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2016年7月31日 (日)

それでも恋は恋だから(黒島結菜)彼女の記憶を操作して幼馴染になりすまし恋をしていますがなにか(菊池風磨)幸せになりやがれ(竹内涼真)

恐ろしい話である。

しかし・・・その恐ろしさをどこまでスタッフが自覚しているのかは謎だ。

そもそも・・・恋なんて錯覚だから・・・他人がとやかく言う問題ではないという姿勢なのか・・・。

人間に自由意思なんかないと信じていて・・・洗脳して奴隷化することに違和感を感じないタイプなのか。

初恋の人にひどいふられ方をして青春そのものに復讐したいのか。

まあ・・・脚本家の深層心理にまで踏み込むことは遠慮しておきたい。

なにしろ・・・まだ途中経過だからな。

とにかく・・・未来人の行動が理不尽すぎるので・・・さらに大きな時空間の「意志」の理不尽さで問題を転嫁する気らしい。

「人間の心を操作することがいけないことなんて知らなかったし・・・それでなんだかわからない神に罰を受けるなんてあんまりだ」という展開になる気配がある。

庇うにも限度があるよな。

「青春もの」としては・・・ここまで・・・かなり素敵な仕上がりになっていると思う。

できれば「お茶の間対策」として・・・未来人の倫理観の丁寧な説明や・・・タイムリープについての疑似科学的考察があると・・・あと1~2%の視聴率向上が見込めたと思う。

原作はSFだが・・・ドラマはすでにファンタジーである。

美しい結末でありますようにと・・・祈るばかりである。

で、『時をかける少女・第4回』(日本テレビ20160730PM9~)原作・筒井康隆、脚本・渡部亮平、演出・岩本仁志を見た。夏を駆け抜けていく物語である。高校三年生に設定された芳山くん(黒島結菜)は最後の夏休みを前に・・・変わりたいという気持ちと変わりたくない気持ちが交錯している。大人の階段を昇ろうとしている幼馴染の吾郎ちゃん(竹内涼真)に期待する心もあるが・・・重たくも感じている。友達と恋人の境界線を越えるに相応しい相手と思えないのである。誰か・・・もっと素晴らしい相手がいるのではないかと思うタイプなんだな。そして・・・そこに・・・未来から王子様がやってくるのだ。

「恋」の危うさが・・・濃縮された原作なのである。

ただし・・・原作の芳山くんは中学三年生なのだ。

芳山くんが未来の王子様に抱いた・・・仄かな恋心は淡いものだったのである。

しかも・・・未来人の深町は・・・27世紀というとんでもなく未来からやってきていた。

それに比べて・・・高校三年の芳山くんの恋はいろいろと生々しいし・・・百年程度の未来では・・・深町の「昔の人に対する考え方」も相当な制約を受けるだろう。

そもそも・・・このドラマの深町は・・・タイムリープの発明者のニュアンスがある。

任務として過去にやってきた原作の深町とでは・・・相当な差異がある。

もちろん・・・このドラマもまた「芳山くんワールド」とも言うべき並行宇宙の一つに過ぎないわけである。

少なくとも・・・黒島結菜の演じる芳山くんは・・・なかなかに萌えさせてくれているので・・・これはこれでいいと言う他はない。

22世紀のケン・ソゴルこと深町翔平(菊池風磨)の洗脳装置とも言うべき、記憶改変装置が存在する未来。当然、未来では防護対策も開発されているのだろう。

しかし・・・無防備な現代人に対する効果は絶大なものであるらしい。

幼馴染で・・・吾郎ちゃんとともにいつも一緒にいた翔平の写真が一枚もないことに違和感を覚える芳山くん。

しかし・・・洗脳装置によって暗示のかかった芳山くんは・・・その不合理さを追求することはできない。芳山くんの精神は翔平の存在の不合理さに対して追及できないようガードがかけられてしまっているのである。

なんという・・・恐ろしい未来の道具なのだろう。

七月三十日・・・藤浦東高校の3年生たちが受験のために補講を受けている頃、未来のクスリによってタイムリーパーとなった芳山くんは・・・恋人となった翔平とはじめてのデートを楽しんでいる。

翔平の希望でピクニックにやってきた芳山くは夏の陽射しの中でうたたねしてしまう。

夢の中で・・・改変された記憶と・・・本来の記憶が鬩ぎ合う。

教室で吾郎ちゃんが芳山くんに腰掛けて言う。

「僕と付き合ってほしい」

「重いよ・・・吾郎ちゃん」

「だから・・・ピクニックに行こう」

振り返った吾郎は翔平だった。

「え・・・翔平・・・いいけど・・・私は遊園地に行きたいな」

そうか・・・吾郎ちゃんは翔平だったんだ・・・。

夢の中で芳山くんは真実と出会うが・・・目覚めるとすべてを忘却してしまう。

ピクニック場で・・・芳山くんに添い寝しているのは翔平だった。

「寝顔が可愛かった・・・」

「熱中症になりそうよ・・・」

「楽しいね」

「そう・・・でも・・・私は遊園地に行きたかったな・・・」

「そうか・・・じゃあ・・・やり直す?」

「うん」

芳山くん翔平と一緒に時をかけた。

この場合の・・・タイムリープでは・・・芳山くんが翔平とピクニックに行った時間は消滅し・・・つまり・・・時の終わりまで全部キャンセルである。

芳山くんが翔平と遊園地にデートに行く時間を作りはじめるということになる。

なにしろ・・・芳山くんのタイムリープ能力は神に等しい領域に達しているのである。

遊園地で・・・絶叫マシンを楽しむ芳山くんは・・・小刻みなジャンプで・・・並ばずに何度もアトラクションを楽しむ。

その度に時の終わりまでがすべて消滅し・・・超時空は振動する。

いろいろなハンバーグを食べたい芳山くんは・・・レストランでもジャンプを繰り返すのだが・・・この場合・・・食べたものは未来に置き去りになるのか・・・いくらでも食べられるのである。

「こんなこといいな・・・できたらいいな」レベルの設定なのだった。

しかも・・・たまたま居合わせた藤浦東高校の教師たちは・・・芳山くんのジャンプを目撃したりするのだった。

もう・・・理論的に解読不能なので・・・説明しません。

まあ・・・いいじゃないか・・・みんながトットル~が好きなわけではないのだ。

芳山くんと芳山くんの記憶を書き変えた翔平が・・・「青春」をエンジョイしている頃・・・。

子供の頃から・・・「俺の嫁」と決めていた芳山くんを・・・春までは実在しなかった親友の翔平に奪われてしまったような気がして悶々とする吾郎ちゃんは・・・勉強に集中できないのだった。

父親の浅倉努(田口浩正)が髪を切る芳山くんの姿に幼い恋をして「鋏」になりたいと思った吾郎ちゃん。

理容師になって父親の代わりに芳山くんの髪を切るのが思春期の吾郎ちゃんの夢だったのである。

成績優秀のために医学部進学を勧められる吾郎ちゃんは・・・芳山くんと離れたくない一心で・・・地元の理容師を目指すのだった。

芳山くんは学業がそれほど得意ではないので・・・大学には進学しないのでは・・・と危惧する吾郎ちゃんなのである。

芳山くんと一緒にいたくて野球部ではなくボート部に入部した吾郎ちゃん・・・。

ああ・・・それなのにそれなのに・・・なのである。

吾郎ちゃんの割りきれない憂鬱な気持ちは・・・爆発寸前だった。

「俺・・・受験しない」

帰宅した吾郎ちゃんの爆弾発言に驚愕する母親の浅倉唯(猫背椿)・・・。

「どうしても・・・理容師になりたかったら・・・大学を出てから」

「そんなの無駄じゃないか」

「せっかくの才能を無駄にするな」

父親の勉には親の欲目がある・・・不安定な商売よりも・・・医師の資格に目が眩んでもいる。

吾郎ちゃんの鬱屈は・・・そういう親の期待とかではなく・・・好きな女の子を奪われた無念さにあるので話はかみ合わない。

たちまち・・・親子喧嘩に発展。

父親の平手打ちを交わし、父親を突き飛ばしてしまう吾郎ちゃんだった。

哀しいほどの鳶が鷹を生んだ設定である。

「そんなに・・・理容師になりちきゃなれ・・・しかし・・・店は継がせん」

意地になってしまう父親だった。

居たたまれず店を出て行く吾郎ちゃん・・・。

「吾郎・・・」と母親は慟哭する。

一日で二日分以上のデートを楽しんだ芳山くんと翔平。

本当は一人暮らしの深町奈緒子(高畑淳子)の手料理をご馳走になる。

会話の流れから・・・翔平の子供時代の写真の話となるのだった。

「なぜか・・・うちには翔平ちゃんの写真が一枚もないんですよね」

「翔平の・・・写真」

危機感を感じた翔平は例の洗脳装置を作動させる。

「俺の写真ついての疑問について・・・すべて削除」

いろいろなものを喪失してしまいそうな・・・記憶操作技術だよなあ・・・。

(もしも・・・彼女が俺の正体を知ったら・・・この恋は終わるのだろうか)

自問自答する翔平だが・・・これまでの自分の行為を「悪」とは認識しないようだ。

そこへ・・・芳山くんの母親の・・・香織(安蘭けい)から連絡が入る。

吾郎の家出を浅倉唯が心配して芳山家を訪問しているのだった。

「マンガ喫茶か・・・野宿でもしてんじゃないの」と妹の芳山那帆(石井萌々果)・・・。

「あなた・・・心当たりないかしら・・・」

芳山くんにはピンとくる。

吾郎ちゃんの気持ちは・・・よくわかっている。

なにしろ・・・吾郎ちゃんの告白をタイムリープでなかったことにしているのである。

吾郎ちゃんが・・・芳山くんと翔平の交際を快く受け入れるとは思えない。

だけど・・・しょうがないじゃない。

一方で・・・本当の幼馴染を案じる気持ちは芳山くんの中で警鐘を鳴らす。

芳山くんにとって吾郎ちゃんは・・・恋人候補というよりも家族なのである。

吾郎を捜しに出るという芳山くんに付き添う翔平・・・。

しかし・・・吾郎の行方は不明である。

「こうなったら・・・行くしかないわ」

「僕も一緒に・・・」

「それは・・・やめた方がいいと思う」

「だって・・・僕も吾郎が心配だよ」

「・・・」

芳山くんは・・・翔平の鈍感さを受け入れるのだった。

どちらにしろ・・・翔平が恋人であることを大切な幼馴染の吾郎ちゃんには受け入れてもらいたいのだ。

ある意味・・・芳山くんは洗脳あるいは恋で盲目になっています。

吾郎ちゃんの家出する前の時間へ・・・タイムリープしようとする芳山くん。

しかし・・・なぜか・・・花火の夜に出てしまう。

「あれ・・・もう一度・・・」

次は・・・文化祭の日に・・・次は芳山姉妹の部屋へ。何故か・・・翔平は芳山くんの腹巻きをゲットするのだった。

とても・・・吾郎ちゃんを案じているようには見えない翔平。

翔平はただ騒動を楽しんでいるようだ。

超管理社会の22世紀では・・・子供の家出などあり得ないのだろう。

芳山くんの能力は一過性のものと翔平は予測している。

芳山くんの「時をかける少女の時間」は終わりに近付いているのだろう。

漸く・・・夕暮れのバス停に到着する芳山くんと翔平。

「よかった・・・まだ間に合う」

時計を見て時間を確かめる芳山くんだが・・・その時計は前の時間を持ちこさないのかよ・・・。

一言で言うと・・・わけがわからないのだった。

家出した直後の吾郎ちゃんに合流する・・・芳山くんと翔平。

頭脳明晰な吾郎ちゃんはたちまち事情を察する。

「俺の家出を心配して未来から来たのか・・・」

「うん・・・」

「ほっといてくれ」

「そんなことできないよ」

「でも・・・遊園地で遊んでたんだろう」

「・・・」

しかし・・・愛しい芳山くんと一緒にいられる喜びを捨てることはできない吾郎ちゃんだった。

「俺は・・・みんなの期待に応えるのに疲れたんだよ」

本心をごまかす・・・吾郎ちゃんだった。

「好きなことをすればいいのよ・・・時間はいくらでもあるんだから」

「・・・好きなことって言われても・・・」

「俺は・・・夜の学校のプールに入ってみたい」

翔平は思いつきを口にするのだった。

ピクニック・・・遊園地・・・夜のプール・・・カラオケ・・・青春のエネルギーなのか・・・芳山くんの体力は底なしなのか。

「翔平歌いなよ」

しかし・・・翔平は平成の若者の歌など知らないのだった。

「吾郎ちゃん・・・こんなことで満足なの」

「俺は悪いことをしてみたい」

「尾崎みたいな・・・」

「クスリまではやらない」

校舎の窓ガラスをたたき割ろうとする・・・吾郎ちゃん・・・しかし、結局できないのだった。

「どうして・・・一回割ってから・・・過去に戻れば・・・元通りなのに・・・」

「それって・・・すごく虚しいよな・・・」

「・・・」

三人は夜の海に出る。

すでに・・・朝が近い。

夜明けの薄明の中で・・・。

「私・・・大学に行っても写真を続けるつもり」とつぶやく芳山くん・・・。

「え・・・大学にって・・・」と唖然とする吾郎ちゃん。

「今はどんなバカでも入れる大学がありま~す」

「俺は・・・芳山くんがずっとずっと好きだったんだ・・・それなのに翔平に先をこされて・・・本当にくやしい・・・翔平・・・芳山くんを幸せにしなかったら・・・絶対に許さないぞ」

「わかった・・・俺は・・・もう・・・22世紀に帰らない」

「え」

「いや・・・なんでもない」

朝帰りした吾郎ちゃんを出迎える両親・・・。

「どうしても・・・この店をつぎたいのなら・・・」

「理容師になるのはやめた・・・」

「えええ」

「とれあえず大学に行くよ・・・」

「・・・」

何かがふっきれた・・・可哀想な吾郎ちゃん・・・。

翔平を寝ずに待っていた深町奈緒子・・・。

「どれだけ・・・心配したと思っているの・・・」

「ごめん・・・」

洗脳装置を出そうとした翔平は疑似母親の奈緒子に抱きしめられる。

「もう・・・取り残されるのは嫌なのよ」

「僕は・・・どこにも行かないよ・・・」

翔平の心に何かが疼いたようである。

そこに・・・未来人である三浦浩(高橋克実)が現れる。

「お前が・・・タイムスリップドラッグの発明者・・・ケン・ソゴルだったとはな・・・」

「え・・・」

「俺は・・・お前よりずっと未来から来たタイムトラベラーだ」

「・・・」

「お前は知らないだろう・・・」

「何を・・・」

「未来人は過去に滞在することで・・・新陳代謝異常を起こすのだ」

「なんだい・・・それ・・・」

「俺は・・・この時代の七年間でほぼ・・・毛がなくなった・・・到着時はふさふさだったのに」

「・・・」

「俺がいくつに見える」

「おっさん・・・」

「俺は・・・まだ主観的時間年齢では三十才だ・・・」

「どういうことだ」

「滞在が長いほど・・・老化するんだよ・・・二十三歳だった俺が七年後には六十代の肉体に」

「つまり・・・」

「寿命が短くなるんだよ・・・システムが解明されていないので・・・対応策はないぞ」

「あんたは・・・どうして」

「俺は・・・この時代にできた家族を愛してしまったから・・・」

「俺だって・・・」

「お前は彼女たちを自分の都合のいい性的愛玩人形にしただけだろう・・・」

「そんなことはない・・・」

「とにかく・・・お前は未来に帰れ」

「・・・」

「その前に・・・彼女には頼みたいことがある」

「え」

「俺は幸せな気持ちで死んでいくが・・・残された家族のことを思うとな・・・」

「まさか・・・」

おそらく・・・三浦は過去を改変するつもりなのだろう。

「俺はこの恋をなかったことになんかできはないよ」

翔平は・・・芳山くんに忠告する。

「お好み焼き店のおっさんが・・・変なことを言い出すが・・・信じてはいけない」

「え」

「とにかく・・・僕を信じてくれ・・・」

「何を言ってるの・・・」

「僕は・・・君を幸せにするんだ・・・吾郎と約束したんだから・・・」

隠れ家でドラッグの調合を進める翔平。

「やっとやる気になったのね・・・」と相原央になりすましている未来人ゾーイ(吉本実憂)・・・。

「急がないと・・・君だけでも未来に戻さないとな」

「どういうこと・・・」

「過去で・・・我々の新陳代謝は加速するらしい」

「それって・・・」

「早死にするんだよ・・・ぼくらは」

「そんな・・・」

ゾーイは蒼ざめた。

最悪の未来人・ケンに・・・悲劇モードのオブラートをかぶせて・・・物語は最終回へとなだれ込むのだった・・・。

なにしろ・・・この世界の未来には・・・冬しかない地球が待っているのだ。

この物語は・・・本質的に暗い未来へと向っているのです。

はたして・・・それを根底から覆す・・・芳山くんの活躍があるのかどうか・・・それだけが気がかりなのである。

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2016年7月30日 (土)

毎度おなじみの横溝正史風でございます(向井理)ゴジラかよ(木村文乃)牛蒡は鈍器とは言えません(臼田あさ美)

増毛と書いて「ましけ」と読む。

北海道旅客鉄道(JR北海道)留萌本線には増毛駅が実在する。

2016年12月には廃駅となるってよ。

快速列車「ましけ」もあったのにな。

しかし・・・このドラマに登場する毛増(けまし)村はフィクションである。

一部の毛髪に不自由な人にはありがたい「地名」だよね。

毛髪に不自由なことが・・・障害の場合があるから気をつけたい。

「坊さん転んでケガなくてよかったね」とも言えない御時勢かっ。

今や、世界は「けなしワールド」である。

「けなしてけなしてけなしまくる可哀想な人たちの支配する世界」だ。

面と向ってけなすと刺されるおそれがあるので陰口をたたきまくるのである

そういう人たちの口を×で封じるわけにもいかないからな。

それでも人は生きていくのだ。

「厚化粧の大年増」や「棺桶に片足つっこんでるプレイボーイ」や「名前を間違えられても愛想笑いの小心者」が醜い争いを繰り広げる大都会で・・・かわいいおバカな人たちを見ることがオアシスのひとときである。

結局、けなすのか・・・いいえ、おちょくっているのです。

愛ですよ・・・愛。

で、『神の舌を持つ男・第4回』(TBSテレビ20160729PM10~)原案・堤幸彦、脚本・櫻井武晴、演出・堤幸彦を見た。認知症の老母が退院するので理学療法士から「お世話」についてのレクチャーを受ける。脳腫瘍から回復した老父が「教え」を受けるのである。起き上がれなくなった老母を抱き起そうとして絶叫されたことが軽いトラウマになって吐き気がする。それでも人は生きていくのである。「金田一少年」という「関係」があるのかないのかわからないものから・・・ドラマ「トリック」まで・・・「横溝正史ミステリ」のパロディーのパイオニアによる演出である。パロディーがすでに古典となっており・・・「ハイ 」などでも別スタッフがやっていた。「斬新」が「ありふれた手法」になってしまうのは世の常なのである。だけど・・・楽しいのでいいじゃないか。頭のおかしな犯罪者の口にする「ヒトラー」という記号に安易に飛びつく報道番組より・・・ずっと良心的である。

天空温泉ホテル「まんげつ伊豆」の支配人(東根作寿英))が口にした「毛増村には行かない方がいい・・・いまは・・・はなしの時期だから・・・」という警告を無視し・・・かって栄えたという毛増村温泉郷へと向う・・・伝説の三助・朝永平助(火野正平)の孫である人間成分分析器・朝永蘭丸(向井理)、古物の行商人・甕棺墓光(木村文乃)、そして宮沢賢治の心象スケッチを諳んじる宮沢寛治(佐藤二朗)のトリオ・・・。

毛増村では・・・昭和十年(1935年)・・・女房が浮気したと妄想した男が・・・村中の男衆を惨殺するという猟奇的な事件が起こっていたが・・・すでに八十年以上の歳月が過ぎ去り・・・忌まわしい記憶も忘れさられているらしい・・・。

またしても現実とリンクしそうなきわどい展開である。

もう・・・そういうことに創作者がビクビクしない虚構制度が成立してもらいたいものだな。

桜の咲き乱れる山間部を進むオンボロ車。

隙あらば蘭丸にキスしようとする甕棺墓くんである。

しかし・・・途中で・・・蘭丸の追う温泉芸者ミヤビ(広末涼子)とすれ違うのだった。

あわてて車から降りて愛しい女を追いかける蘭丸。

だが・・・突然、春の嵐が襲い・・・落雷による土砂崩れが発生する。

ミヤビと蘭丸の邂逅を妨げる道路の寸断。

通りすがりの町子(臼田あさ美)も土砂崩れに巻き込まれそうになるが・・・寛治(佐藤二朗)が間一髪で助けるのだった。

「ゴジラにも勝らないとも劣る特撮です」

勝負するところが違うぞ。

ミヤビに追いつけない理由のためだけの土砂崩れが笑いのポイントなのにいろいろと散漫なんだよな。

三回くらい土砂崩れの連続でもしないとな。

そして・・・土砂崩れの現場からは・・・無数の白骨が散乱する。

髑髏を手にした甕棺墓くんは卒倒するのだった。

「これは五十年前に絶滅したケマシフサモ・・・」

土砂の成分から・・・年代測定をする蘭丸だった。

つまり・・・白骨死体は・・・五十年以上前から・・・埋もれていたということだ。

お約束のガス欠となった甕棺墓の営業車を乗り捨て、町子の案内で・・・毛増村に入るトリオ。

落雷の多い季節なので・・・刃物の使用が禁じられた「刃無の時期」・・・村の刃物はすべて「雷神の祠」に封印されてしまい、刃物を一切使えない村人たちは野菜から肉まですべてをちぎって食材にするため・・・村は「ちぎりの里」と化していた。

すでに・・・温泉郷としては廃れ・・・村の温泉宿は・・・「波外ノ湯」一軒となっている。

経営者は村長の赤池慎太郎(きたろう)で・・・温泉女将は慎太郎の妻・栄子(真飛聖)だった。

仲居は不気味な白塗りの双子の老婆(松金よね子・田岡美也子)である。

例によって「伝説の三助の孫」で無賃宿泊にチャレンジするトリオ。

寛治が命の恩人となった町子と・・・村長の息子である辰也(柄本時生)の口添えで一夜の宿の確保に成功するトリオだった。

すでに・・・土砂崩れにより陸の孤島となった毛増村・・・。

村の駐在警官・木村常吉(野添義弘)が状況を村長に報告しにやってくる。

蘭丸は「白骨遺体」について質問するが・・・村長も駐在も・・・「白骨」の存在を認めようとはしないのだった。

そこへ・・・町子の腹違いの妹で・・・精神の発達に少し問題がある都(徳永えり)が現れ・・・毛増村に伝わる「毛鞠唄」を歌い出すのだった。

人がいっぱい死ぬけーのー

男ばっかり死ぬけーのー

顔色を変える村人たち・・・。

「お家に帰りましょう・・・ドンキホーテで牛蒡を買ってきたから・・・お腹すいたでしょう・・・」

「わ~い・・・ゴボウじゃああああ」

「悪魔の手毬唄か」

「不気味な老婆も登場するしな」

「それよりも梅ちゃん先生の匂いが・・・」

「三姉妹といえば獄門島」

「犬神家の一族もな」

「猟奇的な殺人といえば八つ墓村もな」

陸の孤島となった毛増村。

何故か・・・白骨遺体のことに口を噤む村人たち・・・。

携帯電話の電波が届かず・・・宿の電話のコードは切られ・・・通報もできない。

結局、名物「ちぎり飯」を食べ・・・就寝するトリオだった。

そして・・・翌朝・・・仲居の老婆もトリオになっていた。

階段ですれ違った辰也はなぜか・・・ドライバーを落す。

乗り捨てた営業車の中の骨董品が気になる甕棺墓くん。

「豊臣秀吉の刀狩り由来の日本刀は値打ちものなのよ」

しかし・・・女将が事件を知らせる。

村の駐在・木村が死体となって発見されたのだ。しかも胸に日本刀が刺さっていたと言う。

現場に駆け付けた・・・トリオの前に・・・「雷神の祠」を管理する「雷神寺」の住職・神村精進(石橋蓮司)が現れる。

神村は・・・病弱な長女の里子(松岡恵望子)、町子、都の父親だった。

三人の母親は全員別人で・・・神村はバツサンなのだ。

「お前たちが・・・刃物を持ちこんだせいで・・・この村は呪われた・・たたりじゃ」

血相を変える村長。

「たたりなどはない」

たたりをめぐり対立する住職と村長。

そこへ・・・都が髑髏を転がし見事なドリブルを披露しながら登場。

村長はあわてて髑髏を秘匿し、住職は都を連れ去るのだった。

何か・・・恐ろしい事件が始った気配に・・・二時間サスペンスドラママニアの女・・・略してニサスの女・・・甕棺墓くんの血が騒ぐのである。

「現場保存が第一よ・・・そして・・・私の刀を返しなさい」

「矛盾してお~る」

しかし・・・例によって蘭丸は赤の他人の死に慟哭を惜しまない・・・。

村長は蘭丸トリオを村から追い出したいが・・・陸の孤島状態からの復旧は進捗しない。

暇な甕棺墓くんはライトブルーもしくはモスグリーンのカーディガンを着てピンクのカーディガンの町子と張り合いつつ、女将と唯一の宿泊客(多田木亮佑)との密会現場を目撃してニサス魂を鼓舞する。

蘭丸は病弱な里子のために癒しの三助技を披露するのだった。

ゲスト女優が次々と脱ぐ企画だったのだろうなあ。

名のある女優は浴槽に入浴はOKでも三助に背中を流されるのはNGなんだろうなあ。

そんなの最初から分かっていただろうに。

邪な色欲にスタッフの目が眩んだんだなあ。

七瀬の浴槽詐欺の呪いかもなあ。

何故か、一同が会するお食事部屋で・・・宿泊客が苦しみだし、変死する。

「もしかすると毒殺かもしれない」とつぶやく蘭丸に反応して・・・宿泊客の部屋から服用している薬を勝手に持ち出す甕棺墓くん。

「これは・・・心臓病の薬・・・」

「お医者様は・・・薬を服用すれば旅行に差し支えないと・・・」

被害者の妻(村岡希美)は茫然自失のまま答えるのだった。

「救急車はやはり無理でした。ドクターヘリのことは聞かないでください。ふもとの藪クリニックの藪先生が無理をして来てくれるかもしれませんが・・・」

「藪クリニックの藪先生・・・」

「たたりじゃ・・・」

いつのまにか波外ノ湯を囲む村人たち。

「すべて・・・刃物を持ちこんだお前たちのせいだ・・・もっともっと人が死ぬぞ!」

住職が叫ぶ。

「たたりなどない!」

村長が叫ぶ。

キノコを握り目の下にクマを作ったマタンゴ怪人化寸前のような村人たち。

そこで仲居の老婆が提案する。

「この村には牢小屋があります」

「ろうごや~」と歌い出す宝塚女優風の女将。

「牢小屋に入った方が・・・安全かもしれない」と言って村長はトリオを「牢小屋」に監禁するのだった。

牢小屋に弁当を届けに来る四人に増殖した仲居の老婆たち。

仲居が「ミヤビ」について語りだすお約束。

「ミヤビの男は・・・この村にいた」

「え」

「ミヤビは・・・あの客の部屋に忍びこんで・・・薬の袋をあらためていた」

「ええっ」

「それじゃあ・・・ミヤビは殺人芸者・・・」と甕棺墓くんの推理が冴えまくる。

「そんな・・・」とショックを受ける蘭丸。

そこへ・・・町子がやってくる。

「皆さん・・・逃げてください・・・その小屋は皆さんが力を合わせれば壁を壊すことができるほど老朽化しています」

「そりゃ」と甕棺墓くんは一撃で壁を突き破る。

甕棺墓くんは今回、拳法の達人風である。

くのいちのような動きをみせる老婆たちとの肉弾戦に突入する。

町子の手引きで洞穴に身を潜めるトリオ・・・。

明かされる・・・蘭丸と寛治の出会い・・・。

伝説の三助・朝永平助の通夜の席・・・空腹のために料理目当てでもぐりこんだ寛治は・・・香典泥棒として疑われる。

「通夜なら・・・喪服を着ていなくても怪しまれないわよね」と甕棺墓くん。

「経験あるみたいだな」と寛治。

蘭丸は香典袋に残された成分と寛治の皮膚の成分が一致しないことを味わい、寛治の無実を主張したのである。

「さすがは・・・蘭丸くんは天才ね」

「僕が・・・天才」

変な成分を研究して研究員に「ありま~す」と言わせるためだけに登場する蘭丸の父親・朝永竜助(宅麻伸)には・・・否定された言葉である。

「お前は・・・天才ではなかった」と父は蘭丸をけなしたのだった。

一方・・・町子によからぬ気持ちを抱き始めた寛治である。

「そろそろ・・・みんながあんなに騒ぐ理由を教えてくれませんか」と寛治の気分を無視する蘭丸。

「わかりました・・・それは・・・来週お話します」

「え・・・つづくなの」と驚嘆する純朴なお茶の間の皆さん・・・。

ミステリ要素を膨らませつつ・・・小ネタ満載すれば前後篇にならざるをえない。

豪華ゲストと製作費の兼ね合いもあるしな。

ドラマ「トリック」と同じ展開である。

「ニサスマニア」はそのいいわけにすぎないのだ。

まあ・・・甕棺墓くんがなににつけてもかわいいからいいんだけどねえ。

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2016年7月29日 (金)

性善説を信じるものは生きながら地獄へ招かれる場合があるよ(山田孝之)

恐ろしい犯罪に日常的に接する警察官は・・・性善説を信じない。

彼らの座右の銘は「人を見たら泥棒と思え」ということである。

つまり・・・警察官を見ても泥棒かもしれないと疑う心が必要なのである。

しかし・・・そんな風に生きていると・・・心は荒むわけである

結局、人間は・・・誰かを信じたいものなのである。

誰かを信じるのは楽だからだ。

けれど・・・それは一種の「怠惰」であり・・・「甘え」であると考えることもできる。

凶悪犯罪の犠牲者は・・・憐れである。

だが・・・犯罪者を憎むことが許されない社会では・・・それはひとつの運命に過ぎないとも言える。

せめて・・・自分だけは体を鍛え・・・いざという時に備えようと考えたとしても・・・加齢により・・・いつかは自分の身を守れない時はやってくる。

その時・・・「彼ら」がやってきたとしたら・・・もう祈るしかないのだな。

大切なのは・・・油断しないことだ。

なぜなら・・・「彼ら」はいつだって・・・あなたの「大切なもの」を奪おうとするのだから。

で、『ウシジマくん Season3・第2回』(TBSテレビ201607270128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。さわやかな風に吹かれイケメン三兄弟と恋のバカンスを楽しんだり、感情を持たない心で兇悪な犯罪者と対峙したり、とにかく家を売って売って売りまくったりする・・・お茶の間的日常とはかけはなれた暗闇が現実の社会には広がっている。まともな社会を支える底辺の世界・・・そこでは人はたやすく闇に飲まれてしまうのだ。なぜ・・・このドラマはこんなにも魅力的なのだろうか。それは・・・そんな闇をありのままに描いているからだろう。これはあなたの隣人・・・いや、あなたの家族・・・いや、あなた自身にふりかかるかもしれない危機の物語なのである。

★ママチャリに幼児を二人乗せたママさん売春婦のテルミ(卯水咲流)は・・・「カウカウファイナンス」の柄崎(やべきょうすけ)と高田(崎本大海)に囲まれてしまう。

「期日なので利息を払ってもらわないと・・・」

「こっちだって仕事をしたいけど・・・託児所が一杯なのよ・・・行政の問題よ」

そこへ・・・テルミの情夫であるチンピラのマサくん(濱崎一輝)が現れた!

「お前ら・・・何してんだ」

「マサくん・・・遅いよ」

「てめえら・・・どこがケツ持ち(背後にある反社会的組織)だ」

反社会勢力同志の力関係で利息の返済を相殺しようと威嚇するマサくんである。

「お前こそ・・・誰だ・・・懇親会で見かけたことねえぞ・・・」

アイスキャンデーを食べながらウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)が介入する。

ウシジマくんの恫喝に屈するマサくんだった。

気配を読んだテルミは・・・矛先を治める。

「もういいよ・・・利息は必ず払うから・・・」

「テルミがいいっていうなら・・・」

マサくんも引き際は心得ているのである。

チンピラと情婦が去った後で柄崎がウシジマくんに尋ねる。

「社長・・・懇親会ってなんですか」

「ヤクザだってそういうものを開くだろうと思ってハッタリかましただけだよ・・・人間には想像力があるだろう・・・向こうが勝手に何かヤバイものを想像したのさ」

「結局・・・女は強い方に靡きますからねえ」

この世界は・・・想像力と想像力の駆け引きで成立しているのだ。

騙される方が馬鹿なのである。

★★「彼とは別れようと思うんです」

「そうねえ・・・彼はあまり・・・いい運気を持っていないから」

ファッション雑誌の編集者・上原まゆみ(光宗薫)は・・・占い師の勅使川原先生(三田真央)と喫茶店にいた。

そもそも・・・占い師と親密になっていることが・・・すでに危険な兆候だとはまゆみは思わない。

コールド・リーディング(詐欺師の話術)により・・・心理誘導されたまゆみは勅使川原先生が霊能力に優れていて・・・自分の良き理解者であり・・・素晴らしいアドバイザーだと信じているらしい。

勅使川原先生に対する信頼感から・・・会うだけでテンションがあがり・・・「パワーのある石」を購入するまでに洗脳段階が進んでいる状況である。

しかし・・・それはまだ序の口なのである。

「何か・・・買ったの・・・」

「ジョギングシューズです・・・近所に大きな公園があって・・・休日はジョギングしているんです・・・走った後のビールは最高だし・・・男と違って・・・走った距離は裏切りませんから」

まゆみは心を許した勅使川原先生にプライベートを明かしていく。

この場合・・・真の詐欺師はまだ控室にいる。

まゆみの明かす情報をホット・リーディングしているのである。

手さぐりのコールド・リーディングと違い・・・ホット・リーディングで確実な情報を入手した真の詐欺師は・・・騙す相手の心を鷲掴みにするのだ。

★★★とある小学校・・・。

教師の杉本(中島弘輝)は「道具のれきし」について児童たちに教えていた。

だが・・・児童たちは杉本先生の話など聞いてはいない。

学級は完全に崩壊している。

チャイムで騒がしい児童たちから解放された杉本先生に・・・女教師(高橋美津子)が駆けよる。

「杉本先生・・・翔くんのお母さんが・・・」

「先生・・・昨日・・・翔くんのチョコレートバーとりあげたでしょう・・・翔くん、お腹がすいてたのに可哀想じゃないですか・・・チョコレートバーの代金、弁償してくださいね」

モンスターペアレントの攻撃に・・・ストレスがたまりまくる杉本先生である。

そこに・・・ネットカフェで暮らしている家出少女・美奈(佐々木心音)から着信がある。

(ママ・・・3POKだって・・・週末どう・・・7万忘れないで)

杉本先生の顔に歓喜が浮かぶ。

杉本先生は・・・親子丼プレイをこよなく愛するスキッパー杉本なのである。

★★★★NPO団体「貧困ネットワーク」の主催者・嘉瀬正義(福田優)のバックアップで生活保護の受給に成功した小瀬(本多力)は怠惰な生活を送っていた。

社会復帰の生活指導のためにケースワーカーが訪問する。

「何か・・・お仕事みつかりましたか」

「働きたいと思っているのですが・・・仕事のことを考えると気分が悪くなって・・・今日のところは勘弁してください」

ケースワーカーが去ると・・・布団を抜けだした小瀬は食糧の補給のためにコンビニに向う。

「君・・・この前・・・生活保護を獲得したでしょう」

声をかけてきたのは生活保護仲間だった。

「今・・・ニート飲み会やってるんだ・・・君も来ない」

「今・・・忙しいから」

「暇でしょ・・・むしろ・・・退屈してるでしょう・・・」

「・・・」

「僕はめしあ・・・本名は飯野」

小瀬はめしあこと飯野(野澤剣人)のアパートに導かれる。

そこにはトーキー(水間ロン)もいた。

「今・・・やりたい職種につけるのは・・・コネのあるやつか・・・本当に才能ある奴だけさ・・・やりたくない仕事をするくらいなら・・・寝ていた方がマシだ」

「・・・」

「でも・・・それでいいのか」

「・・・」

「だから・・・ボクたちがやりたい仕事ができるビジネスを起業しようと思うんだ・・・今、仲間を集めているんだよ」

「やりたい仕事って・・・」

「まあ・・・今日は飲もうよ・・・ボクたちには時間だけはたっぷりあるんだから・・・」

その時・・・飯野のベッドから下着姿の・・・希々空(ののあ)が現れる。

「え」

「今何時・・・いつ眠ったのか全然覚えてない・・・」

「ええっ」

そんな希々空(小瀬田麻由)の胸を揉み始めるめしあとトーキー・・・。

「えええ」

生活保護受給者がけしからん・・・肉体を持っていることもあることを知り・・・動揺する小瀬だった。

「けしからん・・・」

飯野の風呂場にかけこんだ小瀬は・・・自慰を始める。

網膜に焼きついた幻影の希々空が小瀬を詰る。

「粗末な・・・チ」

「粗チ・・・も個性だよ」

「粗チ~ン」

「あっ」

他人の家の風呂場で射精する小瀬だった。

「俺って・・・最低だ」

底辺へ・・・底辺へ・・・今、あなたの心はあなたの身体を離れ・・・底辺の世界に沈み込んでいくのです・・・。

★★★★★まゆみは公園でジョギングをしている。

そこへ・・・雨の日に傘をくれた神堂大道(中村倫也)が現れる。

「まゆみさん・・・こんにちは・・・」

突然、名前を呼ばれて虚を突かれるまゆみ。

男が誰かを思い出すが・・・自分が名乗ったのかどうか・・・記憶は曖昧だ。

充分に怪しい神堂だが・・・白昼であり・・・まゆみは気を許す。

「かみどう・・・さん?」

「しんどうです」

「あら・・・ごめんなさい」

二人で汗を流し・・・ピクニック気分になるまゆみ・・・。

「どうぞ・・・」

神堂はまゆみに冷えたビールを渡す。

「ジョギングの後のビールは最高です」

ビールを飲み干す神堂に強く共感するまゆみ・・・。

「走った距離は裏切らないですしね」

お茶の間は・・・神堂が・・・真の洗脳者であることを悟るが・・・まゆみは完全に心を掌握されるのである。

そこに・・・まゆみの恋人であるハシくんこと橋本(ジェントル)から着信がある。

「ねえ・・・今日・・・まゆみの部屋に友達連れて行っていい」

「なんでよ」

「屋上でキャンプしたんだけど・・・暑くて」

ハシくんの子供っぽいところが好きだった時期もあった・・・。

しかし・・・今はそれがうざくなってしまったまゆみだった・・・。

★★★★★★ラブホテルの一室。

スキッパーは貴重品を防水袋に詰めた。

「スキッパーさん・・・ママよ」

美奈は母親の恵美子(倖田李梨)を紹介する。

「さっさとやって終わらせましょう」と脱衣する恵美子。

「お・・・いいねえ・・・じゃあ・・・ママと二人でシャワーあびちゃおう」

美奈は鬱屈しながらスマホに逃避する。

バスルームから母親の嬌声があがる。

「あら・・・もう・・・立派になってるじゃないの」

「そりゃ・・・やる気ありまくりだから」

母親が男のものをしごく影がバスルームのガラスの向こうで揺れる。

美奈は息が苦しくなってくるのだった・・・。

★★★★★★★「カウカウファイナンス」にテルミが利息の返済にやってくる。

「商売の方の景気はどうだ・・・」とウシジマくん。

「最近厳しいのよ・・・だから利息少しまけてよ」

「じゃ・・・また・・・来月」

テルミが去ると柄崎がつぶやく。

「テルミの奴・・・観念したみたいですね」

「女好きの客を紹介して・・・営業かけさせますか」と高田。

「きっちり仕事してもらわないとな」とウシジマくん。

受付嬢・エリカ(久松郁実)は男たちの話を聞き流す。

★★★★★★★★女好きの川崎(ムートン伊藤)は上司と酒席にいた・・・。

(くそ・・・こんなクソ親父と飲んでる場合じゃねえっつうの・・・女とやりたいっっつうの)

★★★★★★★★★娘と母親とやりまくったスキッパーはすっきりしていた。

「ほら・・・七万・・・今度亭主も連れてこいよ」

母親はM字開脚の姿勢から金に跳び付く。

「俺が買った娘と母親の亭主の顔が見てみてえ・・・てか・・・亭主いんの?」

つかのま・・・ストレスを忘れ・・・無意味に饒舌になるスキッパー。

母親を貫いた男根で貫かれた娘は・・・虚脱している。

夜の公園で・・・金を分配する母と娘。

「じゃ・・・ママ、三万ね」

「え・・・三万五千じゃないの」

「私が四万もらっとく・・・私の客だもの」

そこへ・・・ウシジマくんのライバル企業・闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)と腹心・村井(マキタスポーツ)が現れた。

「回収させてもらうぜ」

「くそ・・・久しぶりにパチンコ打とうと思ったのに・・・」

犀原は茜に声をかける。

「あんた・・・この女の娘?」

「そうだけど」

「じゃ・・・携帯ナンバー登録させてもらうわ」

「なんでよ」

村井は・・・美奈のスマホを強奪する。

「はい・・・終了」

「何すんのよ」

「あんたは・・・こいつの連帯保証人になったんだよ」

「・・・」

「困ったら私に言いな・・・あんたにも金を貸してやるぜ」

闇金女は惨めな母娘を残し夜の闇に消えた。

★★★★★★★★★★まゆみはハシくんと今後のことを話しあうつもりで呼び出した。

しかし・・・まゆみは会社の飲み会で痛飲し・・・二日酔いで気分が悪い・・・。

「もう・・・帰ろうか」

だが・・・ハシくんはもう少しスケートボードで遊びたい年頃だったのだ。

「一人で帰れよ・・・」

そこに妹のみゆき(今野鮎莉)から着信がある。

「カズヤと菅原さんがもめちゃって大変なのよ・・・助けて」

みゆきはかってガールズ・バーでアルバイトしていた。

その時の常連客が菅原さん(礒部泰宏)である。

カズヤ(板橋駿谷)はみゆきの夫だが・・・ストーカーのような菅原さんに暴力を振るって逆に訴えられそうになっていたのだった。

「助けてもらいたいのは・・・こっちだよ」

まゆみは吐き気を感じて路上に蹲る。

その背中をそっと擦る神堂大道・・・。

「神堂さん・・・通りかかったら・・・あなたの姿が見えたので」

「お前誰だよ・・・」とハシくんが割り込む。

「まゆみさんの具合が悪そうだったので」

「あ、そう・・・もう行っていいよ」

「私が具合が悪いって行ったのに・・・遊んでたくせに・・・」

「・・・」

「それに・・・実家に行かなくちゃ・・・妹の婚約者がストーカーともめてるの」

「・・・」

「電車で行ったら一時間半かかるから・・・タクシー飛ばして行かないと」

「私の車でお送りしましょうか」

「じゃ・・・俺も行く」

「残念ながら・・・ツーシーターなので」

「じゃ・・・タクシーで」

「お金あるの・・・」

「まゆみちゃん・・・持ってるでしょう」

まゆみはハシくんを置き去りにして神堂の車で実家に向う。

トラブルはまだ続いていた。

神堂は・・・菅原さんに囁く。

「私は・・・みゆきの弱みを握っている・・・後で好きなだけ抱かせますから・・・ここは形式的に誤ってください」

「え・・・やれるの」

「さあ・・・二度とストーカーはやらないと誓ってください・・・形式的にね」

「わかった・・・もうみゆきさんにストーカー行為はしません・・・これでいいか」

「はい・・・証拠をいただきました」

神堂は・・・録音された菅原さんの「謝罪」を再生する。

「もうみゆきさんにストーカー行為はしません」

「今度・・・みゆきさんにしつこくしたら・・・これを警察に提出しますよ」

「え」

みゆきとカズヤの危機を救った・・・神堂は・・・母親の上原広子(武藤令子)からも歓迎される。

祝杯をあげる一同・・・。

そこへ・・・まゆみの父親の上原重則(名倉右喬)が帰宅する。

上原は・・・「悪魔」が目の前にいるとは知らず・・・「疲れた」と言って奥の間に消える。

酒を飲ませてしまったため・・・神堂と駅へ向かうまゆみ。

突然・・・神堂は・・・まゆみの唇を奪うのだった。

「私と・・・結婚を前提に交際していただけませんか・・・」

激しく揺れるまゆみの心・・・。

「勅使川原先生・・・私・・・今、気になる男性がいるんですけど・・・」

「新しい交際をスタートするには・・・今は最適の星まわりよ・・・」

まゆみは「地獄」へと足を踏み出した。

★★★★★★★★★★★「カウカウファイナンス」で客(岩井ジョニ男)が利息の支払いを渋る。

「お金がなくて・・・もう・・・三日も何も食べていません・・・飲み残しの氷いただいてよろしいですか」

「好きなだけ食え」

氷を貪る客は頭がキーンとなるのだった。

柄崎は客のサイフから金を抜き取る。

「何が飯を買う金もないだ・・・あるじゃねえか」

頭を抱えて呻く客・・・。

ウシジマくんは笑った。

夜空には無数の黒い星が輝いているが人の目には映らない。

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2016年7月28日 (木)

家を売った後のことなんか知ったこっちゃありません(北川景子)一千万円おまけします(千葉雄大)捨てられた家と私(仲村トオル)

かかわりたくない人間というものがいる。

物騒な気配が漂っていることを背中が感じるのだ。

しかし・・・そういう気配に鈍感な人もいて・・・あるいは見て見ぬふりをして・・・結局、キャッチされてしまう。

危険な人物に関する情報の取り扱いに不備があったとしても・・・必ずしも責任問題には発展しない。

なぜなら・・・そんなことをすれば・・・政治が暴力に屈したことになるからである。

太平洋戦争の特別攻撃隊、オウム真理教の地下鉄サリン散布、秋葉原無差別殺人・・・日本人の独創性は世界にテロの見本を提示し続けるな。

小学生を狙ったり、障害者を狙ったり・・・そういうことが実際に可能という現実に対してのインパクトの強さ。

北朝鮮による拉致事件について・・・すべては運命だと語った作家がいたが・・・それは本当にその通りだと思う。

今日もまた・・・関東は地震に揺れている。

その日は近いのかもしれない・・・何万人・・・何十万人の死傷者が出るのかもしれない。

しかし・・・一千万都民の大半は生き残るのだ。

すべては運命と思う他ないのである。

もちろん・・・防災対策やテロ対策は必要だろう・・・だが・・・最後に残るのは運命に対する祈りだけだろう。

まして・・・美人の営業員に家を売りつけられるのは運命としか言いようがない。

で、『家売るオンナ・第3回』(日本テレビ20160727PM10~)脚本・大石静、演出・佐久間紀佳を見た。衣食住は人間の生活の基本である。人間が平等ではないと思い知るのもこの基本によるところが大きい。安普請というものがあって・・・ドアを閉めるだけで揺れる家に住んでいれば・・・鉄筋コンクリートの高層マンションは同じ人間の住まいとは思えない。専業主婦が市民権を得ていた時代・・・美味しい朝ごはんを食べる子供と・・・朝食抜きの子供では明らかに学力に差が出るわけである。物凄い高級ブランドに身を固めても醜いものは醜いし何も身につけていなくても美しいものは美しい・・・最後の方、少し意味が違うぞ。家を買ったり売ったりすることが夢のまた夢の人も・・・テレビドラマでそういう気分を味わうことはできるのだ。いつか・・・その日のために・・・見るがいい。ゴーッ!

