遺産相続弁護士 柿崎真一(三上博史)六時間妻(奥菜恵)迷える子羊(酒井若菜)女狐(森川葵)
春と夏の谷間終了である。
例によって・・・先頭に飛び出すのは読売テレビの深夜枠だ。
制作協力各社によって次々に微妙な作品が繰り出されるわけだが・・・。
前期がオスカープロモーションによる「ドクターカー」・・・その前が吉本興業による「マネーの天使〜あなたのお金、取り戻します!〜」・・・メディアミックス・ジャパンの「青春探偵ハルヤ〜大人の悪を許さない!〜」・・・ザ・ワークスの「婚活刑事」・・・ホリプロで「恋愛時代」・・・吉本興業で「五つ星ツーリスト〜最高の旅、ご案内します!!〜」・・・もういいか。
振り返っても心が震える作品にはなかなか巡り逢えないものだ。
だが・・・今回の制作協力→ ザ・ワークスはなかなかに侮れないのである。
この枠定番の・・・ださめの演出ではなく・・・それなりにスタイリッシュに仕上げてきているのだ。
恐ろしいことだが・・・これはレギュラー・レビューの対象になる可能性があります。
で、『遺産相続弁護士 柿崎真一・第1回』(日本テレビ201607072359~)脚本・林誠人、演出・白川士を見た。この枠にはなんとなく・・・「もっさり」した感じがあるのだが・・・つまり・・・あまり高級なお客さんは狙っていませんよ・・・という感じだが・・・出来がよくないのに最初から客を選べる立場か・・・と思うことがある。しかし・・・今回は・・・頑張って作りますので評価はお任せします・・・という姿勢が感じられる・・・どういう感じだよ。たとえば・・・証言集めの途中で・・・主人公は・・・物語の要の一つである「天体望遠鏡」を使い・・・うっかり、向いのビルで脱衣中の女性を覗いてしまう。気配に気がついた女性が振り返り・・・あわててカーテンを占める。その女性(芝崎唯奈)がそれなりに可愛いので得した気分になる。しかもさりげなく手ブラなのだ。こういう高いクオリティーが最初から最後まで貫かれているということだ。・・・なるほど。
深夜の墓地。十字架が倒れていたりして・・・異国風である。墓を掘り起こしているのはヴァンバイア・キラー・・・ではなく・・・弁護士バッヂを隠す男・柿崎真一(三上博史)である。やはり日本の俳優の中でも墓あらしをさせたら一、二を争うな。柿崎は棺桶とともに埋葬された一通の封書を取り出す・・・そして月に吠えるのである。
ラブホテル「迷える子羊たち」の一室で・・・睦み合う柿崎と歯科医の水谷美樹(酒井若菜)・・・二人は大人の関係でもあるが患者と医師でもある。そして水谷は・・・セレブ専門の歯科医院を営んでいるのだった。裕福な老人を虜にして遺産分与してもらうのが趣味らしい。柿崎の入手したものは死後のゲームのトロフィーとしての「遺言書」なのである。
「おい・・・名前・・・美樹じゃなく・・・美紀になってるぞ」
「うそ・・・」
思わず遺書を訂正する水谷。
たちまち「受遺者が遺言書を変造した場合、相続欠格としてその地位を失う」(民法第965条および891条5号)が発動するのだった。
水谷が落胆しているところに・・・遺産相続専門法律事務所「ラストリクエスト」に所属する丸井華弁護士(森川葵)が現れた!
「明日の葬儀一覧です・・・山岸氏の葬儀は狙い目なので遅刻厳禁で」
すでに・・・あまりん的何かが醸しだされるのだった。いいぞ!
