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2016年6月19日 (日)

目撃者を捜しにちょっと天国まで(福士蒼汰)帰ってこいよ(土屋太鳳)お別れしたのにね(門脇麦)私は守られている(小林涼子)

最期は二時間スペシャルである。

熊本地震が発生し、初回が放送延期となったために・・・全十回が九回に短縮されたのだろう。

しかし・・・最終回の内容を考えると前後篇ではなくて・・・二時間ドラマとして見た方が良かったかもしれない。

これまで引っ張って来たいくつかの謎が明らかにされ・・・ゲストをめぐる話もミステリ仕立ての素人探偵ものとなっている。

事件解決のために・・・とんでもない展開が用意されており・・・ロマンチック・コメディーとしては馬鹿馬鹿しくて面白い感じに仕上がっているのだ。

死神が立ち入り禁止のはずの天国の扉の向こう側に・・・結局、追跡者としての死神が登場するなど・・・最期まで辻褄合わせに失敗しているわけだが・・・お茶の間を躓かせるこういうボケも・・・最近ではツッコミどころとして許容される範囲なのかもしれない。

前回・・・余韻を残して三角関係が終了したところで・・・今回のぶりかえしである。

「あの世の彼女」がかなりキュートに描かれていて・・・萌える人は萌えたよね・・・。

で、『お迎えデス。・最終回(全9話)』(日本テレビ20160618PM9~)原作・田中メカ、脚本・尾崎将也、演出・南雲聖一を見た。発達障害で「恋」というものを知らなかった堤円(福士蒼汰)は高校時代の同級生だった千里(門脇麦)の恋心を踏みにじったことにも気がつかなかった。大学生になった円は・・・事故死した千里の葬儀に参列した日から霊能力者となり・・・幽霊となった千里と再会・・・憑依されるなどの体験を重ね・・・ついに二人が初恋をしていたことを理解する。千里は・・・円に悪気はなく・・・ただ幼すきただけであることを理解し・・・この世に別れを告げる。

