家売るオンナ(北川景子)彼女に売れない家はないらしい(仲村トオル)
ビジネスとは面白いものである。
働いて儲けるのは素晴らしいことだ。
ビジネスとは恐ろしいものである。
あらゆるものを奪っていくからだ。
かって様々なコンテンツに関わっていた頃・・・ビジネスというものの面白さに心が踊り、ビジネスというものの恐ろしさに身が竦んだものだ。
そもそもショー・ビジネスは浮草稼業である。
それを人の情けの通じるものにするのか・・・阿漕な生き地獄にするかは関係者の気持ち次第ではある。
まあ・・・どんなビジネスでもメシの種なので・・・飢えたくはないから譲れない部分もある。
しかし・・・人間から本名まで奪っておいて所属していない人間のファンクラブの会員を事務所が募集し続けているというのは・・・ビジネスとしても物凄く理解しにくい状況だな。
風通しが悪いにも程があるだろう。
もちろん・・・フィクションで女優からアイドルに転身した人間もいる御時世である。
すべて・・・虚構で冗談だったらいいのになあ・・・と思うわけである。
とはいうものの・・・光あるところに影があるというのはどうしようもないけどね。
誰かが席を譲れば誰かがすわれるものね。
このドラマは不動産業界のビジネスを描いているわけだが・・・フィクションなので安心できるなあ。
で、『家売るオンナ・第1回』(日本テレビ20160713PM10~)脚本・大石静、演出・猪股隆一を見た。そもそも・・・家を買う予定のない人には無縁のドラマなのである。不動産ドラマならまだ賃貸の人にも関係性が生じるが・・・もう買っちゃってひたすらローンを払ってる人でも売主にはなれるぞ・・・まあ・・・とにかく・・・五千万円で中古マンション買って数年立ったら住み替えるという人もいるだろうからな。とにかく・・・魔性のセールスマンが「家」を売って売って売りまくる話なのである。もう景気がいい話なのかどうかもわからなくなるほど売りつけるのだった。もげって言ってた可愛いあの子がこんな大女優になるなんてなあ。順調でよかったよなあ。あの子にも大変だろうけど幸せになってもらいたいよなあ。
2020年の東京五輪に向け・・・都心の地価はそれなりに上昇していた。
ビジネスチャンスの到来である。
しかし・・・テーコー不動産株式会社の新宿営業所売買営業課では・・・不況の間に低下しまくった士気を鼓舞する器ではない屋代課長(仲村トオル)の下で生ぬるい日々の暮らしが営まれているのだった。
エルメス好きのお客様のためにエルメスのネクタイを着用する気配りが出来る甘いマスクの王子様こと足立聡(千葉雄大)がエースというレベルの低さなのである。
そんな新宿営業所・・・目黒営業所の売上を倍増させた・・・「凄い美人」「社長の愛人という噂のある」・・・新たなるチーフ・三軒家万智が着任するのだった。
三軒家は・・・課長よりも早く出勤し・・・朝の光の逆光によるシルエットとなって・・・部下たちを出迎えるのだった。
ちなみに社内的階級は・・・課長→営業チーフ→その他の社員→デスクという序列である。
つまり・・・屋代課長は三軒家チーフの上司である。
しかし・・・三軒家には・・・その気はないらしい。
ちなみに三軒家は・・・三十歳という設定である。年上の課員には「敬称」を付けるが・・・年下である足立聡、白州美加(イモトアヤコ)、庭野聖司(工藤阿須加)、およびデスクの室田まどか(新木優子)は呼び捨てである。室田にいたっては員数外なので最初は「あなた」だった。
「それでは改めて部下を紹介しよう」
「その必要はありません・・・すべてわかっています」
「え」
「屋代課長、バツイチ、独身、女性不審、先月の売上は714万円」
「・・・」
三軒家チーフにとって売上額こそが人間に対する評価そのものなのである。
布施誠さん(梶原善)・・・216万円
宅間剛太さん(本多力)・・・120万円
