性善説を信じるものは生きながら地獄へ招かれる場合があるよ(山田孝之)
恐ろしい犯罪に日常的に接する警察官は・・・性善説を信じない。
彼らの座右の銘は「人を見たら泥棒と思え」ということである。
つまり・・・警察官を見ても泥棒かもしれないと疑う心が必要なのである。
しかし・・・そんな風に生きていると・・・心は荒むわけである
結局、人間は・・・誰かを信じたいものなのである。
誰かを信じるのは楽だからだ。
けれど・・・それは一種の「怠惰」であり・・・「甘え」であると考えることもできる。
凶悪犯罪の犠牲者は・・・憐れである。
だが・・・犯罪者を憎むことが許されない社会では・・・それはひとつの運命に過ぎないとも言える。
せめて・・・自分だけは体を鍛え・・・いざという時に備えようと考えたとしても・・・加齢により・・・いつかは自分の身を守れない時はやってくる。
その時・・・「彼ら」がやってきたとしたら・・・もう祈るしかないのだな。
大切なのは・・・油断しないことだ。
なぜなら・・・「彼ら」はいつだって・・・あなたの「大切なもの」を奪おうとするのだから。
で、『闇金ウシジマくん Season3・第2回』(TBSテレビ201607270128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。さわやかな風に吹かれイケメン三兄弟と恋のバカンスを楽しんだり、感情を持たない心で兇悪な犯罪者と対峙したり、とにかく家を売って売って売りまくったりする・・・お茶の間的日常とはかけはなれた暗闇が現実の社会には広がっている。まともな社会を支える底辺の世界・・・そこでは人はたやすく闇に飲まれてしまうのだ。なぜ・・・このドラマはこんなにも魅力的なのだろうか。それは・・・そんな闇をありのままに描いているからだろう。これはあなたの隣人・・・いや、あなたの家族・・・いや、あなた自身にふりかかるかもしれない危機の物語なのである。
★ママチャリに幼児を二人乗せたママさん売春婦のテルミ(卯水咲流)は・・・「カウカウファイナンス」の柄崎(やべきょうすけ)と高田(崎本大海)に囲まれてしまう。
「期日なので利息を払ってもらわないと・・・」
「こっちだって仕事をしたいけど・・・託児所が一杯なのよ・・・行政の問題よ」
そこへ・・・テルミの情夫であるチンピラのマサくん(濱崎一輝)が現れた!
「お前ら・・・何してんだ」
「マサくん・・・遅いよ」
「てめえら・・・どこがケツ持ち(背後にある反社会的組織)だ」
反社会勢力同志の力関係で利息の返済を相殺しようと威嚇するマサくんである。
「お前こそ・・・誰だ・・・懇親会で見かけたことねえぞ・・・」
アイスキャンデーを食べながらウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)が介入する。
ウシジマくんの恫喝に屈するマサくんだった。
気配を読んだテルミは・・・矛先を治める。
「もういいよ・・・利息は必ず払うから・・・」
「テルミがいいっていうなら・・・」
マサくんも引き際は心得ているのである。
チンピラと情婦が去った後で柄崎がウシジマくんに尋ねる。
「社長・・・懇親会ってなんですか」
「ヤクザだってそういうものを開くだろうと思ってハッタリかましただけだよ・・・人間には想像力があるだろう・・・向こうが勝手に何かヤバイものを想像したのさ」
「結局・・・女は強い方に靡きますからねえ」
この世界は・・・想像力と想像力の駆け引きで成立しているのだ。
騙される方が馬鹿なのである。
★★「彼とは別れようと思うんです」
「そうねえ・・・彼はあまり・・・いい運気を持っていないから」
ファッション雑誌の編集者・上原まゆみ(光宗薫)は・・・占い師の勅使川原先生(三田真央)と喫茶店にいた。
そもそも・・・占い師と親密になっていることが・・・すでに危険な兆候だとはまゆみは思わない。
