朝が来る(川島海荷)子供に子供は育てられない(小島梨里杏)
谷間です。
日本には四季があり・・・なんとなく連続ドラマというものが一つの季節に納まって久しいのだが。
そういうものを自称・公共放送がぶち壊し・・・民放の人々も「勝手にやらしてもらおうか」的な感じになってきている。
春ドラマの最終回シーズン前に・・・夏ドラマがスタートしていたり・・・間を置かずにスタートしたり・・・梅雨ドラマかっていう短さだったり・・・いろいろとアレなのである。
このドラマも「火の粉」の後番組としてスタートして・・・すでに第3回なのである。
全8話らしいから・・本格的な夏に入ると終わるわけである。
ま・・・五輪の夏だしな・・・。
で、『朝が来る・第1~3回』(フジテレビ201606052340~)原作・辻村深月、脚本・髙橋麻紀、演出・古澤健(他)を見た。2012年にはNHK総合で同じ原作者の「本日は大安なり」がテレパックで作られている。今回は東海テレビとテレパックである。「本日は・・・」の演出家・渋谷未来がこちらではプロデューサーとなっている。2012年にはこの後プレミアムドラマとして制作される予定だった「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」が同じ原作者による許諾取り消しで流れている。NHKは講談社に損害賠償訴訟を起こしたが東京地方裁判所は2015年にこれを棄却した。原作に対する脚色を原作者が許容できなかったことが原因だが・・・間にNHKと講談社を挟んでいるとはいえ・・・脚本家の大森寿美男と原作者が一歩も譲らなかったことは天晴である。お互いに意地を貫いたわけだ。それによって右往左往した関係者はたまったもんじゃないにしても・・・。創作者はそういう理不尽な信念で成立しているものだからな。
出生の秘密は・・・昼ドラマの基本テイストだが・・・ここでは昔だったら「秘密」だったことがオープンになっているところが・・・「現代的」なのである。
いわば・・・末期癌を患者に告知する時代ということだ。
たいよう幼稚園に一人息子の朝斗(林田悠作)を通わせる栗原佐都子(安田成美)は出版社に勤める夫・栗原清和(田中直樹)と長い不妊治療の果てに・・・結局、妊娠出産を諦め・・・特別養子縁組支援団体・ベビーバトンを通じて出産直後の朝斗を養子にしたのである。
不妊の原因は夫の無精子症にあった。
栗原夫妻は朝斗に養子であることを告知しており、ベビーバトンの施設のある広島に生みの母がいると話している。
朝斗は生みの母を「広島のお母ちゃん」・・・佐都子を「お母さん」と呼び、幼いながら生みの母と育ての母を区別している・・・あるいは区別させられている。
ここに一つの「問題提起」がある。
修学前の未成年者に・・・「事実」を認識させることの是非である。
実に悩ましい問題だ。
生みの母である片倉ひかり(原菜乃華・実年齢12歳→川島海荷・実年齢22歳)は中学生だった14歳の時に「彼氏」によって妊娠し出産した。現在は20歳になっているわけである。
未成年者同士のカップルの行為の結果を周囲の大人たちは・・・「あってはいけないこと」として処理した。
施設に預けられ出産を終えたひかりが故郷に戻ると・・・「彼氏」は家族と一緒に行方をくらましていた。
ひかりの両親である片倉宏(妹尾青洸)と片倉咲子(赤間麻里子)は教師を職業としており、娘の妊娠・出産を不祥事としかとらえない。すべてをなかったことにしようとする両親の態度にひかりは深く傷ついて行く。
ひかりの姉の片倉茜(小島梨里杏)は成績優秀な優等生だったが・・・親の財布から金を抜き取る性悪な一面も持っていた。
17歳になったひかりは・・・姉の罪をなすりつけられ母親に罵倒された日。
髪を金髪に染めて・・・家出をするのだった。
このように・・・妊娠・出産という慶事によって・・・疎外され・・・家族に遺棄されたひかりは転落の人生を歩んでいく。
美少女が酷い目に遭うのも・・・昼ドラマの基本テイストである。
ひかりが向かった先は・・・「ちびたん」とひかりが呼ぶ愛児を出産したベビーバトンの施設だった。
ベビーバトン代表の浅見(石田えり)は傷心のひかりを受け入れ、施設で保護する。
本来なら・・・未成年者であるひかりの処遇は両親に相談するべきところだが・・・浅見は特殊な事情に慣れ過ぎて判断を誤ったのだろう。
風俗店で働き、父親が誰かわからない子を出産した平田コノミ(黒川智花)のような女が通過していく施設なのである。
ひかりの心が落ち着くまでという算段だったのかもしれない。
施設の雑用を手伝うひかりは生鮮食品店の山本哲男(山本龍二)と健太(小野塚勇人)の父子と知りあう。
健太は哲夫の姉夫婦の子で両親が事故死したために養子となったという事情がある。
いつしか・・・ひかりと健太は心を通わせるようになる。
しかし、哲夫は心臓病の発作で他界・・・。
健太には返済不能の借金が残される。
金貸しの坂上(山田将之)と部下の権田(鈴之助)の暴力的な借金取り立てに翻弄される健太・・・。
相談できる大人は街には一人もいないらしい・・・。
見かねたひかりは健太とともに街を出ることを決意する。
「実家に帰る」・・・明らかに嘘だと見抜きつつ・・・餞別を渡す浅見だった。
社会人としては・・・完全に失格だが・・・厄介払いなら仕方ないところである。
なにしろ・・・ひかりには転落してもらわなければならない昼ドラ体質なのである。
そして・・・三年が過ぎ去ったのである。
ひかりは二十歳となり・・・朝斗は六歳となっている。
見知らぬ街で・・・細々と暮らしていた健太とひかりだったが・・・踏み倒していた借金が巨額な利子を膨らませたところで・・・坂上が現れる。
切羽詰まったひかりは・・・職場の金に手をつけてしまうのだった。
その穴埋めをするために・・・ひかりは・・・ベビーバトンの施設で盗み見た・・・栗原家の連絡先を思い出す。
「片倉です・・・子供を返して欲しいんです・・・私が生んだ朝斗を・・・」
六年間・・・朝斗をわが子として育ててきた佐都子の葛藤。
二人の母を持つことで・・・普通の園児と些細な諍いを起こす朝斗。
なにやら・・・他人の家庭を破壊することに暗い喜びを感じるらしい心の闇を持つ・・・香澄(佐津川愛美)は・・・上司である佐都子の夫に誘惑の手を伸ばす・・・。
夫の妻以外の女性との不適切な関係は・・・昼ドラマの基本テイストである。
そういう昼ドラマの世界に囲まれて・・・主人公の佐都子は・・・自分の育てている子供と同じように・・・自分の子供の産みの母も案じるという・・・朝ドラマのヒロイン体質であるらしい。
朝斗の幸せを巡る物語だが・・・一部お茶の間はひかりや茜の出番をひたすら待つばかりである。
香澄の病んだ感じも・・・少し食傷気味だ。
それよりも昼ドラとしてはイケメン枠に問題あるよね。
ゲスニックマガジンの編集者だけじやね・・・。
まあ・・・そういう朝だか・・・昼だか・・・わからないドラマを夜・・・やってます。
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