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2016年8月24日 (水)

メチルビオローゲンはパラコートの別名です(波瑠)飲んだら死ぬぞ(横山裕)もう一人誰かいます(林遣都)

主人公の殺意の存在を追いかける物語である。

人間の心を描く難しさは・・・意識や感覚、意志や理性、欲望や感情という「心の機能」が共通理念として確定していないことである。

人はそれぞれの「心」で「心」を考える。

「感情のある人間」にとって「感情のない人間」は想像することが難しい存在である。

そもそも・・・「感情」とは何かと定義することさえ・・・本質的には困難なのだ。

感覚器はある程度・・・刺激に対する結果を・・・共通認識の土俵に乗せる。

砂糖は甘く・・・塩は辛い・・・と舌は感じる。

しかし・・・甘いのと辛いのと・・・どちらが好きかは・・・個人的な問題になってしまう。

時には甘さと辛さの区別がつかない人間も存在するだろう。

たとえれば・・・「感情のない人間」とは砂糖と塩の区別がつかない味音痴のようなものだ。

喜びと悲しみの区別がつかないわけである。

砂糖と塩がどちらも白い粉にすぎないと感じる人を想像するのも難しいかもしれないが・・・。

ある意味・・・その人には喜びも悲しみもないのである。

そういう人間をあなたは想像することができますか。

で、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子・第7回』(フジテレビ20160823PM10~)原作・内藤了、脚本・古家和尚、演出・大内隆弘を見た。衝動が感情と言えるのかどうかも微妙である。性的欲望が感情と言えるのかどうかもわからない。人間の精神は成長の過程で様々な抑圧により・・・本来の活動を制御されていると言える。空腹になれば食物を摂取するが・・・時には量を制限する。消化活動が終了すれば排泄するが・・・時には排泄を制限するわけである。男性が性器を女性の性器に挿入し射精する行為は・・・甚だしく制限を求められるのである。その制限ができない人間は・・・正常ではないと推定される。生物としての人と社会的存在である人間の境界線には暗くて深い川があり・・・人はそれを心と呼ぶのである。

あるがままの心というものは・・・実は量りしれない恐ろしさを秘めている。

多くの人間が常に意識しているわけではない・・・そのことを・・・このドラマは描こうとしているのであろう・・・まあ・・・なかなか・・・大変だけれどねえ。

どうしても・・・理解するための共通認識に依存しなければならないからねえ。

そんなものは・・・本当はないのにねえ。

小学生だった比奈子(藤澤遥)は・・・父親の大切にしていた時計を分解する。

父親にその理由を問われた比奈子は答える。

「あなたを分解する代わりに・・・時計を分解しました」

父親は娘の答えに言葉を失う。

「それが両親の離婚の理由の一つになったと考えています」

警視庁刑事部捜査第一課の藤堂比奈子刑事(波瑠)は「精神・神経研究センター」に反社会的傾向を理由に隔離されている心療内科医師で電子工学の天才・中島保(林遣都)に自らの生い立ちを語る。

「母が父と別れたのは・・・父の浮気と母に対する家庭内暴力が主な要因だったと推定しています。幼い私は父親に対するわだかまりのようなものを表現するべきだと考えてそのような言葉を発したのでしょう。それは言うならば後付けの理屈で・・・私は時計を分解することを望んでいたと言えます」

「つまり・・・時計を分解するのが楽しかったんですよね」

「私の意志が時計を分解するべきだと強く判断したのです」

比奈子の特殊な心を・・・比奈子自身が懸命に表現しようとしていることを・・・中島は疑わない。

「あなたは・・・ナイフをいつ用意したのですか」

「高校生の時に・・・人間を殺すべきだと判断したのです」

「なぜ・・・父親を対象に選んだのですか」

「父親の存在はどうでもいいものでした・・・他の人間と比較して対象として適当と判断したのです」

「しかし・・・実行しなかった」

「職業として警察官を選ぶべきだと判断した結果・・・警察官に任官した直後に実行することを選択しました。完璧な計画性に従い、実行するべきだと。しかし・・・その日・・・母が突然の心臓発作で病死したのです。母は私が警察官になることを喜んでいたと判断した私は・・・万が一の場合を想定して・・・計画を中止しました」