八戸大輔さん(鈴木裕樹)・・・180万円
足立聡・・・624万円
庭野聖司・・・ゼロ
売上とは会社の実質的な利益額である。
五千万円の物件を売ればおよそ三パーセント程度の150万円前後が売上となる。
「そして・・・シラスミカ・・・ゼロ・・・先々月もゼロ、先々々月もゼロ・・・入社以来ずっとゼロです・・・よく出社できますね」
物凄い威圧をかける三軒家チーフだったが・・・シラスミカは動じずに・・・素晴らしいインターネットの世界で化粧品の通販サイトにアクセスするのだった。
「そして、私は1518万円です」
課長よりもケタ違いで売り上げるチーフだった。人当たりの良い屋代課長だが・・・白州のような戦力外要員を放置したままの無能な上司だったのである。
「とにかく・・・今月は・・・目白の例の物件をなんとか売ってくれ・・・売主は社長の御友人だし・・・」
目白の中古マンション「ヒルパークレジデンス710号室」はリビングルーム広めの1LDKで五千万円と高価格、坂の上にあり・・・なかなか買い手がつかないのだった。
「その物件は・・・私が売ります」と三軒家チーフ・・・。
「え」
「私に売れない家はありません」
「と・・・とにかく・・・今日も頑張って行きましょう」
顧客との待ち合わせがある課長と足立は早速、外出である。
その時を待っていたように・・・シラスミカをしごきはじめるチーフだった。
「シラスミカ」
「・・・」
「シラスミカ・・・呼ばれたら返事」
「は・・・はい」
「今・・・何をしているの」
ネット通販である。
「お客様リストを・・・」
「今日はお客様とのアポ(面会予約)はあるの?」
「ありません」
「明日は・・・」
「ありません」
「明後日は・・・」
「ありません」
「シラスミカ・・・自宅の鍵をよこしなさい」
「え」
「早く」
言われるままに鍵を渡す白州未加だった。
チーフは鍵を引き出しに仕舞った。
「アポがとれるまで家には帰れません」
「え」
「シラスミカ・・・来なさい」
「え・・・」
「早く!」
「はい・・・」
シラスミカの前後を不動産広告のパネルで挟み、サンドイッチマンに仕上げるチーフ。
「新宿駅前にアポがとれるまで立っていなさい」
「えええええ」
「GO!」
唖然とする課員たち・・・。
「あなたたちも営業に行きなさい・・・GO!」
こうして・・・チーフは課員たちに一鞭入れたのだった。
「ニワノセイジ・・・」
「はい」
「あなたの予定は」
「これからアポがあります」
「同行します」
「え・・・」
「早く!」
営業者のナビゲーションシステムに入力する庭野。
「必要ありません、道順は私が指示します」
「え・・・」
路地裏とも言えない獣道を行く二人を乗せた車。
下町ではナビに従って駐輪した自転車に埋もれ身動きできなくなっている車をよく見かけるものだが。
「・・・二十分も早くつきました」
「今のあなたには家は売れません」
「え」
最初の客・小金井夫人(梅沢昌代)は下見を繰り返し、なかなか契約に踏み切らないタイプである。
庭野はお客様の気持ちになってセールスするが埒があかない。
するとチーフは「即決する客と不動産屋」をセットで用意するのだった。
「売れてしまう」と知ってあわてて契約する小金井夫人・・・。
「お客様を騙したのですか」と批難の目をむける庭野。
「私の仕事は家を売ることです・・・そして私は家を売りました」
「・・・」
運転席に座り獣道を物凄い加速で飛ばすチーフ。
おそらく女子供を数分で三人くらいは死傷させたのだろう。
「不動産屋は地図を見ない・・・道なき道を進む・・・お客様は・・・裏道を知っているものをその道のプロと感じ・・・信用します」
「そんな・・・」
第二の客は産婦人科医の土方弥生(りょう)である。
夫は脳外科医で同じ病院に勤務し、幼い息子が一人いる。
最近、祖母が亡くなり孫の面倒を見る人がいなくなったために・・・病院近くへの転居を考えている。
