カネゴン殺し(波瑠)カネゴン殺しだって(横山裕)カネゴン殺しですね(林遣都)ガヴァージュ(強制給餌)だよ(渡部篤郎)
カネゴンは「ウルトラQ」(1966年)に登場する怪獣である。
金の亡者である男子小学生が不思議な繭に引きこまれ変身した怪獣で・・・主食は「お金」である。
人間に対してお金をガヴァージュ(強制給餌)する機械を開発した職人を演じるのは「柔道一直線」(1969年)や「刑事くん」(1971年)でおなじみの桜木健一だった。
昭和の香りがするよね・・・。
いろいろと・・・「とんでもない展開」のこのドラマだが・・・なんとなくしみじみとした味わいがある。
被曝者の中には「原爆投下の責任」を問い、誰かに「謝罪してもらいたい」気持ちも生じるだろう。
しかし・・・矛盾は人類の宿命である。
熊を殺すためには猟銃が必要な場合があるし・・・爆弾かかえて飛び込んでくる相手には原爆投下もやむなしと考えることもできる。
共食いを続ける兇悪な種である人類はいっそ滅びた方がいいという考え方もあります。
お金を食べないと「腹へったよ~」と嘆くしかないカネゴンを可愛いと感じるのはひもじさというものを知らないからだと言われて困惑したことがあります。
で、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子・第6回』(フジテレビ20160816PM10~)原作・内藤了、脚本・古家和尚、演出・宝来忠昭を見た。「ハヤサカメンタルクリニック」に勤める心療内科医師・中島保(林遣都)が電子工学の天才で・・・超技術による「脳機能調整腫瘍発生機」を発明していたことが明らかになった前回・・・刑事ドラマはSFミステリとなって・・・お茶の間から大量な脱落者が心配される今日この頃だが・・・まあ・・・どうせリオ五輪のドサクサにまぎれているからな。そもそも・・・お茶の間の大半は「感情のない人間」というものをイメージすることも難しいだろうからな・・・「発達障害」とか「茫然自失」とか「統合失調症」とかとは・・・レベルが違う話なのである。そもそも・・・感情のない知能が思考できるのかという話だ。感情と知能は別物なのか・・・どうか。それについて考えるだけであっという間に一週間が経過してしまうほど・・・面白い主題なのである。とんでもないよねえ・・・。
とんでもない発明をする異常な人間が登場したために・・・この世界にはそういうものに対応する国家の施設が設定される。「精神・神経研究センター」である。
表向きは単なる研究所だが・・・実際は・・・異常者の隔離矯正施設なのである。
そういうものがあると「人権問題」が浮上するわけだが・・・そういうものがないために「障害者施設で大量虐殺が発生」するとも言える。
「象徴」が「お言葉」を「人間」として「主体的」に発すると「矛盾」が吹きだすのが「制度」というものである。
だが・・・まあ・・・「ことなかれ主義」で曖昧に・・・事態を収拾するのが・・・大人というものなんだな。
だから・・・ひっそりと・・・本当は・・・「そういう施設」があったっておかしくないのだ。
「なぜ・・・例の機械を作ろうと考えたのですか」
「私は・・・兇悪な犯罪者が更生することが許せなかったのです・・・ひどいことをしておいて・・・心から後悔して反省するなんて・・・ずるいでしょう」
「中島先生・・・もう一度・・・例の機械を作ってもらえませんか」
「お断りします・・・あれは・・・作ってはいけないものでした」
「なにか・・・お望みがあれば・・・国家予算で対応しますが」
「私には・・・もう・・・欲しいものはないのです。私は生ける屍なのです」
「気が変わったら・・・いつでもお申し出ください」
国家の闇に潜む裏役人たちは・・・微笑んだ。
相当な国家予算をつぎ込んだ巨大な闇の施設の白い部屋で・・・中島は・・・脳内に発生した腫瘍の成長を待つ。
実行犯ではない・・・中島は・・・自分を殺すことはできないが・・・脳腫瘍のレベルが上がれば・・・病死することは可能なのだ。
「殺人衝動への抑圧を失った人間は檻の中にいるべきだ」と中島は理性的に判断したらしい。
