身内の犯罪者を自首させないと泥沼にはまるかもね(山田孝之)
スキタイの森の神は狼使いである。
ある夜、貧しい若者が森の木の上で一夜を過ごした。
森の神がやってきて狼たちにパンを与える。
一切れのパンが残ったので森の神は若者にそれを恵んだ。
パンは魔法のパンであり・・・食べても尽きるということがない。
話を聞いた欲の深い男は貧しい若者と同じように森の木の上で夜を迎えた。
森の神がやってきて狼たちにパンを与える。
しかし、今夜のパンは魔法のパンではなかったので一切れ不足してしまった。
森の神は欲の深い男をパンの代わりに狼に与えた。
・・・この話からどのような教訓を読みとるかは聞き手次第である。
幸運は滅多に訪れない・・・でもいいし、触らぬ神に祟りなし・・・でもいいだろう。
キッドは最も肝心なことは・・・美味い話には裏があるということだと考える。
で、『闇金ウシジマくん Season3・第7回』(TBSテレビ201609070128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・川村泰祐を見た。白熱したリオ五輪が去り・・・清々しいパラリンピックの開催中に毒々しい人間の営みを描くこのドラマ。善意にあふれた世界の一方で今日も核実験による脅威を誇る悪意の凝縮された国家が存在する。そういうことを忘れないためにもこういうドラマを大切にしなければならない。あなたが・・・あなたの家族が狙われているのです。
悪魔である神堂大道(中村倫也)によって極限状態に追い込まれた上原まゆみ(光宗薫)は飛び降り自殺を図る。
しかし・・・命はとりとめ・・・意識不明のまま・・・入院する。
娘の自殺未遂という衝撃にうろたえた父親の上原重則(名倉右喬)は娘の婚約者である神堂の家庭内への侵入を許す。
「まゆみさんは・・・何者かに脅され・・・会社の金を300万円横領したと・・・遺書に記しています。あなたは父親として・・・どうしてそのことに気がつかなかったのですか」
「そんなことをいわれても・・・その遺書とやらを見せてくれ」
「私が婚約者の犯罪の証拠をそのままにしておくとお考えですか・・・削除したに決まっているでしょう」
「・・・」
「とりあえず・・・横領した300万円の穴埋めを何とかしなければならないのではないですか」
「・・・」
三日三晩・・・神堂の・・・婚約者に自殺未遂されたものとしての一方的な告発にさらされて・・・披露困憊する重則である。
「今・・・眠りましたね・・・娘の危機になんていう人だ・・・父親として恥ずかしくないのですか」
「君と違って私は会社に出社しなければならないんだ・・・明日は重要な会議があるんだぞ」
「娘が犯罪者になったら・・・今の立場なんかふっとびますよ」
「・・・」
「すみません・・・神堂さん・・・夫も私も・・・気が動顛していて・・・」
神堂は台所にたった母親の上原広子(武藤令子)に囁きかける。
「まゆみさんの自殺未遂の本当の理由は・・・僕とお母さんの関係を知ってしまったからなのです」
「え・・・そんな」
「どうすればよいか・・・今日も朝まで・・・二人で考えましょう」
「・・・はい」
神堂は広子の局部をやさしく愛撫するのだった。
もはや・・・悪魔に蹂躪される上原家なのである。
まゆみの妹のみゆき(今野鮎莉)とも性交渉を重ねる神堂は・・・みゆきの夫であるカズヤ(板橋駿谷)が探偵を雇っていると囁き・・・その探偵の口封じのために金が必要だと促す。
カズヤに対してはみゆきの浮気調査のための探偵料として二百万円を要求する。
「資産家の上原家から・・・慰謝料がとれればハイリターンです」
悪魔は巣にかかった獲物を貪りつくすのだ。
睡眠不足のまま出社した重則は部下の送別会で泥酔し・・・女子社員の奈菜(希島あいり)の乳房を路上で揉み出すという失態に及ぶ。
