家を売った後のことなんか知ったこっちゃありません(北川景子)一千万円おまけします(千葉雄大)捨てられた家と私(仲村トオル)
かかわりたくない人間というものがいる。
物騒な気配が漂っていることを背中が感じるのだ。
しかし・・・そういう気配に鈍感な人もいて・・・あるいは見て見ぬふりをして・・・結局、キャッチされてしまう。
危険な人物に関する情報の取り扱いに不備があったとしても・・・必ずしも責任問題には発展しない。
なぜなら・・・そんなことをすれば・・・政治が暴力に屈したことになるからである。
太平洋戦争の特別攻撃隊、オウム真理教の地下鉄サリン散布、秋葉原無差別殺人・・・日本人の独創性は世界にテロの見本を提示し続けるな。
小学生を狙ったり、障害者を狙ったり・・・そういうことが実際に可能という現実に対してのインパクトの強さ。
北朝鮮による拉致事件について・・・すべては運命だと語った作家がいたが・・・それは本当にその通りだと思う。
今日もまた・・・関東は地震に揺れている。
その日は近いのかもしれない・・・何万人・・・何十万人の死傷者が出るのかもしれない。
しかし・・・一千万都民の大半は生き残るのだ。
すべては運命と思う他ないのである。
もちろん・・・防災対策やテロ対策は必要だろう・・・だが・・・最後に残るのは運命に対する祈りだけだろう。
まして・・・美人の営業員に家を売りつけられるのは運命としか言いようがない。
で、『家売るオンナ・第3回』(日本テレビ20160727PM10~)脚本・大石静、演出・佐久間紀佳を見た。衣食住は人間の生活の基本である。人間が平等ではないと思い知るのもこの基本によるところが大きい。安普請というものがあって・・・ドアを閉めるだけで揺れる家に住んでいれば・・・鉄筋コンクリートの高層マンションは同じ人間の住まいとは思えない。専業主婦が市民権を得ていた時代・・・美味しい朝ごはんを食べる子供と・・・朝食抜きの子供では明らかに学力に差が出るわけである。物凄い高級ブランドに身を固めても醜いものは醜いし何も身につけていなくても美しいものは美しい・・・最後の方、少し意味が違うぞ。家を買ったり売ったりすることが夢のまた夢の人も・・・テレビドラマでそういう気分を味わうことはできるのだ。いつか・・・その日のために・・・見るがいい。ゴーッ!
テーコー不動産株式会社・・・新宿営業所売買営業課・・・屋代課長(仲村トオル)はそれなりに充実した日々を送っていた。しかし・・・異常な営業成績を示す・・・新たな営業チーフ・三軒家万智(北川景子)が人事移動してきたことで・・・不穏な空気を感じるのだった。もしかしたら・・・自分は・・・この地位を追われるのかもしれない。
三軒家が・・・本社から送り込まれた刺客だったら・・・どうしよう。
疑心暗鬼となった屋代課長は・・・先月の売上がゼロの庭野聖司(工藤阿須加)に三軒家の監視を命じるのだった。
無能な部下にそんなことを命じる屋代課長の無能が・・・匂い立つ・・・。
しかし・・・営業課のトップとして気を取り直し・・・「現地販売ウイーク」という営業企画に・・・チームワークで立ち向かおうと命ずる屋代課長・・・。
だが・・・三軒家チーフは・・・。
「営業は個人の努力次第です・・・私がすべての家を売ります」
「えええええ」
出る杭は打たれる社会だが・・・会社に利益をもたらす人材は打てない。
なにしろ・・・他人の給料分まで稼ぐ社員は無敵なのだ。
進退窮まる屋代課長なのである。
バツイチ独身の屋代課長にとって・・・売買営業課こそがマイホーム。
気分は家長なのである。
たとえ・・・営業成績が不振でも・・・家庭は平和でありたい。
そういう意味で・・・三軒家は・・・外部からの侵入者であり・・・危険なテロリストなのだった。
「現地販売」の物件は三軒。
それぞれに担当をつける屋代課長。
サンルーム付の超一流物件は・・・エースの足立聡(千葉雄大)と庭野。
外国人向けでゲストルームにバストイレのついた一流物件は・・・ベテランの布施誠(梶原善)と帰国子女の八戸大輔(鈴木裕樹)・・・。
建坪が五坪という三流の三階建住宅は・・・宅間剛太(本多力)と戦力外の白州美加(イモトアヤコ)である。
「私・・・サンルームを足立さんと売りたい」と主張するシラスミカだったが・・・足立に「その物件が売れたらきっと自信になるよ」と微笑まれ・・・その気になるのだった。
「私とチーフは・・・全体を統括する」
「統括とは・・・」
「みんなの面倒をさ・・・それとなく」
「私は・・・誰の面倒も見ません」
「しかし・・・部下の教育も・・・チーフとしての仕事だろう」
「私の仕事は家を売ることです」
「・・・」
三軒家を手元に置いて監視しようという屋代課長の目論みは崩れた・・・。