総額三億円の遺産を残した山岸氏(螢雪次朗)の告別式にもぐりこむ柿崎と丸井・・・。
しかし・・・相続者は一人娘の倫子(紫吹淳)だけで・・・弁護士の割りこむ余地なしと思われた矢先・・・Club「泥棒猫」のママ・立花淳子(奥菜恵)が登場し、お約束で遺体にすがりつくのだった。
「遺体は引きとります」
「誰があんたなんかに・・・」
たちまち・・・修羅場となるのだった。
ニヤニヤしていた柿崎に・・・淳子が依頼者として名乗りをあげる。
「きっちり・・・妻としての・・・取り分を確保して・・・」
淳子は山岸氏の死亡する六時間前に婚姻届を受理されていた。
「六時間妻なんて認めない・・・危篤状態のお父さんに無理矢理署名捺印させたに決まっている・・・出るとこ出るわよ・・・」
「当事者間に婚姻の同意がない場合は、その婚姻は無効とする」(民法742条1号)を盾に息まく一人娘の倫子である。
「法廷は必ず正しい判断を下すでしょう」
「法廷はまずいな・・・」
柿崎は蒼ざめる・・・どうやら・・・柿崎の弁護士資格には疑わしいところがあるらしい・・・。
怪しい霊媒師のコスプレで・・・山岸氏が入所していたハイクラス老人ホーム「ゴールデンライフ」を調査する丸井弁護士。
「彼は真面目な性格だから・・・」ハイクラス老人A(久保晶)。
「完全に騙されていたよね・・・」ハイクラス老人B(須永慶)。
「泥棒猫のママは遺産狙いさ・・・」ハイクラス老人C(小杉幸彦)。
澱みないキャスティングだな・・・。
淳子に有利な証言は得られなかったが・・・柿崎は・・・山岸の部屋の天体望遠鏡で思わぬ目の保養をするのだった。
「お盛んですなあ・・・」
「男は生涯現役だからねえ」
クラブ「泥棒猫」にやってきた二人・・・。
ホステスのめぐみ(小西キス)は「じいさんたちはみんなママ狙いだったけど・・・ママが選んだのは・・・山岸さんだった・・・余命がいくばくもないと知ってのことだったんじゃないかな」と淳子に不利な証言をする。
そこに闇金業者の「かばらい」こと河原井正(豊原功輔)が現れる。
「ママには三千万円の借金がある・・・遺産が相続できないとまずいことになる」
風向きを読んだ丸井弁護士は・・・単身・・・一人娘の倫子を訪ねるのだった。
「婚姻届は国が認めた証拠ですからね・・・無効になるとは限りません・・・私なら・・・泥棒猫のママに遺産放棄をさせることが可能です」
「本当?」
「弁護士報酬は10パーセントが相場ですが・・・私は1パーセントで・・・しかも成功報酬のみでお役に立てますが・・・」
「あなた・・・雌狐ね・・・」
どうやら・・・丸井は金銭に執着するタイプのあまりんらしい。
行き詰った柿崎に・・・歯科医の水谷が情報を提供する。
「山岸氏は・・・淳子ママのために・・・インプラントにしたのよ・・・」
「入れ歯は・・・口臭が気になるからな」
「愛のエチケットよ・・・そして・・・山岸氏は・・・入れ歯を彼女に贈ったの・・・」
「入れ歯を・・・」
「猟奇的な贈り物よね・・・私は歯医者だから・・・問題ないけど」
「・・・」
「とにかく・・・山岸氏は・・・金持ちにしておくのがもったいないくらいいいおじいちゃんだったわ」
「金持ちに対する偏見がひどいな」
柿崎は・・・淳子を訪ねる。
「三千万円の借金は・・・柿崎氏の資産運用のミスだったとか・・・」
「だますつもりがだまされたって・・・ことよ」
「あの人は・・・逝ってしまった」
「もう・・・帰らない」
「そして・・・入れ歯が残った」
「形見といえば形見だけど・・・所詮は義歯だもの」
「見せていただけますか」
白木の箱に収納された入れ歯・・・しかし・・・底には何かが隠されていた。
淳子はそれに気がついていなかった。
「そんなものになんの価値もないわ・・・」
「ところで・・・成功報酬は六千万でいかが・・・ですか」
「え・・・三十パーセント以上じゃない」
