思いがけない告白をされること(桐谷美玲)好きだから好きだと言ってなぜ悪い(山﨑賢人)雨あがりの東京タワーは濡れているか(菜々緒)
月並と言えば・・・褒め言葉ではないわけだが・・・そうしたのは正岡子規だという説がある。
月並の本来の意味は月例で・・・毎月行われることである。
俳句にも月例会があり・・・そういう「会」で生まれる「伝統的な俳句」を批判して・・・俳句を革新しようとする正岡子規が「月並な句」と表現したわけである。
つまり・・・平凡でつまらないと子規が言ったから・・・月並みは褒め言葉ではなくなったということだ。
それに対して・・・「ベタ」と言う言葉はある程度、反逆していると言える。
もちろん・・・ベタは平凡でつまらないとも言えるが・・・ベタは誰にもわかりやすくおもしろいとも言えるわけである。
「そんな陳腐な言い回しは私のプライドが許さない」は「ちかえもん」の決まり文句だが・・・常套句というものは馴染みがあって成立するベタなものなのである。
斬新さには・・・難解さがつきまう。
わかりやすいと月並だ・・・。
表現者は・・・この矛盾に立ち向かうわけである。
ベタな恋愛ドラマが・・・斬新かつ面白いこと・・・。
広島に原爆が落ちたことは善なのか悪なのか・・・迷わない人は幸いだ。
2020年の東京オリンピックでオープンウォータースイミング(競泳10㎞マラソン)が東京湾で開かれた場合の放射能汚染問題とか・・・核兵器による抑止力のない世界のことも気がかりである。
それでも若者たちは恋をして地球は回って行くのだ。
もう・・・何を言ってるかわからんぞ・・・。
わかる人にだけわかってもらいたい。
ベタから逃避する場合の決めゼリフかっ。
で、『好きな人がいること・第6回』(フジテレビ20160815PM9~)脚本・桑村さや香、演出・田中亮を見た。月並であることはお気楽である。たとえば・・・両親の精子と卵子の結合によって生まれた子供は一夫一婦制度の社会において月並なのである。もちろん・・・月並だからといって父親がテロリスト、母親がギャンブラーなら月並とは言えない場合がある。とにかく・・・出生の秘密がある場合は・・・隠すというのがベタな展開である。しかし、情報公開が主流の時代には・・・医師ががん患者に対して「ステージ4」ですねと告知することは珍しいことではなくなっている。実子と養子を差別しないためにも・・・「養子」だと告知することは・・・だからといって「実子」と分け隔てなく接しますよという誓いのために必要だという流れである。
そういう意味で・・・店の経営権を譲渡してまで・・・「実の兄弟ではない」ことを隠そうとする登場人物の心は・・・「異常かもしれない」という時代になっているわけである。
つまり・・・「出生の秘密」を告知することがベタなのか・・・しないことがベタなのか・・・非常に判定しにくい今日この頃なのです。
もちろん・・・いやあ・・・ずっと兄弟だと思っていたのに・・・急に血縁がないと言われるのは嫌だなあ・・・と思う人がいても問題ないです。
さらに母親だろうと父親だろうと兄弟姉妹だろうと他人だ・・・という考え方もあります。
出生の秘密は・・・ホームドラマではベタですが・・・恋愛ドラマでは・・・恋人同志が兄妹がベタで・・・恋人の兄弟が血縁ではないというのは・・・変化球ですが・・・それと恋愛関係ないだろうという気分も生じますな。
斬新さを狙って死球にならないことを祈るばかりでございます。
憧れの先輩・柴崎千秋(三浦翔平)に誘われ、千秋の経営する海辺の町のレストラン「Sea Sons」でパティシエとして働くことになった櫻井美咲(桐谷美玲)・・・。「江ノ島花火大会」で千秋に告白することを決意した美咲だったが・・・千秋の元カノである高月楓(菜々緒)の事情を知ってしまい・・・敵に塩を送る善人ぶりで・・・失恋する。しかし・・・千秋の弟でカリスマ・シェフの夏向(山崎賢人)が現れて・・・「俺がいるから我慢しろ」と言うのだった。
「あれはドリカムの涙目で季節はずれの花火につきあってくれる的なものよね」
「ドリカムなんて聴かない・・・引用するとイロイロアレなご時世だしな」
「だから・・・同情してくれたんでしょう」
「バカに同情するほどバカじゃないぜ」
「え・・・」
「自分で兄貴と元カノのヨリを戻す手伝いしておいて・・・ヨリが戻ったから落ち込んでいる奴はバカだと言ってる」
「悪かったわね・・・バカで」
「いらつくんだよ・・・」
