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2016年9月30日 (金)

黒い十人の女(成海璃子)人間のクズたち(バカリズム)

まだ九月なのに次から次へとスタートするのだった。

なんていうか・・・季節感がな。

日本は四季のある国じゃないのかよ。

五輪の間・・・枯れていた人たちがな・・・。

もう辛抱しきれん感じなんだよな。

どういう感じなんだよ。

正妻と九人の愛人の物語である。

風松吉を船越英二が演じてから56年後・・・56才の船越英一郎が演じるのだった。

2002年に小林薫も演じているから三代目だけどな。

オリジナルは正妻双葉が山本富士子、愛人市子が岸惠子、三輪子が宮城まり子、四村塩が中村玉緒である。

2002年版は双葉が浅野ゆう子、市子が鈴木京香、三輪子が小泉今日子、四村塩が深田恭子であった。

オリジナルでは九番目の愛人は十糸子(倉田マユミ)である。

今回は・・・九番目の女が久未なのでネーミングからして違う話になっているのだな。

で、『黒い十人の女・第1回』(日本テレビ201609292359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・渡部亮平を見た。才能あふれる美少女であるだけになかなかに作品に恵まれているとはいえない成海璃子(24)だが・・・その存在感は抜群である。一方で・・・ハーフであることからどうしてもセリフに違和感があるトリンドル玲奈(24)も・・・「役」に恵まれているとは言い難い。今回は女優役であり・・・なんとなく大根な感じが見事にフィットしている。ベテランの水野美紀(42)と佐藤仁美(36)も持ち味が活かされている。これはキャスティングの勝利だな。

テレビ局の受付嬢である神田久未(成海璃子)は顔がテカテカしている中年男に食事に誘われるがお断りする。交際相手がいたからである。しかし、失恋して再び、中年男に声をかけられ・・・なんとなく付き合ってしまう。

そういう関係になってから・・・男が・・・ドラマプロデューサーの風松吉(船越英一郎)で妻帯者であることを知らされる。

不倫と知って・・・松吉と別れることが出来ずに悶々とする久未なのであった。

ここで幼児教育番組風のお姉さんになった久未は・・・かわいい風なキャラクターと語りあう。

「女には二種類あるんです」

「そうなの?」

「不倫と知って醒める女と・・・醒めない女」

「お姉さんは醒めないタイプだったんだ」

「でも・・・そういう女が必ず不倫するわけじゃないの」

「?」

「妻帯者と知りあいになる・・・その男が好ましく思える・・・相手にも好かれる・・・相手がアクション起こしてくる・・・いろいろな条件が整う必要があるのよ」

「でも・・・結局・・・最終的な決断があるわけでしょう」

「それは・・・流されてというか」

「人間のクズってことだね」

がっかりさせない美少女にクズって言いたかったんだな。

一方・・・いかにもなミスリードで・・・松吉とベッドを共にする如野佳代(水野美紀)が登場。

久未から松吉への電話をチェックするのである。

佳代の部屋を出てタクシーに乗った松吉は久未の電話を受ける。

「ごめん・・・シャワー浴びてた・・・今、移動中・・・わかってるよ・・・君の誕生日を忘れたりしないさ」

ちょっと嬉しい久未だった。

喫茶店「カフェwhite」で友人たちに恋愛相談をする久未。

「食欲ないんだ」

「だから・・・不倫なんてやめとけばって言ったのに」

文坂彩乃(佐野ひなこ)は同情しつつアドバイスである。

少し・・・ぼんやりした感じの池上穂花(新田祐里子)は頷きつつパスタを頬張るのだった。

この久未、彩乃、穂花は素晴らしいインターネットの世界でほのぼのラインを展開する。

スタンプの応酬である。

そして・・・穂花は変なスタンプでボケて・・・久未の(笑)を引きだすのだが・・・その自然に癒される空気感が秀逸なのだった。

ニヤニヤするだけで・・・哀しい女心を浮上させる成海璃子はさすがなんだな。

不倫している女は・・・基本・・・哀しい女なのである。

人間のクズだしな。

そんな久未に佳代が電話をかける。

てっきり佳代が松吉の妻だと思いこむ久未・・・。

松吉からプレゼントされたドラマ「恋人たちの食生活」で不倫女を演じる女優・相葉志乃(トリンドル玲奈)のように「泥棒猫」と蔑まれ・・・コップの水をかけられる・・・。

裁判沙汰になって慰謝料を請求されたらと思うと・・・財布の中身も気になるのだった。

しかし・・・佳代の呼び出しに応じ・・・喫茶店「「カフェwhite」に出向くのだった。

支配人の冬樹を始め、ウエイトレスの秋子、夏美、春江たちは何も聞いていないフリで「他人の不幸」を味わうのだ。

「私・・・カフェラテ・・・あなたは」

「同じもので・・・」

「食事はいかが」

「いえ・・・」

「じゃ・・・私はオニオン・グラタン・スープ」

「すみません・・・私・・・知らなかったんです・・・もう・・・彼とは逢いません」

惨めさに涙を流す久未。

なによりも・・・松吉に未練があるのだった。

「え・・・どうして・・・もしかして・・・私のこと・・・彼の奥さんだと思った?」

「え・・・」

「じゃ・・・あなたは・・・」

「愛人よ・・・」

思わず・・・奥の席へ移動しながら・・・錯乱する久未。

「どういうこっちゃ・・・」

周囲に気遣い・・・筆談を始める佳代。

(八年前から愛人なのよ・・・あなたと同じ)

(一緒にすんな私なんか別れようと思えば別れられるクソババー、クソババー、クソババー)

緊張が解けてクソババーが止まらなくなった久未。

思わずコップの水で水冷式を試す佳代。

売られた喧嘩をカフェラテで返す久未。

「え・・・カフェラテって・・・こういう時は水でしょう」

「・・・すみません」

そこへ・・・松吉の下でアソシエイト・プロデューサーを勤める弥上美羽(佐藤仁美)が現れる。

「あんた・・・私が遊んでるって彼に言ったでしょう」

「だって・・・彼が性病もらって・・・それを私がもらっても困るし」

美羽は佳代のカフェラテぶっかけ攻撃である。

(二度もカフェラテかけられた・・・)と慄く久未。

しかし・・・二人を仲裁する勇気はない。

しかもテーブルにはオニオン・グラタン・スープが届く。

(殺傷力が高すぎる)

そこで・・・消灯サプライズのバースデーケーキが別席に届く。

気勢を殺がれる美羽だった。

「この子は?」

「彼女も・・・じゃ・・・八人目?」

「九人目よ」

「何の話ですか」

「あら・・・知らなかった・・・彼には愛人が九人いるの・・・」

「奥さん入れると十またかけてんのよ」

「ええええええええええええええええ」

奈落の底に沈む久未だった。

それでも・・・松吉と別れようとは思えないのだった。

人間の屑だからな。

「あんた・・・若いんだから・・・あんな男とは別れた方がいいよ」

(まさか・・・九人の愛人を八人にする狙いで)

「でも・・・そう簡単に・・・別れられないよね」

(ですよね)

「ねえ・・・今度・・・私の処に遊びに来ない」

(ええええええええええええええ)

ほのぼのラインである。

(十またって)

(イタリア人)

(ピザ)

(なんでピザ)

(イタリア人のスタンプなかた)

(笑)

その頃・・・松吉の愛人である相葉志乃はデートをすっぽかされた腹いせに・・・バラエティ番組のプロデューサーである浦上紀章(水上剣星)にピザを奢らせていた。

松吉は主人公の友人役に・・・高畑充希は無理だったので志乃をキャスティングした新・ドラマ「三人の淡い男」の台本打合せ中だった。

脚本家は皐山夏希(MEGUMI)である・・・皐・・・すなわち五月なのでおそらく五人目の愛人なんだな。

とある朝・・・いつものように松吉を送りだす佳代は・・・いつもより・・・性的にアピールするが・・・松吉は仕掛けないのだった。

松吉が部屋を出ると・・・クローゼットから久未と美羽が飛びだす。

「五時間もいたわよ」

「ごめん・・・まさか・・・来ると思わなくて」

「仕掛けられたらどうするつもりだったの」

「そりゃ・・・するけど」

「するのかよ」

「でも・・・彼は御無沙汰だから・・・」

「あたしのとこもよ」

「あんたは・・・」

「ええ・・・」

「してるのかよ」

まあ・・・まだ半年だしな・・・がっかりさせない二十代だしな。

馬鹿馬鹿しいほどリアルな不倫物語・・・始りました。

もちろん・・・女の敵は死ねばいいと思うよ。

人間のクズだからな。

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2016年9月29日 (木)

望郷(山口まゆ)お母さんはみんな人殺しです(平祐奈)ひこうき雲は蜘蛛の糸なのかもしれないね(井頭愛海)

倫理観というものは危ういものだ。

道徳教育を国家が管理する危険を説くものの倫理観も疑わしく感じることがある。

不文律であれば・・・それはなんでもいいことになるからな。

答えなどないということになればルールは成立しない。

湊かなえの世界がキッドの心に妙に馴染むのは・・・そういう「ゆらぎ」が常に内在しているからである。

人殺しや戦争が悪いことだと心から信じられる人を信じることができない・・・魔性の倫理。

生れてから一度も・・「悪」についてまともな説明をされたことのないやり場のない気持ち。

何故かと問うことも許されない・・・絶対的な倫理。

それを信じられる人は・・・馬鹿だが幸福なんだな。

母親はすべて殺人者である。

何故なら・・・いつか必ず死ぬとわかっている人間をこの世に産みおとす。

そういう恐ろしい前提で人類は繁栄しているのだ。

どうして・・・そんなに簡単なことが理解されないのだろう。

で、『湊かなえサスペンス・望郷』(テレビ東京20160928PM9~)原作・湊かなえを見た。六本木3丁目移転プロジェクト(テレビ東京本社屋移転を記念するプロジェクト)の第二弾である。先週の「宮部みゆき」が第一弾だったのか。「宮部みゆき」の作品にも善悪の揺らぎは登場するがずっと大人しい。どちらかといえば勧善懲悪である。二つ並べるとよくわかる気がするが・・・お茶の間レベルでは大差ないのかもしれない。こちらはオムニバス形式の三本立てである。共通点は・・・母親が殺人者(二本目は死因が曖昧にされているが・・・)ということである。凄いなっ。

みかんの花」脚本・浅野妙子、演出・新城毅彦である。

瀬戸内海のみかん農家に暮らす富田安江(倍賞美津子)と娘夫婦・・・。

富田家に・・・ベストセラー作家となった長女の笙子(水野美紀)が東京から帰ってくる。

妹の美里(山口まゆ→広末涼子)は十五歳の頃から・・・姉に対してわだかまりを抱えていた。

美里の娘の美香子(田辺桃子)は有名人の帰還に心が沸騰しているのだ。

「私も東京に行きたいな」

「何・・・甘いこと言ってるの」

娘を嗜める美里だったが・・・それは・・・姉の笙子が・・・妹の美里に言った言葉だった。

美里が十五歳だった頃。

姉妹の父親は不倫旅行中に不慮の死を遂げた。

男手が失われたのでみかん畑の一部を売却した。

母娘の手元には父親の代わりに八百万円の預金通帳が残った。

「私・・・東京の大学に行きたい」

「何・・・甘いこと言ってるの」

笙子は美里を嗜めた。

恥さらしな父親を失った母子家庭は健気に生きていた。

そこに蜜柑泥棒が現れる。

奥寺健一(田中圭)は自転車で旅行中の若者だった。

「お金がなくなったら・・・アルバイトをして・・・旅を続けています」

爽やかな感じに・・・騙されて母娘は・・・健一を受け入れる。

「U2」を愛するケンイチさんに・・・心を奪われる美里・・・。

しかし・・・健一は笙子と家を出て行ったのだった。

父親の遺産である預金通帳とともに・・・。

失恋と姉の裏切りに愕然とした・・・美里。

結局・・・美里は母とともに蜜柑畑を守りながらこの街で家庭を持ったのだ。

その母も・・・最近では認知症を発していた。

そして・・・有名人となった姉が突然・・・帰って来たのである。

「ケンイチさんは・・・どうしたの」

「すぐ・・・別れたわ・・・あの人はあなたが思っていたような人じゃなかったの」

「・・・」

釈然としない美里。

美里は・・・モニュメントの工事現場で・・・笙子が若い頃に交際していた宮下邦和(水橋研二)と佇んでいるのに気がつく。

「大丈夫だ・・・基礎から掘り起こすわけじゃない・・・それが気になって帰って来たんだろう」

「・・・」

美里は・・・恐ろしいことに気がつく。

そこに何かが埋まっているのかもしれない。

何が?

東京に帰る笙子をフェリー乗り場まで送り・・・家に戻った美里は正気に返ったような母親の言動で真実を知る。

ケンイチさんは・・・蜜柑泥棒だった・・・そして・・・貯金通帳を盗もうとしたのだ。

阻止しようとして母親はケンイチを包丁で刺殺した。

姉と姉の交際相手は・・・ケンイチを工事中のモニュメントの下に埋めた。

そして・・・駆け落ちのフリをして・・・姉は故郷を捨てたのだった。

「あの子は・・・私の罪を・・・」

真相を知った妹は・・・波止場へと向う。

「お姉ちゃん」

妹は手を振った。

船の上で姉は手を振り返した。

殺人事件が見事に隠蔽されているわけだが・・・一部お茶の間は蜜柑泥棒は殺しても構わないとも思うわけである。

海の星」脚本・大島里美、演出・中前勇児である。

「ちょっと煙草を買ってくる」

そう言って家を出た父親の浜崎秀夫(橋本じゅん)はそれきり行方知らずになった。

残された息子の洋平(加藤清史郎→伊藤淳史)と洋平の母親・佳子(若村麻由美)は秀夫の帰りを待ちわびる日々を過ごす。

家計の助けにしようと海釣りをする洋平。

ある日・・・洋平は「おっさん」(椎名桔平)に声をかけられる。

おっさんは漁師の真野幸作で・・・洋平に釣りあげた魚を分けてくれるのだった。

やがて・・・浜崎家に出入りするようになった幸作は・・・近所で・・・「洋平の新しいお父さん」と噂されるのだった。

思春期の洋平は・・・どす黒い怒りを感じる。

ある日・・・花束を持ってきた「おっさん」は・・・秀夫は死んだものとして・・・新しい人生を生きるべきだと・・・佳子に言う。

しかし・・・佳子は拒絶する。

「そんなことを言われるなら・・・あなたに魚をもらうべきじゃなかった」

「すみませんでした」

詫びて・・・家を去った「おっさん」を憐れに思った洋平は堤防で座り込む「おっさん」に声をかける。

「海の星・・・見たことあるか」

「ない」

「そうか」

幸作は海の水をすくい上げると海面にぶちまけ・・・プランクトンを刺激して発光させる。

美しい海の星に心を奪われる洋平だった。

歳月が過ぎ・・・都会で家庭を持った洋平に一通の葉書が届く。

妻の友美(紺野まひる)を安心させるために・・・「おっさん」の話をする洋平。

葉書の送り主は「おっさん」の娘の真野美咲(平祐奈→平山あや)だった。

父親のことで・・・話があるという美咲に合う洋平。

「お父さん・・・ガンで手術することになって・・・ずっと黙ってたことを白状したの」

「え」

「溺死者が漁師の網にかかるって知ってる」

「聞いたことあるけど・・・滅多にはないだろう」

「本当はやたらとあるのよ・・・だけど・・・警察に届けると面倒だから・・・キャッチ・アンド・リリースしているの」

「え」

「うちのお父さん・・・あなたのお父さんを・・・キャッチ・アンド・リリースしたのよ」

「ええっ」

「でも・・・街であなたのお父さんの尋ね人のポスターを見て・・・気が咎めたのよ・・・それでなんとか・・・あなたのお父さんが死んでいることを伝えようとしたんだけど・・・ついに言えなかったみたい・・・」

「えええ」

真野幸作の手術は成功した。

帰郷した洋平は・・・幸作の罪の意識に許しを与えるのだった。

洋平の母親は・・・他界して・・・すでに希望通りに海へ散骨した。

洋平は思う・・・母親は何故・・・父親が海に眠っていることを知っていたのかと。

雲の糸」脚本・小寺和久、演出・藤井道人である。

磯貝律子(麻生祐未)は精神に異常を来たし暴力を振るう夫を刺殺する。

残された生れたばかりの磯貝宏高(濱田岳)と幼い姉の磯貝亜矢(井頭愛海)は父親を殺した母親の子供たちとして・・・故郷で蔑まれて育つ。

出所した母親は・・・故郷を出ることが出来ずに働いて二人を育てた。

苛められ出血する宏高を姉の亜矢は慰める。

「何を見ているの」

「ひこうき雲って・・・ロープみたい」

「雲の糸ね」

「雲の糸じゃなくて・・・蜘蛛だろう」

「いいことをすれば・・・地獄にも救いの手があるってことよ」

「本当かな」

人殺しの子供として苛め続けられた宏高は学校を卒業すると逃げるように都会に出た。

そこで山崎まさよしと出会った宏高は眠っていた才能を開花させる。

ストリート・ミュージシャンとなった宏高は芸能界からスカウトされて・・・黒崎ヒロタカというスターになったのだった。

しかし・・・ある日・・・いじめっ子だった的場裕也(大野拓朗)から電話がかかってくる。

故郷で一番の鉄工所の社長である裕也の父親(西岡徳馬)は地元の名士だった。

裕也は「過去」をちらつかせて・・・父親の主催するパーティーに花を添えることをヒロタカに強要するのだった。

一人だけ極楽に行くことを許さない地獄の亡者たち。

母親もまた・・・亡者たちの一人だった。

裕也に電話番号を教えたのは・・・母親だったのだ。

「人殺しの子供を大切に育ててやった恩」を押しつけてくる偽善に満ちた地獄の故郷がヒロタカを飲みこみ・・・ついに暗い海へ突き落とす。

生死の境から目覚めたヒロタカはすべてが明らかになったことを姉から聞かされる。

「結局・・・地獄から逃げられなかった」

「そんなことないわよ」

「え」

「あんたが・・・人を殺したわけじゃないし・・・歌なんかに夢中になる人は・・・麻薬中毒患者にだって甘いものよ」

「・・・」

「あんたのファン・・・前より増えてるわよ」

「え」

「お母さんのことなんか・・・気にする必要ないわ・・・あんたを守るためにお父さんを殺したにせよ・・・そうなるまで・・・放置していたのはお母さんだしね」

「ええ」

「あんたは自慢の弟よ・・・だから・・・もっと歌って稼ぎなさいよ」

「姉ちゃん・・・」

この世は偽善者で満ちている。

偽善者を偽善者と蔑む偽善者も含めて・・・。

そして・・・すべての母親はその最たるものである。

そうでもなければ人類はこれほどまでに繁栄しなかったのだろう。

偽善を前提としたお茶の間向けドラマに絶妙にフィットする原作者の作品。

夏と秋の谷間に咲く一輪の花・・・。

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2016年9月28日 (水)

彼岸島 Love is over(白石隼也)今度は私が守る!(桜井美南)

これもかよっ。

明らかに劇場版の壮大な予告篇だけどな。

話がダイジェスト過ぎて・・・展開が早いというのが愚か者の戯言だということがよく分かる。

まあ・・・魔性の眷族の話をこれほど感性鈍く描いた作品もないからな。

そこがいい・・・という人もいます。

とにかく・・・2013年の続きなので書かないわけにはいかないよな。

これを書くと・・・自動的に「拝啓、民泊様。」も書くことになりそうだ。

まあ・・・それはそれでいいんじゃないか。

で、『彼岸島 Love is over・第1~2回』(TBSテレビ201609210158~)原作・松本光司、脚本・佐東みどり、演出・岩本晶を見た。全4話なので残り2回である。駆け抜けるんだな。吸血鬼伝説の残る「彼岸島」に連れこまれ・・・吸血鬼や邪鬼の支配する島でサバイバルを繰り広げる若者たち・・・必死の思い出・・・脱出に成功した宮本明(白石隼也)、ユキ(山下リオ)、西山(阿部翔平)、そして冷(佐藤めぐみ)だったが・・・船が怪物に襲撃されて・・・彼岸島に逆戻りである。なにしろ彼岸島から生きて還ってきた者は誰一人いないのだ・・・。

海岸で目覚める明・・・そして・・・恐怖の体験からか・・・面変わりしたユキ(桜井美南)だった。

不死の力を手に入れ彼岸島を支配するマスターヴァンパイア・雅(栗原類)に支配された吸血鬼軍団が襲来する。

そこへ・・・どこからともなく現れた丸太を持った大男。

吸血鬼から逃れ山奥で暮らす人間たちの集団・レジスタンスを率いるリーダー・師匠(声・石橋蓮司)である。

その人間離れした体格から・・・師匠も人間とは思えないのだが・・・彼岸島名物・必殺丸太攻撃を繰り出すのだった。

師匠は・・・邪鬼の太郎とさえ互角に渡り合うのだった。

どう考えても人間じゃないよね・・・。

そして・・・師匠は冷の父親だったのだ。

「俺も・・・師匠のようになれるかな」

「雅と互角に戦ったというお前のような男を捜していたのだ」

師匠とともに山奥に住み込むこと一年・・・明もまた・・・人間離れした能力を獲得した。

ほとんど・・・空を飛ぶ感じである。

もはや・・・日曜日朝の特撮ショーの香りが漂うアクション展開である。

腹筋鍛えたくらいじゃ・・・人間は飛べないけどな。

彼岸島ではどんな願いも叶うんだよ。

ガンダーラなのかっ。

明と師匠は連携プレーで雅のサイコジャックで操られた邪鬼・太郎を倒すが・・・ついに雅が姿を見せる。

「俺の部下になれ」

「誰がなるか」

雅と明の宿命の対決である。

痩身型の邪鬼の連携プレーは明を圧倒するが・・・。

弓道家として間接支援をするユキを守るために・・・必死の明は日本刀で雅を斬る。

しかし・・・雅は不死身だった・・・。

窮地に陥る明だったが吸血鬼となってもユキを守る心を失わないケン(遠藤雄弥)が雅の目を射ぬき・・・なんとか逃走に成功する。

結局・・・雅を倒すためには・・・帝国陸軍の開発した501ワクチンが必要なのである。

冷は・・・洞窟倉庫に・・・予備のワクチンが保管されている情報を得るが・・・洞窟の入り口には吸血鬼の村があった。

「レジスタンスを続けていても・・・いつかは・・・敗北する・・・吸血鬼を根絶やしにするしか・・・人間に明日はない」

師匠はついに決断するのだった。

例によって・・・AチームとBチーム作戦である。

師匠率いるAチームが正面から陽動を仕掛け・・・少数のBチームが洞窟に潜入するのだ。

Bチームのメンバーは・・・。

案内人・・・冷。

剣士・・・明。

弓担当・・・ユキ。

爆弾担当・・・西山である。

そして・・・決戦が始るのだった。

まあ・・・きっと・・・結末は・・・劇場で。

だろうけどな。

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2016年9月27日 (火)

夏目漱石の妻(尾野真千子)おバカさん(長谷川博己)

結局、これもかよ。

「待ちながら」記事もまだなのに・・・次々とスタートする秋ドラマである。

明治時代のシラスミカの話だ・・・おいおい。

夏目金之助(漱石)と中根鏡子が結婚するのは明治二十九年(1896年)である。

漱石は慶応三年(1867年)の生れであるから数え年で三十歳。

鏡子は明治十年(1877年)の生れなので十歳年下である。

ちなみに大塚楠緒子は明治八年(1875年)の生れで鏡子より二歳年上である。

鏡子は貴族院書記官長の娘で楠緒子は東京控訴院長の娘であり・・・二人ともお嬢様であるが・・・鏡子は尋常小学校卒業で楠緒子は東京女子師範附属女学校(現在のお茶の水女子大学)卒業なのだった。

ただし「しのび音」は明治三十年(1897年)の作品なので・・・時代考証的にはアレである。

楠緒子の夫・大塚保治は漱石より二歳年下だが明治二十八年(1895年)に一足早く結婚している。

美学者の保治は漱石と同じ東京帝国大学の卒業生であるため交流があったのだ。

明治四十三年(1910年)・・・楠緒子は三十六歳で生涯を閉じるが・・・この時、漱石は「あるほどの菊投げ入れよ棺の中」と詠んだのである。

こんな句を詠むから「横恋慕」などと言われるわけである。

ちなみに・・・楠緒子は面長な顔立ち、凛とした一重瞼の美人だったと言われる。

そんな人と比較されたら明治のシラスミカも悶々として当然だ・・・おいおいおい。

で、『夏目漱石の妻・第1回』(NHK総合20160924PM9~)原案・夏目鏡子・松岡譲、脚本・池端俊策、演出・柴田岳志を見た。明治二十七年(1894年)一月、日清戦争開戦。九月、平壌の戦い、黄海海戦。明治二十八年(1895年)一月、樋口一葉が「たけくらべ」の連載を開始。四月、日清講和条約(下関条約)調印。この年、愛媛県尋常中学校(現在の松山東高校)の英語教師・夏目金之助(長谷川博己)は中根鏡子(尾野真千子)と見合いをした。

親友の正岡子規(加藤虎ノ介)は問う。

「どんなおなごぞな」

「大口あけて笑う女だ」

「そんなのがよろしいか」

「金持ちの娘だ」

「・・・」

病身の兄を気遣って子規の妹・律(大後寿々花)は微笑んだ。

結核持ちでは良縁には恵まれないのである。

金之助の望みは東京に新設される帝国図書館に職を得ることだった。

しかし・・・帝国大学の教授職を目指すコースに乗せるために・・・鏡子の父親・重一(舘ひろし)が用意したのは熊本市の第五高等学校(現在の熊本大学)の英語教師の口だった。

鏡子はお茶の間向けに疱瘡による痘痕面の修正されたイケメンに心を奪われていた。

シャーマンである鏡子は・・・鏡を用いたトランス状態で未来を占う魔法を使う。

「鏡よ、鏡よ、鏡さん・・・私の将来の夫はどんな人」

「多くの夢の世界の彷徨い人となるよ」

「あらあら・・・雲にも乗れるかしら」

「それはノンちゃんです」

こうして・・・二人は結婚した。

だが・・・低血圧でお嬢様育ちの鏡子は朝に弱かったのである。

熊本の夏目家に・・・婆やのたか(角替和枝)と嫁入りした鏡子。

しかし・・・鏡子が目覚めると・・・金之助はすでに出勤しているのだった。

「起こしてっていったのに」

「起こしましたよ・・・何度も」

たかが・・・金之助の世話をしたのである。

それが毎日なので・・・金之助も呆れる。

「そんなに・・・起きるのがつらいのかね」

「たっぷり寝ないと生きている気がしません」

「早く寝たらどうかね」

「眠れないのです・・・庭のお墓がうるさくて・・・」

「こわいわっ・・・」

仕方なく・・・下宿先を引っ越す金之助だった。

実力者の娘と結婚するくらいなので・・・金之助は心に闇を抱えている。

幕末の江戸・・・名主の家に生れた金之助だったが・・・末子であったために・・・生れてすぐに養子に出されている。何か・・・出生の秘密があったのかもしれない。

養子先があまりにも貧しかったために・・・優しい姉が一度は連れ帰るが・・・金之助の父は何故か別の家に養子に出してしまう・・・やはり出生の秘密か・・・。

次の養子先は・・・夫婦が離縁したためにまたもや出戻る金之助。

程なく・・・生母が死ぬ。

親の味を知らぬ間に幼少期を終えた金之助は・・・抜群の学力で頭角を現すのである。

長兄の大助は夏目家のために金之助の立身出世を目論んでいたのだった。

その兄も明治二十年(1887年)に他界した。

金之助の心の一部はすでに死んでいたらしい。

友人の長谷川貞一郎(野間口徹)の訪問中、徳利に蝿が混入していたことに激怒する金之助は・・・たかを東京に追い返す。

夏目家の中に・・・「鏡子とたか」という中根家があるという妄想が金之助を苦しめていたのだった。

神経衰弱気味な夫に戸惑う鏡子。

そして・・・まもなく・・・金之助の父親が他界する。

葬儀に列席するために東京へと向う汽車の中で体調を崩す鏡子。

妊娠していることに気付かなかった鏡子は・・・最初の子を流産してしまうのだった。

自分に子供ができたことも知らずにそれを失った金之助の心は乱れる。

金之助は・・・「家族」というものに飢えていたのだった。

鏡子を実家に戻し・・・一人、熊本に戻っていく金之助。

しかし・・・鏡子はたちまち体調を整え・・・金之助を追うのだった。

熊本で待っていたのは地元調達の女中・テル(猫背椿)と住み込みの書生・俣野義郎(松尾諭)だった。

俣野から・・・愛読している小説の作者が・・・夫と結婚の噂があったと聞かされた鏡子は嫉妬の炎を燃やすのだった。

もはや・・・シラスミカがサンチーに嫉妬するレベルである・・・おいおいおいおいおい。

しかし・・・翌日は寝坊である。

弁当を忘れた金之助のために走って届ける鏡子。

「無理をするな」

流産後の妻を労わる金之助だったが・・・その言葉に冷たさを感じる鏡子だった。

中根家にはない・・・孤独に耐えかねた鏡子は・・・金之助の職場を訪問するが・・・金之助は無視をする。

心の折れた鏡子は雨の白川井川淵に投身を図るのだった。

しかし・・・漁師に救われ・・・死にそこなう鏡子である。

「ごめんなさい」

「謝るのは・・・私だ・・・子供のことは残念だったが・・・私に弁当を届けてくれるあなたのことを受け入れることができなくて・・・すまなかった・・・」

「・・・」

「家族を持つことは・・・私の夢だったのに・・・」

「他には・・・どんな夢があるの・・・一つだけ教えてください」

「夢・・・」

「お願いします」

「小説家になることだ・・・笑うなよ」

「うふふ」

こうして・・・夏目家版夫婦漫才が・・・始るのだった。

メリーゴーランドに乗っているようなドラマだな。

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2016年9月26日 (月)

九度山の森には時計なんてないのさ(長澤まさみ)

ついに・・・真田信繁の三女・阿梅の母親が春(竹林院)になってしまった。

これで・・・高梨内記の娘・きりはますます霧隠才蔵ポジションに近付いている。

まあ・・・ネーミングの時点でそうだったんだよな。

今回なんか露骨に佐助と親密なシーンが挿入されていたしな。

早世した次女の於市なんていないことになってるしな。

負け組の女たちは哀れである。

しかし、やはり自称・公共放送によるお妾制度なんて認めないお茶の間対策バイアスがかかっているのだろう。

このドラマにおける悪役である徳川家康の家臣となった真田信之は正室と側室がいる上に京都の愛人の噂がある小野お通まで登場しているというのにだっ。

側室に子供を産ませまくっている真田昌幸や・・・お手付きし放題の主人公に男のロマンは許されないのである。

そもそも・・・信繁の嫡男・大助(真田幸昌)の生年さえ所説あるわけである。

慶長五年(1600年)、慶長六年、七年、八年と何歳なんだ大助なのだ。

阿梅にも慶長四年(1599年)生れと九年生れという説があり、前者なら姉だし、後者なら妹だ。

どっちなんだよっ。・・・妹みたいだったぞ。

大坂の陣では薙刀ふるう武勇伝もある三女は・・・その時、十歳じゃない気もするよねえ。

来週は豊臣秀次の娘が帰還するみたいなので・・・楽しみだ。

まあ・・・基本的に変な女ばかりだけどな。

一方、服部半蔵は・・・生没年未詳の保長、慶長元年(1596年)死亡の正成、慶長十年(1605年)失脚の正就に続いて四代目正重が就役中である。

実際はもっといたわけだが・・・定説に従えばそうなるわけである。

忍びの世界は正史とは無縁なので・・・。

ちなみに浅野家家臣の竹本義太夫は義太夫節浄瑠璃の創始者とは別人である。

あっちの義太夫はまだ生まれていない。

 

 

で、『真田丸・第38回』(NHK総合20160925PM8~)  脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに往生した戦国最凶武将・真田昌幸の第五弾描き下しイラスト大公開でお得でございます。愛されておりますねえ。大河ドラマ名物の時の急流がついに発生しましたな。十年をひとっとび・・・つまり・・・世間から隔離された真田昌幸・信繁父子にとっては・・・むなしく過ぎ去った十年だったのでございましょう。まして戦のない時代など求めていない生粋の戦国武将であった昌幸にとってどれだけ・・・空虚な十年だったか・・・。想像を絶するのですな。そんな昌幸の遺言が・・・豊臣につけ・・・豊臣に味方しろ・・・一種の呪いでございます。しかし・・・この大河ドラマでは・・・秀吉の忘れ形見を高台院よりも愛し、石田三成を尊敬し、大谷吉継の娘を正室にしている身の上・・・復讐するは我にありな信繁に見事に仕上がってしまっている。そして十月です。戦を始めるなら十月・・・終わるのは師走・・・胸が高鳴ります。大坂城には夢と希望と恐怖の茶々様が待っているから・・・。


Sanada38慶長七年(1602年)二月、関ケ原の合戦の傷が癒えず井伊 直政死去。十月、小早川秀秋死去。流し込んだ銅が漏れ出たため火災が起き、造営中の方広寺の大仏が焼失する。慶長八年(1603年)、豊臣秀頼は正二位内大臣となる。 二月、徳川家康は征夷大将軍に就任、江戸に幕府を開く。徳川秀忠の娘・千姫が秀頼と婚姻。慶長十年(1605年)、秀頼は右大臣となる。秀忠は江戸幕府の征夷大将軍を継承。最後の足利将軍の嫡男・足利義尋死去。慶長十一年(1606年)五月、榊原康政死去。慶長十二年(1607年)閏四月、結城秀康死去。十月、秀忠の五女・徳川和子生誕。慶長十三年(1608年)、方広寺の大仏殿の再建開始。慶長十四年(1609年)六月、板部岡江雪斎死去。慶長十五年(1610年)八月、 細川幽斎死去。十月、本多忠勝死去。慶長十六年(1611年) 三月、後陽成天皇は政仁親王(後水尾天皇)に御譲位。秀頼は京都二条城で家康と対面する。六月四日、真田昌幸死去。二十四日、加藤清正死去。十月、大久保忠隣の嫡男・忠常が死去する。

江戸の東北には王川にかかる千手観音大橋があり、西南には玉川にかかる弥勒菩薩大橋がある。

家康の陣僧である天海が念をこめた法力橋である。

関ヶ原の合戦のために・・・下野から速やかに兵を引き、西上を可能にするための構築されたものだ。

二つの橋は慶長五年の江戸の大火にも燃え落ちることはなかった。

大火の原因は石田三成挙兵に呼応した北条勢の生き残りである風魔党と・・・服部半蔵軍団の激突にある。

この時、信幸配下の真田勢も半蔵軍団の援軍として参戦している。



風魔小太郎の最後の火術により・・・江戸の城下町は全焼の憂き目にあったのである。



しかし・・・慶長十六年(1611年)の初夏・・・すでに復興された江戸の街は征夷大将軍・徳川秀忠の居する江戸城を中心に繁栄の兆しを示している。


真田幸村配下の忍び・・・亀田三郎は・・・東海道を走り抜き・・・玉川の六郷から江戸城下に入っていた。

高遠藩の江戸屋敷につなぐために・・・真田忍軍の巣窟である材木問屋・信州屋に忍びいる。

「大殿様の使いでございます」

真田伊豆守信之をはじめとした真田家所縁の武家では・・・大殿と言えば今も真田昌幸を差す。

高遠藩の藩主夫人は真田昌幸の娘・菊だった。
菊の夫である保科正光は・・・真田昌幸の妾腹の息子・真田左源太を養子に迎えている。

甲州忍びの上忍である武田信玄の構築した忍びの組織はまだ命脈を保っている。

保科家もまた・・・その翼の下にあるのだった。

天知通の術者である昌幸は・・・領土を失い・・・九度山に蟄居の身の上とは別に・・・武田忍軍の統率者として顕在なのである。

「義父殿から・・・何か・・・お指図か」

保科正光は奥座敷で妻に問う。


「江戸城の北の丸に・・・お静と言う名の妊婦がおりまする」


「ほう・・・」


「お預かりになっているのはお屋形様(信玄公)御息女の見性院様・・・」
「何・・・」

「腹の子の種は・・・上様だそうです」

「何・・・秀忠様の・・・お子か・・・」

「お静は・・・板橋の町人の娘で・・・昨年の鷹狩りの際にお手付きになったようです」

「なるほど・・・」

「御台所様は悋気の激しいお方・・・難を惧れて比丘尼庵に・・・」

「ふうむ・・・」

「まもなく男子が生れまする・・・その後は八王子の武田屋敷に・・・」
「そこまで・・・お見通しか・・・」

「六年後に・・・保科家に養子に参られます」

「なんと・・・」

「保科家の運を拓くお子ゆえ・・・大事にせいとの父よりの伝言です」

「六年後とは・・・気が早いのう・・・そなたの父上は・・・」

「父は・・・御自分は年は越せないだろうと・・・見ております・・・これは遺言でございまする」

「・・・」



それは慶長十六年五月朔日のことだった。

一月後・・・九度山の真田昌幸は死去した。



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2016年9月25日 (日)

忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣~(武井咲)七代将軍徳川家継の母(福士誠治)

玉の輿にも程がある女の話である。

事実は小説より奇なりなのである。

ええええええという大出世なのである。

相当に美人だったわけである。

美人の上に丈夫だったわけである。

そして・・・きっと賢かったのだ。

だから・・・悪い女だったと思う。

なんだか・・・武井咲が演じるために生きた歴史上の人物のような気さえします。

おいおいおい。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第1回』(NHK総合201609241810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・伊勢田雅也を見た。いきなり・・・男女の契りの証として襦袢を男と交換する話である。小学生の間でパンツを交換するのが流行したら・・・自称・公共放送はどうするつもりなのだ。おいおいおい。とにかく・・・武井咲はいきなりセミヌードで女優魂を炸裂させるのだった。これが代表作になるのかもしれん・・・。「大切なことはすべて君が教えてくれた」の再来かもしれんがな。ブログ休眠中だったからな。

浅草唯念寺の住職・勝田玄哲の娘・・・きよ(武井咲)は貞享二年(1685年)の生れである。

浅野内匠頭長矩(今井翼)が切腹するのが元禄十四年(1701年)である。

数え年では生れた年が一歳となる。

そして年を越せば二歳である。

元禄十四年にきよは十七歳になっている。

きよが十五歳ということは・・・物語は元禄十二年から始るということである。

ちなみにきよが徳川家継を生むのは宝永六年(1709年)のことだ。

きよは二十五歳になっていた。

まさに・・・なんでそうなるの・・・というドラマである。

きよの父である勝田元哲(平田満)は元は加賀前田藩士だったが・・・人妻に惚れて駆け落ちし、主家を捨てた厄介者だった。

きよの四つ年上の兄である勝田善左衛門(大東駿介)・・・父の品行なき行いの結果・・・継ぐべき家禄を持たない身の上を嘆き・・・「けんかえもん」と呼ばれる暴れ者となった。

