怖いけれど安い家(北川景子)ちちんぷいぷいちちんぷい(臼田あさ美)君は自由だよ!僕は宇宙だよ!(千葉雄大)
都内の物件を所有していると一日に数回、不動産業者のアポ取り電話がかかってくる。
「お住まいの件なのですが」
「住み替えの予定はありません」
もう・・・何回、同じやりとりをしただろうか。
物凄い時間の浪費を感じるが・・・それが人生というものだろう。
このドラマの一番の面白さは・・・あるいは恐ろしさは・・・もしも・・・電話の相手か彼女だったら・・・確実に・・・家を売らされ・・・住み替えさせられ・・・その上、少し幸福感を感じさせられてしまうかもしれないと妄想できることである。
「お客様に・・・もっとも相応しい物件を提案させていただきます・・・ゴーッ!」なんだな。
まあ・・・あの主人公とひとときを過ごせるなら・・・文句ないのである。
そういう気分を毎週、味あわせてくれる・・・素晴らしいドラマなのだった。
で、『家売るオンナ・第2回』(日本テレビ20160720PM10~)脚本・大石静、演出・猪股隆一を見た。昭和といえばモーレツな時代である。モーレツにヒラヒラしてモーレツにチラチラしたのである。ヒラヒラもチラチラもないがモーレツにつぐモーレツな物件セールスマンの三軒家万智(北川景子)が・・・テーコー不動産株式会社の新宿営業所売買営業課に営業チーフとして降臨する。指導力が皆無の屋代課長(仲村トオル)の下でぬるま湯に浸っていた「いい加減な人々」は「家を売らなければ社員として価値がない」という冷水を浴びせられ「キャ~」とうろたえるのだった。
昭和の時代・・・営業マンは給料の十倍売り上げることがノルマだった。・・・マジかよ。
そうでなければ商売なんか成立しないのである。
先月の売上がゼロの庭野聖司(工藤阿須加)と入社以来売上ゼロの白州美加(イモトアヤコ)をターゲットとして認識したらしい・・・三軒家チーフは・・・モーレツでスパルタ式で特訓、特訓また特訓の号令を下す。
三軒家の手段を選ばない「売り方」に・・・馴染めないものを感じる庭野だったが・・・好奇心に負け・・・「ものすごい美人の住んでいる家」まで帰宅途中の三軒家を尾行する。
しかし・・・それは「一家惨殺事件のあった業界内では有名な事故物件」だった。
会社に戻り・・・事故物件資料を確認してみた庭野の背後に・・・三軒家が現れた!
「ひえええええ」
「何を見ている?」
「こ・・・これは」
「庭野が尾行して確認した家は・・・賃貸で月五万だ」
「こ、怖くないのですか・・・」
「怖い・・・時々、誰もいないのに扉が開いたり閉じたりする・・・しかし、安い」
「・・・あの・・・帰宅したのに・・・なぜ・・・会社に」
「家を売るためです」
その時・・・薄暗い部屋で電話の呼び出し音が鳴る。
「電話をとる」
「はいっ」
受話器の向こうから響く・・・地獄の亡者のような女の声・・・。
「あの・・・住み替え希望のものなのですが・・・」
「ひええええええええ」
「え」
「あ・・・失礼しました・・・御用件を承ります」
庭野は・・・アポがとれた幸運を感じる。
ふりかえると・・・三軒家は消えていた。
「ひええええええええ」
屋代課長による朝のミーティング。
「みんな・・・今日のアポ(営業のための客相手の面談の予定)はどうなっている」
布施誠(梶原善)、八戸大輔(鈴木裕樹)、宅間剛太(本多力)やエースの足立聡(千葉雄大)までがアポなしを告げる中・・・庭野は「アポあり」に胸をはる。
しかし・・・三軒家は「私は午前中に二件、午後に二件です」と上を行くのだった。
「まだまだノルマ達成は遠いぞ・・・例の墓地の側の物件・・・そろそろ売らないとな」
「その家は私が売ります」
「いや・・・ここはみんなで頑張ろう・・・俺たちは仲間だ・・・屋代組だ」
「組・・・?」・・・脳天気な屋代課長にたじろぐ一同。
屋代課長は三軒家がスパルタな指示を出す前に・・・白州美加(イモトアヤコ)に簡単な仕事を宛がう。
「君は・・・物件のチラシを三百枚ほどポスティングしてくれ」
「えーっ」と屋代課長の温情を仇で返すシラスミカだった。
