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2016年8月19日 (金)

百合子さんの絵本(薬師丸ひろ子)陸軍武官・小野寺夫婦の戦争(香川照之)ヒトラーを愛した男(吉田鋼太郎)

小野寺夫妻は実名で登場だが・・・駐ドイツ大使の原島浩は仮名である。

そういう配慮がどこを出発してどこに着地していくのか・・・よくわからない。

歴史的事実として・・・小野寺百合子は日露戦争における旅順攻囲戦の歩兵第6旅団長・一戸兵衛の孫娘であり、小野寺信はスウェーデン公使館附武官で昭和十八年(1943年)には陸軍少将に昇進している。

そして、駐ドイツ特命全権大使を務め、日独伊三国同盟締結の立役者として知られるのは大島浩陸軍中将である。

極東国際軍事裁判でA級戦犯として終身刑の判決を受けた大島は昭和三十年(1955年)に釈放され、昭和五十年(1975年)まで生きた。

大島は「アレキサンダー大王やナポレオンのような天才戦略家としてのヒトラーに傾倒していた」と言われる。

登場人物に同じようなことを言わせて・・・仮名にする意味がよくわからないが・・・おそらく、実名にすると物騒な気がしたスタッフがいたのだろう。

敗戦国で敗戦ドラマを創作するということは・・・戦後これだけの時が過ぎても本当に大変なことなのだなあ。

で、『終戦スペシャルドラマ・百合子さんの絵本~陸軍武官・小野寺夫婦の戦争~』(NHK総合20160730PM9~)原案・岡部伸、脚本・池端俊策、演出・柳川強を見た。ベートーヴェンの交響曲第9番の第4楽章で歌われる「歓喜の歌」が様々な場面で挿入される。音楽・千住明である。千住明ファンならそれだけでドラマを楽しく堪能できる。リオ五輪のために「ウシジマくん」が一回お休みの谷間でのレビューとなったが・・・そもそもオンエアが早すぎるのである。大人の事情かっ。しかし・・・リオ五輪の陸上・女子5000m予選(第2組)で転倒したハンブリン選手とダゴスティノ選手の寄り添う姿は涙腺を刺激する麗しい光景だったが・・・何故か、このドラマの小野寺信(香川照之)・百合子(薬師丸ひろ子)を連想させる。二人は・・・エリート軍人と才媛の夫妻だったが・・・大日本帝国の悲劇に対してあまりにも無力であり・・・よろけながらよりそいつつ人生を完走していくのである。

歌人・佐佐木信綱(加藤剛)の歌会に出席した百合子は・・・。

ましろなる花にむかいて我が心清く優しくなりし心地す

・・・と詠んだ。

佐佐木は「素直でいいが・・・光あるところに闇があることも心に留めてほしい」と評する。

「闇・・・」

東京女子高等師範学校附属高等女学校専攻科を卒業したお嬢様である百合子は首を傾げる。

昭和十五年(1940年)・・・大日本帝国は日中戦争の渦中にある。

四歳の末っ子の上に三人の子供のいる母でもある百合子。

明治三十九年(1906年)・・・百合子の生まれた年に書かれた「ニルスのふしぎな旅/セルマ・ラーゲルレーヴ」の英語版(原作はスウェーデン語)を和訳して子供たちに読み聞かせるほどの語学力を持っている。

夫の小野寺大佐はスウェーデン公使館の駐在武官に着任している。

スウェーデンは武装中立政策を取り、第一次世界大戦、第二次世界大戦の両大戦に参加していないために・・・各国の外交戦の舞台となっていた。

昭和十四年(1939年)にヒトラー率いるドイツ軍がポーランドに侵攻し、破竹の勢いでノルウェー、フランスを占領している。

昭和十六年(1941年)の新春・・・百合子は夫の同僚である臼井(千葉哲也)の勧告で三人の子供を妹に預け、単身赴任中の夫の元へ・・・末っ子の龍二だけを連れて出発する。

白夜の国、スウェーデンの首都・ストックホルム。

百合子は欧州の香りに心騒ぐ。

しかし・・・小野寺大佐は諜報戦の最中にあった。

百合子の仕事は・・・小野寺大佐の得た情報を暗号文に替え・・・参謀本部に打電することだった。

突然・・・間諜(スパイ)の妻となった百合子は・・・機密保持のために・・・夫婦の会話は蓄音機の大音量や・・・野外に限られるという夫の態度に戸惑うのだった。

「一体・・・どうなっているのです」

「日本は米国との戦争を考えている」

「勝てるのですか」

「勝てない」

「そんな・・・」

「だから・・・正確な情報を得て・・・参謀本部に伝えなければならない」

陸軍参謀本部は海軍軍令部とともに・・・米国ならびに英国との開戦を考えていた。

そのために・・・独軍による英国侵攻のしかるべき時期の情報を求めていたのだった。

小野寺大佐は情報獲得のために・・・元ポーランド軍の情報将校・ペーター・イワノフ(イヴォ・ウッキヴィ)を事務員として雇用していた。同盟国ドイツの占領下にあるポーランド人を保護することは危険を伴っている。

イワノフは・・・独軍がソ連国境に棺桶を集積している「事実」を掴んでいた。

それは独軍がソ連に侵攻する兆候を示している。

「しかし・・・独ソ不可侵条約があるのではありませんか」

「条約なんて・・・破るためにある・・・というのが欧州の常識なのだ」

だが・・・参謀本部は・・・小野寺の「独ソ開戦情報」を無視した。

参謀総長は杉山元陸軍大将である。昭和天皇に「日米戦争は三ヶ月で勝利する」と確約した男で・・・敗戦後の昭和二十年(1945年)9月12日に司令部にて拳銃自決する。杉山夫人は杉山の死を確認すると自決した。