赤穂藩士の村松喜兵衛を父に持つ三太夫(中尾明慶)はけんかえもんの堀内道場における兄弟子である。

堀内道場には赤穂藩江戸詰の馬廻役・堀部安兵衛(佐藤隆太)がいる。

きよの父もかっては堀内道場の門弟であった。

きよの遠縁にあたる佐藤條右衛門(皆川猿時)は堀内道場の四天王と呼ばれる剣豪である。

そんな縁で・・・村松家の親戚である仙桂尼(三田佳子)に見出されたきよは・・・赤穂藩浅野家の江戸屋敷にて藩主夫人・阿久里(田中麗奈)の侍女として仕えることになる。

浅野家の当主が・・・言わずと知れた浅野内匠頭長矩なのである。

藩主・長矩に寵愛された側小姓が礒貝十郎左衛門(福士誠治)である。

浪人を父に持つ十郎左衛門は延宝七年(1679年)の生れできよより六歳年上である。

美童であったために堀部安兵衛の推挙により側小姓となったのだった。

藩主夫妻のためにきよが宴で琴を披露した日。

十郎左衛門が鼓を打って・・・二人の心は通い合うのだった。

十郎左衛門もまた・・・堀内道場の門下生であり・・・二人は幼馴染でもあった。

十郎左衛門はすぐに・・・きよが勝田善左衛門の妹と気がつく。

それほどの美貌だったのだろう。

きよは・・・大人になった十郎左衛門が幼馴染とは気付かなかったが・・・藩主の寵臣であり、物頭側用人となり百五十石取りの美男子にうっとりするのである。

「二人でしめしあわせて・・・あいびきができぬか」

十郎左衛門に声をかけられ・・・竹垣に赤い糸を結ぶ合図で逢瀬を重ねる二人である。

もちろん・・・藩士である十郎左衛門と・・・浪人の娘で・・・女中奉公の身では・・・身分違いである。

しかし・・・十郎左衛門は・・・きよの美貌に魅せられてしまったのだ。

藩主のお供で・・・お国入りする十郎左衛門は・・・「今日を逃すとしばらく逢えぬ」ときよを誘う。

人気のない境内で・・・とんでもないことを言い出す十郎左衛門。

「古来・・・言い交わした男と女は衣を交わすもの・・・きよ殿の襦袢が欲しい」

「わかりました」

その場で全裸となったきよと十郎左衛門は・・・お互いの襦袢を交換する。

何やってんだよとお茶の間騒然である。

頬を染めて・・・逢引の場を立ち去るきよなのである。

もちろん・・・二人の恋が・・・赤穂浪士の討ち入りによって木端微塵になることは言うまでもないのだった。

いろいろ重なる土曜日なのであるが・・・先手必勝なのか。

これがレギュラーなのか・・・。

大石内蔵助(石丸幹二)とか、堀部弥兵衛(笹野高史)とか、浅野大学長弘(中村倫也)とか、片岡源五右衛門(新納慎也)とか、吉良上野介(伊武雅刀)とか・・・顔ぶれもそろっているしな。

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ちかえもん

新春ワイド時代劇・忠臣蔵・瑤泉院の陰謀

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2016年9月24日 (土)

がっぱ先生(二階堂ふみ)母は亡くなりましたが犯人ではありません(坂口健太郎)

夏と秋の谷間に突入しています。

季節を無視して急発進するドラマはなるべく無視したいよねえ。

特に自称・公共放送な。

とにかく・・・スペシャルドラマにつぐスペシャルドラマの季節だぜ。

お嬢様方は・・・みんな・・・長谷川博己の法月綸太郎に流れて行ったが・・・シャブリ様とキッドはドラマ初主演の二階堂ふみだよな。

だね。

一学年上だが同じ22才の武井咲が2011年にはドラマ初主演しているのにな。

まあ・・・2011年には二階堂ふみは映画「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」で主演している。

「平清盛」(2012年)では常盤御前と平徳子だ。

つまり・・・妄想世界では二人はライバルなんだよな。

で、『金曜ロードSHOW!特別ドラマ企画 がっぱ先生!』(日本テレビ20160923PM9~)原案・滝田よしひろ、脚本・おかざきさとこ、演出・国本雅広を見た。原案の「みんなで跳んだ」の舞台は中学校なわけだが・・・相手が中学生だと二階堂ふみが教師に見えにくいという判断じゃないのか・・・そこかっ・・・あくまで妄想です。

青羽根小学校の村本愛子先生(なぎさ→しずく→二階堂ふみ)は初めて担任を受け持つことになった新米教師である。

石川県出身で・・・「一生懸命にやりたい」を方言で「がっぱんなってやりたい」と言ったことから児童たちに「がっぱ先生」と呼ばれている。大巨獣には変身しないのである。

・・・「ガッパ」を知る人もだいぶ少なくなったと思うぞ。

突進型なので・・・ことなかれ主義の五十嵐教頭(近藤芳正)はがっぱ先生を説教するのだった。

「教師が廊下を走ってはいけないといつも言ってるでしょう」なのである。

「とにかく・・・児童よりも親の信頼を勝ち取るのが大変なのよ・・・そのために大縄跳びの成功は不可欠よ」と養護教諭の山咲千春(田畑智子)はアドバイスするのだった。

故郷に住む母親の乃理子(岸本加世子)は「甘えん坊だった娘」に教師が務まるのか今も案じている。

だが・・・がっぱ先生は・・・頑張っているのだった。

クラス全員とし交換日記をするほどのがっぱなのである。

夏休みが終わって二学期となり・・・運動会の季節が迫る。

五年生はクラス対抗の「大縄跳び」を行うことになった。

早速・・・練習が始るが・・・カメの飼育係でひょうきんな性格のカツオこと大沢克夫(田中奏生)は上手に跳べずにクラスの足を引っ張る・・・そこで・・・がっぱ先生はカツオを個人的に特訓することにする。

しかし・・・教頭先生が飛んでくるのである。

「カツオくんは・・・運動が苦手・・・ということではないのです」

カツオは一家で行った登山中に事故を起こし・・・母親は死亡・・・カツオは足を負傷し・・・完治はしたが心理的な後遺症で「跳べない少年」になってしまったのである。

その点について・・・父親の大沢仙太郎(阿部サダヲ)はひどく気を使っており・・・「特訓」なんてとんでもないと・・・・教頭は言うのだった。

職員会議で・・・「大縄跳び競技でカツオをどうするか」が話し合われる。

その結果・・・「応援係」が増設されるのだった。

「それでいいかな」とがっぱ先生はカツオに問う。

「それでいい」とカツオは答える。

クラスメートたちも全員賛成するのだった。

しかし・・・クラスで一、二を争う美少女・立花由実(柿原りんか)は思わしげな表情を浮かべる。

けれど由実は交換日記に「カツオくんが応援係になってよかったと思う」と書く。

カツオも「応援係になってよかった」と書く。

がっぱ先生は・・・まだ子供たちの本音に気がつかない。

クラスで一、二を争うもう一人の美少女・内海芙実子(篠川桃音・・・「都市伝説の女」で長澤まさみの幼少期、「玉川区役所 OF THE DEAD」で広瀬アリスの幼少期を演じる・・・ジェットスターCFのマメ谷である)はとなりのクラスの担任教師・天馬(笠原秀幸)に仄かな恋を抱いており・・・クッキーやらマカロンやらをプレゼントする。

しかし、天馬先生は「気持ちは うれしいんだけど・・・教頭先生にも怒られちゃうし」と女子小学生の初恋を拒絶するのだった。

いろいろな意味で危険だからな。

「天馬先生ひどい・・・」と芙実子は闘志を燃やし・・・天馬先生のクラスには負けたくないと「大縄跳び」の練習に励む・・・。

凄い流れだな。

そんな小学生の恋愛事情はさておき・・・がっぱ先生の部屋には幼馴染の隆二(坂口健太郎)が転がり込んでくる。

「仕事を辞めたら彼女に部屋を追いだされた」

「だからって・・・何故・・・私の部屋に」

「他に行くところがないから・・・合鍵すぐに見つかったし」

そんな理由で同居を認める前に・・・通報するべきだが・・・がっぱ先生はお人好しなのだった。

やがて・・・カメの逃走事件が発生し・・・「カメを捜してみんなと一緒にさせてあげたい」と語るカツオの言葉が・・・がっぱ先生に突き刺さる。

カメを捜索している間に・・・立花由実の負傷事件が発生し・・・母親が怒鳴りこんでくる。

「危険なので・・・娘も応援係にしてもらいたい」と言う由美の母親。

しかし・・・由美は・・・。

「応援係なんて嫌です・・・私はみんなと一緒に飛びたいから」

喜んで応援係になる子供はいないと気がつくがっは先生は・・・。

カツオの本音を聞き出そうと大沢家に突入・・・妻を失って以来・・・やや鬱な父親の仙太郎に追い返される。

そこで・・・授業中に・・・話し合いの場を設けるがっぱ先生だった。

「カツオが応援係でいいのか・・・みんなで跳ぶのがいいのか・・・みんなで話し合ってください」

クラスには・・・母親にアピールするために絶対に勝ちたい男の子や・・・がっぱ先生の目を盗んで携帯電話を持ちこんでいる女の子など・・・がっぱ先生の予想を越えた・・・まっすぐではない子供たちの本音が潜んでいた。

だが・・・由美や・・・カツオのカメ仲間など・・・他人の心を思いやる子供たちもいたのである。

「カツオくんは・・・どうしたいの」とがっぱ先生は問う。

「その前に・・・僕はみんなに隠していたけど・・・跳ぶのが怖いんです・・・それでも・・・みんなと跳びたいんです」

「誰だって・・・みんなと一緒に跳びたいよね」と由美。

「回し役は跳ばないけどな」

「でも・・・重要な役でしょう」

「応援係はいてもいなくてもいいものな」

「カツオ抜きでやっても勝つとは限らないよ」

「カツオ抜きでやって負けたら何も楽しくない」

「みんなで跳んだら楽しいぜ」

「負けても・・・みんなで跳ぶ楽しさはあるよな」

「だったら・・・みんなで跳ぼうじゃないか」

全員一致でカツオの応援係はなくなるのだった。

「次は・・・五年生のクラス対抗・・・大縄跳びです」

放送係の六年生(庵原涼香・・・「念力家族」の次女である)がアナウンスする。

競技が開始されるが・・・カツオは恐怖を克服できない。

がっは先生は励ますのだった。

「先生は・・・音痴です・・・みんなが笑うので人前では歌えなくなりました・・・歌うのがこわいのです・・・でも勇気を出して・・・歌います・・・いのおちかけてえええええええとちかあああた・・・」

その凄まじい音痴ぶりに・・・カツオは思わず跳ぶのだった。

結果は最下位だったが・・・児童たちは全員歓喜の声をあげる。

カツオの笑顔に・・・父親の心は晴れるのだった。

「がっぱ先生・・・ありがとう」

幼馴染の隆二(坂口健太郎)は再就職して・・・部屋を出て行ったが・・・二人はなんとなく交際するのではないかと思われる。

果たして・・・がっぱ先生と・・・再会する日が来るのかどうか・・・それは視聴率次第なんだな。

まあ・・・「熱中時代」は少子高齢化の時代にはいろいろとアレだからねえ・・・。

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2016年9月23日 (金)

模倣犯(中谷美紀)自白はするけれど自爆はしません(坂口健太郎)

小説家と映画監督・・・二人のクリエイターが衝突して火花を散らした2002年から十四年の歳月が過ぎ去り・・・再び映像化されたドラマ「模倣犯」である。

「悪」というものにたいする二人の世界観が・・・まったく違うということがよくわかる。

すでに故人となった森田芳光監督は1950年生れ。

原作者の宮部みゆきは1960年生れ。

世代も違えば性別も違う・・・湘南生れで山手育ちと東京下町で生まれ育ったものと境遇も違う。

その世界観が違うのは当然だが・・・これほど・・・原作と映画が違う世界を描くというのは一つのお手本のようなものである。

キッドの妄想では・・・宮部みゆきは映画からかなりのインスピレーションを受けている作家である。

たとえば小説「火車」の原点は映画「太陽がいっぱい」だと思うし、小説「模倣犯」(2001年)の原点は映画「コピーキャット」(1995年)だと思う。

「模倣犯」のひねりは「模倣犯」ではなかったという一点だが・・・。

そもそも・・・「殺人」という犯罪そのものが・・・「最初の殺人」のコピーに過ぎないわけである。

「オリジナル」に対するこだわりが「犯人」の弱点となるこの作品・・・。

「原作」と一種のコピーである「映画」が火花を散らすのは面白いことなんだなあ。

そして・・・読者にしろ・・・観客にしろ・・・「本物」が何かはたちまち忘却してしまうわけだ。

そういう意味で・・・ドラマは・・・「映画」では殺された人が殺されなかったり・・・「映画」ではヒロインだった犠牲者がただの死体だったり、「映画」では自爆した犯人がただ自白するだけだったり・・・いろいろとお茶の間の幻想を打ち砕いたりするわけである。

それが・・・「原作」に忠実なだけだとしても。

すでに・・・メディアは変貌して・・・マス・メディアの性質も変容した。

ドラマは時空を超越するが・・・一部分では「映画」版の示唆した「劇場型犯罪」のモチーフをとりいれている。

「原作」・・・「映画」・・・そして「ドラマ」・・・物語は浸透と拡散を繰り返し・・・人間の嘆きを誰かに伝えて行くのだろう。

もちろん・・・キッドは悪魔なので・・・どの物語も・・・悪の勝利を賛美しているにすぎないと考える。

犯罪者が逮捕されようがされまいが被害者遺族の慟哭は変わらないのだ。

犯罪は常に悪の一方的な勝利なのである。

その点については原作者も映画監督もドラマの脚本家も演出家も疑問の余地はないのだろう。

で、『ドラマスペシャル 宮部みゆきサスペンス・模倣犯・前・後編』(テレビ東京20160921PM9~)原作・宮部みゆき、脚本・森下直、演出・松田秀知を見た。映画版では孫娘を殺された老人を山崎努が、殺された孫娘を伊東美咲が、ルポライターを木村佳乃が、その夫を寺脇康文が、ピースを中居正広がそれぞれ演じている。

前畑滋子(中谷美紀)は冴えないルポライターである。

小説家志望だったが・・・挫折して雑誌記者に甘んじている。

夫の前畑昭二(杉本哲太)は鉄工所の経営者で・・・低血圧のために夫より早起きできなく主婦としては失格気味の滋子にそれなりに理解を示す男である。

都内の公園で・・・人体の一部が発見され・・・所持品から身元が推定される。

その名を聞いた時・・・滋子は・・・ボツになった「失踪する女たち」という特集記事を思い出す。

失踪人の一人で・・・二十歳のOLだった「古川鞠子」と氏名が一致したのだった。

自分の追いかけていた女が・・・すでに死んでいるかもしれない。

・・・衝撃を受ける滋子だった。

つまり・・・「いなくなった女」は記事にならないが・・・「殺された女」なら記事になるかもしれないと考えたのである。

女性誌「サブリナ」の編集長・板垣雅子(高畑淳子)はゴー・サインを出すのだった。

事件を担当する武上刑事(岸部一徳)は古川鞠子の母親である古川真智子(室井滋)と祖父で豆腐店を営む有馬義男(橋爪功)にDNA鑑定の結果・・・発見された人体がフルカワマリコのものではなかったと説明する。

しかし・・・その頃、テレビ局HBSには「死体は鞠子ではない・・・鞠子は別の場所に埋めた」という犯人を名乗るものの情報が寄せられていた。

「連続殺人事件」の気配に神崎警部(益岡徹)ら捜査陣は色めき立つのだった。

公園で「腕」を発見した塚田真一(濱田龍臣)を取材しようとした滋子は・・・真一につきまとう少女・樋口めぐみ(久保田紗友)に遭遇する。

塚田真一は・・・両親と妹を強盗に殺された被害者遺族。

樋口めぐみの父親は犯人だった。

「祖父の遺産が・・・大金です・・・僕はなんとなくそれを友人に自慢しました・・・彼女の父親はそれを聞いて・・・強盗殺人をしたと彼女は言うのです・・・だから・・・僕の家族を殺したのは僕だと・・・僕がそんなことを言わなければ父親は犯罪者にならなかったと・・・だから助命嘆願所を僕に出せと・・・」

「なんじゃ・・・そりゃあ・・・」

滋子は真一に同情し、家に連れ帰る。

次に・・・滋子は真一とともに・・・客を装って有馬豆腐店の取材を敢行。

留守番を買って出て・・・犯人からの電話を受け取る。

「なんだ・・・じいさんじゃないのかよ・・・ケケケ」

「あんた・・・女ばかり狙ってひどいことをして・・・卑怯者」

「じゃ・・・今度は男を殺すよ」

「え」

「つまり・・・男はお前が殺したのも同然だよ」

「えええ」

口は災いの元である。

そして・・・男(飯田基祐)が失踪するのだった。

自分が犯行のきっかけとなったことに動揺する滋子だった。

しかし・・・事件は意外な展開を迎える・・・。

崖下に転落した車のトランクから・・・男の死体が発見される。

そして・・・運転席の死体・・・栗橋浩美(山本裕典)の部屋からは連続殺人事件の証拠が発見されるのだ。

同乗者の高井和明(満島真之介)は浩美の幼馴染であり・・・二人は共犯者として被疑者死亡のまま犯人として送検される。

だが・・・高井和明の妹・由美子(清水富美加)は兄の無実を信じていた。

浩美と和明の小学校時代の同級生であるピースこと網川浩一(坂口健太郎)は優しい笑顔で由美子に救いの手を差し伸べる。

被害者遺族と加害者遺族が対立するように仕向けるピース。

ピースは・・・真犯人が別にいるという「本」を出版する。

やがて・・・滋子は・・・ピースこそが真犯人であることを本人から「オフレコ」で告白されるのだった。

しかし・・・「犯人を煽ったこと」を暴露された滋子は・・・社会的信用を失い・・・窮地に立たされていた。

ピースが真犯人であることを立証する証拠はなく・・・ピースは高井和明の冤罪を晴らそうとする英雄としてもてはやされる。

そして・・・由美子をマインドコントロールしたピースは彼女を自殺に追い込み・・・それさえも・・・和明に濡れ衣を着せた滋子の責任として追及していく。

一方・・・警察は・・・女性たちを監禁し・・・殺害した場所の特定を急いでいた。

滋子は・・・ピースの生い立ちを追い・・・資産家の愛人の息子としての悲惨な少年時代にたどり着く。

「でも・・・そんなこと・・・言いわけにならないわ」

世界に復讐することに愉悦するピースは・・・高井和明の有罪を報道した滋子に高井和明の無罪を主張するものとして・・・挑戦状をたたきつける。

挑戦を受けて立つ滋子は・・・一冊の洋書をテレビ番組中に取り出した。

「ここには・・・今回の一連の事件とまったく同じ内容が書かれています・・・つまり・・・犯人はコピーキャット(模倣犯)なのです」

「馬鹿な・・・すべてオリジナルだ・・・そんな本なんて読んだこともない・・・すべて俺の独創によるものだ」

激昂するピース。

「それは・・・つまり・・・あなたが真犯人ということで・・・いいですか」

「あ」

「本」の存在は滋子の「嘘」だった。

人でなしの人殺しはお人好しの嘘つきに敗れたのである。

ピースの母親の別荘に家宅捜査に入った警官隊は・・・無数の人骨と腐乱死体を発見していた。

ピースは追いつめられる。

ピースは塚田真一に電話をした。

「今度は・・・君の本を書くよ・・・自分の言葉で・・・家族を失うことになった・・・君のことを・・・」

「構いませんよ・・・僕はもう充分に傷ついている・・・今さら・・・何を言われても平気です」

「・・・」

ピースは逮捕された。

「お前にはうんざりしている」と武上刑事は言った。

真一は・・・めぐみに声をかけた。

「もう・・・母親のところへ・・・帰れよ」

「お金ない」

「これ・・・親切なおじさんがくれた・・・その人はクズ野郎に家族を殺された人だ」

「・・・」

「家族を殺された人と・・・犯人の家族とは・・・なんだかんだ友達にはなれないよ」

事件は終わった。

深夜の公園で・・・有馬義男は酔いどれる。

「返してくれよ・・・初孫なんだよ・・・いい子だったんだよ・・・マリコを返してくれ」

だが・・・死者は蘇らない。

それが・・・現実というものだから。

とりかえしのつかないことをしてしまえばとりかえしはつかないのだ。

まもちろんいやしもすくいのないのである。

犯罪者が身を滅ぼしても悪は不滅だ。

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ペテロの葬列

宮部みゆきミステリー パーフェクト・ブルー

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2016年9月22日 (木)

自分を見失ったら責任はとれないよ(山田孝之)地獄からの帰還(光宗薫)

2016年の夏ドラマのレギュラーレビューも最後の作品の最終回となった。

ドラマというフィクションは基本的には現実逃避のエンターティメントだが・・・場合によっては人生に適切な刺激を与える一種のテキストでもある。

たとえば「好きな人がいること」の最終回のサブタイトルは「それだけ」である

好きな人がいることはそれだけで・・・人生に何かをもたらすということだろう。

主人公が一瞬とはいえ・・・幸福を感じることを考えると・・・それは「好きな人がいることはそれだけで素晴らしい」という意図を持っているのかもしれない。

最後のドラマの主人公は「犯罪者」である。

しかし・・・犯罪者たちの世界にも善と悪は存在する。

言わば・・・天使と悪魔の最終戦争が繰り広げられる一種の黙示録である。

現実に起きた事件の捜査員が・・・犯罪にまきこまれないための鉄則の一つに・・・「性善説を信じないこと」をあげている。

「人を見たら泥棒と思え」という言葉を好ましく思わない人間は多いだろう。

しかし・・・それがいかに危険な感覚であるかを・・・このドラマは示唆しているのだ。

世界が善と悪で成立していることを忘れてはいけない。

で、『ウシジマくん Season3・最終回(全9話)』(TBSテレビ201609210128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。番組録画装置が普及し・・・放送時間帯というものが意味を失って久しい。番組内容に相応しい判断力を持った人間のお茶の間における制限は困難なものであり・・・わが心の師であるディズニーが語るように「エンターティメントとは老若男女が楽しめるものでなければならない」という傾向は強まっている。下着姿の家族がお互いに電気ショックで拷問し合うという物語がどのような年齢に相応しいのかは議論の分かれるところであろう。もちろん・・・キッドはそんなものに答えなんかないと思うわけである。人間は正解のない世界を彷徨う憐れな生き物なのだ。

人間の皮をかぶった悪魔である神堂大道(中村倫也)に支配された上原一家は・・・うらぶれたアパートの一室で軟禁状態となっている。

部屋の中では下着しか着ることを許されず・・・外出は許された時だけである。

外出中はたえず定期連絡をしなければならない。

なぜ・・・そうなのか・・・上原一家はすでに考える力を奪われている。

自分を守り・・・家族を守るためには・・・そうせずにはいられない・・・神堂の洗脳により・・・上原一家はコントロール可能な機械になってしまったのだ。

重則の長女まゆみ(光宗薫)が「愛人殺しの共犯者に対する口止め料」を要求されているために至急二千万円を用意しなければならない上原一家である。

家族から殺人者を出せば・・・上原家の社会的地位は消失してしまう。

神堂の言葉に踊らされ正気を失っていく上原一家。

まゆみの共犯者は・・・まゆみの愛人の娘と称する松田明日香(市橋直歩)だが・・・そもそも・・・まゆみは明日香の父親と面識はないし・・・まして殺してなどいない。

しかし・・・電気ショックの拷問により・・・まゆみはそれを事実として受け入れなくては生きていけないという恐怖を感じている。

悪魔はたやすく現世に地獄を出現させることができる。

神堂の狙いは・・・上原家の資産を根こそぎ奪うことだった。

上原重則(名倉右喬)が親から相続した土地は重則の兄弟と共同で管理しているために重則の一存で売買はできない。

「どうしても二千万円必要なんだ・・・残りは平等に分配するから」

弟に了解を求める上原重則(名倉右喬)だっだか交渉は難航する。

「一体・・・そんな金・・・何に必要なんだよ」

「それは・・・」

「理由も聴かずに承諾なんかできないよ」

外出中の重則を監視しつつ裏デリヘルで営業中のみゆき(今野鮎莉)に電話をする神堂・・・。

まゆみの妹で神堂の愛人であるみゆきは駱駝会の柏木(大塩ゴウ)から「俺の女になれ」と迫られていた。

そこに神堂から着信がある。

「一時間おきの定期連絡はどうしたのです」

「お客さんが延長したので」

「関係ありません・・・帰ったらスイッチオンしましょう」

「許してください」

柏木はみゆきの様子に厄介事を嗅ぎつける。

極道者(反社会的組織構成員)にとって厄介事は飯のタネである。

そして・・・柏木は・・・ウシジマくんの顧客の一人だった。

悪魔である神堂に・・・じわりじわりと・・・地獄の天使が接近してくるのだった。

「カウカウファイナンス」の柄崎(やべきょうすけ)はパーキングセンターの機械が不調で領収証が発行されないことをウシジマくんに報告する。

犯罪者たちは連絡を密にする。

お互いを信用していないからであるが・・・それでも信頼関係を構築しなければならない。

悪が悪を食うのが弱肉強食の世界である。

巨大な悪から身を守るために弱小な悪は絆を強めるしかない。

ウシジマくんは幼馴染の情報屋・戌亥(綾野剛)と駄菓子屋にいた・・・。

占い師の勅使川原(三田真央)について調査報告をする情報屋・・・。

「本名はアサカワヤヨイで・・・彼女の両親は変死体として発見されている」

「これは・・・報酬だ」

ウシジマくんはカゴいっぱいの駄菓子を差し出した。

「ありがとう」

背後から見守るおこぼれ目当ての無垢な女子小学生たちの胸はときめくのだった。

「でもかなりやっかいな相手だと思うよ」

「そうか・・・」

何事にも動じない水戸黄門のようなウシジマくんだった。

勧悪懲悪(悪を勧進し、悪を懲役に追い込むこと)の物語の最終回は基本的に水戸黄門なのである。

水戸黄門は権力の濫用そのものだからな。

つまり・・・柄崎と高田(崎本大海)は助さん格さんなのだ。

軟禁部屋でカズヤ(板橋駿谷)は妻のみゆきの不貞を責め立てる。

みゆきが裏デリヘル嬢と知ってしまったからだ。

「みゆき・・・お前なんかと結婚したのが間違いだった」

しかし・・・みゆきは姉のまゆみを責めるのだった。

「みんなお姉ちゃんがいけないのよ・・・親から大切にされて・・・大学を卒業して出版社に就職して・・・どうせ私なんか専門学校卒業で水商売しかできないってバカにしているんでしょう」

「お前・・・水商売なんかしていたのか」と驚愕する父親のシゲノリ。

「水商売どころじゃないよ・・・この女、フーゾクで働いて稼ぎを不倫相手に貢いでいるんだ」

「すると・・・まゆみさんが悪いのですね」とみゆきの不倫相手である神堂は矛先を変える。

「私はシゲノリが悪いと思います」

標的になることから免れるために父親の名を呼ぶまゆみ。

「まゆみさんは幼いころ、お父さんに性的凌辱を受けていたのですよね」

神堂は虚言を弄する悪魔なのである。

「そうです」

「何を言っているのだ」

「お母様はどう思われますか」

上原広子(武藤令子)は不倫関係にある神堂に問われ答える。

「夫が娘にそんなことをしていたなんて信じたくありません」

「では・・・これをどう思います。まゆみさんの携帯端末に送りつけられた動画です」

路上で部下にセクハラするシゲノリだった。

「ちがう・・・これは・・・神堂くんに責められて・・・意識が朦朧になって」

「言い訳するな・・・ハゲ・・・お前はただのエロ爺なんだよ」

「もはや・・・お父様には家長の資格はありませんね・・・私はカズヤくんが家長にふさわしいと思います」

カズヤ(板橋駿谷)を家長として指名する神堂。

「よし・・・上原家は俺が仕切る・・・まずは金を作れない上に変態行為をしたシゲノリを反省させよう」」

家族に抑えつけられ・・・下着姿のシゲノリは電極をセッテイングされる。

「みゆき・・・スイッチオンだ」

みゆきは父親に通電するのだった。

「ぎゃああああああ」

ウシジマくんは裏デリヘル「ガラダマ」を経営する金子ババー(箱木宏美)に駱駝会の柏木へのツケの回収を依頼される。

「トリハンで頼むよ」

回収金額の半分がウシジマくんの回収手数料となるのだった。

上原家に巣食う悪魔・神堂。

上原家の厄介事に気がついた柏木。

そして・・・柏木から金を回収しようとするウシジマくん。

悪はお互いを呼び合うのである。

漂い出す腐臭は・・・屍肉喰らいにとって芳しいのだ。

軟禁部屋ではみゆきが躊躇していた。

下着姿で乳首を電極クリップではさまれた男は半死半生となっている。

その男は・・・みゆきの父親なのである。

「これ以上やったら・・・死んでしまいます」

「どうせ・・・死んだフリだよ・・・このエロだぬきはもっと反省しなければならねえ」

「でも・・・」

「スイッチオンだ・・・それともお前に・・・スイッチオンしようか」

家長としての権力の行使に陶酔するカズヤ。

みゆきは電気ショックのもたらす苦痛の記憶に怯え・・・父親に仕掛けられた電気ショックによる拷問装置のスイッチを入れる。

激しい苦痛の連続が重則の身体に蓄積され・・・ついに限界を越える。

上原重則の心臓は停止し、呼吸は途絶え、脳内への血流は滞る。

「また・・・死んだ真似か」

「いえ・・・脈がありません」

冷静に指摘する神堂。

「まゆみさん・・・心臓マッサージを」

「はい」

黒い下着姿のまゆみは父親への心臓マッサージを開始する。

「もしもしカメさんよりダイヤモンドだねの方がプッシュとプルに効果的だそうですよ」

「だから・・・やめようと言ったのに」

「スイッチ押したののはお前だ・・・お前が殺したのだ」

「責任を押し付け合っている場合ではありません・・・お父様はまだ三途の川を渡ってはいません・・・呼び戻すのです・・・カズノリコールです」

「カズノリ!」

「カズノリ!」

「カズノリ!」

「お母様はマウスツーマウスで人工呼吸をしてください」

長女は父親の心臓をマッサージする。

妻は夫の唇に息を吹き込む。

次女夫婦は声援を送る。

一致団結する・・・美しくも儚い上原一家の終焉。

ノックの音がする。

「静かに・・・私が対応します・・・声援は心の中で続けましょう」

ドアの外には隣室の男がいる。

「何時だと思っているんだ」

「すみません・・・サッカーの海外中継で熱がはいってしまって」

「サッカーなんかやってたか」

「CSでユースの試合を親戚のシゲノリくんが出場しているのです・・・気をつけます」

「・・・」

クレーマーを追いかえした神堂は・・・重則が死体になったことを確認する。

「どうしましょう」

カズヤは・・・神堂に指示をあおぐ。

「死体の処理の仕方はまゆみさんが知っています」

まゆみは・・・松田明日香の父親の処理された死体をそうとは知らずに海に捨てていた。

まゆみは息を飲む。

ノックの音がした。

「またか・・・」

ドアの外にいたのは柏木だった。

「どなたですか」

「みゆきの知り合いだよ」

柏木は部屋に押し入る。

「おう・・・みゆき」

「・・・」

「なんだ・・・面白いことになってるな」

柏木は無防備に死体に近付く。

白い下着姿のみゆきは背後からハンマーで柏木の頭部にアタックする。

「何しやがる」

娘に襲いかかる男を見たゴールドの下着姿の母親は出刃包丁を取り上げる。

気配に気が付き振り向いた柏木の喉笛に突き刺さる凶器。

柏木は家族愛の前に敗れたのだった。

二つの死体の前で身だしなみを整えた神堂は憐れな家族たちに告げる。

「私は外出してきます・・・始末をつけておいてください」

神堂は指紋を残さないようにティッシュを用いながらハンマーをカズヤに・・・包丁をゴールド広子に渡す。

「私はどうすればいいのでしょうか」

「少しは自分で考えなさい」

神堂は広子の頭部に紙袋をかぶせた。

ノックの音がする。

ドアを開くとウシジマくんがいた。

「ここに・・・まゆみと妹のみゆきがいるだろう」

「お前は誰だ」

「金の回収に来た」

問答無用で押し入るウシジマくん。

「あんた・・・何してんの」

「紙袋をかぶっています」

「不法侵入だ・・・警察を呼ぶぞ」と神堂。

「呼べば・・・」と応じたウシジマくんは携帯端末を取り出す。

ウシジマくんの呼びかけに応じ・・・たちまち鳴りだす柏木の携帯端末の着信音。

「柏木もここにいたんだ」

カズヤがハンマーで・・・広子が包丁で・・・みゆきが金属バットでウシジマくんに殺到するが・・・たちまち全員を制する暴力のプロだった。

「やめな・・・あんたたちでは無理だ」

「・・・」

母親が落した包丁に飛び付くまゆみ。

「そうです・・・それでそいつを刺しなさい」

「・・・私は・・・ビリビリされるのがこわくて・・・父親をおとしめる嘘をつきました」

「あんた・・・今・・・顔じゃなくて腹の子をかばっただろう」

「私はしてはいけないことをしました」

「やってはいけないことなんてないさ・・・自分で罪を背負う覚悟があるからな」

「まゆみさん・・・やりなさい」

「神堂・・・お前に言ってるんだよ」

名前を呼ばれて驚く神堂。

まゆみは意識と無意識の狭間で苦悶する。

「・・・」

「上原まゆみ・・・お前は何がしたいんだ」

まゆみは・・・鬼のような天使を見上げた。

そこへ・・・柄崎と高田が到着する。

「あんた・・・何してんの」

「紙袋をかぶっています」

神堂はプロフェッショナルな暴力の洗礼を受ける。

ペットボトルの踏み台で絞首刑になりかかる神堂。

「私を殺しても馬鹿馬鹿しいぞ・・・私の舌先三寸で金を稼ぐのだ」

「ほう・・・」

神堂は延命した。

首輪をつけられ・・・マタンゴのような異形の顔で・・・獲物から金を引きだす神堂。

「神堂さん・・・その顔は・・・」

「強盗に襲われて・・・金を奪われました・・・どうしても三百万円必要なのです」

「なぜ・・・首に鎖を・・・」

「ファッションです・・・パンクです」

首輪の鎖を引いて柄崎は金を回収した。

「これで・・・チャラだ・・・あばよ」

柄崎は神堂の愛車で走り去る。

神堂は醜い顔で鼻歌を歌う。

「警察に密告されるよりマシだ・・・金はまた稼げばいい・・・ルンルンルンル~ン」

しかし・・・アジトに戻って来た神堂は逮捕されるのだった。

「神堂こと・・・アマノケイスケだな」

「・・・」

上原一家も・・・勅使川も・・・松田明日香も逮捕された。

焼き鳥屋で情報屋がウシジマくん裁判状況を報告する。

「神堂は複数の殺人に関わっているので死刑は免れないだろうね・・・上原一家もまゆみ以外は無期懲役になるだろう」

「まゆみは・・・」

「情状を酌量されて・・・五、六年か・・・それよりも短い期間で仮釈放になるかもしれない」

柄崎から連絡が入る。

(神堂の車・・・八十万円でした)

「それでいい・・・残りはまゆみから回収する」

「金子ババーのデリヘルはどうなった?」

「高田にまかせてある。・・・ネットで広告出させて・・・売上は順調だ・・・金子ババーには留守番代渡して・・・後は全額ウチが回収する」

「鬼だねえ」

受付嬢・エリカ(久松郁実)は飲み物を注文した。

柄崎は電話の向こうで反応するがウシジマくんは通話を終了した。

小瀬章(本多力)はケースワーカー(大津尋葵)の訪問を受ける。

「お仕事順調ですか」

「コセチンのネットパソコン教室・・・先月の売上・・・新記録更新です」

「よかったですね・・・小瀬さん」

「ありがとう・・・ケースワーカーさん」

暗い路地裏にも陽が射すのだ。

結城美奈(佐々木心音)はコンビニで地道に稼いでいた。

ゴミ箱をあさる母親の恵美子(倖田李梨)・・・。

無言で別れた母親を橋の上で呼びとめる娘。

「ママ~」

「・・・」

「これ・・・お弁当・・・温めたやつ・・・」

「また・・・一緒に・・・」

「じゃあね」

母娘売春についてではなく・・・暮らせるかと問いたかった恵美子は・・・橋の上で泣き崩れる。

娘は振り返らずに去っていく。

どんな親子にも出発(わかれ)の時は来る。

闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)と腹心の部下・村井(マキタスポーツ)は希々空(小瀬田麻由)を餌食にしていた。

「どうします・・・」

「若いし・・・そこそこエロいから・・・裏風俗で稼がせる」

「ねえ・・・髪の毛洗ってえ」と村井を誘惑する希々空。

「え・・・」

思わずうっとりする村井。

「村井・・・」

「す、すみません・・・たまってたもんで」

「知るか」

四年の歳月が流れた。

まゆみの出所を出迎えるウシジマくん。

「金の回収に来た・・・刑務作業の賃金があるだろう」

金を回収したウシジマくんにまゆみは言う。

「やってはいけないことはないってウシジマさんは言いました」

「覚えていねえ」

「でも・・・私はやってはいけないことはあると思います」

「なに・・・当たり前のこと言ってんの」

「私は・・・自分の意志を伝えたのです・・・あなたが教えてくれたから」

ウシジマは立ち止り・・・まゆみを残して去る。

まゆみはそこが養護施設と気がつく。

そして・・・わが子(川北れん)の姿に涙ぐむ。

引き返してきたウシジマくんは「カウカウファイナンス」のティッシュを差し出すのだった。

悪魔にも神の恩寵はあるのだろうか。

それは地獄の天使としてこの世に出現するのだろうか。

怪しい取り立て人がウシジマくんに近付く。

「駐車料金の未払いなんですが・・・かれこれ・・・五十万円になります」

「あんたら・・・駐車場の人間じゃないだろう・・・未払いなんてない・・・第一暴利だろう・・・」

悪魔が発明した金という道具を巡り・・・この世という地獄で・・・聖戦は続くのだった。

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2016年9月21日 (水)

せいせいするほど、愛してる(武井咲)このメスブタが!(木南晴夏)

火曜日の谷間である。

男女雇用機会均等法の世界では専業主婦の存在が特殊なものとなり・・・結果としてお昼のメロドラマは姿を消した。

需要がなくなって消えた魂は彷徨って・・・時々、時空を越えて蘇るわけである。

結婚がゴールという女たちの見果てぬ夢よ・・・永遠なれなのである。

しかし・・・一方で・・・ハーレクインロマンスという伝統がある。

就職や繁殖の問題とは別の・・・女は華麗なロマンスを求めているという神話だ。

結果として・・・ゴージャスな世界で・・・職場の上司と不倫中の愛人がヒロインで邪悪な正妻と対峙する物語が生まれる。

男性はそれほどうっとりしないと思うが・・・女性は今でも「ティファニー」と聞いただけでうっとりできるのかもしれない。

そういう狙いで・・・そこそこ成功したと思う。

で、『せいせいするほど、愛してる・第1回~最終回(全10話)』(TBSドラマ20160712PM10~)原作・北川みゆき、脚本・李正美(他)、演出・石井康晴(他)を見た。原作ありきで・・・脚本家は第4回TBS連ドラ・シナリオ大賞の渡邊真子、佳作の李正美、そしてフジ第27回テレビヤングシナリオ大賞の佳作である井上聖司という新人たちの集いである。まあ・・・何にでも初めてというものはあるからな。原作は架空の化粧品会社が舞台だがドラマでは何故か実在のジュエリーブランド「ティファニージャパン」が舞台となっている。不倫が社会的制裁の対象であることに反逆しているのだが・・・キラキラしているから大丈夫だとでも考えているのだろうか。