テーコー不動産株式会社・・・新宿営業所売買営業課・・・屋代課長(仲村トオル)はそれなりに充実した日々を送っていた。しかし・・・異常な営業成績を示す・・・新たな営業チーフ・三軒家万智(北川景子)が人事移動してきたことで・・・不穏な空気を感じるのだった。もしかしたら・・・自分は・・・この地位を追われるのかもしれない。

三軒家が・・・本社から送り込まれた刺客だったら・・・どうしよう。

疑心暗鬼となった屋代課長は・・・先月の売上がゼロの庭野聖司(工藤阿須加)に三軒家の監視を命じるのだった。

無能な部下にそんなことを命じる屋代課長の無能が・・・匂い立つ・・・。

しかし・・・営業課のトップとして気を取り直し・・・「現地販売ウイーク」という営業企画に・・・チームワークで立ち向かおうと命ずる屋代課長・・・。

だが・・・三軒家チーフは・・・。

「営業は個人の努力次第です・・・私がすべての家を売ります」

「えええええ」

出る杭は打たれる社会だが・・・会社に利益をもたらす人材は打てない。

なにしろ・・・他人の給料分まで稼ぐ社員は無敵なのだ。

進退窮まる屋代課長なのである。

バツイチ独身の屋代課長にとって・・・売買営業課こそがマイホーム。

気分は家長なのである。

たとえ・・・営業成績が不振でも・・・家庭は平和でありたい。

そういう意味で・・・三軒家は・・・外部からの侵入者であり・・・危険なテロリストなのだった。

「現地販売」の物件は三軒。

それぞれに担当をつける屋代課長。

サンルーム付の超一流物件は・・・エースの足立聡(千葉雄大)と庭野。

外国人向けでゲストルームにバストイレのついた一流物件は・・・ベテランの布施誠(梶原善)と帰国子女の八戸大輔(鈴木裕樹)・・・。

建坪が五坪という三流の三階建住宅は・・・宅間剛太(本多力)と戦力外の白州美加(イモトアヤコ)である。

「私・・・サンルームを足立さんと売りたい」と主張するシラスミカだったが・・・足立に「その物件が売れたらきっと自信になるよ」と微笑まれ・・・その気になるのだった。

「私とチーフは・・・全体を統括する」

「統括とは・・・」

「みんなの面倒をさ・・・それとなく」

「私は・・・誰の面倒も見ません」

「しかし・・・部下の教育も・・・チーフとしての仕事だろう」

「私の仕事は家を売ることです」

「・・・」

三軒家を手元に置いて監視しようという屋代課長の目論みは崩れた・・・。

すでに・・・三軒家には・・・売却希望のアポが二件あったのである。

屋代課長は・・・スパイ庭野にチーフに同行することを命ずるのだった。

「一緒に連れてってください」

「何故・・・」

「家の売り方を勉強したいのです」

「・・・」

否とは言わない三軒家である。

三軒家にも・・・部下を育てる気持ちがあるのか・・・いや・・・無能なものにも使い道があると心得ているからだろう・・・。

三軒家の第一の顧客は・・・歯科衛生士の夏木桜(はいだしょうこ)だった。

物件は・・・夏木桜の思い出がいっぱいの部屋だった。

「これは・・・ゴミ屋敷」

「いいえ・・・この方は・・・思い出の品物を捨てられないタイプ・・・思い出が多過ぎて収納不能になっているのですね」

「・・・はい」

「しかし・・・このままでは・・・内見ができません」

「・・・」

「一時保管のためにレンタルスペースを確保しましょう・・・よろしいですか」

「おまかせします」

三軒家は床に落ちた一枚の写真を拾い上げる。

それは・・・幸せそうなカップルの写真だった。

「この方は・・・」

「別れたんです・・・」

それが・・・引越しの理由と見定める三軒家だった・・・。

三軒家の第二の顧客は・・・一戸建てからワンルームマンションに住み替え希望の保坂博人(中野裕太)だった。その顔を見て三軒家の顔に微かな驚きが浮かぶ。

お茶の間には秘されるが・・・博人こそ・・・桜の別れた恋人だったのだ。

捨てられない桜に対して・・・博人は・・・断捨離的なミニマリストだった。

日本人のメンタリティーには質素倹約から二つの方向性が生まれる。

ものを無駄にしないもったいないの心。

そして・・・あらゆる執着から逃れる世捨ての心である。

捨てられない女と何もかも捨てたい男の破局の後が「お引越し」なのであった。

もちろん・・・受け入れない、捨てる、こだわらないは・・・わびさびの精神や・・・一点豪華主義に連なるストイックへの傾斜である。

博人は広い家に家具らしい家具もなく一人暮らしだった。

「親も去り、兄弟も去り・・・この家も捨てようと決意しました」

「彼女も捨てましたか」

「捨てました」

「お客様に紹介したい物件があるので・・・今夜、内見いかがでしょうか」

すでに・・・売りこみ計画立案が成ったらしい三軒家だった。

庭野は・・・三軒家と行動を共にしながら・・・肝心なことが見えていないのである。

無能だからである。

しかし・・・それはあくまで「家を売る能力」を三軒家と比較した場合だ。

庭野にも「誠心誠意」とか「謹厳実直」とかあまり役に立たない能力はあるようだ。

けしてシラスのように「怠惰」でもなく布施のように「倦怠」でもない。

社会は「怠惰」に対しては批判的だが・・・「無能」に対しては優しい面もある。

ただ「生きているだけの存在」を「無用」だから「処分」することは許されないことなのである。

しかし・・・「存在」のもたらす「苦痛」に耐えきれず・・・「常軌」を逸するのはままあることである。

そういう人間を責める時・・・人はわりきれない「何か」を感じる場合がある。

会社に「家庭」を投影している屋代課長にとって・・・無能な庭野や・・・足手まといのシラスもかけがえのない存在なのだな。

中間管理職として・・・それが有能なのか無能なのかは意見が分かれるところだろう。

そして・・・家庭的に言えば会社の中で・・・・誰よりも働く女性は・・・屋代課長にとって・・・アレなのである。

「私と一緒に子供たちの面倒をみてくれ」はプロボーズの言葉なんだな。

屋代課長の妄想的にはそうなるのだな。

一方、エースの足立は亀のリクちゃんをこよなく愛するマダム(辺見マリ)に販売価格一億一千万円のサンルーム付物件を即金一億円で販売する。

屋代課長も「パパパパパーヤ」とフォローするのだった。

しかし・・・トイレ・バスルームが二つある外国人物件は・・・苦戦中である。

八戸の英語力も・・・ロシア人夫妻には通用しないのだった。

「ハロー」

「ロシアは世界で一番偉い、ドーピングしようが、他国を併合しようが思いのままだ」

「・・・」

「こんな物件、くそくらえだよ」

「ハラショー」

だが・・・「トイレと風呂がふたつある大家族用」と「セールスポイント」を変更した三軒家は素晴らしいインターネットの世界で情報を拡散させるのだった。

たちまち・・・「問い合わせの電話の嵐」である。

「明日・・・物件は必ず売れます」

「・・・」

「売ったのは布施さんでも八戸さんでもなく・・・私です」

蒼ざめる屋代課長だった。

こうなったら・・・行きつけのBAR「ちちんぷいぷい」のママ・珠城こころ(臼田あさ美)に逃避するしかないのだった。

昭和のホームドラマでは家庭に居場所のない夫はそうするものなのだ。

森繁久彌とか船越英二とかな。

そういうノスタルジーが投影されているよね。

「ちちんぷいぷいふぁいんふぁいん」

「僕の奥さんはねえ・・・土日に夫婦でショッピングにいきたかったんだよね・・・だから土日休みの男の元へ・・・家具と一緒に行っちゃった~」

「赤い靴はいてたんですね」

ムード歌謡から童謡へ・・・退行していく屋代課長だった。

運命の再会をする桜と博人。

「捨てられない女」と「捨てたがりの男」は心とはうらはらに体の相性は抜群らしい。

たちまち・・・情欲に点火するのである。

「あなたには・・・売りません」

「行こう・・・五階だろう・・・僕がついている」

「でも・・・」

「僕には神様のささやきか聞こえる・・・君と僕は結ばれる運命だ」

「だけど・・・私は捨てられない」

「大丈夫・・・僕がついている・・・きっと捨てさせてみせるよ・・・そしてこの部屋は僕が買う」

「ヒロくん・・・」

「サクラ・・・」

いや・・・結婚するなら売らなくていいんじゃないか。

「あの・・・これ・・・記念品のスーモじゃなかったスモーくんです」

庭野を無視して熱烈キスを監視する桜と博人。

何故か・・・凝視する三軒家。

単に・・・ターゲットを観察しているのかもしれないが・・・秘められた三軒家の心の中には「そういうこと」への関心が渦巻いているのかもしれない・・・。

「これで・・・よかったんでしょうか」

「作戦はまだ・・・始ったばかりです」

「え」

「馬鹿・・・だから庭野には家が売れないのだ」

「・・・」

翌日・・・愛し合う二人は・・・「捨てるもの」と「捨てないもの」を巡って喧嘩を始める。

「それは・・・ヒロくんと最初のデートの時の・・・それはヒロくんと最初のキスをした時の・・・それはヒロくんと最初に焼き肉した時の・・・それは運命の再会をした夜に不動産屋さんがくれたスーモじゃなくてスモーくん・・・」

「毎日が記念日か」

スピリチュアルな傾向の強い博人には・・記念品(物質)に拘る桜が我慢できないのだった。

博人が変な石を買わされる可能性は高いよな。

桜もな・・・。

本質的に似たもの同志だよな・・・明らかに依存体質だものな。

桜と喧嘩別れした博人の前に怪しいアラビアンな占い師が現れる。

「あなたの運命の色を示します・・・一枚、オープン」

スピリチュアルなもに弱い博人はカードを開く。

カードの示す色はブルー。

再会した桜の着ていたドレスの色である。

「それがあなたの運命の色・・・以上、オワリ」

もちろん・・・カードはすべてブルーなのである。

しかし・・・運命大好きな博人はたちまち暗示にかかるのだった。

明らかにある種の人々をおちょくっています。

売れ残った宅間とシラス担当の五坪の狭少一戸建て。

庭野にトラックで・・・「あるもの」を搬送させる三軒家。

「あるもの」の搬入を命じられたシラスは・・・屋代課長にSOSを発信する。

そして・・・博人は物件の内見にやってくるのだった。

「僕は・・・マンションを希望しているのに・・・」

「まずは・・・ごらんください」

一階はバストイレと三畳の小部屋。

そのミニマル(最小)な感じに心奪われる博人。

二階はキッチンのみ。

そして・・・三階の六畳間には桜本人と思い出がいっぱいなのである。

「ここで・・・精神的にはありのままのお二人が暮らすことが可能です。一階で博人さんは捨てまくり・・・三階で桜さんはためまくる。そして・・・二階のキッチンで肉体的な合体が刺激的に実行可能です」

「素晴らしい・・・精神世界の棲み分けと肉体的な合体・・・実に哲学的です」

(落ちた・・・)と確信する三軒家。

「いかがですか」

「買います・・・もちろん桜コミで」

「では・・・2980万円です・・・お二人の元の住まいも私が売ります」

屋代課長が現地に駆け付けた時には売買契約が成立していたのだった。

「宅間さんでもシラスでもなく・・・私が売りました」

三軒家の勝利を祝賀して響き渡る(Olé・・・スペイン語のGo)・・・。

「・・・」

この場合・・・三軒家が言うのは歩合としての営業成績の話である。

庭野や、宅間そしてシラスも肉体労働はしたが・・・それは固定給の範囲内なのである。

三軒家は給料泥棒を許さないのだ。

「でも・・・六畳間ではいつか・・・思い出があふれだすのでは」と危惧する庭野。

「家が売れた後の問題は自己責任です。私の知ったことじゃない。私の仕事は家を売ることです!」

かっこいいぞ・・・三軒家・・・各課に一台必要なので・・・量産化してもらいたいよね。

そして世界は働く三軒家タイプの奴隷になるといいよね。

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2016年7月27日 (水)

あるべきものがない刑事(波瑠)恐怖を知らない君に(林遣都)殺人スイッチ物語(横山裕)素敵なマスクを作りたい(佐々木希)

皮膚をどうするつもりなのか・・・という人は多いかもしれない。

死体が腐敗するように・・・皮膚も腐敗するだろうと考えるわけだ。

しかし・・・皮ジャンというものがあるわけだ。

あれは・・・動物の皮膚でできているわけである。

焼き肉屋のカルビやロースが動物の肉であり・・・誰かが屠殺したものを食べている・・・つまり生き物を殺して食べていることを知らない子供のように・・・皮のサイフが動物の死体の一部であることを意識しない人も多いだろう。

もちろん・・・皮膚はそのままでは腐敗するが・・・なめし加工をすることによって皮革製品になるわけである。

皮膚から腐敗する成分である動物性の脂質を取り除き・・・植物性の油分を補う「なめし」の作業によって人間の皮膚も充分に着れるものになる。

まず、人皮を洗う必要があるがクリーニング屋はうってつけの職業なのである。

ただ・・・それを行うといろいろと現代社会では問題があるわけである。

あのアウシュビッツでは・・・以下略。

で、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子・第3回』(フジテレビ20160726PM10~)原作・内藤了、脚本・古家和尚、演出・宝来忠昭を見た。美しい女刑事と美しいシリアルキラーの対峙・・・素晴らしい。現実でとんでもない事件が起きて・・・いろいろとスリリングである。とにかく現実に憚って虚構の構築が妨げられることのないように祈るばかりだ。頭のおかしな人間のくだらない犯罪によって・・・美しい虚構の構築が台無しになるなんてことはけしてあっていいことではないのだ。ドラマの中で殺人犯がどんな残酷な殺人をしても誰も死なないのです。

さて・・・例によって・・・いろいろと難しい問題を喚起する異常犯罪者ものである。

第一に・・・サイコパスとは何か・・・という問題だ。

なにしろ・・・健全であること・・・という概念が忌まわしいものだからな。それは一種の妄想だからである。世界に健全な人間など一人もいないぞ。

人間の体にメスを入れる時にクールでいることができるのも・・・サイコパスの特徴の一つとされる。つまり・・・優秀な外科医はサイコパスなのである。「平気で人を殺せる人」は「上手に人を助ける人」でもあるわけである。

サイコパスは残忍な人殺しであると断定してはいけない。

心療内科医の中島保(林遣都)が「蛍光灯ベイビー」が必ずしも殺人鬼になるわけではないと言うように・・・サイコパスが必ず殺人者になるわけではないのだ。

中島についていえば・・・「プロファイリング」の問題がある。

厳密な意味で・・・中島がしているのは・・・統計的手法に基づく犯人像の絞り込みであるプロファイリングではない。あくまで心理学的な考察による犯人像の洞察である。あえていえば中島式直感プロファイリングということであろう。

つまり・・・中島は・・・単に神がかって犯人のタイプを言い当てているわけである。

これは・・・ドラマだから許される天才の仕事だ。

一方の主人公の相棒・東海林泰久刑事(横山裕)が超超超なんでも知ってる情報屋を飼っているのと同じ・・・虚構の手法にすぎない。

さらに・・・いよいよ・・・主人公の藤堂比奈子(波瑠)の特性が語られる今回。

「心を持たないで生まれてきた」とはどういうことなのか・・・である。

人間の精神には感情があると言われる。

それはおよそ・・・四歳くらいまでには一種の機能として発達すると言われている。

しかし・・・感情とは何か・・・については現代科学では実は明らかではない。

脳科学もその・・・周辺にようやく到着した段階である。

心理学者や哲学者たちは・・・「感情」について分類的に語って来た。

「喜怒哀楽」は古典的な分類である。これに好き嫌いを加えた六種類。さらに驚きや欲望を加えた八種類と「感情」の種類は拡大する。それらを組み合わせた嫉妬や絶望、優越感や劣等感など複雑な「感情」は増殖していくのである。

さらに・・・「感情」が何かを表現できない疾患や、「無感動」という精神の状態もあるわけである。感情がなければ「共感」もできないのだ。

今回・・・主人公の設定は・・・「理性」だけの「精神」のようなものだろう。

抜群の知性で・・・判断力は持つが・・・いついかなる時も感情的にならない人間である。

一種の超人であるが・・・社会性に問題が生じるわけだ。

愚かな人間の集団は・・・「人情」を重んじ・・・異物を排除するからである。

「親が死のうがペットが死のうが哀しまない」と「人間扱い」されないわけである。

「あなたは・・・何故・・・殺人者にそれほどまでに興味があるのですか」

中島は比奈子に問う。

比奈子は護身用のナイフを取り出した。

「私はこれで正当防衛をするつもりです・・・そのために刑事になったのです」

「あなたの方が殺されるかもしれない・・・怖くないのですか」

「・・・」

中島は・・・比奈子の躊躇いの理由を洞察する。

「まさか・・・あなたは・・・恐怖というものが・・・わからないのですか」

比奈子は沈黙でそれを肯定した。

「克服したのではなくて・・・最初から」

「はい」

「喜怒哀楽は・・・」

「ありません」

「それは・・・辛かったでしょうね」

「辛いという気持ちがどんなものか・・・わかりません」

「なるほど・・・」

「私は知りたいのです。私のような人間はいつか人を殺すのか。殺人を犯す人間の衝動と・・・心を持たない私は・・・同じタイプなのか」

「心を持たない人間などいませんよ・・・あなたは少し・・・変わっているだけ」

「そうなのでしょうか」

「そうですとも」

しかし・・・比奈子は同意しなかったし・・・中島も自分の言葉に説得力がないことを感じている。

中島にとって・・・比奈子は特殊で・・・非常に興味深い精神の持ち主だったのである。

比奈子は・・・東海林刑事の妹が殺害された事件について調べた。

未解決事件ではなかったのでデータを取得していなかったのである。

「解決済みの事件のデータも取得するべきだ」と比奈子の理性は判断した。

資料室は異様な冷気に包まれた。

比奈子の飲みかけのコーヒーはカップごと氷結している。

冷凍された家族に囲まれたケンジ(間宮祥太朗)が語りかける。

「どうやら・・・君を理解する人が現れたみたいだね・・・母親に続いて二人目かい」

「さあ・・・どうかしら」

「僕の家族になれば・・・よかったのに」

「悪いけど・・・あなたにもう興味はないの」

「そうだね・・・新しい事件が起こるから」

「・・・」

「今度こそ・・・君も人殺しになるかもしれない」

比奈子は振り返る。

そこにはただ母親の遺品である七味唐辛子があるだけ・・・。

夢から現実に戻る比奈子・・・比奈子には死者を悼む気持ちも・・・喪失感もなかった。

比奈子にあるのは理性・・・あるいは知性のみである。

比奈子は想像する・・・感情を持つ人間の行いを。

「親しい人が死んだ時には哀しい顔をしなければならない」

感情を持たない人間を想像することは一般人にはなかなかに困難なのである。

「まだまだ演技力が不足している」

比奈子は冷静に自分を評価した。

夜のしじまをサイレンが引き裂く。

新しい事件が比奈子を呼ぶのだった。

戦前から放置されている・・・古い屋敷にバカップルが心霊スポットツアーを敢行。

死んで間もない遺体を発見してしまったのである。

警視庁刑事部捜査第一課の片岡啓造(高橋努)が率いる片岡班が臨場する。

遺体は四体発見された。

いずれも女性で・・・死体は損壊されていた。

「こりゃ・・・ひでえな」

片岡班長は呻いた。

「ディスプレーされてますな」と三木鑑識官(斉藤慎二)・・・。

「遺体はそれぞれ・・・両腕、両足、臀部、腹部を切断されています」と新人鑑識官の月岡真紀(佐藤玲)・・・。

「なんじゃ・・・そりゃ・・・」

「お気に入りのパーツを切り取って持ち去ったという感じですかね」

「これは・・・猟奇的な事件だな」

「猟奇的な事件の極みですな」

遺体の身元調査だけでも手不足が確実となり・・・捜査一課の合同捜査となった。

厚田巌夫班長(渡部篤郎)率いる厚田班も合同会議に参加する。

「遺体は・・・全裸の上に・・・ドレスやエプロンなどを着用していました」

「まるで・・・作品を展示したようですね」

「それぞれ・・・サイズはピッタリで・・・採寸されたオーダーメイドのようでした」

「既製品ではないと・・・」

「赤いドレスだけは・・・メーカー品ですが・・・それ以外については手作りの可能性があります」

「すると・・・犯人は・・・服飾関係者の可能性がありますね」

比奈子はイラストでメモをとる。

両手のない死体。両足のない死体。尻のない死体。腹のない死体。

メモを覗きこみ・・・刑事たちは顔を顰めるのだった。

「検死報告によれば・・・凶器は・・・鋏・・・しかも裁断用の可能性が高いそうです」

「被害者周辺の服飾関係者をあたれ」

「これ・・・羊たちの沈黙じゃないのか」

「はあ・・・」

「美しい女の皮膚に憧れて・・・人皮の衣装を作る性的倒錯者が犯人ってことだよ」

「なるほど・・・」

「被害者周辺の性的倒錯者もあたれ」

「一種の前衛芸術でもありますよね・・・キッチンではエプロンをつけた被害者・・・寝室ではネグリジェを着た被害者・・・死後の生活みたいな・・・」

「被害者周辺の前衛芸術家もあたれ」

刑事たちは捜査を開始する。

東海林とのコンビを強制解消された比奈子は倉島敬一郎刑事(要潤)と現場周辺の聞き込みを担当することになった。

「死体を切り取って犯人はどうするつもりでしょうか」

「さあ・・・」

「フランケシュタイン博士のように・・・モンスターを作るつもりなのかもしれませんね」

「笑顔で怖いこと言うなあ・・・君は」

比奈子の美貌に心ひかれている倉島刑事は一瞬たじろぐのだった。

「ここは・・・私の住んでいる家の近所ですね」

「物騒だな・・・君がよければバイクで送迎するよ」

めげない倉島刑事である。

「そんな・・・バイクに二人乗りするなんて恋人同志だけですよ」

比奈子の偏った常識披露である。

言葉を失う倉島刑事・・・。

二人の目の前で小学生のいじめ事案が発生する。

「そんなの・・・嘘だろう」

「嘘じゃないもん・・・私見たもの」

「じゃ・・・交番に行ってこいよ」

「・・・」

「やっぱり嘘だろう」

女子が一人・・・三人の男女に苛められているようだ。

思わず介入する倉島刑事だった。

「おいおい・・・君たち」

「変態だ」

「痴漢だ」

「ショタか」

「ショタって・・・」

三人は立ち去る。

「君・・・何を見たんだい」

少女は怯えて逃げ出そうとして転倒するのだった。

「遙香ちゃんに何をするの」

倉島刑事と吉田遙香(住田萌乃)の間に割り込む佐藤都夜(佐々木希)だった。

「警察を呼ぶわよ」

「私たちが警察です」と警察手帳を出す比奈子だった。

「あらあら・・・」

ダンス教室のインストラクターである母親の佐和(中島亜梨沙)の元へ遙香を連れていく一同。

「あなたは・・・」

「近所のクリーニング屋です・・・ボタン直しも仕立て直しもしますよ」

正体の一部を明かす佐藤都夜・・・。

明らかに犯人である。

犯人と言えば・・・まだ事件とはいえない「連続犯罪者自死の件」にも犯人がいるのがオーソドックスだろう。偶然ではすまされないしお茶の間も困惑するからな。

このドラマには何人かの警察協力者が配置されている。

中島とその上司である「ハヤサカメンタルクリニック」の院長・早坂雅臣(光石研)は心理検査を行う監察技官として容疑者や服役囚の面接を行っている。

自死になんらかの関与があることは匂い立っている。

現在は「連続自死」の謎を追う立場である 帝都大学医学部の法医学教授・石上妙子(原田美枝子)は「死後の画像診断」によって・・・自殺者たちが脳に類似した腫瘍を発生させていたことを突きとめるが・・・自作自演の可能性もある。

ついでに・・・万能情報屋(不破万作)も警察協力者であるが・・・知りすぎているので怪しいわけである・・・しかし、今回は前後篇仕立てのため登場できないのだった。まあ・・・きっとここは「ヤマさん」(ドラマ「太陽にほえろ」に登場する情報屋使いの刑事)へのノスタルジーなんだな。・・・ドラマ「ケイゾク」におけるゴリさんノスタルジーに対応しているのだろう。

比奈子と倉島刑事は吉田母子から重要な証言を得る。

「殺人事件のあった幽霊屋敷に雨合羽のお化けがいた・・・雨合羽のお化けは吉田家の前にも立っていた」という娘の遙香・・・。

近所の人間として事情を知るクリーニング屋の都夜に促され・・・母親の佐和はストーカーについて語る。

「インストラクターの収入だけでは・・・母子二人暮らしていけないので・・・夜はクラブでホステスをしています・・・そのお客の一人が・・・」

幽霊屋敷では・・・窓際で・・・足跡が採取されていた。

捜査線上に浮かぶ・・・佐和のストーカー・・・永山宗一郎(裵ジョンミョン)・・・。

都内に複数の不動産を持つ資産家の次男で・・・自称・ファッション・デザイナー、親の出資によるブティックを立ち上げつぶした過去を持つ男・・・殺された女性たちにつきまとっていた経歴を持つ・・・無職の男である。

「これ以上なく・・・疑わしいな」

「幽霊屋敷も・・・親が所有している不動産でした」

「殺害現場は幽霊屋敷の地下室だし・・・何か物証が出るだろう・・・」

「出ませんでした・・・」

「なんだって・・・」

たちまち・・・拘留期限は切れる。

金にものを言わされて佐和は被害届を取り下げる。

「あの男を野放しにしたら新たな犠牲者が出るかもしれません」

「もらったお金でこわい街を出ることができるの・・・娘にもっといい暮らしをさせたいのよ」

「・・・」

欲望もまた感情であると考えるものもいる。

比奈子には欲望もないのかもしれない。

食欲や・・・睡眠欲を持たない娘に食べることや規則的な睡眠の必要を教えた比奈子の母親の過酷な日々が偲ばれる。

好奇心や探究心もまた感情であると考えるものもいる。

「興味深い」という口癖も比奈子の母親・藤堂香織(奥貫薫)の躾の成果にすぎない可能性がある。

比奈子は母親の残した最後の命令「進め!比奈ちゃん」を忠実に実行している生体ハードウエアなのだ。

その卓抜した知能で・・・すべてを推測し・・・最適を選択する比奈子・・・しかし、感覚や肉体からある程度・・・切り離されている比奈子は「疲労感」も持たないのだ。

想像を絶する存在だな・・・。

感受性の豊かな遙香は近所の公園でブランコに乗っていた。

その振幅にそって揺れる比奈子の眼差し。

「引越しとなると・・・友達と離れて・・・さびしいわね」

「あんた・・・こわい」

「え」

「嘘っぽいから・・・」

「・・・」

遙香は直感的に・・・比奈子が「さびしさ」を知らないことを見抜いたのである。

「あの人と同じ・・・」

「え・・・」

「あの人もこわい・・・」

「それは・・・クリーニング屋の都夜さんのことですか」

「・・・」

すでに・・・比奈子も・・・彼女を疑っているわけである。

永山宗一郎が解放された直後・・・比奈子の携帯電話に・・・都夜から連絡が入る。

「佐和さんが・・男に車で連れ去られました」

あわてて吉田家に駆け付けた比奈子は昏睡状態にある遙香を発見する。

救急車とともに厚田班も駆けつける。

「お前は・・・病院で娘に付き添え」

厚田班長に命じられる比奈子。

「私も店の車で行くので・・・一緒にどうですか」と誘う都夜である。

クリーニング店に寄った比奈子は・・・都夜の勧める茶を一服する。

落ちつくために茶に七味唐辛子を入れて飲むのは人間らしいルーティーンなのだ。

比奈子はすでに・・・都夜を容疑者として見ているわけだが・・・感情を持たない比奈子に「警戒心」は希薄で・・・恐ろしく無防備なのである。

彼女の超絶的な精神力は主に「人間のようにふるまうこと」に駆使されているのだった。

病院に向う車中で・・・厚田班長から「死体損壊事件の犯人像」を求められた中島からのメール送信がある。

「犯人は・・・女性の肉体に対する大きなこだわりを持つと同時に・・・女性としての生活に固執している傾向がある。従って・・・犯人は・・・女装趣味の男あるいは・・・女性である可能性が高い」

茶に含まれていた睡眠薬により・・・朦朧とし始めた比奈子。

「犯人は・・・女性に決まっています」

「え」

しかし・・・すでに比奈子は眠っていた。

都夜の美しく整った顔に浮かぶ・・・達成感。

幽霊屋敷に向った刑事たちは永山宗一郎の死体を発見する。

そこに届く・・・中島からのプロファイリングの結果報告。

「犯人は・・・女だと」

東海林刑事は中島からの着信に応じる。

「今・・・少し・・・忙しい」

「比奈子さんと連絡がとれないんです・・・比奈子さんから無言の電話があってから・・・」

「何・・・」

「そこに比奈子さんはいないんてすか」

「・・・あの女か」

東海林刑事の刑事の直感が・・・比奈子の危機を探知した。

「俺が守ってやらないと・・・」

焦燥感に苛まれる二人の男は合流した。

「僕が彼女を救ってあげないと・・・」と呟く中島の言葉を耳にする東海林。

中島の言葉には「感情を持たないことで生きることが困難な比奈子」の意味も含まれていることを東海林はまだ知らない。

恋愛ドラマなら単なる三角関係フラグである。

目覚めた比奈子は・・・後手に縛られて都夜の作業場にいる。

目の前で比奈子と同様に拘束されている佐和が身悶えていた。

「目が覚めたのね」

「・・・」

比奈子は無造作に床に置かれたバッグを引き寄せる。

「無駄よ・・・助けは呼べないわ」

都夜は比奈子の携帯端末を示した。

有能な異常者である都夜も傲慢さによる迂闊さを持っていた。

バッグの中のナイフの存在を無視したわけである。

おそらく・・・拳銃を捜したために・・・視野に入らなかったのだろう・・・。

比奈子は密かにナイフを確保した。

「あなたにいいものを見せてあげる」

仕上げられたように見える人皮のボデイスーツ・・・。

「知ってる・・・昔の人は唾液で・・・獣皮を柔らかくしたの・・・つまりそれがなめしの語源よ」

「・・・美しい皮を見て・・・欲しくなったのですか」

「そうよ・・・この人の背中の皮をもらったら・・・完成のつもりだったけど・・・あなたのお顔を見て・・・気が変わったの・・・私・・・マスクも作ることにしたの」

「私の顔の皮は・・・美しいのでしょうか」

「知ってるくせに・・・私にちょうだいね」

「とれるものなら・・・あなたの完全さを求める気持ち・・・あなたという完全を求めるために不完全であり続ける存在は・・・とても興味深い」

「何を言ってるの・・・とれるわよ・・・私・・・鋏捌きには自信があるの・・・」

二人の恐ろしい会話に恐怖で失神しかける佐和だった。

美しい二人の異常者は・・・類希な目力をぶつけあうのだった。

都夜は比奈子を怖がらせようとするが・・・比奈子は怖がることはできないので無駄なのである。

都夜は鋏を誇示する。

比奈子は背後に固定された手でナイフを握りしめた。

一部お茶の間を美しさでうっとりさせながら・・・つづく・・・である。

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2016年7月26日 (火)

好きな人と手をつなぐこと(桐谷美玲)真夜中の水族館(三浦翔平)俺のオムバーグ(山崎賢人)

今年も夏が来た。

夏が来るとなると胸騒ぎがするものだが・・・そうではないとなると・・・青春が終わったんだな。

青春とは夏を待つ季節だからな。

「ラヴソング」シリーズを毎回やるのかと・・・思ったら・・・今回はなしだ。

主題歌の方から圧力がかかったか・・・まあ・・・珠玉の名曲と比べられてもアレだからな。

今年は五輪の夏でソワソワもするわけである。

それにしても・・・ロシアのドーピング問題、選手村のトイレの水が流れない件・・・いろいろと騒然としているなあ。

まあ・・・始ってしまえばお祭り騒ぎはそれなりに盛り上がるのだろう。

なんてったってサンバがあるからな。

とにかく・・・ベタな夏のラブストーリーを月曜日は何も考えずに楽しみたい。

で、『好きな人がいること・第3回』(フジテレビ20160725PM9~)脚本・桑村さや香、演出・田中亮を見た。憧れの先輩・柴崎千秋(三浦翔平)に誘われ、千秋の経営する海辺の町のレストラン「Sea Sons」でパティシエとして働くことになった櫻井美咲(桐谷美玲)・・・。しかし、千秋の元カノである高月楓(菜々緒)が現れ美咲は委縮する。そんな美咲を千秋の弟でカリスマ・シェフの夏向(山崎賢人)は海へと誘いだし・・・とっておきの夕陽で慰めるのだった。しかし・・・千秋と楓がキスしているのを見た美咲の心は晴れたわけではないのだった。

だが・・・夏の湘南なのである。爽やかな風とともに・・・美咲はレストラン「Sea Sons」をオープンするのだった。

「Sea Sons」の人気メニューは「オムバーグ」・・・父親の代から受け継いだ秘伝のデミグラスソースが・・・客の心を鷲掴みにするのだった。

「ラヴソング」より「食い物」で釣る作戦か・・・。

一方・・・謎の美少女風の西島愛海(大原櫻子)はサーフショップ「LEG END」のオーナーである日村信之(大原櫻子)にレストラン「Sea Sons」の柴崎三兄弟について訊ねる。

「イケメン三兄弟か・・・長男は五軒の店舗を経営する青年実業家・・・次男は性格に難があるカリスマシェフ・・・三男は調理学校に通っているプレイボーイだけど・・・」

「タクミはいないのですか・・・」

「タクミ・・・それは聞いたことないな」

愛海は「タクミ」を捜しているらしい。

主人公にミステリアスな部分がないので・・・愛海が補完しているのだな。

噂をすれば影・・・なので三男の柴崎冬真(野村周平)が現れるが・・・愛海は逃げるように去っていくのだった。

「なんだか・・・美少女風だったよね」

「だね・・・なんでもタクミを捜しているらしい」

「タクミって誰?」

「さあ?」

ちなみに冒頭で通りすがりの井上苑子(18)、藤田ニコル(18)、武田玲奈(18)登場する。

冬真のプレイボーイぶりをアピールしていたらしい。シンガー・ソング・ライターにファッションモデルにグラビアアイドルってどういうトリオなんだ・・・。

いや・・・考えるな・・・感じるんだ。

外出から戻った美咲は・・・柴崎家の玄関先で・・・冬真と・・・調理学校の同級生である二宮風花(飯豊まりえ)がキスしているのを目撃して思わず身を潜めるのだった。

「学校やめるなんて・・・冗談でしょ」

「そんなこと言ったっけ・・・」

二人の会話を聞き流し・・・風花が去ると・・・美咲は冬真を問いつめるのだった。

「彼女のことが好きなの」

「別に・・・」

「でも・・・キスしていたじゃないの」

「好きでなくたってキスぐらいするさ・・・外国じゃ・・・挨拶の一種だろう」

「・・・外国では・・・」

留学中の楓が千秋とキスしていたのは・・・挨拶だったのかもしれないと考えなおす美咲である。

「それじゃ・・・ボクとキスしてみる?」

「しません・・・」

「美咲ちゃんは・・・好きじゃない人とキスしたことないの」

思わず・・・夏向の強引なキスを思い出す美咲。

「おやおや・・・あるみたいだね」

「違います」

ちなみに美咲は二十代だが・・・心は中学生なのだった。

童貞・・・じゃなくて処女かっ。

もう・・・そんな設定ばかりだなっ。

脚本家の考える普通の二十代の女性は女子なんだなあ。

いくつになってもかわいい女というのは物凄い幻想だからな。

それは・・・いい年して・・・という攻撃からの耐久力を求められるのである。

どんな女性でも感情移入できる主人公を求めることは大切だが・・・そこにはうらやましさや・・・そうなってみたいと感じさせる魅力を付加する必要もある。

一回目、二回目ではパティシエとしての能力が強調されていたが・・・今回は「味のわかる女」というだけである。起承転結で言えば「転」にあたる今回・・・「ラブソング」という「恋」に対する憧れや、「パティシエ」という生きるための武器を・・・ひっこめて・・・「ただの女子」を強調したのは失敗だったと思う。もう少し上の視聴率を狙ってせっかくついたお客を逃がしてどうする。今や・・・月9はフタケタとれたら満足しなければならないコンテンツというのが前提だぞ・・・。

もはや・・・女湯が空になる時代ではない。

前世期の話かよっ。

まあまあ・・・夏ドラマなんだから・・・そんなに本気と書いてマジにならなくても。

ああ・・・そうですか。

オーソドックスな展開では・・・主人公の美咲に対してヒロイン・ポジションは夏向である。

主人公は初恋の人である千秋を追いかけているが・・・いつしか・・・夏向を愛しく感じることになるという展開である。

そういう予定調和をどこまで崩すかが腕の見せ所になるわけである。

もちろん・・・話を破綻させる手はいくらでもある。

夏向は主人公を好きになるが・・・最後は千秋と美咲のゴールを祝福するという主人公とヒロインのポジションチェンジ。

誰も予想しない冬真とのただれまくったゴール。

全員と関係してしまった美咲が誰の子供かわからない子供を出産するクライマックス。

もはや「月9」ではないぞ・・・。

とにかく・・・男と女のラブゲームでは「気持ちのいいことしよう」が合言葉である。

なんてったって、恋愛は悪いことである。

たとえば・・・お父さんが女にうつつをぬかし、仕事もせずに家に帰ってこない。

お母さんが男に首ったけで仕事もせずに家に帰ってこない。

子供が恋に夢中で勉強もせずに家に帰ってこない。

家庭は崩壊し御先真っ暗だ。

とはいえ・・・恋愛して子作りしなければ人類は滅亡する。

人間に仕組まれた「自然」という神の壮大な罠である。

ものごとというものは・・・すべて極端であってはいけないというのが基本だ。

日常では折り合いこそが大切なのだ。

そこそこ仕事をしてそこそこ恋愛する。

そういう生き方こそが安心安全なのである。

そんなのなんだかみみっちい。

ちっとも面白くない。

いけないことがしてみたいと思う年頃がある。

思うだけでしないのが・・・まともな人間だと考える人々がいる。

ドラマはそういう人々の夢の世界でもある。

前回は・・・夏向が「盗んだボート」で美咲に「素晴らしい夕陽」を見せるのだ。

「犯罪行為」は「いけないこと」の象徴である。

なにしろ・・・本当の恋愛で生じる痴態は本来、「子供には見せられないもの」だからだ。

「恋愛」と「殺人」はものすごく似たもの同志なのである。

頭のおかしな人が無差別殺人することと好きでもない人と愛し合うことは同じだからだ。

・・・おい、脱線しているぞ。

とにかく・・・今回は「いけないデート路線」をお相手を変えて主人公がエンジョイするわけである。

結局・・・アトラクションとしての恋愛を描くレベルなんだなあ。

とにかく・・・夏向が・・・美咲を本気で愛しはじめ・・・美咲が千秋ではなく夏向をパートナーとして選択することが・・・ナチュラルに描ければ・・・素敵なことだと考える今日この頃なのである。

まとめかっ!