もちろん・・・一部始終は何者かに盗撮されているのだ。
顧客である金子ババー(箱木宏美)の隠れデリヘル店へ集金に訪れた「カウカウファイナンス」の柄崎(やべきょうすけ)は占い師の勅使河原(三田真央)の存在が気になる。
反社会的組織である駱駝会の構成員だが・・・主流から外れた柏木(大塩ゴウ)は金子ババーの売上金をピンハネしていた。
ウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)は柏木が組の代紋入りの名刺に書いた借用書を盾に金の回収を実行する。
「この名刺・・・親分に回していいですか」
「払うよ・・・丑嶋社長・・・」
駄菓子屋で幼馴染の情報屋・戌亥(綾野剛)と会ったウシジマくんは・・・占い師の勅使河原について調査を依頼する。
「気になるのかい・・・」
「・・・」
二人は酢酸ビニル風船こと風船玉を膨らませる。
生活保護受給者の小瀬(本多力)は働く喜びを教えてくれた老女の千代(恩田恵美子)から・・・親友のめしあ(野澤剣人)が金を騙し取ったことを知り・・・追及する。
「綺麗事を言うなよ・・・僕らは底辺にいるんだ・・・まともなことをやっていたら這いあがれない」
「しかし・・・それは犯罪だよ」
「お金を墓場まで持って行くことはできない老人たちから・・・使われていないお金をもらうことがそんなに悪いことか」
「誰が罪と罰みたいなことを言えと・・・」
「まあまあ・・・鉄棒ぶらさがり勝負で決めようぜ」
ニート仲間のトーキー(水間ロン)の提案でぶら下がる三人の底辺者たち。
最近、地道に働いている小瀬は体力がついていた。
たちまち脱落するトーキー・・・る
めしあはトーキーを助け起こす。
「勝負は君の勝ちだ・・・僕にとってはトーキーのことが大切だ。もちろん・・・君のこともね。だって僕たちは仲間だろう」
「・・・」
素晴らしいインターネットを通じたテレビ電話でもう一度・・・めしあに連絡する小瀬。
「何度話し合ったって結論は同じだろう」
「この電話は・・・千代さんとも繋がっているんだ」
「え」
二人のやりとりを老人たちが聞いていたのだった。
「千代さん・・・これが・・・あなたを騙した人間です・・・でも・・・この人は僕の親友なのです。お金は僕が働いて必ず返しますから・・・どうか・・・僕の親友を許して下さい」
「・・・」
小瀬は土下座して・・・人間の善意に縋り良心に訴えた。
小瀬は借金の返済を肩代わりしている希々空(ののあ)に再会する。
「コセチン・・・」
「小瀬だよ」
「ごめんね・・・お金は・・・ののあの時間で払うから」
「ののあの時間ってなんだよ」
「ののあは一時間一万円だよ」
「高い!・・・僕より七千円も・・・」
底辺の中でも心休まる小瀬の周辺である。
ウシジマくんのライバル企業・闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)から「三千万円」の返済を求められるJP(福山翔太)は元カノの美奈(佐々木心音)の紹介で奇妙なファッションセンスの男・K.(金田誠一郎)に会う。
「知ってるか・・・フリーターの生涯賃金は五千万円だ・・・もはや生涯賃金三億円の人たちとは生きる世界が違う。まして俺は三十歳だ・・・今からやりなおしたら三十年かかるから・・・なんとかスタートラインに立ったら六十歳になっちゃう。だから・・・一発チャンスにかけるしかないんだ」
「一発チャンス・・・」
「俺は二回チャレンジした・・・一回目で上の歯を全部失くしたけど・・・二回目で一千万円獲得した」
「なんだよ・・・それ」
「やるのかい・・・やめるかい」
「やるしかないんだよ」
K.はJPと美奈を高級ホテルの一室に案内する。
そこには四人の仮面をかぶった男たちがいた。
「お前ら・・・なんだ」
「俺たちはニューリッチ・・・新しい富裕層だ」
