少女のみる夢(齋藤飛鳥)紫外線と赤外線の間が可視光線です(星野みなみ)
谷間も終わりが近い。
夏が来るのだな。
今回は・・・2002年に古沢良太が受賞したテレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞の第15回受賞作のドラマ化作品である。
10年に一人の逸材が現れてから14年経過しているのでそろそろだよな。
なにがだよ。
今回は二人の少女をめぐるファンタジーなのだが・・・空前のアイドル乱立時代に相応しい内容になっている。
ほとんど病院内で話が納まるのでタレントのスケジュール的にも助かるよね。
まあ・・・内容の面白さは別として・・・作品化しやすさというのも・・・重要な要素だよな。
ハリウッドの超大作のようなものを応募されてもねえ。
ドラマ化困難な傑作はそうして埋もれて行くのか・・・。
で、『少女のみる夢』(テレビ朝日201607040140~)脚本・藤原忍、演出・宝来忠昭を見た。ファンタジーなのでなんでもありなのだが・・・一応・・・人間が見ることのできる世界には限界があるという話である。人間が見ることのできる電磁波が可視光線である。波長が短いと紫外線、長いと赤外線になり、人間にとっては不可視光線になってしまう。だから・・・あなたの知らない世界がそこにある・・・というわけだ。
十年前、七才の日高七海(齋藤飛鳥)は交通事故に遭い意識が戻らないまま病床にある。肉体だけが十七才になってしまった。
七海の母親である麻子(生田智子)は十年間、病院のベッドに眠る七海に読み聞かせを続けている。いつか目覚める日のために・・・教科書やファッション雑誌まで読み聞かせるのである。いい人だけどため息が出る。
担当医である作村周(福士誠治)は転がって来たボールをスルーした後で・・・ボールを追いかけた七海が車に轢かれるという流れになんとなく後ろめたさを感じているのだった。
しかし・・・誰も知らないのだが・・・七海には幽体離脱という超能力があり・・・自由に世界を旅しているのだった。
もちろん・・・その姿は一般人には不可視である。
寿命が近付いた人間は半分幽霊のようなものなので幽体離脱者が見えるという設定もあるが・・・ここはスルーしておく。
今さらだが・・・このレビューは妄想なので・・・作品そのものとは内容が一致しません。
そんなある日・・・高校生の黒崎沙良(星野みなみ)が病院に緊急搬送されてくる。
救命処置には成功するが・・・意識は回復しない。
そして・・・沙良には幽体離脱能力が発現するのだった。
こうして・・・七海と沙良は運命的な出会いをするのである。
「これが・・・運命・・・」と幽体離脱初心者の沙良・・・。
「まあ・・・夢を見ているようなものよ」
「そうなの」
「たとえば・・・イチゴが食べたい」
イチゴが現れた!
「え」
「やってみて・・・」
「カレーライスが食べたい」
カレーライスが現れた!
「ちゃんと食べることができるよ」
「おお・・・これは駅前のカレーハウスの味だ」
「夢を見ていることを自覚できる場合、明晰夢と言うの・・・自分で夢の内容をコントロールできたりするんだって」
「そんなこと・・・よく知ってるわね」
「悪夢ちゃんというテレビドラマで見たわ」
「へえ・・・」
「つまり・・・すべてはイメージってこと・・・」
二人はファッション雑誌を見て・・・自由自在にコーディネイトを楽しむのだった。
「それから・・・世界はイメージではなくて・・・現実に存在するけれど・・・私たちは時空間を超越しているから・・・どこにでも行けるの」
「え・・・アーティストのライブ会場とかにも」
「最前列どころか・・・一緒にステージに立てるのです」
「すごい」
自由な世界を堪能する沙良。
「あのね・・・私、通っている高校に行ってみたいんだけど」
「行ってもいいけど・・・」
沙良は高校時代のクラスメートたちの話は聞けるが・・・会話に加われないことに気がつくのだった。
そして・・・沙良はそういう暮らしを十年間続けている七海の心に思いが及ぶ。
「あなたって・・・ずっと・・・」
「もう・・・慣れたよ」
二人の心は通い合うのだった。
二人は夢の世界で親友となったのだ。
しかし・・・沙良には覚醒の兆候が現れる。
「私・・・なんだか・・・目が覚めそう」
「よかったね・・・沙良ちゃん」
「でも・・・そうしたら・・・七海は・・・」
「・・・」
「あのさ・・・この間・・・七海が幽体離脱中に・・・七海の身体に入ってみたの」
「え」
「変な感じだけど・・・一体感はあった・・・身動きできないだけで」
「なんてことを」
「それで・・・あなたの記憶が少し流れ込んできて・・・私・・・あなたが作村先生のこと好きだってわかっちゃった」
「ひどいじゃない」
「だから・・・思いを伝えてみたらどうかしら」
沙良は七海を自分の身体へ押し込むのだった。
なんでもありだな・・・。
目を開く沙良/七海。
「黒崎さん・・・」
回診中の作村は沙良の覚醒に気がつく。
「先生・・・私・・・七海だよ」
「え」
「先生・・・いつも・・・ぬいぐるみありがとう・・・私・・・すごくうれし」
「なんだって」
しかし・・・沙良の意識は喪失する。
容体の急変である。
緊急手術が行われる手術室で・・・手をとりあって経過を見守る七海と沙良。
「大変なことになっちゃったじゃない」
「私が死んだら・・・また・・・七海・・・一人ぼっちになっちゃうね」
「そんなこと・・・あの・・・先生と話せて・・・うれしかった・・・ありがとう」
しかし・・・沙良は消えていた。
病院のベッドで目覚める沙良。
長い夢を見ていたような気がする。
しかし・・・意識不明で運び込まれた病院のことを・・・すべて知っている沙良だった。
看護師の金沢瑞穂(松本まりか)が作村医師に色目を使っていることさえ知っているのだ。
作村医師は・・・回診の度に・・・沙良にあの日のことを訊ねようするが言い淀む。
訊ねて怪訝な顔をされたらどうしよう・・・と思うからだ。
動けるようになった沙良は・・・七海の病室へと向う。
そこに待っていたのは・・・。
Ⓐ七海がすでに死んでいるという哀しい結末
Ⓑ七海が今も眠り続けているという哀しい結末
少女の見る夢はいつも哀しいものなのだ。
関連するキッドのブログ→お迎えデス。
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