「バカだから・・・」
「お前が落ち込むことがだよ・・・」
「なんでよ」
「お前のことが好きだからに決まってるだろう」
「何よ・・・それ・・・自分が好きな人が他の人にふられて落ち込んでいるのが嫌だってこと」
「・・・はっきり言うなよ」
「えええええええええ」
予想外の展開に・・・戸惑う美咲である。
なにしろ・・・恋に不慣れな設定なのである。
もちろん・・・美咲にとって・・・夏向は相手に不足があるわけではないのだが・・・昨日まで好きだった人の弟を・・・簡単に受け入れることは・・・いろいろと差しさわりがあると考えるタイプである。
尻が軽いと思われたくない乙女心が発動するのだった。
そういう乙女心はベタなんだよな。
尻軽女は浮気相手にはもってこいなんだけどな。
だからだろっ。
千秋は結局・・・「辛い思いをさせてしまった楓を放ってはおけない」と・・・交際復活を報告する。
案の定の結末だが・・・美咲は顔を洗わないわけにはいかないのだ。
涙を隠して出直しである。
三男の柴崎冬真(野村周平)は「美咲ちゃん、告白するつもりだったのに・・・兄貴が楓さんとやり直すことになったのは・・・ショックだろうな」
「え」と驚く千秋。
「またまた・・・知ってたくせに・・・兄貴だって・・・半分くらい受け入れ態勢整えていただろう」
「俺は受け入れてもらう方だ」
「いや~ん」
千秋はレストラン同志のコラボレーション企画「ダイニングアウト」の打合せのために・・・夏向と美咲を東京に出張させる。
美咲はコラボレーションの相手が有名なレストランプロデューサー・大橋尚美(池端レイナ)の超有名店と知り、舞い上がるのだった。
「よろしくね」
握手のためにさしだした大橋の手をなかなか離さない美咲だった。
大橋から・・・夏向をスカウトして断られた話を聞く美咲・・・夏向の才能をあらためて見直すのである。
久しぶりの上京のために石川若葉(阿部純子)と約束している美咲。
しかし・・・夏向は「行きたい場所があるから・・・つきあえ」と待ち合わせ場所のメモを渡す。
「でも・・・今日は・・・本当に友達と会うから」
「九時に待ち合わせだ・・・待ってる」
「行きませんよ・・・行きませんからね」
今回はどこぞの球場で広島カープファン一同とカープ女子として応援をエンジョイする若葉と美咲だった。
「あんな奴に好きだって言われてもねえ・・・いつかバルスって言うことになる気しかしないわ」
「何言ってるんですか・・・」
「え」
「ウジウジした男だらけの世の中で・・・貴重なストレート男子にめぐりあったんですよ」
「・・・」
「ガツンと打ち返さないでどうするんです」
「えええ」
「真っ向勝負ですよ・・・敬遠している場合じゃないんです」
「私はピッチャーなの・・・バッターなの」
「女は基本、キャッチャーです」
「いやあん」
月並なバス停で逡巡する美咲。
「お嬢さん・・・乗るの乗らないの」
無言で引き返す美咲である。
少し・・・マナーに問題あるが・・・それが切羽詰まった美咲なのである。
月並な雨が降ってくる。
月並に雨に打たれて待っている仔犬テイストの夏向。
「バカじゃないの・・・」
「待ってるって言っただろう」
「行かないって言ったでしょうが」
「じゃ・・・なんでここにいるんだよ」
「・・・」
夏向は東京タワーを目指すのだった。
「東京タワー?」
しかし、夏向は月並に発熱してダウンである。
月並な「しょうがないなもう・・・」である。
東京に部屋を持っている美咲は夏向をお持ち帰り。
月並な雑炊作成である。
パティシエなので・・・雑炊を月並に失敗するわけにはいかないのだ。
しかし・・・夏向の猫舌が発覚する。
「しょうがないわね・・・ふ~ふ~」
月並な「ふ~ふ~」だった。
月並な男女の交わりがあったのかなかったのかわからない翌朝・・・いや、なかったんだろう。
そうとも限らんぞ。
すっかり・・・精気を取り戻した夏向・・・元気でいいだろうがっ。
看病中に眠りこんだ美咲のために朝食セットを用意する夏向である。
「行こうか・・・東京タワー」
「いいのか」
「行きたいんでしょう」
「うん」
母と小学生男子の会話である。
「初めてなの・・・」
「親父と一度だけ・・・来たことがある・・・その時・・・クイズを出された」
「クイズ?」
「東京のど真ん中にあるのに東京タワーから見えないものはなんだ?」
「なるほど・・・」
「その答えがわからなくて・・・ずっと気になってたんだ・・・」
二人は東京タワーの展望台に昇った!