スウェーデンでは夏至祭が行われる。

花の冠をかぶる娘たちが歌い踊る華やかな宴・・・。

百合子は美しい女神の描かれた絵本を入手する。

夏至祭りの際中・・・バルバロッサ作戦が発動し・・・独軍はソ連に侵攻する。

そして・・・十二月・・・予定通りに大日本帝国は米英と戦闘状態に突入するのだった。

恐ろしい殺戮が続く間・・・スウェーデンは平和だった。

ある日・・・駐ドイツ大使の原島浩(吉田鋼太郎)の訪問を受ける百合子。

「ご主人の情報の評判が悪いのです」

「評判・・・」

「日本に不利な情報ばかりを打電している・・・ドイツがソ連軍に負けているとか」

「それは事実ではないのですか」

「ヒトラーが指揮するドイツ軍が負けるなどということはありえないのですよ」

「何故ですか」

「ヒトラーは天才だからです・・・ナポレオンに勝るとも劣らない」

「ナポレオンは・・・最後は敗北したのではないかしら」

「・・・」

「奢る平家も久しからずと言うではありませんか」

「夫婦揃って・・・とんだ敗北主義者だ」

昭和十七年(1942年)、スターリングラード攻防戦を契機にソ連軍の反攻作戦が開始される。翌十八年、十万人のドイツ軍がソ連軍の捕虜となり、クルクスの戦いで大戦車戦に敗北したドイツはソ連に押し返される。

連戦連敗を続けるイタリアは連合国に降伏。

昭和十九年(1944年)に連合軍はノルマンディー上陸作戦を開始する。

大日本帝国の本土にも本格的な空襲が開始される。

日本からの潜水艦による通信で・・・「欲しがりません勝つまでは」という娘の習字を得た百合子は焦燥感に震えるのだった。

「今日・・・龍二の目の前で・・・イワノフの部下が射殺されました・・・もうイワノフとの関係を断つべきではありませんか」

「それはできない」

「子供を巻き込まないでください」

「とっくに・・・巻き込まれているのだ・・・それに国が滅びたら・・・子供たちがどうなると思う」

「・・・この絵本を・・・子供たちに送ってください」

「伊号潜水艦が祖国に戻れるがどうか・・・わからん・・・しかし・・・頼んでみるよ」

大日本帝国の敗色は濃厚だった。

昭和二十年(1945年)2月4日、クリミア半島のヤルタ近郊でアメリカ、イギリス、ソ連による首脳会談が行われた。ソ連の対日参戦の密約がなされたのである。

イワノフによる諜報活動により・・・その事実を掴む昇進して少将となっている小野寺。

「ドイツ降伏後・・・日ソ中立条約を一方的に破棄しソ連が大日本帝国に宣戦布告する」

だが・・・この情報を参謀本部は無視した。

陸軍参謀総長は梅津美治郎だった。

3月10日、東京大空襲である。

スウェーデンは平和だった。

世田谷に残した子供たちのことを案じ震える百合子。

5月8日、ドイツは降伏した。

梅津美治郎はソ連が極東に大兵力を移動しはじめていることを知っていたが・・・東郷茂徳外務大臣によるソ連を仲介して和平交渉を探るという方策に反対はしなかった。

重光葵元外相の模索したスウェーデン政府の和平仲介工作は中止される。

日本は・・・まもなく対日戦争を開始する予定のソ連に・・・和平交渉の仲介を頼むと言う・・・極めつけの愚行を開始したのである。

8月6日、広島に原爆投下。

8月8日、ソ連の対日参戦。

8月15日、大日本帝国は無条件降伏。

梅津美治郎は極東国際軍事裁判で終身刑の判決を受け、服役中の昭和二十四年(1949年)に獄中死する。

昭和二十一年(1946年)・・・小野寺夫妻は帰国した。

「百合子さんの絵本」は子供たちに届いていた。

「でも・・・スウェーデン語なので・・・読めませんでした」

百合子は娘を抱きしめた。

小野寺少将は・・・巣鴨プリズンに拘留された。

MPに見据えられつつさしいれの本の包みをおもむろに解く

「なかなかに深みがありますな」と百合子の歌は評価された。

小野寺夫妻は戦後を生きた。

百合子は「ムーミンパパの思い出/トーベ・ヤンソン」の翻訳者となった。

「私たちも・・・ムーミンパパのような冒険をしたわね・・・小野寺閣下」

「そして・・・負けた」

「そのことを語るべきではないかしら・・・」

小野寺は出版社の企画する座談会に出席する。

軍人や官僚たちは・・・「あの戦争」を振り返る。

小野寺は・・・「貴重な情報」が無視されたことを指摘する。

しかし・・・敗残者たちは・・・すべては「仕方がなかった」と結論付けるのである。

小野寺は「虚しさ」を感じる。

平和の時代の「歓喜の歌」が二人を包み込む。

小野寺信は昭和六十二年・・・1987年まで生きた。

小野寺は百合子は平成十年・・・1998年まで生きた。

そして・・・世界は今も美しく・・・平和と戦争で混沌としている。

関連するキッドのブログ→妻と飛んだ特攻兵

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