支配するものが心変わりするというのなら誠実であることに意味なんかなくなってしまうじゃない(長澤まさみ)
安全保障というものが相互の信頼に基づき・・・実行されれば・・・何の心配もないわけである。
しかし、親が子を殺し、兄が弟を殺す戦国時代には信頼を築くことは・・・非常な困難を伴う。
家康は同盟者の信長に命じられ妻子を殺処分している。
信長は家康に家族を殺させることで・・・なんとか・・・信頼を得ようとしたわけである。
つまり・・・家康の信用度を試したのだ。
現代では理解の難しい関係性と言えよう。
そして、家康は妻子を殺害することで・・・「律義」という「カード」を手に入れる。
武将が主従の誓いをすれば・・・その証として・・・「人質」が交わされる。
武将同志の「婚姻関係」はその延長線上である。
血縁であっても殺し合うのだが・・・血縁がないよりは安全性が高いという祈るような気持ちの発露だ。
家康が殺した正室は旧主であった今川家の血筋である。
家康は幼少時代を今川家の人質として過ごした過去がある。
その頃、今川家と北条氏は同盟中で・・・今川家の本拠地だった駿府には北条氏規も人質となっていた。家康の二歳年下である。
氏規の七歳年上の兄が北条氏政である。
氏政や氏規の母は今川氏の娘である。
氏政や氏規の姉は今川氏真の正室なのだ。
それほど・・・混み入った安全保障をしながら・・・結局、今川家は滅び・・・駿府に君臨するのは徳川家康である。
だが・・・この時・・・今川氏真と正室は京の都でのんびりと余生を過ごしているのだった。
戦争と平和・・・そして人の運命は・・・人知の預かり知らぬ展開をするものだ。
今川家を滅ぼした徳川家康の娘が・・・孫の氏直の正室となり・・・そして手切れとなって離縁する。
関東の覇者・北条氏政の母である瑞渓院の運命もまた・・・息子・氏政の決断によって大きく変転するのだった・・・。
で、『真田丸・第22回』(NHK総合20160605PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・土井祥平を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は本多忠勝と本多総本家を争う本願寺門徒系三河武士・本多正信のイラスト描き下ろし大公開でお得でございます。謀臣キターッ!・・・なので猛将も待ち遠しいのですが・・・あくまでマイペースでお願いします。妄想代役のもこみち・深キョン父娘は実年齢・娘が二歳年上ですけれど~。「戦だけはなんとか避けたい」と三成が必死なのは「忍城攻めだけはなんとか避けたい」と懇願しているようで妄想的には一同大爆笑でございました。予告篇で一瞬「忍城」というフレーズが聞こえた気がします。映画「のぼうの城」から四年・・・戦下手な石田三成が見られるかもしれないと思うとそれだけで胸が高鳴る今日この頃でございます。名胡桃城代・鈴木主水重則がナレーション死亡だっただけに期待はしすぎないようにしておりますがーっ。それにしても男祭りの中で櫛の仇を握り飯でとるきり・・・抜群のヒロインでございますな。
天正十七年(1589年)七月、沼田領問題に秀吉の裁定が下り、利根川の沼田城側を北条家、名胡桃城側を真田家の領土とし、真田家には替地として信濃国箕輪が与えられる。北条氏政は弟の藤田氏邦に沼田城を管轄させる。八月、前田利家は南部信直に上洛を促す。豊臣秀吉による「出羽奥州両国之御仕置」がまもなくあることが通知された。鶴松丸と淀殿(茶々)が大坂城に移り、朝廷は太刀を賜り祝う。九月、秀吉は一万石以上の諸大名に妻子の在京を命令する。十月、秀吉弟の豊臣秀長が聚楽第に正室を置いている例をあげ、大友義統に人質の入京を促す。秀吉は奈良で諸大名・公家衆を従え鷹狩りを行う。十一月、秀長が摂津国有馬で湯治。氏邦配下の沼田城代・猪俣邦憲が名胡桃城代の鈴木主水の義兄・中山九郎兵衛を調略して謀反させ、乗っ取りに成功。主水は城外で立腹にて自害。秀吉は惣無事令違反を名目に北条氏直へ宣戦布告状を発する。同時に秀吉は諸大名に出陣準備を命令。十二月、秀長発病。毛利輝元は毛利水軍の出動を発令。秀吉は聚楽第で越年する。天正十八年(1590年)一月、秀吉は参内し新年を祝賀する。前田利家が正四位下参議に昇進。織田信雄、織田水軍の出動を発令。二月、小田原征伐先鋒部隊出陣。三月、秀吉が京から出陣し、沼津に着陣。
真田忍軍は信濃国上田から上野国沼田に続く真田街道を縄張りとしている。
しかし・・・豊臣家の勃興により・・・京や大坂の真田屋敷に人数を割く必要に迫られ・・・手不足に陥っていた。真田幸村や真田佐助など真田本家の忍びや、出浦対馬守や横谷左近などの昌幸に臣従した武田の忍び、河原衆や山家修験者など海野忍び衆たちは昌幸の命により再編成され・・・二つのグループに分かれていた。