厨房に夏向。フロアに千秋と美咲という物凄い少数精鋭で観光シーズンの海辺のレストランがまわるかどうかは・・・別として・・・戦い済んで陽がくれる。

夏向が美咲に出すマカナイは「ミニ・オムバーグ」である。

まあ・・・スレンダーな桐谷くんなら充分の量だな。

「足りません」

「材料費が高騰してんだよ」

「・・・」

そこへ・・・殺人鬼ではなくピアニストの楓がやってくる。

思わずしゃがみこみ、厨房器具の影に隠れる美咲。

「殺意でも感じたのか・・・お前は小動物なのか」と夏向。

「一杯どう・・・結婚式の幹事としての打ち上げに」と千秋を誘う楓。

「じゃあ・・・美咲も一緒に」と美咲を誘う千秋。

夏向に背中を押されて穴から飛び出した美咲は・・・。

「せっかくですから・・・お二人で・・・」と心にもないことを言うのだった。

バーで楓は・・・「復縁」を千秋に迫るが・・・やんわりと拒絶されてしまうのだった。

美咲を障害物と認定した楓は・・・「抹殺モードの安全装置」を解除するのである。

沸騰する「サイレーン」愛好家の一部お茶の間の皆さん・・・。

潮風に吹かれるテラスに美咲を呼び出した楓。

「お友達になりましょう・・・」

「え」

「これは・・・結婚式のケーキの御礼」

公認の「呪いのブレスレット」である。

「ええっ」

「私とおそろいなの・・・」

「えええ」

「わたしねえ・・・家族に恵まれていなくて・・・そんな時、いつも千秋が心の支えだった・・・留学して・・・離れてみてわかったの・・・千秋がいない人生なんて虚しいって・・・」

「・・・」

「あなた・・・好きな人いるの」

「・・・いません」

本当のことなんか言えない空気が醸しだされています。

「じゃあ・・・私と千秋のことを友達として応援してくれないかしら・・・」

「・・・はい」

肉食獣を前にうつむく草食系である。

「そんなのダメですよお」

後輩の石川若葉(阿部純子)に電話で恋愛相談をする美咲である。

若葉は鍼灸エステ中で顔面針だらけで応答するのだった。

世にも恐ろしい光景である。

スタッフの誰かが奇妙な拘りを持っているようだ。

「次回のロケで針を刺してもいいですか」

「針を・・・」

というようなやりとりがあったわけだからな。

「女には好きな男を好きな女を探知するレーダーが完備されていますからね・・・GPSをとりつけて駆除する方向ですよ・・・恋愛の基本じゃないですか・・・簡単に排除されてどうするんですか・・・」

「でも・・・」

自己防衛本能が強すぎておかしなことになっている美咲なのである。

そんな臆病者を上から目線で叱咤する夏向。

「簡単にあきらめるのは・・・大切なものを想う気持ちが軽かったってことだよ」

「重い女は嫌われるのでは」

「体位に制限ができるからな・・・」

「体重のことなら自信があります」

「し・・・それは大きな声で言ってはいけない」

一方、自信過剰の日村から・・・業務用デミグラスソースを推奨された夏向は・・・材料費のことで千秋が悩んでいると知り・・・愕然とする。

味を落して価格で勝負するべきなのか・・・問題である。

美咲が恋に・・・夏向が仕事に悩みを抱えているところで・・・千秋が「日曜日のおでかけ」を伝える。

「デートのお誘い」と考えた美咲は楓の呪いのブレスレットの重みに悩むが・・・結局、「結婚式のケーキの御礼」で・・・料理を担当した夏向への約束のサーフボードの受け取りを兼ねての「おでかけ」だと判明する。

千秋は・・・弟思いの兄なのだった。

「昔・・・マウンテンバイクをねだったら・・・兄貴がバイトして買ってくれたんだ」

そこまでするのは・・・何か理由があるという暗示である。

まあ・・・そういう兄弟もいるけどな。

同性愛者なら・・・弟を可愛がるのはカムフラージュになるしな・・・おいっ。

おでかけ先は「江の島」だった・・・地元民にとっては近所の公園に散歩レベルである。

しかし・・・「デートではない」と言い聞かせて「おでかけ」した美咲ははしゃぐのだった。

砂浜で千秋の足跡を踏み、江の島神社に詣で、海老煎餅を食べ、ラムネを飲む。

ウキウキワクワクのホリデーなのだった。

高揚した美咲は業務用のデミグラスソース問題で悩む夏向にアドバイスするのだった。

「簡単にあきらめるのは・・・大切なものを想う気持ちが軽かったってことなんじゃないの」

お約束のブーメラン的なお返しである。

痛いところを突かれて脱落する夏向。

最終目的地となったエノスイこと新江ノ島水族館で二人きりになってしまった美咲と千秋。

もはや「デート」なので「呪いのブレスレット」が呪縛効果を発動するのだった。

「さあ・・・行こう」

「いけません」

美咲は千秋を残して走り出すのだった。

「どこに・・・まさか・・・ポケモンをゲットするつもりじゃ・・・」

「女のケジメです~」

楓を求めて三千里である。

ピアニストとしてアルバイトする店で楓をキャッチした美咲。

「私・・・嘘をついてました」

「・・・」

「私・・・千秋さんが好きなんです」

「・・・」

呪いのブレスレットを楓に返却する美咲。

「これからは・・・友達ではなく・・・ライバルでお願いします」

「・・・」

無言の楓様ほど・・・恐ろしいものはないな。

「変な子」ぐらいつぶやかせてやってくれ。

本人に言う前にライバル宣言っていよいよ小学生レベルか・・・。

時空間を越えてエノスイに戻ると夜だった。

夏期の最終入場時間午後八時をはるかに過ぎて閉館時間らしく閑散としたエノスイ。

もう・・・「一緒に見たらカップルになるペンギン」を見ることはできないのだ。

どんなペンギンだよ。

「いいポケモンが見つかったかい」

「千秋さん・・・どうして」

「君はきっと戻ってくると思ったんだ」

千秋はペンギン手袋で時間をつぶしていたらしい・・・。

「裏声がもう一つですね」

「修行します」

しかし・・・千秋は「いけないバカップルモード」で美咲をエノスイの通用口に導く。

「きっと・・・竹野内豊に似た飼育員や杉本哲太に似た上司はミーティング中なんだよ」

不法侵入した千秋と美咲は・・・夜の水族館の幻想的な光景をエンジョイするのだった。

「これは・・・いけないことなのでは・・・」

「いけないことほど・・・ドキドキするから・・・」

「ドキドキ・・・」

「もはや少年Aでも少女Aでもすまない年頃だけどね」

「新聞沙汰ですか」

「ごらん・・・このクラゲ・・・」

「内部機関がハートの形ですね」

「それが四つ集まると」

「四葉のクローバー・・・」

「これを真夜中に見ると幸せになるという伝説がある」

「本当ですか」

「今・・・俺が作った・・・」

「あらあら」

そこへ・・・お約束で現れる警備員。

千秋は美咲の手をとって逃げ出すのだった。

密着して物影に隠れ・・・心臓が口から飛び出しそうになる美咲・・・いつの時代の表現なんだよ。

夜の海岸に脱出した二人は・・・ちょっといい感じになれそうなデッキに寝そべるのだった。

星がきれいな夜なのだ。

「綺麗ですね・・・」

しかし・・・空腹のためにお腹が鳴ってしまう美咲だった。

「おかしいな・・・楽しいと・・・脳内麻薬物質が分泌されて・・・空腹を感じないはずなのに・・・」

「ごめんなさい」

「僕はちっとも腹ペコじゃないよ」

意味深なことを言う千秋である。

厨房では・・・夏向がデミグラスソースを作っていた。

「明日の仕込みに来ました」と美咲。

「まあ・・・食え」

夏向はオムバーグをサービスするのだった。

いつもの味である。

「美味しいです」

「何点だ」

Vサインを出す美咲。

「二点かよ」

「二百点です」

和気藹々の二人である。

美咲は・・・スマホで千秋の画像付インタビューを示す。

「ここ・・・読んでください」

「なんだよ・・・うっ」

そこには・・・。

(弟の作るオムバーグが一番の好物です)・・・という千秋の言葉が書かれていたのだった。

美咲の放つ恋のボディブロウらしい・・・。

その頃・・・謎の美少女風の愛海からの電話をとる千秋。

「タクミを知りませんか」

思わず電話を叩き切る千秋だった。

なんか・・・不気味だものな・・・違うぞ。

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2016年7月25日 (月)

関白殿下が得た安らぎを太閤様も遅かれ早かれ得るでしょう(長澤まさみ)

誰が殺した関白秀次・・・。

それは私・・・と秀吉が言った。

それは間違いないことなのだろう。

しかし・・・何故、そうなったのかは謎に包まれている。

戦国ミステリの一つである。

それに比べれば・・・真田昌幸の妻の出自が謎に包まれていることはそれほど問題ではないのだろう。

だが・・・それはそれで面白いわけである。

男尊女卑の時代にあっても・・・子を想う母、母を想う子の情愛は時に深い。

織田信長の偏執は・・・実母に愛されなかった生い立ちにあると考えるものもいる。

戦国を生き抜いた真田信之(信幸)にとっては実母の山手殿(ドラマでは薫とされる)は孝養を尽くす存在だった。

それゆえにわが母は今出川家(菊亭家)の娘という虚飾がなされたという推測も成立する。

秀吉などは母が日輪の子を宿したと言い張っていた。

信幸の父、真田昌幸には複数の側室がいたと考えられている。

弟の信繫が豊臣秀次の娘を側室にしたとすれば・・・秀次の室の一人、一の台の父が菊亭晴季であることから・・・菊亭家と真田家は無縁ではない。

ひょっとすると昌幸もまた菊亭家の娘を側室にしたのかもしれない。

それが山手殿の出自を飾るためのヒントになった可能性はある。

同様に・・・石田三成の舅である宇多頼忠の甥・宇多頼次(石田頼次)に昌幸の母親未詳の娘(趙州院)が嫁いでいることから・・・宇多頼次が娘の一人を真田昌幸に側室として送り込んだ可能性もある。

国衆から戦国大名に出世した真田昌幸の愛した女には・・・武田信玄の養女もいれば・・・宇多頼忠の娘も・・・菊亭晴季の娘もいた・・・そういう複数の女が・・・山手殿に仮託されているのかもしれない。

歴史は常に一抹の真実を含んでいるものだ。

誰が山手殿を生んだのか・・・。

それは私・・・と名もなき女が言う。

で、『真田丸・第29回』(NHK総合20160724PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・保坂慶太を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は主人公・真田信繫の正室(継室)とされる(大谷吉継の娘あるいは妹あるいは養女とされる)、後の竹林院の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ついに正室キターッ!・・・でございますね。それにしても高梨内記の娘・きりはいつになったら信繫の側室にしてもらえるのか。脚本家は彼女を愛しすぎて嫁にやりたくない父親の心境なのかもしれませんな。他の男にあの豊満な胸乳を愛撫なんかされてたまるかよ・・・なのでしょうか。きりもかなりすごいおとぼけキャラクターに設定されていますが・・・しっかりものようで実はくわせものだった梅といい、父・秀次を蔑んでいたたかといい、無邪気すぎるのか計算高いのか不明の春といい・・・なんか・・・全員がやっぱり猫が好きなあの女優を彷彿とさせるんですけど~。気のせいでございましょうかねえ。今回はあの夜に下駄を投げられて前歯を折る予定の・・・とり様の実家・河原家の継承者・綱家の出番多めでしたな。軽くウォーミングアップでしょうか。病は気からと申します・・・夏本番を前に画伯もご自愛くだされませ~。

Sanada029文禄四年(1595年)七月十五日、高野山にて豊臣秀次は切腹。木村重茲は京都山崎にて切腹。二十八日、豊臣秀吉は聚楽第の破却を命ずる。秀次の築城した近江八幡山城も破却され、居城していた京極高次は大津城に移る。八月十九日、前野長康、景定父子切腹。九月、秀吉は方広寺で大政所の法要を営む。十月、入京した秀吉が発病し伏見城に戻る。朝廷はお神楽を奏して秀吉の病平癒を祈願した。十二月、快気した秀吉は大坂城に入る。文禄五年(1596年)一月、秀吉の病が再発する。二月、再び快気した秀吉は大坂城で諸大名の出仕を受ける。五月、秀吉は秀頼を伴い入京。秀頼は初めての参内。徳川家康は正二位内大臣に任じられる。閏七月九日、伊予国で大地震。十二日、豊後国で大地震。十三日、京・伏見で大地震。伏見城、東寺、天龍寺などが倒壊、死者は千人を越えたとされる。朝鮮から帰国中の加藤清正は大坂城にいたとされる。秀吉は伏見木幡山に臨時の築城を命ずる。九月、秀吉は来朝した明使節と謁見し・・・明国が降伏していなかったことを知り激怒。交渉は決裂し、秀吉は再度の朝鮮出兵を命ずる。交渉役の小西行長は切腹を命じられるが前田利家などのとりなしで許される。十月二十四日、天変地異を理由に文禄から慶長に改元。福島正則は秀次の旧領地・尾張国二十四万石を受領。その他の旧領地も分割され石田三成ら奉行衆が管轄する。福島正則とともに秀次自刃の検使を務めた福原長堯(石田三成の妹婿)は一万石が加増された。前野長康の旧領は小出吉政(大政所の甥)に与えられた。

関白秀次の事件はキリシタンの小西行長の母・マグダレナから高山ジュスタ(高山右近の正室)を経て大坂城・細川屋敷のガラシャ(細川忠興の正室)の元へと届いた。

夫の細川忠興は朝鮮半島から帰国の途上にある。

屋敷には忠興の父・細川幽斎が滞在中である。

「父上様・・・関白殿下が・・・謀反の罪で切腹申しつけられたそうでございます」

幽斎は一瞬で事情を察した。

「案ずるでない・・・」

「けれど・・・わが夫は・・・関白殿下と懇意の仲・・・唐入りのための借金もございます・・・それに・・・ちょうが・・・」

「皆まで申すな・・・松井佐渡守を呼ばれよ」

「・・・」

細川家は秀吉の臣下の中でも格別の家柄である。

幽斎は今は滅びた室町幕府の直臣であった。

そして・・・ガラシャは・・・新参とは言いながら最後の将軍・足利義昭に仕えた明智光秀の娘である。

幽斎は謀反人の娘を守ることに慣れていた。

出征中の嫡男・忠興は・・・軍費を賄うために関白秀次から借金をしている。

「あの狐どもめが・・・何をたくらむかわかったものではないの」

幽斎は石田三成たち・・・秀吉側近の顔を思い浮かべていた。

「自分で自分の首をしめるような真似をしくさって・・・アホやないか」

まもなく・・・松井康之が現れた。

古き源氏の血を引く忍び武者である。

「三河の松井殿を頼って・・・家康殿にお願いの儀をお伝えせよ」

「徳川家に・・・」

「金子を用立ててもらわにゃならん・・・太閤は存外、吝嗇な性分や・・・金さえ返せば文句は言わんやろ・・・それに・・・もうひとつ・・・おちょうのことだ・・・」

忠興とガラシャの娘であるちょうは関白秀次の筆頭家老である前野長康の嫡男・景定に嫁いだばかりだった。

「前野父子は・・・腹切らされるかもしれん・・・そやから・・裁きが下る前に離縁させねばならん・・・それも家康殿に口をきいてもらうんや・・・」

「御意」

松井はすでに姿を消していた。

家康は伏見の徳川屋敷にいた。

三河松井衆の口添えで・・・伊賀の服部半蔵が松井佐渡守に応対する。

「それは・・・急を要しますな」

「なにとぞ・・・おとりつぎ願いたい」

「暫時、待たれよ」

服部半蔵正成の影武者である服部半蔵正長は座敷に松井佐渡守を残して消える。

奥の間では徳川家康が・・・本多正信と密談中だった。

正長と同じ半蔵の影武者である半蔵正時が退出していく。

「今度は誰が来た・・・」

「細川の御家中の松井殿でござる」

「そうか・・・金の相談じゃな・・・」

「それから・・・婚家の前野家のことでございます」

「前野の助命は難しいぞ・・・」

「前野家に嫁いだおちょう様の離縁の儀でございます」

「おお・・・あれは・・・美しい姫だったの・・・」

「両親が美男美女ですからなあ」と本多正信が受ける。

「なんとか・・・なりそうか」

「手配いたしまする・・・」

「そうか・・・細川には恩を売っておきたいからのう・・・」

家康は笑みを浮かべた。

「細川の使者には・・・おまかせあれと伝えよ」

「は・・・」

服部正長と入れ替わるように・・・服部正忠が現れる。

「今度は・・・誰じゃ」

「浅野家の御家中でございます」

「なんと・・・浅野もか・・・」

家康は恩義を売りまくった。

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2016年7月24日 (日)

ねらわれたファーストキス(黒島結菜)未来からの挑戦(竹内涼真)おいしくいただきました(菊池風磨)

21世紀を生きる人間にとって・・・20世紀のことは今や昔だ。

もはや・・・携帯電話のない世界を想像するのは難しい。

21世紀を生きる人間にとって・・・22世紀のことは死後の世界だ。

今、16才の若者が100才になっている世界である。

かってあった幻想の「貞操観念」はすでに世紀末以前から変容してしまった。

「結婚するまでは処女」とか「キズものになったので結婚できない」とか・・・もはや意味不明だろう。

しかし・・・いつの時代にも・・・処女性を重んじる人々はいる。

男女雇用機会均等法の世の中では童貞をこじらせたりもするわけである。

そして20世紀だって女の子は一番大切なものを好きな人に捧げちゃうのである。

「時をかける少女」における吾郎ちゃんサイドは・・・芳山くん・・・なんて女だ・・・という話なのだが・・・恋をしてはいけない相手に恋をしてしまうのはロマンスの基本である。

16世紀には「ロミオとジュリエット/ウイリアム・シェイクスピア」が存在するのだから。

で、『時をかける少女・第3回』(日本テレビ20160723PM9~)原作・筒井康隆、脚本・渡部亮平、演出・茂山佳則を見た。タイムリープ(時間跳躍)も想像を越えたテクノロジーの産物だが・・・記憶改変装置もまた凄いテクノロジーなのである。原作では明示されないが・・・この二つのテクノロジーは無関係ではない。このドラマの中では・・・いかにも「肉体」が時を越えているように見えるが・・・実際には過去の記憶が未来の記憶に上書きされているだけということもできる。ただし・・・「亀の件」では少し辻褄が合わないわけである。しかし・・・それもまた記憶の改変で説明可能である。時空間における瞬間移動と記憶の上書きが同時に行われ・・・瞬間移動の記憶が省略されてしまったということだ。今回・・・芳山くんは他人の記憶も上書きしてしまうわけだが・・・そういう超能力が発動されていると考えれば矛盾はない。まあ・・・辻褄が合わないと言い出せばキリがないが・・・ファンタジーですからっ。

とにかく・・・過去の記憶を改変できるのだから・・・現在の記憶の書き換えは・・・逆に簡単だとも言える。

ドラマの中では一方的に現代の人間が未来の人間に記憶を捏造されているようにも見えるが・・・あの「モノリス」のような装置は・・・「空間全体」に作用していると思われる。

人間の記憶を瞬時に読みとり、改変するわけである。

当然、読みとられた記憶は相互作用的に未来人サイドにも逆流する。

何故なら・・・周囲に溶け込むために・・・現代人の情報が未来人に必要だからである。

未来人が急速に「現代人の性愛」に傾斜するのは・・・流れ込んだ現代の情報に感化されてしまったからなのだ。

今回は未来の「大人」が未来の「若者」に忠告するシーンが登場するが・・・これは未来にも経験の差異による意見の相違があることを物語っている。

幼馴染の浅倉吾朗(竹内涼真)と良好な関係を築いてきた芳山未羽(黒島結菜)だったが・・・吾郎ちゃんが異性化することに戸惑いを感じる奥手の性格だった。

そこに・・・未来人のケン・ソゴル(菊池風磨)が介入し、二人の思い出を奪って深町翔平になりすましたことによって・・・芳山くんは変容する。

見知らぬ幼馴染は・・・恋の相手としてうってつけだったのである。

深町翔平の割り込みによって・・・吾郎ちゃんの告白作戦は瓦解し・・・時をかける少女となった芳山くんは・・・「吾郎ちゃんの告白」をなかったことにしてしまう。

やがて芳山くんは・・・すでに死んでしまった少女・松山実穂(高月彩良)の矢野和孝(加藤シゲアキ)への片思いを通じて・・・恋に目覚めてしまう。

吾郎ちゃんとの良い思い出を持ちながら・・・見知らぬ異性でもある深町翔平に芳山くんの心は急速に傾いていくのだ。

そして・・・21世紀の「恋」に魅了された深町翔平は欲望の赴くままに芳山くんのファーストキスを奪うのだった。

芳山くんはタイムリープでそれをなかったことにはできない。

なぜならば・・・すでに・・・芳山くんは・・・深町翔平に対する「恋の虜」になっていたからである。

こうして・・・未来人の介入による・・・吾郎ちゃんの失恋が始るのだった。

幼馴染の芳山くんに恋をした吾郎ちゃん。

芳山くんと同じ高校に通いたくてランクを落した吾郎ちゃん。

芳山くんと一緒にいたくてボート部に入部した吾郎ちゃん。

勇気を出して告白した過去を消されてしまった吾郎ちゃん。

ああ・・・可哀想な吾郎ちゃんなのである。

芳山くんの心の中で吾郎ちゃんは過去の人となり・・・深町翔平が意中の人となっていた。

夢の中で・・・彼女の髪を切るのは・・・吾郎ちゃんではなくて翔平になっている。

「あれ・・・吾郎ちゃんは・・・どこ?」

「吾郎ちゃん・・・って誰?」

吾郎ちゃんは・・・吾郎ちゃんは・・・翔平?

夢の中で真実が警鐘を鳴らす。

しかし・・・夢は妹の芳山那帆(石井萌々果)によって断ち切られる。

「お姉ちゃん・・・ごはんだよ」

芳山家はステーキだった。

本当は一人暮らしの深町奈緒子(高畑淳子)は精神を操作され・・・翔平のために西瓜料理を拵える。

翔平は・・・人間の精神を操作することになんの躊躇も感じない・・・。

なにしろ・・・21世紀の人間は・・・翔平にとって無縁の存在なのだ。

彼は・・・旅先で解放され・・・ルールを逸脱する旅人なのである。

つまり・・・「旅の恥はかきすて」・・・状態なのだった。

そんな・・・翔平の内面を知る術もなく・・・芳山くんは・・・新たに生じた恋心に悩むのだった。

唇を奪っても・・・彼女はタイムリープしなかった。

つまり・・・自分は受け入れられたのだと愉悦を感じる翔平だった。

そこへ・・・22世紀から一緒にきた研究者のゾーイ(吉本実憂)が現れる。

藤浦東高校3年6組の担任・矢野和孝は「君は・・・誰だ」と問い質す。

たちまち・・・例の装置で・・・教室内の人間の記憶を改変するゾーイ。

ゾーイは・・・最初からいるクラスメート・相原央として全員に認識された。

「何しに来た」

「先輩が・・・21世紀を楽しめって言ったんじゃないですか」

「・・・」

実質的なクラスの支配者である翔平は・・・自分と対等な存在に・・・微かに違和感を覚える。

だが・・・同時代人としての親近感がそれを中和するのだった。

ゾーイ/相原央は21世紀における唯一の同胞なのである。

幼馴染の翔平に親密に接する相原央に雌として心騒ぐ芳山くんだった。

「雅涼祭の参加についてだが・・・」

矢野先生は・・・ホームルームの時間に藤浦東高校の行事について意見を求める。

藤浦東高校は夏休み直前の七月二十四日に文化祭を行うのだった。

いや・・・それはスケジュール的にもう・・・夏休みじゃないか?

まあ・・・ファンタジーだからな。

どうしても・・・夏ドラマとしてそれをやりたいならしょうがないよな。

受験を控える三年生は自由参加である。

心境の変化によって思い出作りに積極的な・・・芳山くんは・・・クラスで参加したかったが・・・クラスメイトは消極的だった。

結局・・・3年6組は未参加と決まる。

第一の雅涼祭当日

ネットアイドルの大西敦美(八木莉可子)を中心に・・・パフォーマンスを展開する3年2組の舞台を見て・・・羨ましさを感じる芳山くんだった。

「私もやりたかったな・・・だってクラスみんなと思い出が作れるなんて・・・素敵じゃないの」

芳山くんの言葉に反応する吾郎ちゃん。

「うん・・・俺もそう思ったよ」

翔平も激しく同意するのだった。

「そうだ・・・アレで・・・やることにすればいい」

「アレって・・・」

斬新な展開で・・・すでに・・・芳山くんのタイムリーブ能力を吾郎ちゃんも翔平も知っているのだ。

二人は・・・芳山くんに歴史の改変を唆すのだった。

おい・・・未来人・・・歴史を変えるのはいけないことじゃなかったのか・・・。

だから・・・翔平はすでに現代人に感化されているのだよ。

「でも・・・みんな消極的だったし」

「俺たちが応援するよ・・・」

「わかった・・・やってみる」

芳山くんは時をかけた・・・。

第二のホームルーム

「みんなで・・・参加しましょう・・・」

「やるって何を・・・」

「それは・・・まだ決めてません」

「なんだかなあ・・・」

「吾郎ちゃん・・・なんとか言って」

「えええ」

「翔平・・・」

「えええ」

「この・・・裏切り者!」

屋上で二人を説教する芳山くん。

「二人が協力するっていうからタイムリープしてきたのに・・・」

「そうなの?」

「記憶にないな」

「だから・・・未来での約束よ」

「・・・」

とにかく・・・芳山くんに説得され・・・「演劇」をすることにした三人。

吾郎ちゃんは・・・自分がロミオになり・・・芳山くんがジュリエットになることを目論む。

せめて・・・舞台の上で恋人になりたかったのだ・・・。

吾郎ちゃん・・・。

だが・・・吾郎ちゃんが説得すると・・・たちまちクラスは一つになるのだった。

吾郎ちゃんの人望の厚さに打ちのめされる芳山くん。

なんだかとっても口惜しいのだった。

かわいいよ、芳山くん、かわいいよ。

しかし・・・役割分担は吾郎ちゃんの思惑通りにはならないのである。

☆キャスト(シャブリ様調べ)

ロミオ・・・浅倉吾朗

ジュリエット・・・相原央

乳母・・・矢野先生

修道僧ロレンス・・・深町翔平

モンタギュー(ロミオの父)・・・小池歩

モンタギュー夫人・・・奥田七海

キャピレット(ジュリエットの父)・・・西村匠平

キャピレット夫人・・・坂田遥香

☆裏方

脚本・・・風見梨佳

演出・振付・・・田淵真奈(永田優希)

小道具・・・長谷保(平岡拓真)

衣装・・・えりちん&おじょう

背景美術・・・芳山未羽

・・・なのである。

吾郎ちゃんは舞台の上でも芳山くんと恋人にはなれないのだった。

それはそれとして・・・大問題なのが・・・相原央だった。

22世紀訛りがきつい上に・・・21世紀の空気に鈍感なのである。

相原央のために・・・剣悪になる3年6組・・・。

「こんなことなら・・・僕がジュリエットをやった方がマシだ」と長谷保が言い出す始末である。

「一生懸命・・・徹夜で台本を覚えたのに・・・」と相原央は泣きだす。

悪気はないのである。

「こうなったら仕方ない・・・」とやり直しを決意する芳山くん。

「そうだな」と同意する吾郎ちゃんと翔平。

しかし・・・また一から説明するのが面倒な芳山くんは「亀方式」で二人を連れて過去へ遡上するのだった。

第三のホームルーム

今度こそは芳山くんにジュリエットになってもらいたい吾郎ちゃんだったが・・・。

変更された結果は・・・。

ジュリエット・・・深町翔平

修道僧ロレンス・・・芳山未羽

背景美術・・・相原央

・・・なのである。

しかし・・・相原央には天賦の画才があったのだった。

「凄く上手・・・」

感嘆するクラスメート一同。

順調に進行する「ロミオとジュリエット」の稽古。

近未来からやってきた三人はお好み焼き店「りぼん」に寄り道をする。

三浦浩(高橋克実)は翔平の言動から・・・察することがある。

そして・・・内縁の妻である松下由梨(野波麻帆)が三人が三角関係であることを見抜くと顔色を変えるのだった。

三浦は翔平と対峙する。

「お前・・・何世紀からきた」

「え・・・」

「俺もだよ・・・」

「なんですって・・・」

「こんな時代で何をしている」

「クスリを紛失してしまったのです」

「馬鹿な奴だ」

「でも・・・この時代の植物から必要な成分を抽出して再調合中です」

「研究者か・・・」

「はい」

「これだけは言っておく・・・この時代の人間を好きになってはいけない」

「あんただって・・・この時代の人間と・・・」

「俺はこの時代に残ることを決めたのだ」

「・・・」

「とにかく・・・忠告したぞ」

真意を伏せたまま三浦は去っていく。

もちろん・・・翔平は聞く耳を持たないのだった。

翔平は未来人である前に考えの浅い若者だったのだ。

「花の都・・・ヴェローナ・・・格式もあるふたつの名家は・・・古くからいがみ合い・・・流された血によって怨念を重ねてきた・・・そして・・・またひとつの悲劇が生まれる」

「ロミオとジュリエット」の幕は上がった。

一部腐女子が萌える・・・女装のジュリエット・・・。

とても・・・一週間で仕上げたとは思えない歌って踊るロミジュリだった。

敵対するモンタギュー家とキャピレット家にそれぞれ生まれついたロミオとジュリエット。

「おお・・・ロミオ・・・あなたはどうしてロミオなの」

障害があればあるほど燃えあがる恋のお手本。

「小鳥になって君に飼われたい」

「愛しすぎて苛め殺してしまうかも」

だが・・・追いつめられたジュリエットは狂言自殺に至る。

修道僧ロレンスから「仮死の毒」を入手するジュリエット。

成功を祈るロレンスをここぞとばかりに抱擁するジュリエットだった。

舞台袖で見守る吾郎ちゃんは・・・芳山くんを思う存分抱きしめる翔平に・・・激しく嫉妬するのだった。

しかし・・・会場は拍手喝采である。

いよいよ・・・クライマックス。

仮死状態のジュリエットを発見して・・・自害するロミオ。

蘇生したジュリエットは・・・愛しいロミオが死んだと知って後を追うのだ。

さいごの花道を進むロミオ・・・。

しかし・・・その頭上に・・・体育館名物の忘れられた天井のバスケットボールが落下する。

吾郎ちゃんは気絶。

慌てたスタッフが舞台美術を破壊し、翔平の衣装が引き裂かれる。

大惨事である。

また・・・やりなおし・・・かと思われたが・・・会場は演出と思い熱狂するのだった。

吾郎ちゃんが気がつくと・・・一同は失敗を和やかに受け止めるのだった。

失敗こそは・・・青春の一ページだからである。

海岸での打ち上げパーティー。

調子に乗った翔平は・・・一同の前で・・・芳山くんに愛を告白する。

芳山くんは吾郎ちゃんを窺うが・・・翔平の求愛を拒むことはできない。

差し伸べられた翔平の手をとる芳山くん。

クラスメートたちはノリノリで二人を祝福するのだった。

いたたまれない吾郎ちゃん。

「キス」とはやし立てるクラスメートたち。

吾郎ちゃんの前で芳山くんは翔平とキスをする。

世界が崩壊する音を吾郎ちゃんだけが聞いていた・・・。

これほどまでに・・・吾郎ちゃんの悲哀を描き切った「時をかける少女」があっただろうか・・・。

愛はいつも残酷だ。

この世で結ばれない二人は・・・あの世に逃げ出す他ないのである。

愛した人に愛されて幸せを感じる芳山くん。

その心に吾郎はいない。

愛した人の思い出をたどりたくなった芳山くんは・・・思い出の古い写真アルバムを手にとる。

翔平とは幼い頃から・・・ずっと一緒だったのだ。

だが・・・アルバムには・・・翔平の写真は一枚もなかった。

そこにいるのは吾郎ちゃんだけ・・・。

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2016年7月23日 (土)

追いかけて熱川(向井理)バケモノの子はじめてだ(木村文乃)男と女の物語(佐藤二朗)

ポケモンゲットだぜの日である。

ついに素晴らしいインターネットの世界からの侵略が始ったらしい・・・。

テレビ朝日はドーピング問題の際中にもロシアワールドカップの告知を流し続けるわけだが・・・また痛い目に遭うんじゃないか? ・・・西側世界がボイコットしたモスクワ五輪の時のようにな。

まあ・・・いいか。

世界は所詮、ルール作り戦争の舞台だからな。

裏番組の如何にかかわらず・・・フタケタ視聴率が遠いこのドラマ・・・。

ま・・・いいじゃないか・・・お茶の間はお茶の間・・・テレビはテレビだ。

一目でいかがわしいとわかる候補者や・・・とんでもないやつが自称・公共放送で演説するシュールなこの期間。

正気を保つのって難しいよね。

で、『神の舌を持つ男・第3回』(TBSテレビ20160722PM10~)原案・堤幸彦、脚本・櫻井武晴、演出・伊藤雄介を見た。バラエティー・ショーからキャリアを始めた企画者なのでコンセプトは明白である。二時間ドラマを一時間で・・・である。もちろん・・・そのために「意外な犯人」は存在せず・・・二転三転もなくなるが・・・「テンポ」というよくわからないものを求める人々には「話」が早いのかもしれない。まあ・・・そういうバカはどんなものでも自分に合わないと感じればテンポが悪いと言うわけだがな。・・・おいっ。・・・結局、パロディーというものはニヤニヤさせてなんぼである。そういう意味では今回は結構、ニヤニヤできたぞ。

夜空に満月・・・そしてそびえ立つ天空温泉ホテル「まんげつ伊豆」・・・。

ホテルの宴会場では・・・謎の温泉芸者・ミヤビ(匿名希望)が舞い踊る。

従業員用の小部屋では・・・男と女が密会中である。

国内有数のホテルチェーン「まんげつ」グループの御曹司で「まんげつ伊豆」の支配人(東根作寿英)の妻で・・・「まんげつ伊豆」の女将である裕子(森脇英理子)・・・。

そして・・・裕子を強請に来たのが・・・いかにも身を持ち崩した感じの石破(谷田歩)・・・。

二人は三年前に裕子が御曹司と結婚した時に・・・切れたのだったが・・・男は金をせびりに来たのである。

「こんなはした金じゃ・・・帰れねえな」

「いくら・・・欲しいの」

「俺のみじめな三年間を埋める金額だよ・・・女将さん・・・いやさ裕子」

その頃・・・伝説の三助・朝永平助(火野正平)の孫である人間成分分析器・朝永蘭丸(向井理)、古物の行商人・甕棺墓光(木村文乃)、そして宮沢賢治の心象スケッチを諳んじる宮沢寛治(佐藤二朗)のトリオは・・・バナナ園ワニ園恐竜博物館でお馴染みの夜の伊豆・熱川温泉郷を走っている。

「どうして・・・いつもガス欠になる」

「燃費のことは言わないでください・・・タイアップなので」

「セクシーローションがガソリンの代わりになればねえ」

「セクシーローションとは?」

「はあはあはあはあ・・・」

ミヤビをめがけて走る蘭丸の息使いはいやらしい。

「はあはあはあはあ・・・」

「あんあんあんあん・・・」

石破が隠し撮りあるいはハメ撮りした・・・若き日の女将の痴態動画が脅迫の種である。

「こんなもの・・・買い取ったって・・・これきりにならないでしょう」

「選ぶのは・・・あんただ・・・こっちにだって情けはあるよ」

「金は用意するわ・・・今夜は泊っていくでしょう・・・」

「ふふふ・・・ものわかりが良くて・・・助かるぜ」

ようやく・・・「まんげつ伊豆」に到着したトリオ。

「ミヤビさん」

「お客さん」

「ミヤビさん」

「お客さん」

蘭丸と従業員のかけあいがあって・・・ミヤビがすでに去ったと知るお約束の展開。

今回の仲居(宍戸美和公)はまともらしい。

ちなみに・・・今回の着せ替え甕棺墓くんは横須賀どぶ坂ギャルズ風(Ⓒ九里みほ)であるが・・・これは終盤のフリになっている。

「電話で待っていてくれと頼んだのに」

「お伝えしたのですが・・・お急ぎの御様子でした・・・」

これぞ美人女将の裕子が応対する。

例によって・・・宿泊代を「蘭丸三助」で賄うトリオだった。

「明日・・・女性客の団体さんが入っているので・・・お願いします」

旅の汗を流そうと展望大浴場に向かおうとする甕棺墓くん。

しかし・・・「大浴場は・・・午後九時までなので・・・ご利用できません」

「そんな~」

「朝は午前六時から入浴可能ですから・・・」

だが・・・女将には恐ろしい計画があったのだ。

客室に泊まった石破を酔わせ・・・深夜の大浴場に呼び出す女将・・・。

監視カメラの映像で・・・石破が大浴場に入ったことを確認した女将は走り出すのだった。

・・・そして、翌朝。

一番風呂を目指して大浴場「天空温泉」に向うトリオ。

「男湯と女湯があるなんてどういうこと」と甕棺墓くん。

「普通のことだ」とツッコミ担当の宮沢。

仕方なく、甕棺墓くんは二人と別れる。

大浴場を堪能する蘭丸と宮沢。

蘭丸は温泉を味わい飲み下す。

「飲むなよ」

「新鮮ですよ・・・」

しかし・・・その湯には・・・死体が浮かんでいた。

石破の変わり果てた姿である。

今週のゲスト刑事は脇田正(古舘寛治)である。

「これは・・・溺死だな・・・」

例によって死者を悼み泣き濡れる蘭丸。

「お知り合いですか」

「赤の他人です」

「じゃ・・・なぜ・・・」

「だって・・・死んじゃってるんです・・・可哀想でしょう」

「今すぐ・・・監視カメラの映像をチェックして・・・」と乱入する甕棺墓くん。

「あなたは・・・」

「東京都公安委員会の許可を受けた・・・」

「ただの古物商です」と宮沢。

監視カメラの映像には・・・深夜に大浴場に消えた石破以外には早朝のトリオが入るまで人影はなかった。

「酔って・・・時間外に入浴し・・・溺れた・・・ということですかな」

こうして・・・事件の幕は下りた・・・かに見えた。

今週の三助タイム。

三助サービスを受けるのはお茶の間サービス要員の皆さん(梶原みなみ・他)である。

何故か・・・宮沢も三助として参加するのがお約束になっているのだった。

しかし、乱入する刑事たち。

「きゃああああ」

「警察だ」

「警察でも・・・女湯に乱入しちゃダメじゃないのかな」

「公務のためだ」

「公務・・・」

「変死体に他殺の疑いが出た・・・溺死する前に頭部に外傷があった・・・第一発見者の君たちは重要参考人だ」

「そんな・・・」

警察に連行されてしまう・・・蘭丸と宮沢。

「ここは・・・私の出番ね」

事件解決に乗り出すニサスマニア(二時間サスペンスドラマ愛好家)の甕棺墓くん。

「これは・・・毒殺よ」

「根拠は・・・」

たちまち始る「2サス・チャンネル劇場」・・・犯人の温泉女将を演ずるのは先週のゲスト・山村紅葉である。

ついでか・・・ついでに撮影したのか。

「酒に幻覚剤を混入し・・・錯乱した被害者は・・・周囲に頭をぶつけてから溺死したのよ」

「それは・・・ちょっと無理があるんじゃ」

「だから2サスの警察は駄目なんだよ」

「2サスではない」

「2サスマニアの名に懸けてまるっと解決する」

犯人呼ばわりされて・・・心証を害する女将。

知らぬは亭主ばかりなりの支配人は・・・好人物であるために・・・次々と手掛かりを説明するのだった。

女将は・・・大浴場の利用時間を午後九時までと言ったのに・・・本当は午後十時までだったこと。

大浴場の湯の入れ替えは毎日のはずが二日に一度だったこと。

昨日は・・・入れ替えの日ではなかったのに・・・お湯が新鮮だったと蘭丸の舌が味わったのである。

そして・・・支配人は・・・中央制御室の大浴場自動洗浄装置を公開するのだった。

自慢か・・・。

「湯の入れ替えには四時間かかります」

「よよよ四時間も」

「そんなに驚くところではありません」

人の良い夫のために・・・追いつめられていく女将だった。

任意の取り調べのために短時間で戻って来た蘭丸と宮沢。

「あなたたち・・・もう出て行って」

女将の態度が豹変した理由を・・・甕棺墓に見出す宮沢。

「わかりました・・・でも・・・今夜の大浴場の清掃は私たちにまかせてください」

「なぜ・・・」

「三助の仕事ですから・・・」

しかし・・・それは・・・事件の真相に気がついた蘭丸の仕掛けた罠だった。

女将の表情に・・・冷酷さが浮かぶ・・・。

トリオは・・・大浴場に入った。

「監視カメラの映像で・・・あの夜・・・女将さんが中央制御室に向ったことはわかっている」

「で」

「酔った客が湯に入った瞬間を狙って・・・自動洗浄装置をオンにしたのさ」

その時・・・女将は自動洗浄装置をオンにする。

たちまち、激流が発生し、翻弄される湯の中の蘭丸。

「うわああああ」

「大変・・・早く助けて・・・」

甕棺墓くんは宮沢を湯に突き落とす。

「うわああああ」

「スイッチをオフにするんだあああああ」

「わかった・・・」

甕棺墓くんは中央制御室に走り、スイッチをオフにする。

排出口に吸い込まれそうになった蘭丸間一髪だった。

お約束でグズクズして湯からあがらない二人。

しかし・・・女将が再びスイッチをオンにするのだ。

「うわああああああ」

「何をするの・・・」

「もう・・・仕方がない」

女将はメリケンサック(アメリカンな不良の武器)をはめて・・・ヤンキー時代に回帰する。

レディースモードの甕棺墓くんも身構えて対峙。

たちまち始るスイッチ争奪のキャット・ファイト・・・。

このための・・・どぶ板通りを発祥の地とするスカジャン・ヤンキースタイルである。

「この野良猫が・・・」

「そっちこそ・・・」

甕棺墓くんが女将の帯を解いてア~レ~クルクルなどの粗忽なギャグがあって・・・。

制御盤をメリケンサックでぶち壊す女将・・・。

そこへ・・・警官隊が突入・・・。

「どうして・・・ここに・・・」

「君たちを見張っていたのだ・・・」

一件落着である。

逮捕される女将・・・。

崩れ落ちる支配人・・・。

「まさか・・・こんなことになるなんて・・・」

「あなたたちを泊めなければよかった」

「何故・・・僕たちに死体を発見させようとしたのです」

「朝一番で死体が発見されれば・・・夜のお客に間に合うから・・・だって・・・私は温泉女将ですもの」

「・・・」

再び崩れ落ちる・・・支配人だった。

なにしろ・・・「膝から崩れ落ちる演技に定評があるキャスティング」なのである。

何やら怪しいクスリを注射していたというミヤビの行き先が「毛増村温泉郷」と判明し・・・ガソリンを満タンにしてもらったトリオは・・・「まんげつ伊豆」を後にする。

「今の時期・・・そこには行かない方が・・・」

お人好しの支配人は・・・謎の忠告をするが・・・もちろん・・・ミヤビを追う蘭丸は聞く耳を持たないのだった。

よだかは、実にみにくい鳥です。

よだかは鷹の兄弟でも親類でもありませんでした。

鷹は、これを、いやがっていました。

「まだお前は名前をかえないのか・・・ずいぶんお前も恥知らずだな」

よだかはもうすっかり力を落してしまって・・・どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。

そしてなみだぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを見ました。

これがよだかの最後でした。

それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。

そして自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。

よだかの星は燃えつづけました。

いつまでもいつまでも燃えつづけました。

今でもまだ燃えています。

(よだかの星/宮沢賢治)

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2016年7月22日 (金)

闇金ウシジマくん Season3(山田孝之)十日で五割の利子は法外です(綾野剛)

さて・・・意外と楽しい夏ドラマのラインナップである。

(月)「好きな人がいること」・・・爽やかな夏の風に吹かれてどストレートなラブストーリー。

(火)「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」・・・夏に相応しい異常犯罪者の乱舞。

(水)「家売る女」・・・売って売って売りまくるビジネス物語。

(木)は関東ローカルではオンエアが前後するが・・・コレだ。桐谷美玲→波瑠→北川景子とものすごい美女祭りの後で・・・ウシジマくんである。美女も出るが・・・ドス黒さも極まるのだった。

(金)「神の舌を持つ男」はものすごい美女の木村文乃も出るがドタバタである。

(土)「時をかける少女」は口直しとしてちょうどいい感じの美少女ライトノベル的ファンタジーである。

そして・・・(日)はお馴染みの「真田丸」・・・四年に一度くらいの傑作大河ドラマだ。もちろん美女は出る。

どれも大ヒットドラマにはならないかもしれないが・・・今年の夏も・・・作り手はそれなりに頑張ってるよなあ。

で、『ウシジマくん Season3・第1回』(TBSテレビ201607200128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。原作コミックのいくつかのエピソードを同時進行で散りばめる独特の構成。一種の群像劇だが・・・「底辺世界」という奇妙な迷宮への旅行感覚も味わえる素晴らしい仕掛けだ。人生一寸先は闇だと言うが・・・まさに奈落へ落ちた人々が無明の中でのたうちまわる地獄絵図である。Season2では闇に消えたパピコのことがパピコのCMとともに蘇るのである・・・なんのこっちゃ。さあ・・・ウシジマくんが待っている。

とある・・・刑務所。

恐ろしい事件を引き起こした犯罪者が仮釈放となり・・・私物を変換される。

「携帯電話・・・スマートフォン、白、一点。蝶の絵(本人・画)・・・二点・・・」

刑務所の門から娑婆に出た上原まゆみ(光宗薫)は刑務官(桜まゆみ)に深々と頭を下げる。

服役中の規則正しい生活が・・・まゆみを正気に戻していた。

ふりかえったまゆみは・・・一人の男が立っていることに気がつく。

(誰だっけ・・・いい人・・・悪い人・・・とにかく・・・お金を借りたらいけない人だ)

ウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)である。

まゆみは・・・眩暈を感じる。

恐ろしい事件のフラッシュバックが・・・高速走馬灯でまゆみの脳裏に蘇る。

あれは・・・今は遠い五月のことだ。

まゆみはファッション雑誌の編集者だった・・・。

男日照りの編集長(小嶋理恵)は部下のまゆみを叱咤激励する。

「これ・・・やりなおして」

「すみません」

同僚たちは慰める。

「やつあたりよ」

「合コンしまくっても」

「高望みがすぎるから」

実家の母親が職場に電話してきた。

「忘れてないでしょうね」

「忘れるわけないでしょう」

「あなたもなんとかしなさいよ・・・お父さんだって心配してるんだから」

「あの人が心配なのは・・・世間体だけでしょう」

母親の広子(武藤令子)を疎ましく感じるまゆみ。

週末には・・・妹のみゆき(今野鮎莉・・・キョウリュゥピンク)の結婚式があるのだ。

「とにかく・・・今・・・仕事中だから・・・」

女子会は合コンより盛り上がる・・・。

話題は「男のこと」である。

「あなたは・・・いいわよね・・・イケメンの彼氏がいて」

女友達のユカ(三浦葵)はまゆみを茶化す。

「ダメよ・・・あいつは・・・将来性がない・・・古着屋をやりたいとか口ばかりでね」

まゆみの交際相手のハシくんこと橋本(ジェントル)は「アルバイトをさぼりたい」「なんか奢って」が口癖のダメ男だった。

「あなた・・・その石って・・・」

「パワーストーン・・・」

「ご利益があるの・・・」

「先生にいただいたのよ・・・」

「先生って・・・占い師・・・」

「すごく当たるのよ・・・」

「・・・それってお金は・・・」

「一回、五万円」

「・・・」

ユカの目に浮かぶ・・・蔑みの気配をスルーするまゆみ。

馬鹿ね・・・先生の素晴らしさを知らないから・・・そんな目をして・・・。

まゆみは良きアドバイザーである勅使川原先生(三田真央)を信頼していた。

もちろん・・・依存していたということである。

まゆみはすでに・・・危険な坂道を転落しつつある。

だが・・・本人に・・・その自覚はない。

資産家の両親との折り合いが悪いまゆみは・・・鬱屈をスピリチュアルな世界で晴らそうとしていた。

そうしないと不安でたまらないのだ・・・。

揺れるまゆみの心が・・・やがて・・・両親や妹を巻き込んで恐ろしい世界へと導くことを・・・まゆみはまだ知らなかった。

まもなく・・・まゆみは橋本がユカにも奢ってもらっていることに気がつく。

「カウカウファイナンス」の柄崎(やべきょうすけ)と高田(崎本大海)は「キャバクラ」で遊んでいた。

「結局・・・女はイケメンがいいんだろう・・・」

「そんなことないだお」

キャバクラ嬢たちは・・・お愛想を口にするのだった。

「あ・・・ジュリアじゃねえか」

柄崎はかっての顧客を見つけて声をかける。

「柄崎さん・・・守秘義務ですよ」と高田は注意する。

ジュリア(佐々木麻衣)に似た女は否定する。

「人違いですよ・・・」

柄崎や高田は・・・知りあいであることを自慢できるような男たちではなかった。

二人は闇金業者なのである。

「すずさん・・・御指名です」

二人のテーブルからキャバクラ嬢のすず(伊藤花菜)が抜け出る。

すずを指名したのは常連客の川崎(ムートン伊藤)だった。

「遅いじゃないか」

「お待たせして・・・また・・・アフターに連れてってくださいね」

「アフターのアフターを頼むよ」

「またまた~」

「やらせてくれよ~」

すずの股間に顔をうずめる川崎だった。

川崎は・・・「カウカウファイナンス」の顧客でもあった。

ウシジマくんの指示に従い・・・受付嬢・エリカ(久松郁実・・・「ごめんね青春!」の巨乳女子高校生・佐久間りえである)は現金を用立てる。

「また・・・女?」とウシジマくんはお愛想を言う。

「キャバクラの女がもうすぐ・・・落ちそうなんです」と川崎。

客が去ると柄崎が陰口を始める。

「まったく・・・キャバクラにはまるなんて馬鹿な奴だぜ」

「金を何に使うかは客の自由だ・・・女に貢ごうがギャンブルで溶かそうが俺たちには関係ない」と釘を刺すウシジマくん。

柄崎は過去にギャンブルで痛い目にあっているのだ。

スーパーマーケットのパートタイマーである結城恵美子(倖田李梨)はパチンコで金を溶かす中年女である。

勤務態度も悪く・・・店長にマークされている。

監視カメラの死角をついて・・・売り物の弁当を盗み食いする恵美子・・・。

「安い時給でこき使いやがって・・・弁当くらい食わせろっての」

だが・・・スーパーの裏口でアジフライ弁当を取り上げる・・・ウシジマくんのライバル企業・闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)だった。

恵美子の自転車を蹴り飛ばす犀原・・・。

「このアジフライ醤油がついてねえぞ」

「アジフライは普通ソースです・・・私はタルタルソースですけど」

犀原の腹心・村井(マキタスポーツ)が口をはさむ・・・。

犀原は村井を平手打ちにする。

「利子の七万円の返済日だ・・・」

「・・・」

「アジフライはくれてやる・・・とっとと働いて金を作りな」

犀原は恵美子の口にアジフライを押しこんだ。

恵美子の娘の美奈(佐々木心音)は自堕落な母親を嫌って家出し・・・ネットカフェで暮らしていた。

ワリキリと称して売春をし・・・その日暮らしである。

「お前・・・いい体してんな」

「ほめられちゃった・・・」

「だけど・・・匂うぞ・・・」

「毎日・・・シャワー浴びてるけど・・・」

「家に帰れよ・・・」

「嫌だよ・・・金があったら・・・ウイークリーマンションに引っ越すんだ」

「・・・お前の母親と3Pできたら・・・七万円払うぞ・・・」

「3P・・・」

客に言われて考え込む美奈・・・。

美奈は母親を訪ねる。

「携帯くらいもっとけよ」

「余計なお世話だよ・・・金ならないよ」

「あのさ・・・私とママとで3Pしたら・・・七万くれるって・・・」

「3P・・・って馬鹿言ってんじゃないよ」

だが妻子持ちの情夫である亀井(仲俣雅章)から「三万円」を無心される恵美子。

娘に「やろうか・・・」と伝えるのだった。

初回から快調に飛ばすな・・・。

劇場版とネタがかぶっているけどな。

ニュアンスが違うだろう。

ギャンブル依存と売春は闇金の花だよ。

生活保護も忘れるな。

家賃保証業者の取り立てを居留守で回避する小瀬(本多力)・・・。

エロ動画を視聴するために・・・有り金で電池を購入してしまう愚か者である。

カビパンを吐き出した小瀬は・・・生活保護の申請に赴く。

「小瀬さん・・・働けますよね」

「鬱なんです・・・診断書があるでしょう」

「しかし・・・就労できない状態ではないようです」

「・・・」

素晴らしいインターネットを検索した小瀬は神を召喚する。

NPO団体「貧困ネットワーク」の主催者・嘉瀬正義(福田優)の登場で・・・小瀬は生活保護を勝ち取るのだった。

牛丼弁当を買い・・・夢中で食べる小瀬。

「美味い・・・牛丼・・・最高」

満ち足りた小瀬は・・・自慰行為に耽る。

射精した小瀬は・・・身動ぎをする。

「・・・退屈だ」

人間だ・・・あまりにも人間的だ。

ウシジマくんは・・・幼馴染の情報屋・戌亥(綾野剛)と駄菓子屋にいた。

「ココアシガレットの煙草感が薄れてるよね・・・」

「・・・」

顧客の吉岡(あべかつのり)から取りたて中の柄崎&高田から着信がある。

「警察に走るってほざいてます」

「違法だ・・・俺は払わねえ」とわめく顧客。

「電話をかわれ・・・おい・・・借金してることがばれたら・・・生活保護は打ち切られるぞ」

「・・・」

「酔っ払いが・・・」

ウシジマくんは顧客を鞭打つ。

雨が降っていた。

勅使川原先生から「傘はアンラッキーアイテム」と言われたまゆみは雨宿りをする。

そこへ・・・高級車に乗った男が現れる。

「傘をどうぞ・・・」

「そんな・・・」

「困っている女性を見過ごすわけにはいきません」

男(中村倫也)を不気味に思うまゆみだったが・・・結局、傘を受け取る。

傘には・・・「神堂大道」と氏名が記されていた。

勅使川原先生から着信がある。

「今日は・・・あなたと一緒にいたかったのよ」

「・・・どうしてですか」

「あなたにとって・・・運命の出会いがある日だから・・・」

運命の出会い・・・。

まゆみは・・・神堂大道のことを想い浮べていた。

もちろん・・・すべては・・・仕組まれているのだ。

それが・・・ウシジマくんの棲む世界の掟である。

ウシジマくん・・・万歳!