警視庁刑事部捜査第一課の藤堂比奈子刑事(波瑠)は・・・交際中の噂があった中島の逮捕によってショックを受け・・・落胆している演技をする。
人間関係の把握力に問題のある倉島(要潤)は愛車「シノブ」とのツーリングの成果である「風光明媚な記念写真」で比奈子にアプローチする。
「元気が出ました」と笑顔で演技する比奈子だった。
東海林(横山裕)は「発砲の件」で監察官(小須田康人)に事情聴取されるが・・・厚田巌夫班長(渡部篤郎)による弁明で処分なしとなる。
東海林の処分について気にかける演技をする比奈子に本心を告げる自動販売機前の対話。
「落ち込んでいるのか」
「そう見えますか」
「見えるが・・・嘘臭い気もする」
「・・・」
「俺はお前のことが・・・少しわかってきた・・・」
「・・・」
「お前の素顔・・・最初から・・・俺には不審だった・・・」
「・・・」
「お前は・・・」
しかし・・・事件が発生し・・・東海林の心情吐露は先送りされる。
三木鑑識官(斉藤慎二)は「キャンデーの次はコインです」と捜査員に告げる。
防災公園で発見された男性の死体は下半身を土中に埋められていた。
「ここは・・・災害用のマンホールトイレです」
「肥溜に埋められたわけか・・・」
「死因は・・・窒息死でしょうか」
「それは解剖の結果待ちですな」
「百円玉は腹部にも達していますね」
「おそらく内蔵を突き破って腹腔内に露呈しています」
新人鑑識官の月岡真紀(佐藤玲)は蒼ざめる。
「腹の皮膚ごしに百円硬貨が見える死体を見ていると・・・恐ろしさを通り越して笑いたくなってきます・・・頭がおかしくなりそう・・・」
「同感です」と冷静に応じる比奈子だった。
「両手は焼かれていて指紋の検出は困難です」
「身元の特定を妨害するつもりか・・・」
「あるいは・・・犯人がなぶり殺しを楽しんだか・・・」
比奈子は思わずつぶやく「興味深い・・・」
中島逮捕の現場に居合わせた厚田班長も比奈子の異常性に気がついていた。
比奈子はまるで「犯罪を引きよせる魔性」のように感じられる。
厚田は比奈子の「人としての心」の存在を疑うのだった。
「藤堂刑事・・・」
「はい・・・」
「俺とペアを組め」
厚田は比奈子に命じる。
しかし・・・夏の聞き込みは・・・厚田班長には厳しかった。
「ちょっと冷たいカフェオレでも飲むか」
「シラスミカですか・・・まだ聞き込み始めて一時間ですよ」
「あまり・・・気を張り詰めるな・・・リラックスした方がいい場合もある」
二人はゲームセンターから現れ転倒した老人を救助する。
「狙ってたぬいぐるみをゲットできてスキップしたのが失敗だった」
老人・稲富信吾(浜田晃)を自宅まで送る二人の刑事。
稲富の家は「十八家」という名のシェアハウスだった。
身寄りのない老人たちが集まり、共同生活をしているのだと言う。
「気分は十八歳なのよ」と芙巳子(角替和枝)・・・。
他に女性は奈津子(今本洋子)、医師の西沢(大石吾朗)、そして職人だったという大吉(桜木健一)・・・。
比奈子は振る舞われた西瓜に七味唐辛子をふりかける。
「最近の若い人は西瓜に七味をかけるのかい」と驚く芙巳子・・・。
「こいつだけです・・・」と厚田班長。
そこへ・・・巡査の原島(モロ師岡)が通りかかる。
原島は東海林の交番勤務時代の上司だった。
「しかし・・・街の情報屋を使うことを教えたのは私の失敗でした」
「・・・」
その頃・・・東海林は聞き込みという名の「情報屋(不破万作)との面談」を行っていた。
「あんたには・・・もう情報は流せない」
「なんだと・・・」
「それに頼みたいことがある」
「ふざけるな・・・」
「なに・・・大したことじゃない・・・最近の事件の捜査資料と・・・藤堂比奈子という警察官の情報だ」
「藤堂の情報・・・何故だ」
「情報の使い道なんて知らねえよ・・・誰かが知らないこと知っている・・・そこに価値があるだけだ・・・あんたも俺と関係していることを・・・警察幹部に知られるのはまずいだろう」
情報屋は・・・東海林に強請を仕掛けるのだった。