説明しよう・・・脚本家はエッセイストでもあり著書に「わたしってブスだったの?」(1993年)がある。ブスが自分をブスと自覚しないことの面白おかしさを表現する第一人者なのである。美醜について語ることがハラスメントとされる歪な時代に・・・その病状は深刻化し、感染者は拡大し、病は世に蔓延していると言える。シラスミカは「無自覚ブス症候群」の典型的な病例なのだ・・・おいっ。
「ポスティングの途中で・・・誰かに物件について質問されても対応できるように・・・アピールポイントを三分間・・・述べなさい」
屋代課長を無視してシラスミカに指示を出す三軒家。
「この物件は・・・墓地の側にあります・・・」
「それだけですか・・・ポスティングの前に・・・物件を見て・・・セールスポイントをまとめなさい」
「そんなことは・・・しなくていい」
屋代課長は・・・課内に波風が立つことを病的に惧れるタイプだった。
「三軒家くん・・・君は・・・指導マニュアルを読みたまえ」
一度捨てられたマニュアルを本社からお取り寄せした屋代課長。
しかし、三軒家は有無を言わさずマニュアルをゴミ箱に投げ捨てる。
「私は・・・誰も指導しません・・・いい加減な人間を見るのが嫌なだけなのです・・・いい加減な人間が消えても・・・全く構いません」
「そんな・・・みんな仲間じゃないか」
「課長・・・」と足立が立ちあがる。
「僕も・・・誰も指導しませんよ」
「足立・・・お前もか」
絶望感に打ちのめされる課長だった。
いやいや出かけるシラスの耳元に・・・「そんもの捨てちまえ」と囁く最古参の布施・・・。
シラスは意気揚々と出発する。
「すごい・・・なんて言ったんです」
「俺らの頃はチラシ三千枚だったってね」
「さすがです」となんとなく和む課内。
「いやいや時代が違いますよお」と甘えた声を出す課長だった。
「チラシをいくら撒いても家が売れなければ無意味です」と釘をさす三軒家だった。
シラスは・・・トイレのゴミ箱にチラシを投げ捨てると・・・カフエでお茶を飲み、映画館で恋愛映画を鑑賞するのだった。
給料泥棒である。
三軒家のアポの一つは過去に顧客だったらしい井上氏(諏訪太朗)だった。
息子夫婦の2LDKと自分の住む1LDKを売却希望である。
物件を査定し・・・値踏みする三軒家。
「エントランスに宅配ボックスがあり・・・一階だから荷物の出し入れにも便利なんだ」とアピールする井上氏。
「一階の物件は人の出入りが騒がしいと感じるお客様もいるので・・・必ずしも利点とはなりません」
買い手の代理人でもある仲介業者として厳しさも見せる三軒家。
「玄関はお客様に見せる顔ですから・・・少し手を入れた方がいいかもしれません」
「ええ~・・・金がかかるだろう」
「お安く手配いたします」
「これもとらなくちゃだめかね」
息子が一時、熱中したというボルダリング設備。
「中古物件には個性も必要です・・・これはセールスポイントになるかもしれません」
「へえ・・・」
「ゆとり」のセットの使いまわしかっ。
「どちらも・・・きれいにお使いですね・・・1LDK・・・2000万円!・・・2LDK・・・2500万円!・・・あわせて4500万円!・・・私がお売りします!」
「よろしくお願いします」
庭野は電話をかけてきた城ヶ崎夫人(木野花)の家を内見する。
城ヶ崎夫妻は・・・一戸建てからマンションへの住み替えを検討していた。
二階にあがった庭野は・・・夫妻の寝室とトイレの他に開かずの間があることを知る。
「そこは物置で・・・とんでもないことに・・・なっているので・・・開けないでください」
「はあ・・・」
階下で打合せに入ると・・・頭上からトイレの音がする。
「自動洗浄なのです・・・」
「はあ・・・」
「いくらくらいで売れますでしょうか」
「都内の一等地で・・・家屋も素敵な物件なので・・・五千万円で売れると思います・・・住み替えの家は四千万円程度でご案内できると思います」
「住み替えの方は・・・二千万円から二千五百万円でお願いします」
「え・・・」
屋代課長は庭野の報告を受けて・・・シラスに対する態度とは違うアドバイスをする。
つまり・・・庭野には「男」として接しているわけである。
課長もまた・・・「昭和の男」なのだ。
自覚がないだけである。
「五千万円で家が売れるんだ・・・四千万円くらいの家を売りつけろよ」
「・・・はい」
そのやりとりを三軒家が見ていた!