コールド・リーディング(詐欺師の話術)により・・・心理誘導されたまゆみは勅使川原先生が霊能力に優れていて・・・自分の良き理解者であり・・・素晴らしいアドバイザーだと信じているらしい。
勅使川原先生に対する信頼感から・・・会うだけでテンションがあがり・・・「パワーのある石」を購入するまでに洗脳段階が進んでいる状況である。
しかし・・・それはまだ序の口なのである。
「何か・・・買ったの・・・」
「ジョギングシューズです・・・近所に大きな公園があって・・・休日はジョギングしているんです・・・走った後のビールは最高だし・・・男と違って・・・走った距離は裏切りませんから」
まゆみは心を許した勅使川原先生にプライベートを明かしていく。
この場合・・・真の詐欺師はまだ控室にいる。
まゆみの明かす情報をホット・リーディングしているのである。
手さぐりのコールド・リーディングと違い・・・ホット・リーディングで確実な情報を入手した真の詐欺師は・・・騙す相手の心を鷲掴みにするのだ。
★★★とある小学校・・・。
教師の杉本(中島弘輝)は「道具のれきし」について児童たちに教えていた。
だが・・・児童たちは杉本先生の話など聞いてはいない。
学級は完全に崩壊している。
チャイムで騒がしい児童たちから解放された杉本先生に・・・女教師(高橋美津子)が駆けよる。
「杉本先生・・・翔くんのお母さんが・・・」
「先生・・・昨日・・・翔くんのチョコレートバーとりあげたでしょう・・・翔くん、お腹がすいてたのに可哀想じゃないですか・・・チョコレートバーの代金、弁償してくださいね」
モンスターペアレントの攻撃に・・・ストレスがたまりまくる杉本先生である。
そこに・・・ネットカフェで暮らしている家出少女・美奈(佐々木心音)から着信がある。
(ママ・・・3POKだって・・・週末どう・・・7万忘れないで)
杉本先生の顔に歓喜が浮かぶ。
杉本先生は・・・親子丼プレイをこよなく愛するスキッパー杉本なのである。
★★★★NPO団体「貧困ネットワーク」の主催者・嘉瀬正義(福田優)のバックアップで生活保護の受給に成功した小瀬(本多力)は怠惰な生活を送っていた。
社会復帰の生活指導のためにケースワーカーが訪問する。
「何か・・・お仕事みつかりましたか」
「働きたいと思っているのですが・・・仕事のことを考えると気分が悪くなって・・・今日のところは勘弁してください」
ケースワーカーが去ると・・・布団を抜けだした小瀬は食糧の補給のためにコンビニに向う。
「君・・・この前・・・生活保護を獲得したでしょう」
声をかけてきたのは生活保護仲間だった。
「今・・・ニート飲み会やってるんだ・・・君も来ない」
「今・・・忙しいから」
「暇でしょ・・・むしろ・・・退屈してるでしょう・・・」
「・・・」
「僕はめしあ・・・本名は飯野」
小瀬はめしあこと飯野(野澤剣人)のアパートに導かれる。
そこにはトーキー(水間ロン)もいた。
「今・・・やりたい職種につけるのは・・・コネのあるやつか・・・本当に才能ある奴だけさ・・・やりたくない仕事をするくらいなら・・・寝ていた方がマシだ」
「・・・」
「でも・・・それでいいのか」
「・・・」
「だから・・・ボクたちがやりたい仕事ができるビジネスを起業しようと思うんだ・・・今、仲間を集めているんだよ」
「やりたい仕事って・・・」
「まあ・・・今日は飲もうよ・・・ボクたちには時間だけはたっぷりあるんだから・・・」
その時・・・飯野のベッドから下着姿の・・・希々空(ののあ)が現れる。
「え」
「今何時・・・いつ眠ったのか全然覚えてない・・・」
「ええっ」
そんな希々空(小瀬田麻由)の胸を揉み始めるめしあとトーキー・・・。
「えええ」
生活保護受給者がけしからん・・・肉体を持っていることもあることを知り・・・動揺する小瀬だった。
「けしからん・・・」
飯野の風呂場にかけこんだ小瀬は・・・自慰を始める。
網膜に焼きついた幻影の希々空が小瀬を詰る。