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2016年7月21日 (木)

怖いけれど安い家(北川景子)ちちんぷいぷいちちんぷい(臼田あさ美)君は自由だよ!僕は宇宙だよ!(千葉雄大)

都内の物件を所有していると一日に数回、不動産業者のアポ取り電話がかかってくる。

「お住まいの件なのですが」

「住み替えの予定はありません」

もう・・・何回、同じやりとりをしただろうか。

物凄い時間の浪費を感じるが・・・それが人生というものだろう。

このドラマの一番の面白さは・・・あるいは恐ろしさは・・・もしも・・・電話の相手か彼女だったら・・・確実に・・・家を売らされ・・・住み替えさせられ・・・その上、少し幸福感を感じさせられてしまうかもしれないと妄想できることである。

「お客様に・・・もっとも相応しい物件を提案させていただきます・・・ゴーッ!」なんだな。

まあ・・・あの主人公とひとときを過ごせるなら・・・文句ないのである。

そういう気分を毎週、味あわせてくれる・・・素晴らしいドラマなのだった。

で、『家売るオンナ・第2回』(日本テレビ20160720PM10~)脚本・大石静、演出・猪股隆一を見た。昭和といえばモーレツな時代である。モーレツにヒラヒラしてモーレツにチラチラしたのである。ヒラヒラもチラチラもないがモーレツにつぐモーレツな物件セールスマンの三軒家万智(北川景子)が・・・テーコー不動産株式会社の新宿営業所売買営業課に営業チーフとして降臨する。指導力が皆無の屋代課長(仲村トオル)の下でぬるま湯に浸っていた「いい加減な人々」は「家を売らなければ社員として価値がない」という冷水を浴びせられ「キャ~」とうろたえるのだった。

昭和の時代・・・営業マンは給料の十倍売り上げることがノルマだった。・・・マジかよ。

そうでなければ商売なんか成立しないのである。

先月の売上がゼロの庭野聖司(工藤阿須加)と入社以来売上ゼロの白州美加(イモトアヤコ)をターゲットとして認識したらしい・・・三軒家チーフは・・・モーレツでスパルタ式で特訓、特訓また特訓の号令を下す。

三軒家の手段を選ばない「売り方」に・・・馴染めないものを感じる庭野だったが・・・好奇心に負け・・・「ものすごい美人の住んでいる家」まで帰宅途中の三軒家を尾行する。

しかし・・・それは「一家惨殺事件のあった業界内では有名な事故物件」だった。

会社に戻り・・・事故物件資料を確認してみた庭野の背後に・・・三軒家が現れた!

「ひえええええ」

「何を見ている?」

「こ・・・これは」

「庭野が尾行して確認した家は・・・賃貸で月五万だ」

「こ、怖くないのですか・・・」

「怖い・・・時々、誰もいないのに扉が開いたり閉じたりする・・・しかし、安い」

「・・・あの・・・帰宅したのに・・・なぜ・・・会社に」

「家を売るためです」

その時・・・薄暗い部屋で電話の呼び出し音が鳴る。

「電話をとる」

「はいっ」

受話器の向こうから響く・・・地獄の亡者のような女の声・・・。

「あの・・・住み替え希望のものなのですが・・・」

「ひええええええええ」

「え」

「あ・・・失礼しました・・・御用件を承ります」

庭野は・・・アポがとれた幸運を感じる。

ふりかえると・・・三軒家は消えていた。

「ひええええええええ」

屋代課長による朝のミーティング。

「みんな・・・今日のアポ(営業のための客相手の面談の予定)はどうなっている」

布施誠(梶原善)、八戸大輔(鈴木裕樹)、宅間剛太(本多力)やエースの足立聡(千葉雄大)までがアポなしを告げる中・・・庭野は「アポあり」に胸をはる。

しかし・・・三軒家は「私は午前中に二件、午後に二件です」と上を行くのだった。

「まだまだノルマ達成は遠いぞ・・・例の墓地の側の物件・・・そろそろ売らないとな」

「その家は私が売ります」

「いや・・・ここはみんなで頑張ろう・・・俺たちは仲間だ・・・屋代組だ」

「組・・・?」・・・脳天気な屋代課長にたじろぐ一同。

屋代課長は三軒家がスパルタな指示を出す前に・・・白州美加(イモトアヤコ)に簡単な仕事を宛がう。

「君は・・・物件のチラシを三百枚ほどポスティングしてくれ」

「えーっ」と屋代課長の温情を仇で返すシラスミカだった。

説明しよう・・・脚本家はエッセイストでもあり著書に「わたしってブスだったの?」(1993年)がある。ブスが自分をブスと自覚しないことの面白おかしさを表現する第一人者なのである。美醜について語ることがハラスメントとされる歪な時代に・・・その病状は深刻化し、感染者は拡大し、病は世に蔓延していると言える。シラスミカは「無自覚ブス症候群」の典型的な病例なのだ・・・おいっ。

「ポスティングの途中で・・・誰かに物件について質問されても対応できるように・・・アピールポイントを三分間・・・述べなさい」

屋代課長を無視してシラスミカに指示を出す三軒家。

「この物件は・・・墓地の側にあります・・・」

「それだけですか・・・ポスティングの前に・・・物件を見て・・・セールスポイントをまとめなさい」

「そんなことは・・・しなくていい」

屋代課長は・・・課内に波風が立つことを病的に惧れるタイプだった。

「三軒家くん・・・君は・・・指導マニュアルを読みたまえ」

一度捨てられたマニュアルを本社からお取り寄せした屋代課長。

しかし、三軒家は有無を言わさずマニュアルをゴミ箱に投げ捨てる。

「私は・・・誰も指導しません・・・いい加減な人間を見るのが嫌なだけなのです・・・いい加減な人間が消えても・・・全く構いません」

「そんな・・・みんな仲間じゃないか」

「課長・・・」と足立が立ちあがる。

「僕も・・・誰も指導しませんよ」

「足立・・・お前もか」

絶望感に打ちのめされる課長だった。

いやいや出かけるシラスの耳元に・・・「そんもの捨てちまえ」と囁く最古参の布施・・・。

シラスは意気揚々と出発する。

「すごい・・・なんて言ったんです」

「俺らの頃はチラシ三千枚だったってね」

「さすがです」となんとなく和む課内。

「いやいや時代が違いますよお」と甘えた声を出す課長だった。

「チラシをいくら撒いても家が売れなければ無意味です」と釘をさす三軒家だった。

シラスは・・・トイレのゴミ箱にチラシを投げ捨てると・・・カフエでお茶を飲み、映画館で恋愛映画を鑑賞するのだった。

給料泥棒である。

三軒家のアポの一つは過去に顧客だったらしい井上氏(諏訪太朗)だった。

息子夫婦の2LDKと自分の住む1LDKを売却希望である。

物件を査定し・・・値踏みする三軒家。

「エントランスに宅配ボックスがあり・・・一階だから荷物の出し入れにも便利なんだ」とアピールする井上氏。

「一階の物件は人の出入りが騒がしいと感じるお客様もいるので・・・必ずしも利点とはなりません」

買い手の代理人でもある仲介業者として厳しさも見せる三軒家。

「玄関はお客様に見せる顔ですから・・・少し手を入れた方がいいかもしれません」

「ええ~・・・金がかかるだろう」

「お安く手配いたします」

「これもとらなくちゃだめかね」

息子が一時、熱中したというボルダリング設備。

「中古物件には個性も必要です・・・これはセールスポイントになるかもしれません」

「へえ・・・」

ゆとり」のセットの使いまわしかっ。

「どちらも・・・きれいにお使いですね・・・1LDK・・・2000万円!・・・2LDK・・・2500万円!・・・あわせて4500万円!・・・私がお売りします!」

「よろしくお願いします」

庭野は電話をかけてきた城ヶ崎夫人(木野花)の家を内見する。

城ヶ崎夫妻は・・・一戸建てからマンションへの住み替えを検討していた。

二階にあがった庭野は・・・夫妻の寝室とトイレの他に開かずの間があることを知る。

「そこは物置で・・・とんでもないことに・・・なっているので・・・開けないでください」

「はあ・・・」

階下で打合せに入ると・・・頭上からトイレの音がする。

「自動洗浄なのです・・・」

「はあ・・・」

「いくらくらいで売れますでしょうか」

「都内の一等地で・・・家屋も素敵な物件なので・・・五千万円で売れると思います・・・住み替えの家は四千万円程度でご案内できると思います」

「住み替えの方は・・・二千万円から二千五百万円でお願いします」

「え・・・」

屋代課長は庭野の報告を受けて・・・シラスに対する態度とは違うアドバイスをする。

つまり・・・庭野には「男」として接しているわけである。

課長もまた・・・「昭和の男」なのだ。

自覚がないだけである。

「五千万円で家が売れるんだ・・・四千万円くらいの家を売りつけろよ」

「・・・はい」

そのやりとりを三軒家が見ていた!

「明日の内見に・・・私も同行します」

「え」

嫌な予感を覚える男たちだった・・・。

制御不能な部下を持って困惑する屋代課長は・・・行きつけのBAR「ちちんぷいぷい」のママ・珠城こころ(臼田あさ美)に不満を吐き出す。

同行する布施は・・・かっては・・・やり手の営業マンだったらしい。

布施は・・・屋代課長の心をかき乱す不穏な「話」を持ちだす。

「あの女・・・本社からの特命を帯びているかもしれん」

「え」

「社長の手のものか・・・それとも重役の誰かのヒットマン・・・」

「ええ」

「ターゲットは課長かもしれないねえ」

「えええ」

怯えて痛飲する屋代課長である。

とことんダメ人間なんだな。

三千八百万円の物件に難色を示す城ヶ崎夫妻・・・。

「何か・・・キャッシュの必要がおありでしょうか」

「・・・そんなことまで言わなければならいのですか」

「失礼しました」と割って入る三軒家。

「このお話・・・あらためて・・・私が承ります・・・御自宅に伺ってよろしいでしょうか」

「はあ・・・」

城ヶ崎家の応接室。頭上から水洗トイレの音がする。

やにわに立ちあがった三軒家はライターの火を火災警報器に近づける。

「何をするんですか」

たちまち鳴り響く警報音。

間髪置かずに発煙筒に着火する三軒家。

「え」

「火事だ~」

「ええ」

「庭野、お前も叫べ」

「えええ」

ただならぬ気配に・・・開かずの間が開き・・・城ヶ崎夫妻の長男で引き籠りの良樹(ビビる大木)が煙のたちこめた階段を駆け降りる。

「あ」と息を飲む・・・三軒家以外の一同。

「誰ですか・・・あのおっさん」

良樹は火事がフェイクであると悟ると開かずの間に駆け戻る。

「息子です」

「二十年間引き籠っていました」

「就職はしたんですが・・・人間関係で失敗して・・・」

「私は・・・二十年ぶりに・・・顔を見ました・・・あいつ・・・老けたなあ・・・」

「家を売って・・・息子にお金を残してやりたいんです」

「もはや・・・私たちにはそれしかできないのです」

夫婦の告白に・・・言葉を失う庭野。

「私におまかせください・・・城ヶ崎様のために完璧な引き籠りの城をご用意いたします」

三軒家は目を見開くのだった。

引き籠った良樹はブログ「長期引き籠りニートYOSHIKI」を更新した。

「今日・・・ものすごい美人が家に来ました!」

素晴らしいインターネットの世界では「美人」と聞いてさざ波が立つ。

しかし・・・コメントはなかった。

だが・・・テーコー不動産株式会社の新宿営業所売買営業課のデスク・室田まどか(新木優子)は密かな愛読者だった・・・。

何、読んでんだよ。

帰社した三軒家は物件を検索する。

そして・・・「最高の物件」を見つけた!

「最高のプラン」を仕上げた三軒家は・・・城ヶ崎家攻略作戦を開始する。

「城ヶ崎様には・・・この二千五百万円の物件をお勧めします」

「まあ・・・」

「でも・・・なんだか・・・間違ってますよ・・・城ヶ崎様は・・・本当は・・・息子さんに引き籠りをやめて欲しいのではないですか・・・玄関先に・・・いつも息子さんの靴をピカピカに磨いて・・・」

「甘い!」

「え」

「城ヶ崎様も心の中ではお気づきですよね・・・」

「・・・」

凡庸なドラマのように引き籠り解消作戦には向わない脚本家の意地である。

「二十年も引き籠り四十歳になった息子様が・・・まともに社会復帰することなんて無理だということを・・・」

「・・・」

「しかし・・・二千五百万円の現金では・・・息子さんが引き籠れるのは十年が限度です」

「え」

「そこで・・・城ヶ崎様には同時に二千万円の物件も購入していただきます」

本能的な危機を感じた良樹は電子メールで母親に忠告する。

《だまされるな》

「私に息子さんと・・・直接話させてもらえないでしょうか」

三軒家の提案を承諾する夫妻だった。

長い二十年だったのである。

良樹はダンボール箱男となって三軒家を迎え入れた。

「失礼します・・・」

「・・・」

「どうして・・・引き籠ってしまったのですか」

「・・・」

「え・・・パリの国際会議で・・・ウンコをもらした・・・」

「・・・」

「そんなことでって・・・言うのだろうと・・・いいえ・・・ウンコをもらしたのでは仕方ありません」

「・・・」

「私は・・・城ヶ崎様が百歳まで引き籠れるプランを作りました・・・ご検討の程をお願いします」

「・・・」

交渉成立である。

井上氏の二部屋を城ヶ崎夫妻に購入させ・・・一部屋を賃貸させることで・・・およそ六十年間の家賃収入を確保させたのである。

「息子さんには・・・靴も玄関も必要ありません」

井上氏の部屋を内見に訪れた城ヶ崎夫妻は・・・息子の運動不足解消のためのボルダリング施設完備に・・・感激の落涙・・・。

(落ちた・・・)と感じる三軒家。

深夜の街を・・・引き籠り男はひっそりと新しい開かずの間へと向う。

「今日から・・・引き籠りだけど大家になりました」

「あ・・・YOSHIKIが更新してる」

思わず・・・「がんばって」とコメントを書きこむ室田まどかだった。

三年後・・・カリスマニートとなった良樹は・・・出版した本がベストセラーとなり・・・テレビ局の取材に応える人間になっていた。

しかし・・・それは先の話。

経済力があれば・・・選択肢は広いという話である。

「墓地のとなりのマンション」の現地販売を行う足立とシラス。

足立の留守中に・・・母子連れの顧客が現れる。

「この物件・・・どこがいいの?」

「西日です」

「え」

「墓地のとなりです」

「ええ」

「ヤモリが出ます」

「えええ」

「私・・・こんな家イヤだ~」と娘(井東紗椰・・・2014年度のおはガール・・・映画白ゆき姫殺人事件で貫地谷しほりの少女時代を演じた)は正常な反応・・・。

そこへ・・・足立が戻ってくる。

「お客様・・・もうお帰りですか・・・」

「だって・・・西日で・・・墓地で・・・ヤモリなんて」

「ヤモリは家の守り神として大切にされているんですよ・・・自然に恵まれている証拠です。墓地には高い建物が立ちませんので見晴らしも日当たりも保証されます・・・そして・・・この窓から見える山の稜線をごらんください・・・あの山に夕陽が沈む時・・・きっと・・宇宙を感じることができるでしょう」

ドス黒い王子に頭を撫でられてうっとりする娘・・・。

「私・・・ここに住みたい・・・」

逆転の発想・・・物事の裏表・・・プラス志向・・・要するに洗脳である。

「自然に恵まれている上に夜も人通りが多いので安心できる環境です・・・買い物なども便利ですよ・・・いかかでしょう・・・今なら現地販売割引もございます」

「買います」と即決する母親だった。

「では・・・1590万円になります」

母子が去った後・・・シラスは泣きだす。

「どうしたの・・・」

「私・・・上手くできなかった・・・」

「せっかく練習したのにね」

「私・・・会社やめます・・・」

「そう・・・それは・・・君の自由だね」

シラスは・・・泣けば・・・足立が・・・結婚してくれると・・・本気で信じているのだった。

恐ろしいことだ。

菩薩である三軒家が差し伸べる救いの手に気がついて・・・。

シラスが「現実」を受けとめる日がくるのかどうか・・・まあ・・・一部お茶の間には本当にどうでもいいことだがな・・・。

「庭野でなく・・・私が売りました」

有能すぎる部下である三軒家の言葉が胸に突き刺さる屋代課長である。

もはや・・・見下ろす立場ではないことに・・・屋代課長は気付いてしまったのだ。

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2016年7月20日 (水)

夢の中の殺人(波瑠)君の心を裸にしたい(林遣都)気持ちの悪い女だねえ(渡部篤郎)

前回も指摘したが・・・このドラマは「沙粧妙子 - 最後の事件 -」(1995年)から派生した「ケイゾク」(1999年)の正統な後継者としての系譜に属するものと想定できる。

「ケイゾク」は常識的な捜査では対応できない異常犯罪に対応するための「未解決事件の継続捜査」が主眼であったが・・・このドラマの主人公は・・・警視庁捜査一課に所属しながら・・・「過去十年の未解決事件」のデータをすべて記憶している一種の天才である。

「ケイゾク」は「沙粧妙子 - 最後の事件 -」のパロディーとしての側面も持っていて「沙粧妙子」の黒幕的犯罪者「梶浦圭吾」の名を登場人物が無意味に叫んだりする。しかし・・・常識的な捜査では対応できない異常犯罪者として「朝倉裕人」が設定されている。

パロディー要素を強めた「SPEC」や・・・「沙粧妙子 - 最後の事件 -」の亜流である「アンフェア」とか「ストロベリーナイト」よりもこのドラマは「ケイゾク」の換骨奪胎を強く意識しているように思う。

つまり・・・「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」←「ケイゾク」←「沙粧妙子 - 最後の事件 -」←映画「羊たちの沈黙」(1990年)という流れなのである。

初回の主人公の独白・・・「犯人はもうわかりました」が「犯人わかっちゃったんですけど」の変形であるのは明らかである。

相棒の先輩男性刑事の妹は殺され・・・相棒の心に暗い影を落しているわけである。

当然のように・・・レクター博士や梶浦圭吾そして朝倉裕人のような天才的犯罪者が配置されているのだろう。

もちろん・・・その人は・・・すでに登場しているものと思われる。

ゾクゾクするような素晴らしい「悪」を堪能したいものだな。

で、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子・第2回』(フジテレビ20160719PM10~)原作・内藤了、脚本・古家和尚、演出・白木啓一郎を見た。「殺人」は恐ろしい犯罪である。しかし、人はたやすくそれを行うことができる。あるものは衝動的に・・・あるものは計画的に。あるものは生きるための必要に迫られて・・・あるものはちょっとした気分転換のために。戦争のように殺人が正当化される場面もあるし、正当防衛による殺人はその根拠となる。多くの人々は「殺されること」に恐怖を感じ、「殺すこと」に躊躇いを覚えると言うが・・・そうでもない人がいるだろうことは充分に妄想可能なのである。そういうことに異常な興味を抱くことが異常なことだと言う人も多いだろうが・・・キッドは特に差し支えないと考える。

夢の中では・・・すべてが自分の分身であると考えるのが一般的だ。

しかし・・・人によっては夢は神の世界に通じていると信じているものもいる。

どちらにしても夢の中で罪を犯しても現実では裁かれない。

しかし・・・それが夢だと知らなければ・・・人は罪に対して用心深くなる。

物凄い美少女とそういう感じになりそうだったのに・・・つい怖気づいてそうならないままに目覚めて・・・「大失敗じゃないか」と悔やむ朝もある。

夢の中で鈴木仁美(篠田麻里子)の死体を見つめる藤堂比奈子(波瑠)・・・。

すでに自殺してこの世にはいない殺人者である小林翔太(三浦貴大)が問いかける。

「き・・・興味深いのか・・・」

「興味深いです」

「お・・・お前は・・・こ・・・壊れている」

「・・・」

「だ・・・だから・・・お前も・・・こ・・・こっちの人間に・・・もうすぐ」

死者は自分が殺した死体を愛撫しはじめる。

佇む比奈子を母の声が呼びとめる。

(大丈夫よ・・・比奈子・・・あなたは大丈夫)

薄暗い夢の中で善光寺七味唐辛子の缶は囁くのだった。

夢の闇から・・・比奈子は現実の光の中に帰還する。

東村山市で「怪事件が発生していた。

盗難車として届けられた冷凍車を発見した警察車両は追跡を開始し、乗り捨てられた冷凍車を確保するが・・・運転者はとり逃がす。

そして・・・冷凍車の側に着席した人体を二体発見する。

二人は死んでおり・・・死体は氷結していた・・・。

出動する警視庁刑事部捜査第一課・厚田班・・・。

ケイゾクの野々村光太郎警部(竜雷太)に該当するのが厚田巌夫班長(渡部篤郎)である。

ケイゾクの近藤昭男刑事(徳井優)に該当するのが倉島敬一郎刑事(要潤)である。

ケイゾクの谷口剛刑事(長江英和)に該当するのが清水良信刑事(百瀬朔)である。

もちろん・・・清水刑事は何者かに操られたあげくに殉職するものと思われる。

いつ死んでもいいように警視庁には不似合いな関西弁なのであろう。

そして・・・ケイゾクの真山徹刑事(渡部篤郎)に該当するのが東海林泰久刑事(横山裕)なのである。

本人が共演中なのであれだが・・・いろいろと勉強する機会である。

後輩の主人公をもてあますキャラクターとしては・・・真山刑事は「最高」だったからな。

単に直情的だったり・・・単にお人好しだったりするのではなく・・・複雑な人格というものを演じるチャンスなのである。

殻を破りたまえ。

主人公の比奈子は部署の先輩におずおずと声をかける。

「興味深いですよね」

「お前の趣味の悪さは・・・もうよくわかったよ」

二人は・・・小林翔太の逮捕劇以来・・・会話していなかったらしい。

「なんじゃ・・・こりゃ」と真山ではなく・・・厚田班長が呆れる。

「凍ってますな」と三木鑑識官(斉藤慎二)・・・。

新人鑑識官の月岡真紀(佐藤玲)もなんとなく現場にいる。

ドラマ「相棒」のスタートは2000年。「ケイゾク」では「鑑識」がそれほどに重視されていない。

鑑識が刑事ドラマになくてはならないものではなかったからである。

そういう意味で・・・このドラマの鑑識は付けたしなのである。

ついでに・・・ドラマ「きらきらひかる」(1988年)はすでにあったが・・・「ケイゾク」では「検死」もそれほどに重要視されていないために監察医の存在もない。

そのために・・・司法解剖のプロフェッショナルで帝都大学医学部の法医学教授である石上妙子(原田美枝子)の存在もそこはかとなく浮いているわけである。

これは・・・構造上の問題なのだ。

なにしろ・・・比奈子という天才がいれば・・・鑑識官も監察医も本来不要なのである。

まあ・・・設定してしまったものは仕方ない・・・それらしさを求めるお茶の間もあることだからな。

そもそも・・・原作のある話だぞ。

「とにかく・・・死んでから凍ったのか・・・凍ってから死んだのか」

「それについては検死解剖してみないと・・・」

「まあ・・・冷凍されているから保存状態はいいよな」

「溶けだす前にモルグへ搬入しましょう・・・もう・・・少し匂い出しているから」

「・・・」

解剖の結果・・・遺体は殺害されてから冷凍されたことが判明する。

そして・・・遺伝子情報から・・・二人が兄弟である可能性が高まった。

警視庁内の自動販売機前。

「久しぶりに先輩と話をしました」

「お互いに話すことなんてないだろう」

「先輩はどうして・・・単独捜査のことを秘匿したのですか」

「お互いに・・・始末書をかかないですむからな」

「・・・」

「お前こそ・・・どうして一人で容疑者にコンタクトした」

「彼が犯人である・・・確証がつかめなかったからです」

「そんなことして・・・奴に殺されてたらどうすんだ・・・お前と違って・・・俺は死体を興味深く見る趣味はない・・・お前の死体なんて見たくねえんだよ・・・」

「・・・」

「お前・・・家族はいるのか」

「幼い頃に両親が離婚して・・・母子家庭でしたが・・・警察に就職が決まった頃、母も病死しました・・・この七味唐辛子は母の遺言入りです」

「進め!比奈子」と記された缶なのである。

「・・・!」と微かに動揺する東海林刑事だった。

「先輩のご家族は・・・」

「何故・・・そんなことを話す必要がある」

「最初に聞いたのは先輩じゃないですか」

「・・・両親は・・・健在だ・・・それから・・・妹が一人いた」

「いた?」

盗難車の逃走経路から・・・冷凍庫のある施設が割り出された。

何故か・・・明確にはされないが・・・食肉業者であろう「霜川商店」である。

現場を訪問した厚田班は・・・「霜川商店」で新たな冷凍死体を発見する。

テーブルを挟んで向かい合う・・・夫婦のような遺体。

比奈子は・・・空席があることに注目する。

近所での聞き込みにより・・・死体の四人が家族だったことが明らかになる。

冷凍庫の死体は父親の霜川幸三(螢雪次朗)と長女の由美(赤間麻里子)・・・。

最初に放置された死体は由美の弟たちだった。

聞き込みでは・・・仲の良い親子だったが・・・二年前に父親が姿を消してから・・・家業が傾いたと噂があった。

しかし・・・実際は・・・。

三人の姉弟には幼い頃からの虐待の痕跡があり・・・姉には帝王切開の跡が残されていた。

「冷凍焼けの状態から言うと・・・」と監察医。

「死体からの水分蒸発率ですね」と比奈子。

「殺されたのは・・・父親、兄弟、姉の順ね・・・」

「父親の失踪後・・・姉は家を出て男と同棲・・・長男が家業を継承し、次男はギャンブルに狂っていたそうです・・・そのための借金で・・・店の経営が続けられなくなったと思われます」

「きっと・・・狂っていたのは弟だけじゃないわ」

「父親の作った監獄家庭ということでしょうか」

「あなた・・・想像力が豊かすぎるわね」

「・・・」

小菅の東京拘置所で再び起きた死刑囚の変死事件について調査したいことがあると監察医は比奈子の同行を求める。

しかし・・・看守(利重剛)が心療内科医の中島保(林遣都)を伴って現れると・・・比奈子と中島をデートへと送り出す監察医・・・相当に意味不明な行動だが・・・きっと恐ろしい裏があるのだろう。

不気味な色のケーキと生姜焼き定食を運んで来た「萌オさまカフェ」のメイドにハートを撃ち抜かれる比奈子を・・・奇妙な生物を見る目で観察する中島だった。

「確かに・・・大友・・・いや小林には殺人衝動のスイッチのようなものがあったようです」

「・・・」

「しかし・・・殺人というものは・・・衝動によって起こるものだとは限らない」

「けれど・・・ある種の異常犯罪者には類似点があるのではないでしょうか」

「そうですね・・・」

「小林翔太の殺人衝動の背後にあるのは・・・憎悪だと思いますか・・・それとも」

「愛情ですか・・・」

「情愛も・・・憎悪も・・・欲望という点では似ていますよね」

「とにかく・・・人の心をシンプルなものとして決めつけるのはよくないです」

「・・・はい」

単独捜査を慎んでいる東海林刑事は・・・比奈子と聞き込みを続けている。

「殺人事件の統計によれば・・・53.5%は親族間の殺人だそうです」

「統計的にはそうだろうが・・・そういうことを嬉しそうに言うな」

「・・・はい」

「・・・しかし・・・一家が全員死んでいるとなると・・・親族間殺人は成立しないな」

比奈子の携帯端末に中島からの着信がある。

「中島先生が・・・一家冷凍死体事件について・・・犯人像を推察してくれました」

「おい・・・捜査情報を漏らしたんじゃないだろうな」

「先生が知っているのはニュース番組の情報だけです」

「それで何を推察するんだよ」

しかし・・・中島の電子メールを一瞥した東海林刑事は顔色を変える。

「非嫡出子・・・か」

「存在しない存在というやつですね」

「うれしそうに言うな・・・」

「・・・はい」

「俺にはすこし別件がある・・・お前は署に戻って報告しろ」

「・・・はい」

東海林刑事は・・・情報屋(不破万作)から・・・霜川幸三の愛人の情報を仕入れた。

情報屋・・・知らないことがないのか・・・。

霜川幸三は都内に妾宅を持っていたのだった。

しかし・・・比奈子が待ち伏せていた。

「何故・・・ここに・・・」

「単独行動を禁じられているので・・・先輩を尾行しました」

「・・・」

「犯人は愛人・・・あるいは愛人の子供だと思うか・・・」

「それはまだ・・・わかりません」

「どうして・・・」

「これは・・・あくまで推測です」

「いいから言え・・・」

「霜川由美は妊娠出産した形跡があります。霜川幸三が子供たちを全員虐待しながら・・・世間的にはそれを悟らせなかったことを考えると・・・非常に巧妙に子供たちを支配していたと考えられます。そのようなケースでは由美の子供の父親が・・・霜川幸三である可能性があります・・・愛人の子供よりも・・・父親と・・・父親の娘である母親と・・・出生届けを出されない子供が一緒に暮らす可能性は高いのではないでしょうか・・・」

「親父と娘と・・・その子供か・・・吐き気がするぞ」

「吐きますか」

「吐かない」

「父親が死んで・・・彼らは父親を冷凍保存した・・・一家は父親のことは黙って生活を続けた。しかし・・・父親という支配者のいなくなった・・・一家は崩壊していく・・・長女は家を出て・・・男と暮らし・・・次男の借金で・・・立ち退きを迫られる・・・彼・・・もしくは彼女は・・・引越ししようと思ったのではないでしょうか」

「・・・引越し?」

「彼にとって・・・世界は・・・霜川家だけなのです・・・そして・・・父親は凍った男・・・彼は・・・家族を全員・・・父親と同じ状態にして・・・みんなで引越しをしようと考える」

「・・・狂ってるな」

「そうでしょうか」

「お前の想像力がだよ」

「・・・」

「愛人の子が・・・父親と正妻の子供たちを憎んで殺したくらいにしておいてくれ」

「そういうのが・・・お好きですか」

「・・・」

愛人宅に到着する二人の刑事。

そこは・・・庭付きの一戸建てだった。

「大した経済力だな」

「家族を支配するためにはそれなりの経済力が必要でしょう・・・霜川幸三は資産家ですよ」

「俺は・・・二階を検索する・・・お前は一階だ・・・何かあったらすぐに俺を呼べ」

「それは単独捜査にならないのですね」

「俺は東京都内に二人がいれば単独捜査にはならないと思う」

「なるほど・・・」

しかし・・・不意をつかれた東海林刑事はスタンガンの餌食となるのだった。

比奈子は・・・冷え切った部屋で霜川幸三の愛人の遺体を発見する。

「お姉さんも・・・警察の人?」

ふりかえった比奈子はスタンガンを構える男(間宮祥太朗)を発見する。

「あなたは・・・ニーチェ先生」

「誰だい・・・それは・・・ボクはケンジだよ」

「あなた・・・小学校に行きましたか」

「行かないよ・・・お父さんは・・・行かなくていいって」

「そうですか・・・どうしてお兄さんたちを殺したの」

「みんなで一緒に引っ越すためだよ」

「でも・・・捨てちゃったのね」

「仕方ないじゃないか・・・」

「嘘・・・あなたが本当に暮らしたかったのは・・・お父さんとお母さんだけなのでしょう」

「・・・」

「だから・・・この家の人を始末したら・・・ここにお父さんとお母さんを運びこむつもりだったのね」

「お母さんはいないよ・・・ボクにはお父さんとお姉さんがいるだけさ・・・お姉さんは・・・ボクなんか・・・産みたくなかったって・・・」

「あなたは・・・お母さん・・・お姉さんに笑ってほしかったのね」

「そうだよ・・・殺してから笑顔になってもらったんだ」

「夢が叶ってよかったわね」

「ありがとう・・・」

「でも・・・残念ね・・・お父さんもお母さん・・・お姉さんも・・・警察が運んで行っちゃって・・・」

「大丈夫だよ・・・綺麗なお姉さん・・・お姉さんにボクのお嫁さんになってもらうから・・・ねえ・・・新しい家族になってよ」

「液体窒素で凍らせるのね」

「うん・・・その前にバチバチで動けないようにして・・・首を絞めるんだ」

「いい顔ね・・・その顔が見たかった・・・あなたにとって愛は・・・殺して凍らせて・・・支配することね」

「うん・・・死んだら・・・人は裏切らないって・・・お父さんが」

比奈子はバッグの中に手を入れて身構える。

そこへ・・・回復した東海林刑事が乱入する。

ケンジを投げ飛ばした東海林刑事は馬乗りになって殴打を開始する。

「先輩・・・その子は・・・」

可哀想なのだ・・・とは比奈子は語らない。

容疑者を半殺しにしなければ気が済まない東海林刑事が興味深かったのである。

「人殺しは知らないといけないんだ・・・自分が死にそうな気分になる瞬間を」

「もしもし・・・班長・・・早く来ないと・・・容疑者が死にます」

駆けつける厚田班だった。

「また・・・やっちゃいました」

「ほどほどにな・・・」

東海林刑事を庇って庇って庇いまくる厚田班長なのである。

比奈子は質問する。

「東海林刑事の妹さんはどうなりましたか」

「変質者に殺されたよ」

「なるほど・・・」

「よくある話だろう」

「事件的にはそうなりますね」

「それで東海林の気が晴れるなら・・・容疑者を半殺しにするくらいはいいと思う」

「・・・」

比奈子は中島と密会する。

連続殺人犯獄中死事件に・・・中島がなんらかの関与をしていると・・・比奈子が想定していないことはありえない。

中島も・・・比奈子の想定を想定しているのだろう。

「先生のヒントのおかげで事件を解決することができました」

「あなたは・・・いつも笑顔ですね」

「・・・」

「無理はしなくていいですよ・・・あなたの笑顔は確かに・・・交渉スキルとしては有効だ」

「・・・」

「しかし・・・演技としての笑顔は私には無効です」

「・・・」

「ありのままのあなたでいいのです・・・あなたは・・・興味深い人だから」

「そうですか・・」

笑顔を消した比奈子は・・・バッグからナイフを取り出した!

凡庸な刑事ドラマのファンにはあれだが・・・このドラマは比奈子と異常犯罪者の愛の物語なのである。比奈子には基本的に組織的な犯罪捜査は不必要なのです・・・。

なにしろ・・・比奈子単独で・・・犯人は解明できるのですから・・・。

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2016年7月19日 (火)

誰か私にご褒美をください(桐谷美玲)グリーン・アスパラガス・ブルース(山崎賢人)

初回の冒頭はウェディングケーキを作る主人公でバック・グラウンド・ミュージックは「Butterfly/木村カエラ」(2009年)だった。言わずと知れたウエディング・ソングである。

ドラマではこうした実在の風俗に基づく固有名詞の挿入は常套手段だが、虚構の世界ではスティーヴン・キングのようにことさらに・・・そういうものを盛り込むタイプとコマーシャリズムを嫌悪するタイプに分かれる。

どちらかといえば・・・キッドは後者に属するのだが・・・現実世界を描くにあたって・・・実在する風俗のディテールを描くことが強力なテクニックであることは認める。

主人公を演じる女優の実年齢は26歳である。

2009年には19歳だったことになり、成人を前にして・・・木村カエラが親友の結婚式のために書き下ろしたとされる曲に・・・ときめきや憧れを感じたことは簡単に想像できる。

挿入された風俗の固有名詞が作品に奥行きを与えることができれば・・・それは工夫と言えるだろう。

今回は「First Love/宇多田ヒカル」(1999年)である。

平均視聴率21.5%を獲得したドラマ「魔女の条件」の主題歌であり、あやかりたい気持ちもあるだろうが・・もちろん、主人公の初恋の気持ちを重ねているわけである。当時の主人公は小学生だったわけだ。「魔女の条件」の道ならぬ恋をする主人公の年令設定は26歳であり・・・「彼女」と比較した時のその頃のさらには今の「自分」の幼さも仄かに浮かび上がることになる。

どちらも「ラヴソング」であるから・・・この枠の前作「ラヴソング」に対する敬意とも皮肉とも受け取れる。

初回には主人公の書棚に「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-/和月伸宏」と「NANA/矢沢あい」が並んでいたが・・・脚本家の前作「恋仲」(2015年)も「盗まれたコミック」が重要なアイテムとなっていた。少年マンガと少女マンガが並んでいることは・・・主人公の性的な未成熟を示しているとも言える。どちらも大手出版社の「集英社」刊行なのでベタな性格を象徴している可能性もある。

なりふり構わぬ小ネタの挿入とは違い・・・こういう趣味は可愛い感じがする。

で、『好きな人がいること・第2回』(フジテレビ20160718PM9~)脚本・桑村さや香、演出・金井紘を見た。パティシエの櫻井美咲(桐谷美玲)は失職中に・・・学生時代の憧れの先輩だった柴崎千秋(三浦翔平)と再会し、千秋の経営する海辺の町のレストラン「Sea Sons」に住み込みで就職することになる。千秋の弟でカリスマ・シェフの夏向(山崎賢人)とは最悪の出会いをするが腕を認められ・・・厨房への入ることを許されるのだった。しかし・・・買い出しの途中で千秋が謎の美女と結婚式場に消えるのを目撃した美咲は動揺し、グリーンアスパラガスを購入してしまうのだった。

思わず、スマホと称される携帯電話機のデバイスで検索大手企業が提供する音楽サービスを利用し「最初の恋心」を確認する美咲だった。

あなたは・・・誰を・・・想っているの?

