モンタージュ 三億円事件奇譚(福士蒼汰)前編です!(芳根京子)
いろいろとアレなドラマだが・・・。
脚本力と演出力とプロデュース力が見事にかみ合っていない・・・一種の限界ものである。
マンガにできることをテレビでやろうと思ってもいろいろアレなんだよな。
これはもう・・・「日活ロマンポルノ」でやればよかったんじゃないか。
「少女凌辱!三億円事件秘録!イチャイチャしちゃうんです」みたいな感じでな。
次期朝ドラマのヒロインがそういうことができる時代になってほしいものだ。
ヒロインの友達役ならできるわけだが・・・。
ヒロインの母親役でもな。
いや・・・ヒロインも結構やってる人はやってるぞ。
門脇麦とか、常盤貴子とか、波瑠の話か・・・。
しかし・・・芳根京子は未成年だからな・・・もう、そういうことを絶対にやってはいけない時代になっている。
できる範囲で頑張ったよね。
昔は・・・よかったなあ。
で、『モンタージュ 三億円事件奇譚・前編』(フジテレビ20160625PM9~)原作・渡辺潤、脚本・大森寿美男、演出・水田成英を見た。原作とドラマの最大の違いは主人公とヒロインの年齢設定である。それが・・・ある意味でドラマにただならぬ違和感を持たせているし・・・おかしな感じを醸しだすわけである。それでいいと思うプロデューサーがいるんだから・・・しょうがないなあ。
原作の鳴海大和・・・16才の高校一年生。殺人事件を目撃するのは小学生時代。
原作の小田切未来・・・18才の高校三年生。大和より二歳年上。
ドラマの鳴海大和・・・25才のフリーター。殺人事件を目撃したのは高校生時代。
ドラマの小田切未来・・・23才の大学生。大和より二歳年下。
高校生がやっても問題ないことを社会人がやってはいけないのだ。
年上のヒロインと年下のヒロインでは・・・いろいろと差異が生じるわけである。
ドラマ全体につきまとう「なんだか変だぞ」感覚は基本的にこれが原因である。
それを前提に視聴すれば・・・荒唐無稽なアドベンチャー・ゲームとしてそこそこ楽しめます。
次に2016年に1968年の「三億円強奪事件」を結び付ける困難さがあり・・・二つの青春物語の比較が・・・サスペンス部分を弱めている。
時差はざっと48年である。
当時、二十歳なら・・・現代では六十八歳になっていて・・・四十歳なら八十八歳である。
回想としては限界点を越えているんだな。
そこで・・・お茶の間は・・・主人公たちの知らない昭和の世界が同時に物語られることに物凄く違和感を感じるだろう。
しかも・・・この昭和がものすごく・・・チープなのである。
いや・・・実際に1968年はチープだったのだが・・・そういうチープさが描き切れていないチープさがあるのだった。
実際には昭和篇は1967年から始る。
少年ジャンプの創刊は1968年なのでまだないわけだ。
ちなみに創刊号の定価は90円である。
大卒初任給23000円前後、 高卒初任給17000円前後である。
ラーメンは70円だ。
その頃の三億円である。庶民には想像もつかない超大金なのである。
1968年12月・・・東京都府中市で三億円強奪事件発生・・・。
それから41年後の2009年の長崎県長崎市・・・。
高校三年生の鳴海大和(福士蒼汰)と高校一年生の小田切未来(芳根京子)は通学路で血痕を発見。
思わず血の跡を辿った二人は・・・瀕死の老人・・・東海林明(香川照之)を発見する。
「なるみ・・・やまと・・・お前の父親は・・・三億円事件の犯人だ・・・いいか・・・誰も信用するな」
「さんおくえんじけん・・・ってなに?」
「う」
老人は息絶えた。
通報によって駆けつけた刑事・・・関口二郎(遠藤憲一)は二人から事情を聴取する。
「あの人って誰なんですか・・・」
「昔・・・東京で刑事だった人らしい・・・」
