンチックだからだ。

千里は・・・別れを告げるために・・・円の部屋を訪れる。

「幸さんが退院したので・・・幸さんの処に戻ろうと思います」

「え」

「男子の部屋に居候していると・・・いろいろアレでしょう」

「うん・・・」

つまり・・・部屋で自慰行為ができない件である。

「ゆとり」を除き、今季の日本テレビのドラマは・・・「老若男女が一緒に楽しめる」ディズニー・テイストに仕上がっています。

「家族の皆さんともお別れしたいな・・・」

「・・・」

もちろん・・・千里の存在を円以外の誰も知らない。

しかし・・・千里の中では将来、義理の家族になったかもしれない人々なのである。

血縁のない由美子(石野真子)とさやか(大友花恋)の母娘は仲良くキッチンで料理をしていた。

「私も・・・手伝いたかったなあ・・・」

千里の叶わぬ夢に・・・言葉を失う円。

憑依によって・・・千里と一体化した円には・・・千里の心情が理解できるのだ。

幸との疑似恋愛感情によって・・・「女心」についても少し解って来た円なのである。

親友のような千里が・・・なぜ・・・自分と絶交したのかも・・・今の円には推定できる。

円は・・・千里の「ロマンチックな期待」を裏切ったのだった。

だが・・・それに気がついても・・・今さら・・・どうすることもできないと考える円なのだ。

「君が・・・逝く時は・・・必ず見送るから」

「ありがとう」

しかし・・・千里は母娘の会話に耳を傾けていた。

「今週の日曜日・・・東仙祭だから・・・浴衣出してえ」

「まあ・・・もう・・・そんな時期なの」

星が丘町にある東仙神社のお祭りである。

その日は縁日の屋台が立つのだ。

「草原で風に吹かれるなんて素敵じゃない・・・」

「いや・・・やはり誰もいない海でしょう」

幸とゆずこはロマンチックな話題に熱中していた。

円の家から戻った千里は希望を口にする。

「私・・・お祭りの縁日でデートがしたいの・・・」

「それもなかなかに定番よね~」

「そこで提案があるの・・・」

幽霊は生者と接触できないが・・・幸が幽体離脱した肉体に・・・千里が憑依すれば・・・疑似接触が可能だという円の提案である。

「でも・・・そのためには・・・幸ちゃんが円くんをデートに誘わないと・・・」とゆずこ。

「なんで・・・」

「だって・・・千里さんが事情を話したら誘った時点で告白したことになっちゃうでしょう・・・」

「でも・・・それじゃあ・・・私が円に告白したことに・・・」と幸・・・。

「だから・・・デートの途中で千里が正体を明かして・・・気持ちを告げるのよ・・・ああ、ロマンチック・・・」

いろいろと矛盾が生じる展開だが・・・ゆずこのおばさんロマンチックに押し切られる千里と幸だった。

幽体離脱の危険性を統計的に把握しているナベシマは危惧するが・・・女たちのロマンチックには抵抗できないと悟っているのだった。

一方、死神一課のシノザキ(野間口徹)は・・・ナベシマの言動に不信感を覚え・・・部下のマツモト(根岸拓哉)を通じて魔百合に死神二課アルバイトの動向チェックを命じる。

実は・・・「家庭の事情」によって円とは別の意味で「恋愛感情」が苦手な幸である。

デートの誘いも喧嘩腰なのである。

大学のロケット研究会では・・・千里の昇天リミットである六月十二日の前日に行われる「全国学生ロケット大会」に参加するために・・・円と加藤孝志(森永悠希)がロケット製作に熱中していた。