真田信繁を筆頭とする上方衆と・・・真田信之を筆頭とする与力衆である。
いずれにも属さない一部の忍びやくのいちは昌幸の手元に遊撃隊として残された。
すでに秀吉政権の臣下として働く信繫と・・・徳川家康の与力としての真田衆を総べる信幸との緩やかな手切れは・・・始っているのである。
家康の養女を正室とした信幸はもはや・・・実質的な舅である本多忠勝の一門衆としての趣きを醸しだしていた。
昌幸の弟で伯父である信尹は先にに家康に臣従し・・・信幸を補佐する体制となっている。
一方・・・秀吉の馬廻衆である信繫は・・・秀吉の直臣のようなものとなっている。
昌幸は豊臣家に臣従しつつ、徳川家の与力となった真田家が乱世の終焉を迎えた時に生き残る道を模索していたのである。
しかし・・・生まれついての戦国武将である昌幸自身は・・・乱世の終焉そのものを疑わずにはいられない。
秀吉に招聘され上洛の支度を整えていた昌幸の元へ・・・戦死した信綱と昌輝の間の兄で修験者となって諸国を放浪する清鏡が顔を出す。
「これは・・・兄者・・・」
「源五郎・・・久しいの」
「本能寺の変の年以来ですから・・・八年ぶりですか・・・」
「そろそろ・・・気が迷う頃と思って参ったぞ」
「・・・」
昌幸も観相によって・・・将来を見渡す力を持っているが・・・清鏡は修験者としてその道を究める達人である。
「どうじゃ・・・世はまさに・・・乱世の終わりを目指しているだろう・・・」
「しかし・・・信長の死以来・・・死にもの狂いで戦ってこの有様ですぞ・・・」
「それは・・・小さき器の出来事じゃ・・・」
世捨て人のような日常を過ごす清鏡に言われ・・・少し立腹する昌幸だった。
「兄者・・・ひどい言われようじゃ」
「甘えるでない・・・殺すか殺されるかの修羅の世界を生きるものは一瞬の油断が命とりじゃ」
清鏡は微笑む。
その笑みに幼い頃の兄を想起する昌幸は心を引き締める。
「信長が死んでも秀吉が道を継いだであろう・・・」
「しかし・・・秀吉がこのまま天下を丸く治めるでしょうか」
「わしが見るところではもうひと荒れきそうじゃ・・・」
「やはり・・・」
「信長が存命であれば・・・まるで違う世が到来しただろうが・・・日の本の神はそれを許さなかった・・・秀吉が信長を真似ようとすれば・・・いずれ同じ道に至る」
「・・・秀吉も滅びまするか・・・」
「いや・・・秀吉は天寿を全うするのよ・・・」
「そこまで読めますか・・・」
「それがいつかは・・・しかとはわからぬ・・・じゃが・・・十年のうちに乱世は幕を閉じる・・・」
「なんと・・・」
「もちろん・・・ものの終わりが静かとは限らん。それはひとつの極まりなのじゃからのう」
「・・・」
「じゃから・・・お前の好きな戦はまだ残っておる・・・安心いたせ」
「兄者にはかなわんのう・・・」
「信幸と・・・信繫・・・二人の子に忍びたちを分けたことも・・・妙手だと申しておこう」
「ただ・・・成り行きでそうなっただけのことですがのう・・・」
「兄と弟が争う家もあるが・・・真田家では兄弟は助け合うしきたりじゃ・・・信幸も信繫も手を取り合って真田の家を盛りたてるであろう・・・」
「それはなにより・・・」
「じゃが・・・最期までそうなるとは限らん・・・」
「それは・・・」
「わしがお前に申すのはここまでじゃ・・・お前は戦の鬼として・・・乱世の終焉を楽しむがよかろう」
「兄者・・・」
「次に会うのは・・・ここではない・・・その時はお前に引導を渡すことになるかもしれんのう」
「・・・」
「ははは」
「兄者!」
昌幸はうたた寝から目覚めた。
清鏡は羽黒山にいると聞く。
おそらく夢の回廊を通じてやってきたのだろう。
昌幸は秀吉からの上洛の誘いに逡巡するところがあった。
しかし・・・すでに迷いはふっきれている。
「関白殿下が・・・わしの命を狙うことなど・・・ありえない・・・」
妙なことを迷っていたものだと昌幸は思った。
上田を出て二日目・・・美濃を抜けたところで・・・真田佐助が駆けつけた。
「佐助か・・・いかがいたした」
「北条が名胡桃城を攻め落としたのでございます」
「何・・・」
「鈴木主水殿は切腹なされました」
昌幸は・・・秀吉の仕掛けた謀略の匂いを嗅いだ。
「そうか・・・滅ぶのは真田ではなく・・・北条か・・・」
「は?」
「よい・・・急ぎ上洛せねばならぬ・・・」
「上田にお戻りにならぬので・・・」
「お前は上田に戻り・・・幸村に防御を固めろと伝えよ」
「名胡桃の城は・・・」
「捨て置け・・・もっと大きな戦が始るのだ・・・ははは」
昌幸は騎馬忍びたちを引き連れ・・・冬の気配が漂う山中を突っ切り・・・京を目指して疾走する。
真田が秀吉と家康に向き合えば・・・東が手薄になるのは必然・・・。
北条はそこに噛みつき・・・死地に踏み入ったのである。
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