帰宅した大和は・・・父親の鳴海鉄也(唐沢寿明)がその日から行方不明になるとは知らなかった。
老人の残した謎の言葉は・・・刑事には話さなかった。
大和には意味不明の言葉だったのだ。
まもなく・・・鉄也は東京で水死体となって発見される。
顔などは腐乱していたが所持品から身元が特定されたらしい。
大和は・・・母親をすでに亡くしていていた。
鉄也は享年五十九だった。
未成年の大和は・・・鉄也を師と仰ぐ小田切武雄(デビット伊東)と葉子(西尾まり)夫妻に引き取られる。
幼馴染の未来とは兄妹のように家族同然で育った大和だった。
そして・・・大和の心に暗い影を残したまま・・・歳月は流れた。
2016年・・・剣道の達人だった鉄也の防具を・・・小田切武雄に託した日・・・。
大和と武雄はそれぞれに・・・秘密のアイテムを入手する。
武雄は小手の中から・・・「軍艦島」と書かれたメモを・・・。
大和は垂のネーム袋の中から血まみれの五百円札を・・・。
フリーターとなった大和は・・・すでに「三億円事件」の研究家となっていた。
その五百円札のナンバーが特別なものと知るほどに・・・。
それは三億円事件で奪われた紙幣のうちナンバーが分かっている二千枚の五百円札の一枚だった。
数日後・・・小田切夫妻が失踪する。
大和は未来と・・・手掛かりを探し・・・武雄の書斎でメモを発見する。
こうして二人は・・・今は誰も住むものない孤島「軍艦島」へと旅立つ。
社会から落ちこぼれ・・・鬱屈していた大和は・・・謎の事件に・・・高揚するのだった。
両親が突然、行方不明になった未来は不安を覚えつつ・・・大和との二人旅に胸がはずむのである。
まあ・・・そういう年頃なのである。
そして・・・二人は軍艦島の秘密の隠し場所から「三億円」を発見するのだった。
島から戻った二人を・・・何故か・・・関口刑事が襲撃する。
二人を救ったのは・・・武雄の剣道の弟子の一人で予備校講師の鈴木泰成(劇団ひとり)だった。
しかし・・・関口刑事は残された大和のバールのようなもので・・・目撃者を殺害し・・・罪を大和に負わせる。
こうして・・・大和と未来は殺人事件の容疑者として・・・逃走を余儀なくされるのだった。
ここまでの登場人物で48年前の「東京都府中市三億円強奪事件」(1968年)に関与できたのは年齢的に大和の父親である鳴海鉄也・・・当時18才だけである。
ちなみに小田切夫妻と関口刑事は(48)という年齢設定で「意味深」となっている。
もちろん・・・ドラマではそういう設定の思わせぶりはまったく効いていない。
事件とは無関係な若者たちが血まみれの三億円を巡って「日常生活」から離脱していくのは一種の「呪い」によるファンタジーと言える。
警察に保護を求めた大和と未来だったが・・・関口刑事のいる所轄署に護送されると知り、護送中に脱走する。
殺人事件の重要参考人を移送するにあたっては・・・お粗末な展開であるが・・・ドラマだからです。
もちろん・・・小中学生なら・・・あらかじめ準備された大和の緻密さに感嘆するのかもしれない。
こうして・・・指名手配された二人は・・・事件の真相を求めて博多から東京へと向う。
新幹線での脱出は困難が予想されるが・・・一部マスメディアに証拠の札束を郵送したり・・・橋の上から大量の旧一万円札を撒いたりすれば・・・非常警戒の隙をつけるらしい。
ちなみに・・・何故か・・・二人に盗聴器を仕掛けたりする鈴木泰成(33)の行動は不審・・・ということである。
これに・・・女スパイのような謎の予備校生・中野夏美(杉咲花)や夏美に誘惑された博多の警察官(ムロツヨシ)が学業や職務を放置して絡んでくるのだった。
夏美(19)で博多の警察官・水原大輔(30)という設定である。