「明日の内見に・・・私も同行します」
「え」
嫌な予感を覚える男たちだった・・・。
制御不能な部下を持って困惑する屋代課長は・・・行きつけのBAR「ちちんぷいぷい」のママ・珠城こころ(臼田あさ美)に不満を吐き出す。
同行する布施は・・・かっては・・・やり手の営業マンだったらしい。
布施は・・・屋代課長の心をかき乱す不穏な「話」を持ちだす。
「あの女・・・本社からの特命を帯びているかもしれん」
「え」
「社長の手のものか・・・それとも重役の誰かのヒットマン・・・」
「ええ」
「ターゲットは課長かもしれないねえ」
「えええ」
怯えて痛飲する屋代課長である。
とことんダメ人間なんだな。
三千八百万円の物件に難色を示す城ヶ崎夫妻・・・。
「何か・・・キャッシュの必要がおありでしょうか」
「・・・そんなことまで言わなければならいのですか」
「失礼しました」と割って入る三軒家。
「このお話・・・あらためて・・・私が承ります・・・御自宅に伺ってよろしいでしょうか」
「はあ・・・」
城ヶ崎家の応接室。頭上から水洗トイレの音がする。
やにわに立ちあがった三軒家はライターの火を火災警報器に近づける。
「何をするんですか」
たちまち鳴り響く警報音。
間髪置かずに発煙筒に着火する三軒家。
「え」
「火事だ~」
「ええ」
「庭野、お前も叫べ」
「えええ」
ただならぬ気配に・・・開かずの間が開き・・・城ヶ崎夫妻の長男で引き籠りの良樹(ビビる大木)が煙のたちこめた階段を駆け降りる。
「あ」と息を飲む・・・三軒家以外の一同。
「誰ですか・・・あのおっさん」
良樹は火事がフェイクであると悟ると開かずの間に駆け戻る。
「息子です」
「二十年間引き籠っていました」
「就職はしたんですが・・・人間関係で失敗して・・・」
「私は・・・二十年ぶりに・・・顔を見ました・・・あいつ・・・老けたなあ・・・」
「家を売って・・・息子にお金を残してやりたいんです」
「もはや・・・私たちにはそれしかできないのです」
夫婦の告白に・・・言葉を失う庭野。
「私におまかせください・・・城ヶ崎様のために完璧な引き籠りの城をご用意いたします」
三軒家は目を見開くのだった。
引き籠った良樹はブログ「長期引き籠りニートYOSHIKI」を更新した。
「今日・・・ものすごい美人が家に来ました!」
素晴らしいインターネットの世界では「美人」と聞いてさざ波が立つ。
しかし・・・コメントはなかった。
だが・・・テーコー不動産株式会社の新宿営業所売買営業課のデスク・室田まどか(新木優子)は密かな愛読者だった・・・。
何、読んでんだよ。
帰社した三軒家は物件を検索する。
そして・・・「最高の物件」を見つけた!
「最高のプラン」を仕上げた三軒家は・・・城ヶ崎家攻略作戦を開始する。
「城ヶ崎様には・・・この二千五百万円の物件をお勧めします」
「まあ・・・」
「でも・・・なんだか・・・間違ってますよ・・・城ヶ崎様は・・・本当は・・・息子さんに引き籠りをやめて欲しいのではないですか・・・玄関先に・・・いつも息子さんの靴をピカピカに磨いて・・・」
「甘い!」
「え」
「城ヶ崎様も心の中ではお気づきですよね・・・」
「・・・」
凡庸なドラマのように引き籠り解消作戦には向わない脚本家の意地である。
「二十年も引き籠り四十歳になった息子様が・・・まともに社会復帰することなんて無理だということを・・・」
「・・・」
「しかし・・・二千五百万円の現金では・・・息子さんが引き籠れるのは十年が限度です」
「え」
「そこで・・・城ヶ崎様には同時に二千万円の物件も購入していただきます」
本能的な危機を感じた良樹は電子メールで母親に忠告する。
《だまされるな》
「私に息子さんと・・・直接話させてもらえないでしょうか」
三軒家の提案を承諾する夫妻だった。
長い二十年だったのである。
良樹はダンボール箱男となって三軒家を迎え入れた。
「失礼します・・・」
「・・・」
「どうして・・・引き籠ってしまったのですか」
「・・・」
「え・・・パリの国際会議で・・・ウンコをもらした・・・」
「・・・」
「そんなことでって・・・言うのだろうと・・・いいえ・・・ウンコをもらしたのでは仕方ありません」
「・・・」
「私は・・・城ヶ崎様が百歳まで引き籠れるプランを作りました・・・ご検討の程をお願いします」
「・・・」
交渉成立である。
井上氏の二部屋を城ヶ崎夫妻に購入させ・・・一部屋を賃貸させることで・・・およそ六十年間の家賃収入を確保させたのである。
