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2016年8月10日 (水)

メガネと時計×2の人の顔について(波瑠)どういう表情をしたら正解なのかわからなくなっている君はかわいい(林遣都)狙い撃った男(横山裕)

辺境の王タンタロスは・・・息子のペロプスを神々の供物として捧げたことを主神ゼウスに咎められ・・・奈落(タルタロス)に落される。

神の裁きは・・・タンタロスの目の前に食物と水を置くが・・・タンタロスは食べることも飲むこともできないという刑罰に定まる。

殺そうと思っても殺せないもどかしさ・・・死のうとしても死ねないやるせなさは・・・神の呪いなのである。

身の置き所のない苦しみを・・・タンタロスの飢餓と呼ぶ由縁である。

人間の心のメカニズムについて・・・人は解明を試みるが・・・それは困難である。

動物実験や・・・障害者の研究によって脳における機能局在についてはある程度解明されているが・・・個々人の心の働きを解明するためには・・・膨大なデータの解析が求められる。

そして・・・基礎となるデータを得るためには・・・脳の解体が不可欠なのである。

一度、分解した脳を使用可能な状態に戻すことには無理があるのだった。

外科的な脳に対する処置によって・・・精神障害を緩和させる試み・・・前頭葉切除(ロボトミー)が20世紀に実施されたが・・・重大な副作用の顕在化により現在は「精神外科」そのものが廃れてしまっている。

そして、映画「カッコーの巣の上で」(1975年)を生んだのである。

一方で脳腫瘍の切除に関する医療技術は確実に進歩している。

外科手術以外にも定位放射線治療を行う放射線照射装置であるガンマナイフによればピンポイントでガンマ線を病変部に集中照射も可能である。

本編に登場する「携帯型の電磁波による腫瘍発生装置」は超技術であるが・・・電磁波による腫瘍の発生が証明できれば実現不可能なものではないと考える。

だが・・・その実用性を証明するためには・・・相当な動物実験が必要とされることは言うまでもない。

もちろん・・・軍事的な利用価値は高いため・・・以下省略。

で、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子・第5回』(フジテレビ20160809PM10~)原作・内藤了、脚本・古家和尚、演出・白木啓一郎を見た。感情は精神的なものと考えられがちだが精神もまた肉体から発生する物理的な現象であると考えられる。快感と脳内麻薬性物質との関係の研究は日々進捗している。「心配」もまた感情の一つである。それは「予見」と呼ばれる情報処理の結果、生じる肉体的な緊張と関連している。爆発音やサイレンの音、目の前に現れた猛獣、暗がりの中で恋人に肩を抱かれること・・・様々な刺激が人の心臓の鼓動を早め・・・不安な「気持ち」を生じさせる。はたして・・・警視庁刑事部捜査第一課の藤堂比奈子刑事(波瑠)は「心配」するのか・・・それとも「心配するべきだ」と「判断」するのか・・・すべては謎に包まれているし・・・その違いがわからないお茶の間の人々はかなり多いと予想される。

つまり・・・このドラマはかなり高尚なのである。

それはそれで潔いぞ・・・この程度の描写でクレームする人々は精神科を受診するべきだしな。

「私は目が見えないので世界から光を奪ってください」と主張しているのと同じだからな。

比奈子と東海林泰久刑事(横山裕)は五年前の「少女惨殺事件」と類似した変死体に遭遇する。

窓から吹き込む風で現場に散乱するキャンデーの包装紙が舞う。

比奈子は捜査資料により頭に叩き込まれた情報をチェックする。

東海林刑事にとっては・・・模倣犯による妹の殺害現場を想起させる光景だった。

厚田巌夫班長(渡部篤郎)率いる厚田班と片岡啓造(高橋努)が率いる片岡班が臨場する。

「遺体にキャンデーが詰め込まれていたことは非公開ですよね」

「そうだ・・・警察内部に犯人がいない場合・・・模倣犯である可能性は低い」

「遺体の腕にリストカットの痕跡があります・・・」と比奈子。

「被害者の身元確認の役に立つかもしれんな・・・周辺の心療内科を当たろう」

いつものように・・・興味深く遺体を見つめる比奈子を・・・東海林は無言で見つめる。

その眼差しには比奈子という存在に対する興味が浮かんでいるようだ。

「今回の犯人像の解析を・・・中島医師に頼みたいのだか」と片岡班長は厚田班長に提案する。

「いいんじゃないですか・・・彼は有能だ」と進言する東海林。

比奈子は疑問を浮かべる。

二人きりになった時に疑問を口にする比奈子。

「中島先生は・・・容疑者の一人ではないのですか」

「あれは・・・あくまで・・・奇妙な連続自殺に関してのことだ・・・情報は正当な捜査によるものではないしな・・・それに・・・怪しいのは中島先生より・・・早坂院長の方だろう・・・どちらにしろ・・・今は事件かどうかもわからない連続自殺の件より・・・殺人事件の解決が優先だ・・・」