途中、実は殺人犯である関口刑事は・・・未来を拉致監禁し・・・暴虐の限りを尽くすがテレビではお茶の間にお見せできないのだった。
ドラマの中のテレビには民和党幹事長の沢田慎之介(西田敏行)が現れる。
世間を騒がす「三億円事件の証拠」について問われた沢田(70)は未解決事件の捜査関係者として不快感を示すのだった。
だが・・・沢田こそが・・・関口刑事の黒幕なのである。
そんなこととは露知らず・・・殺された東海林明の足跡を辿った大和と未来は・・・組織暴力団関係者の末裔である土門明葉(吉岡里帆)から・・・東海林と交友のあった男の遺品を示される。
その中に「軍艦島」関連の書籍があり・・・そこには名前がサインされた一枚の写真が残されていた。
「この男・・・」
川崎雄大(野村周平)と書かれた若者に・・・父親の面影を見る大和・・・。
「そう言われれば・・・なんとなく・・・」
未来は「唐沢寿明の若い頃が野村周平にそっくりかどうか」について言葉を濁すのだった。
明言しておこう・・・半世紀も立つと人間はまるで別人になる場合があります。
そして・・・お茶の間は・・・ドラマの特殊な機能により・・・1967年の東京にタイムスリップする。
軍艦島から・・・何かを求めて東京にやってきた十七歳の川崎雄大・・・。
いきなり・・・チンピラとヤクザの抗争に巻き込まれる。
剣道の達人だった川崎雄大は拳銃を持つヤクザを叩き伏せる。
そこに・・・若き日の東海林刑事が現れ・・・喧嘩を仲裁するのだった。
チンピラの望月竜(渋谷謙人)や情婦の響子ギブソン(夏木マリ)の世話になる川崎雄大・・・。
性風俗の店のヒロミ(西原亜希)の客となっていた若き日の沢田慎之介(三浦貴大)は・・・川崎雄大の地元の先輩だった。雄大より四歳年上で上京し・・・東京で警察官になっていたのである。
「日活映画みたいなことしやがって」
「日活もロマンポルノになったらおわりじゃ」
「おいおい・・・日活ロマンポルノは1971年スタートだよ・・・歴史考証どうなってんの」
「そうじゃっと?」
「1967年の日活映画は夜霧よ今夜もありがとうじゃ」
「少年ジャンプのハレンチ学園は・・・」
「来年、連載開始じゃ・・・そもそも・・・ジャンプはまだない・・・ハレンチ学園が映画化されるの1970年じゃ」
「そげな・・・」
「そもそも・・・大衆がポルノという言葉を知るのは当時16才の池玲子が東映映画・・・温泉みみず芸者・・・で日本初のポルノ女優というキャッチフレーズをつけられたからだ。これに触発されて日活ロマンポルノ第一弾・・・団地妻 昼下りの情事・・・が封切られたのが1971年11月だ・・・まだ四年後の話だぞ」
「そうやったと・・・」
とにかく・・・この若者たちが・・・三億円事件に関わっていたらしい。
そして・・・時は再び・・・現代に・・・。
関口刑事に拉致された未来を救助にやってきた大和だが・・・結局、腕力で制される・・・しかし・・・何者かが関口に発砲し・・・ピンチを脱する。
茫然とする大和の前に・・・謎の予備校講師・鈴木泰成が現れる。
ソフトな拷問で・・・瀕死の関口に黒幕の正体を問いつめる大和。
しかし・・・関口は大和の暴力の迫力不足を嘲笑する。
「とにかく・・・食事をしろ・・・」
関口に睡眠薬入りの弁当を奨められた大和と未来は昏睡である。
誰も信じるなと言われたのに・・・。
気がつけば・・・証拠の五百円札を奪われていた大和だった。
最期の手掛かりを求めて・・・ジャズバー「HERBIE」にやってきた大和は・・・時を越えてやってきた川崎雄大あるいは死んだはずの鳴海鉄也と再会するのだった・・・。
「後編に続くのね」
「もう・・・仕方ないだろう」
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