「ロケット・・・必ず成功させてね」

円は・・・千里の最期の願いに応えるべく・・・ロケット作りに熱中し・・・「全国学生ロケット大会」でロケット打ち上げを成功させるのだった。

加藤孝志(森永悠希)は・・・ロケット研究会の同志を求め説明会を開始する。

真奈美(松川星)と佳織(小林璃央)はサクラとして参加し・・・あたりさわりのない質問を展開するが・・・円は相変わらずサービス精神ゼロの回答をする。

「ロケットの打ち上げはこわくないですか」

「ロケットの打ち上げがこわい人はロケット研究会には向きません」

「おいおい・・・」

加藤は・・・心霊研究会の阿熊幸(土屋太鳳)を呼び出す。

「ロケットを作っている間は・・・まともだったんだけど・・・打ち上げに成功したら・・・元に戻っちゃったんだよ」

「元に戻ったわけじゃないのよ・・・」

幸は・・・千里を送りだした円が淋しさを感じていることを察するのである。

幸は円を元気付けようと体当たりをするのだった。

「元気出しなさいよ」

「君に体当たりされるまでは元気だった」

「なんですってえ」

そこへ・・・ナベシマ(鈴木亮平)とゆずこ(濱田ここね)が幽霊の律子(観月ありさ)を連れてやってくる。

「今回の成仏対象者だ」とナベシマ。

「この世にどんな未練があるんですか・・・」と幸。

「プロポーズ大作戦よ・・・」と律子。

「?」と円。

「なんでも・・・愛し合っている二人を結婚させたいそうです・・・ロマンチックよね」とゆずこ。

「とにかく一緒についてきてよ」

律子は自分の葬儀に二人を連れて行くのだった。

手早く喪服に着替える円と幸・・・。

成仏補助のアルバイトに喪服は欠かせないのだ。

「あの子よ・・・」

律子が指さすのは・・・車椅子に乗ったあさみ(小林涼子)である。

あさみは・・・ナベシマが最近つきまとっている足の不自由な女性である。

あさみの持っているウサギのマスコットが・・・ナベシマの生前の記憶を呼び覚ますのだった。

《お兄ちゃん・・・助けて・・・》

ナベシマがムラカミだった頃の記憶である。

死神たちは・・・死者の国の住人である。

神のような存在は・・・なんらかの条件下で・・・死者の魂を死神として利用する。

死神たちは・・・生前の姿や記憶を失って・・・死神というシステムの一員になる。

しかし・・・記憶の消去は完全ではなく・・・様々な刺激で・・・再生することがあるらしい。

ナベシマは・・・生前は・・・村上あさみの年の離れた兄だったのだ。

俳優の実年齢で考えると・・・小林涼子(26)で鈴木亮平(33)で七歳差・・・しかし・・・あさみが幼い頃にあさみの兄は死亡していて・・・その当たりはルーズである。

ちなみに・・・律子はあさみの兄・・・つまり・・・現在のナベシマと恋人関係にあったらしい。

律子を演じる観月ありさ(39)なので律子とあさみの年齢差は十三歳もある。

あさみが七歳くらいで兄が死亡したとすると・・・律子はその時・・・二十歳である。

あさみには身寄りがなく・・・それ以来・・・律子と暮らしてきたという話なのである。

いろいろと無理な感じがあるが・・・そういう点を深く考えないのが身のためである。

ナベシマは・・・律子が生前の恋人であったことは思い出せないが・・・あさみが気になる以上に・・・律子も気になるのだった。

「あんな気の強い女はじめてだ」とナベシマ。

「なんだか・・・二人とも昔馴染みみたいな感じでしたよ」と幸。

「え?」

死神たちは密かに協議する。

「あさみちゃんが妹で・・・律子さんが・・・あさみちゃんの死んだお兄さんの恋人だとすると・・・つまり・・・ナベシマさんの恋人だったということになるんじゃないの」とゆずこ。

