母親のような売春婦になることを誰が願うのだろうか(山田孝之)
戦いに敗れたものは惨めである。
昔なら敗れた屈辱のみならず・・・あらゆるものを奪われるわけである。
領土を奪われ、家族を奪われ、命を奪われたりするわけだ。
五輪の敗者だってCM契約を打ち切られたりするわけである。
勝者に惜しみない拍手を贈るのも楽しいが、敗者の無様さを堪能することもひとつの喜びだ。
銀メダルの表彰台でずっと俯き続けるもの。
銅メダルを首からはずすもの。
一度も勝てずに涙が止まらず嗚咽をもらすもの。
みっともない醜態をさらすものたちを嘲笑するのも人間、同情するのも人間だ。
生きながら地獄に誘いこまれるものたちの姿は恐ろしいが・・・様々な教えを秘めている。
なにしろ・・・勝者であり続けることは・・・至難の業だからである。
ほとんどの人間は結局のところ負けるのだから。
で、『闇金ウシジマくん Season3・第4回』(TBSテレビ201608100128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。哺乳類の子供たちは・・・親の養育を必要とするのが自然である。鳥類も親鳥は雛を養育する。不思議なシステムである。一体、誰がそんな設計図を描いたのだろうかと思わずにはいられない。人間もまた・・・その制度の中に・・・子供を保護する姿勢を示す。しかし・・・それぞれの個体は・・・それぞれの個性で自然の掟に反逆を試みる。特に人間は・・・世界よりも自分を愛することが正しいと認識できる生き物である。その醜さに吐き気を催すほどに・・・己の欲望に忠実な人があなたの隣で微笑んでいるかもしれない。
他人がどれほど幸福になろうと・・・自分には関係ないのである。
それが・・・間違っているわけではないのが・・・面白いんだな。
登場人物たちの複雑な人間関係の紹介もほぼ終了し・・・いよいよ地獄図も本番である。
★ウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)が営む闇金融「カウカウファイナンス」の上客である一流企業に勤務する川崎(ムートン伊藤)・・・売春婦のテルミ(卯水咲流)を買春して・・・行為を動画記録したことが発覚し・・・テルミの情夫である若琥会系のチンピラ・マサくん(濱崎一輝)に十万円を脅し取られるのだった。
「最低」と軽蔑する受付嬢・エリカ(久松郁実)・・・。
「本当だねえ・・・俺はそういう行為が許せないね」・・・今回、エリカを狙っているらしい柄崎(やべきょうすけ)である。
「なんです・・・そのわざとらしい同調は・・・」と高田(崎本大海)は呆れる。
「で・・・あんたどうするつもり?」と淡々と応じるウシジマくん。
「十万円・・・ジャンプで・・・」
「あんた・・・上客だから・・・アドバイスをしてやろう」
ウシジマくんは秘策を授けるのだった。
「なんで・・・あんな奴を助けるんですか」
「チンピラに食いつかせたら・・・俺たちのしゃぶる分が減るだろう」
★喫茶店で・・・テルミとマサくんに金を払う川崎。
「もう・・・十万円頼むわ」
「会社に盗撮野郎ってチクるよ」
「今の・・・恐喝ですから」
「何・・・」
「カメラ・・・まわってるし録音もしましたから」
「てめえ・・・」
ウシジマくんの指示通りにカメラを持って遁走する川崎である。
★テルミの部屋で反省会が始る。
「まったく・・・一般人に弱みを握られるって・・・バカじゃないの」
「うるせえな・・・十万円の臨時収入で充分だろう」
そこへ・・・乱入するウシジマくんのライバル企業・闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)と手下の村井(マキタスポーツ)だった。
「何よ・・・あんたたち・・・」
「若琥会から・・・組に内緒でチンケなシノギをしている掟破りがいないかどうか・・・監視役を頼まれてるのよ」
「見逃してください」
「とりあえず・・・ゲームをして成功したら十万円から一割戻してやるよ」
「ゲーム?」
マサくんの指と指の間に刃物を突きさすゲームで・・・プレイヤーは犀原だった。
一回目で失敗する犀原・・・。
「ぎゃああああああああああああああ」
血まみれのマサくんを残し・・・十万円を持ち去る犀原と村井だった。
★★隣の部屋のけしからん体の希々空(小瀬田麻由)のために・・・「カウカウファイナンス」への返済に追われる生活保護受給者の小瀬(本多力)・・・。
十日で五割の利子はもちろん違法な金利なので返済の義務はないわけだが・・・いろいろとこわいので返済を続ける小瀬なのだった。
どのくらい暴利かと言うと・・・希々空の借金は五万円で・・・十日ごとに二万五千円の利子が発生する。
月額およそ七万五千円の利子・・・しかも返済が滞れば・・・雪だるま式に利子は膨らんでいく。
この地獄から脱出するためには次の返済日までに元金と利子をあわせた七万五千円を用意するしかないのだが・・・五万円借りちゃう人間に・・・それは至難の業なのである。
そんな簡単な罠から逃げることができないからこそ・・・底辺の住民なのである。
