あなたのとなりに犯罪者がいることに気がつかないのはこの上なく危険(山田孝之)
人々はクリスチャンでなくても「汝の隣人を愛せよ」と教育される。
誰かを憎むよりも愛する方が心は安らかだと諭すものもいる。
人間の本質は「善」と訴えるものもいる。
父親が外国人であることが政治家として問題になるのは不健全だと語るものもいる。
そう信じるのは自由だが・・・放課後の中学生を誘拐する国家や、国民を戦車で弾圧する国家、飢餓に対する食糧援助で武器を準備する国家を信用するものは少ないだろう。
綺麗事の裏に潜む悪意を見抜く目を養わなければ・・・生き抜くことは難しい。
「汝の隣人を愛して」もいいが「汝の隣人を疑う目」も養う必要がある。
見栄えもよくて・・・弁もたつ・・・しかし、父親が外国人。
自身の国籍についての発言が二転三転する。
そういう人間を代表にしてしまう党はどこか・・・甘い。
そんなものに・・・自分の生活を預けてしまう国民は多くないだろう。
そういう道理がわからないものは・・・政治家なんか目指すべきじゃないよねえ。
何様なんだ・・・と言う昔馴染みの言葉を思い出す。
で、『闇金ウシジマくん Season3・第8回』(TBSテレビ201609140128~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩(他)、演出・山口雅俊を見た。警察は恐ろしい組織である。なにしろ・・・犯罪者と日常的に対峙しているのだ。しかし・・・いざとなったら・・・一般市民は警察に保護を求めるしかない。犯罪者でない人間にはその権利がある。しかし、犯罪者であってもより兇悪な犯罪者から身を守るためには警察に身柄を預けるしかない場合がある。そんな選択を迫られないように君子は危うきには近寄らないものだ。だが・・・じっとしていも危険はにじり寄ります。
いよいよ・・・クライマックスが近付いてきた。
犯罪者であるウシジマくんこと・・・丑嶋馨(山田孝之)がヒーローとして輝くのは一瞬なのである。
その一瞬のために・・・一部お茶の間は地獄を彷徨うのだなあ。
闇金融「カウカウファイナンス」に今日も新規の顧客が訪れる。
初回の限度額は五万円。
利子は十日で五割である。
十日後には二万五千円の利息を支払わなければならない。
このシステムそのものが違法なのである。
それでも・・・合法では借金できない人々が今日も訪れる。
ソープ嬢の卑弥呼(神ユキ)が新人(水本佳奈子)を紹介する。
「この子、親の借金で今日からソープで働くの・・・貸してあげて・・・私には紹介料頂戴」
「お前・・・利息が遅れてるぞ」
「それは私が身体で払うから」
「金で払え・・・俺は柄崎じゃない」
高田(崎本大海)は思わず柄崎(やべきょうすけ)を見る。
「こいつ凄い名器なんだよ・・・俺はいつも十秒」
そこで机の影から受付嬢・エリカ(久松郁実)が姿を見せる。
思わず「あ」と言う柄崎だった。
柄崎はエリカに懸想しているのだった。
小百合(西條るり)→摩耶(久保寺瑞紀)→エリカと変転していく女事務員・・・前任者たちは・・・どこに消えてしまったのか。
「女は用心深い生き物だ・・・逃がさないためには警戒が必要だ」
ウシジマくんは誰にともなく言う。
風俗店「エロリアーノ」のモコこと葉山朋子(希崎ジェシカ)の本業は看護師である。
自殺未遂で負った怪我の癒えた上原まゆみ(光宗薫)に言葉をかける。
「婚約者が迎えにきてくれて・・・よかったですね」
蒼ざめるまゆみ・・・病院という閉鎖された空間で理性を取り戻した彼女は・・・悪魔である婚約者・神堂大道(中村倫也)の魔手から逃れるために一日早く退院するつもりだったのだ。
「内緒で退院しようなんて・・・どういうつもりです・・・大麻の常習者で・・・死体遺棄の犯罪者で・・・自殺未遂という大罪を犯したものが・・・この上・・・私に迷惑をかけるつもりですか」
神堂の愛車に強制的に乗車させられるまゆみだった。
「靴を脱ぎなさい・・・裸足で走ったら足が痛いですよ」
しかし・・・買い物に出かけた神堂の一瞬の隙をつき・・・逃走するまゆみ。
そのまま・・・警察に駆け込めば・・・事態はかわっていただろう。
だが・・・すでに犯罪者であるまゆみはその選択をすることができなかった。
神堂は・・・まゆみの家族を招集する。
神堂に対する疑いの心を残している父親の重則(名倉右喬)は疑問を投げかける。
「なんで・・・あの子は逃げたりしたんだ」
「彼女が警察にかけこんだりしたら・・・あなたは家族から犯罪者を出すことになるんですよ」