「・・・」

比奈子は・・・連続自殺と殺人事件が関連している可能性を疑うが・・・それを口にはできない。

心療内科医の中島保(林遣都)と比奈子の交流は一種のプライベートな領域に属しているからである。

そして・・・中島より・・・テレビ番組に出演の際、「神の裁き」を口にして犯罪者の連続自殺を肯定した「ハヤサカメンタルクリニック」の早坂雅臣院長(光石研)が疑わしい点には同意できる。

帝都大学医学部の法医学教授・石上妙子(原田美枝子)は検死解剖の結果を報告する。

「推測される凶器の形状や遺体の状況は五年前に酷似しているわ」

「すると・・・五年前の犯人による犯行が高いな」

「ただ・・・気になる点もある・・・五年前より・・・殺し方が丁寧なのよ」

「快楽殺人者は犯行がエスカレートするのが一般的ですよね」と比奈子。

「単に・・・犯人の腕があがったんじゃないのか」

「・・・五年間・・・ずっと腕を磨いていたと・・・」

厚田班長と比奈子は中島に・・・犯人像の解析を依頼する。

「もし・・・五年前の事件の第一発見者となったことで精神的外傷などのストレスを感じているなら・・・無理強いはしません」

「大丈夫です・・・」

二人きりになったところで中島は囁く。

「僕のことを心配してくれたんですね」

「データを読みこんでいたのに・・・先生が第一発見者であることに気が付きませんでした」

「キャンデーに対する僕のパニック状態で・・・気がついたということですか」

「・・・」

「もう大丈夫です・・・それに僕にとって・・・あのことは・・・乗り越えなければいけない壁のようなものなのです」

部屋探しをしていた大学院生の中島は・・・死体を発見してショックで失神し・・・心のケアを必要とした。帝都大学の電子工学部に所属していた中島は・・・ケアを担当した早坂院長と出会い・・・心療内科医に転向したのである。

「先生は・・・あの事件の犯人を今までプロファイリングなさったことはないのですか」

「ありません・・・これから・・・じっくりと犯人と向き合うつもりです」

比奈子の中で目まぐるしい推測が渦巻くが・・・それを外見から伺うことはできない。

ただ・・・それを感じさせる演技力が波瑠にはあるらしい。

超絶的なテクニックだな・・・。

石上妙子は・・・比奈子たちに興味深い論文を発掘したことを告げる。

「電磁的刺激による・・・心のケア」である。

「どういう研究でしょうか」

「虐待による精神的外傷を・・・外科的治療で緩和するというものよ・・・もちろん・・・精神外科という廃れたジャンルに属するものなので・・・研究は頓挫したらしい・・・問題は・・・研究者よ」