中島は・・・比奈子の奇妙な精神を分析する。

そして・・・彼女の語るエピソードの欠落した部分を推定する。

しかし・・・事件が発生し・・・中島と比奈子の対話は中断した。

「助けてくれ・・・殺される」

情報屋の藤川(不破万作)からの電話を受け・・・現場に急行した東海林刑事(横山裕)は刺殺された藤川の遺体を発見する。

臨場した厚田巌夫班長(渡部篤郎)は東海林刑事に事情を聴取し・・・事件の捜査から東海林を外すことを決断する。

東海林と藤川の関係を知る片岡班長(高橋努)は疑惑の眼差しを隠せない。

東海林は比奈子についての疑惑を感じる。

殺された藤川は・・・東海林に比奈子についての情報を求めていたのだ。

比奈子の統計的には異常と言える精神構造を・・・「仮面で本心を隠している」としか理解できない東海林にとって・・・比奈子は心に闇を潜ませた怪物のようにも感じられるのだった。

(お前・・・一体・・・何なんだ)

藤川殺害事件の捜査が難航する中・・・新たな不審死が発生する。

同一薬物による連続殺人事件の発生である。

「使用された薬剤は二十五年前に製造が中止された・・・除草剤ビオローグと特定された」

「パラコートの別名であるメチルビオローゲンにちなんだネーミングですね」

「毒性が強く・・・多臓器不全を引き起こすパラコートは・・・自殺できる農薬の代名詞のようなものだからな」

「とにかく・・・何者かが自殺者に対してビオローグを提供している可能性がある」

「自殺幇助・・・ですか」

東海林がデスクワーク要員となったために・・・倉島刑事(要潤)と聞き込みを開始する比奈子。

捜査の途中で立ち寄った交番で・・・制服警官の原島巡査(モロ師岡)を知る比奈子だった。

原島の子供は投身自殺の巻き添えで死亡・・・現場を目撃した妻は子供の後を追うかのように自殺した。

原島は複雑な心情を吐露する。

「生きたくても生きられなかった人間がいるというのに・・・自ら命を粗末にするような人間の気持ちがわかりません」

比奈子は複雑な原島の気持ちにどのような表情で応じるべきか・・・判断に迷うのだった。

「やりきれないわねえ・・・想像しただけで・・・嫌になっちゃう」

検視結果を聴取するために帝都大学医学部の法医学教授・石上妙子(原田美枝子)を訪問した比奈子は・・・気分転換と称して石上教授から食事に誘われる。

感情豊かに振る舞う石上教授だったが・・・比奈子の異常さにはほぼ無関心である。

知っているのに知らないふりをしているのか・・・単に鈍感なのが微妙な演技なのだった。

いつもの「萌オさまカフェ」の店長・西連地麗華(伊藤麻実子)から・・・従業員の伊集院きらり(松本穂香)について相談を受けた比奈子。

自殺の虞があると聞いた比奈子は・・・麗華とともにきらりの自宅に向う。

麗華の説得できらりは自殺を思いとどまるが・・・比奈子は・・・室内にビオローグの瓶を発見する。

きらりは素晴らしいインターネットの世界で自殺志願者の集うサイトの一つ「AID」にアクセスして・・・ビオローグを入手していた。

「自殺を思いとどまるようにと・・・説得してくれるのですが・・・最後は臓器移植について仄めかし・・・捨てるのならその命をください・・・ということで・・・楽に死ねるクスリを送ってくれるのです」