まあ・・・愛人も相手も深く反省するので・・・大目に見てくれという展開なのである。

そういう汚れ役の二十五歳のキャリアウーマンを演じる(22)の武井咲である・・・どんどんやつれて行くような気がします。

ティファニージャパンの広報課に所属する栗原未亜(武井咲)はジュエリーを心から愛する女子社員。交際相手の山下陽太(高橋光臣)が仕事に理解を示さないので破局に至るほどの信念の持ち主である。

しかし・・・ティファニージャパンの副社長である三好海里(滝沢秀明)にジュエリーと同じように魅かれるものを感じて恋に落ちるのだった。

だが・・・海里は妻帯者だったのである。

自分の信念が社会通念を凌駕するタイプの未亜は愛人でもいいから・・・と海里と関係を深める。

未亜には担当作家(中村隼人)に恋をしている編集者・真咲あかり(水沢エレナ)と同性愛者で小学生時代からあかりを狙っている美山千明(トリンドル玲奈)といったやさぐれた幼馴染がいる。

さらに・・・実在のアクセサリーブランド「ジミーチュウ」の社員で有能な未亜の引き抜き工作を画策する宮沢(中村蒼)なども配置されている。

そして・・・真打ちとして登場するのが・・・意識不明のまま入院している三好夫人・優香(木南晴夏)である。

優香は・・・仕事に夢中で構ってくれない夫に意趣返しのつもりでした浮気が発覚し・・・離婚届けに捺印した後で・・・夫と無理心中をしようとして交通事故を起こした破天荒な女である。

しかも・・・目覚めた時には・・・記憶喪失になっているという厄介さである。

さらに金目当ての優香の姉・小川遥香(橋本マナミ)は邪魔な未亜の殺害を企てるのだ。

そういう妻なので・・・不倫関係がある程度・・・正当化されるわけである。

じゃあ・・・とっとと離婚しろよという話なのだが・・・中途半端に優しい副社長は・・・曖昧な態度を続けるのだった。

そして・・・最終回・・・優香は記憶を取り戻し・・・ファションデザイナーとしての作品を認めてくれた未亜に・・・突如として好意を感じる。

不倫関係の清算によって・・・失職した未亜は・・・街のアンティーク・ショップに務めていた。

そこに・・・結婚式の招待状が届く。

「会えなくても愛する人は・・・あの人だけ」と嘯く未亜に・・・仕掛け人の宮澤は囁く。

「だったら・・・祝福することもできるだろう」

「・・・」

歯を食いしばって教会に到着した未亜を待っていたのは離婚が成立し・・・独身となった花婿だった。

僕の妻が離婚に応じ

君と同じ独身になったら

約束はしてないけど

素敵な教会で

結婚しようよ・・・ふふふん

恐ろしいほどの甘いハッピーエンド。

お茶の間に漂う浮いた歯の葬列。

そして・・・これにそこそこ需要があるのが・・・世界の素晴らしいところなんだな。

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2016年9月20日 (火)

好きな人に背中を押されること(桐谷美玲)黙ってニューヨークに行ってこい(山崎賢人)

夏ドラマのレビューもフィニッシュ直前である。

「月9」のテイストに「恋」はかかせないわけだが・・・そこに「青春」を重ねるかどうかは別問題である。

「恋と青春」はある程度・・・年齢制限がかかるわけだ。

もちろん・・・中高年にも・・・ノスタルジーという味わい方はある。

しかし・・・現代においては・・・「いつまでも若くいつまでも愚かものでありたい」病が蔓延して・・・懐かしい「恋と青春」が通用しにくくなっているのではないかと考える。

そこで「夢と冒険」を持ちこむ手があるわけだ・・・「夢」や「冒険」は年齢を問わないからである。

久しぶりに長い歌番組で「強く儚い者たち/Cocco」(1997年)を聞いた。

甘く優しい冒険の果てに待っている「腰を振ってる」というフレーズを毒々しく感じなければこの歌はそれほど面白くはない。

若者たちは強欲だ。

「恋と夢と冒険に満ちた青春」を求めている。

それが儚いものであることを知っている大人が減ったような気がするのは幻想なのだろうか。

で、『好きな人がいること・最終回(全10話)』(フジテレビ20160912PM9~)脚本・桑村さや香、演出・金井紘を見た。パティシエの櫻井美咲(桐谷美玲)は突然、竜宮城に招待される。職を失い途方に暮れていたところで・・・憧れの先輩である千秋(三浦翔平)に食べさせたケーキが効いたのである。和菓子屋の娘に生れて洋菓子職人になった美咲の「夢の残滓」が魔法のような「ひと夏の恋」の扉の鍵を開く。

もちろん・・・美咲は処女なのである。

海辺の町のレストラン「Sea Sons」にはシェフ・夏向(山崎賢人)がいて美咲と夏向は最悪の出会いをするが・・・いつしか美咲は夏向の虜になっていく。

奥手の・・・二十七歳で処女なので・・・美咲はようやく・・・夏向に告白したのだが・・・先に告白した夏向は豹変して・・・美咲に対して腰をふらないと言い出すのだ。

今回は・・・夏向の真意を明らかにしつつ・・・結局・・・腰を振らなければ恋は結末を迎えられないという話である。

三男の柴崎冬真(野村周平)は美咲が告白して「恋」が成就したと思いこみ祝福するが・・・千秋は・・・美咲の元気のなさを気にかける。

「僕でよかったら相談にのるけど・・・」

「私・・・ふられちゃいました」

「え」

先週、美咲にふられたばかりの千秋としては幸いとしか思えない流れだが・・・聖人君子と獣の間を右往左往する千秋は・・・もう最終回なので野獣化できないわけである。

「好きだと言われたから告白したのに・・・もう嫌いになったってどういうこっちゃ」と美咲も夏向を問いつめるが・・・口を閉ざす「不器用な男」なのである。

お茶の間は・・・一本の電話が・・・夏向の心変わりの原因であることを知っていて・・・あれこれ妄想するわけである。

やがて・・・有名なレストラン・プロデューサー大橋尚美(池端レイナ)が美咲にコンタクトして・・・ニューヨークの有名店で・・・パティシエ修行の話を持ってくる。

大橋が・・・恋仇なら・・・陰謀であるが・・・最終回なのであくまで善意なのである。

ここが恋の竜宮城である以上・・・すべては予定調和なのだ。

美咲の「叶わなかった夢」は・・・海外での修行生活だった。

お茶の間は・・・たちまち・・・夏向の意図を了解する。

彼は愛する人の夢を叶えてあげようとしているのだった。

だったら・・・「せっかくのチャンスだから行って来い」で済む話じゃないかと言ってはいけない。

夏向は不器用な男で・・・美咲は決断に時間のかかる女なのである。

愛する男を残して・・・夢を追いかけることなんてできるはずがないと・・・夏向は先読みしているわけなんだな。

とにかく・・・最終回なのである。

「私って・・・あなたにとって必要な女じゃなかったの」という美咲の問いかけに心を鬼にして「パートナーとして実力不足だ」と告げる夏向。

もちろん・・・大橋プロデューサーのお誘いがあった時点で・・・美咲が夏向の真意に気付くだろうとも思うが・・・美咲は鈍い女という設定なのである。

美咲はせっかくの話をお断りするのだった。

そこで・・・大橋プロデューサーは千秋にも話を通す。

「夏向さんも賛成してくれたんですけど」

「なるほど」

察しのいい千秋はたちまち・・・全体像を把握するのだった。

しかし・・・そのことを美咲には言わない千秋。

やはり・・・ワンチャナンスを狙っているのか。

店を辞めようとしない美咲に・・・さらに圧力をかける夏向。

新しいパティシエ(JY)の採用である。

追い込まれた美咲は・・・ついにニューヨーク行きを決意するのだった。

まあ・・・タイムリーにニューヨークで爆弾事件が起きたりして・・・言葉も不自由そうな美咲を嵐の海へ送りだし・・・宝島を目指せと追い込んでいく夏向に一種の性的倒錯を感じないわけでもないけどな。

明らかに・・・いろいろと気付かないフリを要求されるドラマ的展開で・・・もう少し勉強してもらいたいよね。

そういう馬鹿馬鹿しさを狙っているというわけでもないんだろうから・・・。

空気を読めない人たちの話か。

だからNYでKYでJYなのか。

自分で追い出しておきながら・・・歯をくいしばって・・・愛する人を失う可能性に耐える夏向なのである。

結局・・・意味深な態度だけしかなかった外食チェーン店経営者の東村了(吉田鋼太郎)か来店し・・・「シェフの夏向とパティシエの美咲は名コンビだ・・・離れ離れになってはいかん」と言い出す始末である。

まさか・・・笑うところじゃないだろうな。

そして・・・あっという間に・・・美咲の旅立ちの日がやってくる。

どうしても・・・夏向を諦めきれない美咲は・・・レストランから海へと・・・彼の姿を追い求める。

しかし・・・サーフボードを小脇に抱えた夏向はあくまで素っ気ない。

「ああ」とか「まあ」とかしかいわないのである。

「夏向・・・あんたって・・・本当にむかつく・・・でも・・・楽しい夏だったよ」

美咲は海辺の街を出て行った。

その日は・・・有名な評論家の食レポの予定が入っている。

しかし・・・「ありがとう」という言葉ともに返却された合鍵を見た夏向は我慢の限界に達するのだった。

「兄貴・・・俺・・・」

「まだ・・・遅くないさ」

千秋は美咲の利用する航空便をメモしていたのだった。

たちまち・・・評論家をスルーして羽田空港国際線ロビーを目指す夏向。

近場で処理かよっ。

そして・・・二人の運命を支配する浜辺の天使たちは・・・季節外れの海外旅行の途中で・・・美咲のシャツにソフトクリームで着色し・・・足止めをするのだった。

「美咲・・・」

「なんで・・・ここに・・・」

「ずっと一緒にいろよ」

「え・・・私はこれから・・・ニューヨークに」

「お前がどこにいようと・・・いつも一緒だと言っている」

「はい」

お約束の空港ロビーで熱い抱擁である。

もちろん・・・周囲の人々に見せつけるためにキスをする二人だった。

そして・・・遠距離恋愛に突入である。

とにかく・・・人が強かったり儚かったり他の誰かと腰をふったりしない夢物語なのである。

いつもにぎやかな石川若葉(阿部純子)がサンタスタイルで街をパレードする。

サーフショップ「LEG END」の経営者・日村信之(浜野謙太)と奥田実果子(佐野ひなこ)のカップルはダイレクトなキスはNGらしい。

美少女風だが美少女とは言い難い愛海(大原櫻子)は母の容体が安定していることを近況報告。

クリスマス・パーティーの準備に忙しい冬真は・・・二宮風花(飯豊まりえ)にちょっと甘える。

別れた恋人を想いながら高月楓(菜々緒)は孤高のピアニストを目指す。

そして・・・ホワイト・クリスマスを迎えたニューヨークで・・・邂逅した恋人たちは手を繋ぐ。

「なんか・・・食べよう」

「いいお店知ってるの」

「黙って俺についてこい」

雑踏の中に消える夏向と美咲・・・。

そして通りに閃光が満ちる。

君に言いたいことがある

私に誠実でいてください

つらい気持ちを味わうのは

もうこりごりしているから

丸太のように眠りたい夜も

いい感じに腰をふってもらいたい

・・・それが恋の定番というものだから。

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2016年9月19日 (月)

見よ・・・ついに真田の命運をこの手に握り・・・つもりにつもった恨みを晴らす家康を(長澤まさみ)

ドラマの中で真田安房守昌幸が「お~い」と呼んで酒を所望する相手が大井政吉である。

大井氏は信濃の国衆の中で大族である。

家康配下となった依田信蕃・信幸兄弟が討ち死にした天正十一年(1583年)の岩尾城の守将が大井行吉である。

大井行吉は結局、家康の家老の一人である柴田康忠に降伏する。

佐久の耳取城には大井政成がいてすでに天正十年(1582年)に依田信蕃の組下になっている。

大井政成の嫡男が政吉である。

柴田康忠の娘が政吉に嫁しているので・・・本多正信配下で第二次上田合戦に参戦した康忠の嫡男・康長とともに陣営にいたわけである。

そして・・・蟄居を命じられた昌幸・信繁父子の目付(監視者)を命じられたわけだ。

大井をお~いと呼ぶのはフィクションだが・・・そこに大井政吉がいることには史実的な裏付けがある。

こういう神経の通い方が大河ドラマには本来求められていると考える。

真田も大井も信濃の国衆であり・・・かっての武田家の家臣だった。

それが・・・敵味方に分かれ・・・一瞬邂逅する。

音に聞こえた真田昌幸に声をかけられ・・・大井政吉はうれしかったに違いない。

そういうムードが臨場感を形成するのである。


で、『真田丸・第37回』(NHK総合20160918PM8~)  脚本・三谷幸喜、演出・田中正を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。二文字による各話タイトルを重ねてきて・・・ここで「信之」と来る・・・。しびれますねえ。三度の飯より戦が好きな真田昌幸と・・・自分が死ぬかもしれないので戦が嫌いな徳川家康の・・・見事な対比を描いてきて・・・ここでついに決着がつく。少なくとも昌幸の生存中には・・・大好きな戦をさせてやらないからね・・・という家康のいけずっぷりに一同大爆笑でございました。同じ人質出身の武将でありながら・・・好対照の二人が・・・宿敵になっていくという・・・作り話のような歴史的事実を堪能させてくれる今年の大河ドラマ・・・やはり二十一世紀最高傑作なのかもしれません。今回は・・・真田信幸あらため信之、その舅の徳川最強武将・本多忠勝第二弾、そして、逃亡中の敗軍の将・宇喜多秀家の三大描き下しイラスト大公開で大満足でございます。


Sanada37慶長五年(1600年)九月十五日、 小早川秀秋の東軍参戦と吉川広家の不参戦によって・・・戦力的均衡を失った西軍は壊滅的打撃を受け全軍が敗走という完敗を喫する。そもそも徳川家康と石田三成では格が違いすぎて戦にならなかった。十八日、佐和山城落城。二十日、家康は大津城に入城。徳川秀忠軍が合流する。二十一日、逃亡中の三成が田中吉政によって捕縛される。二十四日、西軍総大将の毛利輝元は不戦のまま大坂城を退去。二十七日、家康は大坂城に入城し、豊臣秀頼に拝謁。三十日、上杉景勝は西軍の敗北を知る。十月一日、六条河原にて三成は斬首され、首は三条大橋に晒された。三日、長束正家自刃。宇喜多秀家は薩摩国に逃亡する。十日、毛利家120万石は36万石に厳封処分。十二日、加藤清正は小西家の肥後国宇土城を開城させる。十一月、島津義弘が家康に謝罪。十二月、真田昌幸・信繁父子に高野山での蟄居が沙汰される。真田信幸は信之と改名し、上田・沼田領を合わせ九万五千石の大名となった。慶長六年(1601年)一月、昌幸と信繁の妻子は高梨内記ら少数の家臣とともに九度山での配流生活に入る。上杉家は会津120万石から米沢30万石に減封となった。慶長七年(1602年)、小早川秀秋は病死して小早川家は断絶。慶長十一年(1606年)、宇喜多秀家は八丈島に流罪となる。
大坂城西の丸の家康の元に・・・本多忠勝が真田伊豆守を伴って参上したのは十二月の朔日だった。

「助命のことか・・・」

家康は顔を顰める。

伊豆守は顔を伏せたまま言上する。

「父には切り札がございます・・・」

「真田には・・・凄腕の密殺忍びがおるそうだのう・・・」

「わが姉にございまする」

「ふむ・・・しかし・・・徳川には服部半蔵がおるぞ・・・」

控えていた本多正信が声をかける。

「じゃが・・・安房守の命を助けたとして・・・命を狙われるのは同じではないか」

家康は微笑んだ。

「父は・・・天下の行く末を見定めたことと存じます・・・もはや・・・上様のお命を狙うことはありますまい」

「その証はなんじゃ・・・」

「上様の影にお尋ねくださいませ・・・」

「何・・・」

家康の背後からゆらりと影が立ち上がる。

秀吉の死後・・・服部半蔵は家康の影に潜んでいたのだった。

同時に伊豆守の影から・・・真田忍びのくのいち初音が飛び出した。

本多忠勝は素早く、家康の前に進み、警護の姿勢をとる。

伊豆守は舅の忠勝の前に体を進める。

その頭上で二つの影が交錯する。

ゴロリと床に転がったのは服部半蔵の首であった。

「どうじゃ・・・家康・・・獲ろうと思えば・・・お前の首も今・・・」

影は姿を見せず家康の耳元で囁いた。

家康は微笑んだ。

「見事なものじゃのう・・・」

「姉上・・・そこまでじゃ・・・」

伊豆守は囁く。

しかし・・・初音の声は容赦がない。

「家康・・・返答やいかに」

「あいわかった・・・安房守の命は獲らぬ」

「よし」

すでに・・・初音の殺気は消えていた。

家康は息をついた。

「あれは・・・もはや達人というより・・・魔性のものじゃな・・・」

「御意にございまする」

伊豆守は平伏した。

本多忠勝は何事もなかったように・・・その傍らに戻る。

「寒気がしたわ・・・」

家康は爪を噛んだ。

「火の気をお持ちしましょう」

本多正信が立ち上がった。

家康はようやく・・・転がった忍びの首を見て・・・瞑目した。

次の瞬間・・・首は音もなく消えた。

半蔵組の忍びたちは・・・初音を追ったが・・・誰も追いつくことはできなかったという。

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2016年9月18日 (日)

瀬戸内少年野球団(武井咲)出塁しても生きて本塁に帰れるかわからんゲームなのね(本田望結)

土曜日の谷間である。

「瀬戸内少年野球団」と言えば・・・故・夏目雅子のほぼ遺作である。

作品に恵まれているとは言い難い武井咲だが・・・今回は・・・中井駒子を無難に演じている。

なにしろ・・・まだ22才なのである。

ものすごくベテラン感が漂うよね・・・。

リメイクということでは・・・今をときめく波瑠版も見てみたいが・・・それはそれである。

ちなみに・・・「あまちゃん」の終盤だったのでレビューはないが・・・2013年9月15日の「ドラマスペシャル いねむり先生」は伊集院静の自伝でマサコ(波瑠)だった・・・まさに再来だったな。

こちらは阿久悠の自伝である。

美少年の足柄竜太が阿久悠になるのだが・・・ならんだろうとつい思ってしまうのだった。

ちなみに映画「瀬戸内少年野球団」(1984年)で足柄竜太を演じたのは山内圭哉である。

で、『ドラマスペシャル 瀬戸内少年野球団』(テレビ朝日20160917PM9~)原作・阿久悠、脚本・寺田敏雄、演出・松田礼人を見た。原作小説は1979年度下半期の直木賞候補作品である。ちなみに・・・テイタム・オニールが美少女投手を演じた「がんばれ!ベアーズ」は1976年に公開されており・・・小説「二十四の瞳/壺井栄」は1952年に発表されている。本作の二人のヒロインが女子小学生とおなご先生である以上・・・いただきなのは明らかだ。つまり「がんばれ!ベアーズ」プラス「二十四の瞳」イコール「瀬戸内少年野球団」なのですな。

太平洋戦争末期・・・まもなく出征する中井正夫(三浦貴大)の妻となった駒子(武井咲)は淡路島の国民学校の教員である。

戦時中なので肯定は畑となり、駒子先生は児童たちと芋作りに励むのだった。

昭和二十年春・・・駒子の元に夫の戦死の報せが届き・・・駒子は未亡人となる。

そして・・・終戦・・・軍国主義は終焉を迎え・・・戦後民主主義が始る。

学校では教科書に墨を塗るのだった。

島の駐在の足柄忠勇(平泉成)の孫である足柄竜太(坂田湧唯)・・・。

幼くして母を亡くし・・・父親も戦死して・・・描きためた軍艦のスケッチも進駐軍の目を憚って燃やさなければならないのだった。

戦後の混乱に幼い心は揺れるが・・・男女共学となり東京から転校してきた波多野武女(本田望結)と出会い胸はときめくのである。

「これからは民主主義です・・・人間は自由で平等です」

駒子は戦争が終わったことにどこか安堵していた。

夫の両親である・・・中井銀造(大杉漣)と豊乃(高橋惠子)は・・・未亡人となった駒子に・・・次男の鉄夫(栗山航)との再婚話を持ちかける。

しかし・・・断固として拒否する駒子だった。

鉄夫は・・・駒子に横恋慕しており・・・夜這いをかけようとするが・・・断固として拒否する駒子なのである。

そして・・・駒子にとって幸いなことに・・・傷痍軍人となった夫の正夫は帰還するのだった。

そのうち・・・なんとかなるだろうと考えていた鉄夫は仲睦まじい兄夫婦に嫉妬のドス黒い炎を燃やすのだった。

戦前は床屋だった穴吹トメ(友近)は進駐軍相手のキャバレーを始める。

駒子を自分のものにできなくなった鉄夫は・・・キャバレーで酒浸りになり・・・やがて進駐軍兵士と暴力沙汰を起こす。

旅の役者である池田新太郎(山内圭哉)は仲裁に入り、玩具の短刀で切腹の真似ごとをする。

キャバレーの女給だった節子(宮崎香蓮)はそんな新太郎に惚れるのだった。

武女(むめ)の父親は海軍提督で・・・極東軍事裁判の呼び出しを待つ身だった。

職業軍人である父を持つ武女と・・・父親が戦死した竜太はお互いに惹かれるものを感じる。

竜太の幼馴染で・・・貧しい農家の子である正木三郎(山下真人)は食欲の命じるままに進駐軍相手に「ギブミーチョコレート」を連発する。

長兄の一郎は戦死、次兄の次郎(えなりかずき)は徴兵検査の前に醤油を飲んで死にかけた男である。

竜太は・・・三郎が進駐軍から頂戴したチョコレートは断固拒否するが・・・「となり町の小学校の奴が・・・風呂を覗いたらしい」と・・・武女の入浴を覗き見することを持ちかけられると断れない。

二人は覗きに出かけるが・・・生憎、入浴していたのは父親で・・・覗きの現場を武女に発見される始末。

二手に分かれて逃げた二人だったが・・・捕まったのは竜太だった。

酒乱の気がある父親の暴力から逃れるための物置に・・・竜太を連れこむ武女。

「見せてあげようか」

おませな武女は竜太を誘惑する・・・が・・・震える竜太の頬にキスするだけで解放するのだった。

しかし・・・竜太は下半身の火照りを覚えるのである。

「子供たちは・・・混乱しているわ・・・だって・・・大人の都合で・・・鬼畜米英が進駐軍様になったんだもの」

駒子は教師としての迷いを夫に相談する。

「野球なら・・・ルールはそこそこ変わらない・・・来た球を打つ・・・それだけだ」

正夫は甲子園に出場したこともある男である。

「俺はもう・・・走れないが・・・ルールを教えることならできる」

こうして・・・駒子は・・・児童たちに野球を教えることにする。

そして・・・男女同権の象徴として・・・武女は・・・エースとしてチームに参加するのだった。

江坂町国民学校に江坂タイガースが誕生したのだった。

となり町の小学校ではすでに野球部が誕生している。

駒子は試合を申し込み・・・実現の運びとなる。

大坂の闇市場で成金となった次郎はユニホームなど装備一式をチームに送る。

江坂町の大人たちは・・・子供たちに戦後の夢を託すのである。

拗ねていた鉄夫も・・・不具となった兄に代わりコーチを買って出る。

戦争責任を問われなかったことで忸怩たる思いの武女の父親も応援に現れる。

しかし・・・となり町の小学校は・・・物凄い強敵だった。

六回を終わって25対0である。

最後の打席に向う竜太に三郎が囁く。

「あのな・・・武女の風呂を覗いたの・・・あのピッチャーやで」

闘志に火がついた竜太はランニングホームランを放つのだった。

しかし・・・反撃もそこまで・・・試合終了である。

だが・・・江坂町の人々は歓喜に沸くのだった。

「戦争は勝っても負けても二度としたくないと思うが・・・野球は勝とうが負けようがまたしたくなる」

正夫は駒子につぶやく。

その後・・・池田新太郎は公金を横領したあげく・・・節子と駆け落ちした。

大日本帝国の滅亡の後・・・野球が日本国民を鼓舞する。

それが・・・昭和というものなのだ・・・平成の人々にはわからないかもしれないが・・・。

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2016年9月17日 (土)

ガードセンター24~広域警備指令室(中島健人)自己満足男が苛立たしい女(栗山千明)私はイチゴではありません(谷花音)蜩の鳴く個室(川栄李奈)

連続ドラマの話数がどんどん短縮されて・・・五輪の夏の後は長めの谷間になりそうだ。

その谷間を埋めるのが二時間ドラマである。

結局、スタッフもお茶の間も低視聴率の長丁場に耐えられなくなってしまったのか・・・。

そういう枠ではキワモノ企画のおためしのような傾向が生じる。

日本テレビの秋ドラマには・・・「ラストコップ」という2015年のおためし企画が連続ドラマ化されて登場するわけだが・・・「太陽にほえろ!」の制作局がなぜかストレートな刑事ドラマが苦手になってしまったのは面白いことだなあ。

テレビ朝日が量産するベタなミステリに・・・何故か正面から挑めない日本テレビ製作陣である。

そして・・・投げる球がすべて暴投気味なんだよな。

まあ・・・「デカワンコ」みたいな怪作も時々出るからいいけどね。

今回はガードマンものである。

帝国アイドル縛りなので・・・いろいろとアレだが・・・需要と供給のバランスの一種のさいはてと考えればしみじみするものはある。

で、『ガードセンター24 広域警備指令室』(日本テレビ20160916PM9~)脚本・蛭田直美、演出・松原浩を見た。BS放送局のDlifeのドラマ「東京ガードセンター」(2014年)のリニューアルであり、スタッフは一部重複している。新人である主人公を調教する安藤心は・・・安西心に改名しているが仇名が「安心」であることは変わらない。主人公は・・・人並み外れて慎重な性格だったが・・・アイドルが主人公であるために・・・家族思いで短絡的な若者にキャラクター・チェンジしている。顧客相手に自分のことを「俺」って言っちゃうところで脱落するお茶の間も多いだろうが・・・そういうビジネスである。ホストクラブかっ。

大手警備会社「セキュリティ24」の警備員・篠宮守(中島健人)は・・・中枢指令室であるセキュリティ・ガードセンターの指示に従わず、逸脱行為が多いことが問題視されていた。

一戸建ての住宅に・・・不法侵入者があり・・・警報を探知したガードセンターは警備員の出動を要請する。

警備員・篠宮は出動し・・・ガードセンターの監視員・安西心(栗山千明)の指揮下に入る。

警備会社の仕事はあくまで警備であり・・・犯罪者の確保は警察の仕事である。

しかし・・・住民の少年を見た監視員の指示を無視して・・・窃盗犯と格闘してしまう。

「篠宮警備員・・・何をしている」

「つかまえました・・・大丈夫!大丈夫!」

「犯人確保は我々の仕事ではない」

「でも・・・子供が側にいたんで」

「だったら・・・なおさらだ・・・顧客の安全を確保するのが私たちの仕事よ」

「・・・」

「退避しろと言われたら退避しなさい」

安西は・・・篠宮警備員に苛立つのだった。

現場での滞在時間の長さでワースト記録を持つ篠宮は・・・「余計なこと」をしでかすタイプだったのである。

だが・・・センター長の野々村省吾(上川隆也)は篠宮の業務記録を分析して・・・何故か、監視員に抜擢する。

篠宮監視員の指導係を命ぜられた安西は茫然とするのだった。

こうして・・・「大丈夫くんと安心ちゃん」のコンビが結成されたのだった。

両親と死別したあと・・・高校生の次男・譲(岩橋玄樹)と小学生の双子の弟を養育する篠宮はのしかかる責任から生じる不安を打ち消すために「大丈夫」が口癖になっていた。

危機に遭遇して不安に陥った顧客に口癖の「大丈夫」を連発する篠宮を厳しく指導する安西。

「危機が去っていないのに・・・安易に大丈夫と口にして・・・顧客に被害が及んだらどうするつもり」

「・・・」

「今度・・・大丈夫って言ったら百円な」と体育会系の外木場秀道(ケンドーコバヤシ)は揶揄する。

ガードセンターには超ベテランの新川仁一郎(中村梅雀)、セキュリティー・システムのエンジニア・王子俊一(田中圭)、お客様対応のプロフェッショナル・港麻美子(堀内敬子)など精鋭が揃っている。

一同は・・・篠宮の監視員としての力量を危ぶみ、野々村センター長の意図を計りかねる。

そして・・・ついに研修を終えて監視員としての業務に就く篠宮。

緊急度最高を示す赤ランプが点灯した。

顧客はストーカー被害に遭っている小川愛(川栄李奈)だった。

「セキュリティ24・・・ガードセンターの篠宮です・・・どうされましたか」

「駅から・・・男に尾行されて・・・公園のトイレに隠れています」

「大丈夫ですよ・・・ただちに警備員を派遣しますから」

しかし・・・指示の遅い篠宮に苛立つ一同。

仕方なく・・・警備員の手配などのバックアップを開始する。

「ひぐらしが鳴いてますね」

(え・・・)

「ひぐらしですよ」

(・・・)

「俺には弟がいるんですけど・・・蝉を大量に捕まえてきて家で放し飼いをしようとしたことがあるんです。もう・・・家中・・・蝉だらけになっちゃって・・・」

篠宮の思い出話はヒートアップして・・・思わず顧客も笑ってしまうのだった。

ドラマだからな。

「現場の公園に警備員一名到着」と外木場。

「警備員付きました・・・もう大丈夫ですよ」と篠宮。

「だめよ」と安西。

小川愛はノックの音に思わず個室の扉を開く。

そこに立っていたのはストーカーだった。

(きゃああああああああ)

「・・・」

驚愕する篠宮。

しかし・・・間一髪、ガードセンターからの通報で駆け付けた警察官が顧客の保護に成功する。

「あれほど・・・大丈夫と言ってはいけないと言ったのに・・・」

「す・・・すみません」

うなだれる篠宮にガード長が声をかける。

「震えていたな・・・」

「・・・」

「君自身が・・・恐ろしかったんだよな」

「・・・」

「それでいい・・・君は・・・被害者を落ちつかせることには成功した・・・現場でお客様が冷静さを取り戻すことは安全確保のためにとても重要なことだ・・・しかし・・・次からは・・・お客様にタメ口はなるべく控えるように・・・相手は君のファンじゃなくてお客様なんだから」

「・・・はい」

まあ・・・帝国的イメージの事情があるからな・・・。

なるべく・・・ドラマには持ち込まない方がいいけどね。

まあ・・・まともに敬語を使えない役だと考えるしかないけどね。

そんな人間にオペレーターが務まるのがどうかは別として。

お客様を危機一髪に追い込んだことに落ち込む篠宮。

久しぶりの休日だったが・・・弟たちから電話で呼び出される。

近所で催される産業祭のイベントにキッズアイドルグループ「ふるーつみるく」が出演するのでサイン用のCDを届けてほしいと言うのだった。

イベント会場に出かけた篠宮は・・・なんとなく様子のおかしい警備員(前田公輝)の存在に気がつく。

思わず・・・ガードセンターに照会する篠宮。

実は・・・本物の警備員は男にスタンガンで襲撃されて・・・男は装備を奪ったなりすましだった。

要請を受けて確認を行った安西だったが・・・擬装を見抜くことができない。

男は「ふるーくみるく」のメンバーである牧瀬いちご(谷花音)を狙う変質者だった。

いちごをスタンガンで失神させた変質者は車で逃走を開始する。

警備の途中で現場を離れる男の不審な行動に・・・思わずオートバイで追跡を開始する篠宮。

信号待ちのために停車した車の運転手に声をかけるが・・・逆襲され・・・無線端末を奪われてしまう。

その頃・・・警備本部では・・・警備員の装備強奪と・・・牧瀬いちごの所在確認が取れないことが問題となっていた。

上層部から・・・「警備会社として忌々しき問題だ・・・警察に通報する場合は判断を仰いでくれ」と命じられるセンター長だった。

一方、負傷しつつ・・・追跡を再開した篠宮は公衆電話から・・・センターに犯人の情報を報告する。

「お前が一番近い・・・追跡しろ・・・しかし・・・指示には従うこと」と命じるセンター長。

一方、篠宮の装備品とともに・・・車のトランクに閉じ込められたいちごは目覚めて叫ぶ。

「ここは・・・どこ・・・誰か助けて」

無線によってセンターに声が届き・・・思わず応答する安西。

「大丈夫よ・・・必ず助けるから」

変質者は山奥の別荘にたどり着く。

なんとか・・・尾行をやり遂げた安西だったが・・・肝心の現在位置がわからないのだった。

「おおよその場所は特定できた・・・退避して指示を待て」

しかし・・・その時・・・いちごの悲鳴が聞こえる。

「篠宮・・・自重しろ・・・」

「篠宮・・・行きま~す」

だが・・・返り討ちに遭い拘束される篠宮だった。

変質者は熱愛するいちごのために用意した「いちごの部屋」に少女を連れこむ。

「素敵だろう・・・いちごちゃんが・・・森に住みたいって言ってたから・・・」

「いちごはお仕事よ・・・虫嫌いだし・・・森に住みたいわけないでしょう・・・イチゴだって酸っぱいし、ぶつぶつが気持ち悪いし、本当は好きじゃない。一番嫌いなのはあんたみたいな勘違いの変態野郎よ」

「いちごちゃん・・・」

「いちごじゃないよ・・・本名・渡辺ひろみよ」

「きいいいいいいいいい・・・ニセモノかああああ・・・死ね・・・悪いいちごは死ね」

変質者はいちご(本名・渡辺ひろみ)を殴り飛ばすと・・・部屋に鍵をかけ・・・別荘に放火した。

拘束されている篠宮は・・・焦げ臭さに覚醒する。

「うわ・・・これは全然大丈夫じゃないな」

「誰か助けて」

「いちごちゃん・・・そこにいるのかい」

「あんた・・・だれ・・・」

「助けに来たけれど・・・悪い奴にやられて動けない・・・その部屋には窓はないかな」

「あるけど・・・高くて届かないよ」

「部屋の中には何がある・・・」

「いろんなものがあるよ・・・天井にはカメラもついてるし・・・」

「カメラってどんな・・・」

「S24って書いてある」

「うわあ・・・うちの警備対象かよ・・・いちごちゃん・・・何か固いものをぶつけて・・・窓ガラスを割れないかな」

「やってみる」

いちご(本名・渡辺ひろみ)は変質者の残したスタンガンを投げてガラスを割った。

ガードセンターにたちまち鳴り響く警報音。

「位置特定できました」

「ただちに・・・現場に急行中の緊急車両に連絡」

近付くサイレンの音を聞きながら・・・遠ざかる篠宮の意識・・・。

(大丈夫だ・・・俺は・・・守られているから・・・)

まあ・・・いろいろと問題はあるが・・・帝国アイドルのビジネスとしてはまあまあである。

一番活躍したのはいちご(本名・渡辺ひろみ)だけどな。

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2016年9月16日 (金)

あなたのとなりに犯罪者がいることに気がつかないのはこの上なく危険(山田孝之)

人々はクリスチャンでなくても「汝の隣人を愛せよ」と教育される。

誰かを憎むよりも愛する方が心は安らかだと諭すものもいる。

人間の本質は「善」と訴えるものもいる。

父親が外国人であることが政治家として問題になるのは不健全だと語るものもいる。

そう信じるのは自由だが・・・放課後の中学生を誘拐する国家や、国民を戦車で弾圧する国家、飢餓に対する食糧援助で武器を準備する国家を信用するものは少ないだろう。

綺麗事の裏に潜む悪意を見抜く目を養わなければ・・・生き抜くことは難しい。

「汝の隣人を愛して」もいいが「汝の隣人を疑う目」も養う必要がある。

見栄えもよくて・・・弁もたつ・・・しかし、父親が外国人。

自身の国籍についての発言が二転三転する。

そういう人間を代表にしてしまう党はどこか・・・甘い。

そんなものに・・・自分の生活を預けてしまう国民は多くないだろう。

そういう道理がわからないものは・・・政治家なんか目指すべきじゃないよねえ。

何様なんだ・・・と言う昔馴染みの言葉を思い出す。

で、『ウシジマくん Season3・第8回』(TBSテレビ201609140128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。警察は恐ろしい組織である。なにしろ・・・犯罪者と日常的に対峙しているのだ。しかし・・・いざとなったら・・・一般市民は警察に保護を求めるしかない。犯罪者でない人間にはその権利がある。しかし、犯罪者であってもより兇悪な犯罪者から身を守るためには警察に身柄を預けるしかない場合がある。そんな選択を迫られないように君子は危うきには近寄らないものだ。だが・・・じっとしていも危険はにじり寄ります。

いよいよ・・・クライマックスが近付いてきた。

犯罪者であるウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)がヒーローとして輝くのは一瞬なのである。

その一瞬のために・・・一部お茶の間は地獄を彷徨うのだなあ。

闇金融「カウカウファイナンス」に今日も新規の顧客が訪れる。

初回の限度額は五万円。

利子は十日で五割である。

十日後には二万五千円の利息を支払わなければならない。

このシステムそのものが違法なのである。

それでも・・・合法では借金できない人々が今日も訪れる。

ソープ嬢の卑弥呼(神ユキ)が新人(水本佳奈子)を紹介する。

「この子、親の借金で今日からソープで働くの・・・貸してあげて・・・私には紹介料頂戴」

「お前・・・利息が遅れてるぞ」

「それは私が身体で払うから」

「金で払え・・・俺は柄崎じゃない」

高田(崎本大海)は思わず柄崎(やべきょうすけ)を見る。

「こいつ凄い名器なんだよ・・・俺はいつも十秒」

そこで机の影から受付嬢・エリカ(久松郁実)が姿を見せる。

思わず「あ」と言う柄崎だった。

柄崎はエリカに懸想しているのだった。

小百合(西條るり)→摩耶(久保寺瑞紀)→エリカと変転していく女事務員・・・前任者たちは・・・どこに消えてしまったのか。

「女は用心深い生き物だ・・・逃がさないためには警戒が必要だ」

ウシジマくんは誰にともなく言う。

風俗店「エロリアーノ」のモコこと葉山朋子(希崎ジェシカ)の本業は看護師である。

自殺未遂で負った怪我の癒えた上原まゆみ(光宗薫)に言葉をかける。

「婚約者が迎えにきてくれて・・・よかったですね」

蒼ざめるまゆみ・・・病院という閉鎖された空間で理性を取り戻した彼女は・・・悪魔である婚約者・神堂大道(中村倫也)の魔手から逃れるために一日早く退院するつもりだったのだ。

「内緒で退院しようなんて・・・どういうつもりです・・・大麻の常習者で・・・死体遺棄の犯罪者で・・・自殺未遂という大罪を犯したものが・・・この上・・・私に迷惑をかけるつもりですか」