研究者は早坂院長。そして共同研究者として中島医師が参加していた。

「電子工学の研究者だった中島くんは・・・装置開発を担当したらしい・・・」

「装置・・・」

「電磁的に・・・心をケアする装置よ・・・」

「そんなことが可能なのでしょうか」

「死体の専門家に聞かないで・・・」

遺体だけを解剖する外科医と・・・普通の外科医の最大の違いは・・・前者は失敗しても誰も殺さないという点にある。

つまり・・・普通の外科医は常に「患者を殺す恐怖」と戦っているわけである。

「そういう意味では・・・私は・・・臆病な医師と言えるのよ・・・逆に言えば・・・普通の外科医は毎日・・・人間を殺すかもしれない行為を平気でしていると言える」

「それは・・・死亡事故を起こす可能性がある・・・すべてのドライバーと同じじゃないですか」

「まあね・・・やはりあなたはそう考えるのね」

「・・・」

「とにかく・・・結婚相手として・・・中島くんは要注意よ」

「先生は結婚なされたことがあるのですか」

「一度ね・・・あれは面倒だったわ」

「面倒って」

「ハヤサカメンタルクリニック」に不審な男が現れていた・・・。

「早坂先生はお留守です」と受付嬢(小松春佳)ともめる男。

「どうかしましたか・・・」と中島が介入する。

「指示が欲しいんです」

「指示?」

そこへ・・・早坂院長が現れる。

「君は・・・」

「先生」

「とにかく・・・こちらへ・・・」

早坂院長は男を隠すように院長室に引き入れる。

「あれは・・・患者さんなの」と受付嬢に尋ねる中島。

「いいえ・・・見知らぬ人です」

「・・・」

中島の顔に院長への不信感が浮かび上がる。

東海林と比奈子は・・・早坂院長を訪ねる。

奇妙な連続自殺と早坂院長の関連を追及する二人・・・。

「五人の連続自殺者と・・・先生が深い関係にあったことは・・・偶然ですか」

「それは・・・偶然とは言い切れないだろうね」

「まさか・・・先生が自殺させてるんじゃないでしょうね」

「君は・・・潜入という言葉を知っているかね」

「潜入・・・」

「プロファイリングは統計学を基にした行動科学的分析だ・・・犯人像や犯人の行動の予測にはある程度有効だ。しかし、潜入は対象の意識化に潜って犯人と精神を同一化させる手法です。 相手が犯罪者であればより鮮明に犯行時の精神状態を把握することができるんですよ。つまり・・・分析者が犯人の心理そのものに同化したように・・・」