「音楽を止めて」

思わず・・・スマホと称される携帯電話機のデバイス内の電子的執事に命ずる美咲だった。

「停止シマス」

心乱れる美咲なのだ。

時をかける少女」が近所で時をかけているのも知らず海岸に背を向ける美咲だった。

「なぜ・・・アスパラなんか買ってきた」

「アスパラみたいだったんです・・・シュッとしていて・・・千秋さんに相応しいアスパラ美女でした・・・そりゃ・・・千秋さんですからアスパラみたいな婚約者がいたっておかしくないんですけど・・・そのうち・・・このアスパラと結婚するんだとか打ち明けられてしまうのかしら」

「・・・バカは幸せでいいな」

事情を察して年下の男である夏向は微笑む。

そこへ・・・千秋が件の美女・高月楓(菜々緒)を伴って現れる。

沸騰する一部お茶の間の「サイレーン」愛好家たち・・・。

「君に・・・ウエディングケーキを作ってもらいたいんだ・・・」

「け、結婚おめでとうございます・・・凄くお似合いですね」

しかし、笑いだす千秋と楓・・・。

結婚するのは二人の大学の友人で・・・二人は結婚式の幹事を務めるのだった。

「あ・・・そうだったんですか・・・私・・・変なことを・・・」

安堵に胸をなでおろす美咲なのである。

美咲の安堵を見抜いたのは・・・夏向だけだったようだ。

「お相手」だからなっ。

もちろん・・・千秋は最初から・・・すべてを心得ているかもしれないが・・・。

そういうことも含めての「お楽しみ」だからなっ。

ケーキ作りのアイディアを得ることに没頭する美咲・・・。

千秋に・・・結婚する二人について質問する。

「どうして・・・そんなことを知りたいのかな」

「お二人のことをよく知った上で・・・お二人のための特別なケーキを作りたいのです」

「なるほど・・・それなら二人に直接聞くのはどうかな」

「はい」

「君がいてくれて・・・本当によかったよ・・・」

千秋の言葉を持ちかえり・・・不気味な赤い抱き枕に喜びをぶつける美咲だった。

「君がいてくれて・・・よかったよ・・・ですって・・・君がいてくれてよかった・・・きゃああああ」

ひとつ屋根の下は完全防音なのか・・・。

結婚する二人は一寸法師(前野朋哉)とアニメ声(松本まりか)だった。

日村信之(浜野謙太)の経営するサーフショップ「LEG END」で二人にインタビューする美咲。

「薔薇の花束をブレゼントしてくれたの」

「素敵ですね」

美咲は・・・二人の思い出の写真にヒントを求める。

しかし・・・発見したのは学生時代の・・・仲睦まじい千秋と楓のスナップ写真だった・・・。

千秋と楓は・・・学生時代に交際していたが・・・ピアニストの楓がボストンに留学したために別れたらしい・・・。

再び・・・海岸線で動揺を鎮める美咲。

「別れた二人があんなに仲良くできるものなの?」

「人間ノ心ハ複雑ナモノデス」

淡々とアドバイスする電子的執事。

単純な美咲には・・・理解が難しいらしい・・・。

とにかく・・・ケーキのアイディアは得た美咲・・・。

しかし・・・結婚式には問題が発生する。

式場の調理スタッフが・・・生牡蠣に当たって集団休職したのである。

恐ろしすぎる事態じゃないか・・・。

「五十人分の料理を頼めないか」と兄の千秋は弟の夏向に頭を下げる。

「いくらなんでも・・・無理だよ」

「Daniel Thomsonのサーフボードでどうだ」

「引き受けた」

カリスマシェフは・・・サーファーだった。

兄の夏向は弟の冬真(野村周平)に手伝いを頼む。

「ごめん・・・もうすぐ試験なんだ」

調理師学校に通っている冬真だったが・・・同級生の二宮風花(飯豊まりえ)との会話で・・・卒業への熱意がないことが明らかになる。

「Sea Sons」を傘下に収めようとしている企業家の東村了(吉田鋼太郎)が入手した「柴崎三兄弟の秘密」が関与するのかもしれないし・・・単にちゃらいだけなのかもしれない。

結婚式前日・・・夏向は千秋を買い出しに連れ出す。

なにしろ・・・五十人前の食材だ・・・普通はトラックじゃないか。

だが・・・「だまって俺についてこい」と言われた美咲は「食材のすべて」を持たされるのだった。

そこに・・・千秋と楓が現れる。

何故か・・・二人を見ると物影に隠れる美咲だった。

わざとらしいにも程があるのだが・・・本人はあくまで動揺が隠せないだけなのだ。

結局・・・食事に誘われ・・・千秋と楓に挟まれた子供のような美咲である。

学生時代に店でアルバイトをしていた楓は・・・「シラスパスタ」を注文し・・・マスターのリクエストに応える。

誕生祝いの客のための「革命のエチュード/ショパン」からの「ハッピーバースデートゥーユー」をピアノで演奏する。

その才媛ぶりに・・・心穏やかではいられない美咲。

そんな美咲を・・・ついに・・・楓がロックオンするのだった。

「美咲の千秋に対する恋心」を捕捉したらしい。

美咲の恋心が銃撃される予感である。

恋に揺れる美咲だったが・・・パティシエとして厨房に入れば・・・ケーキ作りに没頭できるらしい。

料理の仕込みをする夏向よりも早く・・・ウエディングケーキを完成させるのだった。

「終わったなら・・・とっとと帰れ・・・」

しかし・・・見て見ぬフリはできない美咲なのである。

「ジャガイモの皮くらい剥けますから」

夏向の調理助手を申し出る美咲。

「皮はもっと薄く剥け」

あくまで・・・上から目線の夏向である。

二人は・・・主人公とお相手役として・・・息のあったプレーで調理をフィニッシュするのだった。

夏向は「礼」として冷えたビールを美咲に贈るのだった。

「おかげで間に合ったよ・・・」

「ご褒美ですね」

「?」

「私・・・子供の頃・・・がんばった時にもらえる御褒美が・・・凄く楽しみだったんです」

「・・・」

応じない夏向は・・・もしかしたら・・・ご褒美とは縁のない子供時代を過ごした可能性がある。

「大人になったら・・・ご褒美はなくなったけど・・・お客様の喜ぶ顔は凄く楽しみになりました」

「まあ・・・よく頑張ったよ・・・兄貴に媚売るためだとしてもね」

「私・・・可愛いって言われるよりもかっこいいって言われたいんです」

「?」

「でも・・・千秋さんにだけは・・・可愛いって言われたいんです」

「・・・」

夜風が寝不足の二人の目を醒ますのだった・・・。

結婚式・・・当日・・・ブーケトスで・・・千秋に「交際再開」のトスを投げた楓は・・・千秋の反応の鈍さに・・・少し苛立ちを感じる。

千秋にケーキを運ぶ美咲を捉えた楓は・・・「意地悪な気持ちで千秋とイチャイチャして見せるテクニック」を披露する。

たちまち・・・ケーキを皿ごと落とす美咲・・・。

食糧を粗末にするにも程がある・・・と二週連続でお茶の間は激昂するのだった。

続いて披露宴が開始され・・・美咲の薔薇の花束ケーキが喝采を浴びる。

だが・・・圧倒する楓のピアノ演奏。

そして・・・司会の日村信之から・・・余興の泥鰌すくいのお相手として指名される美咲。

義務教育の必修課目として「泥鰌すくい」があるかのように・・・即興で見事な泥鰌すくいを披露して会場を沸かせる美咲だった。

しかし・・・「好きな人の前で・・・それはあんまりだな」的に・・・お相手役の夏向は美咲を見つめるのだった。

面白メイクの名残のあるおかめの美咲を結婚式場から連れ出し・・・係留してあるボートに乗せる夏向・・・。

「お前に・・・見せたいものがある」

「え」

そして・・・夕暮れのクルージングに出発する美咲と夏向である。

そうだ・・・これが月9というものだ。

夏向は・・・変な形の島を前座として披露する。

灯台が寝そべった人間の男根みたいな島だ・・・おいっ。

そして・・・メイクを洗い流すために美咲を海に突き落とす夏向・・・。

ライフジャケット着用だが・・・お約束で「泳げない」美咲である。

あわてて・・・救助する夏向。

二人は・・・騒動で打ち解ける。

美咲の鬱屈も流れ去る・・・。

そして・・・「最高の夕陽が見えるポイント」に上陸する二人。

「ちょっと・・・待ってよ」

慣れない岩場歩きに戸惑う美咲。

マイペースの夏向・・・。

しかし・・・絶景が・・・美咲の心を撃ち抜くのだった・・・。

「素敵・・・どうして・・・これを見せてくれたの」

「ご褒美だよ・・・お前は・・・今日・・・頑張ったし・・・かっこよかったから」

「・・・」

言葉を失う・・・美咲だった。

繰り返すが・・・これが月9というものだ。

美しい女と美しい男が美しい恋をする。

これがすべてのドラマの基本なのである。

これでいいのだ。

しかし・・・最終回ではないのでキスはしません。

ちなみに・・・アスパラといえば缶詰のホワイトアスパラガスを思い出す世代があって・・・軟白栽培せずに普通に育てたアスパラをグリーンアスバラガスと呼んだ世代があって・・・アスパラといえばグリーンアスバラガスを指す世代がある。

どんな世代にとっても・・・月9はこういう王道でいいと考える。

それにしても演技力には定評のある主人公・・・松坂慶子化を経て・・・完全に凄い感じになってきたな・・・。

圧倒されるぞ・・・。

なにしろ・・・絶世の美女が一瞬・・・そうではないように思わせるんだからな。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

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2016年7月18日 (月)

血の匂いのする殺生関白、好色な下種野郎、謀反者の末路に怯えうろたえた挙句に・・・この始末・・・いざやわがうらみ思い知らせてくれようぞ(長澤まさみ)

前回。妄想が先走ったよな。

仕方ないじゃないか・・・ここは基本的に定説進行だから。

そもそも妄想とは主観的な虚構だからな・・・歴史という集団妄想とある程度はかぶる。

それにしても太閤秀吉と関白秀次の歴史的事件を知らない人は世界中に五十億人はいるだろう。

どういうスケールの断定なんだよ。

真田信繁と大谷吉継の娘もしくは養女の婚姻が関白秀次の死の前か後かは・・・意見の分かれるところだからな。

大河の脚本家も・・・どちらか自由に選べるわけである。

作劇として面白い方を選択できる喜びがそこにはあると妄想できる。

このプログにおけるレビューは作品を美化する傾向があるが・・・それはオリジナルに敬意を払っているからだと御理解いただきたい。

当然のように「歴史」という「虚構」のオリジナル性は高く、「歴史ドラマ」の創作には「歴史」に対する敬意を求めたい。

研究家が古文書を紐解き、愛好家が墓を探索し、人々が伝承を営む・・・そういう血と汗と涙の結晶なのだ。

だから・・・「脚本家」が「歴史に興味はない」などと口が裂けたら言ってもいいが・・・好感は持てない。

そういう意味で・・・今年の大河ドラマはうっとりするのである。

毎回、実に刺激的で・・・素晴らしい虚構の域に達していると考える。

ま・・・今回は少し策士策に溺れている感じはしたけどな。

で、『真田丸・第28回』(NHK総合20160717PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・土井祥平を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は真田信幸の最初の正室とされるおこうこと清音院殿(真田信綱の娘)の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。清音院殿が信幸(信之)の長男・信吉を生むのは文禄四年(1595年)とされていますので秀次事件の起きる七月にはすでに懐妊が明らかになっていると思われますが虚構的には綱渡りでございますねえ。徳川家康と徳川秀忠の初めての共演については・・・確かに父と息子の葛藤についても描かれている可能性がございますね。キッドとしては単に・・・物凄くおっとりした性格の描写とストレートに受けとめました。用心深く、礼儀正しいために・・・家来筋より頭を垂れてしまう・・・ある意味、間が悪い・・・「関ヶ原の合戦に遅参」の壮大な前フリだったのではないでしょうか。家康の困惑は・・・嫌な予感を感じたからだったと邪推いたします。秀忠は基本バカボンだから・・・。じゃあ、家康はバカボンのパパなのか・・・。信繫の側室の一人、隆清院(御田姫の母)が海外留学してしまったので・・・御田姫と三好幸信を生むために帰国子女になるのか・・・なかなか主人公が正室と側室を同時に愛する展開にならない・・・恐ろしいお茶の間大河の壁・・・なのですが・・・真田信繁の正室・側室描き下ろしイラストコレクションがコンプリートなるかも楽しみです・・・しかし、あくまでマイペースでお願い申しあげます。

Sanada028天正七年(1579年)、徳川家康の嫡男・信康は織田信長の命により切腹。天正十二年(1584年)、家康の次男・秀康は羽柴秀吉の養子となり羽柴秀康を称す。天正十五年(1587年)、家康の三男は豊臣秀忠として従五位下侍従となる。天正十六年(1588年)秀康は豊臣姓を賜る。天正十七年(1589年)秀吉に嫡男・鶴松誕生。天正十八年(1590年)、秀康は秀吉の命により結城晴朝の婿養子となり結城秀朝を称す。天正二十年(1592年)、豊臣秀忠は従三位権中納言となる。文禄二年(1593年)八月、豊臣秀頼(拾丸)誕生。文禄三年(1594年)秀忠は権中納言を辞任。家康の次女で北条氏直と死別した督姫が秀吉の命により三河国吉田城主・池田輝政に再嫁する。文禄四年(1595年)七月、石田三成など太閤秀吉の奉行衆が聚楽第の関白秀次に「謀反の疑い」を問責。秀次の宿老であった山内一豊や養父であった宮部継潤が伏見城への出頭を秀次に促す。伏見で秀次は即日高野山に追放処分となる。高野山で福島正則らが秀次に賜死を伝える。秀吉は伏見で秀次の首を検分。八月、三条河原にて秀次の正室・一の台(菊亭晴季の娘)ら妻子・侍女・乳母など三十九名が斬首となる。池田輝政の妹である若御前、真田信繁の側室他、数名は助命される。秀吉の古参の家臣であった前野将右衛門長康ら秀次の家老も切腹して果てる。秀次の謀反の真偽については謎に包まれている。九月、豊臣秀忠は秀吉の養女・江を正室とする。

池田輝政は織田信長の乳母兄弟だった池田恒興の次男であり、小牧・長久手の戦いで父と兄・元助が戦死したために家督を継いでいる。輝政の妹は関白秀次の正室である。

しかし・・・秀吉が豊臣姓を得ることを周旋した菊亭晴季の娘が関白秀次の一の台になったことで・・・秀次の筆頭与力として面目を潰された恰好となった。

だが・・・若御前はくのいちであり・・・秀吉の放った秀次の目付けなのである。

一方、輝政は徳川家康の娘である督姫を継室として迎えた。

もちろん、督姫はくのいちであり・・・家康が豊臣政権に打ちこんだ楔のひとつである。

織田信長が構想した天下統一は・・・信長亡き後・・・信長の家臣である秀吉と盟友であった家康の阿吽の呼吸で成し遂げられた。

しかし・・・秀吉が海外遠征に着手する中・・・豊臣家と徳川家の暗闘は続いていたのである。

老齢の秀吉は嫡子誕生と喪失の後の第二子誕生に・・・忍びとしての心を失いつつあった。

その一瞬の隙を家康が突く。

秀次が酒の席で語った秀吉亡き後の世作りの構想は・・・緩やかな大名連合制であった。

豊臣家独裁による中央集権制を目指す官僚的な石田三成には・・・それは危険な思想に映る。

外交交渉においてすでに「明国降伏」という虚偽申告をしている三成ら和平派は・・・事実を隠すための火種を望んでいた。

徳川諜報網は・・・「秀次謀反の噂」を巧妙に仕立てる。

それは・・・三成にとって・・・秀吉の目を外から内に向けさせる恰好のチャンスだった。

秀次の若御前から池田輝政に。輝政の正室・督姫から徳川家康に。徳川家康から石田三成に伝えられた「戯言」は・・・たちまち真実へと変換された。

「秀次が謀反など・・・」と秀吉は疑う。

「唐入りの恩賞がないことに・・・不満を持つ大名が多くいます・・・」

「・・・」

「関白殿下が・・・出陣しなかったことは豊臣家にとって・・・喜ばしいことではありません」

「まるで・・・負け戦の責任を秀次にとらせるように聞こえるぞ・・・佐吉よ・・・」

「明国への使者が戻るまでは・・・勝ち戦とは言えませぬ・・・」

「とにかく・・・秀次に申し開きさせよ・・・」

しかし・・・三成は・・・秀次を詰問して・・・追いつめた。

聚楽第の秀次は・・・身の危険を感じ・・・京を脱出し・・・高野山を目指す。

秀次の周辺には・・・古き藤原の忍びが警護についている。

秀吉が出奔した秀次の暗殺を決断した瞬間・・・豊臣の忍びと古き藤原の忍びの暗闘が開始された。

「藤吉郎め・・・とち狂ったかや」

尾張・美濃国境の古き忍びである前野将右衛門は京から大和へと早駆けする馬上で呻いた。

倒しても倒しても討手が待ち伏せているのである。

「殿・・・お引きなされ」

秀次は馬術に優れていたが・・・矢玉に襲われ・・・獣道の藪の中に投げ出される。

将右衛門は馬上で忍び鉄砲を放つと馬を秀次に譲る。

将右衛門に射殺された討手が樹上から落下する。

「ここは一歩も通すまいぞ」

秀次を逃がし鉄砲を構えた将右衛門の影から・・・吹き矢が吹かれた。

「お」

振り返った将右衛門は自分の影から忍びが飛翔するのを見た。

「青影参上・・・」

将右衛門は矢針の毒が全身に回るのを感じる。

一人・・・また一人と・・・秀次の周囲から武者が消えて行く。

それでも・・・秀次は闇の中を疾走する。

影の忍者による暗殺陣の罠が待つ・・・高野山を目指して。

真田佐助は・・・穏行の術で・・・すべてを見ていた。

「太閤ほどのものが・・・かような術中に陥るとは・・・」

「上には上がいるものよ」

霧隠才蔵は呟いた。

「目先のことに・・・目が眩んでおるのだ」

真田幸村は・・・幼子を抱く秀吉の姿を思い浮かべる。

高野山の寺院の影から三人の忍びが虚空へと舞い上がる。

秀次の非業の死を見届けるために。

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2016年7月17日 (日)

彼女の写真を撮った夏(黒島結菜)今日、友達が出来ました(高月彩良)

時は不思議なもの。

それを流れていくものと捉える人がいる。

フリがあってオチがあるのは時が流れているからである。

人間がそういう流れを感じるので・・・時は主観的なものであると捉える人がいる。

客観的な時は計れると捉える人がいる。

時を計る装置が時計である。

時計の計った客観的な時間も主観によれば長かったり短かったりすると捉える人がいる。

時は未来に向かって流れて行くのだろうか。

それとも・・・過去へと流れ去っていくのだろうか。

時は過ぎ去ればすべてが消えてしまうと捉える人もいる。

時が過ぎ去れば消え去るものだとすれば・・・過去に戻ってもそこには何もないのだ。

そこに何かがあると思うのは・・・単なる空想にすぎないのかもしれない。

過去に広がる・・・無限の虚空。

もちろん・・・そんなところにかけていけば・・・即死である。

で、『時をかける少女・第2回』(日本テレビ20160716PM9~)原作・筒井康隆、脚本・渡部亮平、演出・岩本仁志を見た。高校生として最後の夏休みを迎える直前・・・二十二世紀からやってきた未来人の「時をかけるクスリ」を吸引し「時をかける少女」となった2016年の芳山未羽(黒島結菜)・・・。クスリを紛失した未来人のケン・ソゴル(菊池風磨)は一人暮らしの深町奈緒子(高畑淳子)や藤浦東高校の人々に催眠による記憶改変を行い、芳山くんの幼馴染の浅倉吾朗(竹内涼真)の「良い思い出」を奪って21世紀には実在しない深町翔平になりすます。すべては「芳山くんのせいだ」と責任転嫁する翔平だが・・・そもそもケンとゾーイ(吉本実憂)が時間を越えなければ何も起こらなかったのである。

ケンは薬学の研究員。ゾーイはその後輩である。

二人の会話によれば・・・22世紀の世界は「あの日」以来、一年中、雪に閉ざされた環境になっている。

「あの日」が地球規模の気候変動をもたらしたらしい。

超管理社会になった世界では・・・人々は遺伝子情報に基づいた交配を行っているらしい。

つまり・・・22世紀には「夏」も「恋」もないのである。

西瓜もないのだった。

未来技術の洗脳によって翔平/ケンを自分の息子と思いこまされた深町奈緒子は疑似母性愛の喜びに包まれる。

西瓜を生まれて初めて食べた翔平はその美味しさに驚愕するのだった。

「お母さん・・・僕はキスがしてみたい」

「え」

「お母さんで練習してみたい」

「気持ちの悪いことを言わないで・・・自分の手にしなさい」

「えええ」

短期滞在の予定だった翔平には21世紀についての漠然とした知識があるだけだった。

しかし・・・「西瓜のない世界」から来た翔平にとって「西瓜のある世界」に生きる人々は羨ましい存在になってしまったのかもしれない。

そして・・・「あの日」の責任が「過去の人間」にある以上・・・「未来の人間」は過去の人間に対して何をしても許されると思っている可能性もある。

精神支配技術によって・・・過去の人間を自分勝手にコントロールしておきながら・・・悪びれたところがない翔平・・・いや・・・単なる未熟な若者なのではないだろうか。

とにかく・・・初めて食べるキャベツや胡瓜に歓喜するゾーイは「早く時をかけるクスリを再調合しろ」と翔平を急かす。

しかし・・・「恋」という「性欲」に目覚めた翔平は・・・芳山くんに「キスをしたい」気持ちで胸がいっぱいになるのだった。

翔平に「よき思い出」を奪われた上に・・・芳山くんが時をかけることによって「勇気を出して初めての告白」も「なかったこと」にされてしまう吾郎ちゃん。

「吾郎ちゃんは芳山くんが好きなのかい・・・実は僕もなんだ」

「え」

「吾郎ちゃんと芳山くんはキスをしたのかい」

「ええっ」

「まだなんだね・・・よし・・・僕が先に芳山くんとキスするぞ」

「えええ」

数日前から急に「幼馴染」になった翔平の・・・無邪気ゆえの不気味な言動に戸惑う吾郎ちゃんなのである。

七月十日・・・吾郎ちゃんから芳山くんへの告白がなかったことにされ・・・起きなかった事故から翔平を芳山くんが救った翌日。

藤浦東高校3年6組の担任でもある矢野和孝(加藤シゲアキ)の数学の授業で居眠り中に淫夢を見る芳山くん。

夢の中で・・・いつも吾郎ちゃんがキスを求めてくるのだが・・・思わず拒んでしまうという処女の願望と恐怖が交錯した芳山くん。そこへ翔平が登場し・・・キスを求めてくる。芳山くんは不安と期待を同時に感じるのだった。精神を改造された芳山くんもまた・・・翔平に性的魅力を感じ始めている。

吾郎ちゃんにとって残酷な精神の迷宮である。

「そんなのだめよ!」

「何がダメなんだ・・・」

夏の陽射しの中で・・・矢野先生は芳山くんを叱責するのだった。

昼休み・・・屋上にやってきた一人未来人が紛れ込んでいる幼馴染トリオは・・・「自殺しようとしているように見える男子生徒」を発見する。

芳山くんが抱きとめるが・・・西岡光(森永悠希)は自殺しようとしていたわけではなかったらしい。

「危ないじゃないか・・・死ぬとこだったぞ」

「え・・・でも・・・」

「僕は・・・高い所が好きなんだ」

「・・・」

「というか・・・急に好きになった」

西岡光は生物部の部室で・・・手術跡を披露する。

その乳首を堪能する芳山くん。

「僕は二年前に心臓の移植手術を受けました・・・それ以来・・・高い所にあがってドキドキするようになったんです・・・それから夜八時頃になると・・・胸が高鳴るんです」

「臓器移植による嗜好の変化があると言う人もいるね・・・心臓にも記憶があるのかもしれない・・・まあ疑似科学の領域だけどね」

西瓜を堪能しながら・・・翔平は雑学的知識を披露する。

「僕が・・・その人から心臓をもらって生きているわけなので・・・その人がそう願うなら・・・できるだけ高い所に昇ってドキドキしようと思うんだ」

「それって・・・危険な感じがします」

「でも・・・高い所に昇ってドキドキすると・・・生きていることの喜びが・・・」

「それは・・・もう完全に危ないね」

「ドナーがどんな人かは・・・」

「もちろん・・・教えてもらえないのです・・・ただ・・・同年代の人だったそうです」

「・・・」

芳山くんの好奇心に火がつくのだった。

「まさか・・・よからぬことをたくらんでいるじゃないだろうな」と釘を刺す翔平。

「あのね・・・私・・・実は時をかける少女になったの」

「え・・・」と驚く吾郎ちゃん。

「私・・・西岡くんに心臓を贈った人に会ってくる」

「何を馬鹿なことを・・・」

「会ってどうするつもりだ・・・」

「そんなこと・・・わからないよ・・・」

「余計なことを・・・」

しかし、時をかける芳山くんだった。

「え・・・」と驚く吾郎ちゃん。

説明しよう・・・この時空は分岐する不確定世界だが・・・神となった芳山くんの精神にある程度まで支配されている。芳山くんの主観に沿った過去へ芳山くんが飛翔する時・・・この時空から芳山くんの存在は消滅するのである。

芳山くんの主観に沿った過去から芳山くんの主観に沿った未来に芳山くんが飛翔する時には芳山くんの主観に沿った一種のタイムラグが生じ・・・芳山くんの存在が再び再構築される。

この時、芳山くんは「むにょっ」と呻くのだった。

「本当に・・・タイムリープしたのか」と吾郎。

「したよ・・・」

「その人に会えたのか・・・」と翔平。

「会えた・・・でもね・・・彼女は・・・高い所が好きというわけじゃなかったよ」

時間旅行を終えた芳山くんは夢見るような顔をしていた。

「彼女は・・・たぶん・・・恋をしていたんだ」

「恋?」

第一の二年前・・・。

西岡光の心臓移植の翌日の新聞を読んだ芳山くんは「坂道の途中で自転車のブレーキが故障したことによる死亡事故」の記事を発見する。

死亡したのは・・・県内の別の高校に通う女子生徒・松山実穂(高月彩良)だった。

実穂の生きている時間にジャンプした芳山くんは・・・好奇心の趣くままに・・・彼女を尾行する。

松山実穂は美しく賢い女子高校生だった。

放課後は図書館で受験勉強し・・・午後八時になると駅へと向う。

片思いをしている実穂は・・・通勤電車に乗る担任教師をそっと見送るのが日課だった。

実穂の心臓が高鳴るのは・・・「恋」のためだったのだ。

そして・・・実穂の恋する相手は・・・藤浦東高校に転任してくる前の・・・数学教師・矢野和孝だったのだ。

「禁断の恋か・・・」と吾郎ちゃん。

「何それ・・・美味しいの」と翔平。教師と生徒の道ならぬ恋の禁断さ加減が未来人には分からない。そもそも・・・未来人には「恋」そのものがわからないのだ。

「先生は・・・知ってたのかな」

「確かめてどうする・・・」

「だって・・・このままじゃ・・・彼女が可哀想だもの」

「君が本当に過去へ行っていたのだとしても・・・運命を変えるようなことをしてはダメだよ」

「・・・」

「もしも・・・君が彼女を助けたりしたら・・・心臓移植を受けられなくなった彼が・・・死んでしまうかもしれないんだよ」

「そんなの・・・わかってるけど・・・でも」

もどかしい気持ちを抱えて家路につく芳山くん。

妹の芳山那帆(石井萌々果)は彼氏との電話でイチャイチャしているのだった。

「同時に切るよ~・・・三二一・・・ずるい・・・切るって言ったのに~」

「誰と電話してんの」

「彼氏だよ」

「中学生のくせに生意気な・・・」

「中学二年になったら彼がいるのは当然でしょう・・・」

「う」

「お姉ちゃんも口惜しかった恋人作りなさいよ・・・青春の季節は短いよ」

「・・・」

芳山くんの中で膨張する今はもういない実穂への同情心・・・。

吾郎ちゃんも身悶えしていた。

まさか・・・翔平も・・・芳山くんに恋をしていたとは・・・。

一体・・・いつから・・・。

思い出そうとしても思い出せない吾郎ちゃんだった。

だが・・・いつも一緒だったのだ・・・翔平が芳山くんを好きになってもおかしくはない。

そう思いなおす吾郎ちゃんだった。

可哀想な吾郎ちゃん健在である。

いなかったんだよ・・・翔平の野郎は・・・と教えてあげたい一部お茶の間だった。

翌日・・・放課後の職員室を訪れた芳山くんは・・・矢野先生に質問する。

「先生は・・・生徒と恋をしたことはないんですか」

「何を言い出すんだ・・・お断りだぞ・・・」

「私じゃありません・・・前の学校とかで・・・」

「友達が俺のこと好きだとかと言いながら実は自分のこととかじゃないだろうな」

「違いますってば・・・じゃ・・・生徒から告白されたりとかは・・・」

「そうだな・・・いや・・・そんなことはなかったぞ・・・」

しかし・・・遠い目をする矢野先生に・・・「何か」を感じる芳山くん。

矢野先生も・・・彼女の存在を意識していたのかもしれないと推測する芳山くんである。

何故かもどかしい思いを抱いて写真部員として・・・風景写真に挑む芳山くん。

「電柱と電線ばっかじゃないか」と批評する翔平。

「それっぽいでしょう」

「これが・・・君の撮りたい写真なのか・・・」

「さあ・・・」

「でも・・・写真って面白いよね・・・時間が止まっているみたい」

「・・・」

「ねえ・・・人間でも撮ってみたら・・・僕ならヌードになっても・・・」

人間を撮る・・・時間を止める・・・閃く芳山くん。

そうだ・・・せめて・・・彼女の生きた証を・・・撮ってあげよう。

芳山くんは時をかけた。

第二の二年前・・・。

説明しよう・・・すでにこの時空における神となった芳山くんは・・・衣服と同様にカメラも過去に持ち込み可能なのだ。

「モデルになってください」とストレートにアタックする芳山くんだが・・・見知らぬ女子高校生を警戒する実穂だった。

「絶対に負けないじゃんけん作戦」で小刻みなタイムリープによりループを作り・・・実穂を口説く芳山くん。

ついに・・・披露困憊してしょんぼりしているところを・・・実穂に見出される。

「どうしたんですか・・・何かお困りなの・・・」

「写真を撮りたいんです・・・でもモデルになってくれる人がいなくて・・・」

「コンテストか・・・何か」

「そんなとこです」

「私にできることがあったら」

「いいんですか・・・モデルになってもらえますか」

「ええ・・・でも・・・コンテストに落選しても私のせいにしないでね・・・」

「やったーっ・・・釣れたーっ」

「え」

カメラマンとモデルとして急速に心を通わせる芳山くんと実穂。

七月の濡れた砂浜。爽やかに頬を撫でる風。黄金色の黄昏。

「私なんか・・・撮って楽しい」

「私・・・あなたの裸がみたいの・・・」

「え」

「心を裸にして・・・」

「・・・」

「好きなら好きって言えばいいのに・・・」

「え・・・」

「誰かに恋をしているんでしょう・・・」

「そんな・・・」

「顔に描いてあるもの・・・」

「まさか・・・」

「相手は・・・先生とかだったりして・・・」

「どうして・・・」

「本当にそうなの・・・」

「・・・」

「告白しないの・・・」

「志望校に合格して・・・卒業したらね・・・私・・・子供じゃないから・・・先生に迷惑かけたくないの」

「・・・」

受験も・・・合格発表も・・・卒業式も・・・告白も・・・その時は彼女にやってこないのだ。

「せめて・・・今、好きって言いなさいよ」

実穂はカメラに向って「好き」と囁いた。

芳山くんは・・・自分がとりかえしのつかないことをしてしまったことに気がついた。

「あの人がね・・・私の好きな先生・・・」

物影からこっそり・・・駅の改札口に消える二年前の矢野先生を指さす実穂。

「また・・・明日・・・学校で会えるんだけどね・・・夏休み長くて嫌だなあ・・・」

「・・・」

その日は・・・実穂の人生の最後の日だ。

明日、学校で矢野先生には会えない。

長い夏休みは始らない。

「写真できたらみせてね・・・モデルとしてチェック・・・あら・・・何故・・・泣いてるのよ」

写真を見せることはできない。

「まるで・・・一生の別れみたいじゃない・・・」

一生の別れなのだ。

「私・・・あなたと友達になれて・・・うれしいよ」

「わ・・・私も・・・」

実穂の自転車の荷台を握りしめる芳山くん。

「こらこら・・・帰れないぞ」

彼女を助けたら・・・彼が死ぬ・・・。

もう・・・彼には死んでもらおうかと思う芳山くんだった。

しかし・・・実穂は自転車を発進させた。

「じゃあ・・・またね」

芳山くんは・・・「さよなら」とつぶやいた。

夏の熱気が残る夜の街で芳山くんは時をかけた。

現在・・・夏休み直前。

七月の風が吹きわたるプールサイドで芳山くんは翔平に作品を見せた。

「これが・・・彼女か・・・」

「そうだよ・・・彼の心臓の彼女・・・」

「彼女は恋をしていたのかい」

「そう・・・彼の胸の中で・・・彼女の心臓は・・・今も高鳴ってるの・・・今にも踊りだしたい気分で・・・」

そこへ・・・二人への嫉妬を感じながら吾郎ちゃんがやってくる。

「え・・・綺麗な人じゃないか・・・」

「そうだよ・・・すごく美人だったんだよ・・・とてもいい子だったよ」

風が吾郎ちゃんの手から彼女を奪い去る。

「あ」

「ダメじゃないか」

「ごめん」

あわててプールに落ちた写真を拾おうとする吾郎ちゃん。

その隙をついて・・・芳山くんの唇を奪おうとする翔平だった。

「きゃ」

思わず・・・プールに落下する芳山くん。

芳山くんは・・・青春の匂いを嗅ぐ。

夏のプールの水の匂い。

その頃・・・西岡光は屋上で・・・一人・・・ダンスを踊っていた。

松山実穂の心臓のリズムに従って・・・。

太陽の光と・・・人間の影・・・。

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2016年7月16日 (土)

事件の謎はこの舌が味わった!(向井理)お金!(木村文乃)父と子の絆の物語(佐藤二朗)

法治国家であり・・・基本的人権を憲法が保障していて・・・国民主権である我が国だが・・・。

実際には無法なスペースもあり・・・人権と人権は衝突し・・・象徴とは何かも曖昧である。

そういうことなので・・・それぞれの人間は・・・なるべく・・・優しい心で生きてもらいたい。

だが・・・いくら愛がすべてだっと言っても・・・時には怒りがすべてを台無しにすることもある。

考えてみれば・・・東大合格を目指すあの子も・・・朝ドラマの主人公のあの子も・・・朝ドラマの脇役のあの子も・・・スケバン刑事の後継者のあの子も・・・基本・・・ヤンキー系だ・・・。

そういう事務所のカラーだったのか・・・。

陛下のお立場がどういうものなのか・・・民草は・・・日常的に考えるわけではない。

しかし・・・お側に仕えるものたちは・・・それなりに愛情を持ってお仕えしているはずである。

そもそも人間に「象徴」などという曖昧な定義をしていることが・・・過酷と言えば過酷なのだ。

その曖昧なものに・・・安易に触れるべきではないし・・・象徴が・・・地位についてお言葉にするのは惧れ多いことだろう。

できれば恙無く代を継いでもらいたい。

のんと言う他はない・・・この国なのである。

つっぱることが男のたったひとつの勲章だと信じたいのだ。

何を言ってるかわからんぞ。

言葉でなんか・・・何も伝わらないよ。

で、『神の舌を持つ男・第2回』(TBSテレビ20160715PM10~)原案・堤幸彦、脚本・櫻井武晴、演出・堤幸彦を見た。のんびりドラマに逃避していたいのに・・・いろいろと世間が煩わしいなあ。すぐそこに「ゲルニカ」が存在し、いまも「ゲルニカ」に喘ぐものがいるからなあ。そういうものを無視して・・・虚構の出来不出来を妄想したいだけなのに・・・。基本的に楽屋裏の薄暗い部分をあまり見せてはいけないのである。素晴らしいインターネットの時代だって一寸先は闇だ。硫酸や銃弾あるいは電動鋸は病んだ個人のものにしておきたいものなのだ。損して得取れという言葉もあるじゃないか・・・。

無味無臭のキスができる温泉芸者のミヤビを追って・・・伝説の三助・朝永平助(火野正平)の孫であり、謎の科学者・朝永竜助(宅麻伸)の息子である人間成分分析器・朝永蘭丸(向井理)はお供の古物の行商人・甕棺墓光(木村文乃)と宮沢賢治の心象スケッチを諳んじる宮沢寛治(佐藤二朗)を引き連れて鐡友温泉・南出田楼を目指すのだった。

予想されるミヤビを演じる女優ベスト10

①山口紗弥加

②広末涼子

③有村架純

④市川由衣

⑤綾瀬はるか

⑥仲間由紀恵

⑦大島優子

⑧木南晴夏

⑨本田翼

⑩加藤あい

まあ・・・隠した方が視聴率的に得策ということでは①だよな・・・。

小雪もいるぞ。

本当にこのスタッフは視聴率乞食だよな。

「錆びれた温泉ねえ・・・」

「せめて鄙びたと言ってやれ」

「アクセスの悪いど田舎ってこと・・・」

「・・・」

不毛の会話をしていると・・・燃料切れ警告表示が赤になる甕棺墓くんの愛車である。

ヒバゴン射撃場付近で車を捨てるトリオである。

ヒバゴンは日本に生息すると言われている類人猿型の未確認動物の一種である。

さらに奥地にある秘湯を目指すトリオだった。

「ヒバゴンが出るぞ」と今日も可愛い甕棺墓くんが叫ぶ。

しかし・・・蘭丸は交差する配管を発見する。

「触ってみてください」

「熱い」と宮沢。

「熱くない」と甕棺墓くん。

「こら」と叫ぶ・・・湯守の津村重吉(徳井優)だった。

「源泉管に触ったら火傷するぞ」

「もう・・・しました」と宮沢。

コミック「ゲンセンカン主人/つげ義春」(1968年)の引用がある。

ゲンセンカンは源泉館と推定されている。

つまり・・・源泉館から源泉管が伸びているわけである。

おい・・・小ネタに一々反応するつもりか。

自粛します。

「じゃ・・・こっちは・・・?」

「それは水道管・・・温泉と水を配合してちょうどいい湯温にするのが湯守の仕事です」

「なるほど・・・」

「ちょっと待て・・・今、水を出してやる」

しかし、吹きだすのは沸騰した温泉だった。

「熱い・・・」

「すまん・・・ここは間欠泉もあり・・・温泉の圧力が一定ではないのだ」

間欠泉の原理にも複数の仮説があるが・・・小規模な噴出を繰り返すところから・・・ここでは垂直管説が適当だろう。垂直の穴に地下水が流入し、地熱で湯温が上昇し、噴出によって穴の内部圧力が低下。これが繰り返されるわけである。

「圧力を一定に保つのも・・・湯守の腕次第ですよね」と蘭丸。

「そうじゃ」

トリオは目的地の「南出田楼」にたどり着く。

全室・VHS完備の温泉宿である。

しかし・・・ミヤビはすでに去っていた。

例によって無賃宿泊のための交渉に入るトリオである。

階段落ちをしながら登場した番頭(志賀廣太郎)は「伝説の三助の孫」に興味を示すが・・・女将の順子(山村紅葉)は「・・・今夜は客が一人なので・・・」と消極的である。

そこへ・・・十年ぶりに帰還する放蕩息子の天童(中尾明慶)・・・。

すこし頭の弱いギャル(大蔵愛)たちをナンパして帰って来たのだった。

ギャルたちはたちまち・・・伝説の三助の孫の虜となるのだった。

番頭は天童が「デザイヤー」になるために上京したと語る。

「DESIRE -情熱-/中森明菜」(1986年)と「ハードッコイ」という合いの手のネタがあって・・・おい。

もう、自粛します。

天童の目指したのはウェブデザイナー (web designer) だった。

ポスターのモデルとなったテツandトモ(写真登場)を意識したのか赤いジャージを来た仲居頭(江口のりこ)に案内され・・・細長い部屋で玉こんにゃく料理を食すトリオ。

そこに・・・「寺内貫太郎」風な親子喧嘩で乱入する湯守の津村重吉と天童だった。

ああ・・・懐かしい昭和テイストはどこまで続くんだ・・・初回・視聴率*6.4%だからな・・・。

親子の対立は・・・蘭丸の生い立ちへの回想を導く。

割烹着を来た女性研究者のいるラボを主催するらしい朝永竜助博士は幼い蘭丸に薬草を吟味させるという幼児虐待というべき教育を施していた。

主食がペンペン草という過酷な少年時代の果て・・・社交性のない凡人研究員となった蘭丸なのである。

すでに・・・生い立ちがネタじゃないか・・・。

とにかく・・・三助として・・・ギャルたちを天国に導き・・・需要不明のお茶の間サービスを繰り広げる蘭丸である・・・。

鄙びた温泉地で・・・浮世離れした湯けむり旅情を堪能する一同。

しかし・・・宿泊客(屋良学)が観光用の間欠泉の前で変死体となって発見され・・・物語はミステリモードに移行するのだった。

温泉マニア(越村友一)によれば被害者は成分分析キット「泉質くん」を携帯するほどの愛好家だったという。

仲居頭のサービスの悪さのために・・・温泉宿ランキング最下位の「南出田楼」に足を延ばすほどだったのだ。

そして・・・鐡友温泉の目黒町長(斉木しげる)は・・・湯守の重吉が死体を担いできて遺棄したと証言する。

今週のベテラン刑事(松澤一之)と若手刑事(森岡龍・・・「あまちゃん」の若き日の黒川正宗)は重吉を緊急逮捕。

しかし・・・「待った」をかける蘭丸である。

ゴスロリの甕棺墓くんによって「Right-onららぽーと新三郷店」ファッションに身を固めた蘭丸は「源泉管」を味わい・・・事件の謎を解明する。

「町長は・・・三十万円で口止めしたようですが・・・危険な濃度の硫化水素が間欠泉から吹きだす噂がありましたね・・・」

「う・・・」

温泉マニアは思わず金を町長に返却し、現金を見た甕棺墓くんは錯乱。

「そこで・・・硫化水素による事故に見せかけようと・・・湯守の重吉さんは・・・死体を移動させたのです」

「じゃあ・・・犯人はやはり重吉じゃないか・・・」

「いいえ・・・これは・・・子を想う親心による・・・死体遺棄です」

「なんだって・・・」

「源泉管を舐めてわかりましたが・・・血痕が残されていました・・・原因は調整ミスによる温泉の噴出・・・驚いた被害者は転倒して頭を撃ち・・・よろめいて谷底に落下したのです」

「見てたのかよ」

「事態を察した重吉さんは・・・死体を移動したのです・・・」

「じゃ・・・殺したのは俺か」

「殺人ではなく・・・これは事故・・・天童さんは・・・業務上過失致死の罪に問われます」

「親父・・・何故・・・俺なんかを庇って・・・」

「坊ちゃん・・・旦那様は坊ちゃんに・・・湯守を継承してもらいたかったのです」

「そんな・・・」

「君も正直に言えばよかったんだ・・・夢破れて帰って来たと・・・」とまとめる宮沢だった。

「しかし・・・どうして・・・重吉さんは・・・死体を発見したのですか」

「私は・・・ミヤビに邪な気持ちを抱いてしまいました・・・あの朝・・・逢引して下司なことをしようと考えていたのです・・・すべては天罰です・・・」

「なんですって・・・」激昂する女将だった。

すったもんだがあって・・・宮沢賢治を語りだす宮沢・・・。

「賢治も・・・質屋の父親との間に軋轢があったんだ」

「賢治は裕福な質屋の息子だったのね」

「あっちへふらふらこっちへふらふらさ・・・宗教にはまったり・・・人造宝石の工場を立てようとしたり・・・」

「あげくの果てに詩人になるなんて・・・」

「そういう自由なところが・・・乙女たちのロマンチック心に火をつけるんじゃないか」

「愛好家の多い人への陰口はほどほどにね」

四月四日、上田君と高橋君は今日も学校へ来なかった。上田君は師範学校の試験受けたそうだけれどもまだ入ったかどうかはわからない。高橋君は家で稼いでいて学校へは行かないと云ったそうだ。高橋君のところは去年の旱魃がいちばんひどかったそうだから今年はずいぶん難儀するだろう。

五月六日、今日学校で武田先生から三年生の修学旅行の話があった。けれども学校へ十九円納めるのだしあと五円もかかるそうだから。きっと行けると思う人はと云ったら内藤君や四人だけ手をあげた。みんな町の人たちだ。うちではやってくれるだろうか。

五月七日、今朝父へ学校からの手紙を渡してそれからいろいろ先生の云ったことを話そうとした。すると父は手紙を読んでしまってあとはなぜかあたりに気兼ねしたようすで僕が半分しか云わないうちに止めてしまった。そしてよく相談するからと云った。祖母や母に気兼ねをしているのかもしれない。

五月十一日、僕はもう行かなくてもいい。行かなくてもいいから学校では授業の時間に行く人を調べたり旅行の話をしたりしなければいいのだ。

五月十二日、父が母もまだ伊勢詣りさえしないのだし祖母だって伊勢詣り一ぺんとここらの観音巡り一ぺんしただけこの十何年死ぬまでに善光寺へお詣りしたいとそればかり云っているのだ、ことに去年からのここら全体の旱魃でいま外へ遊んで歩くなんてことはとなりやみんなへ悪くてどうもいけないということを云った。僕はいくら下を向いていても涙がこぼれて仕方なかった。

五月十四日、父がおそく帰って来て、僕を修学旅行にやると云った。

五月十八日、汽車は闇のなかをどんどん北へ走って行く。

(或る農学生の日誌/宮沢賢治)

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2016年7月15日 (金)

死幣ーDEATH CASHー(松井珠理奈)いくら使うと死ぬのかしら一万円百万円十億円一兆円(吉岡里帆)

さて・・・概ね・・・決まったかな。

今年の夏は・・・。

(月)「好きな人がいること」(仮)

(火)「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」

(水)「家売るオンナ」

(木)「闇金ウシジマくん Season 3」(火曜深夜から仮押さえ)

(金)「神の舌を持つ男」

(土)「時をかける少女」

(日)「真田丸」

・・・というラインナップ・・・。「遺産相続弁護士 柿崎真一」は二回目もそこそこ面白かったが・・・あまりんしか見所がないのが残念だ。残りは日曜日の多部未華子の「仰げば尊し」と二階堂ふみの「そして、誰もいなくなった」そして山本美月の「HOPE~期待ゼロの新入社員~」だがおそらく変更はないだろう。脚本がそれほど期待できないからな。

そういうわけで・・・キャスティング以外は本当に見所のないこれを谷間のメモとしてレビューしておこう。

で、『死幣ーDEATH CASHー・第1回』(TBSテレビ201607140010~)脚本・吉田海輝、演出・渡瀬暁彦を見た。「死を呼ぶ紙幣で死幣」というダジャレである。一般的に人間にとって「死」は恐ろしいものだが・・・「死」そのものは一瞬である。死に至るまでに長く苦しんでもそれは「生」に過ぎない。恐ろしい死に方というものは生きているものの感覚なのである。まあ・・・一般的に・・・「どうせ死ぬにしてもあまり痛いのは嫌だなあ」という感じだ。「いっそひとおもいに死にたい」と誰もが思う。ギロチンなどは残酷に見えるがほぼ即死であり非常に楽な死に方の一つと言えるだろう。

とにかく・・・ダジャレで始る物語なので・・・それをホラーたらしめるにはそれなりに工夫も必要だが・・・本作品はそのままダメな感じに仕上がっている。お茶の間は恐怖したいのであって・・・苦笑がしたいわけではないからな。

「死」という「し」を使った言葉遊びのメモをしておこう。

たとえば「一般死民」・・・死んでいるな。

「死合わせ」「死援団体」「死法」「死会者」「死科医」「死揮者」「死験」「死好」「死高のメニュー」「死考」「死春期」「死令官」「死股」「死祭」「知能死数」「危険死想」「三流死大」「死民運動」「死立高校」「死天王」「死季」「死怨」「死煙」「死途不明金」「死那」「死認」「残留死念」「死農工商」「死望動機」「死万十」「死面楚歌」「死紋認証」「死半世紀」「死販」「死配者」「死範」「死費」「死服」「死有地」「死用方法」・・・もういいか。

まあ・・・「死幣」はなかなかに優れたダジャレなのである。

それだけに・・・もう少し怖くできたよなあ・・・お金の価値が解ってないんだろうなあ。

南由夏(松井珠理奈)七咲学院大学経済学部の一年生である。

稲川淳二の「怖い話」が大好きな妹の小夢を演じるのは中学生なのに連続テレビ小説「あさが来た」でいつまでもふゆ役だった清原果耶である。年相応の可愛い妹役でよかったな。しかし・・・恐ろしい死に方をするんじゃないだろうな。

「死幣はお金が欲しくてたまらない人に突然届きます・・・相手によってとてつもない大金であったりしますが・・・もちろん呪われたお金なんですな。見たところはただのお金・・・怪しいと思いつつ金があれば使いたくなるのが人情ってなもんで・・・この死幣をたいていのものが使ってしまうわけですが・・・やがて一万円札の福沢諭吉の肖像に目元から黒い染みが浮かび上がります・・・この黒い涙が流れると死幣を使ってしまった人は・・・世にも恐ろしい・・・見るも無残な死を遂げるのでございます・・・きゃああああああああああ」

「脅かさないで」

「でも・・・噂では・・・本当にあるらしいよ・・・お姉ちゃん・・・もしも紙幣が届いたらどうする?」

「・・・」

由夏は国際経済学の教授・財津太一郎(筧利夫)が指導を務める財津ゼミに属している。

彼女はゼミ仲間の一人・・・橘郁美(西田麻衣)と最近、連絡がとれないことを案じていた。

郁美と由夏・・・そしてやはりゼミ仲間の萩森一恵(吉岡里帆)は高校時代の同級生なのである。どんだけ仲良しなんだ・・・付属か・・・付属高校出身者か・・・。

この他に財津ゼミの一年生には林絵里菜(川栄李奈)がいます。

そして、財津ゼミの二年生には上野真理(中村ゆりか)もいます。

吉岡里帆、川栄李奈、そして中村ゆりかと・・・。この強力なメンバーが恐ろしい死に方をするかと思うとうっとりするわけだが・・・そこに至る過程も大切なんだよなあ。

さて・・・どんな死に方をしようがあまり興味がない男性陣は四年生の三浦智志(山田裕貴)・・・就職活動中である。「貧乏人にお金を援助しまくる仕事」を目指しているためになかなか内定をもらえないのだった・・・バカという他ないからな。二年生の川辺(白洲迅)は「槍投げ」で世界選手権を目指しているが最近、橘郁美を「やりにげ」したらしい。由夏と同じ一年生には灰谷源(葉山奨之)がいて・・・教授に高く評価されている守銭奴らしい。