闇社会で・・・「藤堂比奈子に関する話」が価値を持つ・・・東海林はそのことに興味を抱くのだった。
比奈子は夢の殺人現場を訪れる。
マンホールにはまり百円玉を食った男の死体・・・そこに比奈子の亡き母親・藤堂香織(奥貫薫)が現れる。
「かわいそうに・・・」
「お母さんにこんな場面はみせたくなかった」
「それに・・・こんなことをした人もかわいそう」
「しかし・・・何も感じなかったかもしれません・・・喜びをかんじていたのかも・・・世界にはそういう人間も存在します・・・だから・・・私は・・・あの時」
香織は七味唐辛子の缶を取り上げる。
「これをいつも持っていてね」
「お母さん」
「これからもずっと手放さないで・・・」
「進め!比奈ちゃん」は香織の遺言である。
比奈子は・・・ガン、ガチョウ、ペキンダックなどに対する強制飼養の用具を検索する。
清水刑事(百瀬朔)は口を開けて爆睡している。
その口に・・・薄い金属かプラスチックの漏斗を挿入し百円玉を注ぎこむ真似をする比奈子。
「何をしている・・・」と東海林が見咎める。
「百円玉を詰め込む方法を・・・」と笑顔を取り繕って答える比奈子。
「表情が間違ってるんだよ・・・」
「東海林先輩・・・」
「しばらく・・・お前とは口を聞きたくない」
東海林刑事の中で膨らむ・・・比奈子への警戒心。
しかも・・・東海林は仲間を売る必要に迫られている。
情報提供の期限は一週間なのである。
それまでに・・・比奈子と裏社会との接点を探る必要があったのだ。
二人の意志疎通には問題があった。
そこに第二の死体発見の情報が入る。
第二の死体は女性で高架下の側溝から発見される。
「次はドブにはまっているのか・・・」
「今度は・・・指紋が残っています」
「これは・・・凌辱だな・・・」
「なんらかの報復でしょうか・・・」
「快楽殺人の可能性はいつだって残るがな・・・」
「藤堂刑事・・・」
「はい・・・」
「お前さんは・・・石上教授とコンタクトしてくれ」
厚田に命じられ・・・「萌オさまカフェ」で帝都大学医学部の法医学教授・石上妙子(原田美枝子)と合流する比奈子。
「中島くんは・・・釈放されたわよ・・・でも・・・特殊な施設に軟禁されたの」
「軟禁なんて・・・この国では認められていないのでは」
「認可されなくても存在するものなんて・・・意外とあるものよ」
「・・・」
「彼は・・・犯罪捜査への協力をしてくれるらしいの・・・」
「え」
「今回の捜査資料送ったら・・・早速、回答があったわ」
「それは・・・情報漏洩にはならないのですか」
「警察内部で・・・情報やりとりしているだけだからね」
「つまり・・・超法規的措置なのですね」
「そういうこと」
中島は・・・「連続硬貨詰め込み殺人事件の犯人は・・・自己主張が激しいこと」を分析していた。
「殺人現場には・・・犯人からのメッセージが込められている」と中島は指摘するのだった。
「つまり・・・犯人は被害者を処刑している」と結論する中島・・・。
比奈子は・・・巡査の原島から・・・災害公園が・・・稲富信吾の経営していた町工場の跡地だと聞き出していた。
第二の被害者に残された指紋から・・・被害者が山嵜ちづるという詐偽の常習者であることが分かる。
そして・・・第一の被害者が山嵜と共犯関係にあった首藤泰造であることが特定される。
二人は地面師・・・不動産関係中心の詐欺師・・・であった。
「二人は・・・特定指定団体の荒神会をバックにしていたらしい」
「マルボー(暴力団)がらみかよ」
「口封じかな」
「見せしめだとしても・・・ヤクザがあんな手のこんだことするか・・・」
「詐偽の被害者の線がありますな」
「とすると・・・次のターゲットは・・・」
荒神会の浦沢会長(すわ親治)はヤクザの親分であることを孫娘に隠していた。
そのために・・・娘の広香(小橋めぐみ)の家で孫の恵美(早坂ひらら)と会う時はボディガードを遠ざけていたのである。
娘の家からの帰り道・・・拉致された浦澤会長は「リッチマン殺人事件」の第三の被害者となるのだった。
事情聴取のために広香の家を訪れた比奈子は見覚えのあるぬいぐるみを発見する。