「平和が続けば既得権益は守られ・・・富めるものはますます富む」
「総資産は増えるばかり」
「一千万円の時計を買っても・・・一億円の家を買っても・・・十億円のクルーザーを買っても・・・虚しいだけだ」
「欧米では貴族には貧民を救う義務がある」
「だから・・・君たちに救いの手を差し伸べる」
「簡単なゲームで一攫千金だ」
「君たちはカップルかい」
「元カレだよ・・・」
「じゃあ・・・昔の男を救えゲームだな」
「何それ・・・」
「さあ・・・準備だ」
屈強な召使たちが現れる。
野獣であるJPが手も足もでないほどのニューリッチのガードマンである。
たちまち・・・椅子にくくりつけられるJP。
「何をするの・・・」
「彼はもう・・・目を閉じることができない。この双眼鏡には・・・もうすぐ西日が射すんだ」
「太陽光線を浴びたら視力がなくなるよ」
「それまでに・・・彼女の友達の誰かが・・・友情の証を示せたら・・・君らに三千万円プレゼントするよ」
「友達にはメールで・・・文面はこうだ・・・」
赤ちゃんできちゃった・・・必ず返すから二十万円貸して
「そんな」
「さあ・・・君には困った時に助けてくれる本当の友達がいるのか・・・いないのか」
「君の携帯の名簿から・・・五人選んでいいよ・・・タイムリミットは・・・おそらく二時間くらい」
「元カレの目が不自由になるまでだ」
「そんな・・・二十万円貸してくれる友達なんて・・・」
しかし・・・美奈の目は・・・母親の借金の連帯保証人に美奈を指定した犀原茜の名前を見出した。
犀原茜と腹心・村井(マキタスポーツ)はファミレスで食事中のために携帯電話の電源を切っていた。
スカートの短い女店員(朝見心)は「冷たいウーロン茶になりますがよろしいでしょうか」と言って後悔する。
食事を終えた犀原茜はメールを返信した。
貸してやるよ
「勝負は君たちの勝ちだ」
携帯を受け取った美奈は叫ぶ。
「すぐにここに救急車を呼んで」
ホテル名と部屋番号を口にする美奈。
「おいおい・・・何してるんだ」
「底辺の人間だって最低限のルールがあるだろう」
「だって・・・JPは怪我してるし」
「ゲームは終わりだ」
「とんだ・・・茶番だ」
「巻き込まれるのは御免だよ」
「そんな・・・三千万円は・・・」
「チャラだよ・・・チャラ・・・」
JPは囁いた。
「いいから・・・縄を解いてくれ」
美奈はJPの縄を解く。
JPは狂犬として蘇った。
ニューリッチたちを半死半生にするのだった。
「馬鹿な・・・」
「金ならやるよ」
「そんなもん・・・いらねえ」
夜の街で・・・犀原茜はJPを回収する。
「どうだ・・・極道で生きていく気になったか」
「・・・」
「とりあえず・・・飯だな」
ファミレスには「カウカウファイナンス」一同が来店中だった。
スカートの短い女店員は熱いお茶をサービスした。
金子ババーの店でウシジマくんは網を張っている。
神堂の指示でみゆきが来店するが・・・そこがデリヘルの店と知り・・・怯える。
「あの・・・売春はちょっと・・・」
「みゆきさん・・・男性に奉仕するのは尊い仕事だと思いませんか」
「でも・・・」
「私がみゆきさんを愛するように・・・みゆきさんは見知らぬ男性に愛されてください・・・愛と愛が重なって・・・愛のミルフィーユが完成するのです」
「・・・」
殺風景な松田明日香(市橋直歩)の部屋で・・・神堂は意味不明の饒舌でみゆきを唆す。
そんなみゆきをウシジマくんはついにキャッチした。
「話終わった・・・?」
ウシジマくんは連絡先入りのティッシュをみゆきに差し出した。
「金に困ってるなら・・・貸すよ」
ついに・・・神堂という悪魔の巣に・・・ウシジマくんが足を踏み入れた。
お楽しみはこれからである。
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