「息子さんには・・・靴も玄関も必要ありません」
井上氏の部屋を内見に訪れた城ヶ崎夫妻は・・・息子の運動不足解消のためのボルダリング施設完備に・・・感激の落涙・・・。
(落ちた・・・)と感じる三軒家。
深夜の街を・・・引き籠り男はひっそりと新しい開かずの間へと向う。
「今日から・・・引き籠りだけど大家になりました」
「あ・・・YOSHIKIが更新してる」
思わず・・・「がんばって」とコメントを書きこむ室田まどかだった。
三年後・・・カリスマニートとなった良樹は・・・出版した本がベストセラーとなり・・・テレビ局の取材に応える人間になっていた。
しかし・・・それは先の話。
経済力があれば・・・選択肢は広いという話である。
「墓地のとなりのマンション」の現地販売を行う足立とシラス。
足立の留守中に・・・母子連れの顧客が現れる。
「この物件・・・どこがいいの?」
「西日です」
「え」
「墓地のとなりです」
「ええ」
「ヤモリが出ます」
「えええ」
「私・・・こんな家イヤだ~」と娘(井東紗椰・・・2014年度のおはガール・・・映画白ゆき姫殺人事件で貫地谷しほりの少女時代を演じた)は正常な反応・・・。
そこへ・・・足立が戻ってくる。
「お客様・・・もうお帰りですか・・・」
「だって・・・西日で・・・墓地で・・・ヤモリなんて」
「ヤモリは家の守り神として大切にされているんですよ・・・自然に恵まれている証拠です。墓地には高い建物が立ちませんので見晴らしも日当たりも保証されます・・・そして・・・この窓から見える山の稜線をごらんください・・・あの山に夕陽が沈む時・・・きっと・・宇宙を感じることができるでしょう」
ドス黒い王子に頭を撫でられてうっとりする娘・・・。
「私・・・ここに住みたい・・・」
逆転の発想・・・物事の裏表・・・プラス志向・・・要するに洗脳である。
「自然に恵まれている上に夜も人通りが多いので安心できる環境です・・・買い物なども便利ですよ・・・いかかでしょう・・・今なら現地販売割引もございます」
「買います」と即決する母親だった。
「では・・・1590万円になります」
母子が去った後・・・シラスは泣きだす。
「どうしたの・・・」
「私・・・上手くできなかった・・・」
「せっかく練習したのにね」
「私・・・会社やめます・・・」
「そう・・・それは・・・君の自由だね」
シラスは・・・泣けば・・・足立が・・・結婚してくれると・・・本気で信じているのだった。
恐ろしいことだ。
菩薩である三軒家が差し伸べる救いの手に気がついて・・・。
シラスが「現実」を受けとめる日がくるのかどうか・・・まあ・・・一部お茶の間には本当にどうでもいいことだがな・・・。
「庭野でなく・・・私が売りました」
有能すぎる部下である三軒家の言葉が胸に突き刺さる屋代課長である。
もはや・・・見下ろす立場ではないことに・・・屋代課長は気付いてしまったのだ。
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コメント
こんなに臼田あさみが気になっちゃうなんて~(笑)。
いままで臼田あさみといえば、どちらかというと印象が薄いというか、『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』に出ている人と区別が付かない……と思ったら本人だった(~_~;とかあるんですが、今回の加藤夏希風(?)装いになればこれがなんと癒しパワー炸裂!(スイカに塩!みたいな?)
あー、ちちんぷいぷいしてほしいですー。
もちろん、もげっと『ブザービート』(好き)に『悪夢ちゃん』に『探偵の探偵』にこれとさまざまにこなすサンチー…ええですなぁ…。私も発煙筒をカバンに入れておきたいと思います。
投稿: 幻灯機 | 2016年7月21日 (木) 22時41分
行きつけのバー(スナックもどき)のママが
キラキラした臼田あさ美・・・。
あの店がいつも・・・閑散としているのは
奇妙ですな。
おそらく・・・屋代課長が
「貸切」にしているのですな。
もう・・・お金がいくらあっても足りないはずです。
屋代課長は・・・「ウシジマくん」のお世話に
もうすぐなるのでしょう。
売って売って売りまくる女と・・・
貸して貸して貸しまくる男は・・・
基本的に同じものなのかもしれません・・・
発煙筒もスタンガンも・・・あのバッグには
入っているような気がします・・・
投稿: キッド | 2016年7月21日 (木) 23時51分