「どう・・・わかった・・・?」
「わからん」
美咲は「東京タワーのキーホルダー」を渡した。
「答えはね・・・東京タワーよ」
「う」
月並に愕然とする夏向だった。
「がっかりした」
「いや・・・くだらなくて・・・親父らしい・・・」
「どんなお父さんだったの」
「バカだったけど・・・料理の腕は確かだった・・・厨房の親父に俺は憧れてた」
「あのね・・・私・・・あなたのことを・・・もう少し知りたいの・・・それから・・・答えを出したいの・・・それでいいかな」
「別にいいけど」
月並にかわいい夏向である。
「じゃ・・・さっそくだけど」
夏向に聞きたいことをリストアップしている美咲だった。
「最初の質問・・・目玉焼きに何かける?」
「バカなのか・・・」
「大事なことじゃない」
「塩に決まってるだろう」
「だよね~・・・文春と新潮はどっちが好き」
「どっちも読まねえよ」
「だよね~」
月並なバカップルじゃねえか・・・。
恋愛の方に・・・問題が作れないので・・・いろいろと事件勃発の後半戦である。
千秋を飼いならしたい企業家の東村了(吉田鋼太郎)は・・・「店か家族か」の二者択一を千秋に迫るのだった。
譲渡契約にサインしなければ・・・家族の秘密をばらすと脅される千秋である。
楓とデート中の千秋は・・・仲睦まじい美咲と夏向の姿を目撃する。
楓は・・・美咲を見るが・・・千秋は夏向を見ているのだった。
夏向は・・・調理学校からの報せに驚く。
「退学ってどういうことだよ」と冬真に問い質す夏向。
「もう・・・飽きちゃった」
「なんだと」
「俺に期待しないでよ・・・俺・・・才能ないんだ・・・」
「お前・・・」
「もう・・・やなんだ・・・親父の背中を追いかけたり・・・お前とこの店で働くのも・・・息苦しいんだ・・・許してよ」
冬真が・・・どうして不貞腐れているのかはまだ謎である。
味音痴なんじゃないのか。
夏向と美咲が開店準備をしているところに・・・東村が登場。
「待たせてもらうよ」
店を今にも破壊しそうな凶悪さを醸しだすその筋のムードの男である。
「困ります・・・」
「あれ・・・千秋から聞いてない・・・俺がこの店の新しいオーナーなんだけど・・・」
その頃・・・謎の美少女風の西島愛海(大原櫻子)は・・・切羽詰まった顔で冬真に迫る。
「助けてください・・・もう時間がないんです」
「すぐやれるけど」
「いやあん」
真偽を問うために・・・江ノ電と競争しながら自宅に戻る夏向・・・。
譲渡契約書のサインを終える千秋。
「なんなんだよ・・・これは・・・」と叫ぶ夏向。
「仕方ないんだよ・・・これは・・・」
そこへ・・・冬真がやってくる。
「ねえねえ・・・冬真だけ・・・血がつながってないって本当?」
「え・・・」
「ああああああああああああああああ」
血が繋がってないくらいのことを何故・・・そうまでして隠そうとするのか・・・よくわからないが・・・きっと・・・連続殺人犯すなんかの血筋なんだよ・・・いや、違うと思うぞ。
まあ・・・遺産相続ともなれば・・・揉めるよね。
「捨て子に遺産分配なんかできるか」って実子はきっと思うよね。
まあ・・・そういういざこざも・・・元をただせば恋愛沙汰なんだよね。
そこが月並なんだよね。
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