神堂の愛車に強制的に乗車させられるまゆみだった。

「靴を脱ぎなさい・・・裸足で走ったら足が痛いですよ」

しかし・・・買い物に出かけた神堂の一瞬の隙をつき・・・逃走するまゆみ。

そのまま・・・警察に駆け込めば・・・事態はかわっていただろう。

だが・・・すでに犯罪者であるまゆみはその選択をすることができなかった。

神堂は・・・まゆみの家族を招集する。

神堂に対する疑いの心を残している父親の重則(名倉右喬)は疑問を投げかける。

「なんで・・・あの子は逃げたりしたんだ」

「彼女が警察にかけこんだりしたら・・・あなたは家族から犯罪者を出すことになるんですよ」

すでに・・・神堂と性的関係を結び・・・彼の支配下に置かれている母親の上原広子(武藤令子)や妹のみゆき(今野鮎莉)は積極的に捜索に乗り出す。

足をビニール袋で覆い、側溝に身を潜ませ、逃げるまゆみ。

しかし・・・神堂の追跡は執拗だった。

神堂の携帯電話に・・・魔女である占い師・勅使川原先生(三田真央)から連絡が入る。

「今忙しい・・・上原まゆみから連絡があったら・・・引きとめておけ・・・自尊心をすべて奪い調教する必要がある」

逃げ場を失ったまゆみは・・・幼少の頃の避難場所だった倉庫に身を潜ませる。

優しい母親の声がする。

「まゆみ・・・いるのかい」

「ママ・・・一人」

「私一人だよ・・・ここを開けてちょうだい」

恐る恐る倉庫の扉を開くまゆみ・・・そこには神堂が立っている。

神堂はまゆみを松田明日香(市橋直歩)のアパートに連れこみ、裸体にして電極を設置する。

電気ショックによる拷問である。

激しい苦痛とともに認知障害を引き起こすことで・・・洗脳の手法として有効である。

「あなたは・・・松田明日香さんの父親と不倫関係に陥り・・・彼女の父親を殺したのですね」

「何を言っているのですか」

「スイッチ・オン」

「ぎゃあああああ」

「スイッチ・オフ」

「彼女の父親を殺して海に捨てましたね」

「殺してなんかいません」

「スイッチ・オン」

「ぎゃあああああ」

「スイッチ・オフ」

「彼女は二千万円で・・・このことを口外しないと約束してくれました」

「このことって・・・」

「あなたが彼女の父親を殺したことをです」

「私は殺してません」

「スイッチオン」

「ぎゃああああ」

地獄の責苦である。

電気ショックにより・・・見当識障害、前向性健忘、逆行性健忘・・・様々な記憶障害が生じ・・・人間は正しい認識力を失う。

自分が殺人者かどうか・・・まゆみは判断を下せなくなっていく。

文字通り・・・自分を見失っていくのである。

調教され、洗脳されたまゆみは神堂に絶対服従する人形となった。

まゆみを喫茶店に呼び出した男日照りの編集長(小嶋理恵)は退職を勧告する。

「不当解雇です」

「経理で・・・あなたの使いこみが問題になってるのよ」

「退職金はいくら出ますか」

「え・・・」

突然・・・土下座するまゆみ。

「編集長、お願いです・・・私に三万円貸してください」

「上原・・・」

店を出たまゆみは携帯電話で神堂に報告する。

「編集長からお金を引き出せました」

(電車に乗る前にまた電話しなさい)

「はい」

上原家にまゆみを伴って乗り込む神堂。

「まゆみさんは・・・愛人を殺し・・・海に捨てました」

「そんな馬鹿な・・・」と叫ぶ上原重則。

「シゲノリ・・・神堂さんに逆らうな」

「え・・・」

「共犯者から二千万円の口止め料を要求されています」

「そんな」

「娘が可愛くないのですが」

「しかし・・・二千万円なんて」

「あなたが親から譲り受けた土地があるでしょう」

「あれは・・・兄弟で管理している土地だ・・・私の一存では」

「シゲノリ・・・神堂さんに逆らうな」

「娘が犯罪者になるかどうかの瀬戸際です・・・世間体を気にしている場合ではありません」

上原家に世にもおぞましい沈黙が訪れる。

神堂はみゆきの夫のカズヤ(板橋駿谷)に囁きかける。

「まゆみさんが愛人を殺したのは・・・あなたとまゆみさんが大麻を吸っている画像を愛人に見られて脅迫されたからなのです」

「そんな・・・」

「もしも・・・まゆみさんが逮捕されたなら・・・あなたにはまゆみさんの恋人への暴行の件もありますから・・・懲役は免れません」

「・・・」

「それはそうと・・・みゆきさん・・・風俗で働いてますよ・・・確認してみたらいかがです」

みゆきは・・・まゆみを連れて「カウカウファイナンス」を訪れた。

「姉にお金を貸してよ」

「お前が保証人になるなら」

「姉にも風俗紹介するからいいでしょう」

「初回は五万・・・手数料ひいて二万だ」

「この人・・・二万あれば何でもするわよ」

「みゆき・・・お前・・・何かあったな」

「・・・」

「顔つきが全然違うぞ」

柄崎は裏デリヘル「ガラダマ」を経営する金子ババー(箱木宏美)の回収に訪れる。

客を装ったカズヤは・・・「みゆ」という源氏名の自分の妻を指名カタログに発見する。

「その娘・・・人気ナンバーワンね」

その頃・・・みゆきは駱駝会の柏木(大塩ゴウ)に買われていた。

回収の帰りに柄崎は上機嫌の柏木に声をかけられる。

「柄崎・・・金子ババーのところにいい女が入ったぞ・・・そのうちクスリ漬けにして俺の女にしてやる」

「はあ・・・」

妻となったまゆみの妹のみゆきを優しくマッサージする神堂。

「もしも・・・あなたと先に出会っていたら・・・僕は運命を呪います」

「神堂さん」

まゆみの母親を激しく貫く神堂。

「上原家の不幸は・・・家長があなたの夫だったことだ。鬘を剥がされて文句も言えない彼の不甲斐なさが悪いのです。私があなたに本当の男というものを教えてさしあげる」

「ああ・・・神堂さん」

父親の携帯電話に・・・送信される妻の不倫動画。

「私の妻が・・・他の男と・・・神堂さん・・・私はどうすれば」

「私の指示に従いなさい」

勅使河原は報告する。

「総資産はざっと三億円です」

「では・・・上原家全財産没収計画の最終段階に入ろう」

悪魔は凄惨な喜悦に顔を歪ませる。

・・・結城美奈(佐々木心音)は母親の幸せそうな姿を見る。

結城恵美子(倖田李梨)は愛人の亀井(仲俣雅章)と自転車を二人乗りしていた。

しかし・・・友人の沙希(寺田御子)にブランドものを貢ぐスナックの客の話を聞かされる。

「最低のセンスなんで即換金」

「この人・・・」

沙紀に貢いでいる男は亀井だった。

「馬鹿な・・・ママ・・・その娘の私も馬鹿だ」

闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)と腹心の部下・村井(マキタスポーツ)に母親の借金返済を迫られる美奈。

「母親の借金だ・・・身を売って返せよ」

「売りはやらない」

「売れよ」

「ママの借金は・・・ママに返させるよ」

美奈は決意の表情を見せる。

沙希のアドレスを利用して亀井に3Pを持ちかけおびき出すことに成功した美奈。

母親の恵美子には変態相手の母娘売春ともちかけて紙袋を顔にかぶせた。

「沙希はどうした・・・そっちの女・・・肉たるんでるじゃねえか」

「沙希はこないよ・・・おじさん、お金持ちなんでしょう・・・三万円くらい安いじゃない」

「金なんてねえよ・・・馬鹿な売春婦の婆に貢がせてるだけさ」

「だってさ・・・ママ」

美奈は母親の顔を晒す。

「え」

「ママ・・・この男の正体わかった」

「美奈・・・お前・・・またママから男を寝取る気」

「二番目のパパのこと・・・私の身体触ってくるから・・・やめさせてってママに頼んだのに・・・ママはシカトしたよね」

「うるさい・・・男はそんなに若い女がいいのかよ・・・あんた・・・奥さんと別れて私と結婚してくれるんだろう」

「馬鹿言うなよ・・・俺は帰る」

「じゃあ・・・私との関係・・・奥さんにばらしてやる」

「ふざけるな・・・死ねよ」

亀井は恵美子の首を絞める。

「警察・・・呼ぶよ」

「お前も死ね」

亀井は美奈の首も絞める。

「表で・・・彼氏が見張ってる・・・」

「なに・・・」

蒼ざめる亀井。

「ざまあみろ・・・」と叫ぶ恵美子。

「あれ・・・ママの取り立ての人・・・」

「え・・・」

窓の外には村井が立っていた。

亀井は・・・ATMで全額を引き下ろさせられたが・・・四千円不足していた。

犀原茜は恵美子をホームレス相手の売春婦・肉まんま(寺本操・・・実年齢1938年生れの78才)の元へと引きたてる。

「ここで客をとって不足分を返してもらうよ」

「若い女だ」と騒ぐホームレスたち。

「嫌だよ」と震える恵美子。

「ここじゃ・・・一発千円だ・・・稼ぎな・・・紹介料五百円だから八発な」

この世の地獄である。

ヘルス・リーズナブルはゴミ箱なのだ。

まゆみは利息を持って「カウカウファイナンス」を訪れていた。

「百万円の追加融資をお願いします」

「何に使うの」

「堕胎費用です」

「証拠見せてもらおう」

エリカは妊娠検査薬を差し出す。

検査をしたまゆみは陽性反応に驚く。

予想外の出来事に神堂に携帯電話で指示を仰ぐまゆみ。

「神堂様・・・妊娠していました」

(子供が出来たのは素晴らしいことです・・・それよりお金を借りてさっさと戻りなさい)

「はい・・・」

「とりあえず・・・二十万だ」

「すみません」

「あやまることはない・・・金を借りることは悪い事じゃない・・・利息で責任を果たせばな」

「・・・」

「あんた・・・本当に堕すの・・・」

(子供は産みたい・・・だけどとても育てられない・・・あの家に帰るのは嫌だ・・・誰か助けて)

まゆみの声なき悲鳴を聞くウシジマくん。

「なんか言った・・・」

「・・・」

「なんかあったら・・・俺に言いな・・・金利分くらい相談にのるから」

まゆみは・・・立ち去るウシジマくんの背中を見つめて立ちすくむ・・・。

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ウシジマくん Part2

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2016年9月15日 (木)

愛とはお金です(北川景子)今日のこころごはんは肉じゃが(臼田あさ美)

五輪の夏ドラマに華麗に舞った「家売るオンナ」もフィナーレである。

最後まではっきりとは提示されないが・・・「サンチー不動産」は公私混同のパートナーと仲良く経営しているのでハッピーエンドなのだろう。

なんだかんだ・・・サンチーにとって・・・課長は・・・ずっとお慕い申し上げていた相手だったのではないだろうか。

そういう意味で・・・このドラマはお仕事ドラマの皮をかぶったラブコメなのである。

コンプライアンスに縛られて優柔不断になってしまった「会社の犬」を「男」として再生させる。

それが・・・サンチーの「パートナー探しの物語」なんだな。

もちろん・・・仕事はあくまで家を売ることなのです。

「世界一難しい恋」に続いてトレビアンな作品連打のこの枠・・・三作続けられたら・・・好ましい枠になるのだが・・・はたしてどうかな。

で、『家売るオンナ・最終回(全10話)』(日本テレビ201609ぬうPM10~)脚本・大石静、演出・佐久間紀佳を見た。妄想的には・・・BAR「ちちんぷいぷい」のママ・珠城こころ(臼田あさ美)がテーコー不動産株式会社・・・新宿営業所売買営業にやってきて屋代課長(仲村トオル)に抱きついた時・・・ポーカーフェイスを装いながら・・・営業チーフ・三軒家万智(北川景子)の心は穏やかではなかったと考えます。

不倫中なので・・・アフターファイブの付き合いが悪い事務員の室田まどか(新木優子)はこころママの存在を知らないのだった。

心のオアシスが職場に乱入して戸惑う男性社員一同である。

「私・・・黒い服を着た人に出ていけって言われちゃったの~」

話を整理すると以下の通り。

黒い服の人はBAR「ちちんぷいぷい」のある「サイトウビル」の管理会社の社員。

「サイトウビル」はオーナーが更地にして売却するために半年前から立ち退きが通告されていた。

相応の立ち退き料が支払われるところだが・・・こころママにとって・・・「ちちんぷいぷい」は「故郷」のようなものなので・・・退去するとアィデンティティが崩壊する。

「まるで・・・かっての私みたい」と白州美加(イモトアヤコ)・・・。

「全然違うから」と完全否定するこころママだった。

屋代課長がビルのオーナーと交渉した結果・・・ビルをそのままで売ることに問題はないのだった。

「サイトウビル」の現状は次の通り。

地上二階、地下一階のビル。

二階はオーナーの住居だったが・・・今は空き家。

一階は喫茶店だったが・・・今は空き店舗。

地下一階は三店舗のスペースがあり・・・現在、テナントとして営業しているのは「ちちんぷいぷい」のみである。

「テナントを埋めて・・・ビルの価値を高めて・・・一棟売りをする」

「賃貸物件としてテナント探しですか」と一番影が薄かった八戸大輔(鈴木裕樹)はクレームをつけるのだった。

「ビルを売るためだ・・・ビルを売れば大きな業績になる・・・総力戦だ」

しかし・・・サンチーこと三軒家チーフは・・・素知らぬ顔で・・・本日のゲスト顧客と面談中である。

宝塚マニアの女優が宝塚歌劇団元宙組男役トップスター(86期生)とご対面である。

「娘が事故にあって・・・足が不自由になってしまったので・・・バリアフリーの家に住み替え希望なのよ・・・」

「娘さんは・・・おいくつですか」

「十五歳」

「すると・・・望月様が・・・ストラスブールバレエコンクールで優勝なさった時と同じですね」

「あら・・・なんでそんなことを知ってるの」

「不動産屋だからです」

「・・・」

話を整理しよう。

元プロバレリーナの望月葵(凰稀かなめ)は娘と二人暮らし。

夫は・・・シンガポールを拠点に事業を展開していて・・・現地にも家族がいるらしい。

葵はバレエ教室を経営しており・・・娘のカンナ(堀田真由)もフランスのストラスブールバレエコンクール(スイスのローザンヌ国際バレエコンクールのようなものらしい)に出場する予定だったが・・・直前に負傷し・・・車椅子生活になってしまったのだ。

これは・・・やはり・・・パラリンピック対応か・・・。

「娘の前では・・・バレエの話はしないで・・・」

どうやら・・・心の糸がもつれているらしい。

大学病院の特別室に入院中のカンナと面談するサンチー。

「新しい家なんか・・・欲しくない」

「でも・・・今の家ではいろいろと不便だから・・・」

「ずっと入院しているもの」

明らかにクララである。

医師によれば怪我は完治しているが・・・カンナは立つ気がないらしい。

そこには・・・不仲な両親に対する思春期の娘の複雑な思いが関係しているのである。

「失礼ですが・・・あの部屋は差額ベッド代だけで一日五万五千円、一月165万円、一年で二千万円近くになります・・・お支払いはどうなさっているのです」

「主人は・・・お金だけは惜しみなく支払ってくれるのです」

金に糸目はつけない顧客に燃えあがるサンチーの商魂である。

「ちちんぷいぷい」で屋代課長と最古参の布施(梶原善)が経過報告をしている頃、サンチーは二階のバリアフリーではない住居を査定し、一階の蜘蛛の巣の張った空き店舗の壁紙を剥がし、床の絨毯をめくりあげ、足を踏みならす。

そして「この家は私が売ります」宣言である。

なぜなら「私に売れない家はない」のだから。

足立(千葉雄大)は深川営業所の同期社員から「サンチーの移動の噂」を仕入れる。

サンチーが新宿営業所から去る・・・その話は庭野(工藤阿須加)とシラスミカを激しく動揺させる。

「チーフが好きなら・・・なんとかしないとねえ」と微笑む足立王子。

「なんとかって・・・」

「強気で押すのさ・・・」

妄想で「そばにいろ」とサンチーをあすなろ抱きする庭野だったが・・・背後に立っただけで「私の背後に立つな」と一喝されるのだった。

ゴルゴサンチーである。

「自分は・・・」

「自分はなんだ・・・」

「ついていってもいいですか」

サンチーの犬は・・・サイトウビル一階の空き店舗の原状復帰を命ぜられる。

「僕・・・一人でですか」

「お前一人でだ!」

庭野は・・・壁紙をはがし、絨毯をはがし・・・店舗を磨くのだった。

もはや・・・別の業者である。

総力戦のテナント探し・・・足立は人気の占い師に目を付け、布施はヨガのトレーナーを勧誘する。

屋代課長は勧誘先のメイドカフェでツンデレコースを堪能する。

「一昨日きやがれ」

「僕はお客で課長は僕なのに~」なのである。

つまり・・・屋代課長は尻に敷かれたいタイプなのである。

宅間(本多力)は屋台のおでん屋を口説くが・・・少し無理があるのだった。

一方・・・シラスミカは・・・サンチーが移動になる前に家を売るオンナになろうと・・・初めて真剣に顧客名簿に取り組む。

だが・・・シラスミカなので・・・家はいれなかった。

「私に家は売れません」

「シラスミカ・・・あなたは会社を辞めなさい・・・今までたくさんの新人を見てきましたが・・・あなたほど学習能力のないものはいなかった。あなたには仕事があいません。あなたは自立することはできない。あなたは誰が守ってくれる人を捜すのです。それがあなたにふさわしい生き方です」

サンチーの忌憚のないアドバイスに茫然とする一同だった。

しかし・・・シラスミカは素直に足立を急襲するのだった。

「私と結婚して下さい」

「それは無理だよ」

「どうして・・・私はこんなに足立さんが好きなのに」

その理屈だとアイドルファンは全員アイドルと結婚できるわけだ。

「僕はみんなのものだから・・・誰かのものにはならない・・・だから誰とも結婚しない」

足立の答えがすでにアイドルである。

「じゃ・・・最後にキスして・・・それでこの夏のことはすべて思い出に変えるから」

「・・・ごめん」

生理的に・・・あるいは本能的に・・・シラスミカの唇から逃避する足立だった。

一人取り残されたシラスミカを宅間が見守っていた。

お似合いだからな。

望月葵を尾行した探偵モードのサンチーは・・・公園で盗撮を開始する。

動画を持って病院を急襲するサンチー。

「来ないでって言ったでしょう」

「あなたに見てもらいたいのです」

動画は・・・「深夜の公園で一人踊る望月葵さん」だった。

「あなたが踊れなくなって・・・お母様はあなたを気遣ってバレエ教室を閉鎖した・・・あなたは御両親の不和を理由に・・・バレエを見限った・・・しかし・・・それは逃げているだけ・・・お母様はあなたの前ではバレエを封印した・・・しかし・・・踊らずにはいられない。だから・・・こうして誰もいない場所で・・・自分のためにだけ踊っている・・・踊るのをやめたら・・・自分が自分でなくなってしまうから」

「・・・」

サンチーはゴキブリの玩具を投げる。

「あ・・・ゴキブリ」

「きゃ・・・」

カンナは思わず立った。

気がつくとサンチーは消えていた。

目の前にあるのは・・・母の踊る姿のみ・・・。

カンナは・・・母の姿を見つめた。

一方・・・屋代課長は・・・本社から・・・「再開発計画に含まれるサイトウビルから手を引け」と勧告される。

仕方なく・・・手を引こうとする屋代課長。

そんな屋代課長を「会社の犬」と詰るサンチー。

「私は・・・会社から恩を受けたとは思っていません。私はお客様の人生を預かっているのです。私の仕事は家を売ることです」

「君はそうかもしれないけど・・・」

「こころママのために・・・ちちんぷいぷいを守るという志は嘘だったのですか」

「・・・」

鬱屈した屋代課長は「ちちんぷいぷい」を訪れる。

「この店を守るためには・・・会社を辞めなくてはならない」

「そんな・・・だったら・・・いいよ・・・屋代ちゃんには会社を辞めてもらいたくない」

なにしろ・・・テーコー不動産一同は上客なのである。

「おまじないしてあげる・・・ちちんぷいぷい」

しかし・・・屋代課長の心ははれない。

定時になっても出社しないサンチーを案ずる一同。

思わず・・・サンチーの自宅に走り出す庭野だったが・・・サンチーはシンガポールに無許可出張していた。

「シンガポールですか」

「これから帰る」

サンチーはサイトウビルに望月母娘を案内する。

「この部屋・・・少しもバリアフリーになっていないじゃないの」

「次は一階です・・・」

「え・・・」

一階はレッスン場に改装されていた。

「お二人は・・・二階の部屋にお住まいになり・・・ここで踊るのです」

「・・・」

「ご主人からは・・・ここを買ってもよいと承諾をいただきました」

「え」

「愛とはなんでしょう・・・私は愛とはお金だと思います」

「・・・」

「愛するものの願いを叶えるために・・・お金は絶対に必要なものです」

「・・・」

「しかし・・・お金があっても・・・立つ気がないものを立たせることはできません」

「・・・」

「カンナさん・・・まだゴキブリが必要ですか」

カンナはよろよろと立ちあがり・・・レッスンバーにたどり着く。

「お母さん・・・私また・・・踊れるかな」

「もちろんよ・・・」

「ここにお住まいになり・・・ここでバレエをなさいますか」

微笑んで肯定する母娘。

「今・・・御主人と電話が繋がっています・・・お話になりますか」

静かに拒絶する母娘。

サンチーは代理人として望月氏と会話をする。

「望月様は・・・このビルを十億円でお買い上げくださいました」

サンチーはサイトウビルを売却した。

「サイトウビルは・・・売れました」と屋代課長に報告するサンチー。

「俺は辞表を出すつもりだ」

「売ったのは・・・私です」

「それじゃ・・・仲良く・・・一緒に辞めるか」

「仲良く・・・とは?」

見つめ合う二人だった。

一年後・・・地球のどこかの田舎町で・・・二人は「サンチー不動産」を営んでいた。

サンチーの屋代課長使いは荒い。

しかし・・・二人は幸せそうだった。

「ちちんぷいぷい」でこころママはバレエ教室の子供たち相手におやつタイムを始めた。

テーコー不動産新宿営業所。

布施課長・・・足立チーフの新体制。

シラスミカは退職し・・・宅間夫人となって・・・まもなく出産の予定である。

生まれてくる子供はタクマミカという母親に苦労することだろう。

しかし・・・それが人生というものだ。

有能な専業主婦とは違い・・・タクマミカはあくまで宅間氏に守られる存在。

しかし・・・有能ではないものが無能とは限らない。

ただ存在するだけで価値があるものは多いのだ。

住めば都だからな。

庭野は・・・タクマミカのお腹に触れさせてもらい・・・生命の神秘を感じるのだった。

すべて世はこともなし・・・。

そして・・・サンチーは今日も家を売る。

家を売るオンナだから。

ポーカーフェイスに喜怒哀楽を乗せるという抜群の演技力・・・北川景子という実力派女優の底力である。

まあ・・・演技とは何かということを知らぬお茶の間の皆さんに届くかどうかは別として。

こころママという一人ぼっちの女とサンチーというひとりぼっちの女が交錯するが・・・最後は恋仇としてすれ違って行く。

サンチーはこころママのヤキソバをスルーである。

夢の物語として・・・これもはっきりと主張されないが・・・主人公は・・・家を買いたたかない。

安く買って高く売るのが商人の基本とすれば・・・主人公は言値で買って・・・それよりも高く売るわけである。

これは・・・家を買いたたかれホームレスになった過去を持つ主人公の設定と符合しているわけだが・・・登場する「家」を買う方の顧客がある程度、リッチであることで成立するわけである。

「家を売る話」がロマンチックなお伽噺であることにこだわった展開が随所に見えた。

主人公はお金で買えない付加価値をお金に不自由しない人々にサービスするのだ。

そのために相場を無視した価格がお買い得になるのである。

市場という巨大な構築物にハゲタカたちが群がる・・・現実の不動産業への皮肉が最終話ではタイムリーに響く。

それは・・・脚本家の意識が・・・時空を超越しているからなのだな。

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2016年9月14日 (水)

闇金ウシジマくん Part2(山田孝之)金属バットと五円玉の夜明けにクズを見た(門脇麦)

夏ドラマも続々と最終回を迎え・・・谷間の季節である。

もうすぐ・・・彼岸なのだ。

2006年から始めたこのプログも十年目に突入して・・・そろそろ潮時を感じることがある。

ただし・・・2010年~2011年にかけて中断していた時期があり・・・十年をコンプリートしているわけではないのだった。

そのために・・・この十年で・・・結構、重要と思えるドラマのいくつかは・・・欠損している。

「闇金ウシジマくん」も第一シリーズは2010年の秋ドラマで・・・語っていないわけである。

実に残念なことだ。

キッドのブログにおける「闇金ウシジマくん」は「映画 闇金ウシジマくん」(2012年)で始り、続いてドラマ第二シリーズ(2014年)・・・そして現在のドラマの第三シリーズ(2016年)のレビューという中途半端なものになっている。

しかし・・・まあ・・・それが人生というものだからな。

第二シリーズと第三シリーズの間に存在する映画「闇金ウシジマくん Part2」が漸くオンエアされたわけである。

中途半端がパーフェクトに近付く・・・そういう密かな喜びを感じる。

で、『ウシジマくん Part2(2014年劇場公開作品)』(TBSテレビ201609120050~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、監督・山口雅俊を見た。架空の登場人物に恋をすることは実に愚かなことだが・・・ある種の人間にとってはかけがえのないことなのである。山田孝之が演じるウシジマくんというキャラクターはまさにその種の輝きを放っていると言えるだろう。そこから・・・ウシジマくんワールドが広がる。綾野剛、菅田将暉、窪田正孝、柳楽優弥という今をときめく若手俳優陣もウシジマくんワールドの中では独自の存在となっていくわけである。そして・・・このPart2では・・・ホストに貢いで転落していくティーンエイジャーを演じる門脇麦が物凄く生々しいエロチシズムを放つのだった。まさに・・・浮草稼業の極みである。だって・・・それは永遠なのだから。

競馬狂いの男・下村(バカリズム)は闇金融「カウカウファイナンス」の債務者である。

社長のウシジマくん(山田孝之)が柄崎(やべきょうすけ)と高田(崎本大海)をひきつれて喫茶店で取り立てをしている。

「親戚中に無理を言って・・・お金を都合しました」

下村の妻(後藤ユウミ)は札束を積み上げて出刃包丁を取り出す。

「もう・・・これきりにしてください・・・この人に関わらないで」

しかし・・・下村は・・・「虫歯の治療がしたい」と言ってまた融資を申し込みに来るのだった。

そんな修羅場の後で・・・ウエイトレスの藤枝彩香(門脇麦)き客の落した五円玉を拾う。

「ありました・・・」

「五円なら・・・いいよ」

「五円だって大切なお金ですから」

彩香は中卒である。

彩香の父親(芦川誠)は失業中で・・・彩香は高校に進学できなかったのだろう。

彩香の姉(大島なぎさ)は「妹が中卒のフリーターなんて恥だ」と彩香を蔑む。

ゲームセンターで・・・トップスコアを叩きだす彩香。

隣の席の男が声をかける。

「凄いな・・・」

「私・・・一番になったことがないから・・・ゲームでも嬉しいの」

「俺も一番を目指してるのさ」

男は彩香に名刺を渡す。

ホストクラブ「AIR」の神咲麗(窪田正孝)と彩香の出会いである。

ホストクラブ「AIR」の尚樹(落合モトキ)は客の明日菜(國武綾)のツケを詰めさせるために「カウカウファィナンス」から200万円の融資を受けさせ保証人となる。

しかし・・・デリヘル嬢として尚樹に貢いでいた明日菜は消息不明となり・・・回収のためにウシジマくんは「AIR」に乗り込む。

尚樹のために・・・ホストクラブの太客である里中美奈子(大久保佳代子)は札束を取り出すが・・・理由を聞いて尚樹を張り倒す。

「お前が夢を見させてくれる男なら・・・女はどんことをしても金を作るもんだよ・・・もう・・・お前じゃ夢なんか見れやしない」

事務所に連れこまれた尚樹はかわいいものしりとりの餌食となる。

今回は・・・「子ブタ」→「たらこ」→「小鹿」→「カチューシャ」→「やかん」で罰ゲームだった。

ホストクラブ「AIR」は若琥会の縄張りである。

若琥会の幹部の一人・・・熊倉(光石研)に呼び出されるウシジマくん。

同業者で闇金融「ライノー・ローン」の犀原茜(高橋メアリージュン)は凄む。

「若琥会のシマで勝手なことするんじゃねえよ」

高級クラブのホステス・ユキミ(本仮屋ユイカ)を従えて上機嫌の熊倉はウシジマくんに300万円を強請る。

「お前たち・・・金融屋は俺たちの財布なんだから・・・黙って出しな」

即答はしないウシジマくんだった。

無職の未成年者・加賀マサル(菅田将暉)は盗んだバイクで暴走して・・・事故を起こす。

バイクの持ち主である暴走族「愛沢連合」ヘッド・愛沢浩司(中尾明慶)はマサルを捜し出しリンチする。

マサルは護身用のナイフで反撃するが・・・愛沢の腹部がぷよぷよだったために軽傷しか負わせることができない。

愛沢はマサルを「カウカウファイナンス」に持ち込み・・・二百万円で売ろうとする。

しかし・・・ウシジマくんがマサルに付けた値段は千円だった。

マサルは「カウカウファイナンス」の見習い社員となった。

愛沢は暴走族を維持するために闇金融「ライノー・ローン」から借金し・・・債務が二百万円に膨らんでいた。

落ち目となった愛沢に嫌気がさした妻の明美(木南晴夏)はホストに走っていた。

ホストクラブのオーナー慶次(徳山秀典)はホストたちに訓示する。

「三ヶ月過ぎて指名が取れないホストの給料はゼロです」

追いつめられた新人ホストの神咲麗は元美容師の母親・節子(丸木弥雪)を田舎から呼び出す。

「最初の指名客が母親かよ」と嘲笑するホストたち。

しかし、ナンバーワンホストの大成(相葉裕樹)は「お前たちも見習えよ」と麗を讃えるのだった。

興味本位で「AIR」を訪れた彩香は高級シャンパン「ドン・ペリニヨン」の白を入れて・・・五万円という料金に驚くが・・・華やかな夢の世界に心を奪われる。

麗はコルクで人形を作り麗にプレゼントするのだった。

「決めた・・・私・・・麗の夢を応援するよ・・・シャンパンお代りする」

「やめなよ・・・無理することないよ・・・」

そんな麗に大成はアドバイスする。

「人形を贈ったのはいいが・・・客の注文を辞めさせるのはやめろ・・・女たちはここに金を使いにくるんだ・・・そんなことをしても他のホストに金が流れるだけだ」

麗はまだ甘いのである。

そんな麗に転機が訪れる。

母親が・・・「ルームライト(室内灯)/由紀さおり」(1973年)を聞きながら自宅の浴室で練炭自殺したのだった。

母親の葬儀のために・・・「カウカウファイナンス」に融資を申し込む麗。

「うちは初回五万円からだ」

「おれ・・・がんばってナンバーワンになりますから」

「どんな仕事だって・・・がんばるだけじゃナンバーワンにはなれない・・・お前、なんでホストになったんだ」

「人の喜ぶ顔が好きだからです」

「・・・」

「闇金に金を借りに来る奴なんてクズばっかりですね」

マサルは麗を見送って嘯く。

マサルは・・・顧客名簿を勝手に持ち出し、他人名義の通帳を買って・・・独自の営業を始めていた。

客の反応の鈍さに・・・ウシジマくんは情報屋の戌亥(綾野剛)に調査を依頼する。

「わかった・・・それから・・・犀原茜は熊倉から妙な仕事を押しつけられたみたいだよ」

犀原茜は産業廃棄物処理現場で日雇い労働者を手配する仕事をしていた。

日給一万円で集めて作業着貸出料金や特選!冷やしカレーなどで搾取し、手取り三千円支給というビジネスである。

「ちっとも儲からねえじゃねえか」

犀原茜は手下の村井(マキタスポーツ)にあたる。

日雇い労働者の一人に蝦沼(柳楽優弥)がいた。

底辺を彷徨う蝦沼は・・・通りすがりの彩香に一目惚れをする。

蝦沼は彩香のストーカーとなった。

マサルの母親・みどり(屋敷紘子)も「カウカウファイナンス」の客の一人だった。

身を売ることになったみどりの裸の写真を撮影するように迫られたマサルは泣きをいれる。

「お前はクビだ」と宣告するウシジマくん。

「結構・・・使える奴だったのに」と柄崎。

「あいつは・・・クズたちの恐ろしさを舐めている・・・そういう奴はヤバイんだよ」

マサルの羽振の良さに目をつけた愛沢は若年チームとともに恐喝に乗り出す。

しかし・・・すでにマサルの口座は空になっていた。

戌亥の調査により・・・口座番号を抑えたウシジマくんが引き落していたのである。

追いつめられたマサルは・・・「カウカウファイナンス」の給料日に・・・銀行に引き落としに来た柄崎を襲う計画を愛沢に提示する。

麗に貢ぐために出会い系で売春を始めた彩香。

麗はナンバーファイプを賭けて売り上げを争っていた。

麗のライバルの客はドンペリの白、ロゼ、ブラック、ゴールドを飛ばしてプラチナ(60万円級)を開ける。

「プラチナありがとうございました」

来店した彩香に切羽詰まった顔で切りだす麗。

「今夜いくら使える・・・」

「二十万円くらい・・・」

「それじゃ・・・ダメだ・・・コニャックのリシャールでも足りない・・・せめてレミーマルタン・・・ルイ13世じゃないと・・・」

「それ・・・いくらなの」

「七十万だ・・・」

「無理だよ」

「頼むよ」

麗は彩香の唇を奪う。

しかし・・・麗には日野牧子(キムラ緑子)という女実業家の太客がついた。

牧子からマンション、高級車を貢がれてトップの座に手が届きかける麗なのである。

家出をして麗のマンションに転がり込む彩香は・・・「カウカウファイナンス」の存在を知る。

「うちは・・・五万円からだ」

「・・・」

「なんなら・・・金になる仕事を紹介するぞ」

十八歳になる日・・・彩香は・・・AV嬢となった。

カメラの前で脱衣をして誕生日に下着姿でうつ伏せになる彩香。

男優は背後から下着を下し挿入する。

「どんな感じかな」

「・・・痛いです・・・痛いです・・・気持ちいいです」

彩香は前後に身体を揺らす。

愛沢たちは・・・銀行で高田と柄崎を襲撃して拉致することに成功するが・・・現金を入手することはできなかった。

柄崎からの連絡がないことに警察の手入れを惧れたウシジマくんは事務員の摩耶(久保寺瑞紀)に金を持たせて避難場所に退避させると・・・顧客名簿を処理し始める。

しかし・・・高田が機転をきかせて・・・携帯電話のスイッチをオンにしたために・・・愛沢たちの計画はウシジマくんに漏れるのだった。

銀行口座の暗証番号をウシジマくんから聞き出すために襲撃を企てる愛沢とマサル。

だが・・・戌亥が愛沢たちの行動をマークしていたのだった。

ウシジマくんは三百万円を用意して・・・熊倉の元へと向う。

犀原茜は熊倉に高級英国車ベントレーを上納するのだった。

熊倉はそれをユキミにプレゼントしてしまう。

店内の照明が消え・・・愛沢が殴りこむ。

手筈では・・・ウシジマくんの携帯が着信するはずだったが・・・鳴ったのは熊倉の携帯だった。

愛沢は闇の中で・・・熊倉を半殺しにしてしまった。

たちまち・・・熊倉の手下に身柄を拘束される愛沢だった。

ユキミはバカラ賭博に入れ込んでカウカウファイナンスに借金があった。

ウシジマくんは・・・ベントレーを回収した。

ナンバーワンの座を賭けて対峙する麗と大成・・・。

しかし・・・次々と太客を繰り出す大成に・・・。

牧子の資金も底をつく。

麗の敗北寸前・・・彩香が来店する。

「もうダメだよ・・・」

しかし・・・彩香は札束をテーブルに置く。

「五百万円くらいあるよ・・・」

「彩香・・・」

麗はついにトップに立った。

麗と彩香は・・・歓喜の一夜を明かす。

部屋にデリバリーを装って侵入する蝦沼。

「このホストが・・・俺の彩香を食いものにしやがって」

蝦沼は金属バットで麗の顔を粉砕する。

「彩香・・・もう・・・大丈夫だよ」

「あなた・・・誰?」

そこへ・・・ウシジマくんがやってくる。

「返済が遅れてるぞ」

ウシジマくんに襲いかかる蝦沼。

だが・・・ウシジマくんは人間の頭をめがけて金属バットでフルスイングできる男なのだ。

夜の公道・・・。

長距離トラックがフルスピードで通過する。

犀原茜は愛沢に保険をかけていた。

「死ななくていい・・・重度の障害で充分賄えるから」

「・・・」

愛沢は車道に身を投げた。

ウシジマくんは・・・借金まみれの保険屋のオバチャン(柳原純子)を使い・・・愛沢の妻・明美を受取人として愛沢に保険をかけていた。

明美は・・・返済の後に残った金を・・・大成に貢ぐのだった。

ホストとして通用しない顔になった麗は焼き鳥屋に就職する。

ウシジマくんは・・・毎度お馴染みの風俗店「エロリアーノ・ビヨンド」で葉山朋子(モコ)によく似た女・モナコ(希崎ジェシカ)とすれ違う。

「回収に来たぞ」

「今日はこれだけしかない」

風俗嬢となった彩香は金を渡す。

「今夜・・・客は何人だ」

「予約は・・・三人だけど・・・」

「じゃ・・・明日また来るよ」

「闇金って・・・クズね」

「五円・・・落ちてるぞ」

「・・・」

「拾わないのか・・・五円だって大切な金だろう・・・」

見つめ合う・・・ウシジマくんと彩香だった。

二人の間を・・・沈黙という名前の美しい天使が通りすぎて行く。

マサルはウシジマくんの暗殺を試みて袋叩きにあう。

「殺せ・・・」

「お前を殺して何の得がある・・・お前はうちの債務者じゃないか」

そして・・・素晴らしい世界は今日も続いて行く。

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くう様の闇金ウシジマくん Part2 

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2016年9月13日 (火)

前置きの多いラブ・ストーリー(桐谷美玲)御注文はお決まりですか(山﨑賢人)

本題に入る前の前置きを退屈と感じる人は多い。

いきなり本題に入るのは時に効果的な手法である。

しかし・・・落語に枕はつきものだし、歌にも前奏はついてくる。

水泳の前には準備運動が不可欠だ。

すべては・・・本番をスムーズに行うためである。

すぐに・・・話が進まないと苛立つ人は早漏の傾向があるわけである。

下ネタかっ。

このプログのレビューのこの部分も・・・そういう部分である。

これから・・・テレビドラマの感想を語るわけだが・・・それなりに考えて語っているのでよろしくお願いします。

・・・ということである。

挨拶に意味があるのか・・・ないのか・・・それは永遠の課題なんだな、

で、『好きな人がいること・第9回』(フジテレビ20160912PM9~)脚本・大北はるか、演出・田中亮を見た。このドラマの前口上では・・・三人の男たちとひと夏の同居・・・彼女が選ぶのは誰か・・・というようなことが述べられていた。スピードのメンバーが12才年下の男と交際する時代である・・・時代なのか・・・だから・・・あまり年齢とは関係なく・・・優しい男、強引な男、ちゃらんぽらんな男とかいう性格分けでもよかったのかもしれない。だが・・・結局はパティシエの櫻井美咲(桐谷美玲)とシェフの柴崎夏向(山崎賢人)が主軸であることはキャスティングの段階で明らかなのである。

つまり・・・選択肢は幻なのである。

そういう意味で・・・長男の千秋(三浦翔平)はまだしも・・・三男の柴崎冬真(野村周平)にはまるで第三の男としての可能性がなかったわけだ。

だから・・・前口上は・・・嘘だったことになる。

本当に三人の誰を選ぶのかがお楽しみのドラマにするなら・・・やはり・・・年齢設定から訂正する必要があるだろう。

主人公の(27)が動かないなら・・・優しい男(29)・・・強引な男は(27)で同い年・・・そしてちゃらんぽらんな男は(25)ぐらいという・・・年上、同級生、年下で分けた方がぐっと差別化ができたと考える。