「え・・・そんな・・・まさか・・・あんな女のことちっとも覚えてないぞ」

「二十歳の女の子も四十近くなれば変わるもの」

「なるほど・・・」

「でもおばさんになったら彼女のこと忘れるなんてひどいわね」

「う・・・このことはみんなには秘密にしておいてくれ」

「まあ・・・死神の生前の記憶なんて・・・不確かなものですものね」

まもなく・・・弘(田中圭)が姿を見せる。

「あれが・・・お相手よ」

「あんなのが・・・」と兄として敵対モードとなるナベシマである。

「あんなのとは何よ・・・二人はものすごく愛し合ってるんだから」

しかし・・・告別式でのあさみと弘はよそよそしい感じだった。

「どこが・・・愛し合ってるんだよ」

「実は・・・私が生きている間・・・弘はあさみちゃんにプロポーズしてるんだ」

「なんだって・・・」

「でも・・・あさみちゃん・・・断ったの」

「愛し合ってないじゃないか」

「ちがうのよ・・・二人は愛し合っているの・・・ひょっとしたら・・・障害者であることをあさみちゃんが気にしているんじゃないかと・・・」

「そんな・・・」

ナベシマは記憶が鮮明になった。

あさみと海に行ったのだ。

あさみは律子に贈る花を摘もうと崖から手を伸ばし足を踏み外した。

ナベシマは手を伸ばしあさみを助けようとしたが一緒に転落してしまった。

あさみは足が不自由になり・・・ナベシマは即死だったのだ。

妹を守り切れなかった記憶に痛打されるナベシマだった・・・。

死んだ律子が勤めていた舞台照明の会社にアルバイトとして潜入する円と幸。

同じ会社にあさみは事務員として、弘は律子の助手として働いていたのだ。

「あさみちゃんは弘に・・・早起きしてお弁当を作っていたりしていたんだ」と律子。

その言葉に・・・高校時代いつもお弁当を作ってくれた千里のことを思い出す円。

「今日はタコさんウインナーにしたよ」

まさか・・・千里が円のためにお弁当を作っていたとは思わず・・・千里はお弁当を作るのが好きだと思っていた円だった。

今・・・そうではなかったと悟っている円は・・・心が疼くのである。

「だから・・・あさみちゃんが・・・弘を嫌いなわけはないんだよ」

「しかし・・・好意にもいろいろあるから・・・」と幸。

しかし・・・律子は・・・弘のとれかけた上着のボタンをあさみがこっそり繕う姿を二人に見せるのだった。

「ほらね・・・」

「なるほど・・・」

律子の不在を埋めるために弘の手伝いをするアルバイト二人組である。

弘は上司として二人を食事に誘う。

「実は・・・私たちは前から律子さんの知り合いだったんです」

「え」

「大学の舞台を点検に来た時に知り合ったんですよ」

「そうなんだ」

「律子さん・・・あさみさんと弘さんのことを心配していました・・・」

「え」

「どうして・・・好き同志なのにって」

「好き同志って・・・僕はふられたんだよ」

「一度くらいプロポーズ断られたくらいでだらしがないって言ってました」

「ええっ」

思わず円に憑依する律子。

「男なら・・・何度でもチャレンジしろよ」

「えええ」

しかし・・・ビールを飲みほした律子/円は急性アルコール中毒を発症するのだった。

「飲めないのに・・・」と幸。

「ごめん・・・」と離脱した律子。

しかし・・・負傷の癒えた幸は恐ろしい体力で円を担いで自宅に送還するのだった。

堤郁夫(大杉漣)、由美子(石野真子)、さやか(大友花恋)の親子は・・・円の恋人かもしれない幸を例によって大歓迎する。

律子の発案で・・・あさみにタブルデートを持ちかける二人。

なんとか・・・水族館デートを四人ですることに・・・。

しかし・・・ささいなことでケンカを始める円と幸である。

「結婚できない男にあってこれにないのが何ですって」

「だから主人公が変な男でもお約束はあるわけだよ」

「こっちだってお約束だらけじゃない」

「死んだ人間が死神になるとか、死神になると姿が変わるとか、記憶も失うが、思い出すこともあるとか・・・もうお約束だらけの上に結局何でもありだろう」

「まあ・・・ややこしいことはややこしわよね」

「じっくり見ていればわかるけど・・・うっかり見逃すと・・・」

「もう何がなんだかわからない」

「だろう」

「何の話か知らないけど・・・お二人は仲がいいのね」とあさみ。

「よくありません」と口を揃える円と幸である。

「そういうベタなお約束はありなんだけどね・・・私・・・二人を見ていると小さい頃を思い出すの・・・私の亡くなった兄と律子さんは恋人同志でいつも喧嘩ばかりしていたわ」

「・・・」

「私は喧嘩するほど仲がいいって言葉の意味がよくわかる・・・私もそういう恋がしてみたかった」

弘の出番である。

「僕も君と喧嘩するほど仲がよくなってみたい・・・だから・・・もう一度言わせて欲しい・・・結婚して下さい」

「ありがとう・・・でも・・・ごめんなさい」

「君が・・・足のことを気にしているなら・・・そんなこと・・・僕はなんとも思わないって・・・わかってほしい」

「そうじゃないのよ・・・私は・・・」

口を噤むあさみ。

そこへ・・・私服の刑事二人がやってくる。

「職場で起こった死亡事故について・・・ちょっとお伺いしたいことがあるんですが・・・」

「え」

任意同行を求められた弘は・・・刑事たちに連れ去られてしまうのだった。

「どういうこと・・・」

律子は弘の取調に立ち会うのだった。

刑事たちによれば・・・律子の死亡には他殺の疑いが浮上しているというのである。

そして・・・弘は容疑者リストに乗っているのである。

律子は照明器具の調整のために昇った場所の手すりが緩んで転落したのだが・・・そこに何者かが細工をしていた形跡があったらしい。

「私・・・殺されちゃったみたい」

「えええええ」

「プロポーズ大作戦」が「霊感探偵・円と幸の事件簿」に変更である。

一方で・・・律子は幸にそっと囁くのである。

「あなたと・・・円くんて・・・本当に仲がいいわね・・・」

「とんでもない・・・私が好きなのはナベシマさんですし・・・」

「そうなの・・・あの変態ウサギ野郎のどこがいいの」

「私・・・小さい頃から・・・霊が見える体質で・・・そのことで疎外感を持っていました。なにしろ・・・ほとんどの人には見えないので・・・そんな時・・・ナベシマさんがやってきて・・・話し相手になってくれたんです・・・今では・・・こうやってお手伝いすることで・・・誰かのためにできることがあるって教えてくれたのもナベシマさんだし・・・」

「でも・・・それって・・・親とか・・・先生とかに感じる憧れみたいなものじゃないの」

「え」

「恋愛ってのは・・・相手の温もりを感じていないと・・・さびしくなってしまうものなのよ・・・そしてその人と一緒にいるだけで幸せな気分がこみ上げてくる・・・そういうもの」