すでに・・・三軒家には・・・売却希望のアポが二件あったのである。
屋代課長は・・・スパイ庭野にチーフに同行することを命ずるのだった。
「一緒に連れてってください」
「何故・・・」
「家の売り方を勉強したいのです」
「・・・」
否とは言わない三軒家である。
三軒家にも・・・部下を育てる気持ちがあるのか・・・いや・・・無能なものにも使い道があると心得ているからだろう・・・。
三軒家の第一の顧客は・・・歯科衛生士の夏木桜(はいだしょうこ)だった。
物件は・・・夏木桜の思い出がいっぱいの部屋だった。
「これは・・・ゴミ屋敷」
「いいえ・・・この方は・・・思い出の品物を捨てられないタイプ・・・思い出が多過ぎて収納不能になっているのですね」
「・・・はい」
「しかし・・・このままでは・・・内見ができません」
「・・・」
「一時保管のためにレンタルスペースを確保しましょう・・・よろしいですか」
「おまかせします」
三軒家は床に落ちた一枚の写真を拾い上げる。
それは・・・幸せそうなカップルの写真だった。
「この方は・・・」
「別れたんです・・・」
それが・・・引越しの理由と見定める三軒家だった・・・。
三軒家の第二の顧客は・・・一戸建てからワンルームマンションに住み替え希望の保坂博人(中野裕太)だった。その顔を見て三軒家の顔に微かな驚きが浮かぶ。
お茶の間には秘されるが・・・博人こそ・・・桜の別れた恋人だったのだ。
捨てられない桜に対して・・・博人は・・・断捨離的なミニマリストだった。
日本人のメンタリティーには質素倹約から二つの方向性が生まれる。
ものを無駄にしないもったいないの心。
そして・・・あらゆる執着から逃れる世捨ての心である。
捨てられない女と何もかも捨てたい男の破局の後が「お引越し」なのであった。
もちろん・・・受け入れない、捨てる、こだわらないは・・・わびさびの精神や・・・一点豪華主義に連なるストイックへの傾斜である。
博人は広い家に家具らしい家具もなく一人暮らしだった。
「親も去り、兄弟も去り・・・この家も捨てようと決意しました」
「彼女も捨てましたか」
「捨てました」
「お客様に紹介したい物件があるので・・・今夜、内見いかがでしょうか」
すでに・・・売りこみ計画立案が成ったらしい三軒家だった。
庭野は・・・三軒家と行動を共にしながら・・・肝心なことが見えていないのである。
無能だからである。
しかし・・・それはあくまで「家を売る能力」を三軒家と比較した場合だ。
庭野にも「誠心誠意」とか「謹厳実直」とかあまり役に立たない能力はあるようだ。
けしてシラスのように「怠惰」でもなく布施のように「倦怠」でもない。
社会は「怠惰」に対しては批判的だが・・・「無能」に対しては優しい面もある。
ただ「生きているだけの存在」を「無用」だから「処分」することは許されないことなのである。
しかし・・・「存在」のもたらす「苦痛」に耐えきれず・・・「常軌」を逸するのはままあることである。
そういう人間を責める時・・・人はわりきれない「何か」を感じる場合がある。
会社に「家庭」を投影している屋代課長にとって・・・無能な庭野や・・・足手まといのシラスもかけがえのない存在なのだな。
中間管理職として・・・それが有能なのか無能なのかは意見が分かれるところだろう。
そして・・・家庭的に言えば会社の中で・・・・誰よりも働く女性は・・・屋代課長にとって・・・アレなのである。
「私と一緒に子供たちの面倒をみてくれ」はプロボーズの言葉なんだな。
屋代課長の妄想的にはそうなるのだな。
一方、エースの足立は亀のリクちゃんをこよなく愛するマダム(辺見マリ)に販売価格一億一千万円のサンルーム付物件を即金一億円で販売する。
屋代課長も「パパパパパーヤ」とフォローするのだった。
しかし・・・トイレ・バスルームが二つある外国人物件は・・・苦戦中である。
八戸の英語力も・・・ロシア人夫妻には通用しないのだった。
「ハロー」
「ロシアは世界で一番偉い、ドーピングしようが、他国を併合しようが思いのままだ」
「・・・」
「こんな物件、くそくらえだよ」
「ハラショー」
だが・・・「トイレと風呂がふたつある大家族用」と「セールスポイント」を変更した三軒家は素晴らしいインターネットの世界で情報を拡散させるのだった。
たちまち・・・「問い合わせの電話の嵐」である。
「明日・・・物件は必ず売れます」
「・・・」
「売ったのは布施さんでも八戸さんでもなく・・・私です」
蒼ざめる屋代課長だった。
こうなったら・・・行きつけのBAR「ちちんぷいぷい」のママ・珠城こころ(臼田あさ美)に逃避するしかないのだった。