すでに・・・神堂と性的関係を結び・・・彼の支配下に置かれている母親の上原広子(武藤令子)や妹のみゆき(今野鮎莉)は積極的に捜索に乗り出す。
足をビニール袋で覆い、側溝に身を潜ませ、逃げるまゆみ。
しかし・・・神堂の追跡は執拗だった。
神堂の携帯電話に・・・魔女である占い師・勅使川原先生(三田真央)から連絡が入る。
「今忙しい・・・上原まゆみから連絡があったら・・・引きとめておけ・・・自尊心をすべて奪い調教する必要がある」
逃げ場を失ったまゆみは・・・幼少の頃の避難場所だった倉庫に身を潜ませる。
優しい母親の声がする。
「まゆみ・・・いるのかい」
「ママ・・・一人」
「私一人だよ・・・ここを開けてちょうだい」
恐る恐る倉庫の扉を開くまゆみ・・・そこには神堂が立っている。
神堂はまゆみを松田明日香(市橋直歩)のアパートに連れこみ、裸体にして電極を設置する。
電気ショックによる拷問である。
激しい苦痛とともに認知障害を引き起こすことで・・・洗脳の手法として有効である。
「あなたは・・・松田明日香さんの父親と不倫関係に陥り・・・彼女の父親を殺したのですね」
「何を言っているのですか」
「スイッチ・オン」
「ぎゃあああああ」
「スイッチ・オフ」
「彼女の父親を殺して海に捨てましたね」
「殺してなんかいません」
「スイッチ・オン」
「ぎゃあああああ」
「スイッチ・オフ」
「彼女は二千万円で・・・このことを口外しないと約束してくれました」
「このことって・・・」
「あなたが彼女の父親を殺したことをです」
「私は殺してません」
「スイッチオン」
「ぎゃああああ」
地獄の責苦である。
電気ショックにより・・・見当識障害、前向性健忘、逆行性健忘・・・様々な記憶障害が生じ・・・人間は正しい認識力を失う。
自分が殺人者かどうか・・・まゆみは判断を下せなくなっていく。
文字通り・・・自分を見失っていくのである。
調教され、洗脳されたまゆみは神堂に絶対服従する人形となった。
まゆみを喫茶店に呼び出した男日照りの編集長(小嶋理恵)は退職を勧告する。
「不当解雇です」
「経理で・・・あなたの使いこみが問題になってるのよ」
「退職金はいくら出ますか」
「え・・・」
突然・・・土下座するまゆみ。
「編集長、お願いです・・・私に三万円貸してください」
「上原・・・」
店を出たまゆみは携帯電話で神堂に報告する。
「編集長からお金を引き出せました」
(電車に乗る前にまた電話しなさい)
「はい」
上原家にまゆみを伴って乗り込む神堂。
「まゆみさんは・・・愛人を殺し・・・海に捨てました」
「そんな馬鹿な・・・」と叫ぶ上原重則。
「シゲノリ・・・神堂さんに逆らうな」
「え・・・」
「共犯者から二千万円の口止め料を要求されています」
「そんな」
「娘が可愛くないのですが」
「しかし・・・二千万円なんて」
「あなたが親から譲り受けた土地があるでしょう」
「あれは・・・兄弟で管理している土地だ・・・私の一存では」
「シゲノリ・・・神堂さんに逆らうな」
「娘が犯罪者になるかどうかの瀬戸際です・・・世間体を気にしている場合ではありません」
上原家に世にもおぞましい沈黙が訪れる。
神堂はみゆきの夫のカズヤ(板橋駿谷)に囁きかける。
「まゆみさんが愛人を殺したのは・・・あなたとまゆみさんが大麻を吸っている画像を愛人に見られて脅迫されたからなのです」
「そんな・・・」
「もしも・・・まゆみさんが逮捕されたなら・・・あなたにはまゆみさんの恋人への暴行の件もありますから・・・懲役は免れません」
「・・・」
「それはそうと・・・みゆきさん・・・風俗で働いてますよ・・・確認してみたらいかがです」
みゆきは・・・まゆみを連れて「カウカウファイナンス」を訪れた。
「姉にお金を貸してよ」
「お前が保証人になるなら」
「姉にも風俗紹介するからいいでしょう」
「初回は五万・・・手数料ひいて二万だ」
「この人・・・二万あれば何でもするわよ」
「みゆき・・・お前・・・何かあったな」
「・・・」
「顔つきが全然違うぞ」
柄崎は裏デリヘル「ガラダマ」を経営する金子ババー(箱木宏美)の回収に訪れる。
客を装ったカズヤは・・・「みゆ」という源氏名の自分の妻を指名カタログに発見する。
「その娘・・・人気ナンバーワンね」
その頃・・・みゆきは駱駝会の柏木(大塩ゴウ)に買われていた。
回収の帰りに柄崎は上機嫌の柏木に声をかけられる。
「柄崎・・・金子ババーのところにいい女が入ったぞ・・・そのうちクスリ漬けにして俺の女にしてやる」