条件は庭付き一戸建てでリビング・イン・階段があること。
予算は一億円までだが・・・病院近くに適当な物件がないために・・・庭野は売り込みに苦戦していた。
今回も病院からやや遠い上にリビング・イン・階段はない物件である。
「しかし・・・これほどの物件は滅多に出ないのです」
「家族のコミュニケーションのためにリビング・イン・階段は絶対にゆずれません」
「確かに・・・この物件はお客様には相応しくありませんね」
「え」
「今日はお二人で夜勤ですよね」
「ええ」
「本日は私がベビーシッターをいたしますので・・・明朝、親子三人で物件の下見にいらっしゃいませんか」
「まあ・・・」
「一体・・・何を考えているのですか・・・」
「ニワノ・・・ついてきなさい・・・」
その頃・・・会社ではチーフが白州美加をサンドイッチマン化したことに蒼ざめる課長・・・。
白州に電話すると彼女はカフェにいた。
「帰って来なさい」
「はい・・・お茶を飲んだら・・・」
「僕が迎えに行きましょう」と足立。
「頼むよ・・・ずっとお茶されてもなんだし」
白州は足立の好意を「愛」と感じるのだった。
「何・・・家の鍵をとりあげられただと」
「私・・・今夜はスパに泊まります」
「・・・」
パワーハラスメントの二文字がコンプライアンスに縛られている課長を苛むのだった。
帰社したチーフに小言を言う課長。
「とにかく・・・社員指導のマニュアルを読みたまえ」
しかし・・・マニュアルをゴミ箱に投棄する「すでに今日も売りあげているチーフ」だった。
「私たちの仕事は家を売ることです」
「・・・」
昭和のモーレツ社員のようなチーフに辟易した課長は行きつけのBAR「ちちんぷいぷい」のママ・珠城こころ(臼田あさ美)に逃避するのだった。
「もう・・・やんなっちゃうよ」
「かわいちょうですねえ」
可愛いバカ課長だった・・・。
土方家にやってきたチーフと庭野。
我儘な幼児の馬となってヒヒーンと嘶く庭野だった。
チーフは室内を点検し・・・攻略の糸口を探る。
祖母の死を受け入れられない幼児。
幼児の描いた祖母の絵。
祖母を象徴する庭のビワの木・・・。
正座して瞑想するチーフ。
ビワの木に登るチーフ。
ビワの木から落下するチーフ。
美味しい朝食を用意するチーフ。
そして・・・早朝の「新生児室」に幼児を連れて行くチーフだった。
「ごらんなさい・・・これは今朝生まれた赤ちゃん」
「・・・」
「この赤ちゃんもいつかはみんな死にます」
「え」
「生まれたものはみんな死ぬ・・・みんな逃げられません」
「ええっ」
「私もあなたのお母さんやお父さんも・・・あなたのお祖母さんも死にます。あなたもいつか死にます」
「えええ」
「でも・・・生きている限り・・・一生懸命生きなければならない」
「・・・」
「死んだお祖母さんもあなたが一生懸命生きていることを願っていたと思います」
綺麗なお姉さんに見つめられて恥じらう幼児だった。
神妙になった幼児と両親夫婦を連れて・・・「ヒルパークレジデンス710号室」にやってくるチーフ。
「いつもの人は・・・」
「ニワノは愚図なので置いてきました」
「・・・」
「しかし・・・ここは狭すぎるのでは」
「ご家族にとって一番大切なのは温もりを感じあえること・・・お客様は終の棲み家をご希望ですか」
「そういうわけじゃないけど」
「今なら・・・寝室でお子様と川の字になっておやすみいただけます」
すでに・・・幼児の描いて絵が飾られ・・・ビワの木の鉢植えまで用意された室内。
「ベランダをごらんください」
ベランダから二人が勤務する病院が手の届くような距離にあった。
「ニワノ~!」
「チーフ~!」
屋上で庭野が手を振る。
「お子様に声が届く範囲で働くのは一つの理想と言えます」
「悪くないな」
「それでは五千万円でお買い上げいただけますか」
「買うわ・・・随分安くついたわね」
「住み替えの時に使えばいいさ」