「粗末な・・・チ」
「粗チ・・・も個性だよ」
「粗チ~ン」
「あっ」
他人の家の風呂場で射精する小瀬だった。
「俺って・・・最低だ」
底辺へ・・・底辺へ・・・今、あなたの心はあなたの身体を離れ・・・底辺の世界に沈み込んでいくのです・・・。
★★★★★まゆみは公園でジョギングをしている。
そこへ・・・雨の日に傘をくれた神堂大道(中村倫也)が現れる。
「まゆみさん・・・こんにちは・・・」
突然、名前を呼ばれて虚を突かれるまゆみ。
男が誰かを思い出すが・・・自分が名乗ったのかどうか・・・記憶は曖昧だ。
充分に怪しい神堂だが・・・白昼であり・・・まゆみは気を許す。
「かみどう・・・さん?」
「しんどうです」
「あら・・・ごめんなさい」
二人で汗を流し・・・ピクニック気分になるまゆみ・・・。
「どうぞ・・・」
神堂はまゆみに冷えたビールを渡す。
「ジョギングの後のビールは最高です」
ビールを飲み干す神堂に強く共感するまゆみ・・・。
「走った距離は裏切らないですしね」
お茶の間は・・・神堂が・・・真の洗脳者であることを悟るが・・・まゆみは完全に心を掌握されるのである。
そこに・・・まゆみの恋人であるハシくんこと橋本(ジェントル)から着信がある。
「ねえ・・・今日・・・まゆみの部屋に友達連れて行っていい」
「なんでよ」
「屋上でキャンプしたんだけど・・・暑くて」
ハシくんの子供っぽいところが好きだった時期もあった・・・。
しかし・・・今はそれがうざくなってしまったまゆみだった・・・。
★★★★★★ラブホテルの一室。
スキッパーは貴重品を防水袋に詰めた。
「スキッパーさん・・・ママよ」
美奈は母親の恵美子(倖田李梨)を紹介する。
「さっさとやって終わらせましょう」と脱衣する恵美子。
「お・・・いいねえ・・・じゃあ・・・ママと二人でシャワーあびちゃおう」
美奈は鬱屈しながらスマホに逃避する。
バスルームから母親の嬌声があがる。
「あら・・・もう・・・立派になってるじゃないの」
「そりゃ・・・やる気ありまくりだから」
母親が男のものをしごく影がバスルームのガラスの向こうで揺れる。
美奈は息が苦しくなってくるのだった・・・。
★★★★★★★「カウカウファイナンス」にテルミが利息の返済にやってくる。
「商売の方の景気はどうだ・・・」とウシジマくん。
「最近厳しいのよ・・・だから利息少しまけてよ」
「じゃ・・・また・・・来月」
テルミが去ると柄崎がつぶやく。
「テルミの奴・・・観念したみたいですね」
「女好きの客を紹介して・・・営業かけさせますか」と高田。
「きっちり仕事してもらわないとな」とウシジマくん。
受付嬢・エリカ(久松郁実)は男たちの話を聞き流す。
★★★★★★★★女好きの川崎(ムートン伊藤)は上司と酒席にいた・・・。
(くそ・・・こんなクソ親父と飲んでる場合じゃねえっつうの・・・女とやりたいっっつうの)
★★★★★★★★★娘と母親とやりまくったスキッパーはすっきりしていた。
「ほら・・・七万・・・今度亭主も連れてこいよ」
母親はM字開脚の姿勢から金に跳び付く。
「俺が買った娘と母親の亭主の顔が見てみてえ・・・てか・・・亭主いんの?」
つかのま・・・ストレスを忘れ・・・無意味に饒舌になるスキッパー。
母親を貫いた男根で貫かれた娘は・・・虚脱している。
夜の公園で・・・金を分配する母と娘。
「じゃ・・・ママ、三万ね」
「え・・・三万五千じゃないの」
「私が四万もらっとく・・・私の客だもの」
そこへ・・・ウシジマくんのライバル企業・闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)と腹心・村井(マキタスポーツ)が現れた。
「回収させてもらうぜ」
「くそ・・・久しぶりにパチンコ打とうと思ったのに・・・」
犀原は茜に声をかける。
「あんた・・・この女の娘?」
「そうだけど」
「じゃ・・・携帯ナンバー登録させてもらうわ」
「なんでよ」