どうやら・・・橘郁美が大学に来ないのは失恋のショックであるためらしい。

由夏も・・・萩森一恵も・・・仲良しじゃないんじゃないか。

「なんのために学費払ってんだか・・・」

「噂では・・・大金積んで整形したらしいよ」

「え・・・」

お茶の間だけが知らされるのだが・・・「死幣」の最初の犠牲者は橘郁美なのである。

さて・・・スーパー・ナチュラル・ホラーにとって最初の犠牲者は物凄く大切である。

「リング」にしろ「呪怨」にしろ・・・日常の中から突然、怪異がやってくる「恐ろしさ」を描かなければならないのだ。

しかし・・・主演女優中心の物語であるために・・・最初の犠牲者は・・・単に「変死体」として発見されるだけである。

誠にご愁傷様です。

そして・・・死体の第一発見者である由夏は・・・「お前が犯人だな」と闇雲に決め付ける頭のおかしな刑事に付き纏われる恐怖にも襲われる。藤谷署の若本猛刑事(戸次重幸)は明らかに最初から精神を病んでいるわけである。容疑者の事情聴取を全員一緒にするってどういうシステムなんだよ・・・。自称か・・・自称刑事なのか。・・・同僚の刑事や警察官を仕込む予算もないのか。

やがて・・・理想が高すぎて頭のおかしくなった三浦智志にも・・・「死幣」が届く。

「貧乏人にお金を援助しまくる企業」が存在しないと知った三浦は起業を決意したのだ。

貧乏人全員にお金を配るためにはとてつもない金額が必要だが・・・「死幣」は無尽蔵なのだ。

「この世から貧乏は消え・・・千年王国の時代が来る・・・だから・・・僕と結婚してくれ」

突然、三浦にプロポーズされてうっとりする由夏だった。

三浦は怪しい会社に怪しい甲冑を飾っている。

「・・・この置物は・・・」

「僕は・・・世界を貧困から救う騎士になるのさ・・・」

その時・・・風が吹けば桶屋が儲かる的に・・・いろいろあって甲冑の持つ剣が三浦を刺し貫くのだった。

「きゃああああああああああ」

そこへ・・・狂った刑事が乱入・・・。

「お前か・・・お前がやったんだな・・・」

なんのこっちゃ・・・ですね。

とにかく・・・これはきっと・・・そして誰もいなくなったの深夜版なんだろうな。

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お迎えデス。

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2016年7月14日 (木)

家売るオンナ(北川景子)彼女に売れない家はないらしい(仲村トオル)

ビジネスとは面白いものである。

働いて儲けるのは素晴らしいことだ。

ビジネスとは恐ろしいものである。

あらゆるものを奪っていくからだ。

かって様々なコンテンツに関わっていた頃・・・ビジネスというものの面白さに心が踊り、ビジネスというものの恐ろしさに身が竦んだものだ。

そもそもショー・ビジネスは浮草稼業である。

それを人の情けの通じるものにするのか・・・阿漕な生き地獄にするかは関係者の気持ち次第ではある。

まあ・・・どんなビジネスでもメシの種なので・・・飢えたくはないから譲れない部分もある。

しかし・・・人間から本名まで奪っておいて所属していない人間のファンクラブの会員を事務所が募集し続けているというのは・・・ビジネスとしても物凄く理解しにくい状況だな。

風通しが悪いにも程があるだろう。

もちろん・・・フィクションで女優からアイドルに転身した人間もいる御時世である。

すべて・・・虚構で冗談だったらいいのになあ・・・と思うわけである。

とはいうものの・・・光あるところに影があるというのはどうしようもないけどね。

誰かが席を譲れば誰かがすわれるものね。

このドラマは不動産業界のビジネスを描いているわけだが・・・フィクションなので安心できるなあ。

で、『家売るオンナ・第1回』(日本テレビ20160713PM10~)脚本・大石静、演出・猪股隆一を見た。そもそも・・・家を買う予定のない人には無縁のドラマなのである。不動産ドラマならまだ賃貸の人にも関係性が生じるが・・・もう買っちゃってひたすらローンを払ってる人でも売主にはなれるぞ・・・まあ・・・とにかく・・・五千万円で中古マンション買って数年立ったら住み替えるという人もいるだろうからな。とにかく・・・魔性のセールスマンが「家」を売って売って売りまくる話なのである。もう景気がいい話なのかどうかもわからなくなるほど売りつけるのだった。もげって言ってた可愛いあの子がこんな大女優になるなんてなあ。順調でよかったよなあ。あの子にも大変だろうけど幸せになってもらいたいよなあ。

2020年の東京五輪に向け・・・都心の地価はそれなりに上昇していた。

ビジネスチャンスの到来である。

しかし・・・テーコー不動産株式会社の新宿営業所売買営業課では・・・不況の間に低下しまくった士気を鼓舞する器ではない屋代課長(仲村トオル)の下で生ぬるい日々の暮らしが営まれているのだった。

エルメス好きのお客様のためにエルメスのネクタイを着用する気配りが出来る甘いマスクの王子様こと足立聡(千葉雄大)がエースというレベルの低さなのである。

そんな新宿営業所・・・目黒営業所の売上を倍増させた・・・「凄い美人」「社長の愛人という噂のある」・・・新たなるチーフ・三軒家万智が着任するのだった。

三軒家は・・・課長よりも早く出勤し・・・朝の光の逆光によるシルエットとなって・・・部下たちを出迎えるのだった。

ちなみに社内的階級は・・・課長→営業チーフ→その他の社員→デスクという序列である。

つまり・・・屋代課長は三軒家チーフの上司である。

しかし・・・三軒家には・・・その気はないらしい。

ちなみに三軒家は・・・三十歳という設定である。年上の課員には「敬称」を付けるが・・・年下である足立聡、白州美加(イモトアヤコ)、庭野聖司(工藤阿須加)、およびデスクの室田まどか(新木優子)は呼び捨てである。室田にいたっては員数外なので最初は「あなた」だった。

「それでは改めて部下を紹介しよう」

「その必要はありません・・・すべてわかっています」

「え」

「屋代課長、バツイチ、独身、女性不審、先月の売上は714万円

「・・・」

三軒家チーフにとって売上額こそが人間に対する評価そのものなのである。

布施誠さん(梶原善)・・・216万円 

宅間剛太さん(本多力)・・・120万円 

八戸大輔さん(鈴木裕樹)・・・180万円 

足立聡・・・624万円 

庭野聖司・・・ゼロ

売上とは会社の実質的な利益額である。

五千万円の物件を売ればおよそ三パーセント程度の150万円前後が売上となる。

「そして・・・シラスミカ・・・ゼロ・・・先々月もゼロ、先々々月もゼロ・・・入社以来ずっとゼロです・・・よく出社できますね」

物凄い威圧をかける三軒家チーフだったが・・・シラスミカは動じずに・・・素晴らしいインターネットの世界で化粧品の通販サイトにアクセスするのだった。

「そして、私は1518万円です」

課長よりもケタ違いで売り上げるチーフだった。人当たりの良い屋代課長だが・・・白州のような戦力外要員を放置したままの無能な上司だったのである。

「とにかく・・・今月は・・・目白の例の物件をなんとか売ってくれ・・・売主は社長の御友人だし・・・」

目白の中古マンション「ヒルパークレジデンス710号室」はリビングルーム広めの1LDKで五千万円と高価格、坂の上にあり・・・なかなか買い手がつかないのだった。

「その物件は・・・私が売ります」と三軒家チーフ・・・。

「え」

「私に売れない家はありません」

「と・・・とにかく・・・今日も頑張って行きましょう」

顧客との待ち合わせがある課長と足立は早速、外出である。

その時を待っていたように・・・シラスミカをしごきはじめるチーフだった。

「シラスミカ」

「・・・」

「シラスミカ・・・呼ばれたら返事」

「は・・・はい」

「今・・・何をしているの」

ネット通販である。

「お客様リストを・・・」

「今日はお客様とのアポ(面会予約)はあるの?」

「ありません」

「明日は・・・」

「ありません」

「明後日は・・・」

「ありません」

「シラスミカ・・・自宅の鍵をよこしなさい」

「え」

「早く」

言われるままに鍵を渡す白州未加だった。

チーフは鍵を引き出しに仕舞った。

「アポがとれるまで家には帰れません」

「え」

「シラスミカ・・・来なさい」

「え・・・」

「早く!」

「はい・・・」

シラスミカの前後を不動産広告のパネルで挟み、サンドイッチマンに仕上げるチーフ。

「新宿駅前にアポがとれるまで立っていなさい」

「えええええ」

「GO!」

唖然とする課員たち・・・。

「あなたたちも営業に行きなさい・・・GO!」

こうして・・・チーフは課員たちに一鞭入れたのだった。

「ニワノセイジ・・・」

「はい」

「あなたの予定は」

「これからアポがあります」

「同行します」

「え・・・」

「早く!」

営業者のナビゲーションシステムに入力する庭野。

「必要ありません、道順は私が指示します」

「え・・・」

路地裏とも言えない獣道を行く二人を乗せた車。

下町ではナビに従って駐輪した自転車に埋もれ身動きできなくなっている車をよく見かけるものだが。

「・・・二十分も早くつきました」

「今のあなたには家は売れません」

「え」

最初の客・小金井夫人(梅沢昌代)は下見を繰り返し、なかなか契約に踏み切らないタイプである。

庭野はお客様の気持ちになってセールスするが埒があかない。

するとチーフは「即決する客と不動産屋」をセットで用意するのだった。

「売れてしまう」と知ってあわてて契約する小金井夫人・・・。

「お客様を騙したのですか」と批難の目をむける庭野。

「私の仕事は家を売ることです・・・そして私は家を売りました」

「・・・」

運転席に座り獣道を物凄い加速で飛ばすチーフ。

おそらく女子供を数分で三人くらいは死傷させたのだろう。

「不動産屋は地図を見ない・・・道なき道を進む・・・お客様は・・・裏道を知っているものをその道のプロと感じ・・・信用します」

「そんな・・・」

第二の客は産婦人科医の土方弥生(りょう)である。

夫は脳外科医で同じ病院に勤務し、幼い息子が一人いる。

最近、祖母が亡くなり孫の面倒を見る人がいなくなったために・・・病院近くへの転居を考えている。

条件は庭付き一戸建てでリビング・イン・階段があること。

予算は一億円までだが・・・病院近くに適当な物件がないために・・・庭野は売り込みに苦戦していた。

今回も病院からやや遠い上にリビング・イン・階段はない物件である。

「しかし・・・これほどの物件は滅多に出ないのです」

「家族のコミュニケーションのためにリビング・イン・階段は絶対にゆずれません」

「確かに・・・この物件はお客様には相応しくありませんね」

「え」

「今日はお二人で夜勤ですよね」

「ええ」

「本日は私がベビーシッターをいたしますので・・・明朝、親子三人で物件の下見にいらっしゃいませんか」

「まあ・・・」

「一体・・・何を考えているのですか・・・」

「ニワノ・・・ついてきなさい・・・」

その頃・・・会社ではチーフが白州美加をサンドイッチマン化したことに蒼ざめる課長・・・。

白州に電話すると彼女はカフェにいた。

「帰って来なさい」

「はい・・・お茶を飲んだら・・・」

「僕が迎えに行きましょう」と足立。

「頼むよ・・・ずっとお茶されてもなんだし」

白州は足立の好意を「愛」と感じるのだった。

「何・・・家の鍵をとりあげられただと」

「私・・・今夜はスパに泊まります」

「・・・」

パワーハラスメントの二文字がコンプライアンスに縛られている課長を苛むのだった。

帰社したチーフに小言を言う課長。

「とにかく・・・社員指導のマニュアルを読みたまえ」

しかし・・・マニュアルをゴミ箱に投棄する「すでに今日も売りあげているチーフ」だった。

「私たちの仕事は家を売ることです」

「・・・」

昭和のモーレツ社員のようなチーフに辟易した課長は行きつけのBAR「ちちんぷいぷい」のママ・珠城こころ(臼田あさ美)に逃避するのだった。

「もう・・・やんなっちゃうよ」

「かわいちょうですねえ」

可愛いバカ課長だった・・・。

土方家にやってきたチーフと庭野。

我儘な幼児の馬となってヒヒーンと嘶く庭野だった。

チーフは室内を点検し・・・攻略の糸口を探る。

祖母の死を受け入れられない幼児。

幼児の描いた祖母の絵。

祖母を象徴する庭のビワの木・・・。

正座して瞑想するチーフ。

ビワの木に登るチーフ。

ビワの木から落下するチーフ。

美味しい朝食を用意するチーフ。

そして・・・早朝の「新生児室」に幼児を連れて行くチーフだった。

「ごらんなさい・・・これは今朝生まれた赤ちゃん」

「・・・」

「この赤ちゃんもいつかはみんな死にます」

「え」

「生まれたものはみんな死ぬ・・・みんな逃げられません」

「ええっ」

「私もあなたのお母さんやお父さんも・・・あなたのお祖母さんも死にます。あなたもいつか死にます」

「えええ」

「でも・・・生きている限り・・・一生懸命生きなければならない」

「・・・」

「死んだお祖母さんもあなたが一生懸命生きていることを願っていたと思います」

綺麗なお姉さんに見つめられて恥じらう幼児だった。

神妙になった幼児と両親夫婦を連れて・・・「ヒルパークレジデンス710号室」にやってくるチーフ。

「いつもの人は・・・」

「ニワノは愚図なので置いてきました」

「・・・」

「しかし・・・ここは狭すぎるのでは」

「ご家族にとって一番大切なのは温もりを感じあえること・・・お客様は終の棲み家をご希望ですか」

「そういうわけじゃないけど」

「今なら・・・寝室でお子様と川の字になっておやすみいただけます」

すでに・・・幼児の描いて絵が飾られ・・・ビワの木の鉢植えまで用意された室内。

「ベランダをごらんください」

ベランダから二人が勤務する病院が手の届くような距離にあった。

「ニワノ~!」

「チーフ~!」

屋上で庭野が手を振る。

「お子様に声が届く範囲で働くのは一つの理想と言えます」

「悪くないな」

「それでは五千万円でお買い上げいただけますか」

「買うわ・・・随分安くついたわね」

「住み替えの時に使えばいいさ」

こうして・・・チーフは客を落したのである。

翌日、シラスは冷凍フライ中心の手作りお弁当を足立に捧げるが・・・王子様は微笑みつつスルーするのだった。

シラスは再び新宿駅前のカフェに逃避したが怪しい客(マイケル富岡)のアポ取りに成功する。

だが・・・結局・・・コーヒー代をたかられただけだったようだ。

泣き濡れるシラス・・・。

ダメ課長は「泣かないで帰って来なさい」と甘やかす・・・。

一方・・・街でチーフを見つけた庭野は・・・好奇心に負けて尾行。

豪邸に消えるチーフを目撃する。

しかし・・・それは・・・一家惨殺事件の現場となった事故物件だった。

帰社して事故物件リストで確認する庭野。

「何を見ているのですか」

振り返れば・・・魔性の女が・・・。

もう・・・チーフの淡々とした命令口調を聴いているだけで幸せな気分になれるドラマなのだった。これは・・・萌える。北川景子の魅力が爆発してるなあ。わかる人にはわかります。

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2016年7月13日 (水)

ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子(波瑠)人殺し殺し(横山裕)ハローグッバイ(篠田麻里子)

さて・・・そこそこ快調なスタートを切った夏ドラマ・・・。

(水)(木)の処理が難しいな。

(月)「好きな人がいること」(仮)

(火)「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」

(水)未定

(木)「遺産相続弁護士 柿崎真一」(仮)

(金)「神の舌を持つ男」

(土)「時をかける少女」

(日)「真田丸」

これに・・・「家売るオンナ」「死幣-DEATH CASH-」「闇金ウシジマくん Season 3」が絡むと・・・もうあふれているじゃないか。

「ウシジマくん」はキラーコンテンツなので(仮)の二つのコンテンツと・・・残ったコンテンツが二枠を賭けて激闘なんだな。

桐谷美玲VS北川景子VS吉岡里帆VS森川葵か・・・恐ろしい勝負だな。

夏ドラマのくせに・・・殺意が漲ってるじゃねえか・・・。

こうなると主人公じゃない二人はつらいよね。

「好きな人がいること」の三男相手にあまりん、「時かけ」の担任教師に悦子先生でキャスティングし直してもらいたいよねえ・・・おいっ。

で、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子・第1回』(フジテレビ20160712PM10~)原作・内藤了、脚本・古家和尚、演出・白木啓一郎を見た。異常犯罪・捜査官と分割しても異常・犯罪捜査官と分割しても大丈夫な藤堂比奈子刑事の登場である。ちょっとおかしなことになっている捜査官はクライム・サスペンスの王道である。この手の話は主人公が魅力的かどうかにかかっている・・・どんな物語でもだろうが・・・しかし・・・現在最も輝いている女優である波瑠には無敵のオーラがつきまとっているので・・・安心なのである。久しぶりに魅力的な女刑事が登場した!

キッドは「ストロベリーナイト」(2010年)の姫川玲子警部補(竹内結子)や「アンフェア」(2006年)の雪平夏見警部補(篠原涼子)よりも「ケイゾク」(1999年)の柴田純警部補(中谷美紀)の直系を感じる。

パイオニアである「沙粧妙子 - 最後の事件 -」(1995年)の沙粧妙子警部補(浅野温子)から派生するスーパー女刑事の中でも・・・三本指に入るということである。

つまり・・・沙粧妙子警部補、柴田純警部補の正統な後継者の誕生である。

それは真山徹(渡部篤郎)がキャスティングされているからじゃないのか・・・。

だって相棒の刑事が妹殺されてるんだぜ・・・そこかっ。

では・・・恒例の階級チェック。

警視総監 橘朝子(かたせ梨乃)「奥様は警視総監」

警視監 銭形泪(黒川芽以)「ケータイ刑事」

警視長 沖田仁美(真矢みき)「踊る大捜査線」

警視正 銭形愛(宮崎あおい)「ケータイ刑事」

警視 銭形舞(堀北真希)「ケータイ刑事」

警部 大澤絵里子(天海祐希)「BOSS」

警部補 柴田純(中谷美紀)「ケイゾク」

巡査部長 恩田すみれ(深津絵里)「踊る大捜査線」

巡査 遠藤鶴(本刈屋ユイカ)「ゴンゾウ 伝説の刑事」

主人公の藤堂比奈子(藤澤遥→波瑠)は最下級の巡査である。ちなみに相棒の東海林泰久(横山裕)は警察法には規定されていないが巡査部長と巡査の間に存在する職位となる巡査長(巡査よりも微かに偉い)である。

キャンディーの包装紙が乱舞している。

凄惨な少女の死体を興味深く見つめる比奈子・・・。

少女の口腔には無数の飴玉が詰め込まれ、唇の上で山となっている。

手足は床に釘付けされている。

血の海に指をつけて掬い取った比奈子は・・・その味を確かめようとして覚醒する。

警視庁刑事部捜査第一課で内勤中の新人刑事である比奈子は・・・過去の未解決事件の捜査資料を読みこみすぎて・・・事件現場を夢に見たらしい。

それは平成二十三年・・・五年前・・・に江東区で発生した殺人事件を忠実に再現していた。

長野県出身の比奈子は・・・亡き母・藤堂香織(奥貫薫)が推奨するブリキ缶入り「善光寺名物の七味唐辛子」を愛用している。

一人暮らしの比奈子は・・・身支度を整え・・・スイッチをONにする。

部屋を一歩出れば・・・比奈子は刑事になるらしい。

夢の中の幻想的な美貌の天使とは違う・・・ふつうの美人刑事になるのだ。

この二つの美しさを表現できるところが・・・彼女の女優としての実力の凄みなのである。

とにかく・・・比奈子は心の中に何か異常なものを秘めた刑事ということだ。

警視庁の自動販売機仲間として交通課の鈴木仁美(篠田麻里子)と鑑識官の月岡真紀(佐藤玲)が登場する。

「ケイゾク」の後継機としての比奈子なので・・・どちらかの生命は風前の灯であることが予感される。友は死ぬ運命なのである。

鈴木仁美は警察学校の同期生である比奈子と月岡を週末の合コンに誘う。

彼女は最近・・・昔の合コン相手からしつこくされているらしい。

「大丈夫なの・・・」と友人として案じる比奈子。

「私、最初から警察官であることを隠していないから」

死のフラグは仁美に立った。

比奈子の勤務する警視庁刑事部捜査第一課はいくつかの班によって構成されている。

比奈子は厚田巌夫(渡部篤郎)が班長を務める「厚田班」の一員である。

班員は以下の通り。

倉島敬一郎(要潤)、清水良信(百瀬朔)・・・そして東海林泰久(横山裕)である。

一見してチンピラのような東海林刑事は・・・五年前のある事件によって・・・粗暴な性格に変貌したらしい。

東海林刑事は犯罪を憎悪するあまりに・・・別班である片岡啓造(高橋努)が指揮する「片岡班」の捜査する事件にも介入し・・・周囲を困惑させている。

出社しない社員を案じた社長によって変死体が発見される。

過去十年の未解決事件の捜査資料をすべて暗記しているという特殊な記憶力を持つ比奈子は・・・死人が「性犯罪の加害者として前科がある」ことを指摘するのだった。

厚田は・・・尋常ならざる比奈子の現場投入を決断する。

新人鑑識官の月岡が吐き気を催す現場である。

ベテラン鑑識官の三木健(斉藤慎二)も「結構な死体だ」と言葉を濁す。

「無理をしなくてもいい」と比奈子に配慮する倉島刑事だが・・・比奈子は顔色も変えずにグロテスクな死体となった宮原秋雄(清水優)を検証する。初めて見る現場は比奈子にとって興味深いものだった。

まるで殺人現場を楽しんでいるような比奈子の態度に・・・苛立ちを感じる東海林刑事・・・。

「お前・・・ちょっと変だぞ」

だが・・・比奈子は一向に動じない。

幼い子供が父親に花の名前を訪ねるように・・・厚田班長に質問する比奈子。

「この傷痕は何でしょう・・・」

「咬まれた跡みたいだな・・・しかし・・・おかしいな」

「何がでしょうか」

「これは・・・まるで自分で自分の首を絞めたようだ・・・お前・・・何か思い出すことはないか」

「この近所で三年前に・・・女子高校生が暴行され殺害されています」

「それが何だってんだ・・・」と噛みつく東海林刑事。

「いえ・・・脳内を検索した結果を・・・」

「関係ないことを・・・一々、口にするな」と怒鳴りつける東海林刑事。

「似ています・・・いや・・・そっくりなんです」と突然、所轄の刑事が発言する。「その事件はウチが担当しました・・・被害者の女子高校生の死体とこの死体・・・ポーズまで一緒です・・・彼女も口に下着を・・・そして・・・この男は・・・容疑者の一人です」

「・・・」

刑事たちは「被害者の遺族による復讐」を連想する。

比奈子の発した言葉が事件とは無関係ではなかったことに・・・東海林刑事は苛立つ。

この女は・・・おかしい・・・まともではない・・・と直感する東海林刑事だった。

事件の可能性を鑑みて・・・宮原の性犯罪の被害者に聞き込みを開始する刑事たち。

比奈子は・・・東海林とともに被害者の一人を訪ねるが・・・宇田川早苗(柏原優美)は三か月前に自殺していた。

「早苗は・・・宮原に・・・脅迫されていたんだ・・・結婚前の大事な時期だったのに」と告白する早苗の両親。

「なぜ・・・警察に相談しなかったのですか」

「警察が・・・宮原を死刑にしてくれますか?」

両親の感じる絶望に東海林は暗澹たる思いを感じるが・・・比奈子は・・・早苗の精神的なケアを担当していた心療内科医の中島保(林遣都)に興味を感じる。

比奈子は独自の記憶法である「ぞんざいな感じのお絵かき」で・・・時計を二つ持つ男をチェックするのだった。

しかし・・・検死の結果・・・宮原の死因は自殺と断定される。

「自分で自分の首を絞めたってことか」

厚田班長は・・・検死を担当した帝都大学医学部の石上妙子法医学教授(原田美枝子)に問う。

「まあね・・・いろいろ・・・おかしなこともあるけど・・・この噛み跡なんか・・・忠実に再現しているわ・・・それも自分でやったとなると・・・異常よね・・・まあ・・・犯罪者なんてそもそも異常なわけだけど」

東海林は宮原のスマートフォンから自死の自撮り動画を発見していた。

「携帯に?」

「ケータイじゃなくてスマホです」

「スマートホンだって携帯端末だろうが」

些細なジェネレーションギャップである。

「とにかく・・・自殺じゃ・・・事件性はないということですよね」と興味を失う東海林だった。

しかし・・・比奈子はより深く興味を感じていた。

「おかしなことは・・・それだけでしょうか」

「そうね・・・食事でも奢ってもらおうかな・・・焼き肉でも」

石上教授は厚田班長と何やら因縁があるらしい。

「焼き肉は・・・ちょっと・・・甘いものぐらいなら」と厚田は躊躇う。

「両方賄えるお店があります」と比奈子が進言する。

店長(伊藤麻実子)が「萌オ萌オプリティ♪」と叫ぶ「萌オさまカフェ」は焼き肉とロールケーキが楽しめる店だった。

ケーキにも七味をふりかける比奈子に辟易する厚田班長である。

「で・・・何がおかしいんだ」

「普通の人間には・・・自分で自分を殺せないものだけど・・・遺体からはかなりの数値で脳内麻薬物質が検出されているの」

「つまり?」

「彼は・・・自分を殺すことに快感を覚えていた・・・ということよ」

「おかしな話じゃなくて・・・奴がおかしいってことだろう」

「私も・・・単なる自殺ではないと思えます」

「その理由は・・・」

「それは・・・」と口ごもる比奈子。

「女の勘ってやつよね」と微笑む死神女史と仇名される石上教授だった・・・。

死神女史は仮説として「暗示による・・・自死の誘導」について仄めかす。

「しかし・・・催眠術では人を殺せないのでは・・・」

「自己防衛機能があるからね・・・だけど・・・病は気からって言うでしょう。人間は思ったよりも何かにコントロールされやすい生き物なのかもしれないわよ」

「・・・興味深いです」

週末の合コンに何故か参加する三木鑑識官は素晴らしいインターネットの世界に「宮原の動画」がアップロードされていることを発見する。

メキシカン料理の店からの仁美の連絡を受けた比奈子は・・・微かに吃音の男の咎める声を聞く。

「つ・・・つうろでの・・・つ・・・つうわは・・・ほ、ほかのおきゃくさまの・・・め、めいわくになります」

そして・・・翌朝・・・仁美は死体で発見されるのだった。

撲殺と断定した警察は殺人事件としての捜査を開始する。

仁美が殺害される直前まで一緒に合コンをしていた月岡鑑識官は涙をこらえられない。

しかし・・・比奈子は驚くほどクールに臨場するのだった。

「お前・・・同期だろう・・・」と呆れながら詰る東海林刑事。

「彼女は親友です」

「お願いだから・・・ここで楽しそうにするのはやめてくれ」

死体発見現場から・・・比奈子を遠ざける東海林だった。

比奈子の常軌を逸した言動が東海林の心に不安を生じさせるのだ。

親友が殺された人間にはそれに相応しい態度があると考えるタイプの東海林だった。

宮原のスマートフォンは録画映像が投稿サイトに自動送信される特殊なアプリケーションによって汚染されていた。

やがて鑑識班は・・・中国のサーバーから送りつけられた特殊なアプリの発信人を・・・「サイトウフミタカ」と特定する。

そして・・・三木鑑識官は仁美のスマホの着信履歴に斉藤文隆という名が残されていたことを指摘する。

「自殺した・・・宇田川早苗の婚約者が・・・斉藤文隆さんでした」

送付されなかった結婚式の案内状の名前を瞬時に記憶していた比奈子なのである。

確保された・・・斉藤文隆は特殊アプリをプログラムしたことは認めたが・・・「復讐」を示唆する謎の人物の依頼に応じただけだったと告白する。

目的は・・・「宮原の悪行」を世間に公表するためと聞かされていたのに・・・宮原が変死体となって発見され・・・以前、合コンで知り合った仁美に相談しようと電話をしていたと言うのである。

謎の黒幕を特定することができずに・・・事件は暗礁に乗り上げる。

仁美の殺害現場をもう一度観察するために訪れた比奈子は・・・現場に花を手向ける心療内科医の中島を発見する。

中島の存在を「興味深い」と感じた比奈子は・・・彼をお茶に誘うのだった。

「あなたは・・・なぜ・・・彼女に花を・・・」

「女性警察官が殺されたと聞き・・・痛ましいと思いました」

「それだけですか・・・」

「私は少年鑑別所などで心理検査を行う監察技官を目指しているのです」

中島が勤める「ハヤサカメンタルクリニック」の院長・早坂雅臣(光石研)の事例について語る中島・・・。

「蛍光灯ベイビーを御存じですか・・・母親に育児放棄された・・・乳幼児が・・・蛍光灯の明滅に依存するという事例です。母親の注ぐ愛情も刺激の一種ですから・・・光がその代替をするわけです。母親殺しの少年が蛍光灯の明滅に癒されたと語っています・・・早坂先生の心理検査の記録は・・・警視庁にも残っているはずです」

「調べてみます」

「誤解しないでください・・・蛍光灯ベイビーがみんな母親を殺すわけじゃない」

「誰もが母親を殺す可能性はあります」

微妙にすれ違う二人の会話である。

警視庁に帰還した比奈子は・・・資料室で母親殺しの少年の心理検査の記録を見る。

「ママは・・・邪魔だといった・・・お前がいなければよかった・・・お前なんか産まなければよかったと」

「それで君は・・・」

「ママをバットでぶったたいた・・・ママは許してくれって泣いた」

「その時・・・どんな気持ちだった・・・?」

「き、気持ちよかった・・・い、いい気持ちだった」

比奈子は目を輝かせて記録を鑑賞する。

「お前は何を見ているんだ」と乱入する東海林刑事。

「十年前の蛍光灯ベイビーの記録です」

「この気持ち悪い男のことか・・・何をしているかと思えば・・・鈴木巡査の捜査じゃないのかよ・・・もういい・・・お前は捜査から外れろ・・・」

「でも・・・もし殺人衝動を引き起こすスイッチがあるとしたら・・・宮原は」

「いい加減にしろ・・・宮原は自殺だ・・・殺人犯が自殺した・・・よくあることだ・・・どうでもいいだろう」

凡人である東海林刑事には・・・天才である比奈子が理解できない。

さらに・・・東海林刑事には・・・心理検査を行う監察技官に何か嫌な思い出があるらしい。

「お前は・・・大人しく内勤でもやってろ・・・」

捨てゼリフを残して立ち去る東海林刑事。

しかし・・・蛍光灯ベイビーの母親殺害資料から・・・「ワレキューレ(死の天使)」の香水の瓶を発見する比奈子。

それは・・・未解決の中年女性殺害事件の資料にも見い出されていた。

そして・・・仁美はその香水を愛用していたのだ。

「これは・・・ただの・・・普通の殺人・・・そして・・・犯人はもうわかりました」

独り言をつぶやく不気味な感じの比奈子である。

比奈子は中島に電話をかける。

「蛍光灯ベイビーの記録を拝見しました・・・」

「そうですか」

「これは・・・偶然ですか」

「え・・・」

「あなたが・・・仁美の殺害現場にいて・・・私に蛍光灯ベイビーの話をなさったことです」

「・・・何のことでしょう」

「私・・・これから彼に会って確かめてみるつもりです・・・」

「え・・・」

通話は打ち切られた。

憂いを浮かべた中島は・・・引き出しをあける。

そこには・・・あの「キャンデーの包装紙」が収納されていた。

その頃・・・東海林刑事は・・・情報屋(不破万作)から・・・仁美殺害の犯人に関する重要な情報を買っていた。

比奈子はメキシカン料理の店の従業員・小林翔太(三浦貴大)を呼びだしていた。

彼こそは・・・十年前に母親を殺害した蛍光灯ベイビーだったのだ。

人殺しは簡単に野に放たれるのだ。

「あんた・・・誰・・・」

「人殺しを見に来たのです」

「え・・・」

「あなたの人殺しのスイッチが入るところを・・・」

「何言ってんの・・・」

「裸電球の光と・・・ワレキューレの香り・・・」

「・・・」

「それが・・・あなたの殺人衝動を引きだす・・・」

「ふ・・・ふざけんな」

「あなたの吃音は・・・その前兆・・・」

「お・・・お前・・・し・・・死にたいのか」

比奈子は香水の瓶を投げた。

薄暗い用具置き場の裸電球が灯っている。

表情が変わる蛍光灯男。

「こ・・・殺してやるよ・・・」

歓喜に満ちる蛍光灯男の荒廃した笑み・・・男はスマホで撮影を始める。

「ママみたいに泣いて謝れ」

「あんたが邪魔だ・・・あんたなんか・・・いらない・・・あんたなんか・・・産まなきゃよかった」

比奈子は蛍光灯ベイビーの母親を真似る。

「・・・ぶっ殺す」

「どうやら・・・スイッチが入ったみたいね」

比奈子はバッグに手を入れ身構える。

バッグの中には拳銃があるのだろうな・・・まさか七味唐辛子じゃ・・・。

そこへ・・・東海林刑事が駆けつける。

東海林刑事は必要以上の暴行を開始するのだった。

その姿を驚きながら観察する比奈子・・・。

厚田班の刑事が駆けつけ・・・東海林刑事が殺しかけた蛍光灯男を救助するのだった。

東海林刑事にも・・・比奈子にも・・・心の闇が隠されている。

厚田班長は・・・ため息をついて・・・その「状況」を受け入れるのだった。

家族の墓参りに赴く謹慎中の東海林刑事。

「兄ちゃん・・・またやっちゃったよ・・・人殺し殺しになりそうだった・・・」

厚田班長は石上教授にぼやく。

「俺たちに・・・蛍光灯男のことを密告した人間が特定できない・・・」

「知ってる?・・・蛍光灯男・・・留置場で自殺したわよ・・・自分で自分を撲殺したわ」

「・・・・」

この世には・・・自死を促す何者かが潜んでいるようだ。

月岡は「仁美の仇を討ってくれてありがとう」と比奈子に告げる。

「私は何もしてないわ」と七味唐辛子入りのココアを飲み干すのだった。

帰宅した比奈子は扉を閉じる。

「スイッチOFF・・・」

スイッチが切れても美しいスーパー女刑事だった・・・。

圧倒的じゃないか・・・。

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サイレーン刑事×彼女×完全悪女

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2016年7月12日 (火)

好きな人がいること(桐谷美玲)俺様が本命ヒロインだ!(山崎賢人)

さて・・・「恋仲」の脚本・演出で・・・もう一度である。

「恋仲」は若者たちの心を奪った・・・と編成スタッフは判断したらしい。

すでに若者ではない人々は兄弟でレストランなんて「ランチの女王」(2002年)みたい・・とか、海辺でひと夏といえば「ビーチボーイズ」(1997年)だよ・・・などとつぶやくわけだが・・・まあ・・・「月9」なんて大体そんなものじゃないか・・・。

「ビーチボーイズ」は平均視聴率23.7%で「ランチの女王」は平均視聴率19.1%・・・古き良き時代である。

どちらも・・・青春の光と影の彩なす物語だが・・・それでも良かったわけである。

最近の「月9」を振り返ってみよう。

ラヴソング」ヒロインは藤原さくら(20歳)で平均視聴率*8.5%・・・。

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」ヒロインは有村架純(当時22歳)で平均視聴率*9.7%・・・。

5時から9時まで」ヒロインは石原さとみ(当時28歳)で平均視聴率は11.7%・・・。

「恋仲」ヒロインは本田翼(当時23歳)で平均視聴率は10.8%・・・。

ようこそ、わが家へ」ヒロインは沢尻エリカ(当時29歳)で平均視聴率は12.5%・・・。

デート〜恋とはどんなものかしら〜」ヒロインは杏(当時29歳)で平均視聴率は12.5%・・・。

最近になればなるほど・・・ヒロインが若ければ若いほど低視聴率の傾向がある。

若いヒロインでなんとかフタケタを維持したスタッフに・・・桐谷美玲(26歳)を配置したわけだな。

まあ・・・なんだかんだ・・・ビジネスとしては大変なことなんだなあ・・・。

で、『好きな人がいること・第1回』(フジテレビ20160711PM9~)脚本・桑村さや香、演出・金井紘を見た。主人公を演じる桐谷美玲はドラマ「スミカスミレ45歳若返った女」で松坂慶子の演じる老女の若返った姿を演じたのだが・・・この時、松坂慶子風の「擬態」にチャレンジしたのである・・・なんだか・・・そのまま自分の芸風になっちゃった感じである。まあ・・・演技とは一種の「型」なので・・・松坂慶子流の継承者になってしまったのかもしれない。それはそれでちょっと面白いぞ・・・だが・・・その「殻」もいつかは破らないとな。

「恋仲」もそうだったが・・・脚本家にはインモラル(背徳的)でアブノーマル(変態的)な傾向がある。

「恋仲」では恋仇が「窃盗犯」だが・・・それを些細な罪として見逃す。

こちらでは初回から主人公が身分詐称をしたり、相手役がセクシャルハラスメントをしたりするが・・・それも些細な罪として見逃すわけである。

登場人物を清廉潔白に設定する必要はないが・・・よほどのことがない限り・・・些細な罪を作らぬ方が・・・幅広いお茶の間に受け入れられるだろう。

些細な罪を犯さなくても・・・虚構は構築できるはずである。

まあ・・・「インモラルでアブノーマルが好き」なら仕方ないが・・・どうも無自覚のような気がするので。

そういう「常識へのゆるさ」が「若者受け」するという考え方もあります。

団子屋(和菓子店)の娘であった櫻井美咲(桐谷美玲)は友人の誕生祝いの席で初めて食べたケーキ(洋菓子)に「なんじゃこりゃあ」と衝撃を受け、パティシエ(洋菓子職人)の道へまっしぐら・・・晴れて「パンとケーキの店」に就職するが・・・ケーキ部門が廃止されて失業・・・就職活動中である。

試食用の手作りケーキを持ってホテルの面接に臨むが結果は思わしくなく・・・学生時代の後輩の石川若葉(阿部純子)を呼びだして愚痴るのだった。

「何がまずかったのですか」

「デコレーションの人形の唇がタコだった・・・」

「最後にチューしてから・・・どのくらいですか」

「四年・・・」

「そりゃあ・・・まずいですね」

若葉は唇が異常にひび割れた美咲にリップクリームをプレゼントした。

若葉が恋人に呼び出されて離脱した後で・・・美咲はレストランの鍵の壊れたトイレに閉じ込められてしまう。

美咲を救助したのは・・・高校時代の憧れの先輩・柴崎千秋(三浦翔平)だった。

運命的にも程があるが・・・それが月9と言われればそれまでだ。

美咲のケーキを一口食べた・・・敏腕レストランプロデューサーである・・・千秋は実家のある海辺の町のレストラン「Sea Sons」のパティシエとして誘う。

運命的にも程があるが・・・それが(以下略)・・・。

千秋の実家に住み込みで働くことにした美咲は・・・訪れた湘南の海で舞い上がり・・・通りすがりの無愛想なサーファーに記念撮影をお願いして・・・断られる。

実は・・・彼こそが・・・レストラン「Sea Sons」のカリスマ・シェフである柴崎夏向(山崎賢人)だった。

柴崎三兄弟の次男である。

三男は調理師学校に通っている柴崎冬真(野村周平)である。

二期連続調理学校生登場だ。

・・・とにかく・・・最悪の出会いをした主人公とヒロイン男子だった・・・。

運命・・・(以下略)・・・。

ここからは・・・「恋愛目的で湘南にやってきた嫌な女」と「主人公」を決めつける「運命の相手」とどちらかといえばパティシエ・バカである美咲とのすれ違いが展開する。

しかも・・・夏向は美咲を毛嫌いして・・・ケーキを食べないのだった。

何故だ・・・。

冬真は試食して「美味い・・・ホテルのケーキみたい」と絶賛するが・・・その言葉に・・・地元の食材をとりいれたレストラン「Sea Sons」の特色を出したいと考えた美咲は研究を重ねる。

リップクリームを目の下に塗りメンソールで眠気を醒ますのだ。

「試食をお願いします」と差し出したケーキを床にたたき落とす夏向。

食糧を粗末にするにも程がある・・・とお茶の間は激昂するのだった。

「なぜ・・・こんなことを」

「お前みたいな女の作ったものが食えるか」

「・・・」

唖然とする美咲の唇を強奪する夏向。

「これで満足だろう」

「なにがじゃ・・・」

夏向を平手打ちして夜の街へ飛び出す美咲。

直後に帰宅する長男の千秋・・・。

「なんで食べない・・・」

「食わなくてもわかる」

「お前は・・・超能力者か」

ケーキの残骸を口にして顔色の変わる夏向。

千秋は・・・美咲のレシピノートを示す。

「俺は・・・このレストランに相応しいパティシエを招いたつもりだ」

「Sea Sons(海の子たち)」は三兄弟の父親が創業した湘南の隠れ家的レストランなのである。

通用門は江ノ電に轢かれる覚悟で入る必要があるのだ。

江ノ電の駅でベンチに座り込む美咲。

そこへ・・・千秋がバイクに乗って迎えに来る。

「弟のことは許してくれ・・・さあ・・・帰ろう」

「私が悪いんです・・・ホテルのパティシエとか嘘ついて・・・あまりの幸運で自分を見失って浮かれていたのが・・・この始末です」

「そんなこと・・・どうでもいいじゃないか・・・君にはケーキがあるんだから」

ある意味・・・初恋の人からの・・・「君は女である前にパティシエ」宣言である。

しかし・・・美咲は初恋の人とバイクで二人乗りを堪能するのだった。

夏向は反省して・・・美咲のために夜食のおにぎりを用意し、厨房に入るための合鍵を渡す。

こうして・・・美咲の「Sea Sons」での恋とお仕事大作戦が始るのだった。

何故か・・・人間を犬扱いする・・・企業家の東村了(吉田鋼太郎)は「Sea Sons」を傘下に収めたいらしい。

何故か・・・最近よく見る浜野謙太が演じるサーフショップ「LEG END」の経営者は従業員の奥田実果子(佐野ひなこ)と交際中。

冬真の調理学校の同級生・二宮風花(飯豊まりえ)や謎の女・西島愛海(大原櫻子)をちりばめた上で・・・千秋のお相手として高月楓(菜々緒)も登場。

買い出し中に・・・千秋と楓のデートを目撃した美咲は・・・尾行を開始し・・・二人が教会に入っていくので驚愕するのだった。

まあ・・・いわゆる・・・月9なんだよなあ・・・。

咳、声、喉になんとか的に・・・。

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恋仲

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2016年7月11日 (月)

人はみな生まれたら泣くものよ・・・こんな愚かな世界に生まれたことを悲しんで(長澤まさみ)

織田信長が本能寺の変で倒れて十三年である。

それ以後豊臣秀吉は・・・信長の模倣者として天下統一を仕上げた。

その手法は信長以上に老獪であり・・・「利」を重んじた。

必要以上の殺生を避けて大事業を成し遂げたのである。

結果として十六世紀末の東洋の島国に世界最強の軍事国家が出現した。

秀吉はその頂点に立ったのだ。

しかし・・・その軍事的手腕や先見性は信長には及ばない。

たとえば・・・海外遠征のために必要な海軍の創設を・・・信長なら実行しただろう。

しかし・・・秀吉に出来たのは世界最強の軍隊を渡海させることだけだったのである。

上陸した秀吉軍は連戦連勝を重ねたが・・・結局、補給路の確保に失敗する。

もちろん・・・秀吉が最前線にいれば・・・己の失敗に気がついただろう。

だが、天下人となった秀吉には都合の悪いことは報告しない官僚集団がつきまとうのだった。

そんな秀吉に主筋である織田家の姫が・・・後継者を授ける。

豊臣家の明るい未来が・・・秀吉の目を眩ませるのである。

で、『真田丸・第27回』(NHK総合20160710PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は豊臣秀吉の正室・北政所の描き下ろしイラスト第二弾大公開でお得でございます。大政所が逝去し・・・ついに豊臣家の女将となった記念でございますね。女が人ではなく魔性のものだった時代・・・天下人の妻であることの重圧もかなりのものだったと推察いたします。しかも・・・女としては石女であることが途方もなく罪な時代でございますからねえ。それでも・・・秀吉の糟糠の妻として・・・夫の死後も名を残すのですから・・・彼女もまた一種の天才だったのでございましょう。しかし・・・大政所がどれほど・・・気配りを重ねても・・・茶々の産んだたった一人の子供がすべてを台無しにするわけでございます。その心中・・・いかばかりか・・・。信長の狂気の発露とも言える荒木一族皆殺しと対をなす関白一族皆殺しの嵐が迫る中・・・北政所の言葉は・・・もはや夫に届かない・・・。

Sanada027文禄二年(1593年)八月、豊臣秀頼(拾丸)誕生。明国との和平交渉を急ぐ石田三成は「明の皇女を天皇の妃として送ること」などの秀吉の要望書を明国の勅使に渡しつつ、それを反「関白降表」故にすることを暗黙した。小西行長は秀吉の降伏を示す「関白降表」を偽造した。秀吉は明国が降伏したと信じ、明国は秀吉が降伏したと説明されるという恐ろしい茶番劇が進行する。秀吉がこの事態に気がつくのは三年後の文禄五年(1596年)のことである。閏九月、大谷吉継が半島より帰還。文禄三年(1594年)、真田信幸が従五位下伊豆守に、真田信繁が従五位下左衛門佐に叙任される。太閤秀吉の本城として伏見城改修工事が開始される。秀吉の命により豊臣秀吉の正室・高台院の甥である豊臣秀俊は小早川家の養子となり小早川秀秋を名乗る。養父の小早川隆景は従三位権中納言となる。文禄四年(1595年)二月、織田信長の娘婿である蒲生氏郷が逝去。関白秀次は北政所と吉野で花見。四月、秀吉の姉・智の三男である豊臣秀保が逝去。伊達政宗の従妹で最上義光の娘・駒姫は関白秀次の側室として召され入京する。秀次の側室で竹中半兵衛の従弟である竹中重定の娘・於長が四男土丸を出産。