「近所のおじいちゃんやおばあちゃんに・・・恵美は人気がありまして・・・」
比奈子はすべてを察するのだった。
十八家に向う比奈子を・・・東海林は尾行するのだった。
「おや・・・刑事さん」
「あなたたちを逮捕に来ました」
「おやおや・・・ついに見つかってしまいましたか」
「あなたたちは・・・不動産詐欺事件の被害者の方々だったのですね」
「そうですよ・・・あいつらに・・・土地や建物・・・そして家族まで根こそぎ奪われたものの集いです」
「司法は無力でしたか」
「だまされて金を取られて被害者が自殺したって・・・犯人は死刑にならないでしょう」
「死刑だって一瞬だもの・・・犯人は苦しいとも思わない」
「最高に苦しんで地獄に送り込んでやらなきゃね」
「どうして・・・手掛かりを残すような真似をしたのですか」
「なんだかねえ・・・楽しくなってきちゃったのよ」
「あいつらが・・・苦しんで苦しんで死ぬのを見るのは最高だったわ」
「そんな・・・自分たちが・・・こわくなっちゃったのかもねえ」
「あさましいものねえ」
「なにしろ・・・次に誰を殺すか相談していると・・・」
「笑いがとまらなくなっちゃうのよねえ」
「私たちから家族を奪っておいて・・・孫を可愛がってるなんて許せない」
「だけど・・・そうしたら・・・あんなかわいい恵美ちゃんだって・・・殺しちゃうかもしれないでしょう」
「だってねえ・・・私の孫は息子夫婦と心中したんだもの」
「ほら・・・おそろしいでしょう・・・私たち」
老人たちは朗らかに笑った。
「皆さんのそんな顔は・・・見たくありませんでした」
しかし・・・そう言う比奈子の顔からは表情が失われていた。
東海林刑事は通報した。
警視庁の刑事たちは現場に急行した。
老人たちは大人しく逮捕されるのだった。
東海林は比奈子と対峙する。
「俺は・・・お前と言う人間が・・・恐ろしい」
「・・・」
「お前は・・・さっき・・・人殺しと同じ目をしていた・・・お前は何者なんだ」
「私は刑事です・・・まだ」
「・・・」
東海林の顔に苦渋が浮かぶ。
しかし・・・比奈子は無表情だった。
厚田刑事は比奈子に命じた。
「お前はクラリスに・・・いや・・・中島先生とのパイプ役になってもらう・・・それが大丈夫じゃないといけない時に大丈夫な・・・あまり正常とは言えないお前の心のために・・・よかれと思ってな」
比奈子は白い部屋の中島に面会した。
「また・・・あなたに会えるとは思っていませんでした」
「私もです」
「僕はこっちに来てしまいましたが・・・あなたはまだです・・・それをお忘れなく」
「・・・私は境界線が曖昧になってしまって」
「結局・・・境界線は・・・やるかやらないか・・・その事実だけですよ」
「・・・」
「もちろん・・・実行可能性の高さというものもあるでしょう・・・拳銃がなければ射殺はできないし・・・原爆がなければ投下はできない・・・道具というものはすべてそういうものです・・・釣り竿があれば釣りが可能だ・・・しかし・・・釣りをしない人間もいるし・・・なくても釣りはできる・・・そして・・・必要に迫られ・・・決断すればどんな人間もこっちへ来ることはできるでしょう・・・」
「・・・私も・・・いつか」
「あなたは・・・例のナイフをいつ用意したのですか」
「高校生の時に」
「で・・・誰のために使うつもりだったのです」
「父です」
中島と比奈子は・・・見つめ合う。
その頃・・・情報屋は何者かに襲撃されていた。
「おい・・・期限まで・・・まだ時間が・・・やめてくれ・・・あ」
人間の体には血液が流れている。
それが体外に流出する時・・・人間は闇を感じるのだ。
世界が終わる暗闇の刻印の時・・・。
カネゴンの胸の残高メーターがゼロを示す。
スリリングで最高に奇妙な人間を演じるヒロインの演技力に圧倒されるよなあ。
この役を演じられる実力があるのは・・・現時点では・・・彼女だけじゃないのか・・・。
まあ・・・わからない人にはわからないだろうけどなあ。
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