「しかし・・・愛に値段はつけられないでしょう」
「・・・?」
丸井は週刊誌に「六時間妻」のネタを売り込む。
「大変です・・・」と事務所に駆け込む丸井。
「これのことか・・・」
ワイドショーでは「六時間妻」が取り上げられ・・・淳子は「毒婦」としてバッシングされていた。
「誰が・・・こんなことを・・・」
「こうなったら・・・相続放棄をするしかない」
「えええ」とわざとらしく驚く丸井だった。
記者会見場。
「私は彼を愛していました・・・彼も」
「冗談じゃないわ・・・お父様が愛していたのは私のママだけよ」
倫子が食ってかかる。
そこへ・・・三老人が現れた。
「娘のくせに・・・滅多に顔を出さなかったくせに・・・」
「淳子ママは・・・毎日・・・山岸氏の世話を・・・」
「一番うらやましかったのは・・・入れ歯の手入れだよ」
「ちっとも嫌がらずに丁寧に・・・」
「臭いのにな・・・」
「俺たちはうらやましくてねたましくて・・・嘘をついてました」
「彼も私を愛していてくれたと思います」
「・・・」
「その愛に応えるために・・・私は遺産相続を放棄します」
「えええええええええええ」
「本気なの・・・?」と倫子。
「だから・・・婚姻関係は認めてください」と淳子。
「お義母様・・・」
抱き合う娘と義母だった。
丸井弁護士は三百万の小切手を入手した。
七夕の夜・・・柿崎は淳子を天体観測施設に連れ出した。
「ただ働きさせて悪かったわね」
「山岸氏は・・・星がお好きだったんでしょう」
「よく・・・知ってるわね」
「今日は・・・あなたに見せたいものがあります」
柿崎は望遠鏡で淳子に星を見せる。
「その星の名は・・・HtoJ20140707・・・山岸氏の秀雄のイニシャルはH・・・つまり山岸さんからあなたへの贈り物ということですな」
「2014年の七夕は・・・二人の思い出の夜よ」
「・・・でしょうね」
「入れ歯の下にはメモとキーが隠されていました・・・手にとってみればよかったのに」
「思い出して・・・泣いちゃうから」
「彼も不安だったんですよ・・・あなたの愛が本物かどうか」
「そりゃ・・・そうね・・・」
「でも・・・三千万円を損失したと言っても・・・あなたの態度は変わらなかった」
「・・・」
「それは・・・嘘だったんです」
「え・・・」
「メモには・・・謝罪の言葉がありましたよ・・・貸金庫の鍵の名義はあなたのものです」
「・・・」
「勝手に確認させてもらいました・・・現金で三億円・・・彼は運用に成功していたんですよ・・・成功報酬六千万円で・・・残り二億四千万円があなたの取り分でよろしいですか」
「二十パーセントは相場なの?」
「弁護士によりますね・・・」
現金六千万円をつみあげる柿崎弁護士・・・丸井弁護士と歯科医の水谷もうっとりである。
「お金の匂いって素敵・・・」
「萎えるね・・・」
そこへ河原井が現れた!
「淳子ママから・・・三千万円回収できたよ・・・だから・・・今日は利息分だけで勘弁してやる」
「え・・・」と驚く両手の花たち。
「六千万円じゃ・・・焼け石に水だけどな」
全額を持ち去る河原井だった。
「利子だけで六千万円って・・・いくら借金してんのよ」と水谷・・・。
河原井を追いかける丸井・・・。
「せめて・・・今月の生活費だけでも・・・残してくれませんか」
だが河原井は丸井の下半身を撫でおろすと・・・丸井が靴下に隠匿した三百万円の小切手を抜き取るのだった。
「私は・・・君の秘密も知ってるよ・・・これは口止め料としてもらっておくね」
立ちすくむ丸井・・・かわいいよ、丸井かわいいよである。
「ウシジマくん」も始るがこれはこれでソフトなダークサイドの物語らしい・・・。
関連するキッドのブログ→ドクターカー
→婚活刑事
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