昭和のホームドラマでは家庭に居場所のない夫はそうするものなのだ。
森繁久彌とか船越英二とかな。
そういうノスタルジーが投影されているよね。
「ちちんぷいぷいふぁいんふぁいん」
「僕の奥さんはねえ・・・土日に夫婦でショッピングにいきたかったんだよね・・・だから土日休みの男の元へ・・・家具と一緒に行っちゃった~」
「赤い靴はいてたんですね」
ムード歌謡から童謡へ・・・退行していく屋代課長だった。
運命の再会をする桜と博人。
「捨てられない女」と「捨てたがりの男」は心とはうらはらに体の相性は抜群らしい。
たちまち・・・情欲に点火するのである。
「あなたには・・・売りません」
「行こう・・・五階だろう・・・僕がついている」
「でも・・・」
「僕には神様のささやきか聞こえる・・・君と僕は結ばれる運命だ」
「だけど・・・私は捨てられない」
「大丈夫・・・僕がついている・・・きっと捨てさせてみせるよ・・・そしてこの部屋は僕が買う」
「ヒロくん・・・」
「サクラ・・・」
いや・・・結婚するなら売らなくていいんじゃないか。
「あの・・・これ・・・記念品のスーモじゃなかったスモーくんです」
庭野を無視して熱烈キスを監視する桜と博人。
何故か・・・凝視する三軒家。
単に・・・ターゲットを観察しているのかもしれないが・・・秘められた三軒家の心の中には「そういうこと」への関心が渦巻いているのかもしれない・・・。
「これで・・・よかったんでしょうか」
「作戦はまだ・・・始ったばかりです」
「え」
「馬鹿・・・だから庭野には家が売れないのだ」
「・・・」
翌日・・・愛し合う二人は・・・「捨てるもの」と「捨てないもの」を巡って喧嘩を始める。
「それは・・・ヒロくんと最初のデートの時の・・・それはヒロくんと最初のキスをした時の・・・それはヒロくんと最初に焼き肉した時の・・・それは運命の再会をした夜に不動産屋さんがくれたスーモじゃなくてスモーくん・・・」
「毎日が記念日か」
スピリチュアルな傾向の強い博人には・・記念品(物質)に拘る桜が我慢できないのだった。
博人が変な石を買わされる可能性は高いよな。
桜もな・・・。
本質的に似たもの同志だよな・・・明らかに依存体質だものな。
桜と喧嘩別れした博人の前に怪しいアラビアンな占い師が現れる。
「あなたの運命の色を示します・・・一枚、オープン」
スピリチュアルなもに弱い博人はカードを開く。
カードの示す色はブルー。
再会した桜の着ていたドレスの色である。
「それがあなたの運命の色・・・以上、オワリ」
もちろん・・・カードはすべてブルーなのである。
しかし・・・運命大好きな博人はたちまち暗示にかかるのだった。
明らかにある種の人々をおちょくっています。
売れ残った宅間とシラス担当の五坪の狭少一戸建て。
庭野にトラックで・・・「あるもの」を搬送させる三軒家。
「あるもの」の搬入を命じられたシラスは・・・屋代課長にSOSを発信する。
そして・・・博人は物件の内見にやってくるのだった。
「僕は・・・マンションを希望しているのに・・・」
「まずは・・・ごらんください」
一階はバストイレと三畳の小部屋。
そのミニマル(最小)な感じに心奪われる博人。
二階はキッチンのみ。
そして・・・三階の六畳間には桜本人と思い出がいっぱいなのである。
「ここで・・・精神的にはありのままのお二人が暮らすことが可能です。一階で博人さんは捨てまくり・・・三階で桜さんはためまくる。そして・・・二階のキッチンで肉体的な合体が刺激的に実行可能です」
「素晴らしい・・・精神世界の棲み分けと肉体的な合体・・・実に哲学的です」
(落ちた・・・)と確信する三軒家。
「いかがですか」
「買います・・・もちろん桜コミで」
「では・・・2980万円です・・・お二人の元の住まいも私が売ります」
屋代課長が現地に駆け付けた時には売買契約が成立していたのだった。
「宅間さんでもシラスでもなく・・・私が売りました」
三軒家の勝利を祝賀して響き渡る(Olé・・・スペイン語のGo)・・・。
「・・・」
この場合・・・三軒家が言うのは歩合としての営業成績の話である。
庭野や、宅間そしてシラスも肉体労働はしたが・・・それは固定給の範囲内なのである。
三軒家は給料泥棒を許さないのだ。
「でも・・・六畳間ではいつか・・・思い出があふれだすのでは」と危惧する庭野。
「家が売れた後の問題は自己責任です。私の知ったことじゃない。私の仕事は家を売ることです!」
かっこいいぞ・・・三軒家・・・各課に一台必要なので・・・量産化してもらいたいよね。
そして世界は働く三軒家タイプの奴隷になるといいよね。
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