どうせ、なんちゃって年齢キャスティングなので・・・このままで対応できるはずである。

実年齢は桐谷美玲(26)、山崎賢人(22)、野村周平(22)、三浦翔平(28)なのである。

しかし・・・もはや・・・そういう時代ではないのかもしれない。

先入観は前口上の一種である・・・主人公の(27)という設定は・・・ある意味で適齢期を過ぎた女である。もう若くないのだ・・・そういうのは許されない時代であるにしてもな・・・だから・・・失敗できないと考えてもおかしくない。

そうでなければ・・・主人公の恥じらいは異様なのである。

「~したら話したいことがある」ってどんだけもったいつけるんだようである。

もちろん・・・すべての精神の在りようをカテゴライズするならば・・・主人公は一種の発達障害や・・・注意欠陥・多動性障害の疑いもある。

「好きな人に好きと言うのは大変なことだ」とわかっていて・・・「好きな人が自分を好きかどうかで悩むことは辛いことだ」とわかっていて・・・「相手をどれだけ待たせても平気」というのはどう考えても精神に欠陥があるわけである。

もちろん・・・ほとんどの人間がそうだと言うのなら・・・凄い時代になっちゃったんだなあと思う他ないわけである。

相思相愛というゴールを目指してなんだかんだもたつく・・・それがラブストーリーなのでございますけれどもねえ。

突然・・・同級生の高月楓(菜々緒)よりも・・・美咲の方が魅力的だと気がついてしまった千秋は・・・発情した獣のように・・・美咲を抱きしめる。

すでに・・・夏向に気持ちが傾いている美咲だったが・・・激しく動揺するのである。

よくわからないが・・・女心というものらしい。

有名なレストラン・プロデューサー大橋尚美(池端レイナ)の主催するダイニングアウト(出張レストランの共演)に参加するためのメニューが完成したお祝いに二人で食事をしようと言い出したのは美咲だったのだが・・・千秋に抱きしめられたことですべては白紙に戻ってしまったのである。

帰宅した美咲は・・・料理を作って待っていた夏向への謝罪もほとんどないままに・・・「お腹が痛い」と小学生のような挙動不審さで・・・自室に籠ってしまう。

唖然とするしかない・・・夏向だった。

美咲は・・・夏向の心情を思いやるでもなく・・・広島カープ優勝のための歓喜が反映されていない(こういうところが中途半端なんだよな・・・スピード優勝だったからな)石川若葉(阿部純子)に恋愛相談である。

「突然抱きしめられちゃった」

「それは・・・千秋さんが先輩を好きってことですよね」

「さびしかったってことはない」

「さびしかったら抱きしめていいってことになったらこの世から性犯罪は根絶されますよ」

「・・・」

「夏向さんはどうするんです」

「それどころじゃなくて」

「返事をのばしてるって・・・相手をじらしてるってことだけど・・・わかってますか」

「そんなつもりないもの」

つまり・・・美咲は・・・配慮というものに欠けている女なのである。

まあ・・・女は基本そうだけどな・・・おいおいおい。

鈍感で嫌な女だよな・・・そんなすごい性格設定を・・・今回、強引にねじ伏せていく桐谷美玲なんだけどな。

翌朝・・・一人でダイニングアウトの会場の下見に出かけて行った夏向を追い掛ける美咲。

「水臭いじゃない」

「具合が悪そうだったから」

屈託のない夏向に安堵する美咲である。

やはり・・・相手の鬱屈を推量する能力に欠けているわけである。

仕事のパートナーとしても・・・ダイニングアウトを成功させたいと願う美咲なのである。

美咲と夏向は「夢」について語り合う。

「夏向は・・・夢を叶えて凄いと思う」

「お前だって・・・そうだろう」

「私だって昔は海外で修業したいとか・・・思ってたんだ」

「・・・」

美咲にはどこか思いこみの激しさがある。

「団子屋の娘としてはこれが精一杯」

和菓子も洋菓子も菓子に違いはないわけだが・・・美咲の精神にはそういう統合性が欠けているのである。

「自分の限界を感じるのよ・・・」

美咲は夏向のくれたラムネの壜を見つめる。

「昔・・・この中のビー玉が欲しくてしょうがなかったけど・・・結局、捨てるしかなくて・・・なんだかさびしかった」

夏向はラムネの飲み口を外してビー玉を取り出す。

「え」

「これで・・・夢がひとつ叶ったろう・・・大事にしろよ」

「あんたって・・・凄いわね」

美咲は・・・夏向を愛しく思う。

「ダイニングアウトが成功したら・・・話したいことがあるの」

「また・・・それかよ」

「またって・・・」

美咲は・・・夏向をじらしているとは・・・夢にも思わないのだった。

美咲は・・・ただ何もかもが恥ずかしい年頃なのである。

一方・・・千秋は・・・美咲に向う準備として楓を呼び出していた。

「話したいことがあるんだ」

お前もか・・・。

しかし・・・すべてを察している風の楓は・・・千秋を八景島シーパラダイスに誘うのだった。

「私・・・もうすぐ三十路だけど・・・遊園地が大好きなの」

「え」

最後のデートを楽しむ楓である。

もちろん・・・千秋はまったくエンジョイできないのだ。

なにしろ・・・心がないのである。

夜の海で別れを切り出そうとする千秋に先手を打つ楓。

「私・・・ボストンにもう一度留学するつもり」

「え」

「だから・・・別れて」

「すまない・・・ありがとう」

「あなたの好きな人のところへ・・・行きなさい」

走り出す千秋をそっと見送る楓である。

サーフショップ「LEG END」の経営者・日村信之(浜野謙太)と奥田実果子(佐野ひなこ)の出番を確保するために楓を慰めるのだった。

ダイニングアウトの前なのに・・・なぜか単独行動の多い美咲と夏向。

その隙をついて・・・千秋は美咲をキャッチするのだった。

「君が好きだ・・・君の気持ちが誰に向いているかは・・・知っている・・・それでも君が好きだ」

「・・・」

「返事は急がなくていい」

美咲が即答しないことが前提である。

なにしろ・・・まだ最終回じゃないからな。

そして・・・またしても揺れる美咲なのだった。

さらに・・・あれほど弟思いだった心情が嘘だったように・・・大事なイベントを控える夏向に宣戦布告する千秋。

「美咲ちゃんに告白した・・・返事はもらってないけど・・・お前だけには言っておきたかった」

もはや・・・暴走機関車である。

ついに・・・我慢が限界に達する夏向。

「昨日の夜も兄貴に逢ってたのか」

「・・・はい」

「なんで嘘をついた」

「それは・・・」

「よかったな・・・夢が叶って・・・」

「え」

「ずっと・・・兄貴と両思いになりたかったんだろう」

「何でそんなこと言うの」

「図星だろう」

「最低・・・あんなっていつもそうね・・・人の話を聞かないで・・・何でも決めつけて・・・私の気持ちなんてわかろうともしない」

いやあ・・・それ・・・あなたのことでしょうとざわめくお茶の間。

「他人の気持ちをわかろうとしないのは・・・お前の方だろうが」

「ひどい」

「お前なんかと出会わなければよかった」

「こっちのセリフよ」

決裂である。

売り言葉に買い言葉ってレベルじゃないよねえ。

これはもう・・・年上の女と年下の男の組み合わせという時代じゃない宣言なのか・・・。

発達障害同志の激突だよな。

だが・・・美咲は出て行くわけでもなく・・・無言のまま・・・業務を続ける。

気配を察した冬真は・・・美咲にアドバイス。

「もっと・・・素直になった方がいいんじゃない」

「・・・」

二人の会話を聞いていた二宮風花(飯豊まりえ)は嫉妬したりしないで・・・冬真を褒めるのだった。

ダイニングアウト当日・・・行方不明となる美咲。

メインデッシュぎりぎりの時間に現れて「どうしても旬のカボスを使ってもらいたかった」と言い出すのである。

連絡ぐらいしろよな・・・という話だが・・・もうおわかりですね。

美咲は明らかに発達障害で・・・精神に些少問題がある人格設定なのです。

そういうすべてを受け入れた風の夏向。

美咲の提案を受けて・・・メインディッシュのソースを変更する。

そして・・・結果として素晴らしい料理が出来上がったらしい。

さらに・・・美咲のデザートもトレビアンな仕上がりだったのである。

ダイニングアウトは大成功・・・シェフとしてスピーチを求められた夏向は壇上にあがり・・・。

「今日の料理は予想以上の仕上がりになりました・・・すべて・・・パートナーのおかげです・・・彼女がこんなに・・・素晴らしいパートナーになったのも想定外のことです・・・いまとなっては私の料理にかかせない・・・かけがいのないパティシエなのです」

愛の告白に戸惑う会場の皆さん。

千秋は・・・敗北を認める。

「お話しなければいけないことが・・・」

「あいつは・・・君を待っているよ」

「え」

千秋は美咲を送りだした。

バトンを受け取り・・・走り出す美咲である。

その頃・・・夏向は・・・一本の電話を受けていた。

キッチンにたどり着いた美咲は・・・。

「話したいことがあるの」

もう・・・それはわかったから・・・。

しかし・・・冷たい態度の夏向。

「聞いてよ・・・私は夏向が好きです」

強制アヒル口のお返しをしながら・・・夏向の唇を奪う美咲である。

だが・・・夏向は・・・。

「遅いよ・・・もう・・・お前のこと好きじゃなくなった」

何故なら・・・来週が最終回だからである。

つまり・・・恋愛パラリンピックなのか。

東京パラリンピックをそれなりに成功させるために・・・全身全霊をあげてプッシュということなのか・・・おいおいおいおおいおいおい・・・。

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2016年9月12日 (月)

あっけないにもほどがある(大泉洋)

平野長泰は慶長二年(1597年)に豊臣姓を下賜され従五位下遠江守に任じられた。
賤ヶ岳の七本槍としては遅い出世である。
妻は土方雄久の娘である。
徳川家康暗殺の疑いで改易された土方雄久だが会津征伐では徳川軍に加わっている。
つまり・・・暗殺計画そのものが謀略だったと言われる所以である。
北国では前田家が利長と利政の兄弟が東西に分かれるが二人の従兄弟である土方雄久が利長を東軍に誘致したとも言われる。
雄久の娘の一人は織田信長の側室の一人であり、九男の信貞を生んでいる。
織田信貞は西軍として伏見城攻めに参戦しているが許され家康の家臣となっている。
平野長泰は秀忠軍の一員として上田城攻めに参戦しているわけである。
そしてそのまま秀忠の家臣となる。
平野家は徳川幕府にあって交代寄合となる。
織田信貞の家系は高家旗本となる。
そして、土方雄久は一万石の大名となる。
織田家や豊臣家の家臣たちもしぶとく生きていくのだった。

で、『真田丸・第36回』(NHK総合20160911PM8~)  脚本・三谷幸喜、演出・小林大児を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は真田信幸の正室・小松姫ことの描き下しイラスト大公開でお得でございます。史実にほぼ忠実に添いながら・・・馬廻衆の先輩から始まり・・・攻め手の交渉役として現れる平野長泰の伏線につぐ伏線と言い・・・人質だった稲姫が沼田城に現れる段取りといい・・・考え抜かれた展開が実に見事でございますね。信繁と信幸の阿吽の呼吸による戸石城攻防戦、小山田氏や堀田氏によるゲリラ戦・・・そして信繁の本陣急襲未遂・・・関ケ原との時差を埋める佐助の韋駄天・・・主要登場人物を無駄なく使いきって・・・第二次上田合戦のひとつの真相に迫っていく・・・ワクワクさせてくれますねえ。きりの父親である高梨内記が少し老いてきた感じを醸し出すように俳優陣もよどみなく歳月を感じさせてくれます。どうして・・・どうして・・・毎年、これができないのか・・・本当に不思議でございまする。

Sanada36慶長五年(1600年)七月、下野国犬伏の陣で真田昌幸と嫡男・信幸が訣別。十八日、西軍総大将毛利輝元が伏見城の鳥居元忠に退去を命ずる。元忠はこれを拒否。二十四日、徳川家康が下野国小山の陣に到着。二十五日、小山評定。八月一日、西軍先鋒の鈴木孫一が元忠を撃取り、伏見城落城。八月二十三日、福島正則、池田輝政らの東軍は織田秀信の岐阜城を攻め落とす。九月一日、徳川家康江戸城を出陣。二日、徳川秀忠が信濃国小諸に着陣。三日、真田昌幸は秀忠に助命を嘆願する。四日、昌幸は秀忠を挑発する。五日、真田信幸が戸石城を攻略。六日、秀忠は上田城を包囲。八日、徳川軍が苅田を開始。真田勢の奇襲を信幸の義兄弟である本多忠政などの徳川軍が逆襲。敗走した真田軍を追撃した徳川軍を待ち伏せした真田軍が奇襲。徳川軍本陣を真田信繁が裏手から強襲。混乱した徳川軍は小諸城まで撤退。九日、秀忠に家康から「美濃国赤坂で合流せよ」と命令が下る。十四日、家康が赤坂に着陣。深夜、出陣。十五日、家康を追い美濃国大垣城から石田三成が出陣、関ヶ原に誘導される。先着した西軍は東軍を包囲する布陣を展開。東軍福島隊、西軍宇喜多秀家隊が激突。西軍の小早川秀秋の裏切りによって勝敗が決する。大谷吉継は自刃。石田三成は戦線を離脱する。この頃、直江兼続が長谷堂城を攻めて敗北。黒田如水は豊後国攻めを開始する。


遠江国浜松城は堀尾吉晴の嫡男・忠氏の居城となっていた。

しかし、すでに家康に調略を受けていた堀尾氏は・・・東軍の進軍に際して城を提供。

浜松城は家康の臣下となっている旧武田家臣の一人、保科正光の預かりとなる。

正光の正室は真田昌幸の娘である。

舅である真田昌幸の東軍離脱は背筋の寒くなる行為だったが・・・義弟である信幸が東軍に留まったたために安堵した上・・・家康の信任が厚かったことに驚いた。

小牧・長久手の合戦、小田原征伐と軍功を重ね・・・徳川の一将として下総国に一万石の領地を持つ身だが・・・譜代の家柄ではない。

だが・・・父の保科正直が家康の異父妹・多劫姫を妻に迎え、異母弟の保科正貞を生んだことで一門衆に近い立場を得たのである。

正光には子がないために・・・正貞は二十七歳年下の弟を養子としている。

多劫姫はこの年六月に黒田長政の継室となった栄姫も産んでいる。

つまり・・・正光は・・・真田信幸の義兄であり、黒田長政の義兄でもある。

「おじきのやることにぬかりはないの・・・」

いつのまにか・・・義母の兄である家康は・・・正光の伯父という立場になっているのである。

正光はいくら・・・舅が西軍についたとしても・・・追従するわけにはいかない身上なのであった。

「あれも・・・気苦労するな」

正光は・・・江戸にいる正室の心情を思いやった。

「だが・・・必ずしも・・・徳川が勝つと決まったわけではないからの・・・」

正室の連れてきた真田の忍び・高遠丸は・・・正光の斥候忍(うかみのしのび)となっている。

高遠丸は上田で・・・舅の昌幸と義弟の信繫が・・・徳川勢を撃退したという報告を正光に知らせてきたのである。

「さすがは・・・舅殿じゃ・・・」

報告する高遠丸の声もどこか弾んでいた。

そこには真田の忍びとしての誇りが潜んでいるのだろう。

(従弟殿も・・・御苦労だったな)

舅の昌雪が籠る上田城を攻め損じた徳川秀忠は正光の従弟にあたるのである。

しかし・・・と正光は思う。

秀忠の軍勢が加わっても加わらなくても勝つ算段を・・・伯父・正二位内大臣徳川家康はしているだろうと。

その日・・・九月十五日・・・すでに・・・見た目は互角だが・・・調略によって戦う前から圧倒的な勢力になっていた東軍はひとにぎりの西軍を殲滅していた。

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2016年9月11日 (日)

グ・ラ・メ!~総理の料理番~(剛力彩芽)また密室政治だった(新川優愛)

土曜日の谷間である。

剛力彩芽といえば1992年度(1992年4月~1993年3月生れ)を代表する女優の一人であるが・・・作品に恵まれているとは言い難い。

キッドが一番高く評価するのは「ビブリア古書堂の事件手帖」(2013年)である。

作品的には「私の嫌いな探偵」(2014年)もそこそこ面白かったのだが「なぞの転校生」と争ってレビュー対象からはずれてしまった。・・・残念なことだ。

1992年度には有村架純、成海璃子、本田翼、石橋杏奈、桜庭ななみ、忽那汐里、足立梨花、石橋菜津美、岡本あずさ・・・と層々たるメンバーが揃っているので・・・激戦である。

そういう意味では仕事を選ばず女優として生き残った感じなのかもしれない。

一種独特の存在感があるのも・・・捨て難い味である。

あすなろ三三七拍子」の視聴率的惨敗も残念だったが・・・明らかに以後は深夜枠にシフトしたよね・・・次はコメディーにチャレンジしてもらいたい。

ちょっと過激なドラマの方が似合うと思うので。

で、『グ・ラ・メ!〜総理の料理番〜・第1回~最終回(全8話)』(テレビ朝日201607222315~)原作・西村ミツル/大崎充、脚本・山岡潤平(他)、演出・常廣丈太(他)を見た。テレビ朝日という政治的に特殊な局で「政治家もの」のドラマをやることがすでにマイナス要素なのであるが・・・ギリギリ人情もの風味で乗り切れたと思う。さらに・・・ドラマに美食を持ちこむスタイルもいい加減食傷気味だが・・・あまり料理内容に拘らないのもよかったと考える。基本的に政権与党が悪という色眼鏡も控えめだったしな。

だが・・・基本的にテロリズム賛成の傾向は伺えたぞ。

第3話では・・・小学校の理科教師(矢柴俊博)が予算縮小で大学の研究室が閉鎖されたことを怨み包丁を持って総理官邸に殴りこむわけだが・・・危機が回避された後・・・お咎めなしで解放されるのである・・・後に本人が自首・・・頭に血がのぼったら包丁振りまわすような奴に小学生を預けるのは生理的に受け付けられないと思うが・・・スタッフ的に平気なんだよな。

原作開始からおよそ・・・10年の時差があるので・・・自民党→民主党→自民党の政権交代でのドタバタがなかった世界の話である。

女性料理人(キュイジニエール)・一木くるみ(剛力彩芽)が官邸料理人として仕える現職総理大臣は阿藤一郎(小日向文世)である。

阿藤一郎は料亭政治を嫌い吉田茂以来60年ぶりに官邸料理人を復活させることで開かれた官邸をアピールしようとするのだ。

つまり・・・祖父に吉田茂を持つ麻生太郎第92代総理大臣(2008~2009)である。

・・・短命だったな。

もう・・・麻生総理のことなんか誰も覚えていないんじゃないか。

で・・・一木くるみをスカウトするのが・・・阿藤総理の政務担当総理大臣秘書官で帝都ホテルのレストランのシェフだった過去を持つ古賀征二(滝藤賢一)である。

一木くるみは料理にメッセージをこめることができる超能力を持っているらしい。

で・・・結局、総理との会食は密室政治なのである。

基本的に・・・総理に敵対する人間がゲストとして会食に招かれ・・・くるみのメッセージ料理に洗脳されて融和するというリフレインなのだ。

政治が結局、密室で決定するものだという象徴として・・・東陽テレビ政治部記者の立花優子(新川優愛)が登場する。

会食の前後で・・・ゲストに質問し・・・結局・・・「一体、何があったのか」と茫然とする役割である。

つまり・・・情報不足で・・・政治の動向が理解不能というマスメディアの自嘲である。

とんでもドラマなので・・・優子は・・・離婚した阿藤総理の妻が引きとって育てた娘である。

阿藤総理の方には優子の実の姉の理子(内藤理沙)がいて・・・何故か深夜の首相官邸を彷徨しているのだった。

官邸には官邸大食堂があって料理長は清沢晴樹(高橋一生)である。官邸大食堂の料理人と官邸料理人のくるみの立場は分かりにくいが・・・「相棒シリーズ」の捜査一課と特命係のバリエーションと考えるしかない。

だから・・・清沢とくるみは対立する。

「料理にメッセージなど不要・・・料理人は最高のもてなしを客に提供する存在」なのである。

くるみにとって「客」は料理で洗脳するべき「敵」であるために・・・その情報を収集する。

情報源は・・・古書店の書物である。

天才的な暗記力を持つくるみは立ち読みで情報を取得する。

古書店主の神田(片桐仁)はなんとか阻止しようとするが・・・くるみの魔手を逃れることはできない。

立ち読みは・・・一種の万引きである。

つまり・・・このドラマは万引きを推奨しているのだ。

その一点でも許し難いものがあるよね。

阿藤総理の最後の敵は・・・氷室誠之介(葛山信吾)・・・政権与党・日本進憲党(フィクション)のサラブレッド議員である。つまり・・・小泉進次郎である。

氷室は・・・政権与党が行き詰っていると断定し・・・氷室新党を視野に阿藤総理に退陣を迫る。

そうやって・・・与党が分裂してくれないかという野党シンパの哀しい願いらしい。

だが・・・優秀な秘書官の料亭政治的根回しによって梯子を外された氷室のクーデターは失敗に終わるのだった。

「潮時の意味には引き際だけでなく・・・絶好のタイミングがあります」

最後まで・・・よくわからないメッセージを残し・・・くるみは未来に向って去っていくのだった。

ケツメイシによる主題歌「カラーバリエーション」にのってダンスパフォーマンスを繰り広げる登場人物たち・・・。

政治家には良い面と悪い面があるが悪い面も含めて国民は愛さなければならないらしい。

そうすれば政治家は良い国民も悪い国民も愛してくれるのだろう。

寝言である・・・就寝前にはうってつけだったな・・・。

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2016年9月10日 (土)

ネガティブデータとポジティブデータの間に一つのエビデンス(向井理)口に合わなかった女(広末涼子)

人間は不自由なものである。

五体満足という言葉があるが・・・五体の運動性にも差異はある。

五感を研ぎ澄ますことのできる人はそれほど多くない。

五体と五感の平等ということは至難と言う他はない。

パラリンピックが始ると・・・様々な刺激で心が踊る。

視覚障害者のための柔道では・・・体重別という格差是正のルールの中で全盲の人とそうでない人が同じ畳の上にあがる。

そこでの勝敗がスリリングなものであることは・・・五感を研ぎ澄ます柔道と同じである。

ゴールボールでは特殊なゴーグルで全盲状態という標準化が行われる。

鈴が鳴るボールは聴覚の研ぎ澄ましと五体の連動の一体化を要求する。

ゲーム鑑賞の喜びは極まるのである。

味覚が研ぎ澄まされすぎた男は・・・オーラル・セックスに不便を感じる。

だが・・・愛というものは焼き魚の匂いとか餃子の匂いとかただならぬ悪臭を漂わす相手とキスできることではないのだろうか。

目の不自由な美しい柔道選手も眼光鋭い醜い柔道選手も目をつぶれば同じ柔道選手だ。

何の話だよ。

刺激の話である。

で、『神の舌を持つ男・最終回(全10話)』(TBSテレビ20160826PM10~)原案・演出・堤幸彦、脚本・櫻井武晴を見た。スタイリッシュな演出の定義は難しい。そこで何が起こっているのかを満遍なく表現するのがベタな演出とすれば・・・どこか・・・偏っている演出を指すとも言える。登場人物をシルエットにしてしまうというのは一つの例と言えるかもしれない。シルエットになれば表情は見えない。どんな顔でセリフを言っているのか情報は不足するわけである。しかし・・・情報を不足させることにより・・・何かが強調され・・・それが効果的であればスタイリッシュである。明暗の明瞭化・・・そういう技法は最近ではドラマ「あまちゃん」で潮騒のメモリーズがトンネルの出口に向ってはしゃぎながら走っていくシーンが思い出される。名シーンである。このドラマでもそういうシーンはあるが・・・どちらかと言えば絵画的な美しさが強調されている。この演出家のスタイリッシュな演出はそういう傾きがあるのだと思う。一つの場面だけでうっとりできればそれでいいのかもしれない。「トリック」シリーズにおける山田と上田の名コンビに比べればまだまだ未熟な蘭丸・甕棺墓・寛治のトリオ。もう少し・・・甕棺墓くんの美しさを強調するべきだったと思うぞ。少し・・・ミヤビの美の残照に幻惑されすぎたな・・・。

息子である蘭丸(向井理)を迎えにやってきた京大薬学部教授の朝永竜助(宅麻伸)に蘭丸の天才的な味覚をアピールしようとするニサスマニア(二時間サスペンスドラマ愛好家)の古物の行商人・甕棺墓光(木村文乃)、そして宮沢賢治の心象スケッチを諳んじる宮沢寛治(佐藤二朗)・・・。

しかし・・・蘭丸の舌は何も感じなくなっていた。

ここで・・・流浪の温泉芸者・ミヤビこと平良カマドメガ(広末涼子)が逮捕されたショックや・・・蘭丸の父親への特殊な感情・・・蘭丸を凡人と決めつける過度な抑圧・・・が影響しているという・・・心理学的解釈へのミスリードが行われる。

心身が・・・不可分なものであるという常識の範囲に起因するミスリードである。

実は・・・蘭丸の「神の舌」の不調が心理的要因ではなく・・・物理的要因だったことが・・・この物語のひねられた部分なのだが・・・お茶の間に相当な洞察力を要求する展開である。

特に二時間ドラマだったらよかったのにと思わずにはいられない・・・問題の場面の分割なのである。

つまり・・・蘭丸がミヤビの飲みかけのペットボトルで間接キスを堪能するシーンがキーポイントだったのである。

そこから・・・種明かしまで一週間のブランクは生理的に長いぞ。

失意の蘭丸を・・・励ます・・・甕棺墓くんと寛治である。

しかし・・・朝永教授の元へ警察から・・・ミヤビが生まれ故郷に錦を飾った高木社長(岩尾万太郎)の殺害を自供した・・・との連絡が入る。

温泉トリオの事情聴取は現場検証の後になるというスケジュール調整。

あわてて・・・現場検証中のトンネルにかけつける温泉トリオ。

トンネルの出口で・・・ミヤビは被害者から金銭を受け取っていた。

寛治はベテラン刑事の田島梅之丞警部補(六平直政)に掛け合う。

「なんとか・・・蘭丸とミヤビを会わせてもらえませんか」

「無理ズラ」

「蘭丸にとってミヤビは初恋の相手なのです」

「性交渉があったわけではありませんけどね」と甕棺墓くん。

「初恋か・・・刑事にとって最初の殺しは・・・初体験の相手のようなものだが・・・最後の殺しは古女房との別れのようズラ」

「定年退職ですか」

「刑事ものでは定番ズラ」

「なんとか・・・お情けを・・・」

「次の現場検証は・・・死体の発見現場だ」

「お情け・・・かたじけない」

しかし・・・旅館の一室でも・・・蘭丸とミヤビがコンタクトすることはできなかった。

「取調中の容疑者と・・・関係者の接見なんか無理ズラ」

「お情け・・・なしだった」

だが・・・蘭丸は特攻し・・・凶器の帯締めを舐める。

しかし・・・味はしなかった・・・。

温泉トリオ・・・お手上げである。

しかし・・・寛治は現場に悄然と佇む「仇母巣亭」の一人息子である駿(中澤準)に気がつく。

「少年よ・・・何かが胸に痞えているのかい」

「あの日・・・僕はマット運動が嫌で・・・学校をさぼりました・・・そして・・・あの人に出会ったのです。あの人は僕にクッキーをくれました・・・天城山隧道を抜けたところまで一緒に歩いた・・・それだけなのに・・・僕の胸はときめきました・・・それなのに・・・男がいたなんて・・・僕は裏切られたんだ」

「それで・・・復讐して・・・心はすっきりしたのかい」

「いいえ・・・」

寛治は愛車の荷物を整理中の甕棺墓くんに声をかける。

「ミヤビの香典泥棒の件・・・警察に言ったのはお前さんだな」

「・・・」

動揺してインドネシアのガムランのように古物の銅鑼を打ち鳴らす甕棺墓くん。

「少年の証言は偽証だったようだ・・・それも警察に密告したらどうかな」

甕棺墓くんは背中で同意を示すのだった。

事情聴取も終わり・・・別れの時が迫る。

「さあ・・・京都に戻るぞ・・・」

「待ってください・・・」

「なんだ・・・」

「僕にはまだ・・・やることがあります」

教授は・・・蘭丸を待つ甕棺墓くんと寛治を見る。

「あんな・・・ネガティブデータ・・・なんの役にも立たないぞ」

ネガティプデータとは研究目的に沿わない陰性のデータである。

「僕は・・・彼らが単なるネガティプデータではないエビデンス(確証)を見つけてみたい」

「初めて・・・やる気を見せたと思ったら・・・人間関係論か」

「薬学だって・・・ベースとなるのは・・・人間学でしょう」

「好きにしなさい・・・お前にガッカリさせられることに私は慣れている」

「お父さん・・・」

「息子のためになら何度でもがっかりしてやる・・・それが父親というものだ」

「・・・お父さん」

甕棺墓くんが交渉し・・・温泉トリオは「探偵」としての実績を田島刑事を認知させるのだった。

しかし・・・蘭丸には逡巡がある。

「僕は・・・神の舌に苦しんだ・・・ただの凡人であることに喜びさえ感じる」

「自分の能力から逃げるの」と甕棺墓くん。

「蘭丸・・・お前の舌は私を救ってくれた」

「そして・・・数々の事件を解決したじゃない」

「・・・」

宮沢賢治タイムである。

おまへのバスの三連音が
どんなぐあひに鳴ってゐたかを
おそらくおまへはわかってゐまい
その純朴さ希みに充ちたたのしさは
ほとんどおれを草葉のやうに顫はせた

 もしもおまへがそれらの音の特性や
立派な無数の順列を
はっきり知って自由にいつでも使へるならば
おまへは辛くてそしてかゞやく天の仕事もするだらう


泰西著名の楽人たちが
幼齢弦や鍵器をとって
すでに一家をなしたがやうに
おまへはそのころ
この国にある皮革の鼓器と
竹でつくった管くゎんとをとった
けれどもいまごろちゃうどおまへの年ごろで
おまへの素質と力をもってゐるものは
町と村との一万人のなかになら
おそらく五人はあるだらう
それらのひとのどの人もまたどのひとも
五年のあひだにそれを大抵無くすのだ
生活のためにけづられたり
自分でそれをなくすのだ

すべての才や力や材といふものは
ひとにとゞまるものでない
ひとさへひとにとゞまらぬ
云はなかったが、
おれは四月はもう学校に居ないのだ
恐らく暗くけはしいみちをあるくだらう

 そのあとでおまへのいまのちからがにぶり
きれいな音の正しい調子とその明るさを失って
ふたたび回復できないならば
おれはおまへをもう見ない

なぜならおれは
すこしぐらゐの仕事ができて
そいつに腰をかけてるやうな
そんな多数をいちばんいやにおもふのだ
もしもおまへが
よくきいてくれ
ひとりのやさしい娘をおもふやうになるそのとき
おまへに無数の影と光の像があらはれる
おまへはそれを音にするのだ

みんなが町で暮したり
一日あそんでゐるときに
おまへはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまへは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌ふのだ
もしも楽器がなかったら
いゝかおまへはおれの弟子なのだ
ちからのかぎり
そらいっぱいの
光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ

春と修羅 第二集より「告別」

「才能を与えられても・・・それを開花させる機会を与えられぬものもいる・・・そして機会を与えられても・・・開花させぬものもいる・・・お前がそれをせぬことを・・・恥と思わぬならそれでもいい・・・」と寛治は締めくくる。

蘭丸は変色した被害者の鬘に目を引かれた。

「何をする」と驚く若手刑事の若葉悟巡査(矢野聖人)・・・。

「ただ・・・舐めているのです」

「えええ」

「これは・・・温泉の成分!」

「神の舌が戻ったのね」と甕棺墓くん。

例によってふんどしを取り出し・・・成分を書きとめる蘭丸。

「これが・・・噂のふんどしのメモリーか」

静岡県警では周知の事実らしい。

しかし・・・「仇母巣亭」の泉質は・・・黒湯の炭酸水素塩泉・・・鬘の温泉成分は赤湯の含鉄泉だった。

女将の華子(烏丸せつこ)に三助スタイルで・・・「赤湯」について聞く蘭丸だった。

三助探偵・・・ロケ中に春が来たんだな。

「旅荘・・・村の時間の温泉は・・・赤湯です」

「村の時間」の泉質は「被害者の鬘」の成分と一致した。

「被害者はここで殺された可能性がある」

「そして・・・死後・・・仇母巣亭に運ばれた・・・」

「ということは・・・宿泊者が犯人」

しかし・・・宿泊者にそれらしい人物はいない。

だが・・・宿泊客が犯行時刻に・・・芸者を呼んでいたことが判明。

呼ばれていたのは・・・貞奴(猫背椿)と豆羽(肘井美佳)だった。

けれど・・・宿泊客の証言では・・・接客したのは貞奴とキチ(久世星佳)だった。

そして宿泊客を舐めた蘭丸は三人分の白粉成分を検出する。

貞奴とキチ・・・そして小太郎(信川清順)である。

芸者たちは召喚された。

「なぜ・・・呼ばれたのは・・・貞奴さんと・・・豆羽さんだったのに・・・キチさんが・・・接客に加わったのか・・・」

「私が急病で」と豆羽。

「あなたは・・・あの日・・・夜遅く・・・仇母巣亭の支配人にメールしてますよね」

仇母巣亭の支配人・建造(不破万作)と豆羽はできていた。

「・・・」

「しかし・・・あなたは約束の場に現れずに・・・デートは翌日に持ち越された」

「・・・」

「あなたは・・・フロントから・・・支配人を排除する必要があったのです」

「そんな・・・」

「何かを運び入れる必要があったからでしょう・・・貞奴さん・・・あなたは四人の中で一人だけ運転免許を持っている・・・だから・・・接客の途中で抜け出す必要があった・・・あなたと小太郎さんは体型も顔立ちも似ている・・・化粧をすればイチゲン(初対面)の客には見分けがつかない・・・だから・・・小太郎さんを呼び出してすり替わった」

「・・・」

「そんなことまでして・・・一体何を・・・それは・・・キチさんが・・・高木さんを殺してしまったからでしょう」

「一体・・・何を証拠に・・・」

「地蔵背負いで人を殺せば・・・手の皮膚が・・・凶器に付着します・・・鑑定すればわかることです」

「・・・」

「え」と叫んだのは華子だった。

彼女もまた温泉芸者の一人である。

「まさか・・・私がターさんのことを・・・キチちゃんに教えたから・・・」

「華子姉さん・・・それを聞いて・・・私はうれしかった・・・あの人は・・・私の呼び出しに応えて・・・二人が出会った村の時間に・・・来てくれた・・・でも・・・あの人は・・・ミヤビという女にプレゼントの白粉を用意していたのです・・・ミヤビと結婚するというあの人の言葉を聞いて・・・私はカッとなりました・・・」

そこへ・・・貞奴たちが到着・・・入浴客(ダチョウ倶楽部)の目をそらし・・・恩あるキチのために偽装工作を開始したのである。

「私は・・・旦那としてのあの人のことをずっと愛していました・・・けれど・・・最後の最後に若い小娘に負けたズラ」

「いいや・・・高木さんは・・・事業に失敗して・・・故郷に帰ってきたのです」

突然・・・主人公のように語りだす寛治である。

「え・・・」

「ミヤビのお座敷をすっぽかして・・・わざわざ・・・白粉を持って・・・あなたに逢いに行った・・・最後に選んだ女はあなただったのです」

「キチさんに背負われても・・・高木さんは抵抗しなかった・・・」

「つまり・・・高木さんは・・・あなたに殺されることを望んでいたのです」

「一種の無理心中ですね」

「ターさん・・・最後まで厄介な旦那だったんだねえ」

キチは泣き笑いをして・・・お縄についた。

女将は浮気者の支配人の脇腹を激しく責めた。

漂う・・・芸者たちの脱力感・・・。

「犯人隠匿とか・・・証拠隠滅とか・・・死体損壊とか・・・もう・・・いろいろとアレじゃないか」

ベテラン刑事は芸者たちを睨むのだった。

しかし・・・そこは地方警察ならではの情状酌量があるのだろう。

釈放される・・・ミヤビを出迎える温泉トリオ。

「なぜ・・・自白なんか・・・」

「あなたが・・・私のために何でもするっていうから・・・てっきりあなたが殺したと・・・」

「え」

「だから・・・私が・・・身代わりになろうと・・・」

「ええ」

「あなたには何度も助けられたので・・・恩返しをするつもりでした」

「・・・」

つまり・・・蘭丸の気持ちは・・・ミヤビに通じたのだった。

見つめ合い・・・キスをする二人・・・しかし・・・。

「オエッ」

ミヤビの口腔から押し寄せる肛門臭さに嘔吐する二人だった。

「え・・・」

蘭丸にとって人間の口は尻と同じ成分なのである。・・・雑菌的に。

まあ・・・肛門を舐め合う仲なら問題ないわけだが・・・。

そこへ・・・鑑識官が・・・ミヤビのペットボトルを持って現れる。

「なにか・・・未知の成分が検出されたんですが」

「それは・・・殺菌作用のある薬の成分です」

菌に対する抵抗力のない病気であるミヤビは・・・抗菌剤を服用していたのである。

つまり・・・ミヤビが無味無臭だったのは・・・その薬の薬効だったのだ。

蘭丸が一時的に能力を失ったのは・・・ペットボトルを口にしたために・・・口内に抗菌作用が発生したためである。

そして・・・留置中に・・・薬効の切れたミヤビだったのだ。

物凄い副作用がありそうな薬物だよな。

「どうやら・・・私・・・あなたの口にあわない女だったみたい」

キスして嘔吐された女は限りなく百パーセントに近い確率で傷つきます。

とにかく・・・ミヤビの謎は解かれた。

ミヤビは傷心をこらえて旅立つ。

「どうするんだ・・・」と寛治は問う。

「行きます・・・」

「ミヤビを追うのか」

「いえ・・・家に帰ります」

「旅は終わりか・・・」

「いや・・・僕は父に・・・あなたたちがポジティブデータであることを・・・いや・・・ネガティブデータであったとしても意味があることをエビデンスとして提出するつもりです・・・そのために・・・一人でじっくりと考察したいのです」

「なるほど・・・」

「お別れなんて・・・嫌よ」と甕棺墓くん。

「もしも・・・世界が僕たちを必要とするなら・・・また会えますよ」

「物販成績次第ってことだね」

「それが・・・ショービジネスというものだから」

主題歌歌手の坂本冬美が「女は抱かれて鮎になる」を歌い出し・・・物語の幕は閉じる。

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2016年9月 9日 (金)

身内の犯罪者を自首させないと泥沼にはまるかもね(山田孝之)