「・・・でも彼には・・・死んだ恋人がいるんですよ」

「あらまあ・・・まるで私みたいね・・・でも・・・私は二十年間・・・恋をしなかったわけじゃないわよ・・・」

「え」

「たまたま・・・男運がなくて・・・独身のまま・・・死んじゃっただけよ」

「そうなんですか」

「彼が・・・私みたいに寂しい二十年を送ればいいと・・・あなたは思っているわけ」

「そりゃ・・・元気出してもらいたいけど」

「ほらね・・・ウフフ」

「なんですか」

円は現場を調査して・・・手すりのボルトが破壊されていたことに気がつく。

「部品のナットがなくなっているんです」

「そんなこと調べていたの?」

「律子さんが・・・あそこに昇ることを知っていた犯人が・・・」

「事故にみせかけて・・・殺したと」

「実は・・・この会社では一年前にも人が死んでいるんです」

「え」

「経理の池田君のこと・・・」と律子。

「ええ・・・屋上から転落していますよね」

「そういえば・・・死ぬ前に・・・私に何か預けたようなこと・・・言ってたな」

「律子さんの机に鍵のかかった引き出しがありましたよね・・・」

「あったあった・・・鍵が見つからなくて・・・一年前から開かずの引き出しって呼んでるんだけど」

「なんて・・・ズボラな女なんだ」とナベシマ・・・。

「池田さんを殺した犯人が・・・証拠を隠滅するために・・・律子さんを殺したと考えると辻褄があいます」

「かなり・・・こじつけたわね」

「どうしよう・・・弘さんが逮捕されてしまいました」とあさみがやってくる。

「えええええ」

現場から消えたナットが・・・警察の家宅捜索により・・・弘の部屋から発見されたのである。

「わざわざ・・・証拠品を家に持ち帰るなんて・・・おかしいですよね」

「だな・・・」

弘の部屋のドアにはピッキングの形跡が残されていた。

誰もが感じる真犯人が弘に濡れ衣をきせた気配・・・。

「池田君に聞けば・・・なんかわかるかもしれないけど・・・死んでるんじゃね」と律子。

「ナベシマさん・・・天国に行って聞いてきてくださいよ」

「いや・・・死神は天国の扉までしかいけないんだ」

「えええ・・・またそういうルールですか」

「でも千里はそこから戻って来たって・・・」

「そうそう・・・幽体はそういうことができる」

「じゃあ・・・私の出番じゃないですか」

「ダメだ・・・危険すぎる・・・」

「そんな・・・」

「円なら・・・できるかもしれない」

「え」

「幸にそんな危険な真似はさせられないが・・・円なら最悪の場合・・・どうにかなっても耐えられる」

「ひどい・・・でも・・・僕は幽体離脱なんてできませんよ」

「私は・・・強制的に幽体離脱をさせる手を持っている」

「ああ・・・本当になんでもありだなあ・・・」

幸とともに・・・部屋に籠ることを宣言する円だった。

「実験をするんで・・・一時間・・・誰も部屋に入らないでください」

「一時間・・・」

ゴクリと唾を飲み込む郁夫だった。

若い男女が一時間・・・密室で何を実験するというのか・・・である。

母親と妹も・・・カップル成立を祈るのだった。

「あの世に行ったら・・・彼女に会ってくれば」と円に囁く幸・・・。

ナベシマは円の幽体を鷲掴みで肉体から離脱させるのだった。

「思ったより・・・簡単ね」

「タイムリミットは一時間だ・・・それを過ぎると低体温症で蘇生が難しくなる」

「え」

「これって・・・仮死状態ってことですか」

「うん・・・」

「幸ちゃんはとにかく・・・円ちゃんの身体が冷えすぎないように注意してくれ」

「わかった・・・」

ナベシマのサイドカーは円を乗せて虚空に消える。

「一応・・・ウサギの着ぐるみで変装だ」

「え」

「顔見知りに逢うと立ち話とかで時間を浪費する惧れがある」

「なんで・・・ナベシマさんはコレを着てるんです」

「昔・・・子供の幽霊を専門に担当していた頃・・・子供が喜ぶようにと上司がくれたんだ・・・」

「・・・」

「でも・・・あさみのぬいぐるみを見て思い出した・・・ピンクのウサギは俺が初めて稼いだ金で・・・あさみにプレゼントした思い出の品だったんだよ」

この世とあの世の中間施設で死神一課のシノザキ(野間口徹)と部下のマツモト(根岸拓哉)がからんでくるのをゆずこのおべっかで切れ抜けた円。