大谷吉継は北政所の母、朝日殿の縁者である東殿を母に持つ。

吉継の妹のこやは北政所の侍女である。

吉継が従五位下刑部少輔に出世したのも北政所、朝日殿、東殿という豊臣家の奥を司る女たちの縁があった。

朝鮮で業病に罹患した吉継は伏見城築城の与力大名として働く真田昌幸に縁談をもちかける。

「殿下のお側近くに仕える真田信繁殿にいささか惚れ申した」

「でござるか」

吉継は・・・小田原征伐の折りに忍城で苦戦した信繫の立ち振る舞いを観察していた。

苦境の中にあって士卒を励ます信繫の姿には気品があった。

「わが娘・春を娶っていただくわけにはまいらぬか」

「しかし・・・信繫は無官でござる・・・いささかつり合いがとれませぬな」

「それについては・・・思案がござる」

「ほう・・・」

「信繫殿は次男ながら・・・すでに・・・長男・信幸殿は・・・沼田領の大名でごさろう・・・」

「いかにも・・・」

「真田本家は独立した大名ながら・・・沼田の真田家は徳川殿の与力扱いになりまする」

「どうも・・・そのようでござるな・・・」

「しかし・・・上田の真田家は・・・信繫殿に継がせる心づもりでは・・・」

「それがしは・・・まだ隠居するつもりはありませんがの・・・」

「さて・・・大谷家と縁組となれば・・・信繫殿には官位が下される手筈となっておりまする」

「・・・」

「同時に・・・信幸殿にも・・・ということになります」

「なるほど・・・」

今や、徳川家は関東に大いなる勢力を誇っている。

昌幸の二人の息子の一人を徳川家の内に・・・もう一人を豊臣家の内に飼っておこうという太閤の意図が察せられる。

昌幸の決断は早かった。

「この縁組・・・お受けいたす」

大谷吉継は頭を下げた。

「かたじけのうござる」

かくして・・・大谷吉継の娘・春は・・・真田信繁の正室として迎えられた。

そして・・・真田信繁は従五位下左衛門佐に叙任される。

同時に従五位下伊豆守となった真田信幸は・・・身籠った側室の清音院殿(おこう)の腹を撫でる。

「唐入りも終わり・・・官位を授かり・・・こうして・・・子が生まれる・・・こわいくらいに平穏じゃのう・・・」

おこうは微笑んだ。

文禄四年・・・信幸の嫡男となる真田信吉が生まれる。

その頃・・・京には暗雲が立ち込めていた。

関ヶ原まで・・・残り五年である。

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2016年7月10日 (日)

時をかける少女(黒島結菜)キラキラネームか!(石井萌々果)

やはり・・・時をかける少女と言えば「芳山くん」なのであって・・・。

「和子」を「未羽」に変更に変更してもギリギリセーフのような気がしたが吾郎が「未羽」を連発すると・・・やはり、「誰だ?」感は強まるのである。

登場人物の誰かが「芳山くん」を連発してくれないか・・・。

もちろん・・・「原田知世」的要素充分の黒島結菜には問題がない。

半世紀以上も「芳山和子」のファンをやっているといろいろとうるさいわけである。

筒井康隆の産んだ二大ヒロインといえば「七瀬」と「芳山くん」に決まっているからな。

「七瀬」から入るか・・・「芳山くん」から入るかで運命が決まると言っても過言ではない。

「七瀬」から入ると・・・「芳山くん」のロマンチックさに意外なうっとり感を味わうことができるし、「芳山くん」から入ると「七瀬」のショッキングさにうっとなるわけである。

最近ではアニメ版から入る人もいて・・・三次元の「芳山くん」に・・・なんか違うと感じる人もいるかもしれないが・・・基本的に「芳山くん」はこんな感じで間違いありません。

で、『時をかける少女・第1回』(日本テレビ20160709PM9~)原作・筒井康隆、脚本・渡部亮平、演出・岩本仁志を見た。脚本家はほぼ新人なのでセリフ・構成ともやや難があるが「時間跳躍」のアイディアは豊富で未来人の描写もそこそこ楽しませる。なにしろ・・・映画サイズの原作を引きのばし展開する必要があるわけである。そういう意味でほぼ原作要素を使いきった初回・・・これからひと夏の青春劇が開始するワクワク感はありました。

時間ものSFにも様々なジャンルがあるが・・・時間旅行に・・・薬物による瞑想的な要素を取り入れた「時かけ」である。

筒井康隆の「時間もの」には「精神的な過去への遡行」が重要な要素である。

「時かけ」では未来への遡行も含まれるが・・・基本的には「過去」に戻っての「歴史改変」が主題である。

「時間もの」の「タイムパラドックス」である「過去の自分の存在」が・・・「意識的」なものであるために解消されるわけである。

つまり・・・過去の自分は未来の自分によって記憶を上書きされてしまうのである。

未来の記憶によって過去を改変するので・・・「最初の自分」は消去されてしまうのだ。

「時をかける少女」(1965年)に対して「七瀬ふたたび」(1975年)では時間遡行者が・・・過去に遡上して歴史を改変しても・・・本来の時間軸では何も変わらないという並行宇宙的要素が加わる。世界は分岐しても・・・本来あった不幸な出来事は消えないというダークな要素が展開されるのである。

つまり・・・「芳山くん」の明るい未来と「七瀬」の暗い未来は・・・「時間もの」の両輪なのである。

そして・・・短編集「薬菜飯店」(1988年)に収録された「秒読み」ではこれらが統合される。破滅する世界から少年時代に戻った主人公は・・・たちまち未来の記憶を失っていくが・・・ただ世界を破滅から救おうとする思いだけは残り・・・未来が改変される希望を示す。

多くの改変できない過去を持つ一般人たちは・・・未来には改変の余地があるという道理に行きつくわけである。

高校生には手つかずの未来がすごく残っているという物語です。

第一の時間

七月六日・・・最後の夏休みを直前に控えた海辺の田舎町にある藤浦東高校3年6組の芳山未羽(黒島結菜)は鬱屈していた。負傷のために情熱を傾けていたボート部を退部し、写真部に入ったものの夢中にはなれない。このまま・・・青春の季節が終わってしまうような不安が芳山くんの胸を苛むのである。気分転換を求めて自転車を飛ばし・・・はじめての美容院に向う芳山くんなのである。

「時をかけるクスリ」を開発した未来人のケン・ソゴル(菊池風磨)は研究員仲間のゾーイ(吉本実憂)と共に過去である2016年にやってきた。

ゾーイは海辺に打ち上げられた深海魚リュウグウノツカイを発見した藤浦東高校3年2組の大西敦美(八木莉可子)に遭遇する。主要登場人物たちがなんちゃって高校生なのに対して実年齢15才なので初々しい。

上陸したケンとゾーイは芳山くんの自転車に煽られて驚く。

その時、「時をかけるクスリ」を落してしまうケンだった。

芳山くんは「はじめての美容院」で最近流行の前髪にチャレンジするが無惨に失敗してしまう。

「時をかけるクスリ」の再調合のために・・・主原料のラベンダーを求めていたケンは一人暮らしの深町奈緒子(高畑淳子)に見咎められる。未来の道具「記憶捏造器」で奈緒子の記憶を改変したケンは・・・実在しない深町翔平になりすます。

芳山くんは・・・最近・・・幼馴染の浅倉吾朗(竹内涼真)が女を見る目で自分を見ることに辟易していた。芳山くんは・・吾郎を嫌いではなかったが大人の階段を昇る心の準備が整っていなかったために・・・吾郎に貞操を奪われそうになるという淫らな悪夢を見るのだった。

そして・・・七月七日がやってきた。

銀行員の父親・芳山恭司(小松和重)は・・・テレビのモーニングショーで「リュウグウノツカイを発見した女子高校生・大西敦美」を見る。素晴らしいインターネットの世界でネットアイドル活動をしていた大西敦美は脚光を浴びる。

母親の芳山香織(安蘭けい)は朝食の準備に忙しい。

妹の芳山那帆(石井萌々果)は「冷凍庫のアイスクリームを食べないで」と念を押す。

「私、学校休む」とごねる変な髪型の芳山くん。

しかし・・・結局は登校する幼稚園から皆勤賞の芳山くんである。

「時をかけるクスリ」の再調合のために藤浦東高校に侵入した深町翔平は未来の道具「記憶捏造器」を使い・・・芳山くんの幼馴染でクラスメートの一人として3年6組の生徒になりすますのだった。

クラスメートが一人増えたことを誰も気がつかない・・・恐ろしい未来の道具である。

そんなものを一般市民が常備している未来って・・・。

芳山くんは第二の幼馴染である深町翔平に髪型を「こけしみたい」と揶揄される。

担任の数学教師・矢野和孝(加藤シゲアキ)の出題に黒板前で立ち往生する芳山くん。

芳山くんの女子の友人は・・・おじょうこと寺崎(古畑星夏・・・「ラーメン大好き小泉さん」の中村美沙)、えりちんこと木下(三浦透子・・・「鈴木先生」のカバ)である。

おじょうは仄かに吾郎に心を寄せているらしい。

芳山くんは最近気になっているコンビニのアルバイト大学生のことをからかわれ、うろたえて美術教室の石膏像を破損してしまう。

水道の蛇口が壊れ水浴びである。

放課後、理科室で実験中に事故を起こす深町翔平・・・清掃中の芳山くんは・・・「時をかけるクスリ」を吸引してしまうのだった。

「時をかける少女」が誕生した!

事態を収拾するために理科室を原状復帰した深町翔平はゴミ捨てから戻った吾郎と気絶した芳山くんを保健室に運ぶ。

意識を回復した芳山くんは「謎の実験」について語るが二人は「夢」として片づける。

お好み焼き店「りぼん」では主人の三浦浩(高橋克実)と内縁の妻・松下由梨(野波麻帆)が高校生たちの進路について問う。

医学部合格圏内の吾郎は・・・実家の「バーバー朝倉」を継いで理容師になるという。

深町翔平は遺伝子で定められた薬学研究員なのである。

芳山くんには未来が遠く感じられるのだった。

由梨の連れ子である松下圭太(五十嵐陽向)は未来人上陸の目撃者だが記憶改変を免れている・・・なんらかの倫理規定があるのか・・・しかし、それを大人たちに語ることはできない。

芳山くんはショートヘアが好きだと言っていた大学生にロングヘアの恋人がいることを目撃する。

芳山くんに何らかの異変が起こると予測した深町翔平は尾行を開始。

写真部員として撮影を開始した芳山くんは・・・路上の亀を助けて落下する鉢植えに襲われる。

そして芳山くんは時をかける!

第二の時間

数十秒前に亀ごと転移する芳山くん。

実際には時をかけただけでなく亀を瞬間移動させていて・・・辻褄はあっていないが大人としてスルーしておく。

本来は転移しているのは意識だけなので・・・亀は助けられないのである。

ここは「なんとなくお約束」で・・・触れたものは本人と一致という幻想発動なのである。

深町翔平に気がついた芳山くんは「タイム・リープ」の可能性について言及するが・・・深町翔平は「そんなことを言ったら正気を疑われる」と口止めをする。

何故か・・・意識改変をしないのは・・・深町翔平の中に・・・芳山くんに対する個人的感情が芽生えているためと大人的にスルーしよう。

だが・・・特別な能力を持った女子高校生にそれを使うなと言っても無駄なのである。

帰宅した芳山くんは洗面所でゴキブリに驚き、一瞬で七月六日の美容室に跳ぶ。

第三の時間

美容室で「こけし」にされそうになった芳山くんは驚愕して七月七日の洗面所に跳ぶ。

第四の時間

うわあ・・・ついに未来に跳んだよ・・・未来に跳んだら・・・不可能がなくなってしまうんだよ。

まあ・・・いいか。

とにかく・・・深く考えない女子高校生の芳山くんは・・・七月六日の美容室からやり直す決意をしたのだった。

第五の時間

局所的とは言え・・・繰り返される時空改変に・・・とんでもないことになっている宇宙はさておき・・・芳山くんは髪型の改変阻止に成功する。

美容室に行く前まで戻ればいいのになどと・・・冷静になってはいけません。

ドラマですからっ。

芳山くん「変な髪型にならずにすんだ」という嫌味が言いたい年頃なのです。

美容師に対する復讐心の発露・・・なにしろ・・・今や芳山くんは神に等しい存在なのだ。

そして、七月七日。

コンビニの大学生に「彼女いるくせに」と嫌味。

数学の解答は予習でバッチリ。

石膏像はナイスキャッチ。

水道の蛇口が壊れえりちんが水浴びである。

第六の時間

水道の蛇口が壊れおじょうが水浴びである。

第七の時間

二人を制して誰も水浴びしない・・・。

小刻みタイムリープでちょっとした悪戯心の発露である。

何故か・・・放課後のアクシデントは発動しない。

じゃんけん対決でも小刻みにジャンプしているがノーカウントにしておく。

ファール・プレイでジュースを吾郎からゲットする芳山くんだった。

この芳山くんは小悪魔くんなのか!

「バーバー朝倉」で散髪する芳山くんと深町翔平・・・。

吾郎ちゃんの父親である浅倉努(田口浩正)は幼い頃から芳山くんの髪を切って来た。

吾郎ちゃんの母親である浅倉唯(猫背椿)は昔は美人だったらしい。

「時って残酷だよなあ」とつぶやく吾郎ちゃん。

そして・・・おなじみの「火事の夜」がやってくる。

火事は「バーバー朝倉」の裏手で出火するが朝倉家は無事だった。

心配でかけつけた芳山くんは吾郎ちゃんの無事な姿に安堵する。

そこへ・・・可愛い水玉のパジャマを来た深町翔平が現れる。

この後で「吾郎ちゃんに助けてもらった記憶」を深町翔平が盗むシーンが挿入されるが・・・基本的に深町翔平は・・・芳山くんの記憶を改変しているわけである。

本来は存在しない深町翔平は新鮮さと懐かしさという矛盾した感情を芳山くんに発生させる。

それは「恋心」そのものなのである。

吾郎ちゃんの悲劇でもある「時かけ」は未来人に芳山くんの心を奪われる物語である。

その根底にあるのは・・・初恋の人と結ばれる可能性の少なさの物語である。

好きになるほど「美しい人」の恋仇は成長するとともに必然的に増加する理である。

少年ドラマにアレンジされると・・・「タイムトラベラー」も「謎の転校生」も未来人にヒロインの心を幼馴染が奪われる展開になるのはスタッフにそういう郷愁があるからだ。

「初恋なんてみのらないんだよ」なのである。

このドラマでは・・・芳山くんのモヤモヤした気持ちは・・・些細なことで人気者になったネットアイドルの大西敦美に向けられるのだった。

「今の時代・・・可愛いだけじゃアイドルとはいえない」と何故か語りだす吾郎ちゃん。

芳山くんの心に野望が芽生えるのだった。

第八の時間

七月六日・・・芳山くんは辺に打ち上げられた深海魚リュウグウノツカイを大西敦美より一足早く発見した。

七月七日・・・テレビのモーニングショーに登場する芳山くん。

予言者として「夜の火事」をインターネットに予告する芳山くん。

七月八日・・・時の人となった芳山くんに警告を発する吾郎ちゃんだが・・・「すべての良い思い出」を深町翔平に奪われている吾郎ちゃんの言葉は芳山くんの心に響かない。

胡瓜やキャベツをかじるゾーイは深町翔平を糾弾する。

「この子は・・・タイムリープをしている」

「仕方ないだろう」

「世界を大混乱に陥れるかもしれない」

「そのうち・・・薬効がきれるさ」

七月九日・・・本来は人気者になるはずだった大西敦美は逆にクラスメートに苛められる対象となっていた。あの「発見」がなければそうなる運命だったとも言える。

苛めの現場を目撃した芳山くんの心は疼く。

そして・・・「放火」の疑いで任意同行を求められる芳山くん。

「お前が放火したんだろう・・・」

「違います」

「正直に話せ」

「時をかけたんです」

「・・・」

その時・・・七夕の花火大会が始る。

芳山くんは時をかけた。

第九の時間

七月六日・・・大西敦美は海辺に打ち上げられた深海魚リュウグウノツカイを発見した。

そして七月九日・・・三人で行くはずだった花火大会に・・・深町翔平は現れない。

たこやきのたこを食べてくれる以外の吾郎ちゃんとの良い思い出を奪われている芳山くんの心は弾まない。

その上で良い思い出の少ない幼馴染の吾郎ちゃんは・・・芳山くんに告白してくるのだった。

はたして・・・深町翔平の介入しなかった二人はどうなったのだろう。

それは問うても意味のないことだ。

それはもう・・・起こってしまったのだ。

七月七日に・・・本当の吾郎ちゃんは消え・・・芳山くんにとっては・・・良い思い出のある幼馴染は深町翔平になっているのである。

何度か繰り返すタイム・リープで・・・どうしても吾郎ちゃんから告白されることが避けられない芳山くん。

憐れな吾郎ちゃん。

ついに・・・吾郎ちゃんが深町翔平に「二人きり」にしてほしいと頼んだことを突き止める芳山くん。

深町翔平を呼びだして・・・吾郎ちゃんの告白を阻止するのだった。

第十の時間

良い思い出のある幼馴染の深町翔平とただの幼馴染の吾郎ちゃんと三人で夜店を楽しむ芳山くん。

しかし・・・芳山くんがヤキソバを買っている間に深町翔平が提灯櫓の下敷きになる事故が発生する。

第十一の時間

芳山くんは時をかけて・・・深町翔平を事故現場から押し倒す。

深町翔平の胸で泣く芳山くんを見下ろし・・・吾郎ちゃんは失恋を噛みしめるのだった。

そして・・・深町翔平の中では・・・予定調和体制の未来にはない・・・「恋」というものに対する驚きが芽生えたらしい・・・。

深町翔平の残酷さが影を潜め・・・芳山くんがちょっと嫌な女に見える展開になってるんですけど・・・。

まあ・・・「時かけ」は未来人に芳山くんが心を奪われる物語ではあるのだが・・・。

それにしても・・・芳山くん・・・ちょっと時をかけすぎじゃないか・・・。

キャスティング的にも・・・深町と吾郎ちゃんは逆じゃないかと思うよねえ。

まあ・・・解釈にもよるだろうけどねえ。

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家族八景

七瀬ふたたび

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2016年7月 9日 (土)

神の舌を持つ男(向井理)古物商許可証を持つ女(木村文乃)手袋咥えて33年(片平なぎさ)

甕棺墓(かめかんぼ)とは・・・甕を棺とした墓である。主に小児の埋葬に使われた。

朝永振一郎はノーベル物理学賞の受賞者である。

宮沢賢治は詩人で童話作家である。

よく似た名前が主要人物のネーミングに用いられているようだ。

このドラマはトリオのコントを基盤として、基本的には甕棺墓がボケ、宮沢がツッコミ、朝永が大ボケという役割分担になっている。

甕棺墓と宮沢は凡人なのだが朝永は天才なのである。

なにしろ人間化合物成分分析器という超能力者なのだ。

荒唐無稽な話である。

つまり・・・ファンタジーなのである。

けして真剣に見ないでください。

で、『神の舌を持つ男・第1回』(TBSテレビ20160708PM10~)原案・堤幸彦、脚本・櫻井武晴、演出・堤幸彦を見た。「さあ・・・眠りなさい」で始る「聖母(マドンナ)たちのララバイ/岩崎宏美」は1981年にスタートした日本テレビの「火曜サスペンス劇場」の最初の主題歌である。「火曜サスペンス劇場」の略称は「火サス」であるが・・・他局なので二時間のサスペンスドラマの代名詞として「二サス」と言い逃れているのである。それでもそこそこ伝わるのだが・・・2005年に「火サス」が終了して十一年である。そろそろ・・・元ネタを知らない人は多いだろう。だから・・・そういうものはけしてメインディッシュにはならないと何度言ったら・・・まあ、いいか。

珍道中(道行)ものである・・・まあ・・・ロード・ムービーと言っても良いだろう。

主要登場人物は三人。

三人が何故・・・旅に出たのかは・・・謎に包まれている。

主人公の朝永蘭丸(向井理)は舌で化合物に含まれる分子成分を特定できるという・・・モンスターである。絶対に人間ではないはずだ。人間にそんなことができるわけがない。そもそも西洋化学の発展の礎となった錬金術師たちの死亡率は高いのである。みんな「物質」を舐めて見極めるので・・・いつか死ぬわけである。それはともかく・・・蘭丸は祖父である伝説の三助・・・朝永平助(火野正平)の葬儀で謎の温泉芸者・ミヤビ(顎に特徴のある女優だが何故か秘されている・・・何か不祥事があっておそらくキャスティングが間に合わなかったのだろう・・・きっと違うぞ)と「特別な味のキス」をして以来・・・ミヤビに恋焦れ・・・彼女を求めて旅に出たらしい。

ワゴン車に乗って古物の行商をする甕棺墓光(木村文乃)は蘭丸に懸想し、行動を共にしているらしい。甕棺墓のキスはカメムシのような味がするようだ。

謎の男である宮沢寛治(佐藤二朗)は宮沢賢治の詩を諳んじる常識人風だが・・・変な男女と行動を共にしていることがすでに怪しいわけである。

三人を乗せたワゴン車はびわ狩りのシーズン(梅雨時)に栃木県の秘湯「湯西川温泉」を目指す。

温泉芸者・ミヤビの出没情報があったらしい。

しかし・・・びわの食べ過ぎでお腹をこわした甕棺墓のために山中で車内泊を余儀なくされる一行だった。

甕棺墓は「困った女」設定であり、トリックの山田同様・・・誰もが認める美女なのに登場人物だけはそれにまったく気がつかないというおかしなことになっている。

ただの変な旅行記では成立しないために・・・基本的にはミステリ要素があり・・・それがありふれた手法であることを隠すために「二時間ドラマ好きな女」として設定された甕棺墓は「二時間サスペンスドラマ」的な言動で一種のバロディーを構成する。

倫理観に問題のある甕棺墓は管理していた蘭丸の金も使いこむ。

びわで金を使い、お腹の薬でお金を使い・・・ほとんど無一文となった一行はガソリン代も賄えない。

件の温泉旅館に到着するが・・・謎の女・ミヤビはタッチの差で・・・温泉宿の主人・高藤茂(菅原大吉)の運転する車で・・・駅へと向っていた。

追いかけるワゴン車はガス欠でエンコ(行動不能)である。

温泉宿の女将・高藤美鈴(片平なぎさ)は「空き部屋はありますが・・・初めてのお客様は・・・保証金を頂くシステムです・・・」と当然の対応。

しかし・・・宮沢は言葉巧に「伝説の三助・・・朝永平助の孫の特殊な技術」を売り込むことに成功する。

三助とは銭湯の従業員の一種だが・・・その業務内容は「釜焚き」「湯加減」「番台」の三種である。ここで語られる垢すりなどの「流し」のサービスは業務外のものである。

しかし・・・なにやら如何わしい蘭丸の秘密のマッサージ・テクニックは女性客に好評で・・・お茶の間サービスを兼ねるのだった。

しかし・・・サービスの質は昨夜の「遺産相続弁護士 柿崎真一 」の方が高品質であった・・・蘭丸のふんどしサービスも臀部の露出が物足りなく・・・向上に努めてもらいたい。

第一、甕棺墓の入浴シーン・サービスがないなんておかしいだろう・・・落ちつきたまえ。

さて・・・事件発生である。

温泉郷では町長の推進する「ゲンジボタルの放流事業」で村おこしをしていたが・・・他地域のホタルの放流による遺伝子汚染を憂慮する反対運動も発生していた。

反対派は・・・環境省の調査員に「ホタルの生態調査」を依頼する。

その・・・調査員が死体で発見されるのだった。

ここから・・・「二サス」のパロディーとして甕棺墓刑事(ではない)が事件解決を目指す。

主な要素は・・・。

旅館の主人が不似合いな鬘を着用。

甕棺墓が「二サスの視聴者ならすぐわかること」「おかどちがいの容疑者が複数登場」「なんのことだかわかりませんと言ったら真犯人」とボケまくり、ついには「聖母の子守唄」を歌い出す。

「二時間ドラマのことは忘れろ・・・そして歌うな」と冷静に突っ込むホトケ・・・じゃなかった宮沢。

「鬼怒川県民健康スポーツ医療福祉グローバル薬科短期大学」「略してキヌ短」「鬼怒川県民健康スポーツ医療福祉薬科短期大学」「グローバルぬけておーる」

「梅雨時なのに雪が降る」「夏ドラマのロケはなごり雪の季節にやるので」

「新婚さんいらっしゃ~い」と女将。

反対派の団体に謎の外国人勢力が関与。

結局、ゲストの片平なぎさが犯人。

事件の謎を解くのは主人公である。

「事件の謎はこの舌が味わった」のだった。

宿泊客だった調査員に・・・びわから抽出したアミグダリンを食させ・・・小腸粘膜のβグルコシターゼとの加水分解によってシアン化水素を発生させ・・・毒殺。

同じ部屋に宿泊した蘭丸は「神の舌」で成分を検出したのである。

調査員が殺された動機も・・・蘭丸の温泉成分分析で解明される。

温泉汲み上げ施設が故障した旅館では・・・入浴剤を用いた偽装工作を続けていて・・・それを調査員に見抜かれてしまったのだ。

宿泊客への損害賠償を考えると・・・調査員を生かせておくことはできなかったのである。

集められた一同は・・・蘭丸の謎解きに茫然とする。

「この旅館も終わりね・・・」と呟く女将。

「え・・・」

謎を解いたが・・・誰かを不幸にするつもりはなかった無垢な主人公は泣きだす。

「何・・・同情してんのよ・・・殺人犯よ」と慰める甕棺墓だった。

「どうして・・・温泉擬装なんか・・・よくあるネタだからですか」

「シーズンオフになったら・・・施設は修理するつもりでした・・・しかし・・・何故か・・・螢がいつまでもいなくならないので・・・お客さんが押し掛けて・・・」

「それは・・・汲み上げられなかった温泉が川に流れ込んで・・・水温が高くなったからです・・・螢にとって繁殖しやすい環境になったのです」

「・・・」

人間たちのイザコザを余所に螢はつかのまの生を謳歌するのだった。

宮沢は「春と修羅第二集/宮沢賢治」の一節を引用する。

奇怪な印を挙げながら 

ほたるの二疋がもつれてのぼり 

まっ赤な星もながれれば 

水の中には末那の花・・・ 

螢は青くすきとほり 

稲はざわざわ葉擦れする 

うしろではまた天の川の小さな爆発・・・ 

ほたるはみだれていちめんとぶ 

赤眼の蠍

萱の髪 

わづかに澱む風の皿 

螢は消えたりともったり 

泥はぶつぶつ醗酵する・・・

連行される旅館の主人は蘭丸に囁く。

「ミヤビさんは・・・体を売るダルマ芸者のような真似はしていませんでした・・・ただ妙な男と一緒だったのです」

「・・・」

主人の回想によってその男はお茶の間には赤星昇一郎が演じていることが分かる。

「ミヤビさんは・・・テツトモ温泉のなんでだ楼に行くと言ってました」

テツ・・・本当にしょうがないな・・・。まあ・・・いいじゃないか。甕棺墓くんが可愛いのだから。

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トリック

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2016年7月 8日 (金)

遺産相続弁護士 柿崎真一(三上博史)六時間妻(奥菜恵)迷える子羊(酒井若菜)女狐(森川葵)

春と夏の谷間終了である。

例によって・・・先頭に飛び出すのは読売テレビの深夜枠だ。

制作協力各社によって次々に微妙な作品が繰り出されるわけだが・・・。

前期がオスカープロモーションによる「ドクターカー」・・・その前が吉本興業による「マネーの天使〜あなたのお金、取り戻します!〜」・・・メディアミックス・ジャパンの「青春探偵ハルヤ〜大人の悪を許さない!〜」・・・ザ・ワークスの「婚活刑事」・・・ホリプロで「恋愛時代」・・・吉本興業で「五つ星ツーリスト〜最高の旅、ご案内します!!〜」・・・もういいか。

振り返っても心が震える作品にはなかなか巡り逢えないものだ。

だが・・・今回の制作協力→ ザ・ワークスはなかなかに侮れないのである。

この枠定番の・・・ださめの演出ではなく・・・それなりにスタイリッシュに仕上げてきているのだ。

恐ろしいことだが・・・これはレギュラー・レビューの対象になる可能性があります。

で、『遺産相続弁護士 柿崎真一・第1回』(日本テレビ201607072359~)脚本・林誠人、演出・白川士を見た。この枠にはなんとなく・・・「もっさり」した感じがあるのだが・・・つまり・・・あまり高級なお客さんは狙っていませんよ・・・という感じだが・・・出来がよくないのに最初から客を選べる立場か・・・と思うことがある。しかし・・・今回は・・・頑張って作りますので評価はお任せします・・・という姿勢が感じられる・・・どういう感じだよ。たとえば・・・証言集めの途中で・・・主人公は・・・物語の要の一つである「天体望遠鏡」を使い・・・うっかり、向いのビルで脱衣中の女性を覗いてしまう。気配に気がついた女性が振り返り・・・あわててカーテンを占める。その女性(芝崎唯奈)がそれなりに可愛いので得した気分になる。しかもさりげなく手ブラなのだ。こういう高いクオリティーが最初から最後まで貫かれているということだ。・・・なるほど。

深夜の墓地。十字架が倒れていたりして・・・異国風である。墓を掘り起こしているのはヴァンバイア・キラー・・・ではなく・・・弁護士バッヂを隠す男・柿崎真一(三上博史)である。やはり日本の俳優の中でも墓あらしをさせたら一、二を争うな。柿崎は棺桶とともに埋葬された一通の封書を取り出す・・・そして月に吠えるのである。

ラブホテル「迷える子羊たち」の一室で・・・睦み合う柿崎と歯科医の水谷美樹(酒井若菜)・・・二人は大人の関係でもあるが患者と医師でもある。そして水谷は・・・セレブ専門の歯科医院を営んでいるのだった。裕福な老人を虜にして遺産分与してもらうのが趣味らしい。柿崎の入手したものは死後のゲームのトロフィーとしての「遺言書」なのである。

「おい・・・名前・・・美樹じゃなく・・・美紀になってるぞ」

「うそ・・・」

思わず遺書を訂正する水谷。

たちまち「受遺者が遺言書を変造した場合、相続欠格としてその地位を失う」(民法第965条および891条5号)が発動するのだった。

水谷が落胆しているところに・・・遺産相続専門法律事務所「ラストリクエスト」に所属する丸井華弁護士(森川葵)が現れた!

「明日の葬儀一覧です・・・山岸氏の葬儀は狙い目なので遅刻厳禁で」

すでに・・・あまりん的何かが醸しだされるのだった。いいぞ!

総額三億円の遺産を残した山岸氏(螢雪次朗)の告別式にもぐりこむ柿崎と丸井・・・。

しかし・・・相続者は一人娘の倫子(紫吹淳)だけで・・・弁護士の割りこむ余地なしと思われた矢先・・・Club「泥棒猫」のママ・立花淳子(奥菜恵)が登場し、お約束で遺体にすがりつくのだった。

「遺体は引きとります」

「誰があんたなんかに・・・」

たちまち・・・修羅場となるのだった。

ニヤニヤしていた柿崎に・・・淳子が依頼者として名乗りをあげる。

「きっちり・・・妻としての・・・取り分を確保して・・・」

淳子は山岸氏の死亡する六時間前に婚姻届を受理されていた。

「六時間妻なんて認めない・・・危篤状態のお父さんに無理矢理署名捺印させたに決まっている・・・出るとこ出るわよ・・・」

「当事者間に婚姻の同意がない場合は、その婚姻は無効とする」(民法742条1号)を盾に息まく一人娘の倫子である。

「法廷は必ず正しい判断を下すでしょう」

「法廷はまずいな・・・」

柿崎は蒼ざめる・・・どうやら・・・柿崎の弁護士資格には疑わしいところがあるらしい・・・。

怪しい霊媒師のコスプレで・・・山岸氏が入所していたハイクラス老人ホーム「ゴールデンライフ」を調査する丸井弁護士。

「彼は真面目な性格だから・・・」ハイクラス老人A(久保晶)。

「完全に騙されていたよね・・・」ハイクラス老人B(須永慶)。

「泥棒猫のママは遺産狙いさ・・・」ハイクラス老人C(小杉幸彦)。

澱みないキャスティングだな・・・。

淳子に有利な証言は得られなかったが・・・柿崎は・・・山岸の部屋の天体望遠鏡で思わぬ目の保養をするのだった。

「お盛んですなあ・・・」

「男は生涯現役だからねえ」

クラブ「泥棒猫」にやってきた二人・・・。

ホステスのめぐみ(小西キス)は「じいさんたちはみんなママ狙いだったけど・・・ママが選んだのは・・・山岸さんだった・・・余命がいくばくもないと知ってのことだったんじゃないかな」と淳子に不利な証言をする。

そこに闇金業者の「かばらい」こと河原井正(豊原功輔)が現れる。

「ママには三千万円の借金がある・・・遺産が相続できないとまずいことになる」

風向きを読んだ丸井弁護士は・・・単身・・・一人娘の倫子を訪ねるのだった。

「婚姻届は国が認めた証拠ですからね・・・無効になるとは限りません・・・私なら・・・泥棒猫のママに遺産放棄をさせることが可能です」

「本当?」

「弁護士報酬は10パーセントが相場ですが・・・私は1パーセントで・・・しかも成功報酬のみでお役に立てますが・・・」

「あなた・・・雌狐ね・・・」

どうやら・・・丸井は金銭に執着するタイプのあまりんらしい。

行き詰った柿崎に・・・歯科医の水谷が情報を提供する。

「山岸氏は・・・淳子ママのために・・・インプラントにしたのよ・・・」

「入れ歯は・・・口臭が気になるからな」

「愛のエチケットよ・・・そして・・・山岸氏は・・・入れ歯を彼女に贈ったの・・・」

「入れ歯を・・・」

「猟奇的な贈り物よね・・・私は歯医者だから・・・問題ないけど」

「・・・」

「とにかく・・・山岸氏は・・・金持ちにしておくのがもったいないくらいいいおじいちゃんだったわ」

「金持ちに対する偏見がひどいな」

柿崎は・・・淳子を訪ねる。

「三千万円の借金は・・・柿崎氏の資産運用のミスだったとか・・・」

「だますつもりがだまされたって・・・ことよ」

「あの人は・・・逝ってしまった」

「もう・・・帰らない」

「そして・・・入れ歯が残った」

「形見といえば形見だけど・・・所詮は義歯だもの」

「見せていただけますか」

白木の箱に収納された入れ歯・・・しかし・・・底には何かが隠されていた。

淳子はそれに気がついていなかった。

「そんなものになんの価値もないわ・・・」

「ところで・・・成功報酬は六千万でいかが・・・ですか」

「え・・・三十パーセント以上じゃない」

「しかし・・・愛に値段はつけられないでしょう」

「・・・?」

丸井は週刊誌に「六時間妻」のネタを売り込む。

「大変です・・・」と事務所に駆け込む丸井。

「これのことか・・・」

ワイドショーでは「六時間妻」が取り上げられ・・・淳子は「毒婦」としてバッシングされていた。

「誰が・・・こんなことを・・・」

「こうなったら・・・相続放棄をするしかない」

「えええ」とわざとらしく驚く丸井だった。

記者会見場。

「私は彼を愛していました・・・彼も」

「冗談じゃないわ・・・お父様が愛していたのは私のママだけよ」

倫子が食ってかかる。

そこへ・・・三老人が現れた。

「娘のくせに・・・滅多に顔を出さなかったくせに・・・」

「淳子ママは・・・毎日・・・山岸氏の世話を・・・」

「一番うらやましかったのは・・・入れ歯の手入れだよ」

「ちっとも嫌がらずに丁寧に・・・」

「臭いのにな・・・」

「俺たちはうらやましくてねたましくて・・・嘘をついてました」

「彼も私を愛していてくれたと思います」

「・・・」

「その愛に応えるために・・・私は遺産相続を放棄します」

「えええええええええええ」

「本気なの・・・?」と倫子。

「だから・・・婚姻関係は認めてください」と淳子。

「お義母様・・・」

抱き合う娘と義母だった。

丸井弁護士は三百万の小切手を入手した。

七夕の夜・・・柿崎は淳子を天体観測施設に連れ出した。

「ただ働きさせて悪かったわね」

「山岸氏は・・・星がお好きだったんでしょう」

「よく・・・知ってるわね」

「今日は・・・あなたに見せたいものがあります」

柿崎は望遠鏡で淳子に星を見せる。

「その星の名は・・・HtoJ20140707・・・山岸氏の秀雄のイニシャルはH・・・つまり山岸さんからあなたへの贈り物ということですな」

「2014年の七夕は・・・二人の思い出の夜よ」

「・・・でしょうね」

「入れ歯の下にはメモとキーが隠されていました・・・手にとってみればよかったのに」

「思い出して・・・泣いちゃうから」

「彼も不安だったんですよ・・・あなたの愛が本物かどうか」

「そりゃ・・・そうね・・・」

「でも・・・三千万円を損失したと言っても・・・あなたの態度は変わらなかった」

「・・・」

「それは・・・嘘だったんです」

「え・・・」

「メモには・・・謝罪の言葉がありましたよ・・・貸金庫の鍵の名義はあなたのものです」

「・・・」

「勝手に確認させてもらいました・・・現金で三億円・・・彼は運用に成功していたんですよ・・・成功報酬六千万円で・・・残り二億四千万円があなたの取り分でよろしいですか」

「二十パーセントは相場なの?」

「弁護士によりますね・・・」

現金六千万円をつみあげる柿崎弁護士・・・丸井弁護士と歯科医の水谷もうっとりである。

「お金の匂いって素敵・・・」

「萎えるね・・・」

そこへ河原井が現れた!

「淳子ママから・・・三千万円回収できたよ・・・だから・・・今日は利息分だけで勘弁してやる」

「え・・・」と驚く両手の花たち。

「六千万円じゃ・・・焼け石に水だけどな」

全額を持ち去る河原井だった。

「利子だけで六千万円って・・・いくら借金してんのよ」と水谷・・・。

河原井を追いかける丸井・・・。

「せめて・・・今月の生活費だけでも・・・残してくれませんか」

だが河原井は丸井の下半身を撫でおろすと・・・丸井が靴下に隠匿した三百万円の小切手を抜き取るのだった。

「私は・・・君の秘密も知ってるよ・・・これは口止め料としてもらっておくね」

立ちすくむ丸井・・・かわいいよ、丸井かわいいよである。

「ウシジマくん」も始るがこれはこれでソフトなダークサイドの物語らしい・・・。

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婚活刑事

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2016年7月 7日 (木)

鎖 女刑事 音道貴子(小池栄子)男より早く食べる女たち(篠田麻里子)

前回が直木賞作家の物語だったわけだが・・・今回は「凍える牙」で第115回直木三十五賞(1996年)を受賞した乃南アサの原作をドラマ化である。

受賞作の「凍える牙」のヒロイン・音道貴子はこれまで、天海祐希や木村佳乃などが演じてきたが・・・今回はシリーズ作品の一編「女刑事 音道貴子 鎖」のドラマ化である。

音道貴子を演じる小池栄子が抜群の存在感だ。

グラビアアイドルのイメージの強い小池栄子だが映画「下妻物語」や「パーマネント野ばら」などで素晴らしい演技を見せている。女優としての実力をお茶の間に認知させたのはドラマ「リーガルハイ」の沢地君江役だろう。完璧なボディーを備えた優秀な秘書という・・・他者の追随を許さない役柄を得たのである。

その延長線上に「世界一難しい恋」はあり・・・再び「最高の秘書」でお茶の間を魅了したのである。

もちろん・・・秘書でなくても・・・できるわけで・・・魅力的な女刑事が誕生している。

遡って「凍える牙」も小池版で見たいぞ。

で、『水曜ミステリー9 鎖 女刑事 音道貴子』(テレビ東京20160706PM9~)原作・乃南アサ、脚本・坂上かつえ、演出・児玉宜久を見た。ミステリに限らず筋立てというものはいくつかの断片を複合させたものである。断片はありふれた素材だ。「迷宮入りした幼女失踪事件」「母親による虐待」「介護に疲れて家出」「いやな年下の上位者」「ひったくりの被害者」「税金逃れのための隠し口座」「強盗殺人事件」「人質立てこもり事件」「心あるものは通じ合う」「よく似た女」「面倒見のいい先輩」「若い男と駆け落ち」「睡眠薬入りオレンジジュース」「犯罪現場に通りかかる」「解雇された企業に復讐」「金の切れ目が縁の切れ目」「老いた両親の涙」「カッとなりやすい性格」「山分けで仲間割れ」「詐偽の常習犯」「現場から前科者の指紋を検出」「廃墟に地下通路」「偶然の再会」・・・そういう断片が巧に絡み合い・・・物語が誕生する。

「ご馳走様でした」と特捜班の女刑事・平嶋真紀(篠田麻里子)は食事を手早く終える。

「早いな」と呆れるベテランの滝沢保刑事(高橋克実)・・・。

「滝沢さんが・・・女はメシが遅くてダメだって言ったんですよ」

「お前によく似た女がいたよ」

「どこの店にですか」

「馬鹿・・・刑事だよ」

かってコンビを組んでいた音道貴子(小池栄子)を思い出す滝沢刑事だった。

機動捜査隊に所属する音道貴子巡査長は殺人事件の現場に一番乗りしていた。

占い師夫婦が客の夫婦とともに惨殺された事件である。

捜査本部が開設され、音道刑事は捜査一課の星野秀夫警部補(阿部力)とコンビを組むことになる。

星野刑事は音道よりも階級は上だが年下だった。

「怨恨の線が強い」と捜査方針を口にする星野に音道は「強盗殺人の疑い」を口にする。

殺害現場に銀行の粗品が大量にあったのに・・・通帳が残されていないことを指摘する音道。

捜査会議で報告しようとする音道を星野は制止し、裏をとるために銀行に向う。

しかし・・・銀行には占い師の口座はなかった。

「着眼点はよかったが・・・ハズレだったな」

「しかし・・・匿名口座の可能性も」

「今の時代・・・銀行にはそんなことはできないよ」

お互いをよく知りあうためにと酒席に誘う星野だった。

その席で・・・星野は音道を口説き始める。

「私にはそういうつもりはありません」

「なんだと・・・色目を使いやがったくせに・・・」

星野は女癖の悪さに定評のある悪徳刑事だった。

その上・・・星野は上司の柳沼伸治(益岡徹)に「銀行の件」を報告していた。

柳沼は銀行に再就職した警察官関係者を利用し・・・法規制前に存在した匿名口座の存在と・・・事件後、「二億円」の預金口座が解約されたことを突き止める。

「強盗殺人の疑い」が濃厚となる。

聞き込みを続ける音道は・・・昔の事件の被害者を見かける。

一年前のひったくり事件の被害者だった。

中田加恵子(西田尚美)は寝たきりの父親と無職の夫、高校生と中学生の二人の子供を抱え・・・夜のアルバイトもする看護師である。

現金を抜かれた財布だけが戻ると・・・財布の中から古いお守り袋を取り出し・・・安堵していた様子が印象に残っていた。

だが・・・挨拶もせずに立ち去る中田加恵子は不釣り合いな若い男と一緒だった。

交際申し込みを拒絶してから態度を一変させた星野刑事は・・・関与が疑われる銀行の退職者リストを音道に示す。

「ここは遠いからお前一人で行ってくれ」

「単独捜査は規則違反です」

「うるせえな・・・命令するのは俺なんだよ・・・警察は階級組織だってことを忘れるな」

仕方なく埼玉県に聞き込みに行った音道は・・・目当ての退職者が東京に引っ越したことを知る。

だが・・・引越し先の住所には墓地があるだけだった。

駅へ引き返す音道に星野からの着信がある。

《今、どこだ》

「東京です」

《なんだと・・・命令に従わないつもりか》

そこへ・・・中田加恵子が現れる。

「刑事さん・・・」

「あら・・・中田さん」

《なんだって・・・》

「すみません・・・知りあいに会ったので・・・折り返し連絡します」

《男なのか》

音道は電話を切った。

「二回も会うなんて・・・偶然ね」

「中田さんはどうして・・・ここへ」

「私・・・家を出たの・・・ちょっと寄って行く?」

音道は招かれてジュースを御馳走になる。

「ここに・・・お一人で・・・」

「・・・」

その時・・・浴室から明らかに返り血を浴びた堤健輔(黄川田将也)が現れた。

「え・・・」

立ち上がろうとした音道は眩暈を覚える。

「ごめんね・・・睡眠薬を入れたの・・・あなたが悪いのよ・・・私を付け回すから」

「そんな・・・」

横道は意識を失った。

横道刑事が捜査会議に現れず・・・連絡もとれないために・・・騒然となる捜査陣。

しかし・・・星野は嫌がらせのために単独捜査を命じたことについて口を噤む。

「彼女は・・・風邪気味で・・・帰宅させました」

だが・・・翌日も・・・横道は姿を見せない。

滝沢刑事の特捜班に失踪警察官の捜査が命じられる。

「捜査中の刑事が行方不明になった・・・事件性があるかどうかは・・・不明だが」

資料を見た滝沢刑事は顔色を変える。

「こいつが・・・無断欠勤するなんて・・・ありえません」

滝沢は星野に事情を聴取するのだった。

「あいつは・・・いい加減な奴で・・・手を焼いているんですよ」

「あんた・・・彼女に振られていやがらせをしていたそうだな」

「誰が・・・そんなことを・・・」

「みんなだ・・・警察なめるなよ」

「・・・」

「横道に何をやらせた」

「埼玉県まで聞き込みに・・・」

「単独捜査はタブーだろうが」

「・・・だが・・・あの女は東京にいて」

「横道との最後に連絡を取ったのはあんただ・・・状況を思い出せ」

「確か・・・事件の被害者に会ったとか・・・中のつく名前だった」

「あんた・・・鈍いようだから・・・言っておくが・・・彼女にもしものことがあったら・・・ただではすまないぜ・・・」

滝沢刑事と平嶋刑事は埼玉県から阿佐ヶ谷の墓地にたどり着く。

「はがきにはただ三丁目とありましたが・・・北と南があるそうです」

「何・・・」

「ここは・・・北三丁目です」

「じゃあ・・・南だ」

そして二人の刑事は退職者の死体を発見する。

「仲間割れか・・・」

横道の捜査記録から・・・中田加恵子の名が浮上する。

二人の刑事は中田加恵子の交際相手の堤健輔を割り出し・・・堤が借りたレンタカーから前科者の指紋を発見する。

詐偽の常習犯・・・井川一徳(小木茂光)である。

「おそらく・・・こいつが主犯だな」

音道は廃工場で監禁されていた。

脱出に失敗し・・・暴行を受けた音道を手当てする中田・・・。

「なんで・・・あなたは・・・こんなことを・・・」

「変わりたかったのよ・・・」

「変わるって・・・人殺しの仲間になることなの・・・」

「あなたには・・・わからないわ・・・」

「そんな・・・」

「私はね・・・幼い頃から亡くなった母親に折檻されていたの・・・」

「・・・」

「なぜだと思う・・・」

「・・・」

「私が本当の子供じゃないからなの・・・私は三歳の時に死んだ子供の代わりに・・・今の父親に誘拐されたのよ」

「え・・・」

「信じられないでしょう・・・私だって・・・母が死ぬ時にそう言われて・・・そんな馬鹿なと思ったわ」

「本当の御両親は・・・」

「昔の事件の記事を捜して・・・家の前まで行ったのよ・・・でも・・・何十年も前の話なのよ・・・とてもじゃないが・・・顔なんか出せなかったわ・・・」

「・・・」

「そんな私が・・・すべてを捨てて生まれ変わるためには・・・こんなことをするしかなかったの・・・彼が私を地獄から救ってくれたの」

「お子さんのことは・・・」

「うるさい・・・黙れ」

しかし・・・中田は高校生の息子と連絡を取り合っていた。

自分の捨てた家族に捜査の手が及んでいるとは夢にも思わなかったのだ。

たちまち・・・特定される犯人グループの位置情報。

「新潟だと・・・」

「船で・・・高飛びするつもりだな」

特殊部隊により包囲される廃墟。

「どうするんだ・・・」

「安心しろ・・・この工場には地下通路があるんだよ」

「え・・・」

「だから・・・この女を殺さずに連れてきたんだ・・・この女がいれば簡単に突入できないからな・・・出航時間までの時間稼ぎだ」

その時・・・中田の携帯に着信がある。

井川が電話を取り上げる。

《もしもし・・・井川にかわってくれ》と滝沢刑事。

「私が・・・井川だ」

《あきらめろ・・・》

「こっちには・・・人質がいる・・・銃もある」

《人質は生きているのか・・・》

「声を聞かせるよ・・・お前らのお仲間だ」

《音道・・・俺だ》

「滝沢さん・・・」

《いいか・・・お前のタイミングで突入する・・・合言葉を決めろ》

「・・・」

《お前が一番嫌いな奴の名前でも叫べよ》

音道は絶叫した。

「星野の野郎!」

音道は身を伏せた。

たちまち突入が開始され・・・犯人たちは一網打尽の憂き目に・・・。

応急手当を受ける音道が猫撫で声で現れる。

「無事でよかったな・・・誤解のないようにいっておくけど・・・」

問答無用で星野を鉄拳制裁する音道だった。

音道は・・・中田加恵子の本当の両親を訪ねる。

「にわかには・・・信じられないでしょうが・・・しかも・・・彼女は獄中にいます・・・けれど・・・御両親には彼女の更生の一助になってもらいたいと・・・」

音道は・・・中田加恵子の写真を見せる。

加恵子の年老いた両親は・・・加恵子の本当の名を呼ぶ。

「間違いない・・・面影がある・・・」

涙にくれる両親だった。

音道貴子は優秀でタフで・・・心ある刑事なのである。

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2016年7月 6日 (水)