スキタイの森の神は狼使いである。

ある夜、貧しい若者が森の木の上で一夜を過ごした。

森の神がやってきて狼たちにパンを与える。

一切れのパンが残ったので森の神は若者にそれを恵んだ。

パンは魔法のパンであり・・・食べても尽きるということがない。

話を聞いた欲の深い男は貧しい若者と同じように森の木の上で夜を迎えた。

森の神がやってきて狼たちにパンを与える。

しかし、今夜のパンは魔法のパンではなかったので一切れ不足してしまった。

森の神は欲の深い男をパンの代わりに狼に与えた。

・・・この話からどのような教訓を読みとるかは聞き手次第である。

幸運は滅多に訪れない・・・でもいいし、触らぬ神に祟りなし・・・でもいいだろう。

キッドは最も肝心なことは・・・美味い話には裏があるということだと考える。

で、『ウシジマくん Season3・第7回』(TBSテレビ201609070128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・川村泰祐を見た。白熱したリオ五輪が去り・・・清々しいパラリンピックの開催中に毒々しい人間の営みを描くこのドラマ。善意にあふれた世界の一方で今日も核実験による脅威を誇る悪意の凝縮された国家が存在する。そういうことを忘れないためにもこういうドラマを大切にしなければならない。あなたが・・・あなたの家族が狙われているのです。

悪魔である神堂大道(中村倫也)によって極限状態に追い込まれた上原まゆみ(光宗薫)は飛び降り自殺を図る。

しかし・・・命はとりとめ・・・意識不明のまま・・・入院する。

娘の自殺未遂という衝撃にうろたえた父親の上原重則(名倉右喬)は娘の婚約者である神堂の家庭内への侵入を許す。

「まゆみさんは・・・何者かに脅され・・・会社の金を300万円横領したと・・・遺書に記しています。あなたは父親として・・・どうしてそのことに気がつかなかったのですか」

「そんなことをいわれても・・・その遺書とやらを見せてくれ」

「私が婚約者の犯罪の証拠をそのままにしておくとお考えですか・・・削除したに決まっているでしょう」

「・・・」

「とりあえず・・・横領した300万円の穴埋めを何とかしなければならないのではないですか」

「・・・」

三日三晩・・・神堂の・・・婚約者に自殺未遂されたものとしての一方的な告発にさらされて・・・披露困憊する重則である。

「今・・・眠りましたね・・・娘の危機になんていう人だ・・・父親として恥ずかしくないのですか」

「君と違って私は会社に出社しなければならないんだ・・・明日は重要な会議があるんだぞ」

「娘が犯罪者になったら・・・今の立場なんかふっとびますよ」

「・・・」

「すみません・・・神堂さん・・・夫も私も・・・気が動顛していて・・・」

神堂は台所にたった母親の上原広子(武藤令子)に囁きかける。

「まゆみさんの自殺未遂の本当の理由は・・・僕とお母さんの関係を知ってしまったからなのです」

「え・・・そんな」

「どうすればよいか・・・今日も朝まで・・・二人で考えましょう」

「・・・はい」

神堂は広子の局部をやさしく愛撫するのだった。

もはや・・・悪魔に蹂躪される上原家なのである。

まゆみの妹のみゆき(今野鮎莉)とも性交渉を重ねる神堂は・・・みゆきの夫であるカズヤ(板橋駿谷)が探偵を雇っていると囁き・・・その探偵の口封じのために金が必要だと促す。

カズヤに対してはみゆきの浮気調査のための探偵料として二百万円を要求する。

「資産家の上原家から・・・慰謝料がとれればハイリターンです」

悪魔は巣にかかった獲物を貪りつくすのだ。

睡眠不足のまま出社した重則は部下の送別会で泥酔し・・・女子社員の奈菜(希島あいり)の乳房を路上で揉み出すという失態に及ぶ。

もちろん・・・一部始終は何者かに盗撮されているのだ。

顧客である金子ババー(箱木宏美)の隠れデリヘル店へ集金に訪れた「カウカウファイナンス」の柄崎(やべきょうすけ)は占い師の勅使河原(三田真央)の存在が気になる。

反社会的組織である駱駝会の構成員だが・・・主流から外れた柏木(大塩ゴウ)は金子ババーの売上金をピンハネしていた。

ウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)は柏木が組の代紋入りの名刺に書いた借用書を盾に金の回収を実行する。

「この名刺・・・親分に回していいですか」

「払うよ・・・丑嶋社長・・・」

駄菓子屋で幼馴染の情報屋・戌亥(綾野剛)と会ったウシジマくんは・・・占い師の勅使河原について調査を依頼する。

「気になるのかい・・・」

「・・・」

二人は酢酸ビニル風船こと風船玉を膨らませる。

生活保護受給者の小瀬(本多力)は働く喜びを教えてくれた老女の千代(恩田恵美子)から・・・親友のめしあ(野澤剣人)が金を騙し取ったことを知り・・・追及する。

「綺麗事を言うなよ・・・僕らは底辺にいるんだ・・・まともなことをやっていたら這いあがれない」

「しかし・・・それは犯罪だよ」

「お金を墓場まで持って行くことはできない老人たちから・・・使われていないお金をもらうことがそんなに悪いことか」

「誰が罪と罰みたいなことを言えと・・・」

「まあまあ・・・鉄棒ぶらさがり勝負で決めようぜ」

ニート仲間のトーキー(水間ロン)の提案でぶら下がる三人の底辺者たち。

最近、地道に働いている小瀬は体力がついていた。

たちまち脱落するトーキー・・・る

めしあはトーキーを助け起こす。

「勝負は君の勝ちだ・・・僕にとってはトーキーのことが大切だ。もちろん・・・君のこともね。だって僕たちは仲間だろう」

「・・・」

素晴らしいインターネットを通じたテレビ電話でもう一度・・・めしあに連絡する小瀬。

「何度話し合ったって結論は同じだろう」

「この電話は・・・千代さんとも繋がっているんだ」

「え」

二人のやりとりを老人たちが聞いていたのだった。

「千代さん・・・これが・・・あなたを騙した人間です・・・でも・・・この人は僕の親友なのです。お金は僕が働いて必ず返しますから・・・どうか・・・僕の親友を許して下さい」

「・・・」

小瀬は土下座して・・・人間の善意に縋り良心に訴えた。

小瀬は借金の返済を肩代わりしている希々空(ののあ)に再会する。

「コセチン・・・」

「小瀬だよ」

「ごめんね・・・お金は・・・ののあの時間で払うから」

「ののあの時間ってなんだよ」

「ののあは一時間一万円だよ」

「高い!・・・僕より七千円も・・・」

底辺の中でも心休まる小瀬の周辺である。

ウシジマくんのライバル企業・闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)から「三千万円」の返済を求められるJP(福山翔太)は元カノの美奈(佐々木心音)の紹介で奇妙なファッションセンスの男・K.(金田誠一郎)に会う。

「知ってるか・・・フリーターの生涯賃金は五千万円だ・・・もはや生涯賃金三億円の人たちとは生きる世界が違う。まして俺は三十歳だ・・・今からやりなおしたら三十年かかるから・・・なんとかスタートラインに立ったら六十歳になっちゃう。だから・・・一発チャンスにかけるしかないんだ」

「一発チャンス・・・」

「俺は二回チャレンジした・・・一回目で上の歯を全部失くしたけど・・・二回目で一千万円獲得した」

「なんだよ・・・それ」

「やるのかい・・・やめるかい」

「やるしかないんだよ」

K.はJPと美奈を高級ホテルの一室に案内する。

そこには四人の仮面をかぶった男たちがいた。

「お前ら・・・なんだ」

「俺たちはニューリッチ・・・新しい富裕層だ」

「平和が続けば既得権益は守られ・・・富めるものはますます富む」

「総資産は増えるばかり」

「一千万円の時計を買っても・・・一億円の家を買っても・・・十億円のクルーザーを買っても・・・虚しいだけだ」

「欧米では貴族には貧民を救う義務がある」

「だから・・・君たちに救いの手を差し伸べる」

「簡単なゲームで一攫千金だ」

「君たちはカップルかい」

「元カレだよ・・・」

「じゃあ・・・昔の男を救えゲームだな」

「何それ・・・」

「さあ・・・準備だ」

屈強な召使たちが現れる。

野獣であるJPが手も足もでないほどのニューリッチのガードマンである。

たちまち・・・椅子にくくりつけられるJP。

「何をするの・・・」

「彼はもう・・・目を閉じることができない。この双眼鏡には・・・もうすぐ西日が射すんだ」

「太陽光線を浴びたら視力がなくなるよ」

「それまでに・・・彼女の友達の誰かが・・・友情の証を示せたら・・・君らに三千万円プレゼントするよ」

「友達にはメールで・・・文面はこうだ・・・」

赤ちゃんできちゃった・・・必ず返すから二十万円貸して

「そんな」

「さあ・・・君には困った時に助けてくれる本当の友達がいるのか・・・いないのか」

「君の携帯の名簿から・・・五人選んでいいよ・・・タイムリミットは・・・おそらく二時間くらい」

「元カレの目が不自由になるまでだ」

「そんな・・・二十万円貸してくれる友達なんて・・・」

しかし・・・美奈の目は・・・母親の借金の連帯保証人に美奈を指定した犀原茜の名前を見出した。

犀原茜と腹心・村井(マキタスポーツ)はファミレスで食事中のために携帯電話の電源を切っていた。

スカートの短い女店員(朝見心)は「冷たいウーロン茶になりますがよろしいでしょうか」と言って後悔する。

食事を終えた犀原茜はメールを返信した。

貸してやるよ

「勝負は君たちの勝ちだ」

携帯を受け取った美奈は叫ぶ。

「すぐにここに救急車を呼んで」

ホテル名と部屋番号を口にする美奈。

「おいおい・・・何してるんだ」

「底辺の人間だって最低限のルールがあるだろう」

「だって・・・JPは怪我してるし」

「ゲームは終わりだ」

「とんだ・・・茶番だ」

「巻き込まれるのは御免だよ」

「そんな・・・三千万円は・・・」

「チャラだよ・・・チャラ・・・」

JPは囁いた。

「いいから・・・縄を解いてくれ」

美奈はJPの縄を解く。

JPは狂犬として蘇った。

ニューリッチたちを半死半生にするのだった。

「馬鹿な・・・」

「金ならやるよ」

「そんなもん・・・いらねえ」

夜の街で・・・犀原茜はJPを回収する。

「どうだ・・・極道で生きていく気になったか」

「・・・」

「とりあえず・・・飯だな」

ファミレスには「カウカウファイナンス」一同が来店中だった。

スカートの短い女店員は熱いお茶をサービスした。

金子ババーの店でウシジマくんは網を張っている。

神堂の指示でみゆきが来店するが・・・そこがデリヘルの店と知り・・・怯える。

「あの・・・売春はちょっと・・・」

「みゆきさん・・・男性に奉仕するのは尊い仕事だと思いませんか」

「でも・・・」

「私がみゆきさんを愛するように・・・みゆきさんは見知らぬ男性に愛されてください・・・愛と愛が重なって・・・愛のミルフィーユが完成するのです」

「・・・」

殺風景な松田明日香(市橋直歩)の部屋で・・・神堂は意味不明の饒舌でみゆきを唆す。

そんなみゆきをウシジマくんはついにキャッチした。

「話終わった・・・?」

ウシジマくんは連絡先入りのティッシュをみゆきに差し出した。

「金に困ってるなら・・・貸すよ」

ついに・・・神堂という悪魔の巣に・・・ウシジマくんが足を踏み入れた。

お楽しみはこれからである。

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2016年9月 8日 (木)

どうでもいいことは忘れる女(北川景子)合従連衡合縦連横遠交近攻敵の敵は味方だ(MEGUMI)ドロドロのシチューをあなたに(臼田あさ美)

難敵に対しては孫子の兵法でも各個撃破が推奨される。

そのために・・・相手の分裂を画策する。

分裂した相手に対して同盟を持ちかければ合従連衡ということになり・・・もはや奇策とは言えない。

戦略の基本は情報収集にある。

敵の利害と味方の利害が一致すれば・・・敵を味方として誘導することが可能になる。

その「機」を伺うのが戦略であるとも言える。

まとまらない縁談を強引にまとめあげるのも仲人の腕次第なのである。

しかし・・・本来の目的を忘れてはいけない。

彼女は家が売れさえすれば・・・いいのである。

たとえ・・・そのことで誰かが幸福を得ても・・・知ったことではないのである。

もちろん・・・不幸になってもだが・・・その場合は・・・長期戦略的に不利になるので・・・アフターサービスをしないわけではないらしい。

強固な日米同盟を崩さんと中国はあの手この手を仕掛けてくるのだが・・・日本としては米国を敵に回したら酷い目に遭うのでこれからも耐えがたきを耐え忍びがたきを忍ぶ必要があります。

で、『家売るオンナ・第9回』(日本テレビ20160907PM10~)脚本・大石静、演出・山田信義を見た。妄想的には・・・やはり・・・BAR「ちちんぷいぷい」でのテーコー不動産株式会社・・・新宿営業所売買営業課に屋代課長(仲村トオル)の営業チーフ・三軒家万智(北川景子)に対する「男とか女とかを超越した存在」発言以来・・・サンチーの課長に対する表情が硬くなっている気がする。サンチーは「傷ついて怒ってるんじゃないお?」と思うわけである。庭野(工藤阿須加)は「好きに違いがあった」と思っているようだが・・・ベクトルは間違っている気がする。とにかく・・・国際結婚を目指すビクトル・ムサ(星野ルネ)と雨宮波瑠(八木優子)のカップルを見るサンチーの瞳には羨望の眼差しが宿っていた気がします。

そういう部分も脚本家は描きたい・・・むしろ・・・重点的に描きたいのだが・・・プロとして・・・そこが本筋でないのはわかっている。面白おかしく家を売ってナンボの物語である。その葛藤がなんともいえない味わいを醸し出している気がします。

そういう気がするドラマなんだな。

さりげなく残暑厳しいシーズンに併せて熱中症に対する注意を喚起する朝礼での課長の訓示。

「シラスミカ・・・」と水分補給中の白州美加(イモトアヤコ)を呼び出すサンチー。

「チラシ千枚のポスティング行ってきます」

「シラスミカ・・・家を売らなければ意味はありません・・・チラシのポスティングだけで大きな顔をしないように」

「顔が大きいのは生まれつきです・・・なんちゃって・・・シラスミカ、ゴー!」

「アレ以来・・・おかしくなったよな」

「あの時・・・何があったんだ」

課長と最古参の布施(梶原善)は問い質す。

アレとはシラスミカ実家解体の件である。

「どうでもいいことなので・・・忘れました」

必要ないことにはたとえ上司の質問でも多くを語らないサンチーだった。

しかし・・・シラスミカはシラスミカだった。

一歩外に出れば怠惰の虫が騒ぎだし・・・アルコール依存症の人間が酒を求めるようにさぼりだすのである。

そんな・・・シラスミカに「凄腕不動産屋の取材」と称して接近する週刊新代(新潮プラス現代か・・・新潮プラス文春だと新春になっておめでたい雑誌になってしまうからな・・・)の記者・今泉亮太(大西武志)が接近する。

前回・・・日本一かわいいお天気お姉さんの夫との不倫騒動にサンチーが巻き込まれ週刊誌沙汰になったばかりだと言うのに・・・カフェオレに誘われて・・・サンチーについての情報を無分別に流出させるシラスミカだった。

「一億五千万円の家を三億円で売ったりして凄いんです」なのである。

スキャンダルの時に・・・「関係者」とか「知人」とかで登場する人々の実態である。

カフェオレの後で趣味の映画鑑賞をしたシラスミカ。

同じ映画の話題を・・・足立(千葉雄大)がしたことで犯行が発覚。

さらに・・・週刊誌の取材を受けたことも明らかになる。

「好意的な記事を書く気なら・・・正式に申し込んでくるだろう」と課長は常識論で叱責である。

「でも・・・全然悪い人には見えませんでした」

「悪い人は・・・全然悪い人に見えないもんなんだよ」

「どのような記事を書かれても構いません」と動じないサンチー。

「いや・・・会社としての信用問題だ」

前回の・・・スキャンダル記事で本社から・・・叱責されている課長なのである。

週刊新代に怒鳴りこむ課長。

しかし・・・今泉は・・・「美人悪徳不動産屋の悪行三昧という記事を書きたかったんだけど・・・顧客の皆さんが絶賛するばかりなので・・・ボツになりました」と応じるのだった。

「天才ですからねえ」とまんざらでもない課長である。

今泉は・・・「実は二世帯住宅を売りたいんですが・・・買い手がつかなくて困ってるんです・・・天才に売ってもらえませんかね」

「おっと・・・」

クレームをつけにいって営業してきた課長を賞賛する一同である。

「というわけで・・・売ってくれますか」

「売ります」

漸く・・・課長に対する怒りを納めて・・・いつものサンチーになるのだった・・・あくまで妄想です。

物件は限りなく左右対称な二世帯住宅である。

おそらく・・・その世代間差別のなさが売れない理由なのかもしれなかった。

親子同居の場合・・・世代によって求めるものが異なるものである。

しかし・・・魔性であるサンチーには・・・獲物が向こうから吸い寄せられてくるのだ。・・・あくまで妄想です。

一方・・・庭野と足立は・・・内見を繰り返し・・・買う気配を見せない顧客をそれぞれに抱えていた。

しかも・・・顧客の名は・・・ともに雨宮である。

庭野の顧客は・・・雨宮憲一(竹森千人)と礼(MEGUMI)の夫婦。幼い娘のもも(須田理央)がいる。

憲一は「祖父は南向きの八畳間は縁起が悪いと言っていた」などと難癖をつける。

花柄のワンピースを着た礼は「また・・・そんなこと言って・・・いい家なのに」と不満気である。

お・・・風水来たか・・・と思わせておいて真相は別である。

足立の客は・・・雨宮嘉一(ト字たかお)と智代(鷲尾真知子)の熟年夫婦である。

嘉一は「親父が南向きの八畳間は縁起が悪いと言っていた」などと難癖をつける。

花柄のワンピースを着た智代は娘の波瑠(八木優子)が「色白のアイドル系が好きなので」と足立に交際申し込みを促す始末である。

サンチーは・・・即座に・・・「二つの雨宮家が親子関係にあること」を看破するのだった。

「庭野と足立にまかせていたら・・・家は一件も売れません・・・その顧客には私が家を売ります」

しかし・・・足立は叛旗を翻すのだった。

「僕にも譲れない一線があります」

そして・・・庭野は・・・ただちにサンチーに降った。

BAR「ちちんぷいぷい」で珠城こころ(臼田あさ美)はクリーム・シチューを煮る。

「忠犬ニワノくんはサンチーには逆らえないものね」

「だよな」

「でも・・・僕は・・・この間・・・チーフに好きだって言われました」

「え」

「でも・・・もでしょう・・・課長は好きで・・・庭野もでしょう」

「じゃ・・・僕のこともチーフはきっと好きだよな」と足立。

「そうだよ・・・サンチーはみんなのことが好き・・・こころと一緒だよ」

「だけど・・・僕に対する好きは特別だったと思う」

おっと・・・庭野・・・そんなことを考えていたのか・・・である。

「うふふ・・・ドロドロしてきたね・・・おいしそう」とシチューをかき混ぜるこころママだった。

一方・・・食事をしながら物件を吟味するサンチーは・・・行きつけの汚い中華料理屋でアルバイトのナイジェリア人から声をかけられる。

「餃子のお姉さん・・・家を探してますか」

「私の仕事は家を売ることです」

「私も家を探しています」

「賃貸ですか」

「チンチンパイバイ」

「私は売買専門です」

「バイバイ・・・サヨナラ」

仕方なく賃貸部門を紹介するサンチーだった。

ナイジェリア・・・アフリカの貧しい国と侮った日本は・・・ワールドカップで痛い目にあったばかりである。

人口は一億八千万超・・・世界第七位であり、石油輸出量世界第八位、経済規模は世界第二十位でアフリカ最大の経済大国なのである。

イスラム教徒人口とキリスト教徒人口がほぼ均衡するアフリカの巨人である。

もちろん・・・ナイジェリアからの留学生であるビクトル・ムサ(星野ルネ)もまたサンチーの魔性に引き寄せられているのだった・・・あくまで妄想です。

翌日・・・雨宮家の長女である波瑠とともに・・・新宿営業所売買営業課に現れるビクトル・ムサ・・・。

足立に対して・・・母親の非礼を詫びる波瑠だった。

「どうしても・・・彼が・・・三軒家さんにお願いしたいと言うので・・・」

波瑠の彼は色白のアイドル系ではなかった。

「彼の国では・・・ぽっちゃり系が・・・美人の条件なのだそうです・・・あのこのことは両親には内密に願います」

事情を察したサンチーは・・・掟を破り賃貸物件の仲介に乗り出すのだった。

ビクトルは建築を学ぶ大学院生だが・・・ナイジェリア人に対する偏見でまともな家を借りられないらしい。

サンチーはそこそこの「愛の巣」を二人に紹介する。

「私は・・・波瑠さんを愛してます」と吠えるビクトルである。

「大学院卒業後・・・ビクトルさんは帰国することと思いますが・・・波瑠さんはどうなされるのですか」

「彼についていくつもりです」

サンチーの表情に浮かぶのは・・・憧憬なのか・・・危惧なのか・・・いつもとは違う表情なのだった。

一方で・・・徐々に高まる勝算。

庭野とともに・・・息子夫婦の内見に参入するサンチー。

「二世帯同居というのはお考えになられないのでしょうか」

「彼の両親と暮らすなんてとんでもない・・・姑からは・・・私が産んだので孫が可愛くないとまで言われているんですから」

激怒する妻の礼である。

しかし・・・夫の憲一は困惑気味なのだった。

「それに・・・彼にはお姉さんがいて・・・両親の面倒は彼女が見てくれますから」

礼の言葉に・・・ついに・・・勝機を見出したサンチーだった。

礼にとっての義理の姉・・・波瑠こそが・・・雨宮家攻略の要なのである。

一方・・・足立は・・・顧客に対する心理的サービスによって勝利を見出そうとする。

内見のために来社する雨宮嘉一のためにサプライズでバースデー・ケーキを準備する足立だった。

しかし・・・ケーキを持って現れたのは・・・不倫相手から両親との同居を提案されてエッチができないことを危惧する事務員の室田まどか(新木優子)ではなく・・・サンチーだった。

そして・・・サプライズ中に・・・庭野に呼び出された息子夫婦が現れるという衝撃的サプライズ。そして、波瑠とビクトルのカップルが現れる電撃的サプライズ。サプライズに次ぐサプライズである。

足立の準備したサプライズは花と散った・・・。

波瑠に元校長でリベラルを装っているが保守的な石頭と看破されている嘉一はもちろんのこと・・・実の娘に依存する母親・・・義姉に義両親の面倒を押しつけたい嫁・・・とほぼ一同が波瑠とビクトルの交際に反対するのだった。

「どんなに・・・反対されても・・・私の意志は変わりません」

愛を貫く波瑠だった。

「私は波瑠さんを愛してます」と吠えるビクトル。

「チーフこれは・・・」と庭野はサンチーの真意を問う。

「共通の敵がいれば・・・人は団結するものです」

「・・・」

「サプライズどうだった・・・」と呑気な課長。

「すべて・・・想定通りです」とサンチー。

悄然として戻ってくる足立。

「上手くいったんだってな」と課長。

「果敢に戦いに挑み・・・玉砕しました」と足立・・・。

「え・・・」と驚く課長。

庭野は戦友を痛ましげに見守るのだった。

足立と庭野のコンビも素晴らしいな。

ちょっと線は細いが・・・二人の相棒ものでも成立しそうな勢いだ。

雨宮家の家族会議に・・・波瑠の付き添いとして登場するサンチー。

「波瑠さんの意志は尊重するべきです。家事をまかせている娘さんに頼るのも・・・両親と同居するのが嫌で義理のお姉さんに頼るのも・・・自分勝手と言うものです」

「あなたに家族の何がわかるの」

「わかりません・・・しかし・・・お二人が似たもの同志であることはわかります。服装の好みもそっくりですし・・・男性の好みもそっくりです」

父子なので当然・・・似ている二人の夫である。

優柔不断は遺伝するらしいので・・・。

「一番わかりあえるはずの二人が・・・一緒に暮らすというハードルの前で立ちすくんでいるにすぎません」

「・・・」

「今から・・・皆さんに相応しい物件をご案内いたします」

もちろん・・・それはシンメトリーの過ぎたあの物件だった。

瓜二つの夫婦のために宛がわられる左右そっくりの家。

「近くて遠い・・・遠くて近い・・・二つの家族のために最適の二世帯住宅でございます」

「そんなら・・・別居したって」

「生きているのか死んでいるのかは・・・わかる距離でございます。別居と同様でありなからいざと言う時に瞬時に駆けつけられる距離感は・・・安心感を生みだします」

「・・・」

「この家を一億円でお買い上げいただけますか」

「買おう」と決断を下す嘉一だった。

六千万円程度の予算を考えていた二組の夫婦は・・・二千万円浮くことに気がついたのだ。

(落ちた・・・)

勝利の高揚感がサンチーの魂を浮揚させるのだった。

サンチーの孤独な魂・・・その虚無に一瞬・・・幻の炎が灯るのだ。

幼いももは左の扉から入り右の扉から出る。

「新しいお家だ・・・」

無邪気に喜ぶ幼子に・・・憩う雨宮家の人々・・・。

しかし・・・ドリトルではなくビクトルは・・・不満だった。

「家族は一緒に暮らさなければいけません・・・ナイジェリアでは第一夫人から第七夫人まで十五人の兄弟・・・みんな一緒に暮らしています」

イスラム教でもコーランでは妻は四人までしか許されていないがイスラム教師(ウラマー)が裁断すれば追加の許し(ファトワー)を得ることは可能である。イスラム教師が許せば何人でも妻帯できるのだが・・・そのためには夫の経済力が要求されることは言うまでもない。つまり、ビクトルの実家は富豪なのである。

相談に訪れたビクトルをサンチーは無視するが・・・課長が乗り出す。

「手紙がいいだろう」とお手本を書き出す課長。

しかし・・・その出来栄えはもう一つなのである。

愛する課長のために・・・あくまで妄想です・・・仕方なく救いの手を差し伸べるサンチー。

「書くなら六文字です」

なんでもけん

ビクトルから「郷愁を誘う何でも券」を送られた老夫婦は・・・波瑠とビクトルを餃子パーティーに招待する。

何故か・・・同行するサンチーだった。

二世帯住宅の壁に不満を抱くビクトル。

少し・・・狂信者の傾向があります。

「この壁を壊さなければいけません・・・家族は一緒に暮らすべきです」

ビクトルの剣幕に恐怖する智代・・・。

「壁は・・・日本人の奥ゆかしさを示します・・・壁があるから・・・見えない相手を思いやる心が育つのです・・・あなたも日本人の妻を迎えるならば・・・そういう文化について思いやる必要があります・・・壁は家を支える重要な要素です・・・建築学を学ぶあなたならわかるでしょう」

「ああ・・・壁の大切さを・・・忘れていました・・・餃子のお姉さん・・・ありがとう」

サンチーはアフターサービスをしないわけではない。

なぜなら・・・家を買った客が二度と家を買わないわけではないからだ。

生かさず殺さずは支配者のセオリーである。

ああ・・・最終回が来るのが嫌だなあ。

いつまでも毎週サンチーに会いたいよ。

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2016年9月 7日 (水)

人生は間違えた人が怪物になるテスト(波瑠)片づけられた女(佐々木希)狼を殺す羊(芦名星)

普通の殺人鬼VS青い目の殺人鬼VS心ない刑事・・・である。

やはり・・・普通の殺人鬼はうかつだったな。

いじめを見過ごす人も同罪の論理から言えば見殺しにしたら人殺しである。

死刑制度がある国家では・・・国民は全員、人殺しなのだ。

人間というものはいい加減なもので・・・そういう論理は極論としてスルーできる能力を持っている。

一人殺したくらいでは死刑にならない国家では・・・死んだ人間よりも生きている人間が優先される。

生きていれば納税できる可能性があるからである。

人間がそのような論理の破綻に耐えられるのは・・・少し馬鹿だからなのだろう。

最近はあまり・・・使われないがファジー(曖昧さ)という言葉こそが・・・人間の発展の原動力なのだ。

臨機応変で殺人を否定したり肯定したりしながら・・・自分の正しさをそれなりに信じることができる。

あなたは・・・そういう立派な人間なのでしょうね。

で、『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子・最終回(全9話)』(フジテレビ20160906PM10~)原作・内藤了、脚本・古家和尚、演出・白木啓一郎を見た。小説「羊たちの沈黙/トマス・ハリス」(1988年)から間もなく三十年が過ぎようとしいる。様々なヴァリエーションが生み出されたわけだが・・・これは・・・女刑事クラリスが・・・もしも羊に同情しなかったら・・・という新機軸である。なにしろ・・・主人公である警視庁刑事部捜査第一課の藤堂比奈子刑事(波瑠)には「感情」がないのである。ただし・・・この場合の「感情」とは主に「喜怒哀楽」に限定され・・・特にそうした限定的な感情において・・・共感性が低いために・・・感情表現に問題があるといった曖昧な描写になっている。お茶の間の理解力にも限度があるために無難な設定と言っていいだろう。脚本家はまた一つレベルアップしたな。

比奈子の高校時代の親友で連続殺人犯である真壁永久(芦名星)の瞳が青いことの理由については言及されないが・・・カラーコンタクトを使用しているからではなく生まれつき青いのだろう。

それが・・・真壁永久の問題なのである。

おそらく・・・遺伝子的な先祖がえりの一種であるのだろうが・・・青い目の娘が真壁聖司・浩子夫妻に亀裂を生じさせた可能性は大である。

二人はおそらく黒い目をしていたのだ。

夫は妻が青い目の男と不貞を働いた疑いに揺れる。

妻は・・・青い目の男と不貞を働いたかどうかは不明だが・・・困惑するしかないのである。

そのために・・・夫は・・・奇形児として青い目の娘を虐待し、妻はそれを見過ごした。

比奈子と比較すると永久の感情表現は豊かである。

永久は素晴らしい人間になる可能性を両親に奪われた犠牲者であることは間違いない。

虐待の事実が明るみとなり・・・児童養護施設の「永遠の翼」に保護された永久であったが・・・そこに待っていたのは施設長と運営者たちによる性的凌辱だった。

幼児から思春期に至るまで性的凌辱の限りを受けた永久は・・・自らを怪物に変貌させたのである。

世界が彼らを罰しないのであれば自らが罰するしかない。

永久にとって人間を殺すことは・・・最高の正義となった。

そこで・・・心を持たないもう一人の怪物・・・比奈子が登場する。

二人の美少女は出会い・・・お互いに影響しあう。

永久は・・・動物を殺すことを批判しない比奈子に出会う。

比奈子は人間を殺す道具を永久から受け取る。

成人した永久は2009年十月に長野県小山田町で暮らす両親を殺害して解体する。

続いて2010年三月に「永遠の翼」の施設長夫婦や運営幹部を殺害して解体する。

永久は死体を残さなければ殺人事件が発生しにくいことを利用していた。

日本では・・・殺された人間よりも行方不明になる人間の方が統計的に多いのである。

やがて・・・殺人行為は永久の中で合理化され・・・生きるための手段となる。

生きている人間を殺せば・・・所持品には持ち主がいなくなるからである。

永久の職業は・・・人間猟師である。趣味と実益を兼ねているのだ。

秘密の隠れ家で脱走した佐藤都夜(佐々木希)と合流した永久は・・・殺した情報屋・藤川(不破万作)の携帯電話によるトリックで無防備になった東海林刑事(横山裕)を拉致し・・・警視庁刑事部捜査第一課片岡班の片岡班長(高橋努)に瀕死の重傷を負わせると・・・比奈子に選択肢を提示する。

①一人で東海林を助けに来る

②チームで東海林を助けに来る

「わかるわね・・・一人で来ないと人質は死ぬのよ」

「なぜ・・・こんなことを」

「あなたが・・・なかなかこっちにこないから・・・迎えにきたのよ」

片岡班長の救命に追われる比奈子を残し・・・永久は去った。

片岡班長は意識不明のまま入院するが・・・一命はとりとめた。

厚田巌夫班長(渡部篤郎)は比奈子から事情を聴取する。

「あの女は・・・佐藤都夜と・・・連携していた・・・お前さんが知っている女なのか」

「高校時代の知り合いで・・・真壁永久という女性です」

「何者なのだ・・・」

「私が知っているのは・・・廃墟で・・・彼女が動物を殺傷していたことだけです」

永久からナイフを譲渡されたことは秘匿する比奈子だった。

おそらくプライベートな事柄と判断したのだろう。

聞き込みから戻った倉島刑事(要潤)と清水刑事(百瀬朔)は佐藤都夜に送られた手紙の中に不審な点があることを報告する。

送り主は住所も氏名も異なるのに筆跡が同じ五通の手紙があった。

「住所は・・・東京都が一人、千葉県が一人、そして栃木県が三人・・・いずれも一人暮らしの男性で・・・所在が確認できず・・・家族から捜索願いが届けられているケースもあります」

「五人・・・連続動物殺傷人体詰め込み事件の・・・使用されたパーツも・・・成人男性五人を含んでいます」

「連続動物殺傷人体詰め込み事件・・・すごいネーミングだな」

「何か・・・問題があるでしょうか・・・」

「いや・・・」

「もしも・・・都夜が・・・事件後に永久と知りあったのなら・・・合流のための情報が・・・この手紙に秘匿されている可能性があります」

「暗号か・・・」

「私が解読に着手しています」

三木鑑識官(斉藤慎二)が名乗りをあげた。

「藤堂・・・お前さん・・・帝都大学医学部に行ってくれ・・・石上教授が頼みたいことがあるそうだ」

帝都大学医学部の法医学教授・石上妙子(原田美枝子)は元の夫である厚田班長と情報を共有している。

比奈子の特異な心理的問題についてもある程度・・・洞察している様子である。

「精神・神経研究センターにサンプルを届けて欲しいの」

「・・・」

「というのは口実で・・・彼に面会してもらいたいのよ」

「あの人とは・・・もう会わないつもりです」

「まあまあ・・・そう固いことをいわないで」

石上は比奈子を抱きしめる。

「彼はあなたに逢いたがっている・・・わかるでしょう・・・生きている人間にはぬくもりがあるの・・・死んだら・・・冷たくなるだけよ」

石上教授の体温は・・・比奈子に亡き母の体温を連想させる。

比奈子は反社会的傾向を理由に隔離されている心療内科医師で電子工学の天才・中島保(林遣都)と面会した。

「私は・・・あなたに潜入しました」

「何か・・・わかりましたか」

「一部の感情が欠落しているあなたは・・・父親に怪物と呼ばれたことで・・・自分が怪物であるという認識を獲得した・・・そして・・・真壁永久という虐待によって変質した精神の持ち主から・・・ナイフという自分らしく殺せる道具を入手した・・・しかし・・・それだけではないはずです。それならば・・・あなたは怪物として父親という人間を殺すことで自己完結できる・・・何かが不足しているのです・・・重要なキーワードが・・・」

「それは・・・母の言葉でしょうか」

「お母様は何とおっしゃったのですか」

「比奈子・・・あなたは・・・大丈夫・・・間違わないで正しい選択をして生きていける・・・と」

「なるほど・・・だから・・・あなたは・・・迷ったんだ・・・自分が人間を殺せる怪物なのか・・・そしてそうすることが正しい選択なのか・・・」

「たぶん・・・そう考えるべきなのでしょう」

「その時・・・お母さんは他に何かしませんでしたか」

「私を抱きしめました」

「あなたは何かを感じましたか」

「母の体温を・・・」

「そうですか・・・あなたは・・・体温のあるお母様と・・・体温のないお母様のどちらを正しいと感じますか」

「・・・」

「わかりますね・・・人間の正しさには・・・答えなどないのです」

「・・・」

「あなたは・・・怪物ではない・・・ただの人間です・・・そして・・・人間は自分が正しいと思った選択をすればいいのです・・・人間にはそれしかできないからです」

「私が・・・正しいと思ったことをするべきだ・・・ということですか」

「そうするべきです」

比奈子は無表情に中島を見つめる。

比奈子の脳内では人智を越えた超高度な情報処理が行われていた。

秘密の隠れ家で東海林は囚われの身となっている。

「この男・・・殺さないの」

都夜は永久に問う。

「これは・・・比奈子を釣る餌だからね」

「生きていることにすればいいじゃないの」

「生き餌じゃないと食いつかない魚もいるのよ」

「・・・」

一瞬の隙をついて反撃する東海林・・・。

しかし、不自由な身では・・・都夜の激昂を引きだすのが精一杯だった。

「やはり殺すしかないわ」

「やめなってば・・・」

「あんたの指図は受けないよ」

東海林に馬乗りになり鋏を取り出した都夜に電撃を食らわす永久。

「あんた・・・比奈子の関係者だから・・・生かしておいたけど・・・つまらない女だな」

「なんだって・・・」

淡々と都夜に灯油をかける永久。

「やめて・・・」

「おい・・・何をする」

「やめてよ」

「おい・・・やめろ」

「あんたの無駄な抵抗が・・・この女を死に導いた・・・つまり・・・あんたが殺したとも言えるのよ」

「ふざけるな・・・」

「ふざけてなんかいないわよ」

永久はマッチを擦った。

「あなた・・・背中の火傷を気にしていたんでしょう・・・これで目立たなくなるわよ」

「やめて・・・あああああああああああああああああ・・・」

都夜の麻痺した身体から炎が燃えあがる。

「そんな・・・嘘だろう」

東海林は永久の底知れぬ残虐さに戦慄した。

「人間が燃えるのって綺麗よね」

「お前なんなんだ・・・」

「私は真壁永久・・・職業は人殺し・・・趣味も人殺し」

「・・・藤川もお前が殺ったのか」

「あんたの代わりにね」

「俺の代わり・・・」

「あんた・・・藤川が死んでちょっとホッとしたでしょう」

「何を言ってる・・・」

「藤川の脅迫がエスカレートしたら・・・自己保身のために・・・あんただって藤川を殺しただろうって言ってるの」

「お前と一緒にするな」

「妹殺されて・・・殺人犯と見れば見境なく暴行していたあんたにはこっち側にくる素質があるんじゃないの」

「・・・」

「比奈子がこっち側に来れば・・・あんたにもそうなる可能性があるんだと思わない?」

「なぜ・・・比奈子にこだわる・・・」

「そうねえ・・・私・・・あの子にときめいているの・・・ずっとね」

「・・・」

「私を何度も殺そうとした父親・・・それを見て見ぬフリをした母親・・・保護施設の運営者は親に捨てられた私を欲望のはけ口として利用して穴という穴に突っ込んできた。そうして私はこんな怪物に仕上がった。でも・・・あの子は違った・・・あの子は何も感じない・・・無色透明で・・・とっても綺麗だった」

永久はトランクの中から人体のパーツを収納したフィルムケースを取り出す。

「紹介するわ・・・これがクソ親父・・・の親指」

「これがクソママの薬指」

「これがクソ園長の人差し指」

永久は都夜の焼死体から燃え残った歯を取り出す。

「これが・・・クソ殺人鬼の奥歯」

都夜の歯をフィルムケースに入れてカラコロと鳴らす永久。

「いい音でしょう」

「・・・」

屈託のない永久の笑顔に・・・魅了される東海林・・・。

「もうすぐ・・・比奈子がやってくるよ」

「・・・あいつをどうするつもりだ」

「私ね・・・飽きてきたのよ・・・」

「飽きた?」

「この世界を憎み続けることに・・・だって・・・ものすごく退屈なんだもの」

「比奈子に殺させて・・・退屈さに終止符を打たせるのか」

「そうよ・・・あんた・・・やはり・・・クソ刑事ね」

比奈子は・・・永久の指示に従って・・・自宅ポストに投函された藤川の携帯電話を回収していた。

発信された囮の携帯電話を負う刑事たち。

第三者の車による昔ながらのフェイクである。

秘密の隠れ家に比奈子が現れた。

「やはり・・・一人で来たわね」

「バカ野郎・・・なんで一人で来た」

「東海林先輩を死なせることはできないので」

「・・・」

「約束通り・・・東海林刑事を解放してください」

「もちろん・・・だけど・・・もう一回選択してもらうわよ」

永久はライターを取り出した。

「このクソ廃墟には灯油を散布してあるの・・・クソ刑事の手錠の鍵は私のお腹の中・・・さっき・・・小腹がすいたので食べちゃったから・・・さあ・・・どうする・・・クソ刑事でバーベキューにするか・・・私のお腹からナイフで鍵を取り出すか・・・タイムリミットは三分ね」