円には期するところがあった。

円がロケットに熱中していたのは・・・千里がいたからで・・・千里と絶交してからは・・・何故か熱意を失っていたのだ。

今の円には・・・解っていた・・・円もまた千里を大切に思っていたのだ。

千里と一緒にずっとロケットを飛ばしたかったのである。

だから・・・千里が昇天する時に・・・ロケットを打ち上げたいと思っているのである。

そこへ・・・幸がやってくる。

「今度の日曜日・・・神社の縁日に案内してくれる」

「検索すれば場所はすぐわかる」

「あなたにお願いしているのよ」

「その日は・・・ロケットの点火装置が届く予定なんだ・・・」

「そんな・・・飛ぶかどうかわからないロケットなんてどうでもいいじゃない」

千里のためにデートに誘いたい幸。

千里のためにロケットを飛ばしたい円。

交渉決裂である。

「ロケットのことを悪く言う人とお祭りなんかに行きたくないね」

「ああ・・・そうですか」

加藤は・・・愕然とするのだった。

「お前・・・今、何したのか・・・わかってるのか」

「?」

「デートの誘い断ったんだよ」

「なぜ・・・彼女が俺をデートに誘う・・・」

「お前ら・・・いい感じじゃないのか・・・」

幸は千里に謝罪した。

「ごめん・・・やっちゃった・・・」

「いいのよ・・・彼がロケット作りに熱中しているのを見ているのは楽しいし」

「そうなの・・・」

円に憑依した千里もまた・・・円の心から少し情報を盗んでいた。

その中には・・・千里にしたことへの後悔もあったし・・・円への好意の萌芽もあったのだ。

千里の中で・・・少女としての恋心と死者としての諦念が揺らめいている。

「私・・・もう一つやりたいことがあるの・・・」

「何?」

円と加藤のロケット製作は難航する。

「だめだな・・・」

「どうした・・・ロシアがなんかしでかしたか」

「いや」

「じゃ・・・女がなんかしでかしたのか」

「点火装置が不調だな・・・」

「新しいイグニッションプラグを発注しよう・・・」

「もう予算が・・・」

「貯金を全額下ろす・・・」

「ひえっ」

しかし・・・届いたスパーク式の点火装置は不良品だった。

「もう・・・だめじゃないか」

苦悩する円だった。

日曜日・・・幽体離脱した幸の肉体に憑依した千里は堤家にやってくる。

白銀の糸を伸ばして同行する幸である。

幸/千里は食材を購入してやってきたのだった。

「母の実家から・・・送られてきたので・・・おすそわけを・・・」

「あら・・・まあ・・・ちょうどお祭りの御馳走を作っていたのよ」

「そうですか」

「一緒にどう」

「手伝わせてもらえますか」

「大歓迎よ」

坂間家のキッチンで料理を作るのが・・・千里の最期の願いだった。

「あら・・・あなた手際がいいわね」

「料理は好きだったんです」

「そうなの・・・いい奥さんになれるわよ」

「えへへ」

「あなたが・・・円のガールフレンドじゃないと知ってガッカリしたけど・・・将来のことはまだわからないわよね・・・だって二人ともまだ大学生なんだし・・・」

「幸さんがお姉さんになってくれたらうれしいのに・・・」

女っ気のない円を想う母心、妹心全開なのである。

にぎやかなキッチンに誘われる円と義父の郁夫(大杉漣)だった。

「美味しそうだな」と郁夫。

「お母さん・・・そろそろ・・・浴衣に着替えたい」とさやかがおねだり・・・。

「そうだ・・・幸さんも私の浴衣に着替えたら・・・」と気を利かす由美子だった。

「そうしなさい」と郁夫も鼻の下を伸ばす。

浴衣に着替えた千里はふと・・・われに帰る・・・姿見に映る姿は・・・幸だった。

「せっかくだ・・・神社に連れてってあげろ」と郁夫。

「ロケットに注ぎ込んだので一文なしです」

「しょうがないなあ・・・」と臨時にお小遣いを奮発する郁夫だった。

こうして・・・千里の願いは成就したのだった。

背後に白銀の糸で繋がった幸の幽体を従えて・・・神社のお祭りデートを堪能する円と幸/千里のカップル。

もちろん・・・すでに円には・・・すべてのトリックが解っていた。

「ロケットの調子はどう?」

「うん・・・ちょっと問題があってね」

「この神社であることをすると願いが叶うらしいよ」

「へえ」

「まあ・・・円くんはそんなの信じないと思うけど・・・手を繋いで御神木の周囲を回ると・・・」

「昔・・・千里くんが言っていた・・・フラシーボ効果のこと・・・」

「え・・・」

「信じるものは救われるんだろう」

「・・・」

「ちょっと・・・検索してみる」

その結果・・・「御神木の下で接吻」であることが判明する・・・。

「え・・・それはちょっと」と慌てる幸・・・。

しかし・・・千里は一瞬その気になる。

誘われて・・・ファースト・キスに挑む円。

しかし・・・最期の最後で・・・幸を思いやる千里だった。

「ごめん・・・やはり無理・・・」

突き飛ばされて尻もちをついた円はスパークするのだった。

「ちょっと待って・・・閃いたことがある」

「え・・・」

円は走り去るのだった。

「どうしたの・・・」と幸。

「私・・・キスできるのなら・・・いいかとも思ったんだけど・・・結局、円くんがキスするのは・・・私じゃなくて・・・幸さんなんだな・・・と思って・・・」

「・・・」

「私・・・死んでから・・・こんなに色々なことを体験できて・・・幸せだったよ」

「・・・」

「でも・・・幸せに終わりはないからね」

「・・・」

「そして・・・私はすでに死んでいる」

「・・・」

円のロケット魂に火がついていた。

「おい・・・どうした」

「電子着火でなくて・・・火薬式を試してみる」

「え・・・スパークでなくて爆発だよ」

火薬を用いたイグニション・システム・・・。

燃焼実験は成功した。

「やった・・・」

「やったな・・・」

「あ・・・」

神社に残してきた千里/幸を思い出す円だった。

日暮れの神社に佇む幸。

そこに円が戻ってくる。

「お待たせ・・・」

「待たせすぎじゃ」

「君は・・・幸ちゃん・・・それとも千里・・・」

「え」

そこへ・・・シノザキが現れた!

「見つけたぞ・・・まさか・・・憑依させていたとは・・・」

「残念でした・・・千里は・・・ナベシマさんの処へ行きました」

「え・・・」

「なに!」

「千里は・・・」

「最期に・・・円くんと・・・ロケットを飛ばした場所が見たいって・・・」

円は走り出す。

見送る幸は何故か・・・泣けてくるのだった。

千里の魂の残り香が幸の涙腺を刺激するのだ。

円は思い出の河原にやってきた。

「千里くん・・・僕は・・・君のためにロケットを・・・」

「もう・・・いいのよ・・・来てくれてありがとう・・・最期に言いたかったことが言えるよ」

「・・・」

「円くん・・・好きでした・・・大好きでした・・・死んじゃったけど・・・今はもっと好きです」

「千里くん・・・僕は・・・もっと君とロケットを・・・」

「さようなら」

「千里・・・」

ナベシマは・・・千里をサイドカーに乗せた。

飛翔し・・・虚空へ消える・・・千里の魂。

夕闇せまる空に残された青空を・・・円はいつまでも見つめていた。

円は「哀しい気持ち」を手に入れた!

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

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