★★切羽詰まった小瀬は・・・ニート仲間のめしあ(野澤剣人)に相談する。
「この間の起業の話だけど・・・」
「僕は・・・老人相手の仕事を考えている」
「老人愛手?」
「今度・・・NPO法人に参加して・・・学ぼうと思うんだ」
「NPO法人?」
「君も参加してよ」
「・・・」
働く気も起こらない人間が・・・起業できるものか・・・どうかという話である。
★★★パチンコに魂を奪われた結城恵美子(倖田李梨)は娘の美奈(佐々木心音)に母子売春を強要する。最初は・・・客に足元を見られた恵美子だったが・・・千円しか値打ちのない女が娘とセットなら数万円で売れることに味をしめ・・・荒稼ぎを続けるのだった。
素晴らしいインターネットの世界では「話題」となり・・・「背徳感覚」を求める客が次々と予約してくるのだった。
当然・・・客の中にはより凌辱的なプレーを求めるものがあり・・・落書きプレーや拘束プレーさらには浣腸プレーまでとエスカレートしていく。
当然、凌辱されるのは娘の美奈が中心であり・・・母親と男たちに犯され。汚され続ける美奈の心は荒廃して行くのである。
「私・・・もう嫌だ」
「何言ってんだよ・・・お金がいるんだろう・・・あんたが言い出したことじゃないか」
「・・・」
「しっかりしておくれよ・・・ママはあんたがいなけりゃ・・・生きていけないんだよ」
「千円女だから・・・」
「そうだよ・・・ね・・・頼むよ・・・もっとどんどん3Pやって稼ごうよ」
子供が親を選べるシステムがもう少し積極的に導入されるべきである。
恵美子にとってお腹を痛めて産んだ美奈は便利な道具に過ぎないのである。
美奈はそのことに気が付き・・・二重の意味で苦しめられていた。
底辺であえぐ人間であること。
底辺であえぐ人間の娘であること・・・。
しかし・・・救いの手はどこからも伸ばされない。
ただ奇妙な金髪の男(金田誠一郎)が・・・闇に落ちた母娘を見つめていた。
★★★★ファッション雑誌「ノマド」の編集者である上原まゆみ(光宗薫)にはゆっくりと人間の皮を着た悪魔である神堂大道(中村倫也)の魔手が迫っていた。
女子会で婚約指輪を披露するまゆみ・・・恋人だったハシくんこと橋本(ジェントル)の浮気相手だった女友達のユカ(三浦葵)にも優越感を覚えるのだった。
占い師の勅使川原先生(三田真央)にも「幸福感」を報告するまゆみ・・・。
しかし・・・明らかに神堂大道と関係している勅使川原は破滅を意味する「死神」のカードを引く。
雨の日・・・買い物中のまゆみの母親・広子(武藤令子)の自転車をパンクさせた神堂は欲求不満だった広子を巧に誘惑し関係を結ぶ。
そして・・・母親を通じて・・・神堂に胡散臭さを感じる父親の上原重則(名倉右喬)に高価なパターを贈るのだった。
結婚後もガールズバーで働き続ける妹のみゆき(今野鮎莉)は常連客の菅原(礒部泰宏)との関係も続けている。
二人を盗撮した神堂は・・・みゆきとも性交渉を持つのだった。
みゆきの夫であるカズヤ(板橋駿谷)は公務員でありながらマリファナ(大麻)の常用者だった。
妻のみゆきの浮気の相談に乗る形で・・・カズヤとの交流を深める神堂。
ある夜・・・まゆみは・・・妹の夫と神堂から・・・大麻パーティーに誘われる。
「でも・・・それって・・・違法でしょう」
「お義姉さんだって・・・時々・・・飲酒運転するでしょう」
「だけど・・・」
「人身事故を起こす可能性のある飲酒運転と・・・親しい人との喜びのひとときをもたらすこと・・・どちらが罪が深いと思いますか・・・」と神堂はまゆみを唆す。
まゆみは・・・興味本位の気持ちもあり・・・自ら・・・禁止薬物に手を伸ばす。
母親や妹と性交渉を持つ男と婚約していることを知らない女・・・。
すでに・・・悪魔の虜囚となっていることに人は意外と気がつかないものだ。
男日照りの編集長(小嶋理恵)と飲む約束をしていたまゆみの前に神堂が現れる。
「顔が見たくなってしまいました」
「どなた・・・」
「知り合いです」
まゆみは編集長の配慮で神堂とのデートに予定を変更する。
まゆみが去った後で冷たい顔となる編集長・・・。
まゆみは熱に浮かされた顔で神堂を見る。
「なぜ・・・婚約指輪をしていないのですか」
「職場では・・・まだ報告していないの・・・結婚式の日取りとか決まらないと・・・」
不満げな神堂の表情にあわてて指輪を嵌めるまゆみ・・・。
その指を瓶で強打する神堂・・・。
「痛・・・何をするの・・・」
「指輪を外すことが出来ないように・・・してあげたのです」
血を流し腫れあがるまゆみの指・・・。
神堂はついに悪魔の素顔を現すのだった。
まゆみは・・・その顔に・・・すでに心を奪われている・・・。
★デリヘル経営者の利子集金にやってきたウシジマくんは・・・勅使川原先生と遭遇する。
「あんたもデリヘル嬢?」
「近所に住んでいる占いの先生だよ」とやり手婆・・・。
「俺も占ってよ」
「占いを信じない人は占いません」
「へえ・・・そういうこと言うんだ・・・」
底辺とは無縁だった・・・まゆみの人生に・・・ついにウシジマくんが足を踏み入れる。
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