「・・・」

比奈子はナイフを取り出した。

「どうしても・・・私に人を殺させたいのですね」

「そうよ・・・とっくに殺していると思ったのに・・・モタモタしているから・・・まあ・・・最初は慎重になるものだけど・・・一度やってしまえば・・・案外、簡単よ・・・習うより慣れろよ」

「やめろ・・・」

「しかし・・・東海林先輩を・・・」

「つべこべいうな・・・どんな理由をつけたって・・・人殺しは人殺しなんだよ」

「ふふふ・・・大丈夫よ・・・比奈子・・・これはどう見たって殺人じゃなくて・・・正当防衛あるいは人命救助なんだから」

「そんな奴の言うなりになるな・・・ナイフなんか捨てろ・・・お前が人殺しになったら・・・俺は絶対許さないぞ・・・ぶっ殺してやる」

「東海林先輩・・・意味不明ですよ」

「意味なんか知ったことか・・・俺は信じてるんだ・・・お前に人が殺せるわけないってな」

「私には殺せない」

「お前は怪物なんかじゃない・・・ただの人間だ」

「私はただの人間・・・」

「そうだ・・・それにお前はまだ刑事なんだから」

比奈子は永久に対峙する。

「ライターを捨ててください」

「残念・・・時間切れよ」

たちまち炎に包まれる廃墟。

比奈子は廃材を握り、東海林を繋ぎとめる鉄の柱に挑む。

「無理だ・・・逃げろ」

「決めてください・・・左手と右手・・・どっちにしますか・・・一分後にどちらかを切り落とします」

「無表情でこわいこと言うなよ」

「命は助かります」

「結局・・・あんたもそっち側の人間か・・・だったら殺すしかないね」

襲いかかる永久にタックルする倉島刑事・・・。

「真壁永久・・・殺人容疑で逮捕する」

「え・・・」

刑事たちは消火器を持って乱入する。

東海林は比奈子を見上げる。

「よく・・・踏みとどまったな・・・」

「・・・」

「認めてやるよ・・・お前はまだ刑事だ」

「・・・」

「忘れるな・・・俺やみんなが・・・お前を信じていることを・・・」

比奈子の心の中で・・・何かが蠢く。

見えない・・・聞こえない・・・だから言葉も知らないヘレン・ケラーが水に・・・水に名前があることに・・・気がつく奇跡の一瞬のようなものが通りすぎる。

いつもそこにあるのに・・・比奈子が気がつかなかったもの。

それは愛だった。

比奈子は無表情のまま・・・涙を流した。

「おい・・・こんなところで泣くなよ」

「ただの生理現象です・・・たぶん」

「・・・」

東海林刑事は厚田班長に囁く。

「どうして・・・ここが」

「俺が何年刑事をやっていると思ってんだ」

新人鑑識官の月岡真紀(佐藤玲)が暴露する。

「真壁永久が佐藤都夜に送ったまつり縫い方式の暗号を三木鑑識官が解読したのです」

「班長・・・人の手柄を・・・横取りか」

連行される永久。

「お別れだね・・・比奈子」

比奈子は永久を抱きしめた。

「あなたも・・・こうやって誰かに抱きしめてもらえていたなら・・・」

「ああああああああああああああ」

永久は地獄の底で咆哮した。

比奈子の退職願は・・・厚田班長の元妻である石上教授がポケットを確認しないで洗濯したために判読不能となった。

仕事を終えて帰宅した比奈子は・・・表情筋に休息を命じる。

夢の中で比奈子は永久に手錠をかけた。

「・・・」

「私は・・・刑事なので・・・」

母親の香織(奥貫薫)は微笑んだ。

心のない比奈子は・・・光のあふれる世界に突入していく。

心などなくても・・・人間は生きていけるのだから。

何かを間違えて怪物になってしまうまでは。

サイコサスペンスとしては21世紀の最高傑作と言えるドラマだが・・・ただのお茶の間には受け入れ難いのかもしれない。

それが世界というものだからな。

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2016年9月 6日 (火)

好きな人が変わること(桐谷美玲)変わる(山﨑賢人)変わるよ(三浦翔平)心は変わる(菜々緒)

厄介な問題である。

心が変わることは恋愛において避けられない問題だ。

しかし・・・人間と言うものは他人の心変わりに対して厳しいものなのだ。

浮気者・・・変節漢・・・裏切り者・・・心変わりをすれば罵られるのが普通だ。

いつまで同じ人間とつきあってるんだ・・・いい加減新しい相手を探せよ・・・よく飽きないな・・・などと罵られることはあまりないわけである。

だが・・・自分に正直な人間には・・・自分に嘘をつきたくない・・・という逃げ口上がある。

「もう・・・君を抱きたいと思わない・・・だから別の人を抱くよ」

これはこれで問題がないわけではないが・・・とにかく裏切り者と正直者でバランスはとれている。

どんなバランスだよ。

ああでもない・・・こうでもない・・・と議論を重ねているうちに・・・チャンスを逃すということはよくある。

明日、地球が滅びるかもしれないので・・・今日を大切に生きていこう。

どういう結論だよ。

で、『好きな人がいること・第8回』(フジテレビ20160905PM9~)脚本・桑村さや香、演出・金井紘を見た。人類が繁栄していくためには繁殖する必要がある。しかし、人間は繁殖しなくてもとりあえず生きていけるわけである。ただし・・・孤独死する場合はある。だが・・・家族が何人いようと死ぬ時は基本一人だ。たとえ一家心中しても・・・一緒に死ぬわけではない。なにしろ命は一人にひとつしかないのである。だから・・・家族とか永遠とか絆とかは幻想にすぎないわけだが・・・そういう幻想が甘美ならそれはそれでいいわけである。いくら専業主婦が絶滅危惧種だとしてもそれを目指す人がいてもいいし、共働きなのに家事をしない夫を甘やかす妻がいてもいい。そして、主夫がいてもいいのである。今は・・・なんでもありの時代だ。

自分がどう生きるべきか・・・ビジョンを持っている人間もいるが・・・なんとなく生きている人もいる。

このドラマの主人公は・・・どちらかと言えば・・・どちらともいえない人間なのだ。

文章としてどうなんだ。ニュアンスです。

和菓子屋の娘に生まれながら洋菓子職人になった・・・ということは独自の路線に足を踏み出すビジョンがあったということである。

そして・・・ケーキ作りにおいては・・・それなりの実力を持っている。

就職の面接に手作りケーキを持参するのはパティシエとして間違いとは言えないだろう。

だが・・・買われるほどの腕ではないらしい。

しかし・・・優秀なレストラン経営者である柴崎千秋(三浦翔平)が・・・ケーキを味見してスカウトしたのだから・・・可能性を秘めているとは言えるだろう。

ここで千秋が初恋の相手だというおまけがつく。

つまり・・・主人公には恋愛についてのビジョンはないのだ。

就職すると・・・人間は繁殖の問題を考える余裕ができる。

サラリーマンと専業主婦がベースだった社会では・・・経済的優位にたった男性が女性を選択するのが基本である。女性の選択権は・・・選んでくれた人を受け入れるかどうか・・・複数いれば・・・誰を受け入れるかだった。

しかし・・・今は男女雇用機会均等法の時代である。

就職と繁殖の問題は・・・より社会的な問題になっていると言える。

その一つの形が職業的パートナーが繁殖のパートナーという形である。

ある意味でそれは昔ながらのシステムであるとも言える。

たとえば・・・家族経営の農業はずっとそうやってきたわけである。

旅館でも支配人と女将が夫婦だったりする。

映画監督と女優も定番である。

それが男性サラリーマンと女性サラリーマンでは困難という企業には本当は問題がある。

このドラマでは・・・主人公に対してレストランオーナーとパティシエ、シェフとパティシエという二つの選択肢が示されているわけである。

もちろん・・・主人公は・・・まだ就職と繁殖が不可分であるとは考えていない。

仕事と恋愛は別物だという枠組みである。

しかし・・・男女雇用機会均等法の世界ではそれはもはや不可分の領域にあるのだった。

主人公は・・・恋愛については消極的に見える性格である。

しかし・・・それは用心深さの発露とも言える。

もちろん・・・自分が傷つくのを恐れているという基本もあるが・・・主人公にとって理想の職場が・・・なにしろ和菓子屋の娘でパティシエなのだ・・・恋愛沙汰で失われることもおそれているはずなのである。

就職と繁殖が不可分という認識を主人公が持つこと・・・それがロマンチックに描かれるのかどうか・・・それをひとつのチェック・ポイントにしたいと考える。

「弟が捨て子だったことを知ってしまうくらいなら親から受け継いだ店を売る」ほど・・・五歳年下の弟で海辺の町のレストラン「Sea Sons」のシェフ・夏向(山崎賢人)を溺愛している千秋だったが・・・秘密が明るみに出たことで重圧から解放されたのである。

そういう開放感は・・・人間の人格を変える場合がある。

大学に合格したら勉強しなくなる学生が多いのはそのためである・・・おいっ。

千秋は「弟が本当の弟であるために努力」してきたわけで・・・それが一種の習慣になっていたのである。

だから・・・実兄の借金のために千秋を捨て夜の世界に沈んだ楓が戻って来た時に・・・優しく受け止めたのだ。

だが・・・それもまた・・・無理のある話だったのだ。

千秋が櫻井美咲(桐谷美玲)をスカウトした時に下心がなかったはずはない。

その証拠に・・・千秋は・・・とっておきのデートコースに美咲を導いたし・・・二人で花火大会にも行くつもりだったのである。

そこに・・・楓が戻ってきて・・・別離の理由を知り・・・楓と復縁することになった千秋。

しかし・・・夜の世界で汚れた楓と・・・純情可憐な美咲を比べてみると・・・輝きが違うわけだ。

しかも・・・三男の柴崎冬真(野村周平)の情報によると・・・美咲は自分に告白寸前だったと千秋は知っている。

美咲の無防備な寝顔を見ると・・・下半身に血流が集中する千秋だった。

今回・・・千秋は・・・美咲と夏向の職業的パートナーシップをオーナーとして見守りつつ・・・その繁殖的パートナーシップの成立を悶々として見守るのである。

おそらく・・・美咲と夏向がさっさと交際宣言をすれば・・・千秋はそこまで性的欲望に支配されなかっただろう。

だが・・・美咲という恥ずかしがり屋さんは・・・千秋の怒張を無意識に嬲るのである。

結局・・・恋愛ドラマは脚本家の妄想プレイだからな。

ワンポイントリリーフを経て明らかに変態化だよな・・・おいおい。

長い間の夏向に対する劣等コンプレックスが解消された冬真は心機一転、料理人修業を再開するのだった。

就職に希望を見出した冬真は・・・繁殖相手としての調理師学校生・二宮風花(飯豊まりえ)の存在を見直し、関係修復を図るために彼女を店に招待する。

「この玉ねぎ・・・俺がカットしたんだ」

「かっこいいじゃん」

成人したばかりの二人は仲直りした!

修行を終えた冬真は・・・風花とレストラン「Sea Sons」二号店を出すことも可能だ。

一方・・・有名なレストラン・プロデューサー大橋尚美(池端レイナ)の主催するダイニングアウト(出張レストランの共演)に参加するためのメニュー作りに励む夏向と美咲のコンビ・・・。

美咲は・・・夏向の告白の返事をペンディング中だが・・・気持ちはすでに「夏向と一緒にいたい」方向で定まっている。

だが・・・恋愛について臆病な美咲は「好きだ」と言われて「私も好き」と言うことにも勇気を出さなければならない難儀な性分である。

しかも・・・千秋が好きだった自分と夏向を好きな自分が同時に存在することは貞操観念的に世間体が悪いと思うタイプである。

広島カープ連勝に敵地でパレードする勢いのカープ女子・石川若葉(阿部純子)は意気地なしの先輩の尻を叩くのだった。

「難儀やの~」

「今は・・・大事な仕事の前なので・・・そういう空気じゃないって・・・いうか」

「空気なんて読む必要はないけんの~・・・空気は大きく吸って・・・好きだ!と叫ぶためにあるんじゃけんの~」

「そんなもんですか」

「そんなもんよ~とっととねんごろになってつかあさい」

尻を叩かれた美咲は・・・夏向に気持ちを伝えようとするが・・・最終回ではないのでストレートに口に出せないのだった。

冬真提案の・・・夏の終わりの花火の夜・・・。

「私・・・決めました」と遠回しの表現を開始する美咲。

「そうか・・・じゃあ・・・明日・・・買い出しに行こうか」

「え」

「デザートのメニューが決まったんだろう?」

ああ・・・勘違いなのか・・・答えを聞くのを夏向が回避したのか微妙なところである。

だが・・・常にきっかけを求める美咲は・・・メニューのプレゼンテーションが成功したら「お返事」しようと心に誓うのだった。

近隣農家で食材を調達する二人。

「えー・・・なんでー」と口をとがらせながら美咲は農作業着コスプレを披露する。

夏向はトマト料理、美咲は桃のデザートを目指すようだ。

収穫物を満載したトラックの荷台でキュウリ生噛りで間接キスをする夏向と美咲。

もう・・・告白したも同然じゃないか。

咥えたのはキュウリだけじゃないだろう・・・おいっ。

千秋は楓とデートを重ねるが・・・その関係に燃えるものを感じない千秋である。

すでに・・・夏向の気持ちも知っているし・・・弟思いの兄としては・・・イケナイ欲望なのだが・・・そういう流れに燃えあがるタイプの千秋だったらしい。

日に日に・・・美咲を見る目がいやらしくなっていく千秋である。

見事な鬱演技である。

モヤモヤした男を演じさせたらピカイチだな。

だから二番手になっちゃったんじゃないのか。

お茶の間は美少女にも厳しいが・・・本当のイケメンにも厳しいからな。

そして・・・もはや尾道に去った美少女風の西島愛海(大原櫻子)とは違い、しつこく出番を確保する変態企業家の東村了(吉田鋼太郎)・・・。

東村は・・・「ダイニングアウト」に絡んでくることを夏向に匂わすのだった。

一方・・・美咲は・・・恋する乙女になってしまい・・・夏向の存在にうっとりである。

「ダイニングアウト」の打合せにも・・・身が入らず・・・夏向ばかりを見つめてしまうのだ。

プロフェッショナルであるレストラン・プロデューサー大橋尚美はその気配にカチンと来ます。

お互いのレシピノートを交換し・・・料理とデザートの一体感を目指す夏向と美咲。

二人の料理は完成するが・・・プレゼンテーションは不調に終わる。

プロデューサー大橋は・・・ネームバリューのある夏向にはネームバリューのあるパティシエを組ませたいと・・・最初から考えていた気配が濃厚だった。

千秋に「夏向の料理は素材を活かしているが・・・彼女のデザートはそれに釣り合っていない」とパートナーチェンジを提案する大橋だった。

立ち聞きした・・・美咲は・・・たちまち委縮してしまう。

「自分が・・・彼の足を引っ張っている」

力不足を認めるあまりに・・・ファイティング・スピリット(闘争心)を失うボクサーとなったのだ。

パティシエ候補のリストを発見した美咲は完全に戦意喪失である。

「私の力不足で・・・こんなことになって・・・新しいパティシエと頑張って」

「ださいな・・・」

「え・・・」

「ダサいって言ってんだ」

「そんな・・・私がどんな気持ちで・・・」

「お前の気持ちなんか関係ないよ」

「・・・」

完全に否定されたと思いこんだ美咲は・・・サーフショップ「LEG END」の経営者・日村信之(浜野謙太)と奥田実果子(佐野ひなこ)の出番を確保するために「テキーラをちょうだい」と自棄酒である。

酔い潰れたところに・・・千秋と楓のカップル登場。

千秋は美咲を家に送り届けることに。

「私の実力が足りないばっかりに・・・彼を怒らせてしまいました」

「それは・・・勘違いなんじゃないかな」

「え・・・」

「夏向は・・・パートナーが途中で・・・仕事を投げ出したことが・・・口惜しいだけなんじゃないか」

「・・・」

美咲は・・・捨てられたのが自分ではなく・・・彼だったことに気がついた。

それなら・・・好きだと言った相手をじらしまくってることにも気がつくべきだがな。

だから・・・最終回じゃないからダメなんだって。

もどかしいな。

この脚本家はもどかしさこそ・・・恋愛の神髄という変態的信念の持ち主なんだよ・・・きっと。

まあ・・・そうなんだけどね。

中森明菜に「じれったい」と女子が罵られる時代なんだな。

自己憐憫と自己陶酔から醒めた美咲は厨房に戻るのだった。

実力不足は努力と根性で克服するしかないのが・・・アスリートの宿命なのである。

パティシエだけどな。

そして・・・千秋の偽善行為も限界に達したようだ。

美咲を求めて・・・厨房にやってきた夏向は・・・すでに・・・美咲が何かを整えた気配を感じる。

完成したデザートを持って・・・大橋プロデューサーに殴りこみをかける美咲。

「お願いします・・・もう一度・・・味を見てください」

「無駄よ・・・あなたと彼とではつりあわない」

「そこをなんとか」

「あなたでは無理なのよ」

「じゃ・・・俺も降りるよ」

駆けつけた夏向だった。

困惑する大橋プロ。

「彼女が一番・・・俺の味を理解しているんだ」

仕方なく・・・デザートを口にする大橋だった。

ゼロになるより・・・おまけつきの夏向で妥協するプロである。

「確かに・・・よくなってるわね・・・これなら・・・成立するわ」

こうして・・・シェフとパティシエとしてのパートナーシップを確立した二人。

後は・・・繁殖の問題をクリアするだけなのだ。

「今晩・・・二人でお祝いしたいな」

「いいよ」

「じゃあ・・・私・・・厨房でケーキ作っていく」

「俺は家で料理を作って待ってるよ」

いやいや・・・二人で厨房で作るのが自然じゃないか・・・。

だから・・・それをやったら最終回なんだって。

一人で・・・ケーキ作りに励む美咲。

そこに・・・ついに疼く下半身を抑えかねる千秋が急襲する。

「これから・・・二人でお祝いするんです」

完成したケーキをパッケージに納める美咲。

しかし・・・そんな美咲を背後から抱きしめる千秋だった。

「え」

落下して粉砕されるケーキに・・・食べ物を粗末にすることが絶対に許せない一部お茶の間から怒号が沸き起こるのだった。

そういうことをしても許されるのだと思ってしまったらしい千秋である。

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2016年9月 5日 (月)

俺たち真田兄弟、徳川が勝っても豊臣が勝っても心は一つだってこと(長澤まさみ)

人間は何かを好むものだ。

そういう習性があるらしい。

人間は何かを嫌うものだ。

そういう習性があるわけである。

天下分け目の決戦で・・・人間の好き嫌いが持ち込まれるところが物語である。

義理とか人情が好きな人は地縁・血縁を大切にするわけである。

一か八かが好きな人は危ない橋を渡る。

愛が好きな人はそういう兜をかぶる。

戦が好きな人はゾクゾクするのだな。

戦が嫌いな人は山奥に逃げるしかない。

いくら祈っても平和なんか来ないのだ。

平和とは血と涙と汗と無数の死体の結晶なのである。

お題目を唱えるのが好きな人は南無阿弥陀仏。

真田父子は最高軍師・韓信の蘊蓄で盛り上がる。

そういうあれこれを感じさせてくれる大河ドラマが好きだ。

で、『真田丸・第35回』(NHK総合20160904PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は「犬伏の別離」のいいところを全部持って行った真田信幸の第二弾イラスト描き下ろし大公開でお得でございます。重要なシーンでかっさらっていく役者の力の見せ所ですな。今回はひねった展開が見事にはまりましたねえ。父・昌幸の策を奪っていくだけでなく足駄まで投げてしまった・・・天晴ですな。祖母・河原氏恭雲院の係累である河原右京亮綱家は信幸の筆頭家老なので阿吽の呼吸だったと妄想できます。つまり・・・徳川の間者に真田家の分裂が血なまぐさいものだったと見せつけるためだったのでしょうねえ。まあ・・・妄想的には河原一族は河童なので陸の上では動きが鈍くかわせなかったのかもしれません。一方で実は豊臣秀吉の落胤だったかもしれない大谷吉継(秀吉を継ぐものの意)と結果として秀吉に一生を捧げたことになる佐吉(秀吉を補佐するものの意)こと石田三成の性別を越えた友情・・・いやいや最初から同性だから・・・これには腐臭漂わす乙女でなくてもうっとりでございましたな。いざとなるとダメな男に・・・棺桶に片足つっこみながらエールを送る。こんな凄惨な愛の形は戦国絵巻の中でも絶妙でございますからねえ。美男と美男の再現ドラマで麗しゅうございます。そういう中で・・・ガラシャ事件という石田三成の最初の不手際が発生する。そこに・・・佐助ときりをからませて・・・喜劇要素と活劇要素を同時に発生させる・・・本当に見事な手際ですねえ。金太郎飴のようにどこから切っても「傑作」です。これはもう・・・終わってみれば大河史上の最高傑作になるのかもしれません。そういう予感で満ちておりますな。

Sanada035慶長五年(1600年)六月二日、徳川家康は会津征伐を号令した。白河口から家康・秀忠父子の率いる本軍が攻め仙道口から佐竹氏、信夫口から伊達氏、米沢口から最上氏、津川口から前田氏が包囲殲滅するという大作戦である。本軍は徳川勢だけで六万、黒田長政、福島正則、細川忠興、浅野幸長などの軍勢が五万・・・これだけで十万越えの大軍勢である。さらに西国大名の十万が後詰となる手筈である。ここに反徳川勢力のつけいる隙が生じるわけである。長束正家、増田長盛、前田玄以の三奉行と毛利輝元、宇喜多秀家、小早川秀秋の三大老の連携を石田三成と大谷吉継が画策するのである。十五日、真田昌幸は大坂を出陣、上田城経由で下野に向う。細川忠興など大坂の諸将も同様に出陣。十六日、家康が大坂を出陣。十七日、家康は伏見城で留守中の指図を行う。十八日、家康は本多忠勝、井伊直政、榊原康政などの最強部隊に守られて大津を経て江戸に向う。七月二日、会津征伐のために敦賀を出陣した吉継は佐和山城の石田三成と密会。十一日、家康弾劾のための謀議が成立する。十六日、毛利輝元は大坂城に入城。十七日、諸将に対し三奉行による家康弾劾文が発せられる。大坂城細川屋敷にて細川ガラシャが家臣の介錯で自死。十九日、秀忠が江戸を出陣。宇喜多軍主力が鳥居元忠が篭城する伏見城を包囲。二十一日、家康が江戸を出陣。二十二日、下野に入った家康の元へ三奉行の密書を受け取った金森長近が大坂の変事を密告する。秀忠傘下の真田父子は犬伏の陣所で密談を行う。

細川一族は古き忍びの末裔である。下忍の鷹匠が変事を報せるために下野の細川陣屋にたどり着いたのはガラシャの死から四日後の朝だった。

陣中には細川忠興と・・・二人の息子、忠隆と忠秋がいる。

三人はガラシャの死に顔色を変える。

「これで・・・豊臣も終わりじゃ・・・」

「・・・」

「考えてみれば・・・あれは・・・父の仇を討つ覚悟だったのかもしれん」

「・・・千世も死んだか」

忠隆は母の死よりも自分の妻の消息が気になった。

千世は前田利家の七女で忠興の長男・忠隆の正室である。

「千世様は・・・宇喜多屋敷に匿われておりまする」

「なに・・・」

千代の姉で前田利家の四女・豪姫は西軍の主将の一人、宇喜多秀家の正室だった。

忠隆は思わず・・・父・忠興の顔色を窺った。

忠興は無表情のまま・・・忠隆と目を合わせることはなかった。

忠隆は・・・策謀家である父・忠興が暗い時の流れを窺っているのを感じた。

大老だった前田利家の娘を娶り、義兄に同じく大老である宇喜多秀家を持った忠隆の運命がゆっくりと変転していく。

次男の忠秋は・・・父と兄との無言のやりとりを興味深く見つめている。

江戸城では十四才となった忠興の三男・忠利が人質として・・・いつもの変わらぬ朝を迎えている。

この日・・・忠利の運命も大きく変転していたが・・・忠利が母の死という変事を知るのは家康が下野から江戸に戻ってきてからのことだった。

諸将の忍びたちが続々と下野国内の各陣屋に到着している。

細川屋敷炎上に乗じて脱出した人質も多かった。

黒田長政の継室・栄姫は首尾よく脱出している。

黒田長政は・・・安堵を感じ・・・棄教したキリシタン・ダミアンとしてガラシャの死を悼んだ。

大坂真田屋敷には・・・信繫の正室・春だけが残っていた。

全員が忍びでくのいちの真田一族の逃げ足は速かったのである。

西軍の主将の一人である大谷吉継の娘はいわば置き去りにされてしまったのだ。

「皆、行ってしまわれた・・・」

閑散とした真田屋敷の風情が面白くなり・・・春は一人微笑んだ。

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天地人の関ヶ原の合戦前夜

軍師官兵衛の関ヶ原の合戦前夜

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2016年9月 4日 (日)

戦艦武蔵(石原さとみ)したくありません戦争は(勝地涼)フェルジナンドは違った(吉沢悠)

土曜日の谷間です。

絵本「フェルジナンドの物語(The Story of Ferdinand)」(1936)はアメリカ合衆国メリーランド 州生まれのマンロー・リーフ(Munro Leaf)が文を書き、ニューヨーク州生まれのロバート・ローソン(Robert Lawson)が絵を描いた作品である。

1936年はスペイン内戦が開始された年であるが・・・1931年のスペイン革命によって開始された共和制の右派と左派の対立がエスカレートしてついに爆発したという様相である。

人民戦線政府のバックにはソ連がついており・・・フランコの指揮する反乱軍のバックにはナチス・ドイツとイタリアそしてポルトガルがついていた。

英国は中立、フランスも最初は人民政府寄りだったが・・・結局中立となった。

日本は日中戦争の最中で広東や武漢を占領し、重慶の爆撃をしている年である。

米国は中立だったが・・・血の気の多いヘミングウェイなどがリベラルな立場から人民戦線政府側よりの報道作戦を展開する。

そういうわけで闘牛よりも花が好きな子牛の物語は・・・スペインのマドリードを舞台とすることから・・・ある種の政治的背景を想像させるわけである。

つまり「闘牛なんてくそくらえ」という他国の伝統や文化をないがしろにする独善的な姿勢を育むことがあるので要注意ということである。

「牛さんかわいそう・・・イルカさんもかわいそう・・・でもビーフステーキはおいしい」という話だ。

米国では1938年にウォルト・ディズニーが「牡牛のフェルディナンド(Ferdinand the Bull)」としてアニメ化している。

日本では太平洋戦争敗戦後に「はなのすきなうし」として邦訳された

まあ・・・ストレートに読めば・・・肉弾戦の好きな男の子の中に一人・・・女の子みたいに花が好きな男の子が混じっている・・・性同一性障害の話である。

で、『NHKスペシャル・ドラマ・戦艦武蔵』(NHK総合20160903PM9~)脚本・演出・岡崎栄を見た。2016年8月6日の BSプレミアムザ・プレミアム枠で放送されたテレビドラマの短縮版(15分程度カット)である。低予算でスペクタクルを描こうとして失敗している風である。もちろん・・・「ドキュメンタリー」の「再現シーン」としてこのような「モード」は充分に成立するだろうが・・・実写ドラマに挿入されると・・・違和感が半端ないわけである。さらに・・・この演出家には脚本家としての才能はないと思われる。実際の証言を登場人物に無理矢理言わせている感じも半端ない。まあ・・・でも・・・やりたかったんだからしょうがないよね。「俺たちの大和」はあるのに「俺たちの武蔵」がないのは不公平だもんね・・・という他はない仕上がりである。

One Direction「LONG WAY DOWN」の挿入も・・・年寄りの冷や水のような気がしました。

・・・ドラマ「天下御免」(1971~1972)を演出していた岡崎栄と同一人物なら・・・まだ現役だったのか・・・と率直に思う。

まあ・・・とにかく・・・ドラマとしては水準に達していないことおびただしい。

キャスティングにも問題がある・・・年老いても矍鑠としている人は多いが・・・戦後70年の話である。

シブヤン海の水深1000mの地点で武蔵の残骸が発見されたのは2015年3月のことなのだ。

ドラマの中で武蔵発見の報道が挿入されているわけである。

戦艦「武蔵」の対空機銃分隊長だった真中少尉(吉沢悠)の妻で1945年に18才で長男の賢治(篠田三郎)を出産した真中ふみは現在の時点で89才になっている。演じる渡辺美佐子は83才である。

もちろん・・・個人差はあるがまもなく九十才と八十を過ぎたばかりの老人は明らかに違うのだ。

まして・・・ふみと同い年の戦艦「武蔵」の乗組員を演じる津川雅彦はまだ76歳である。

見事な老け役を演じているが・・・まだ若い気がしてしょうがなかったぞ。

もう少し・・・転んだら死にそうな感じじゃないと・・・それはお前の偏見ではないのか。

賢治は終戦の年に生まれたので70才である。演じる篠田三郎は67才である上に少し若作りだ。

賢治の妻・よしえを演じるのが市毛良枝で実年齢が65才。

娘の真中麻有(石原さとみ)は28才の設定である。これはほぼ実年齢だ。

36才の時なので高齢出産である。

だから・・・なんだと思われるかもしれないが・・・戦争体験者の祖母、戦後育ちの息子夫婦、バブルの頃に生まれた孫という三世代はあまりベーシックではない気がするよ。

そういうことが気になって本編にちっとも集中できないよ。

真中麻有は北区の高齢者施設「ひまわりの里」に勤務している介護士である。

父方の祖父は昭和二十年(1945年)に戦死しているために麻有はおろか・・・戦死の公報が届く直前に生まれた麻有の父親・賢治(篠田三郎)も知らないのだった。

「憲法九条が改正されたら・・・徴兵制が復活するのかな」

「そんな馬鹿なことを言ってるのは一部狂信者だけだよ・・・一種の改憲即開戦詐偽だよ」

などと一部平和運動家があれやこれや言う2015年・・・大日本帝国軍人の末裔である麻有は祖父がどういう人間だったのか気になりはじめ・・・余暇に祖父の戦友を訪ね歩くという一種の歴史おタクとなっている。

祖父の真中俊之(吉沢悠)は海軍軍人で・・・戦艦「武蔵」の乗員だった。

戦艦「武蔵」は大和型戦艦の二番艦で1944年10月の「レイテ沖海戦」で米国の第38任務部隊に属する複数の空母群から波状攻撃を受け、総員退艦の後に転覆、沈没したとされる。

しかし・・・この時、俊之は艦と運命を共にしなかったらしい。

世界最大の戦艦の敗北の要因はいろいろあるが・・・対空戦力の補強が上手くいかなかったことは明らかだった。

最新の戦艦であり・・・武装強化の改装も行われていたが・・・肝心の対空砲、対空機銃の開発・生産が間に合わなかったのである。

日本海軍も噴進弾(ロケット弾)を開発中だったが・・・武蔵に搭載されたの試験運用の段階の二基のみであった。

一方、米国艦載機はロケット弾を装備して武蔵を葬ったのである。

戦艦「武蔵」は対空戦力を引きつける囮として突進したが・・・すでに暗号を解読された帝国海軍の作戦は米国側に筒抜けだった。米国艦載機はまず・・・囮部隊を素通りして帝国海軍の空母群を壊滅させた。

相打ち覚悟で米国機動部隊に向った帝国の艦載機は・・・新兵器レーダーで捕捉され、戦闘機による待ち伏せに遭い壊滅。

最後に孤立した武蔵に米国空母群は猛攻を浴びせかけたのである。

技術力、物量、作戦のすべての面で敗北し・・・帝国海軍は壊滅する。

武蔵の沈没から・・・現代の人間が学ぶべきなのは・・・戦争の悲惨さではなく・・・下手な鉄砲は打つべきではないということだろう。

そもそも・・・「したくありません戦争は」というのは「欲しがりません勝つまでは」と同じ精神論である。

精神論だけでは戦争は回避できないし、戦争というものが相手というものの存在するものである以上、仕掛けられたらはいそれまでよなのである。

少なくとも・・・そういうレベルで反戦の話をしてもらいたものだなあ。

そうでなければ確実に悲惨な戦争に巻き込まれるよ。

最後の武蔵艦長・猪口敏平は「対空戦力を活かせず」の言葉を残して艦と運命を共にする。戦死後一階級特進で海軍中将である。

武蔵の全乗組員2399名中生存者は1376名だったとされる。

生存者の一部はマニラ海軍病院に収容され、残りは海軍陸戦隊としてフィリピンのコレヒドール島に上陸したと言う。

このうち一部は輸送船により帰国となったが・・・輸送船は雷撃により沈没する。

フィリピン守備隊としてマニラ市街戦などを戦った武蔵陸戦隊はほとんどが戦死した。

そんな・・・未帰還率の高い武蔵乗組員にも生存者がいるところが運命というものである。

俊之の部下の一人・木山三男(泉澤祐希→津川雅彦)が四国でお遍路をしているという情報を得た麻有は身体の不調を訴える祖母のふみを伴い空路で高知へ飛び、レンタカーで木山を追尾するのだった。

「主人のことをご存じですか」

「私は分隊長殿を見殺しにした男です」

そんな二人の重いムードをぶち壊す前髪クネ男ではなくて・・・お遍路中のイラストレーター・篠原徹(勝地涼)である。

「夫婦で・・・お遍路なんてうらやましいなあ」と軽薄な口調で語る篠原は・・・空気を読めない若者なのだが・・・実は若くして妻を心臓病で失い・・・お遍路中の傷心者なのだった。

が・・・しかし・・・戦艦「武蔵」の物語には唐突すぎる存在であることは否めない。

「原爆で妻を失った軍人の話」とか「亡妻の友人の自衛隊員の妻が戦争に不安を感じる話」とかとってつけた証言要素を連発し・・・ドラマとして破綻させていることは間違いない。

「昔・・・悲惨な戦争をしたのに・・・今、戦争をしたら・・・亡くなった方に顔向けできない」というヒロインのセリフもほぼ意味不明である。

そういう「なんだか変なトーン」は無視して・・・話を進めるほかはないのである。

リオ五輪のトライアスロンで・・・溺死しかかっているものたちの群れを遠泳中に見たが・・・洋上で軍艦が沈没し・・・夜の海面を浮遊する生き残りたちの凄惨さはそれなりに描かれる。

内地では・・・軍事訓練と称して少年たちが・・・無理矢理・・・遠泳させられていたのだが・・・すべてはこの時のためなのである。

十時間に及ぶ戦闘の後の浮遊である。

負傷者や体力のないものは次々に力尽きる。

戦友の一人が沈みかけるのを救おうとした木山に真中が命ずる。

「手を出すな・・・蹴れ」

「・・・」

上官の命令は絶対である。

真中は木山の生存率を高めるために非常な命令を下したのだろう。

戦艦「武蔵」の随伴艦である駆逐艦「清霜」「浜風」は深夜に渡って救助活動を展開した。

「武蔵」の沈没については緘口令が布かれ、生存者たちは最前線に投入される。

戦闘の中で真中は右目を負傷、大腿部に銃創を負い、歩行不可能となる。

「自決の前に・・・分隊長殿は・・・学生時代に読んだ本の話をしてくださいました」

「どんな話でしょう」

「闘牛で有名なスペインの変わり者の牛の話です。牛たちは闘牛場で闘牛士と戦うことを夢見ますが・・・フェルジナンドは木の下で花の香りを嗅ぐのが好きだったのです。ところがある日、ハチに刺されて暴れたところを勇猛だと勘違いされて闘牛場行きになりました・・・しかし、フェルジナンドは観客席の御婦人がたの花の香りにうっとり。闘牛にならなかったので牧場に戻されると言う話です」

「・・・」

「分隊長は・・・私はフェルジナンドになりたいとおっしゃってました」

「そうですか・・・」

「分隊長が自決されたのは・・・二月でした」

「それは・・・息子の誕生日だわ」

「そうですか・・・分隊長は・・・輪廻転生なされたのかもしれませんね」

「戦争で人を殺しても畜生道には落ちないのですね」

「ええ・・・それは・・・正しいことですから」

「でも・・・フェルジナンドは最後はステーキになったんですよね」

「ですよねえ・・・」

「武蔵は不沈戦艦ですから・・・水没しても海底には達せず・・・黒潮に乗って本土に帰ると信じていたものもいましたよ」

「まあ・・・ロマンチック」

七十年後に微妙なドラマが作られたことも知らず・・・英霊たちは・・・太平洋で静かに眠っている。

そして人類の戦争の歴史はまだまだ続くのだ。

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2016年9月 3日 (土)

色仕掛けの香典泥棒(向井理)文学的なそこそこ文学的な(木村文乃)しっぽりと索状痕(佐藤二朗)

教養を身につけるのは難しい。

最低でも・・・義務教育中の教科書の内容は全部暗記しておく必要があるだろう。

そういう意味で・・・日本には教養のある人はほとんどいないと思われる。

小説「伊豆の踊子」(1927年)と言えばノーベル文学賞受賞者の川端康成の代表作の一つである。

基本的には読んでおくことが教養を高めるわけだが、かっては映画化される文芸作品の定番であり・・・内容は映像化された作品で知っていると言う人も多かった。

田中絹代、美空ひばり、鰐淵晴子、吉永小百合、内藤洋子、山口百恵などが銀幕のヒロインとなっていた。

しかし・・・山口百恵版が1974年、テレビドラマの後藤真希(モーニング娘。)版が2002年である。

アイドル全盛期において・・・誰も伊豆の踊子を演じない時代である。

一方、小説「天城越え」(1959年)は松本清張によるミステリ作品である。

「伊豆の踊子」の舞台が・・・作品の背景にあり・・・およそ三十年の歳月が交錯する形になっている。つまり・・・「伊豆の踊子」時代に起きた事件を振り返るスタイルである。

小説「天城越え」には「私」として登場する主要人物は映画「天城越え」(1983年)で小野寺建造とネーミングされている。

今回、舞台となる旅館「仇母巣亭」の支配人の名前が小野寺建造である。

そして・・・「天城越え」の事件を捜査するのは静岡県警察の刑事部嘱託・田島松之丞である。

今回、静岡県警の警部補は田島梅之丞だ。

そういう些細なお遊びも・・・教養のない人にはほとんど無意味なのである。

まあ・・・それがテレビというものならば・・・何もかも虚しいとMr.Childrenはまだ歌っていない。

で、『神の舌を持つ男・第9回』(TBSテレビ20160826PM10~)原案・演出・堤幸彦、脚本・櫻井武晴を見た。「ニサス」の定番の一つに「子を捨てた母の恩讐劇」というものがある。今回、死体発見の舞台となる旅館が「仇母巣亭」であり・・・「オレたちひょうきん族」に登場するキャラクター・マネー島崎(島崎俊郎)の決め文句「アダモステ~・・・ペイ」へのパロディーであると同時に・・・仇なす母の巣窟という暗示があると思われる。

「天城越え」では・・・少年が年上の女に仄かな思いを抱くのだが・・・その背景には・・・実母への屈折した愛情が存在する。

思わせぶりに登場する「仇母巣亭」の一人息子である駿(中澤準)が流浪の温泉芸者・ミヤビこと平良カマドメガ(広末涼子)に示す思慕の情が・・・母親である女将の華子(烏丸せつこ)と絡んで・・・「天城越え」的世界観を醸しだすのだろう。

ちなみに・・・「天城越え」での容疑者の名はハナである。

ヘアピンカーブ(九十九折)を抜けて天城峠にさしかかる伝説の三助・朝永平助(火野正平)の孫である人間成分分析器・朝永蘭丸(向井理)、ニサスマニア(二時間サスペンスドラマ愛好家)の古物の行商人・甕棺墓光(木村文乃)、そして宮沢賢治の心象スケッチを諳んじる宮沢寛治(佐藤二朗)の温泉探偵トリオ・・・例によって、車はガス欠である。

「テンジョー越えとか・・・イマメのオケ子とかで有名なんだって」と甕棺墓くん。

「天城越えで伊豆の踊子だ」と寛治。

「教養あるな・・・理系の僕にはわかりません」と蘭丸。

「一般常識である」と寛治。

「あなたと越えたい~」と歌い出す甕棺墓くん。

「石川さゆり・・・1986年である」と寛治。

ちなみに・・・木村文乃は1987年生まれだ。

時は流れていくよねえ・・・。

ところで・・・無垢な少年的青年を演じる向井理は1982年生まれの34歳である。もう・・・いい加減、おっさんなのだが・・・イケメンなのでイケてるわけなんだな。

おっさんなのに・・・思春期の少年のような振る舞い・・・ある意味、凄いぞ。

六歳も年下の文乃が年上のお姉さんに見えてくるところがな。広末涼子だってもう36才なんだぜ。

二十歳で出産していると子供が高校生の年頃だよな。

とにかく・・・作中の年齢設定による物語が読みにくい時代だ・・・。

意外性の作り方が難しいんだよな・・・なんでもありだからなあ。

烏丸せつこも61才なのである。

徒歩で伊豆の九十九温泉郷(フィクション)を目指すトリオは旧天城トンネルこと天城山隧道を抜けたところでミヤビが謎の男から三万円を受け取っているところを目撃する。

「ミヤビ・・・」と呟く謎の少年に気がつく蘭丸。

少年からは温泉の成分が検出される。

ミヤビを追うトリオは九十九町の公民館で稽古中の芸者たちを訪ねる。

「ミヤビ・・・そんな芸者は聞いたことがないズラ」

一癖も二癖もありそうな芸者たちは・・・。

五十代のキチ(久世星佳)、四十代の貞奴(猫背椿)、三十代の豆羽(肘井美佳)、小太郎(信川清順)と年増ばかりだった・・・。一部お馴染みの顔ぶれだな。元宝塚月組トップスターも混じっているがな。

「そういえば・・・着物コンパニオンが・・・仇母巣亭に呼ばれズラ」と魔界騎士を生みそうな肘井美佳が情報提供である。

トリオは「仇母巣亭」で例の売り込みである。

「泊まりたいが金がない・・・ハッハッハ」

「お話がよくわかりません・・・」と女将の華子。

「すると・・・あなたたちは・・・噂の三助トリオ」と話の早い支配人・建造(不破万作)だった。

「三助営業」で「宿泊料ペイ」である。

英語を話す女性やロシア語を話す女性の外人観光客サービスの後・・・男性観光客の予約も受ける蘭丸だった。

生まれ故郷に錦を飾った高木社長(岩尾万太郎)がヅラこと鬘をつけると謎の男だった。

「風呂上りのヅラは暑いズラ」

「あなたは・・・ミヤビさんのなんなんですか」

「フィアンセです」

「そんな・・・これは夢だ」

頬をつねった蘭丸は激痛に叫ぶのだった。

「いたああああああい」

アホである。

旅館のロビーでミヤビを待ち伏せる蘭丸。

やってきたミヤビは「なぜ・・・私につきまとうのか」と問う。

「だって・・・僕の口にあう人は・・・ミヤビさんだけなのです」

「そんな・・・セクハラみたいなことを言われても」

「でも・・・あの時ミヤビさんは僕にキスを・・・」

「挙動不審の女の心変わりを責めても空しいと言うでしょう」

七時に予約の入っているミヤビは高木の部屋に向う。

追いすがる蘭丸を女将が押しとどめる。

「人の商売の邪魔したらだめズラ」

そんな悲惨な光景を少年は見ていた!