「はあ・・・」
妻となったまゆみの妹のみゆきを優しくマッサージする神堂。
「もしも・・・あなたと先に出会っていたら・・・僕は運命を呪います」
「神堂さん」
まゆみの母親を激しく貫く神堂。
「上原家の不幸は・・・家長があなたの夫だったことだ。鬘を剥がされて文句も言えない彼の不甲斐なさが悪いのです。私があなたに本当の男というものを教えてさしあげる」
「ああ・・・神堂さん」
父親の携帯電話に・・・送信される妻の不倫動画。
「私の妻が・・・他の男と・・・神堂さん・・・私はどうすれば」
「私の指示に従いなさい」
勅使河原は報告する。
「総資産はざっと三億円です」
「では・・・上原家全財産没収計画の最終段階に入ろう」
悪魔は凄惨な喜悦に顔を歪ませる。
・・・結城美奈(佐々木心音)は母親の幸せそうな姿を見る。
結城恵美子(倖田李梨)は愛人の亀井(仲俣雅章)と自転車を二人乗りしていた。
しかし・・・友人の沙希(寺田御子)にブランドものを貢ぐスナックの客の話を聞かされる。
「最低のセンスなんで即換金」
「この人・・・」
沙紀に貢いでいる男は亀井だった。
「馬鹿な・・・ママ・・・その娘の私も馬鹿だ」
闇金融「ライノー・ローン」の女経営者・犀原茜(高橋メアリージュン)と腹心の部下・村井(マキタスポーツ)に母親の借金返済を迫られる美奈。
「母親の借金だ・・・身を売って返せよ」
「売りはやらない」
「売れよ」
「ママの借金は・・・ママに返させるよ」
美奈は決意の表情を見せる。
沙希のアドレスを利用して亀井に3Pを持ちかけおびき出すことに成功した美奈。
母親の恵美子には変態相手の母娘売春ともちかけて紙袋を顔にかぶせた。
「沙希はどうした・・・そっちの女・・・肉たるんでるじゃねえか」
「沙希はこないよ・・・おじさん、お金持ちなんでしょう・・・三万円くらい安いじゃない」
「金なんてねえよ・・・馬鹿な売春婦の婆に貢がせてるだけさ」
「だってさ・・・ママ」
美奈は母親の顔を晒す。
「え」
「ママ・・・この男の正体わかった」
「美奈・・・お前・・・またママから男を寝取る気」
「二番目のパパのこと・・・私の身体触ってくるから・・・やめさせてってママに頼んだのに・・・ママはシカトしたよね」
「うるさい・・・男はそんなに若い女がいいのかよ・・・あんた・・・奥さんと別れて私と結婚してくれるんだろう」
「馬鹿言うなよ・・・俺は帰る」
「じゃあ・・・私との関係・・・奥さんにばらしてやる」
「ふざけるな・・・死ねよ」
亀井は恵美子の首を絞める。
「警察・・・呼ぶよ」
「お前も死ね」
亀井は美奈の首も絞める。
「表で・・・彼氏が見張ってる・・・」
「なに・・・」
蒼ざめる亀井。
「ざまあみろ・・・」と叫ぶ恵美子。
「あれ・・・ママの取り立ての人・・・」
「え・・・」
窓の外には村井が立っていた。
亀井は・・・ATMで全額を引き下ろさせられたが・・・四千円不足していた。
犀原茜は恵美子をホームレス相手の売春婦・肉まんま(寺本操・・・実年齢1938年生れの78才)の元へと引きたてる。
「ここで客をとって不足分を返してもらうよ」
「若い女だ」と騒ぐホームレスたち。
「嫌だよ」と震える恵美子。
「ここじゃ・・・一発千円だ・・・稼ぎな・・・紹介料五百円だから八発な」
この世の地獄である。
ヘルス・リーズナブルはゴミ箱なのだ。
まゆみは利息を持って「カウカウファイナンス」を訪れていた。
「百万円の追加融資をお願いします」
「何に使うの」
「堕胎費用です」
「証拠見せてもらおう」
エリカは妊娠検査薬を差し出す。
検査をしたまゆみは陽性反応に驚く。
予想外の出来事に神堂に携帯電話で指示を仰ぐまゆみ。
「神堂様・・・妊娠していました」
(子供が出来たのは素晴らしいことです・・・それよりお金を借りてさっさと戻りなさい)
「はい・・・」
「とりあえず・・・二十万だ」
「すみません」
「あやまることはない・・・金を借りることは悪い事じゃない・・・利息で責任を果たせばな」
「・・・」
「あんた・・・本当に堕すの・・・」
(子供は産みたい・・・だけどとても育てられない・・・あの家に帰るのは嫌だ・・・誰か助けて)
まゆみの声なき悲鳴を聞くウシジマくん。
「なんか言った・・・」
「・・・」
「なんかあったら・・・俺に言いな・・・金利分くらい相談にのるから」
まゆみは・・・立ち去るウシジマくんの背中を見つめて立ちすくむ・・・。
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