「それは・・・かなり危険なことではないのですか」と比奈子。

「もちろん・・・犯罪者の心理そのものを理解することは危険です。なにしろ・・・犯罪を肯定することにもなりかねない。分析者は充分に修練する必要があります」

「それで・・・犯罪者を自殺に追い込むことができるのですか」

「できます・・・しかし・・・それを実証することは不可能だ・・・」

「・・・」

「日本の医学界では・・・それが可能であることを認めていないから」

「あなたが・・・神の裁きを下していると」と東海林は斬り込む。

「私は・・・恥ずべきことは何もしていない・・・もしも・・・私が何か法的に問題がある行為をしているというのなら・・・証拠を持って出直したまえ・・・ふふふ」

「・・・」

引きさがる二人。

「東海林先輩・・・」

「魔法使いを逮捕することはできない・・・」

「・・・」

風に吹かれキャンデーの包装紙が舞っていた。

第一の事件の殺害現場。

比奈子は・・・少女の無惨な死体を見下ろす。

「あなたも・・・ここへ来ていたんですね」

中島が現れる。

比奈子はそれが夢だと自覚する。

「私が得たデータの中で最も興味深い事件ですから・・・」

「データか・・・ではあなたにはこの匂いや・・・彼女の叫びは感じられないのでしょう」

「キャンデーの甘い香りは想像することができます。死体から発する血の匂い・・・弛緩によって排出される体内の汚物の腐敗臭は何度も現場で体験しています」

「しかし・・・感情のないあなたには・・・殺された少女の叫びは聞き取れない・・・その哀しさ・・・口惜しさ・・・苦しさがわからない」

「・・・」

「それは・・・この世界を呪っているのです」

「先生・・・」

「ほら・・・犯人がそこにいます」

「比奈ちゃん」

比奈子は上位自我として精神を抑圧する亡き母・香織(奥貫薫)の声を聴く。

比奈子は夢から離脱するために・・・八幡屋礒五郎の七味唐辛子を手にする。

自宅のベッドで覚醒した比奈子は・・・中島に電話をする。

しかし・・・応答はない。

比奈子は中島が非常に危険な領域にあることを予見していた。

比奈子は一日中・・・中島に電話をかける。

その姿に新人鑑識官の月岡真紀(佐藤玲)は「恋する乙女」を感じるのだった。

しかし・・・「恋」という感情が・・・比奈子に存在するのかどうかは・・・謎である。

三木鑑識官(斉藤慎二)は「包装紙は五年間に買いためた形跡がある」と語る。

「連絡待ってます」

比奈子は恋人に送るように中島にメールを送信する。

「連絡できなくてすみません・・・」

中島からの電話があった。

「今日はメンタルクリニックに伺ったのですが・・・先生はお休みでした」

「明日・・・すべてが明らかになります・・・明日の朝・・・メールで住所を送信しますのでその場所を訪ねてください」

「先生・・・犯人に潜入したのですか」

「さようなら」

中島は早坂院長に罠を仕掛ける。

「先生は・・・彼を確保していたのですね」

「中島くん・・・」

「罪のない患者を・・・彼に与えるなんて・・・」

「神の裁きを・・・世間に認知させるために必要な処置だ・・・犯罪者のいない世界を招聘させるための尊い犠牲じゃないか」

「先生・・・それは僕に対する裏切りですよ・・・彼の居場所はわかっていますから」

「中島くん・・・」

早坂は・・・中島の元へと急ぐ。

しかし・・・久保の部屋には誰もいない。

中島から着信がある。

「一体・・・どうする気だ・・・彼はどうした」

「押入れの中です」

なだれ落ちるキャンデーの山。

「これは・・・」

キャンデー殺人事件の犯人・・・久保一弥(中林大樹)は甘い香りに誘われて現れた。

久保は早坂を刺した。

その腹をひきさく。

その手を床に釘付けにする。

「先生は一年かけて・・・彼を調整したようですが・・・僕は一晩で・・・充分でしたよ・・・あなたへの信頼を憎悪に書き換えることはたやすかった」

「愛を・・・憎しみにか・・・」

そして久保は・・・早坂の引き裂かれた腹に・・・弛緩した口腔内に・・・キャンデーを詰め込むのだった。

倉島敬一郎刑事(要潤)は比奈子からの体調不良の連絡を受ける。

「無理をしてはいけないぞ・・・」

その会話に・・・東海林は直感的に疑いを持つ。

(あの女・・・また単独行動を・・・)

厚田班長は・・・中島から・・・メールを受け取る。

「犯人像か・・・えっ・・・これが犯人本人だと・・・」

片岡班も別ルートから容疑者として久保を割り出していた。

「どうなってんだ」

現場へ急行し・・・早坂の死体を発見する刑事たち・・・。

「おっさん相手でもいいのかよ・・・」

「異常嗜好だな・・・」

その頃・・・比奈子は養護施設に勤務する・・・元刑務官の壬生(利重剛)に会っていた。

「あなたとは一度お会いしていますね・・・藤堂さん・・・」

「あなたは・・・」

「早坂先生は・・・性善説を信じていらっしゃった」

「・・・」

「人間は誰もが生まれついて善良な心を持っている・・・生育する環境が・・・悪を生むのだと」

「それは割と普遍的な考え方ではありませんか」

「早坂先生は・・・潜入という名の・・・洗脳で・・・人格改造ができると信じていらっしゃいました・・・悪に染まった精神を・・・浄化できるというお考えです。しかし・・・それには限界があった。心を開かない相手には無効です」

「・・・」

「そこで・・・電子工学の天才だった中島先生に電磁波による脳機能の一部破壊を提案したのです」

「閉ざされた心・・・生理的な防衛機能の破壊ですね」

「そうです・・・早坂先生は・・・脳の一部を破壊すれば犯罪者が心を開き・・・その罪を悔み・・・善導できると」

「・・・」

「しかし・・・設計者の中島先生は知っていた・・・脳機能の腫瘍化による停止で殺人衝動が・・・自己破壊衝動へと転換されることを・・・」

「自分で自分を殺すようになると」

「殺したい気持ちと死にたい気持ちは似ているでしょう。人を殺すことに変わりないですから。まさに神の裁きだ・・・私は早坂先生より・・・中島先生を指示しています・・・あいつらはみんな死ぬべきだ」

「しかし・・・それでは・・・」

「中島先生は・・・今日・・・すべてを清算するとおっしゃってました」

その時・・・厚田班長からの着信がある。

「早坂院長が殺された・・・人手が足りないんだが・・・体調はどうだ」

「中島先生は・・・」

「中島先生とも連絡がつかない」

「第一の犯行現場です・・・」

「え」

「犯人は現場に戻るのです・・・原点に・・・」

比奈子は走る。

まるで恋人の元へと急ぐ乙女のように・・・。

中島と久保は五年間・・・借り手のいない殺人現場にいた。

「君は・・・どうして・・・彼女を殺したんだ」

「小さい頃から・・・動物を解剖してきました・・・いつか人間を解剖してみたい・・・そう思い続けて大学を卒業し就職した・・・その記念です」

「それからどうした・・・」

「いつもいつも・・・キャンデーの甘い香りを嗅ぐ度に・・・あの日のことを思い出しました・・・性的興奮を覚え・・・自慰をする・・・それだけで満足していたのです・・・それを早坂先生・・・早坂が・・・」