「この薬を飲んで死ぬと・・・相当に苦しみます」

「え・・・そうなのでございますか」

自殺についての捜査資料を検索した比奈子はいくつかの発見をする。

服毒自殺ではないのに・・・現場にビオローグが残されていた事例の存在。

そして・・・AID関係者が・・・正確に未発表であるビオローグによる死亡の件数を把握していた形跡。

AID関係者が・・・警察内部にいる可能性が生じたのである。

西連地麗華と交際中の三木鑑識官(斉藤慎二)は・・・自殺志願者を装って・・・ビオローグ配布者の正体を突き止めようと素晴らしいインターネットの世界にアクセスする。

一方・・・東海林は・・・藤川の携帯電話から・・・謎の人物の着信を受ける。

「比奈子の正体を教えてやろう・・・あいつは物騒なものを隠しているぞ」

東海林は比奈子に対する疑いから・・・比奈子の私物を秘密裏に検査するのだった。

それは・・・犯罪です。

そして・・・件のサバイバルナイフを発見する東海林・・・。

東海林の比奈子に対する疑いは深まるのだった。

厚田班長は比奈子に捜査資料を持って中島に意見を求めるように指示する。

「この間の話の続きですが・・・」

「・・・」

「あなたは意図的に隠していることがありますね」

「・・・」

「あなたにナイフを贈った人は誰なんですか」

「その人は私がやるべきだと思ったことをやるべきだと言いました」

「その人とは・・・高校生の頃に出会ったのですか」

「その人は高校生の私にナイフをくれたのです」

「・・・」

ビオローグ配布犯に潜入プロファイリングを実行する中島。

中島からの着信は・・・きらりの危機を示唆していた。

「犯人には・・・自殺者に対する憎悪が感じられます。そして自殺すると確信した相手が自殺しなかった場合に・・・おそらく恐怖を感じています。犯人にとって・・・自分がコントロールした自殺は・・・神の裁きに匹敵するもので・・・その神威から逸脱するものは許されざる裏切り者となるはずです。犯人は・・・そういう人間を処刑している形跡があります・・・」

比奈子はきらりの自宅へと急行するのだった。

東海林の携帯に・・・死んだ藤川からの着信がある。

「比奈子は・・・また単独で動いているぞ・・・」

その頃・・・三木鑑識官は素晴らしいインターネットの世界でAID信者を煽りすぎ・・・拉致されて監禁されていた。

新人鑑識官の月岡真紀(佐藤玲)は蒼ざめる。

捜査員たちは三木の監禁場所を特定するが・・・長時間放置された三木は脱水状態にあった。

しかし・・・どこからともなく現れた麗華はスポーツドリンクを携えていたのだった。

「え・・・」

「誰・・・」

三木を抱きしめる麗華に唖然とする刑事たち。

自殺者を憎悪する原島巡査は・・・きらりを拳銃で脅迫していた。

「死ぬと言ったのに・・・何故・・・薬を飲まなかった」

「この薬は・・・楽に死ねない薬ではありませんか」

「そうだよ・・・自殺者が楽に死ぬなんて・・・とんでもないことだ・・・命を粗末にするような奴は苦しんで死ぬべきなんだよ」

「おことわりします」

「撃たれたいのか・・・撃たれたくないなら・・・飲め」

そこへ・・・比奈子が到着する。

「命を粗末にしているのは・・・あなたも同じです」

「何を言っている・・・」

「あなたは・・・捨てる命ならください・・・と書きこみましたね・・・それは自分に殺させろと言っているのと同じです」

「ふざけるな・・・俺は・・・天罰を与えているんだ」

「それは・・・単なる復讐です」

「お前も・・・死ね」

激昂した原島巡査は比奈子に襲いかかる。

比奈子はナイフを取り出そうとするが・・・鞄の中にナイフはなかった。

原島巡査は比奈子を組み敷く。

「それで・・・俺を逮捕するつもりか」

「私は殺し合いに来たのです・・・そして負けました」

「なんだと・・・」

そこへ・・・東海林刑事が到着する。

「東海林・・・」

「くそくらえだ・・・誰が・・・あんたの後継者になんか・・・なるかよ」

「東海林・・・」

東海林は原島巡査を逮捕した。

「藤堂・・・何をやっているんだ・・・」

「・・・」

「お前を刑事とは認めない」

「私は・・・」

東海林はナイフを示した。

「これは・・・俺が預かっていた・・・そして・・・代わりにレコーダーを仕込んでおいたのさ」

「・・・」

「もう・・・言いのがれできないぞ・・・お前は・・・犯人を逮捕しないで・・・殺そうとしたんだ」

比奈子は同意した。

東海林の心にやるせない思いがこみあげる。

「藤堂・・・お前はもう・・・警察官を辞めろ」

人間の発する言葉は・・・どのようなニュアンスを伴っていも・・・すべて命令なのである。

比奈子もまた・・・あらゆる行動を・・・自分に命ずるシステムに過ぎないのだ。

そして・・・すべての人間がそうなのである。

その頃・・・人肌をこよなく愛する佐藤都夜(佐々木希)は魔性の微笑みを浮かべている。

ドラマは人の心の暗闇に真っ向から突入していくようだ・・・。

はたして・・・東海林に比奈子を探らせる謎の人物は・・・誰なのだろうか。

警察関係者でないとすれば・・・父親しかいないわけだが。

ないがしろにされた上に殺されそうになっているのに・・・娘を溺愛しているお父さんなのか。

父親に対応する未登場の人間となると比奈子の初恋・・・そういうものがあるとして・・・あるいは初体験の相手ということになるが・・・東海林や中島を超えるイケメンゲストが必要になってくる・・・男とは限らんがな。

人間を殺すべきなのか・・・殺すべきではないのか。

比奈子の葛藤は続く・・・。

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