こうして・・・チーフは客を落したのである。
翌日、シラスは冷凍フライ中心の手作りお弁当を足立に捧げるが・・・王子様は微笑みつつスルーするのだった。
シラスは再び新宿駅前のカフェに逃避したが怪しい客(マイケル富岡)のアポ取りに成功する。
だが・・・結局・・・コーヒー代をたかられただけだったようだ。
泣き濡れるシラス・・・。
ダメ課長は「泣かないで帰って来なさい」と甘やかす・・・。
一方・・・街でチーフを見つけた庭野は・・・好奇心に負けて尾行。
豪邸に消えるチーフを目撃する。
しかし・・・それは・・・一家惨殺事件の現場となった事故物件だった。
帰社して事故物件リストで確認する庭野。
「何を見ているのですか」
振り返れば・・・魔性の女が・・・。
もう・・・チーフの淡々とした命令口調を聴いているだけで幸せな気分になれるドラマなのだった。これは・・・萌える。北川景子の魅力が爆発してるなあ。わかる人にはわかります。
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コメント
こんにちは。
いやー、最後までのあの顔つきテンションでやるんでしょうか、けしからん、もっとやれ(笑)。
不動産版ブラック・ジャックと思って見ています。
おせちもいいけどカレーもいいけどジャックもいいけどモゲっもいいけど対探偵もいいけどこういうのもイイ(笑)。
七緒までいくと私はダメ(?)ですが、これくらいがいい。親しみやすそうなイルカトレーナー(いま録画観ているものですから)もいいけど(なんでもいいのか)。
仲村トオルってイケメンなのにイイ味だせますねぇ。男優フォロー。
毎回路地裏ジムカーナもやってほしい。
投稿: 幻灯機 | 2016年7月16日 (土) 10時43分
ニヤリとまではいかないにしても
微笑みのようなものが浮かびかけている瞬間が
何度かあったような気がします。
それが・・・三軒家の微笑みなのか
北川景子のうっかり笑いなのか
判別不能なところがまたそそります・・・。
北川景子という女優の存在感が
なんでもあり状態を作り出すのですな。
もう・・・うっとりするしかありませんよね。
鉄拳制裁が当たり前だった時代は遠くに去った・・・。
使えないADを蹴り飛ばす暴力的な放送作家がいた時代も過去のもの・・・。
それでも今こそ叱咤激励が求められているのではないかと
思う今日この頃・・・。
仲村トオルは何と言っても「ビー・バップ・ハイスクール」の中間徹でデビューですからな。
コメディーもできるわけでございます。
最近では「怪奇恋愛作戦」の三階堂登が抜群でございました。
投稿: キッド | 2016年7月16日 (土) 17時39分
忘れかけていたほど残念な男・三階堂、二階堂はおかしくなくて何故三階だと残念な感じなんだ三階堂…
(二階ってだけだとこれがまた座りが悪い…)
真野恵里菜しか見えていませんでした(笑)。
七緒でなく菜々緒でしたね(-_-)。やっぱ美人すぎる人はねずみ男の扮装しててちょうどイイくらいなのかも。草刈麻有はもう活動しないのかなぁ…
投稿: 幻灯機 | 2016年7月16日 (土) 19時19分
二階堂氏は藤原姓で南家藤原武智麻呂の子孫ですからな。
初代・峰不二子の二階堂有希子もいれば
二階堂ふみもいますし・・・。
なんとなくかっこいい・・・。
それに引き換え・・・情けない三階堂。
一発変換できないし・・・。
真野恵里菜はどこまで美しくなるのか・・・。
現在の最悪朝ドラマでも美貌は随一でしたな。
なぜ・・・ゴールデンに呼ばれないのか!
「神の舌を持つ男」に呼ばれないかな・・・。
菜々緒もうっとりしますけれど・・・。
草刈麻有は大河で父上が大活躍中ですねえ。
「神の舌を持つ男」に呼ばれないかなあ。
無愛想な若温泉女将が似合うと思うのでございます。
投稿: キッド | 2016年7月16日 (土) 20時28分