「君を唆したんだね」

「ええ・・・思い出だけでは・・・虚しいと・・・今を生きろと・・・そうです・・・素晴らしかった・・・むせるようなあの・・・汚れた温もり・・・」

中島は腕時計に仕込まれた電磁波発生機を作動させる。

そこに比奈子が到着する。

「先生・・・ここで何を・・・」

「よく・・・ここだとわかりましたね」

「夢の中で・・・先生と会ったんです」

「それは・・・素敵な偶然だ」

「この女は・・・警察・・・あんた・・・どういうつもりだ」と激昂する久保。

「殺ればいい」

久保の怒りが喜びに転化する。

比奈子見る目に欲望の火が灯る。

「そうだね・・・我慢することはない・・・殺したいのに殺さないなんて馬鹿げてる」

比奈子は中島を見つめる。

比奈子は・・・戸惑いの表情を選択する。

中島は微笑んだ。

久保の顔に怯えが浮かんだ。

久保は見た。

自分を殺そうとする自分の姿を。

殺意は自殺衝動に変換され・・・久保の精神は分裂する。

「殺したい・・・自分自身を・・・」

久保はキャンデーを頬ばった。

ナイフで自分の腹を引き裂く。

思わず制止しようと足を踏み出す比奈子。

しかし・・・比奈子を羽交い締めにする中島。

「ちゃんと見て・・・犯罪者が自らの手で・・・自分を捌くところを・・・」

「中島先生・・・」

「僕には聞こえる・・・被害者の叫びが・・・復讐の祈りが・・・」

「・・・」

久保は自分の手に釘を刺しこむ。

「ああああああ」

「僕は復讐者になった・・・そして・・・感じた・・・快感を・・・犯罪者たちを殺す喜びを」

「中島先生・・・」

久保は着実に自分を殺し終わった。

「そうだ・・・僕は・・・犯罪者になっちゃったんだ・・・でも忘れないで・・・あなたの手はまだ清らかだ・・・だから・・・さようなら」

拳銃自殺を図る中島・・・しかし・・・駆けつけた東海林が・・・窓の外から中島の手を狙い撃ちにする。

「拳銃自殺の時はこめかみじゃなくて・・・口に咥えないと・・・死にそこなう可能性が高い」

虚無の海を漂う比奈子。

厚田班長が部屋に侵入する。

「藤堂・・・どういうことだ」

「中島先生が・・・やりました」

厚田は中島を確保する。

「緊急逮捕するぞ」

「・・・」

「中島先生・・・不思議なのですが・・・」

「・・・」

「あなたのその顔は見たくなかったと思うべきだと・・・」

「やはり・・・思うべきなんですね」

放心したように表情を失う比奈子・・・。

とりつくろうことができない・・・比奈子の素顔である。

比奈子は・・・どんな顔をすればいいのか・・・判断に迷っていたのである。

超技術による自殺衝動の誘発を実証することは困難だった。

人体実験ができないからである。

「罪に問うにしても・・・犯人隠匿ぐらいだからねえ・・・」

デスクで厚田課長はぼやく。

「彼は・・・しかるべき施設に入院ということになった」

比奈子は神妙な顔をした。

「どんな人間も犯罪者になる可能性はある・・・俺はそれがこわくて子供を作れなかった」

「班長は・・・結婚されていたのですか」

「あれは・・・面倒だったな」

「面倒って・・・」

自動販売機の前で・・・東海林は・・・早坂の言葉を思い出していた。

「初対面で・・・コーヒーに七味唐辛子を入れるという行為で・・・彼女は奇妙な女性であるという初頭効果・・・印象付けることができる・・・」

「おつかれさまです」

挨拶する比奈子に東海林は要求する。

「一度・・・試させろよ」

「体をですか」

「七味だよ」

比奈子は素直に七味を投入する。

「うわ・・・まずっ」

東海林は比奈子に興味を感じる。

目の前にいるのは常識の通じない・・・何か・・・奇妙な生き物なのだ。

比奈子はいつものように平常心を装っていた。

関連するキッドのブログ→第4話のレビュー

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