ふつうが一番(東山紀之)新しいママです(松たか子)

藤沢周平を選ぶ人がいるのだから・・・世界とは恐ろしいものだな。

気難しい父親とは文学の好みもなかなかに一致しないのだが・・・唯一、喧嘩にならないのが藤沢周平である。

藤沢周平の前に右も左もないからである。

もう・・・新作が読めないのかと思うと・・・ひどく哀しい気分になるのだな。

実の娘のエッセイを原作とした昭和のひとときの物語である。

作り手も昭和の人風だが・・・たまにはのんびりしていいかもねえ。

で、『ふつうが一番 -作家・藤沢周平父の一言-』(TBSテレビ20160704PM9~)原作・遠藤展子、脚本・黒土三男、演出・清弘誠を見た。物語の時代は昭和四十三年(1968年)から昭和四十八年(1973年)までのおよそ五年間である。つまり・・・半世紀近く前の話だ。物語は原作者の藤沢周平の長女の言葉で綴られていく。ナレーション担当は小林綾子(おしん)である。

藤沢周平はペンネームであり、本名は小菅留治(東山紀之)・・・長女の展子(熊坂澪→稲垣未泉→小林星蘭)は昭和三十八年(1963年)に生まれる。留治の最初の妻・悦子は出産から僅か八ヶ月で進行性の癌のために逝去する。東京・新橋の「日本食品加工新聞」(株式会社日本食品経済社)の記者として働く留治は幼い妻と老いた母のたきゑ(草笛光子)の面倒を見ながら・・・最愛の妻を亡くし鬱屈した心を余暇の小説執筆で癒していた。

やがて・・・藤沢周平の小説に魅せられた高澤和子(松たか子)と交際を始めた留治は純喫茶ロダンに和子を呼びだして・・・ウエイトレスのいずみ(熊谷真実)に包丁を貸してほしいと頼む。

「包丁を・・・どうなさるの」

「ハムを切るんです」

「ここで・・・」

「はい」

食品加工業の業界新聞の記者である留治は取材先の日本ハムの社長に気に入られ・・・高級なハムを贈られたのだった。

「はんぶんこして・・・」

「私にくださると・・・」

物騒なのか呑気なのか・・・よくわからない時代なのである。

留治は和子に求婚した。

和子は留治の連れ子である展子のことが気がかりだったが・・・三人で旅行に出ると展子は和子になついた。

展子も母親不在の五年間を寂しく過ごしていたのだった。

和子の父親の高澤庄太郎(前田吟)は子持ちの寡夫に嫁ぐことに反対するが・・・「愛」の前に屈服するのだった。

こうして・・・昭和四十四年(1969年)・・・東京・練馬で留治と和子は夫婦生活を始める。

堅実な留治の母親は嫁に一日五百円で家計を賄うことを強いるのだった。

すでにアニメ「ひみつのアッコちゃん」の放映が始っていたが・・・前年に放送終了したアニメ「魔法使いサリー」が展子のお気に入りだった。

一緒に主題歌を歌ってくれる新しいママに展子は喜悦を感じる。

口さがない魚屋の女将は「継母なんてかわいそうだ」と心ない言葉を展子に吐く。

「ままははってなあに?」と問う六歳の娘に後妻は答える。

「ママと母で二倍お母さんってことよ」

「それって凄いの」

「凄いのよ・・・二倍だもの」

こうして・・・貧しいけれど幸せな暮らしが始った。

東北出身の姑と夫と娘はカレーライスに醤油をかけ、東京下町育ちの和子はソースをかけるのだった。

ああ・・・昭和だなあ・・・。

家事から解放された留治は執筆活動が軌道に乗る。

昭和四十六年(1971年)には「溟い海」が第38回「オール讀物」新人賞を受賞。「溟い海」は昭和四十六年上半期の第65回直木賞候補作としてノミネートされるのだった。

直木賞受賞作家とそうでないものには天と地ほどの差がある時代である。

緊張感が高まる小菅家・・・。

しかし・・・該当作品なしだった。

お通夜のようになる小菅家・・・。

姑は花札博打に興じ、反抗期の娘は家出、夫婦は喧嘩の修羅場である。

だが・・・一番の読者である和子は藤沢周平を励ますのだった。

「あなたの書くものは・・・面白いから大丈夫です」

けれど・・・試練は続く。

昭和四十六年下半期の第66回直木賞には「囮」が候補作としてノミネート。

またもや・・・該当作品なしだった。

昭和四十七年下半期第68回直木賞には「黒い繩」が候補作としてノミネート。

三度目の正直を願う小菅家・・・。

しかし・・・無情にも該当作品なしなのである。

ちなみに第67回直木賞は綱淵謙錠「斬」と井上ひさし「手鎖心中」がダブル受賞しているのだった。

もはや・・・「やってらんねえ」と泥酔しても仕方ない状態である。

留治は幼馴染の木内松五郎(佐藤B作)と飲んだくれるのだった。

そして・・・緊張に耐えかねた和子は風邪をこじらせ・・・高熱を発する。

留治は和子を背負い・・・真夜中に竹下医師(篠田三郎)を叩き起こす。

和子は肺炎寸前だったが・・・処置が早かったので一命を取り留めるのだった。

一度愛妻を亡くし・・・自殺まで考えた留治は・・・徹夜で妻を看病した。

枕元で眠りこんだ夫に目覚めた和子は感謝の涙を流す。

留治の勤務先の田中角栄風の社長・柿沼健三(角野卓造)に呼び出される留治。

「君には編集部から・・・去ってもらう」

「え」

「今後は論説委員として社説を書いてくれ・・・藤沢周平くん・・・そして、今度こそ・・・直木賞を」

「・・・ありがとうございます」

ちなみに・・・第68回直木賞を最後に大佛次郎が選考委員を去る。

そして・・・昭和四十八年上半期・・・第69回直木賞・・・。

「暗殺の年輪」で藤沢周平はついに直木賞作家となった。

授賞式の日・・・純喫茶ロダンで待ち合わせをする留治と和子。

お祝に・・・ハムサンド一人前を注文する二人。

「はんぶんこにしましょうね」

「でも・・・足りないんじゃないかな」

「足りなかったら・・・帰ってお茶漬けを食べましょう」

「ふつうが一番だな」

「ですね」

ウエイトレスは尋ねる。

「今日は・・・包丁は・・・よろしいのですか」

街には「危険なふたり/沢田研二」が流れていた。

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2016年7月 5日 (火)

少女のみる夢(齋藤飛鳥)紫外線と赤外線の間が可視光線です(星野みなみ)

谷間も終わりが近い。

夏が来るのだな。

今回は・・・2002年に古沢良太が受賞したテレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞の第15回受賞作のドラマ化作品である。

10年に一人の逸材が現れてから14年経過しているのでそろそろだよな。

なにがだよ。

今回は二人の少女をめぐるファンタジーなのだが・・・空前のアイドル乱立時代に相応しい内容になっている。

ほとんど病院内で話が納まるのでタレントのスケジュール的にも助かるよね。

まあ・・・内容の面白さは別として・・・作品化しやすさというのも・・・重要な要素だよな。

ハリウッドの超大作のようなものを応募されてもねえ。

ドラマ化困難な傑作はそうして埋もれて行くのか・・・。

で、『少女のみる夢』(テレビ朝日201607040140~)脚本・藤原忍、演出・宝来忠昭を見た。ファンタジーなのでなんでもありなのだが・・・一応・・・人間が見ることのできる世界には限界があるという話である。人間が見ることのできる電磁波が可視光線である。波長が短いと紫外線、長いと赤外線になり、人間にとっては不可視光線になってしまう。だから・・・あなたの知らない世界がそこにある・・・というわけだ。

十年前、七才の日高七海(齋藤飛鳥)は交通事故に遭い意識が戻らないまま病床にある。肉体だけが十七才になってしまった。

七海の母親である麻子(生田智子)は十年間、病院のベッドに眠る七海に読み聞かせを続けている。いつか目覚める日のために・・・教科書やファッション雑誌まで読み聞かせるのである。いい人だけどため息が出る。

担当医である作村周(福士誠治)は転がって来たボールをスルーした後で・・・ボールを追いかけた七海が車に轢かれるという流れになんとなく後ろめたさを感じているのだった。

しかし・・・誰も知らないのだが・・・七海には幽体離脱という超能力があり・・・自由に世界を旅しているのだった。

もちろん・・・その姿は一般人には不可視である。

寿命が近付いた人間は半分幽霊のようなものなので幽体離脱者が見えるという設定もあるが・・・ここはスルーしておく。

今さらだが・・・このレビューは妄想なので・・・作品そのものとは内容が一致しません。

そんなある日・・・高校生の黒崎沙良(星野みなみ)が病院に緊急搬送されてくる。

救命処置には成功するが・・・意識は回復しない。

そして・・・沙良には幽体離脱能力が発現するのだった。

こうして・・・七海と沙良は運命的な出会いをするのである。

「これが・・・運命・・・」と幽体離脱初心者の沙良・・・。

「まあ・・・夢を見ているようなものよ」

「そうなの」

「たとえば・・・イチゴが食べたい」

イチゴが現れた!

「え」

「やってみて・・・」

「カレーライスが食べたい」

カレーライスが現れた!

「ちゃんと食べることができるよ」

「おお・・・これは駅前のカレーハウスの味だ」

「夢を見ていることを自覚できる場合、明晰夢と言うの・・・自分で夢の内容をコントロールできたりするんだって」

「そんなこと・・・よく知ってるわね」

悪夢ちゃんというテレビドラマで見たわ」

「へえ・・・」

「つまり・・・すべてはイメージってこと・・・」

二人はファッション雑誌を見て・・・自由自在にコーディネイトを楽しむのだった。

「それから・・・世界はイメージではなくて・・・現実に存在するけれど・・・私たちは時空間を超越しているから・・・どこにでも行けるの」

「え・・・アーティストのライブ会場とかにも」

「最前列どころか・・・一緒にステージに立てるのです」

「すごい」

自由な世界を堪能する沙良。

「あのね・・・私、通っている高校に行ってみたいんだけど」

「行ってもいいけど・・・」

沙良は高校時代のクラスメートたちの話は聞けるが・・・会話に加われないことに気がつくのだった。

そして・・・沙良はそういう暮らしを十年間続けている七海の心に思いが及ぶ。

「あなたって・・・ずっと・・・」

「もう・・・慣れたよ」

二人の心は通い合うのだった。

二人は夢の世界で親友となったのだ。

しかし・・・沙良には覚醒の兆候が現れる。

「私・・・なんだか・・・目が覚めそう」

「よかったね・・・沙良ちゃん」

「でも・・・そうしたら・・・七海は・・・」

「・・・」

「あのさ・・・この間・・・七海が幽体離脱中に・・・七海の身体に入ってみたの」

「え」

「変な感じだけど・・・一体感はあった・・・身動きできないだけで」

「なんてことを」

「それで・・・あなたの記憶が少し流れ込んできて・・・私・・・あなたが作村先生のこと好きだってわかっちゃった」

「ひどいじゃない」

「だから・・・思いを伝えてみたらどうかしら」

沙良は七海を自分の身体へ押し込むのだった。

なんでもありだな・・・。

目を開く沙良/七海。

「黒崎さん・・・」

回診中の作村は沙良の覚醒に気がつく。

「先生・・・私・・・七海だよ」

「え」

「先生・・・いつも・・・ぬいぐるみありがとう・・・私・・・すごくうれし」

「なんだって」

しかし・・・沙良の意識は喪失する。

容体の急変である。

緊急手術が行われる手術室で・・・手をとりあって経過を見守る七海と沙良。

「大変なことになっちゃったじゃない」

「私が死んだら・・・また・・・七海・・・一人ぼっちになっちゃうね」

「そんなこと・・・あの・・・先生と話せて・・・うれしかった・・・ありがとう」

しかし・・・沙良は消えていた。

病院のベッドで目覚める沙良。

長い夢を見ていたような気がする。

しかし・・・意識不明で運び込まれた病院のことを・・・すべて知っている沙良だった。

看護師の金沢瑞穂(松本まりか)が作村医師に色目を使っていることさえ知っているのだ。

作村医師は・・・回診の度に・・・沙良にあの日のことを訊ねようするが言い淀む。

訊ねて怪訝な顔をされたらどうしよう・・・と思うからだ。

動けるようになった沙良は・・・七海の病室へと向う。

そこに待っていたのは・・・。

Ⓐ七海がすでに死んでいるという哀しい結末

Ⓑ七海が今も眠り続けているという哀しい結末

少女の見る夢はいつも哀しいものなのだ。

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2016年7月 4日 (月)

昨日、今日、そして明日・・・一歩ずつ運命の日に歩み寄っていくだけの人生だもの(長澤まさみ)

もはや、戦国ホラーサスペンスの様相を醸しだしてきた本編である。

関白左大臣・豊臣秀次の歴史的な運命を知るものは・・・高梨内記の娘・きりの一挙一動に手に汗握るわけである。

その人をあすなろ抱きしてはいけない!・・・なのである。

もちろん・・・生まれて初めて戦国大河ドラマを見る日本史に興味のない小学生なら・・・「どうして?」と思うのかもしれないが・・・「本当は恐ろしい関白の愛妾の結末」が刻一刻と近づいているのです。

歴史に興味のない脚本家ではない・・・今回の作者は・・・史実の間隙を突いて結構恐ろしいことをしてくるので恐怖感は高まるのですな。

堀田作兵衛の妹・梅は長女・すへを生んだだけで次女・於市を生まずに戦死してしまった。堀田作兵衛の妹が産んだのは信濃の地侍・石合重定の室となった阿菊とする説もあり・・・於市は高梨内記の娘が産み早世したという説もある。この辺りの史実不明の部分に容赦なく虚構をかぶせる筋立てなのである。

そして・・・関白には名もなき側室が多数いるのである。

真田信繁の側室として早世した於市や伊達家家臣の片倉重長の後室・阿梅を生むはずの高梨内記の娘は別にいて・・・きりが豊臣秀次の愛妾になってしまった歴史はありえるのだ。

そうなってしまったら・・・まあ・・・ヒロインなので大丈夫なんですけどね。

今回は真田信繁の正室(継室)である大谷吉継の娘・春が登場。法名の竹林院殿梅渓永春大姉の「春」からネーミングである。

さらに真田信繁の側室の一人とされる豊臣秀次の娘・隆清院も登場した模様だ。隆の字から「たか」とネーミングしたのだろう。

歴史的に春は二男三女、たかは一男一女を生む。

DNA鑑定のない時代・・・本当の父親が誰かはもちろん不明だが・・・愛の結晶たちは・・・信繫の血脈を繋いでいくのである。

もちろん・・・信繫には他にも側室がいて子も産ませている。

しかし・・・それらは皆・・・歴史のロマンとして遠ざかっていくものなのだ。

それらを見事にアレンジしてロマンスに仕立てる今年の大河ドラマ・・・今回はほぼ折り返し地点で・・・真田昌幸の母・恭雲院が亡くなり・・・真田信繁の運命の人である豊臣秀頼が誕生する。

天正十年(1582年)に始った物語は文禄二年(1593年)まで進んだ。

十一年の歳月が流れたのである。開始当初のきりの年齢が十代前半だとすると現在二十代前半です。

で、『真田丸・第26回』(NHK総合20160703PM8~)脚本・三谷幸喜、演出・渡辺哲也を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は豊臣秀吉の姉・智の長男で関白左大臣となった豊臣秀次の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。豊臣秀次が生まれたのは永禄十一年(1568年)とされていますので信長上洛の年・・・秀吉はすでに京の政務を任されるほどに出世し、二万人の軍勢を持たされていたとも言われます。その後も紆余曲折はあるものの出世し続けた叔父を持つ秀次は生まれた時から高貴な身分だったと言えます。そういう意味では成り上がりの叔父とは違い・・・坊やだったのかもしれません。しかも・・・叔父には跡取りが・・・二十年以上もいなかった。数多い秀吉の養子の中でも・・・秀次の特殊なポジションは明白でございますよねえ。生まれついての大名クラスの家柄は繊細な性格を育てたでしょうし・・・二十代にして・・・叔父に嫡男誕生で重責から解放された後に・・・嫡男死亡による関白就任という揺さぶりがかなり効いたと思われます。そして・・・秀頼の誕生。とっとと関白を返上すればよかったという意見もありますが・・・豊臣家の一員として秀吉亡き後の未来を見据えていたとも思われます。まあ・・・すべては・・・後世の人間の勝手な憶測でございますれば・・・言ってもせんないことでございます。その上で今回の秀次は・・・自分の身に危険が迫っていると知りながら・・・為す術のなかった可哀想な人としては最高の仕上がり具合と言えましょう。本当に今年の大河はいける!

Sanada026天正十九年(1591年)十月、肥前国名護屋城の築城開始。十二月、秀吉は関白を秀次に譲り、太閤を称する。天正二十年(1592年)一月、明国征伐のための朝鮮服属交渉が決裂。三月、秀吉は朝鮮出陣を後陽成天皇に上奏。四月、朝鮮半島に小西行長の率いる朝鮮征伐(日本)軍上陸。日本軍は連勝を重ね、朝鮮国王宣祖は漢城府(ソウル)を放棄し開城(ケソン)に撤退。五月、加藤清正ら日本軍は首都漢城を陥落させる。結果的に朝鮮国王を確保できなかったことは日本軍の躓きだった。加藤清正は開城も陥落させる。七月、小西軍は平壌で明国軍を撃破。北進を続ける加藤清正は朝鮮国の二人の王子を捕縛。朝鮮水軍は日本軍の補給路を断つゲリラ作戦を開始する。大政所が逝去し、秀吉の朝鮮渡海が中止となる。八月、加藤清正は朝鮮国境を越え女真族と交戦。小西行長は平壌に進駐。黒田官兵衛は漢城に防衛戦を張ることを主張。小西行長は明国軍と五十日間の休戦協定を締結し、日本と明国の外交交渉が開始される。十一月、秀吉は大坂城から名護屋城に戻る。十二月、改元され文禄元年となる。明国軍は国境に軍を集結。文禄二年(1593年)一月、明国軍は四万の大軍で平壌を急襲。小西軍一万は撤退を開始し、龍泉山城に在陣する黒田長政と合流。漢城の石田三成は篭城戦を主張するが全軍一致で迎撃戦と決まる。宇喜多秀家四万が進撃し、明軍を撃破。明軍は平壌に撤退。三月、明国は日本軍の食糧基地を火攻めする。四月、日本軍は釜山まで撤退、明軍は開城まで進出という講和交渉がまとまる。事実上の征伐中止だが・・・石田と小西は秀吉に勝利を報告する。明国朝廷は日本が降伏したと信じ、秀吉は明国が降伏したと信じる異常な齟齬が生じていた。八月、秀頼誕生。

「なんと・・・茶々が・・・また身籠ったと・・・」

北政所となった寧々は絶句した。

「一度ならず二度までも・・・」

北政所は思わず唇を噛みしめる・・・しかし、自分でも意外なことに・・・いつもの殺意が沸き起こらなかった。

何故か・・・笑いがこみあげてくるのだった。

それは・・・茶々のしぶとさに女として感応したものだったろう。

一方で・・・鶴松なき後の夫の憔悴と事の成り行きに北政所は危機感を持っていたのである。

夫の甥とは言え・・・関白となった秀次は北政所の血縁ではない。

夫が太閤として君臨中は天下人の妻としての地位が安泰である北政所であるが・・・もしもの場合は・・・秀次の一族が・・・天下人の一族となってしまうのである。信長の四男だった羽柴秀勝の跡を継いだ秀次の弟・豊臣秀勝こそが・・・北政所の心の支えであったが・・・それが戦地で病没するという悲運に見舞われていた。

「面白くない」と思っていた矢先の茶々の懐妊であった。

茶々が子を産めば・・・それが正室である北政所の利益に適うと・・・漸く本人が気付いたのである。

北政所は黒田官兵衛が支配する影の忍者を呼んだ。

北政所の護衛役として配されているのは仮面の忍びだった。

「赤影・・・」

「お呼びで・・・」

「秀次にはもう二人もおのこがいるというに・・・また一人生まれたそうじゃ・・・多過ぎるとは思わんか・・・」

「・・・」

赤影は戦慄した。

朝鮮半島に進出した加藤清正は圧倒的な戦闘力で日本の諸隊を置き去りにし・・・明国国境まで到達していた。

「朝鮮軍も・・・明軍も・・・他愛ないのう・・・」

清正の配下は猛将揃いである。

清正の嘆きに笑いで応えるのだった。

「しかし・・・この辺りは・・・辺境・・・用心した方が良い」

案内役として陣にある李虎鈴が呟く。

千利休亡き後・・・虎鈴は清正に惚れて身を任せたのである。

「この村の北には虎人の棲む隠れ里があるという・・・今夜は月夜・・・用心した方がいい」

「ふふふ・・・面白い・・・虎狩りと行くか」

李虎鈴は結局・・・清正を唆したことになった。

清正に従うのは・・・森本儀太夫、飯田覚兵衛、庄林隼人の三人の豪傑だけである。

月光を浴びて春の野を進む四人の前に・・・虎が現れた。

「なるほど・・・これは面白い」

清正は目を輝かせる。

「せっかくの虎を相手に武具を使うのは興ざめじゃな・・・」

突然、甲冑を脱ぎ捨て・・・全裸になる清正だった。

三人の豪傑は心得たとばかりに清正の装束を受け取る。

追尾してきた虎鈴は呆れるのだった。

虎は用心深く獲物を見る。

そして・・・清正の首めがけて跳躍する。

清正は一歩も引かず・・・虎の頭を両手でつかむのだった。

唸りをあげる虎。

「おおおおりゃああああ」

清正は叫んだ。

満月の下で・・・清正の身体に剛毛が出現したのが見えた。

「ひ」

虎鈴は思わず声をあげる。

目を疑う光景がそこにあった。

虎は巨大な灰色熊に抱え込まれている。

加藤虎之助の本性は・・・熊男だったのである。

一瞬で・・・熊男は虎を引き裂いた。

虎鈴は・・・下半身に痺れるものを感じる。

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2016年7月 3日 (日)

念力家族(吉田まどか)コスプレーヤー男子とバナナケーキを作る女子中学生(庵原涼香)

春と夏の間の梅雨の谷間です。

今年は長めなのだが・・・そろそろ谷間も終わりである。

なんとなく梅雨ドラマ的なものもあるわけだが・・・ドラマ制作者は四季の心を失ってしまったのか。

いや・・・そういう問題じゃあないだろう。

ここは・・・谷間でもないと書かないだろうコレである。

で、『念力家族SEASON 2・第1回~』(NHK Eテレ201604041845~)原案・笹公人、脚本・佐東みどり・木滝りま、演出・未詳(クレジットなし)。短歌集が原案という珍奇なドラマである。姓は念力、名は静(横山めぐみ)は嫁なので・・・念力家の血筋ではないわけだが・・・超能力者なのだ。念力一家は全員超能力者である。しかも・・・底が知れない超能力の使い手たちなのである。恐ろしいことだな。なにしろ・・・超能力者なので・・・みんな基本的にダメ人間である。なにしろ・・・朝礼で校長先生の話が長いと衛星軌道まで打ち上げてしまうという念力の持ち主なのである。繰り返すが・・・恐ろしいことだ。

なんでもありの超能力者ほど恐ろしいものはない。

明日・・・宇宙丸ごと心中でもされたらと思うと心穏やかではいられないわけである。

念力一家の構成は次のようになっている。

祖父の念力源太郎(田口主将)・・・農業を営んでいるらしい。時々屋敷を空中浮遊させる。

念力雄一郎(住田隆)・・・源太郎の息子で静の夫。名探偵に憧れ会社を辞職し、息子と一緒にコンビニエンス・ストアでアルバイトをしていたが、それも長続きしない。

念力豊・・・長男。画家志望だがコンビニのポップの描き過ぎで「描きたいもの」を見失いがち。コンビニ店長からは父親より有能とみなされている。

念力奈々(庵原涼香)・・・次女。悩み多い思春期の中学生。

念力玲子(吉田まどか)・・・豊の妹で奈々の姉。受験勉強に勤しむ高校生。家族思いの優しい性格である。

一家の大黒柱である念力静は保険の外交員としてダメな夫に代わって家計を支えているのだった。営業成績が会社でトップなのは・・・明らかに超能力によるマインドコントロールで顧客を確保していると妄想できる。

この素晴らしい超能力を持っているのに平凡を装っている一家のほのぼのとした日常を描くホームコメディーである・・・なんじゃそりゃああああレベル6である。

1話10分足らずのオムニバス形式で・・・毎回一首の「短歌」を主題としている。

第4話では「薄闇の春の廊下ですれ違うカラクリ人形 時間よとまれ」の「お題」で・・・奈々が超能力者として思春期にありがちな「他人の電子メールを闇雲に受信してしまう」症状に襲われ鬱屈するという展開である。

クラスメートの意地悪な女子トリオ(恩田乃愛・野村ゆあ・渡邉空美)は携帯電話を所有していない奈々に対して素晴らしいインターネットの世界で陰口三昧・・・。

しかし・・・奈々はそのすべてを直接脳内で受信してしまうのだ。

女子トリオが使いまくる「クマのスタンプ画像」が視野を占拠し・・・頭痛に悩む奈々だった。

母親や姉は「年頃の女子にはありがちなことで・・・一週間くらいで馴れる」と意味深なことをのたまうのだった。

女子トリオの陰湿な陰口攻撃に耐えかねた奈々。

「うざい・・・」と一言呟くと・・・校内は静寂に包まれる。

奈々を除くすべての時空間が制止したのである。

地球が静止し、銀河が静止し、宇宙が静止した日。

止まった時間の中を大小中学校の廊下を経由して階段の踊り場に至る奈々。

そこには奈々のお気に入りの「紙飛行機部」の二人の男子がいる。

校内でバナナを食べ続ける新谷和也(谷井優貴)とコスプレイヤーの村西光(森海哉)という二人の先輩を見て・・・奈々の気持ちは和むのだった。

たちまち流れ始める時間。

二人の男子中学生は人知れず・・・人類の危機を救ったのである。

「奈々ちゃん・・・放課後・・・部室に来る・・・」

「はい」

こんな日常生活です。

いつもパンの耳を持ち歩いて「食べる?」と人に奨める巨神兵先輩(根岸拓哉)など・・・男性陣はほぼ・・・ダメ人間である。

一体・・・誰を癒そうとしているのだ・・・。

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2016年7月 2日 (土)

正義の味方に許されるのは半殺しまで(NAOTO)ありがとうは別れの言葉(黒島結菜)

スーパーヒーローの立ち去った後には・・・不特定多数の屍が残されているものであるが・・・。

殺人が最大の「悪」と定められているこの国では・・・いろいろと生ぬるいのがお約束である。

それでいいとお茶の間が思うならそれでいいわけである。

親の仇討ちさえ認められていない・・・この国で・・・人々は生きていかなければならないのだ。

もちろん・・・法はあくまで法であり・・・人間は基本的にやろうと思えば何でもできます。

だから・・・一介のパフォーマーが極悪非道の闇の組織に素手で立ち向かい勝利するのは御愛嬌と言う他ないのです。

「キルビル」のこととかも思い出さないのが大人というものですよ。

反社会組織の暗殺部隊のこととか・・・ニュースでやっていても別世界の話だからな。

で、、『ナイトヒーロー NAOTO・第2回~最終回(全11話)』(テレビ東京201604240012~)脚本・森ハヤシ(他)、演出・権野元(他)を見た。ヒーロー好きの女子高校生・田之上栞(田牧そら→黒島結菜)に唆されて・・・「悪を制裁するソウルマン」というヒーローになったEXILE/三代目J Soul BrothersのNAOTO(NAOTO)である。主人公がカメオ出演という非常に珍しい企画であるが・・・実在のNAOTOが夜になると街で市民を半殺しにしている事実はないのであくまでフィクションである。

所属事務所には内緒で・・・「正義の鉄拳制裁」という悪事を続ける・・・完全に暴行傷害である・・・NAOTO・・・。しかし・・・その心に眠っていた闘争本能に火がつき・・・ものすごい格闘能力を開花させていくのであった・・・そんな馬鹿な・・・。

しかし・・・どこか呑気なヒーローの物語も・・・栞の無惨な過去が明らかになる後半・・・暗欝なダークーヒーローものへと変貌する。

11年前・・・権田薫子(余貴美子)は大手新聞社の記者だった。大企業の不正を暴くために会計士の田之上慎二(山中聡)に接近した権田は・・・証拠資料の提供を求める。しかし・・・約束の日・・・田之上家に強盗が侵入・・・栞は目の前で父親が殺されるという憂き目に遭う。

実行犯は・・・裏社会組織「トカゲ」の足利(村上淳)だったが・・・事件は闇に葬られる。

権田は新聞社にかかった圧力により・・・職務規定違反の罪で解雇されてしまう。

慎二の弟・田之上裕三(木下ほうか)に育てられた栞は復讐のために青春を捧げた少女だったのだ。

NAOTOは知らずに・・・裏社会組織「トカゲ」の構成員と対決していたのだった。

やがて・・・「トカゲ」はソウルマン殺害のメッセージを素晴らしいインターネットの世界に公開する。

一方・・・「実話バスターズ」の記者である浦野(少路勇介)は独断で「ソウルマンの正体がNAOTOである」という暴露記事を公開する。

権田は・・・ソウルマンを裏で操るのが栞だと知り・・・事情を明かしてNAOTOに警告を発する。

「あなたには・・・あの子を止めてもらいたい」

「俺はソウルマンなんかじゃない・・・」

田之上商店で栞を問いつめるNAOTO・・・。

「復讐のために俺を利用していたのか」

「ごめんなさい」

「俺は・・・制裁を繰り返して・・・悟ったんだ・・・暴力では何も解決しないことを」

「あなたには・・・殺された親はいないでしょう」

「・・・」

「私には私の道がある・・・」

交渉決裂である。

裕三はこっそりとNAOTOに頼む。

「明日・・・あの子は復讐に行きます・・・私はあなたを待っています」

「明日は・・・無理です・・・ライブなんで・・・」

栞は・・・ハッキングによって・・・「トカゲ」のアジトを特定していたのだった。

催眠スプレーや改造スタンガン・・・お粗末な武器で死地に向かう姪を何とか守ろうとする裕三だった。

NAOTOがステージで脚光を浴びている頃・・・。

「トカゲ」一味は田之上商店を急襲・・・。

裕三は睡眠薬で栞を昏睡させ・・・一人・・・「トカゲ」に立ち向かう。

兇悪な足利にせめて一矢報いようとする裕三だったが・・・用心棒の滝本(阿部力)に一刀両断されてしまうのだった。

目覚めた栞は・・・瀕死の裕三を発見する。

「おじさん・・・死なないで」

「もう・・・栞ちゃんを守れない・・・幸せになって・・・」

「いや・・・」

裕三は息を引き取った。

NAOTOの元に・・・栞から手紙が届く。

「利用して・・・すみませんでした・・・でも・・・ゴミクズみたいな私の人生の中で・・・あなたとヒーローごっこをしていた時・・・私は幸せでした」

NAOTOは一人の少女を救うために・・・すべてを捨て去る決心をするのだった。

「マネージャー・・・俺・・・辞めます」

「えええええええええええええええ」

田之上商店には裕三の遺言が残されていた。

「もしもの時には・・・栞をお願いします・・・アジトの地図を同封します」

「・・・」

トカゲのアジトに侵入した栞だったが・・・たちまち滝本に捕縛されてしまう。

「殺しますか」

「せっかく・・・美少女に育ったんだ・・・たっぷりと楽しんでからだ」

「殺せ」

「大丈夫・・・すぐに気持ち良くなるよ・・・そういう薬があるからね」

NAOTOの怒りは・・・嵐を呼ぶのだった。

突然発生するゲリラ豪雨。

「トカゲのアジト」にソウルマンが現れた!

プロの殺し屋たちを素手で撃破するNAOTO無双である・・・そんな馬鹿な。

ついには・・・剣の達人である滝本も素手で撃破・・・そんな馬鹿な。

そして・・・栞に挿入しかけた足利の前に立つソウルマン。

「その子を解放しろ」

「おいおい物騒なものを捨ててからものを言えよ」

滝本から奪った日本刀を捨てるソウルマン。

「いいか・・・殺す時に殺しておかないと殺されるという真理を教えてやろう」

足利は拳銃を発砲する。

被弾して倒れるソウルマン。

「ヒーローは制約多くて御愁傷様」

しかし・・・裕三の形見の防弾チョッキを装着していたソウルマンだった。

足利の拳銃を蹴り飛ばすソウルマン。

「安いドラマでは頭は撃たないのがお約束だものな」

最高の殺し屋もソウルマンの敵ではないのだった。そんな馬・・・。

そこへ・・・権田の古い友人である警視庁中央署の桜井署長(平田満)が現れた。

「ここからは・・・警察の仕事だ・・・君も・・・自分のステージに戻りたまえ」

こうして・・・ソウルマンの物語は幕を閉じる。

「私・・・とりあえずニューヨークに行くことにした」

栞はNAOTOに告げる。

「とりあえず・・・って」

「そういうものでしょう・・・あなただって若い頃・・・とりあえずニューヨークに」

「俺は・・・ロスだ」

その頃・・・留置所では・・・足利の自殺死体が発見されていた。

一仕事を終えた桜井署長はまくったシャツを下ろし・・・トカゲの刺青を隠すのだった。

闇に葬られてナンボの・・・闇の組織なのである。

まあ・・・とにかく・・・キッドの記憶に残っているのは栞の可憐な姿だけなのだった。

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2016年7月 1日 (金)

尻軽女と鮫男(松岡茉優)よく似たマンガのタイトルがある(桐谷健太)

「鮫肌男と桃尻女/望月峯太郎」か・・・。

だから・・・なんなんだ。

いや・・・ただ・・・なんとなく思い出して・・・。

谷間の梅雨ドラマだからな・・・。

撮影協力のしながわ水族館も「古い」とか「地味」とか「デートに向かない」とかひどい言われようだが・・・家族で楽しむにはちょうどいい素敵な水族館だと思う。

イルカもアザラシも楽しいぞ。

あくまで・・・ドラマですので!

で、『水族館ガール・第2回』(NHK総合20160624PM10~):原作・木宮条太郎、脚本・荒井修子、演出・谷口正晃を見た。本日は第三回の放送予定日だが・・・参議院議員通常選挙政見放送により休止である。何とも言えない谷間感だよなあ・・・楽しみにしていたお茶の間もガッカリじゃないか。まあ・・・二日連続のレビューの予定が狂っただけです。全7回の予定なので八月第一週まで続く。後半、二本は時間延長である。つまり・・・本当は全八回だったんじゃないかと邪推できる。どちらにしろ・・・金曜日の夏ドラマが始るとレビューの困難が予想されるわけである。

この脚本家は変態だと・・・キッドは勝手に妄想しているわけだが・・・たとえば・・・今回の「調餌千本ノック」は明らかに「ミミズ千匹」を念頭に置いているわけである。・・・お前が変態なんだろうがっ。

今さらだが・・・このブログにおいて「変態」は褒め言葉です。

ニュアンス的には「のだめ」の変態の森ということである。

変態でない人間なんて無味乾燥ですもの。

「モップガール」が素晴らしかったのは北川景子が・・・変態から発するキラキラしたものを見事にキャッチしていたからだ。

そういう意味では松岡茉優は健闘している。

もう一つ、「モップガール」ではアシスト役の谷原章介がダンディーだった点も見逃せない。

桐谷健太もデレれば悪くないが・・・ここまでのツンはもう少し演技プランが欲しかった。

可愛い演技もできるわけだしな。

真面目な飼育員は・・・インテリなのであってツッパリではないのだから。

でも・・・脚本家がヒロインが罵られるのを求めるタイプだから・・・仕方がないのかもしれない。

大手商社「四つ星商事」のOL・嶋由香(松岡茉優)は上司の森下(木下ほうか)と折り合いが悪く、傘下の「はまかぜ水族館」に出向という形で左遷されてしまう。

そもそも・・・水族館には学術的な施設でもあり娯楽施設でもあるという独特な立ち位置がある。

四つ星商事とはまかぜ水族館の本社と子会社という関係は少し・・・わかりにくい感じがする。

しかし・・・総合商社がテーマパークを買ってしまったということなのだろう。

そうなると・・・「利益」が最優先になり・・・「不良債権」と判断されれば解体もやむなしの構図になる。

「水族館について素人」の本社に対する水族館職員の反感は強いわけである。

そもそOLだった嶋由香が出向して飼育係見習いになるというのもおかしな話だが・・・そこはスルーしなければならない。

商社時代はダメ社員だった由香は・・・本社に見捨てられ・・・一念発起するわけだ。

もちろん・・・水族館と相性がいいという考え方もある。

水を得た魚のように・・・由香は・・・海獣課のチーフである梶良平(桐谷健太)の特別訓練に耐えるのだった。

ふしだらなスキャンダルで本社を追われた尻軽女と・・・水族の命を守ることしか考えない鮫男の物語なのである。

「俺はお前を認めない」

梶良平は由香に短時間で餌の調理を終えることを命令する。

動物の飼育どころか・・・家事もまともにやっていない由香には困難な課題だった。

見かねたペンギン担当の飼育員・吉崎一子(西田尚美)は助言する。

「調餌のことは・・・今田修太に聞くといいと思うよ・・・餌は・・・クラゲのフィギュアで」

魚類課のチーフである今田修太(澤部佑)はクラゲをこよなく愛する男だった。

今は猛毒を持つ「アカクラゲのエミリア」の体調不良に悩んでいる。

クラゲのフィギュアで買収された今田は由香に秘技「ワンタンメン」を伝授する。

なんのこっちゃ・・・な話だが・・・ゴルフの「チャーシューメン」の話なのだろう。

とにかく・・・ワンタンメンのリズムで・・・朝の全調餌を完了する由香である。

こうして・・・由香は水族館の花形「イルカショー」に訓練員として参加することが許されたのである。

今回はいくつかの仕事上のトラブルが設定されている。

ベテランが辞めたばかりの水族館では・・・梶と今田の二人のチーフが昇格したてである。

交渉力にかける二人は・・・下請けの設備会社が要求する水槽の清掃スケジュールを上手く調整できない。

「今・・・水を抜かれると・・・アカクラゲが死にます」と今田。

「クラゲなんか・・・死んだらまた捕獲すればいいだろう」と設備会社の猪田太一(六角精児)は取り合わない。

水族館総務課長の倉野(石丸幹二)は「もう少し上手く交渉しろ」と梶を諭すが・・・。

「そっちこそ・・・本社と上手くやってくださいよ」と食ってかかる梶なのである。

立ち位置の不鮮明な・・・本社の森下と矢神拓也(西村元貴)は子会社に経営合理化を求めているらしい。

一つは「残業手当」を抑制するために「勤務表」の提出を求める。

一つは「目玉のサービスとしてイルカと来館者のふれあい企画の実施」である。

倉野は「動物の命を守るための残業の正当性」を主張し・・・勤務表の提出を拒否しているのだった。

本社は・・・サービス残業を求めるブラック企業なのか。

水族館長・内海良太郎(伊東四朗)は「ふれあい企画」を推進するために・・・由香に「イルカショーの司会」を命ずるのだった。

「そんな・・・私なんかが・・・」

「いや・・・イルカショーの司会は・・・新人訓練員の仕事なのです」

イルカに芸をさせるよりも・・・ショーアップする方が簡単ということである。

徹夜で・・・台本を暗記する由香だった。

本社から・・・親友の小柴久美子(足立梨花)も同僚の秋津亜里沙(秋月三佳)たちを連れて激励にやってくる。

イルカショーの初日・・・なんとか司会を務める由香だったが・・・ショーの途中でイルカたちに異変が起きる。

思わず・・・身を乗り出した由香はイルカプールに転落してしまうのだった。

「なにやってんだ・・・」

「でも・・・C1とF3が喧嘩を始めたので」

「あれは・・・喧嘩じゃない・・・交尾だ」

「交尾!」

梶によって救助された由香だったが・・・入浴中に・・・調教用の笛を紛失していることに気が付きあわてる。

「笛がありません」

「馬鹿・・・イルカがのみ込んだら・・・死ぬかもしれないんだぞ」

「そんな・・・」

ショーを中止して笛を捜索する飼育員たち。

専属獣医師の磯川(内田朝陽)はイルカを診察するが・・・飲み込んだものを吐き出させることは困難なのである。

「お前は・・・飼育員失格だ・・・」

由香は梶に烙印を押されるのだった。

元カレである矢神は由香を呼び出し・・・「勤務表」の持ち出しを依頼する。

謹慎状態の由香は思わず矢神の胸の中で涙する。

尻軽女のふしだらな情事を梶が見ていた!

この場面いるのか・・・。

変態だから必要なのだろう・・・。

早朝の水族館・・・不審な行動をとる由香を尾行する梶・・・。

由香が通用口で矢神に渡した封筒の中身を「勤務表」と邪推した梶は・・・二人の間に割り込む。

しかし・・・封筒の中は・・・「はまかぜ水族館の職員の人柄レポート」だった。

「なんじゃ・・・これは」と口を揃える男たち。

「本社の人間に・・・水族館で働く人たちの素晴らしさを知ってもらおうと・・・」

「俺が欲しいのは勤務表だ」と矢神。

「俺が水族館で一番意地悪って・・・どういうことだよ」と梶。

「本当に大切なのは管理することではなくて・・・ともに未来を考えることです」

「君だって・・・本社の人間だろう」

「私は水族館の人間です」

「・・・」

所在不明の笛は梶の飼育員用ジャケットのポケットで見つかった。

由香が間違えて着用し・・・笛をポケットに入れていたのだった。

「アホか・・・」

由香の書いたメモは・・・設備会社の人間にも触れていた。

「とにかく・・・水は予定通り抜くぞ」

「猪田さん・・・釣りが趣味だそうですね」

「それがどうした・・・」

「今度・・・飼育生物の捕獲船・・・つまり釣り船を御一緒しませんか・・・是非、ご指導ください」

「よし・・・水を抜くのは二週間待ってやる」

「ありがとうございました」

魚心あれば水心である。

こうして・・・梶はデレ・・・由香は水族館の一員として認められる。

由香はついにイルカショーでC1に芸をさせることを許されたのだった。

「彼女とC1は相性がいいようだ」と謎の老人(木場勝己)に語りかける内海館長。

故郷から両親の晴彦(山西惇)と香子(戸田恵子)が上京し・・・あわてふためく由香だった。

そして・・・突然、本社は・・・水族館に対して職員一名の解雇を求めるのだった。

どんだけ唐突で・・・理不尽なんだよ・・・。

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