村井は・・・美奈のスマホを強奪する。
「はい・・・終了」
「何すんのよ」
「あんたは・・・こいつの連帯保証人になったんだよ」
「・・・」
「困ったら私に言いな・・・あんたにも金を貸してやるぜ」
闇金女は惨めな母娘を残し夜の闇に消えた。
★★★★★★★★★★まゆみはハシくんと今後のことを話しあうつもりで呼び出した。
しかし・・・まゆみは会社の飲み会で痛飲し・・・二日酔いで気分が悪い・・・。
「もう・・・帰ろうか」
だが・・・ハシくんはもう少しスケートボードで遊びたい年頃だったのだ。
「一人で帰れよ・・・」
そこに妹のみゆき(今野鮎莉)から着信がある。
「カズヤと菅原さんがもめちゃって大変なのよ・・・助けて」
みゆきはかってガールズ・バーでアルバイトしていた。
その時の常連客が菅原さん(礒部泰宏)である。
カズヤ(板橋駿谷)はみゆきの夫だが・・・ストーカーのような菅原さんに暴力を振るって逆に訴えられそうになっていたのだった。
「助けてもらいたいのは・・・こっちだよ」
まゆみは吐き気を感じて路上に蹲る。
その背中をそっと擦る神堂大道・・・。
「神堂さん・・・通りかかったら・・・あなたの姿が見えたので」
「お前誰だよ・・・」とハシくんが割り込む。
「まゆみさんの具合が悪そうだったので」
「あ、そう・・・もう行っていいよ」
「私が具合が悪いって行ったのに・・・遊んでたくせに・・・」
「・・・」
「それに・・・実家に行かなくちゃ・・・妹の婚約者がストーカーともめてるの」
「・・・」
「電車で行ったら一時間半かかるから・・・タクシー飛ばして行かないと」
「私の車でお送りしましょうか」
「じゃ・・・俺も行く」
「残念ながら・・・ツーシーターなので」
「じゃ・・・タクシーで」
「お金あるの・・・」
「まゆみちゃん・・・持ってるでしょう」
まゆみはハシくんを置き去りにして神堂の車で実家に向う。
トラブルはまだ続いていた。
神堂は・・・菅原さんに囁く。
「私は・・・みゆきの弱みを握っている・・・後で好きなだけ抱かせますから・・・ここは形式的に誤ってください」
「え・・・やれるの」
「さあ・・・二度とストーカーはやらないと誓ってください・・・形式的にね」
「わかった・・・もうみゆきさんにストーカー行為はしません・・・これでいいか」
「はい・・・証拠をいただきました」
神堂は・・・録音された菅原さんの「謝罪」を再生する。
「もうみゆきさんにストーカー行為はしません」
「今度・・・みゆきさんにしつこくしたら・・・これを警察に提出しますよ」
「え」
みゆきとカズヤの危機を救った・・・神堂は・・・母親の上原広子(武藤令子)からも歓迎される。
祝杯をあげる一同・・・。
そこへ・・・まゆみの父親の上原重則(名倉右喬)が帰宅する。
上原は・・・「悪魔」が目の前にいるとは知らず・・・「疲れた」と言って奥の間に消える。
酒を飲ませてしまったため・・・神堂と駅へ向かうまゆみ。
突然・・・神堂は・・・まゆみの唇を奪うのだった。
「私と・・・結婚を前提に交際していただけませんか・・・」
激しく揺れるまゆみの心・・・。
「勅使川原先生・・・私・・・今、気になる男性がいるんですけど・・・」
「新しい交際をスタートするには・・・今は最適の星まわりよ・・・」
まゆみは「地獄」へと足を踏み出した。
★★★★★★★★★★★「カウカウファイナンス」で客(岩井ジョニ男)が利息の支払いを渋る。
「お金がなくて・・・もう・・・三日も何も食べていません・・・飲み残しの氷いただいてよろしいですか」
「好きなだけ食え」
氷を貪る客は頭がキーンとなるのだった。
柄崎は客のサイフから金を抜き取る。
「何が飯を買う金もないだ・・・あるじゃねえか」
頭を抱えて呻く客・・・。
ウシジマくんは笑った。
夜空には無数の黒い星が輝いているが人の目には映らない。
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