「ここから先は・・・一人だ・・・長居しすぎてはだめだぞ・・・それから・・・もしもの時は土管に飛びこめ」

「土管って・・・」

あの世のゲートは開かれた。

円は気がつくと・・・普通の街のように見える「あの世」に立っていた。

手には・・・ナベシマが手渡してくれた池田(林泰文)の心霊写真がある。

普通の街のような商店街で聞き込みを始める円。

しかし・・・雲を掴むような話である。

「おい・・・あんた」

円に声をかけてきたのは・・・心臓病で早世した和弥(加部亜門)だった。

「死んじゃったの?」

「いや・・・ちょっと人捜しに・・・」

「凄いな・・・あんた・・・何でもありだな」

「この人・・・知らない?」

「名前は・・・?」

「池田さん・・・」

「そういう場合はカテゴリ検索だな」

「そんなことができるの」

「いいかい・・・これだってテレビ用のイメージなんだ・・・そもそもあの世の霊は存在として一体化しているんだよ・・・個性が無くなったら・・・魂として成形されて再生するわけだから」

「なるほど」

「つまり・・・すべてが一種の想念さ」

「理外の理というやつだね」

「池田さんは・・・池田の池にいる」

池田の池は池田の集合体である。

基本的にみんな池釣りをしているのだった。

「さあ・・・写真のその人のイメージを強く念じて・・・」

「あ・・・いた」

池田は存在感を強めた。

「あの・・・照明の会社にいた池田さんですか」

「そうだけど・・・君誰?」

「あなた・・・誰かに殺されましたか」

「もう・・・そんなことはどうでもいい・・・誰も耳を貸してくれなかったし・・・」

「実は・・・律子さんも殺されちゃいました」

「え」

「あなた・・・律子さんに何か預けましたか」

「不正経理の証拠をメモリーに入れて・・・彼女の机に・・・でもあの人・・・ズボラだから・・・役立たずだった・・・」

「不正経理って・・・」

「吉岡だよ・・・律子さんに相談しようと思ったけど・・・その前に吉岡に口封じされちゃった」

吉岡(住田隆)は律子の上司だった。

「備品の架空発注で・・・会社の金・・・横領してたんだ・・・」

「謎はすべて解けたな・・・」

安堵から・・・幸の言葉を思い出す円。

「千里にもう一度会いたいな」と思う円なのだ。

たちまち・・・光景は一変し・・・雛罌粟(ポピー)の咲き乱れる高原に転移する円。

そこに・・・ポツンと佇む千里だった。

せつないぞ、千里、せつないぞ。

千里は大きなおにぎりを食べていた。

いたいけないぞ、千里、いたいけないぞーっ。

「堤くん・・・どうしたの・・・死んじゃったの」

「ごはんつぶ・・・ついてるよ」

「あれ」

「ちょっと用事できた・・・」

「ちょっと来るようなとこじゃないよ」

「君にもう一度会いたいと思って・・・」

「ちゃんと・・・お別れしたじゃない」

「でも・・・僕にも言いたいことが・・・」

その時・・・警報が鳴り響く。

「霊界質量に異変が生じています・・・生者が紛れ込んだ可能性があります・・・天使の皆さんは生者確保に全力をあげてください」

「あら・・・大変」

天使の群れが現れる。

「この世の扉の場所を知ってるかい」

「あっちよ・・・」

路地裏に飛びこむ二人。

しかし・・・天使たちは迫ってくる。

そこへ・・・馬場陽造(伊東四朗)が現れる。

「話は和弥から聞いた・・・ここは俺が食い止める」

「お手数かけます」

二人は・・・この世の入り口である神社にたどり着くが・・・入り口は天使が警護している。

「そうだ・・・土管・・・土管の場所を知らないか」

「ドカンって・・・何?」

タイムリミットの一時間を過ぎても目覚めない円が心配になる幸。

円の体温は急速に低下を始める。

「大変だ・・・冷たくなってる」と幸。

「死んじゃうのかい」と律子。

「いや・・・堤円・・・戻ってきて・・・」

幸は思わず・・・円の身体に身を投げ出すのだった。

本来なら全裸で温め合うところだが・・・大人の事情でお見せできないのである。

あの世で絶体絶命の円に・・・幸の言葉が響く。

「幸ちゃん?」

「向こうからだ」

声の示す土管が現れた!