高木の部屋に入ったミヤビを追いかけて・・・ドアの前で一時間粘る蘭丸。

しかし・・・ついにトリオの部屋へ戻ってくる。

「あきらめなさい・・・今頃二人はしっぽり・・・」

「いろいろ・・・具ののったうどんを・・・」

「それはしっぽく」

しっぽりの見本を見せようと甕棺墓くんに背後から迫った寛治は・・・銭形平次の十手で撃退される。

「お値打ちものよ」

「銭形平次は野村胡堂による小説の登場人物である。実在の人ではない」

「えええええ・・・小銭を投げるなんて変だと思った」

スマホで・・・「しっぽり」を検索する蘭丸。

いろいろなことが想像され・・・色情を枕に叫ぶのだった。

「眠れん・・・」とぼやく寛治。

そこで・・・年輪を感じさせる女将の長い絶叫が響き渡る。

天下無双の寝相の悪さから一転、貞子か伽椰子か判別不能の長髪幽霊女モードで現場に出動する甕棺墓くんだった。

深夜・・・ドアから灯りが漏れているのを不審に思った女将が・・・高木の変死体を発見したのである。

早速・・・検死を開始する甕棺墓くん。

「すでにこときれている・・・」

「なぜ・・・こめかみで脈を・・・」

「ハゲだから」

「おいっ」

「女物の帯締めで・・・首を吊ったように見えるけど・・・自殺する時にヅラを外すものかどうか・・・微妙なところね」

「脱いだ鬘が乱れているのも気になります」

「それに・・・」

そこへ・・・支配人に呼ばれた静岡県警の刑事が到着する。

田島梅之丞警部補(六平直政)と若葉悟巡査(矢野聖人)のベテラン&若手コンビである。

「お前たち誰だ」のいつものコントがあって・・・。

「索状痕の位置がずれているので・・・他殺の疑いがあります」

「自殺に見せかけるための地蔵背負いが失敗したのね」

「だからあんたは誰なんだ」

「しかし・・・吉川線がないのはおかしいわ」

吉川線とは・・・大正時代の警視庁鑑識課長・吉川澄一氏が提唱したという説のある殺人事件の被害者の首に見られるひっかき傷の跡である。

絞殺・扼殺の手際が悪く脳虚血ではなく窒息状態となると苦悶する被害者が残すことになる抵抗の痕跡である。

きっかわではなくよしかわと読みます。

そして・・・被害者の指先には・・・白粉が付着していた。

重要参考人として呼び出されるミヤビ。

ミヤビは午後七時から九時まで部屋にいたことは認めるが・・・高木は不在だったと言う。

しかし・・・高木の死亡時間は・・・午後七時から九時までの間・・・その時間の高木の不在が証明されなければミヤビのアリバイは成立しないのだった。

やがて・・・高木が・・・芸者のキチ(久世星佳)とも親密だったことがわかる。

被害者の手に残された白粉と照合するために・・・芸者たちに白粉の任意提出を求める刑事コンビだった。

そして・・・高木とミヤビの関係が明らかとなるのだった。

ミヤビが由緒正しい芸者だった頃・・・高木は結婚を前提に・・・ミヤビを身請して芸妓業界から落籍させた。

その頃すでに・・・キチの旦那だった高木は・・・キチとは疎遠になったらしい。

この過程で女将もまた芸者だったことがあり・・・妊娠により結婚の道を選んだことが明らかになる。

また・・・亭主の建造は遊び人で豆羽と親密な関係にあるらしいことが判明する。

高木との新生活を始めるつもりだったミヤビ。

しかし・・・直後に高木の経営する会社は倒産。

「さげまんなのね」と甕棺墓くん。

生活に貧したミヤビは温泉コンパニオンとして働き始めるのだった。

しかし・・・「芸者とボルダリング」や「芸者とバイキング」などの色ものツアーに参加中・・・重病を発する。

食細胞機能低下症候群(グラン・ギニョール氏病)・・・フィクションだが症状は一般にエイズ(AIDS)で知られる後天性免疫不全症候群と類似している。

グラン・ギニョールはフランスの劇場名に由来する荒唐無稽の代名詞である。

治療には高価な薬の投与が必要であり・・・保険未加入のミヤビは困窮する。

朝永平助の葬儀で香典泥棒をして・・・色仕掛けで・・・蘭丸から逃れたというのがキスの真相らしい・・・。

ミヤビが・・・追いつめられた原因をターさんこと高木社長に求め・・・殺意を抱いてもおかしくない状況だった。

高木社長の指先に付着していた白粉はミヤビの白粉と成分が一致する。

そして・・・「ミヤビと高木社長が部屋にいるところを見た」という少年の証言が・・・ミヤビを追いつめるのだった。

なぜか・・・少年の証言によって・・・心を決めた様子のミヤビである。

「私が・・・高木さんを殺しました」

犯行を認める供述を開始するミヤビ・・・。

その結果に激しく動揺する少年・・・と少年のような蘭丸。

だが・・・それは・・・まだ・・・事件の真相ではないらしい。

何しろ・・・前後篇である。

これはまだ前編の終わりなのである。

ニサスだからである。

事件を聞きつけ・・・蘭丸を迎えにやってきた京大薬学部教授の朝永竜助(宅麻伸)・・・。

「結局・・・蘭丸は凡人だった・・・大木凡人だ」とお約束のギャグを述べる竜助に甕棺墓くんと寛治は反発する。

「蘭丸は天才です」

舌の分析能力を父親の前で披露するように求める二人。

「さあ・・・いつものように口にだして」

変なセリフを言わされる甕棺墓くんだった。

しかし・・・蘭丸の舌に・・・支障が生じていた。

何も感じなくなってしまた・・・神の舌である。

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2016年9月 2日 (金)

結婚前に相手の素性を確かめないと洗脳される場合があるよ(山田孝之)

性善説を信じるものは幸いである。

寝言を寝ずに言う者だからである。

性善説を信じるものは現実から目をそむける。

世界が善で満ちていないことを信じない。

それでも善を信じる者は幸いである。

悪は恐ろしく気分の悪いものだ。

悪は敵意そのものである。

性善説を信じるものはこの世に生きるものはすべて味方だと信じる。

敵の存在を認めない。

性善説を信じるものはどんな出会いも大切にする。

そして・・・運が悪ければ酷い目にあうのだった。

性善説を信じようが信じまいが運が悪ければそれまでだ。

で、『ウシジマくん Season3・第6回』(TBSテレビ201608310128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。リオ五輪終了後・・・いよいよ本格化した原作の「洗脳くん」編にあたる部分の・・・まゆみ調教の件・・・惨い話である。その口当たりの悪さに闇金融「カウカウファイナンス」の上客・エース丸山(平田実)が登場して「かわいいものしりとり」がスタートする。丸山が前回登場したのはソチ五輪(2014年)の頃だったんだなあ。まあ・・・味を整えようとして・・・ますます激辛になるんだよなあ。

「かわいいものしりとりスタート・・・コアラ・・・かわいい」とウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)・・・。

「ライチ・・・かわいい」と高田(崎本大海)・・・。

「チューリップ・・・かわいい」と柄崎(やべきょうすけ)・・・。

「プー様・・・かわいい」と受付嬢・エリカ(久松郁実)・・・。

「マントヒヒ」と丸山満男・・・。

「かわいくない」と一同。

「そんな・・・第一、プー様って何なの」

「くまのプー様しらねえのかよ」

「それ・・・くまのプーさんでしょう・・・んがつくから様付けなんておかしいじゃない」

「リスペクトだよ・・・何・・・クレームつけてんだよ」

「ご・・・ごめんなさい」

「罰ゲーム・・・」

ハラペーニョ100%ジュース一気飲みである。ハバネロでないところがウシジマくんの優しさだ・・・。

「うげげげげ・・・」

一同爆笑である。

犯罪領域のいじめだが・・・顧客との楽しいひとときを過ごす一同なのである。

彼らの生きる世界では・・・どちらかといえば・・・のどかな光景なのである。

「第二回、かわいいものしりとりスタート!・・・モモンガ、かわいい」

ファッション雑誌「ノマド」の編集部で・・・男日照りの編集長(小嶋理恵)は異変を感じ取っていた。

優秀な編集者だった上原まゆみ(光宗薫)の無断欠勤が続き、仕事に支障が生じていた。経理からは・・・上原まゆみが使いこみをしているのではないかとチェックが入る。

「必要経費の計上があきらかに・・・おかしいのです」

「そんな・・・あの子が・・・まさか」

編集長は・・・信頼していた部下の裏切りから目を背けようとする。

まゆみはすでに・・・悪魔である神堂大道(中村倫也)によって極限状態に追い込まれていた。

自分の部屋で・・・軟禁されているのである。

ドアに鍵はかかっていないのだが・・・自らの意志で・・・ドアを開けて脱出することができないのである。

「大麻吸引」の証拠写真を用いて・・・警察に駆けこむ選択肢を封じられたまゆみは・・・暴力と性行為の反復行為で・・・次第に意志の力を奪われ・・・飲食や睡眠を禁じられる拷問により・・・正常な判断力を失う。餓えや渇きが・・・支配者への依存を深め・・・奴隷として調教されつつあった。

「お・・・お水をください」

「まゆみさん・・・どうして・・・私の愛がわからないのです・・・あなたを苦しめているのは・・・私の愛を受け入れない・・・あなたの頑なな心のせいなのですよ」

「す・・・すみません」

「さあ・・・とにかく・・・私のために五百万円をどうしたら・・・用意できるか・・・もっと真剣に考えてください」

「五百万円」

「そうですよ・・・それができたら・・・ご褒美をあげますよ」

「ご褒美・・・」

「さあ・・・それでは・・・名簿の上から順番に電話をかけてみましょう・・・あなたの知り合い全員にお金を振り込んでもらうよう依頼するのです」

「お金を・・・」

「ことわられたら・・・悪態をつくのを忘れずに・・・ふざけんな・・・このクソブタ野郎」

「ふざけんな・・・このクソブタ野郎」

「てめえなんかとっとと死ねばいいんだよ」

「てめえなんかとっとと死ねばいいんだよ」

編集長から着信がある。

(上原・・・どうしたんだ・・・今日は企画会議だぞ)

「す・・・すみません・・・具合が悪くて」

(・・・)

「あの・・・今日は編集会議なので・・・出社したいのですが」

「そんな暇はありませんよ・・・今度は・・・お母様を泣き落すのです」

「・・・」

「お母さん・・・私・・・どうしても今日二十万円必要なの」

(まゆみ・・・あなた・・・どうしたの親戚中に変な電話をかけて・・・)

「お母さん・・・二十万円ないと・・・神堂さんとの結婚がダメになってしまうのよ・・・」

(神堂さん・・・わかったわ)

すでにまゆみの母親は娘の婚約者である神堂と不倫関係になっている。

「よくできましたね・・・さあ・・・銀行からお金をおろしてきなさい」

「はい」

「銀行についたら電話・・・お金をおろしたら電話・・・忘れてはいけませんよ」

「銀行についたら電話・・・お金をおろしたら・・・電話」

極度の疲労により・・・現実と夢の境界線が曖昧になるまゆみ・・・。

「電話をどうしたのです」

「電話がありません」

「まずいですね・・・あの電話には・・・警察に見られてはいけない画像が入ってるのを忘れたのですか」

「銀行に忘れたのかもしれません」

「私があなたの携帯に電話をしてみましょう・・・もし・・・いい人が拾っていたら無事かもしれません」

「もしもし・・・私・・・その携帯の持ち主です」

(・・・警察に届けようか・・・迷っていたところよ)

「警察には届けないで・・・私に返してください」

(じゃあ・・・とりにきて・・・上原まゆみさん)

「あ・・・ありがとうございます」

外出するまゆみ・・・最悪の事態を免れたことで・・・幸せを感じるまゆみだった。

すでに・・・なにが幸せでなにが不幸なのか・・・判断する能力はまゆみから奪われているのだ。

神堂は次の獲物である子連れの中年女・岸田陽子(照喜名円)に婚約指輪を渡す段階になっていた。

自分が悪魔の口の中に首を突っ込んでいるとは思わない獲物だった。

神堂は・・・魔女である占い師の勅使川原先生(三田真央)に連絡する。

「資産状況の調べはついたのか」

「岸田家の資産については次回の占いで細部について確認します」

「それでいい」

悪魔の欲望には終わりがない。

この世を食いつくすまで・・・悪の炎は消えることがないのだ。

うらぶれたアパートにたどりついたまゆみ。

「上原まゆみです」

「ゴミ捨てを手伝って」

「ゴミ捨て」

「電話を返してあげる換りよ」

「はい」

暗い目をした女・・・松田明日香(市橋直歩)はまゆみに重いバッグを渡す。

その表情は・・・まゆみと同じである。

つまり・・・松田明日香もまた悪魔の餌食なのである。

「電話の指示通りに捨てるのよ」

「はい」

明日香の指示に従い・・・水辺に向う。

(海に捨てるのよ・・・誰にも見られないように)

バッグの中は臭気を放つ肉団子だった。

「これは何ですか」

(生ゴミよ・・・一度に全部捨てないで・・・)

「はい」

(少しずつ違う場所で捨てるのよ・・・誰にも見られないように)

バッグの中身は空になった。

神堂から着信がある。

(まゆみさん・・・今・・・どこにいるのです)

「海です・・・生ゴミを捨てるように頼まれて」

(おかしいですね・・・そんなもの・・・海に捨てるなんて・・・まゆみさん・・・あなたはとんでもないことをしてしまったのではありませんか)

「とんでもないこと」

(人に知られないように何をすてるというのです)

「人間の・・・死体・・・」

(そうかもしれません・・・だとすれば・・・あなたは死体遺棄の罪を犯したことになります)

「大変・・・警察に行かないと・・・」

(何を言ってるんですか・・・警察なんかに行けば・・・あなたが殺したと疑われるに決まっているじゃありませんか)

「私が・・・」

(そうです・・・まゆみさん・・・あなたは人殺しになったのですよ)

「私が・・・人殺し」

まゆみの心は壊れた。

まゆみは責任を取らなければいけないと朦朧とした意識の中で考える。

「私は・・・人殺し」

まゆみは高いビルから飛び降りた。

取り立てを終えた柄崎はウシジマくんに業務連絡をする。

(なんだか・・・騒がしいな・・・)

「女が飛び降り自殺したみたいです・・・野次馬が集まってます」

ウシジマくんは利息を払いに来た生活保護受給者の小瀬(本多力)を睨みつける。

「り・・・利息を下げてもらえませんか」

「この金は・・・どうした」

「働いて・・・」

ウシジマくんは小瀬の手をとる。

「仕事は何?」

「お年寄りの家の修理とか・・・」

「そう・・・今度話を聞かせてよ・・・場合によっては利息を下げてもいいよ」

「・・・」

地域ボランティアの学びの場であるNPO法人「峠のやまびこ」にニート仲間の飯野(野澤剣人)やトーキー(水間ロン)と参加している小瀬。

高齢者夫婦の伴侶が死亡し・・・二階の寝室から遺体を下ろす作業をした三人は一人千円の謝礼をもらう。

「峠のやまびこ」の代表(西洋亮)は三人を指導する。

「クレームが来たぞ・・・ご遺体の扱いが雑だったって」

「重たかったんだよ」

「臭かったんだよ」

「千円じゃやってられねえよ」

「あんた・・・搾取してるんだろう」

「あああああああ」

飯野とトーキーは脱落するのだった。

小瀬は・・・祖母に似た老婦人・千代(恩田恵美子)と良好な関係を構築していた。

素晴らしいインターネットの利用で孫への電話代が浮いたと喜ぶ千代。

千代の高齢者仲間たちは・・・小瀬にパソコン指南を求めるのだった。

人から感謝される喜びを噛みしめる小瀬。

老人を利用した企業を起業することを目論む飯野は小瀬に「老人向けのパソコン教室を始めたるべきだ」とアドバイスする。

「一回・・・三千円だよ」と小瀬。

「三回で九千円かい・・・高いよ」と千代。

「おばあちゃん・・・パソコンで商品を注文できるようになれば・・・凄く割引になるんだよ・・・元なんかすぐにとれるよ」と飯野が割り込む。

小瀬の良心と・・・飯野の良心は・・・微妙な齟齬を孕むのだった。

立ち食いそば屋でJP(福山翔太)は・・・ウシジマくんのライバル企業・闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)と腹心・村井(マキタスポーツ)に捕獲される。

「あんた・・・ホストをボコボコにしただろう」

「それが・・・どうした」

「あのホストは・・・借金してんだよ・・・あんたのおかげで回収できなくなったんだよ」

「だから・・・」

「あんたには三つの選択肢がある・・・一つ、三千万円を払う、二つ、東京湾に沈む、三つ、組の盃をもらう」

「今さら・・・極道の下っ端で・・・便所掃除なんか・・・できるかよ・・・三千万円を用意すればいいんだろう・・・できなきゃ・・・魚の餌になってやるよ」

「ああ・・・そうかい・・・」

犀原はJPに猶予を与えた。

JPは元カノの美奈(佐々木心音)をキャッチする。

「三千万円・・・いるんだよ」

「・・・」

JPは・・・女の身体が金の作り方を知っていると考えていた。

しかし・・・美奈は・・・別のことを考えた。

奇妙なファッションセンスの男・K.(金田誠一郎)の「一攫千金の話」である。

「なんだ・・・てめえ・・・」

「金が欲しいのか」

「欲しいよ・・・」

「いくら・・・欲しいの」

「三千万円だ」

「ちょっと待ってね・・・」

K.は電話連絡をする。

「いいってさチャレンジしなよ」

「・・・」

もちろん・・・何か恐ろしいゲームが待っていることは確実である。

だが・・・金が用意できなければ・・・東京湾が待っているのだ。

東京湾の底にどれだけの死体が眠っているのか・・・多くの人は知らないだろうが・・・。

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2016年9月 1日 (木)

私を女として愛さない人を男として愛することはありません(北川景子)日本一可愛いお天気お姐さん(篠田麻里子)

今季は(火)(水)とポーカーフェイスの女が主人公である。

(火)はポーカーフェイスの上に作った表情を乗せるので難解である。

一方・・・(水)は微かに表情の変化があり・・・それが一部お茶の間の妄想を掻きたてる要素となっている。

(火)の波瑠も(水)の北川景子も見事な女優力で対応しているのである。

そんな・・・(火)(水)の両方にゲスト出演したAKB48の第1期オーディションで落選した過去のある篠田麻里子(30)なのだが・・・魅力的な素材だけに・・・もう少し演技プランの工夫が欲しいところである。

本来、「お姉さんキャラ」で売ったアイドルなので・・・「お天気お姉さん」部分は問題ない。

問題は・・・裏の顔である。

もちろん・・・ヤンキーまがいの言動は・・・「素」のようなモードで演じたわけだが・・・気象予報士同志の夫婦ということでは・・・女子プロレスラーとプロレスラーのおしどり夫婦である北斗晶と佐々木健介をもう少し研究するべきだったのである・・・あくまで妄想です。

夫役の和田正人にはあきらかにそれが感じられた・・・あくまで妄想です。

表が「アイドル要素」であれば・・・裏は「ヤンキー要素」で充分という考え方もあるが・・・ここは「化け物じみた要素」で表と裏のメリハリをつけるべきなのだ・・・あくまで妄想です。

そういう「落差」を生みだす根性が・・・時に女優には求められるのである。

で、『家売るオンナ・第8回』(日本テレビ20160831PM10~)脚本・大石静、演出・佐久間紀佳を見た。脚本家は「お天気お姉さん 」には独特のこだわりがあるようだ・・・ポンポンマイクをつけたり男に媚を売ったり天気予報をはずしたりしても・・・きっと好きなんだな。自分が傷つくことには敏感でも相手を傷つけることには頓着しないタイプの中年女性とか暴力的だが慰謝料に時価三億円の屋敷をくれる男性実業家とかもきっと好きなんだと思う。そういう「愛」が滲み出るドラマは素晴らしいのだ。愛とはメモリーだからである。

テーコー不動産株式会社・・・新宿営業所売買営業課に屋代課長(仲村トオル)の元妻・理恵(櫻井淳子)が現れた。

二番目の夫と四月に離婚した理恵は・・・慰謝料として譲渡された時価三億円の屋敷を売り、新しいマンションを購入したいと言い出す。

同時に十年以上前に別れた「大ちゃん」こと屋代課長との復縁を匂わせるのだった。

人間が悪魔になるために「愛妻が男と駆け落ちすること」は充分なインパクトである。

それほど悪魔になったようには見えない屋代課長の中でも・・・「捨てられた怨み辛み」が堆積しているわけである。

だが・・・理恵は・・・そんな昔のことは忘れた方が健康的だと言うのである。

お、お前がそれを言うのかよっ・・・である。

「疲れてるわねえ・・・昔も疲れた・・・もう寝るしか言わなかったよねえ・・・うふっ」

毒々しさが醸しだされる理恵なのだった。

一方・・・前回、実家を営業チーフ・三軒家万智(北川景子)に売り飛ばされた白州美加(イモトアヤコ)はすっかりサンチーの信者となっていた。

シラスミカなのにチラシ千枚のポスティングをすでに終えているのだ。

サンチーはトイレ中の事務員の室田まどか(新木優子)の代役としてシラスミカにお茶出しを命ずる。

「しかし・・・それは事務員の仕事です」

最低社員の名残を見せるシラスミカ。

「お前の仕事はなんだ」

「家を売ることです」

「家を売った実績はあるのか」

「・・・お茶を出してきます・・・シラスミカ・・・ゴーッ!」

「自分で言っちゃったよ」と呆れるベテラン社員の布施(梶原善)・・・。

しかし・・・サンチーのターゲットは布施に移る。

「狛江の中古一戸建て・5LDKの物件は売れましたか」

「いや・・・バブルの頃の建物は無駄に広くて」

「言いわけは必要ありません・・・売れないのであれば私が売ります」

「あてがあるのですか」

「私に売れない家はありません」

「・・・いや・・・私がもう少し頑張ります」

これ以上・・・サンチーに実績をあげられては・・・立場がなくなる布施だった。

お茶を出しに行ったシラスミカは・・・屋代課長と理恵の関係を知り・・・下司なワイドショーのレポーターのように課内に情報を伝播する。

自分が憧れているサンチーとタクシーの中でキスをしていた屋代課長の元夫人の存在に動揺する庭野(工藤阿須加)だった。

庭野視線で見ると・・・サンチーは微妙に動揺しているようにも見えるのである。

思わせぶりの無表情って凄いな。

戻って来た屋代課長は・・・理恵の物件を別の営業所に任せると言い出す。

「仕事を譲るのですか・・・」

「微妙な案件なので」

「それなら・・・私が承ります・・・お客様の情報を私のPCに転送してください」

「いや・・・やはり私が担当する」

考えようによっては・・・元妻の存在を・・・サンチーに悟られたくないかのように見える屋代課長である。

「今の私に売れない家はない」

テーコー不動産株式会社・・・新宿営業所売買営業課は・・・もはやサンチー旋風が吹きまくっているのだった。

八戸(鈴木裕樹)や宅間剛太(本多力)は首をすくめ・・・すでに陥落している足立(千葉雄大)や庭野は万歳を三唱するのだった。

ここまでおよそ六分弱・・・見事なイントロダクション(前奏)である。

屋代夫妻が二十年前に結婚し・・・すぐに離婚に至ったこと。

社内結婚だった理恵は・・・シラスミカの社員としての質の悪さを指摘すること。

シラスミカは足立との結婚を夢見てうっとりすること。

足立にはその気はまったくないこと。

その場面が足立、シラス、タクマのスリーショットであること。

屋代課長の結婚式の司会が布施だったこと。

サンチーと屋代課長と庭野の三角関係。

不倫中の事務員まどかの・・・離婚した夫婦に対する微妙な反応。

ぎっしりとつまった要素を抱えつつ華麗にスタートなのである。

これは・・・脚本家の最高傑作になるんじゃないか・・・。

さらに・・・第二の案件として・・・テレビ日本(フィクション)の朝の情報番組「モニモニモーニング」で「6時58分の恋人」と称される「日本一かわいいお天気お姉さん」こと前原あかね(篠田麻里子)の新居購入が浮上する。

担当の足立は朝からウキウキなのである。

そして・・・「芸能人」が初めての・・・庭野もソワソワするのである。

足立と庭野のスキップ・モードに・・・シラスとまどかは敵愾心メラメラなのである。

「チーフは・・・前原あかねなんて知らないでしょう」とシラス。

「お天気お姉さん・・・です」

「知ってるんですか・・・もちろん嫌いですよね」

「お客様に対して好き嫌いなどない」

・・・一同納得である。

しかし・・・テレビで見るアイドルのような天使はあくまで外面・・・。

実際のあかねは「煙草スパーッ」の高圧的な気象予報士だった。

「館内は禁煙になっております」

「あんたら・・・喫煙や不倫が・・・殺人と同じような犯罪だと錯覚しているバカな人間なんだろ」

「・・・」

「ネットに書くなよ・・・こっちはあんたを信用して、家を買うんだから・・・」

「・・・」

「それにあんた・・・オーデコロンがきつすぎなんだよ」

「・・・」

落胆と失望と恐怖に我を失う足立だった。

しかも・・・あかねの求める物件は・・・衣装部屋、あかねの書斎、あかねの寝室、マネージャーの寝室あわせて4DKで高級住宅地(テレ日の所在地付近)という・・・高額が予想されるものだった。

そして・・・マネージャーの津田(和田正人)はあかねの夫だった。

つまり・・・あかねは人妻だったのである。

「結婚の件は非公開だからな・・・ネットに書くなよ」

茫然とする足立とお茶出しを引き受けた庭野だった。

「どうだった」と訊ねる屋代課長。

「タバコスパーッでした」

「タバコスパーッなのか」

そこへ・・・津田マネージャーから「担当チェンジ」の電話が入る。

「わかりました・・・ナンバーワンの営業チーフに担当を変更いたします」

屋代課長の決断・・・その瞬間・・・微かに揺らぐ三軒家のポーカーフェイス。

なんだ・・・今の反応はなんだ。

妄想膨らむ・・・一部お茶の間である。

こうして・・・「課長の元妻の三億円豪邸」と「お天気お姉さんの高級マンション」そして「狛江のバブルな中古一戸建て」が本日の物件となるのだった。

盛りだくさんだな。

屋代課長は・・・元妻に素晴らしいマンションを紹介するが・・・復縁を求める理恵に辟易する。

布施と一緒に結婚式の司会をした高田のぞみを始め、二十年前に結婚というゴールを競い合った受付嬢や営業ウーマンたちも軒並み離婚して・・・さびしい人生を送っているらしい。

しかし・・・彼女たち四人の旅先の写真は・・・和気藹々である。

なんとなく釈然としない屋代課長である。

そのために・・・サンチーをBAR「ちちんぷいぷい」に誘うのだった。

噂のサンチーの来店を歓迎する風情のBAR「ちちんぷいぷい」のママの珠城こころ(臼田あさ美)である。

「問題は各個撃破するべきです・・・家を売ることと元奥様との復縁は別問題です」

「だけど・・・微妙に・・・問題がもつれあっていて・・・」

「奥様は家が欲しいのではなくて課長が欲しいのだと思います」

「だから困ってるんだ・・・」

「課長は私に何をして欲しいのですか」

「いや・・・何と言っても」

「家は売るべきです・・・奥様との復縁はキッパリと断るべきです」

「キッパリとか・・・うん・・・キッパリとだな」

そこへ・・・庭野が乱入する。

そして・・・突然・・・「タクシーの中での二人のキス」を目撃してしまったことを告白。

「あれは・・・無責任な行動だった・・・」

ここでサンチーの顔が驚愕モードになるのだった。

普通に考えると・・・女としてショックの表情だが・・・サンチーなので読み切れない。

「しかし・・・俺は・・・チーフのことを特別な女だと思っている。今までの人生の中でチーフのような女性に出会ったことはなかった・・・男とか女とかではなく・・・チーフは俺の心の中で輝いているんだ」

「その気持ち・・・わかります」

本質から逃れようとする男たちの言葉を・・・急いで結婚したいと思わない世代のこころは「素晴らしい話・・・感動しちゃった」と追従する・・・が・・・水商売の女としての基本は忘れないのだった。

「で・・・肝心のサンチーさんは・・・課長さんのことをどう思ってるの・・・ついでに庭野くんのことも」

すでに・・・ポーカーフェイスに戻っているサンチーである。

「課長のことは好きです・・・統率力がなく、上に弱く、長いものには巻かれ、優柔不断なところはありますが・・・好きです」

唖然とする庭野。

「庭野のことも好きです・・・誠実と言えば聞こえはいいが確固たる信念というものがなく、やる気はあるけれど独創的な企画力がない・・・しかし、好きです」

唖然とする課長。

「けれど・・・課長や庭野が女として私を見ることがないように・・・私が課長や庭野を男として見つめることはありません・・・私はこれで失礼します・・・ご馳走様でした」

退場するサンチー。

「俺たち・・・ふられたのか」

いや・・・どちらかといえば・・・課長がサンチーをふったのである。

責任だけは何があっても回避しようとする屋代課長の姿勢に呆れるこころだった。

「さあ・・・さっぱり」

お手上げである。

まあ・・・とにかく・・・サンチーは今夜もパートナーを求めて夜の街を直進するのだった。

とにかく・・・悪い男にひっかかる可能性は極めて低いと思われる。

お天気お姉さんあかねは・・・番組のメイン・パーソナリティーから食事に誘われ・・・自宅でマネージャーの津田はサンチーと面談する。

手作りプリンをサンチーに勧める津田・・・。

「家庭のことはご主人がなさるのですか」

「ええ・・・季節の花を飾ったりして・・・これは桔梗・・・夏の花です・・・花言葉は永遠の愛・・お天気予報では季節の花の話は定番なんですよ・・・」

「・・・」

「私も気象予報士です・・・あかねは最初は私のアシスタントでした・・・今ではすっかり彼女が主人で・・・私は家政婦のようなもの・・・でも・・・今日は渋谷あたりで夕立ちがありますよ」

「こんなに晴れているのに」

「晴れているのに突然降るから夕立ちです・・・まあ・・・今風に言えばゲリラ豪雨ですか」

津田の携帯電話に着信があり・・・席を外す。

すかさず・・・会話を盗み聞きするサンチーだった。

津田が浮気していることを直感するサンチー・・・。

「それでは御意向に従って物件をお探しいたします」

「お願いします」

一方・・・自分の甘さを噛みしめた足立は雪辱に燃えるのだった。

シラスはお客様からの差し入れを貪り食う。

シラスと足立の間に立ちはだかるタクマ。

そして・・・夕立・・・。

土砂降りに打たれて帰社するサンチー・・・。

タオルを差し出すまどか・・・。

愛人の案件の折にサンチーに親しみを抱いたのか・・・。

「何かお手伝いすることはありませんか」と足立と庭野。

「私も」とシラス。

「シラスミカはチラシをポスティングしていなさい」

「はい」

「足立と庭野はマネージャーの身辺捜査・・・浮気相手がいるはずです」

「そんな・・・探偵みたいなこと」と逡巡する庭野。

「家を売るためです・・・手伝う気があるならゴーッ」

飛び出す足立&庭野である。

なかなかに・・・名コンビになるのだった。

スキップから抜き足差し足である。

そして・・・怪しい花屋の女店員をチェック!

花屋の女店員と喫茶店で待ち合わせるマネージャー。

しかし・・・現れたのはサンチーだった。

「彼女には帰ってもらいました・・・浮気ならやめておきなさい・・・夫婦仲が悪くなると家の購入に問題が生じます」

「・・・」

「もしも・・・本気であるのなら・・・彼女との新居をお探しいたしますが」

「いえ・・・彼女とはあくまで浮気です・・・あかねの高圧的な態度に疲れて・・・彼女に癒しを求めたのです・・・桔梗のもう一つの花言葉は・・・従順・・・ですから」

しかし・・・二人の姿を・・・ハイエナ記者が盗撮し・・・スキャンダルがでっちあげられる。

だが・・・問題なのは・・・「あかねの夫の浮気」ではなく・・・「あかねが人妻だったこと」である。

たちまち・・・素晴らしいインターネットの世界でネガティブ・キャンペーンが展開され・・・あかねの人気は急落するのだった。

天気予報の途中で涙ぐんでしまうあかねだった・・・。

テレビ局の地下駐車場で・・・夫を詰るあかね。

「なんてことしてくれたんだよ・・・お天気お姉さんじゃなくて・・・お天気奥さんになっちまったじゃねえか」

「しかし・・・あれは誤解だ」

「そんなことどうでもいいんだよ」

そこへ・・・サンチーが現れた!

「何しにきたんだよ」

「新居をお勧めに参りました・・・ご覧にならないと後悔します」

「脅してんのか」

「いいえ・・・家を売りに参ったのです」

「番組も降板だし・・・CMの契約も切られて・・・買えねえよ」

「参りましょう」

「マスコミがウジャウジャしてんだよ」

「堂々と出て行けばよろしいのです」

草のものと化した足立&庭野がハゲタカ記者をミスリードするのだった。

新居は天窓のある家だった。

「空が・・・見える」

「空が・・・見えるな」

「昔はこうして・・・空を見ながら・・・いろいろ教えてもらったよね」

「・・・」

「私・・・あんたがいなくなったら・・・困ると思って・・・そしたら泣けてきた」

「あかね・・・」

「たとえ・・・男と女でなくなっても・・・奴隷と主人の関係でも・・・お互いに助け合っていけば・・・必ず家は買えます・・・気象予報士として完璧であれば問題ありません・・・桔梗の花言葉は・・・友の帰りを待っている・・・です」

「・・・」

「この部屋・・・お買い上げいただけるでしょうか」

「買います」

新たなる挙式を行い誓いの言葉を述べるかのような二人・・・。

(落ちた・・・)

サンチーは確信するのだった。

「津田夫妻に・・・家が売れました」と課長に報告するサンチー。

「え・・・そうなの」

「たとえ・・・男と女でなくなっても・・・一つ屋根の下で暮らせば家族ですから」

「それだ・・・」

天啓を受ける屋代課長だった。

布施のもてあましていた・・・5LDKを売りさばくチャンスである。

元の妻・理恵と三人の女友達に・・・シェアハウスでの共同生活をお勧めする屋代課長と布施である。

「皆さんは幸せを競い合い・・・そして孤独になった女たちだ・・・一緒に幸せになればよろしいのではないかと・・・」

「ねえ・・・そうしましょうよ」

女友達に言われて・・・屋代課長との再出発を諦める理恵だった。

いくつになっても集うのが好きな人々は一定数存在するものだ。

こうして・・・テーコー不動産株式会社・・・新宿営業所売買営業課はほぼ・・・サンチーによって陥落したらしい・・・。

サンチー・チームの誕生である。

お天気お姉さんは・・・何だか変な姐御になって再出発したらしい・・・。

爆乳じゃないからな・・・。サラシはねえ。

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