「やはり・・・スーパーマリオ的なアレか・・・」

「凄いね・・・さあ・・・早く」

「僕は君に言いたかった・・・僕はバカだから・・・気がつかなかったれれど・・・僕も君がすきだったんだ」

「ありがとう・・・でも今は幸ちゃんのことが好きでしょう」

「え」

「幸ちゃんもきっと堤くんのことが好きだよ」

「ええっ」

「だって・・・あの世とこの世を繋ぐなんて・・・凄く強い思いじゃない・・・」

「・・・」

「さよなら・・・堤くん」

二人は握手を交わした。

そして・・・円は土管に飛び込んだ。

シノザキは仮死状態のアルバイトを拘束するために堤家に魔百合(比留川游)を派遣する。

円と幸と魔百合の三角関係の修羅場を阻止しようとする郁夫。

しかし・・・セクハラになってしまうのであきらめるのだった。

円の部屋に飛び込む魔百合・・・。

しかし・・・すでに円は蘇生していた。

部屋に漂う濃厚な事後の気配・・・。

魔百合は変顔で気不味い空気を和ませる。

円から事情を聴く一同。

「そういえば・・・吉岡さんは・・・あさみちゃんに・・・机の鍵を捜すように命じていたぞ」

「そう・・・確か・・・土曜日までにとか・・・」

「今日・・・土曜日だ」

ナベシマは瞬間移動するのだった。

机の中からメモリーを発見したあさみは・・・中身を閲覧して蒼ざめる。

「これって・・・」

「やはり・・・そこだったか」

「え」

「まったく・・・おかげで二人も殺しちゃった・・・こうなりゃ・・・何人殺しても同じだ」

吉岡は殺意を秘めた皮手袋を装着する。

「やめてください」

「あの世で・・・律子が待ってるぜ」

突然・・・宙に舞い上がる吉岡・・・。

「なんじゃあ・・・こりゃあああ」

念力による死神ナベシマの物理的攻撃である。

見えない相手の殴る蹴るの暴行にパニックに陥る吉岡だった。

「やめてえええええええええ」

一人で暴れまくる吉岡に唖然とするあさみ・・。

そこへ・・・刑事たちを連れて円と幸が到着する。

吉岡は殺人容疑で逮捕され・・・連行されるのだった。

「早く連れてって・・・私を刑務所に連れてって・・・」

茫然とするあさみの手元に・・・ウサギのマスコットがふわふわと着地する。

「実は・・・ここに・・・律子さんの幽霊がいるんです」

「え・・・」

「彼は憑依体質で・・・いま・・・律子さんと合体します」

「あさみちゃん・・・」

「律子さん・・・」

「どうして・・・弘の求婚を断るの・・・」

「だって・・・お兄ちゃんは私を助けようとして死んじゃった・・・律子さんからお兄ちゃんを奪っておいて・・・私だけ幸せになれない・・・」

「馬鹿ねえ・・・あの人も・・・私も・・・一番の望みは・・・あさみちゃんが幸せになることに決まってるじゃない」

「律子さん・・・」

「幸せになってちょうだい・・・お願いします」

「・・・はい」

律子の旅立ちの時が来た。

「あっちに・・・彼はいるのかな・・・私がおばさんになっちゃってびっくりするかも」

「心配ないよ・・・あの世には・・・心配することが一つもないんだから」

「なるほどね」

ナベシマは嘘をついた。

釈放された弘を待ちかまえるあさみ。

「弘さん・・・私と結婚してください」

「ええええええええええええええ」

こうして・・・この世の時は過ぎて行く。

幸は言った。

「彼女に逢えた?」

「うん」

「よかったわね・・・」

「そろそろ・・・僕たち・・・本格的に付き合わないか」

「何言ってるのよ・・・」

「もう・・・充分に検討できたと思うんだ」

青空の下で・・・円は幸の唇を奪う。

「なによ・・・これ・・・」

「キスというものは唇と唇を重ね合って」

「そういうことじゃない」

幸のボディーブローで一瞬、天国を見る円なのだった・・・。

霊能力者であっても・・・今を生きることは大切なのである。

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